説明

ハニカムサンドイッチパネルおよびその製造方法

【課題】コアクラッシュの無いハニカムサンドイッチパネルとその製造方法を提供する。
【解決手段】二枚の表皮の間にハニカムコアを鋏んで結合したサンドイッチパネルにおいて、ハニカムコアのコア本体の側縁に近接させて、セルを面内に収縮させて高密度化した面内収縮コアを配置することにより、コアクラッシュを回避する。コア本体と面内収縮コアとは、結合せず、接着材またはインターロック構造で結合し、あるいは一体構造にしても良い。
【効果】製造が容易でコアクラッシュが起こりにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハニカムコア両面に表面材を貼り付けたハニカムサンドイッチパネルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハニカムサンドイッチパネルは、軽量でありながら優れた機械強度を備えていることから、航空機用途、自動車用途、一般産業用途などに幅広く使用されているが、低コスト化および軽量化の観点から、ハニカムコアとしては、セルサイズが大きく、桁高さの大きい(厚みが大きい)コア材が用いられる傾向にある。
【0003】
セルサイズが大きいハニカムサンドイッチパネルの場合、スキンパネルとハニカムコアとの接着面積が減少するため、接着性が低下する傾向があり、また、これを補うため成形時の圧力を高くするとハニカムコアが変形したり潰れたりする、コアクラッシュと呼ばれる現象を起こすことがあった。すなわち、セルサイズの大きいハニカムコアを使用する場合、コアクラッシュすることなく、パネルスキンとハニカムコアとの接着性に優れたハニカムサンドイッチパネルを得ることは困難であった。
【0004】
ここで、コアクラッシュの原因と発生メカニズムについて以下に概説する。ハニカムサンドイッチパネルの成形は、ハニカムコアの上下に表面材であるプリプレグを積層し、ナイロンフィルムを用いてバギングしたバッグ内を真空にした後、オートクレーブで加圧、加熱成形を行う方法が一般的である。ここで、コアクラッシュの原因として考えられる1点目は、ハニカムコアとプリプレグとの間に働く摩擦力であり、この摩擦力が小さいとハニカムコアの滑りが引き起こされ、これによりハニカムコアの変形が発生する。2点目の原因としては、ハニカムコア内に少量含まれる水分等の揮発物に起因する内圧上昇が挙げられ、バッグ内真空条件の設定によってはコアクラッシュを引き起こしやすくなる。特に、ハニカムサンドイッチパネルのサイズが大きくなると、パネル中央部付近に部分的膨れ(ハニカムコアとプリプレグとの剥離)が発生する場合がある。
【0005】
コアクラッシュを回避する技術として、これまで種々の方法が提案されている。例えば、プリプレグの端部を耐熱性粘着テープで固定する方法、またハニカムコアを覆う上下のプリプレグ同士が重なり合う端部を突起物で突き刺し、押え板で押え込む方法(特許文献1参照)や、L型抵抗板で押え込みプリプレグの滑りを抑制する方法(特許文献2参照)が提案されている。さらに樹脂をハニカムコア外周部の複数箇所のセル内に充填硬化し、この樹脂にピンを貫通させて治具に固定した後、加熱、加圧成形する方法も提案されている(特許文献3参照)。また、下表面板用プリプレグ上に、樹脂フィルムを介してハニカムコア体を積層した後、逐次昇温、逐次昇圧にて成形する方法(特許文献4参照)や、ハニカムコア開口部の少なくとも一面の外周囲に補強材を貼り付け、次いでハニカムコアの両面にプリプレグを積層した後、成形する方法(特許文献5参照)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特公昭59−42621号公報
【特許文献2】特開平5−131576号公報
【特許文献3】特開平1―176548号公報
【特許文献4】特開平6−190956号公報
【特許文献5】特開平6−901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法は作業性に劣る上、パネルのサイズにより個別の治具を作製しなければならないという問題がある。また、特許文献4および5の方法は、作業性が低下する上、軽量化、低コスト化の面においても必ずしも満足できない。
【0008】
この発明の目的は、容易に製作ができて成形中のコアクラッシュを回避できるハニカムサンドイッチパネルおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、コア本体と、上記コア本体の少なくとも一側縁に近接して配置された面内収縮コアとを備えたハニカムコアと、上記ハニカムコアの両主面に全面に亘って結合された表皮とを備えたハニカムサンドイッチパネルが得られる。
【0010】
また、第1および第2の表皮でハニカムコアを鋏んだハニカムサンドイッチパネル組立体を用意し、このハニカムサンドイッチパネル組立体を真空バッグ内に入れて、オートクレーブにより高温下で加圧して所定時間保持するハニカムサンドイッチパネルの製造方法において、上記ハニカムサンドイッチパネル組立体を用意する工程が、コア材でできたコア本体の少なくとも一側縁に面内収縮コアを近接して配置する工程を含むことを特徴とするハニカムサンドイッチパネルの製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0011】
この発明のハニカムサンドイッチパネルおよびその製造方法によれば、容易に製作ができて、制作中のコアクラッシュが起こりにくいという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明のハニカムサンドイッチパネルの一実施の形態を一部破断して内部構造を示す部分破断斜視図である。ハニカムサンドイッチパネルは、2つの主面1、2、および主面1、2を囲む側面3を持つ平板状のハニカムコア4と、ハニカムコア4の両主面1、2に全面に亘って結合された第1の表皮5および第2の表皮6とを備えている。ハニカムコア4は、コア本体7と、コア本体7の少なくとも1つの側縁に近接して配置された面内収縮コア8とを備えている。
【0013】
図1に示す例では、ハニカムコア4のコア本体7は、アルミニウム、アラミド繊維等の材料で作られて多数のセルを持つ全体として矩形の平板状のコア材で、面内収縮コア8は、ハニカムコア4の側面3に対応した側面である、コア本体7の図1で手前の1つの側面だけに近接して配置され、コア本体7と面内収縮コア8とは樹脂接着剤等の接着剤9により結合されている。面内収縮コア8は、コア本体7の一側縁に配置されるだけでなく、コア本体7が多角形の場合には、全側縁を含む2つ以上の側縁に対して配置することができ、またコア本体7が円形の場合にも全側縁即ち全周に亘って配置することができる。
【0014】
図2にはこの発明のハニカムサンドイッチパネルの製造方法を概略的に示してある。製造に当たっては、先ず製品に応じた成形型11を用意し、その上に複合材プリプレグ等の第1の表皮5を乗せ、第1の表皮5の上にハニカムコア4を乗せる。ハニカムコア4の上に更に第2の表皮6を乗せる。ハニカムコア4を第1の表皮5に乗せるために、先ず、コア本体7の側縁から第1の表皮5がはみ出すように第1の表皮5よりも小さくしたコア本体7を第1の表皮5に乗せ、面内収縮コア8をコア本体7の側縁に沿って第1の表皮5がコア本体7からはみ出した部分の上に乗せ、熱硬化性のエポキシ樹脂等の接着剤9をコア本体7と面内収縮コア8との間に充填する。このとき接着剤9はまだ硬化していない。
【0015】
ハニカムコア4を第1の表皮5に乗せるための別の手順とし、面内収縮コア8をコア本体7よりも先に第1の表皮5の上に載置してその後コア本体7を配置することもできる。また、コア本体7と面内収縮コア8とを接着剤9で結合してハニカムコア4としてあらかじめ組み立てられたものを第1の表皮5の上に載置することもできる。
【0016】
面内収縮コア8は、コア本体7と同様のコア材にセルの軸に直角な横方向の力を、手であるいは適当な治具を用いて加えてセルを塑性変形させることにより作る。このような面内収縮コア8は、例えばハニカムコア4を所望の形状に裁断した後に残る残余材を使用することで、低コストにできる。収縮の割合は、収縮率(収縮方向に測った寸法で、収縮後の寸法の収縮前の寸法に対する割合)が90%〜10%の範囲内が良いが、製品の用途に応じて様々な収縮率を選択できる。90%以上であると収縮の効果が不十分であり、10%を越えると収縮させる努力に対する強度の増加の割合が少なく、効率が悪い。作業性と強度の増加とを考えると、望ましい範囲は70%〜30%である。
【0017】
このようにして、図2の中央部に示すように、成形型11上に載置されたハニカムサンドイッチパネル組立体10が得られる。このハニカムサンドイッチパネル組立体10は、次に図2の右側に示すように真空バッグ12内に入れて、オートクレーブ13に入れる。オートクレーブ13内では、真空ポンプPにより脱気しながら減圧下でヒーターHにより加熱する。このとき、熱硬化性樹脂の接着剤9が硬化してコア本体7と面内収縮コア8とが結合される。続いて減圧を解除して真空バッグ内を大気圧にし、更に加熱温度および圧力を更に上昇させて高温高圧で所定時間保持してハニカムサンドイッチパネルが完成する。
【0018】
ハニカムサンドイッチパネルをこのように製造する際には、第1および第2の表皮5、6、ハニカムコア4のコア本体7および面内収縮コア8には例えば2.5kg/cm^2の圧力がかかるが、面内収縮コアは高密度化されているために強度が大きく、圧力による変形が抑制される。コア本体7は面内収縮コア8に近接しているため、面内収縮コア8に追従して変形が抑制される。ハニカムコアの変形が抑制されることにより、コアクラッシュが防止される。また、熱硬化性樹脂の接着剤9は加熱されると硬化し、コア本体7と面内収縮コア8の結合を強化するため、コア本体7と面内収縮コア8の間のすべりがなくなり、ハニカムコア4の変形を抑制できる。
【0019】
実施の形態2.
図3は、この発明のハニカムサンドイッチパネルの別の実施の形態を示す一部破断して内部構造を示す部分破断斜視図であり、図4はインターロック構造の詳細を示す概略図であり、図5はインターロック構造のために一部を切り取ったコア本体7のセルを示す斜視図である。このハニカムサンドイッチパネルの基本的構造は、図1に示すものと同様のものであって、相違している点は、コア本体7と面内収縮コア8との間がセルのインターロック構造14によって結合されていることだけである。
【0020】
インターロック構造14は、図5に示すように、コア本体7および面内収縮コア8の側縁部のセルの一部をセルの軸方向全長に亘って切り欠いてスリット状の開口部15と、角状の突起部16とを形成し、これらの開口部15内に相手の突起部16がセルの軸方向に挿入されていて、結合すべきコア本体7と面内収縮コア8の開口部15および突起部16が互いに絡み合って、セルの径方向には外れないようにされている構造である。換言すれば、コア本体7と面内収縮コア8との間は、開口部を15を持つセルを絡み合わせたインターロック構造14により結合されている。
【0021】
このようなインターロック構造14により結合された面内収縮コア8を持つハニカムサンドイッチパネルは、コア本体7の少なくとも一面の外周囲に、面内収縮コア8をインターロックになるように配置し、インターロック構造14はコア本体7と面内収縮コア8との間にアンカーのように引っかかるので、結合を強化することになり、コア本体7と面内収縮コア8の間のすべりがなくなるため、コア本体7の変形を面内収縮コア8に追従させることを補助する。コア本体7と、面内収縮コア8を結合するのに追加材料を使用しないために軽量化に有効である。
【0022】
実施の形態3.
図6は、この発明の更に別の実施の形態のハニカムサンドイッチパネルを示す。このハニカムサンドイッチパネルにおいては、コア本体7と面内収縮コア8との間に接着剤もインターロック機構も用いられておらずに接合されてない。面内収縮コア8が単に第1および第2の表皮5および6の間でコア本体7の側縁に近接して配置されているだけであり、コア本体7と面内収縮コア8とが、第1および第2の表皮5および6を介してのみ互いに結合されている。その他の構成は先に説明した実施の形態と同様である。このハニカムサンドイッチパネルにおいては、コア本体7と面内収縮コア8とが互いに直接は結合されずに、それぞれ表皮5、6に結合されていて、従って互いに表皮5、6によってのみ結合されているが、このような結合はハニカムサンドイッチパネル組立体10の加熱工程時に行われる。
【0023】
このようなハニカムサンドイッチパネルにおいても、面内収縮コア8によってコア本体7の変形が抑制されることにより、コアクラッシュが防止される。このハニカムコア4も、コア本体7に面内収縮コア8を結合するのに追加材料を使用しないために軽量化に有効であり、また製作も容易である。
【0024】
実施の形態4.
図7は、この発明のハニカムサンドイッチパネルの更に別の実施の形態を示す。このハニカムサンドイッチパネルにおいては、コア本体7の側縁部分だけが局所的に面内収縮されて面内収縮コア8となっている。このような面内収縮コア8は、大き目のコア材をセルの軸に対して直角方向に押圧して側縁部分のセルを押しつぶすことによって作ることができる。従って、この面内収縮コア8とコア本体7とを備えたハニカムコア4は、同じコア材で一体に連続した一部品として作成されている。即ち、コア本体7の少なくとも一側縁に近接して配置された面内収縮コア8は、コア本体7のコア材の側縁部分にセルの軸に直角な方向の力を加えてセルを塑性変形させることにより作成されるのである。
【0025】
このハニカムコア4も、コア本体7に面内収縮コア8を結合するのに追加材料を使用しないために軽量化に有効であり、また製作も容易である。その他の構成は先に説明した実施の形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明のハニカムサンドイッチパネルの実施の形態1を示す概略斜視図である。
【図2】図1のハニカムサンドイッチパネルの製造方法を示す概略図である。
【図3】この発明のハニカムサンドイッチパネルの実施の形態2を示す概略斜視図である。
【図4】図3のインターロック構造を示す概略説明図である。
【図5】図3のインターロック構造に用いるセル部分の概略斜視図である。
【図6】この発明のハニカムサンドイッチパネルの実施の形態3を示す概略斜視図である。
【図7】この発明のハニカムサンドイッチパネルの実施の形態4を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1、2 主面、4 ハニカムコア、5、6 表皮、7 コア本体、8 面内収縮コア、9 接着材、10 ハニカムサンドイッチパネル組立体、12 真空バッグ、13 オートクレーブ、14 インターロック構造、15 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア本体と、上記コア本体の少なくとも一側縁に近接して配置された面内収縮コアとを備えたハニカムコアと、
上記ハニカムコアの両主面に全面に亘って結合された表皮とを備えたハニカムサンドイッチパネル。
【請求項2】
上記面内収縮コアが、上記コア本体の全側縁に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハニカムサンドイッチパネル。
【請求項3】
上記コア本体と上記面内収縮コアとが接着材により結合されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のハニカムサンドイッチパネル。
【請求項4】
上記コア本体と上記面内収縮コアとがインターロック構造により結合されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のハニカムサンドイッチパネル。
【請求項5】
上記コア本体と上記面内収縮コアとが、上記表皮を介してのみ結合されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のハニカムサンドイッチパネル。
【請求項6】
上記面内収縮コアが上記コア本体と一体の連続した材料で構成されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のハニカムサンドイッチパネル。
【請求項7】
第1および第2の表皮でハニカムコアを挟んだハニカムサンドイッチパネル組立体を用意し、
このハニカムサンドイッチパネル組立体を真空バッグ内に入れて、オートクレーブにより高温下で加圧して所定時間保持するハニカムサンドイッチパネルの製造方法において、
上記ハニカムサンドイッチパネル組立体を用意する工程が、コア材でできたコア本体の少なくとも一側縁に面内収縮コアを近接して配置する工程を含むことを特徴とするハニカムサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項8】
上記面内収縮コアを作るために、コア材にセルの軸に直角な横方向の力を加えてセルを塑性変形させることを特徴とする請求項7に記載のハニカムサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項9】
上記面内収縮コアの収縮後の収縮方向寸法の収縮前の収縮方向寸法に対する割合である収縮率が10〜90%であり、望ましくは30〜70%であることを特徴とする請求項7あるいは8に記載のハニカムサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項10】
上記面内収縮コアを上記コア本体の全側縁に対して近接配置することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のハニカムサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項11】
上記コア本体と上記面内収縮コアとの間を接着材により結合することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載のハニカムサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項12】
上記接着材を上記ハニカムサンドイッチパネル組立体の加熱工程時に硬化させることを特徴とする請求項11に記載のハニカムサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項13】
上記コア本体と上記面内収縮コアとの間を開口部を持つセルを絡み合わせたインターロック構造により結合することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載のハニカムサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項14】
上記コア本体と上記面内収縮コアとが、上記ハニカムサンドイッチパネル組立体の加熱工程時に、上記表皮にのみ結合されることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載のハニカムサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項15】
上記コア本体の少なくとも一側縁に上記面内収縮コアを近接して配置する工程が、上記コア本体のコア材の側縁部分にセルの軸に直角な方向の力を加えてセルを塑性変形させる工程を含むことを特徴とする請求項7〜10に記載のハニカムサンドイッチパネルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−655(P2010−655A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160597(P2008−160597)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】