説明

ハニカム構造体およびこれを用いた排気ガス処理装置

【課題】隔壁を薄くしても溶損およびクラックを長期間に亘って生じにくくすることができるハニカム構造体の提供。
【解決手段】軸方向に沿った壁面4aを有する通気性の隔壁4により仕切られた複数の流通孔2と、複数の流通孔2の流入側および流出側のそれぞれを交互に封止する封止材3とを備えてなるハニカム構造体1であって、隔壁4はチタン酸アルミニウムを主成分とする焼結体からなり、少なくとも流出側に硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる添加材を含んでいるハニカム構造体1である。燃焼時に隔壁の温度が上昇しても、添加材に用いる元素は、融点が1852℃以上と高いため、添加材は溶けにくい、しかも前記元素は、比熱容量が265J/(kg・K)以上と高いため、局部的な温度上昇が抑制され、燃焼を終えても緩やかに冷えるので、隔壁に生じる溶損やクラックを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,フォークリフト,発電機,船舶,油圧ショベル,ブルドーザ,ホイールローダ,ラフテレンクレーン,トラクタ,コンバイン,耕転機,鉄道車両および工事用車両等の動力源である内燃機関,焼却炉およびボイラー等から発生する排気ガスに含まれる炭素を主成分とする微粒子等を捕集するフィルタ、有害なダイオキシンを分解して除去するフィルタ等に用いられるハニカム構造体およびこれを備えた排気ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関,焼却炉およびボイラー等から発生する排気ガス中に含まれる、炭素を主成分とする微粒子(特に、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭素を主成分とする微粒子),硫黄が酸化してできる硫酸塩を主成分とする微粒子および高分子からなる未燃焼の炭化水素などの微粒子等は環境汚染の原因となるため、例えば、ハニカム構造体を用いたフィルタでこれらの微粒子を捕集して、除去している。
【0003】
図6は、従来のハニカム構造体を示す、(a)は側面図であり、(b)は部分破断した正面図である。
【0004】
図6に示すハニカム構造体21は、軸方向Xに沿った壁面を有する隔壁23と、隔壁23により仕切られた複数の流通孔22と、複数の流通孔22の両端を交互に封止する封止材24a,24bとを備えたハニカム構造体である。
【0005】
このハニカム構造体21の流入側の端面(IF)から流入した排気ガスは、流通孔22に導入された後、隔壁23を通って隣接する流通孔22に入り、流出側の端面(OF)から流出する。そして、排気ガスが隔壁23を通る際に、排気ガスに含まれる各種の微粒子が隔壁23に捕集されるようになっている。
【0006】
ハニカム構造体21は、このような微粒子の捕集を続けると、捕集した微粒子の蓄積によって隔壁23の通気性が次第に損なわれるため、定期的に微粒子を除去することによって再生しなければならない。ハニカム構造体21を再生する方法としては、600℃以上に加熱し
て、微粒子を燃焼除去する方法や、ハニカム構造体21の排気ガスの流入側に酸化触媒を配置し、この酸化触媒に軽油等の燃料を供給することによって生じる酸化反応によって発生する熱を利用して、微粒子を燃焼除去する方法等がある。
【0007】
しかしながら、これらの方法によりハニカム構造体21を再生すると、微粒子の捕集量が多いほど、微粒子を燃焼除去するのに多くの時間を要し、この間、ハニカム構造体21の温度が上昇し、上昇による熱応力に起因してハニカム構造体21にクラックや溶損が生じる場合があった。
【0008】
このようなクラックや溶損を防止するためのハニカム構造体は種々提案されている。例えば、特許文献1では、主成分がチタン酸アルミニウムのハニカム構造体であって、ハニカム構造体の所定のセル(流通孔)の一端面を目封止材で封止するとともに、残りの未封止セル(封止されていない流通孔)の他端面も同様に目封止したディーゼルエンジン排ガスフィルタが示され、好適な例として主成分がチタン酸アルミニウムの目封止材を用いることが開示されている。そして、これによれば、フィルタの素材にチタン酸アミニウムを用いているので熱膨張係数が小さく、コージェライトに比べ融点が高いため耐熱性、熱衝撃性に優れる。また、コージェライトに比べ、焼成コストが少ない。ハニカム構造体とセ
ル壁封止材の熱膨張係数の差を小さくすることにより、燃焼再生時に、セル壁と封止材の界面に起こるクラックをなくすことができるというものである。
【0009】
そして、このようなハニカム構造体は、例えば、特許文献2で開示された微粒子状物質の除去装置にフィルタとして用いられる。特許文献2で提案された排気ガス中の微粒子状物質の除去装置は図7に概略図として示されている。
【0010】
図7に示す除去装置30は、内燃機関31から排出される排気ガス中の微粒子状物質を除去する装置であって、内燃機関31の排気ガス排出部の下流に配置されてなり、内燃機関31から排出された排気ガス中のNOを吸蔵し、かつ、吸蔵したNOをNOおよび/またはNOとして放出するNO吸蔵剤33と、NO吸蔵剤33の下流に配置されてなり、内燃機関31から排出された排気ガス中の微粒子状物質を捕集するためのフィルタ34とを含んでなる装置であり、さらに排気ガス中のNOを酸化してNOを生じさせる、触媒の役割を担う酸化触媒32がNO吸蔵剤33の上流部に配置されてなるものである。また、この除去装置30では、エンジン31の入り口31aから燃料が供給されて、エンジン31内部において燃料が燃焼した後、エンジン31の出口31bから排気ガスが排出されて、NO吸蔵剤33に流入する。NO吸蔵剤33が排気ガス中のNOを吸蔵した後、排気ガスはフィルタ34に流入して、排気ガス中の微粒子状物質が捕集される。排気ガスの温度が、NOと微粒子状物質とが反応するのに十分な温度に達したとき、NO吸蔵剤33に吸蔵されていたNOがNOおよび/またはNOとして放出され、その放出されたNOがフィルタ34に捕集されていた微粒子状物質と反応して、反応物質が排出口35から排出されるというものである。これによれば、内燃機関31の排気ガス中に包含される微粒子状物質を効果的に除去することができるというものである。
【0011】
なお、NO吸蔵剤33は、NO吸蔵材と、必要に応じて活性金属および助触媒とを、担体に担持して構成される。
【0012】
NO吸蔵材としては、アルカリ金属,アルカリ土類金属,希土類金属および遷移金属の群から選択される一種または二種以上の金属が挙げられる。また、担体の具体例としては、アルミナからなるペレット型形状(粒状形)、またはコージエライトセラミックスもしくはステンレス等の金属からなるモノリス型形状(ハニカム形)が挙げられる。また、活性金属の具体例としては、貴金属(白金,パラジウム,ロジウム,ルテニウム,オスミウム,金および銀など)および卑金属(ニッケル,銅,マンガン,鉄,コバルトおよび亜鉛など)が挙げられ、好ましくは貴金属が挙げられる。そして、助触媒の具体例としては、酸化セリウム,酸化ジルコニウムおよび酸化チタン等が挙げられる。
【0013】
また、酸化触媒32は、基本的には、活性金属と、支持材と、担体とを含んでなるものである。なお、支持体とは、一般には、活性金属を安定化させて、排気ガスとの接触面積を拡大して浄化性能を向上させるものであり、具体例としては、酸化アルミニウム,酸化セリウムおよび酸化チタニウムなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−29022号公報
【特許文献2】特開2002−364338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1で示されているディーゼルエンジン排ガスフィルタは、燃焼再生時に、隔壁に微粒子が堆積しても隔壁における圧力損失が容易に上昇しないように隔
壁を薄くする要求が高くなっており、このような要求に応えるために、隔壁を薄くすると、クラックや溶損が生じやすくなるという課題が生じていた。特に、このようなクラックや溶損は、微粒子の堆積量が多く、また、流出側の封止材により排気ガスが一時滞留することで温度上昇が生じやすいセルの流出側の隔壁に発生しやすいという課題があった。
【0016】
また、特許文献2で提案された微粒子状物質の除去装置は、内燃機関の排気ガス中に包含される微粒子状物質を効果的に除去することができるものの、酸化触媒,NO吸蔵剤およびフィルタが直列に配置されるため、この配置に必要なスペースが膨大になるという課題があった。
【0017】
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、隔壁を薄くしても溶損およびクラックを長期間に亘って生じにくくすることができるハニカム構造体と、このハニカム構造体を用いて、省スペース化を実現することができる排気ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のハニカム構造体は、軸方向に沿った壁面を有する通気性の隔壁により仕切られた複数の流通孔と、該複数の流通孔の流入側および流出側のそれぞれを交互に封止する封止材とを備えてなるハニカム構造体であって、前記隔壁はチタン酸アルミニウムを主成分とする焼結体からなり、少なくとも前記流出側に硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる添加材を含んでいることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のハニカム構造体は、上記構成において、前記添加材は、前記流入側よりも前記流出側に多く含まれていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のハニカム構造体は、上記いずれかの構成において、前記隔壁の前記流出側における前記添加材の含有量は5質量%以上30質量%以下であることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のハニカム構造体は、上記いずれかの構成において、前記隔壁の前記壁面に触媒を担持していることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の排気ガス処理装置は、上記いずれかの構成のハニカム構造体を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のハニカム構造体は、軸方向に沿った壁面を有する通気性の隔壁により仕切られた複数の流通孔と、複数の流通孔の流入側および流出側のそれぞれを交互に封止する封止材とを備えてなるハニカム構造体であって、隔壁はチタン酸アルミニウムを主成分とする焼結体からなり、硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる添加材を少なくとも流出側に含んでいる場合には、添加材に用いる元素は融点が1852℃以上と高いため、微粒子の燃焼時に隔壁の温度が上昇しても添加材は溶けにくく、しかもこれらの元素は比熱容量が265J/(kg・K)以上と高いため、局部的な温度上昇が抑制さ
れるとともに、燃焼を終えても急激に冷えず、緩やかに冷えるので、隔壁に生じる溶損やクラックを低減させることができる。
【0024】
また、本発明のハニカム構造体は、添加材が、流入側よりも流出側に多く含まれている場合には、温度が上昇しやすい流出側の隔壁に、より溶損やクラックが生じにくくなり、隔壁全体を効率的に再生することができる。
【0025】
また、本発明のハニカム構造体は、隔壁の流出側における添加材の含有量が5質量%以上30質量%以下である場合には、隔壁に生じる溶損やクラックを低減させることができ、また、隔壁自体の質量がほとんど増えないので、ハニカム構造体の質量増加による内燃機関の燃費の低下を抑制することができる。
【0026】
また、本発明のハニカム構造体は、隔壁の壁面に触媒を担持している場合には、担持していないときよりも低い温度で微粒子を燃焼除去することができるので、隔壁に溶損やクラックが生じるのを、さらに低減させることができる。
【0027】
本発明の排気ガス処理装置は、本発明のハニカム構造体を備えている場合には、隔壁に溶損やクラックが生じにくくなっているので、長期間に亘って効率よく使用することができるとともに、活性金属が担持された担体やNO吸蔵材が担持された担体を不要にすることができるので、省スペース化を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のハニカム構造体の実施の形態の一例を模式的に示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるB−B’線における断面図である。
【図2】図1に示す例のハニカム構造体を示す、(a)は流入側の一部を示す側面図であり、(b)は流出側の一部を示す側面図である。
【図3】本発明のハニカム構造体の実施の形態の他の例を示す、(a)は流入側の端面(IF)の一部を示す側面図であり、(b)は流出側の端面(OF)の一部を示す側面図である。
【図4】本発明のハニカム構造体の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は流入側の端面(IF)の一部を示す側面図であり、(b)は流出側の端面(OF)の一部を示す側面図である。
【図5】本発明のハニカム構造体を備えた排気ガス処理装置の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図6】従来のハニカム構造体を示す、(a)は側面図であり、(b)は部分破断した正面図である。
【図7】従来の微粒子状物質の除去装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のハニカム構造体およびこれを用いた排気ガス処理装置の実施の形態の例について説明する。
【0030】
図1は、本発明のハニカム構造体の実施の形態の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるB−B’線での断面図である。また、図2は、図1に示す例のハニカム構造体を示す、(a)は流入側の端面(IF)の一部を示す側面図であり、(b)は流出側の端面(OF)の一部を示す側面図である。
【0031】
図1(a)に示すハニカム構造体1は、軸方向Aに沿った壁面4aを有する通気性の隔壁4により仕切られた複数の流通孔2と、複数の流通孔2の流入側および流出側のそれぞれを交互に封止する封止材3とを備えてなるハニカム構造体1である。なお、図1(b)で示すように、流入側の封止材3aで封止された流通孔2を流通孔2bと、流出側の封止材3bで封止された流通孔2を流通孔2aとする。
【0032】
また、図2に示すハニカム構造体1は、流通孔2aおよび2bの開口部の形状がいずれも4角形状で、また開口面積が同じである。
【0033】
そして、図1に示すハニカム構造体1は、例えば、外径が100〜200mm,軸方向Aの長
さが100〜250mmの円柱形状であって、軸方向Aに対して垂直な断面における流通孔2(2a,2b)の個数は、100mm当たり5〜124個(32〜800CPSI)である。また、
隔壁4は、幅が0.05mm以上0.25mm以下であり、封止材3(3a,3b)は、厚みが1mm以上5mm以下である。なお、CPSIとはCells Per Square Inchesのことである

【0034】
なお、ハニカム構造体1の流入側にディーゼルエンジン(図示しない)が配置され、このディーゼルエンジン(図示しない)が作動すると、排気ガスが発生し、この排気ガスは、図1(b)に示すようにハニカム構造体1の流通孔2aから導入され、封止材3bによってその流出が遮られる。流出が遮られた排気ガスは、通気性の隔壁4を通過して、隣接する流通孔2bに導入される。排気ガスが隔壁4を通過するとき、隔壁4の壁面4aや隔壁4の気孔の表面で排気ガス中の炭素を主成分とする微粒子,硫黄が酸化してできる硫酸塩を主成分とする微粒子および高分子からなる未燃焼の炭化水素等の微粒子(以下、これらを総称して単に微粒子という。)が捕集される。微粒子が捕集された排気ガスは、浄化された状態で、流通孔2bから外部に排出される。
【0035】
そして、このようなハニカム構造体1では、隔壁4はチタン酸アルミニウムを主成分とする焼結体からなり、少なくとも流出側に硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる添加材を含んでいることが重要である。添加材に用いる元素は、融点が1852℃以上と高いため、微粒子の燃焼時に隔壁4の温度が上昇しても添加材は溶けにくく、しかも比熱容量が265J/(kg・K)以上と高いため、局部的な温度上昇が抑制
されるとともに、燃焼を終えても急激に冷えず、緩やかに冷えるので、隔壁4に生じる溶損やクラックを低減させることができる。
【0036】
隔壁4を形成する焼結体は、チタン酸アルミニウムを主成分とし、副成分として、例えば、チタン酸マグネシウム,チタン酸鉄および珪素酸化物を含有する焼結体であって、少なくともハニカム構造体1の流出側に硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる添加材を含んでいる。
【0037】
ここで、チタン酸マグネシウムおよびチタン酸鉄は、それぞれ耐食性および耐熱劣化性を向上させる成分であって、各含有量は、例えば、16質量%以上24質量%であり、いずれもチタン酸アルミニウムに固溶する。
【0038】
また、珪素酸化物は、粒界相を構成する成分であり、組成式がSiOで示される二酸化珪素は安定性が高いため好適であるが、組成式がSiO2−x(ただし、xは0<x<2である。)で示される不定比の酸化珪素であっても何等差し支えない。珪素酸化物の含有量は、例えば、1.8質量%以上3.2質量%以下である。
【0039】
なお、本発明における隔壁4を形成する焼結体の主成分とは、焼結体を構成する成分のうち最も含有量の多い成分をいい、主成分と,主成分以外の上記成分および添加材のそれぞれの同定はX線回折法によって行ない、またこれら成分および添加材の各含有量はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法または蛍光X線分析法により求めることができる。例えば、主成分であるチタン酸アルミニウムについては、チタン酸アルミニウムを構成する各元素TiおよびAlの含有量を上記方法によって測定し、酸化物に換算した含有量の合計をチタン酸アルミニウムの含有量とすればよい。
【0040】
また、本発明のハニカム構造体1では、添加材は、流入側よりも流出側に多く含まれていることが好適である。添加材が流入側よりも流出側に多く含まれていると、温度上昇が生じやすい流出側の隔壁の溶損やクラックが、より生じにくいので、隔壁4全体を効率的に再生することができる。特に、添加材は、流入側よりも流出側に5質量%以上多く含ま
れていることが好適である。
【0041】
ここで、本発明のハニカム構造体1を軸方向Aに沿って2分した場合は、流通孔2の流入側および流出側とは、排気ガス(EG)が導入される側および排出される側がそれぞれ流入側、流出側である。なお、流出側の軸方向Aの長さは、全体の長さの1/3以上2/3以下が好適である。
【0042】
流出側の軸方向Aの長さを1/3未満であれば、排気ガスが流入したとき比較的温度が高くなる場所に添加材が多く含まれないので、添加材が多く含まれず比較的温度上昇しやすい隔壁に溶損やクラックが生じやすくなる。また、流出側の軸方向Aの長さが2/3を超えるときは、比較的温度が上昇しにくい場所に添加材を多く含有することになり、製造コストの面で好ましくない。
【0043】
また、排気ガスが流入したときハニカム構造体1の上昇温度は流出側から流入側にかけて徐々に低くなるから、流出側の添加材の増加量は流入側に近くなるほど少なくしてもよく、例えば、本発明のハニカム構造体1を軸方向Aに沿って3等分した場合、排気ガス(EG)が導入される側および排出される側がそれぞれ流入側、流出側とし、また流入側および流出側に挟まれる領域を中央部としたとき、流入側よりも中央部が2.5質量%以上多
く、中央部よりも流出側が2.5質量%以上多く含まれていればよい。
【0044】
また、本発明のハニカム構造体1では、隔壁4の流出側における添加材の含有量は5質量%以上30質量%以下であることが好適である。
【0045】
隔壁4の流出側における添加材の含有量が5質量%以上であれば、添加材の効果が比較的大きく、燃焼を終えても急激に冷えず、さらに緩やかに冷えるので、隔壁4に生じる溶損やクラックを低減することができる。また、隔壁4の流出側における添加材の含有量が30質量%以下であれば、隔壁4自体の質量がほとんど増えないので、ハニカム構造体1の質量増加による内燃機関の燃費の低下を抑制することができる。
【0046】
次に、図3は、本発明のハニカム構造体の実施の形態の他の例を示す、(a)は流入側の端面(IF)の一部を示す側面図であり、(b)は流出側の端面(OF)の一部を示す側面図である。
【0047】
図3に示す本例のハニカム構造体1は、流出側の封止材3bによって封止された流通孔2aの開口部の形状が8角形状で、流入側の封止材3aによって封止された流通孔2bの開口部の形状が4角形状であり、流通孔2bより流通孔2aの開口面積が大きいハニカム構造体である。
【0048】
図3に示す例のように、流通孔2aおよび流通孔2bは、開口部の形状がそれぞれ8角形状および4角形状であり、流通孔2aは流通孔2bよりも開口面積が大きいときには、流通孔2aと流通孔2bの開口面積とが同等であるときよりも微粒子を吸着することのできる隔壁4および封止材3bのそれぞれの表面積が大きくなるので、微粒子を効率よく捕集することができる。
【0049】
次に、図4は、本発明のハニカム構造体の実施の形態の他の例を示す、(a)は流入側の端面(IF)の一部を示す側面図であり、(b)は流出側の端面(OF)の一部を示す側面図である。
【0050】
図4に示す本例のハニカム構造体1は、流出側の封止材3bによって封止された流通孔2aおよび流入側の封止材3aによって封止された流通孔2bの開口形状がいずれも4角
形状であり、開口部の角部が円弧状である。また、開口面積が流通孔2bより流通孔2aの方が大きいハニカム構造体である。
【0051】
図4に示すように、流通孔2aおよび流通孔2bは、開口部の形状がいずれも4角形状であり、開口部の角部が円弧状であるので、角部の周りに応力が集中しにくくなるので、加熱、冷却を繰り返しても角部からクラックが生じにくくなり、また、開口面積が流通孔2bより流通孔2aの方が大きいので、微粒子を吸着することのできる隔壁4および封止材3bのそれぞれの表面積が大きくなり、微粒子を効率よく捕集することができる。
【0052】
特に、図3および4に示す例の本発明のハニカム構造体1では、流通孔2aの直径は、流通孔2bの直径に対して、1.55倍以上1.95倍以下であることが好適である。このように、直径の比を1.55倍以上とすることで、微粒子を吸着することのできる隔壁4および封止材3bのそれぞれの表面積が大きくなるので、微粒子の捕集量を増大させることができるとともに、直径の比を1.99倍以下とすることで、隔壁4が極端に薄くならないので、機械的強度がほとんど損なわれない。ここで、流通孔2a,2bのそれぞれの直径とは、流入側端面(IF),流出側端面(OF)における開口部の隔壁4に接する内接円の直径をいい、光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0053】
また、図1〜4に示す例の本発明のハニカム構造体1は、隔壁4を形成する焼結体は、気孔率が35体積%以上60体積%以下であって、平均気孔径が5μm以上26μm以下であることが好適である。
【0054】
隔壁4を形成する焼結体の気孔率および平均気孔径がこの範囲であると、機械的特性を維持しながら、圧力損失の増加を抑制することができるからであり、平均気孔径および気孔率は水銀圧入法に準拠して求めればよい。
【0055】
図5は、本発明のハニカム構造体を備えた排気ガス処理装置の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【0056】
図5に示す本例の排気ガス処理装置10は、本発明のハニカム構造体1が、その外周を断熱材層5に保持された状態でケース6に収容され、排気ガス(EG)の流入口7および流出口8にそれぞれ排気管9a,9bが接続されている。また、断熱材層5は、例えばセラミックファイバー,ガラスファイバー,カーボンファイバーおよびセラミックウィスカーの少なくとも1種から形成されている。また、ケース6は、例えば、SUS303,SUS304およびSUS316等のステンレスからなり、その中央部が円筒状に、両端部が円錐台状
にそれぞれ形成されている。
【0057】
この排気ガス処理装置10の排気ガス(EG)の流入側には、ディーゼルエンジン(図示しない)が排気管9aを介して接続される。そして、このディーゼルエンジン(図示しない)が作動して、排気ガス(EG)が排気管9aを通ってケース6に供給されると、ハニカム構造体1の流通孔2aの中に、排気ガス(EG)が導入され、封止材3bによってその流出が遮られる。流出が遮られた排気ガス(EG)は、通気性の隔壁4を通過して、隣接する流通孔2bに導入される。排気ガス(EG)が隔壁4を通過するとき、隔壁4の壁面4aや隔壁4の気孔の表面で排気ガス(EG)中の微粒子が捕集される。そして、微粒子が捕集された排気ガス(EG)は、浄化された状態で、流通孔2bから排出され、排気管9bを介して外部に排出される。
【0058】
なお、図5に示す例の排気ガス処理装置10では、ハニカム構造体1の隔壁4の壁面4aに触媒を担持してもよい。担持する触媒には、排気ガス中(EG)の微粒子を酸化して燃焼するための触媒と、排気ガス(EG)中のNOを酸化してNOを生じさせるための触
媒があり、このいずれかの触媒を隔壁4の壁面4aに担持すればよく、両方の触媒を担持するとさらによい。
【0059】
また、排気ガス中(EG)の微粒子を酸化して燃焼するための触媒は、例えば、ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウム,白金等の白金族金属およびその酸化物,金,銀,銅等の周期表第11族金属および酸化バナジウムのうちの少なくともいずれか1種からなることが好適である。また、金,銀および銅等の周期表第11族金属を選んだ場合、その粒子はナノメートルレベルの微粒であることが好適である。このような触媒を隔壁4の壁面4aに担持すれば、触媒が排気ガス中(EG)の微粒子を酸化して燃焼するので、担持していないときよりも低い温度で微粒子を燃焼除去することができるので、隔壁4に溶損やクラックが生じるのを、さらに低減させることができる。
【0060】
また、排気ガス(EG)中のNOを酸化するための触媒は、例えば、ZSM−5,ZSM−11,ZSM−12,ZSM−18,ZSM−23,MCMゼオライト,モルデナイト,ファージャサイト,フェリエライトおよびゼオライトベータの少なくとも1種からなることが好適である。このような触媒を隔壁4の壁面4aに担持することにより、排気ガス中に含まれる有害なNOはNOに酸化されて放出される。なお、放出されたNOはアンモニアによって、窒素に還元することができる。このように、排気ガス(EG)中のNOを酸化するための触媒を隔壁4の壁面4aに担持させることによって、排気ガス(EG)の浄化性能を向上させることができる。
【0061】
なお、これらの触媒は隔壁4の壁面4aおよび隔壁4の気孔の表面の少なくともいずれかに担持すればよい。
【0062】
さらに、壁面4aに担持された触媒と排気ガスとの接触面積を大きくするために、支持体として、γアルミナ,δアルミナおよびθアルミナ等の比表面積が大きい成分を隔壁4の壁面4aに担持してから触媒を担持するとよい。
【0063】
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0064】
まず、酸化チタン,酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化鉄の各粉末を水,アセトンまたは2−プロパノールとともに混合したスラリーを噴霧乾燥法等で乾燥し、例えば、平均粒径が50μm以上300μm以下の顆粒を得る。ここで、用いる各粉末は、いず
れも純度が高い粉末を用いることが好ましく、その純度は99.0質量%以上、特に99.5質量以上であることがさらに好適である。
【0065】
次に、得られた顆粒を大気雰囲気中、温度を1400℃以上1500℃以下として、1時間以上5時間以下で仮焼することにより、元素Ti,Al,MgおよびFeが固溶した擬ブルッカイト型の結晶からなる仮焼粉末を得ることができる。
【0066】
この仮焼粉末をASTM E 11−61に記載されている粒度番号が200のメッシュの篩い
に通すことによって粒径が74μm以下に分級された仮焼粉末を得る。そして、この分級された仮焼粉末の一部に、例えば、平均粒径が1μm以上3μm以下である酸化珪素の粉末,平均粒径が1μm以上4μm以下である硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる粉末およびグラファイト,澱粉またはポリエチレン樹脂等の造孔剤の所定量を添加した後、さらに可塑剤,増粘剤,滑り剤および水等を加えて、万能攪拌機,回転ミルまたはV型攪拌機等を使ってスラリー(以下、このスラリーをスラリーAという。)を作製する。そして、このスラリーAを三本ロールミルや混練機等を用いて混練して、可塑化した杯土(以下、この杯土を杯土Aという。)を得る。
【0067】
また、分級された仮焼粉末の残部に、例えば、平均粒径が1μm以上3μm以下である酸化珪素の粉末,平均粒径が1μm以上4μm以下である硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなり、スラリーAに含まれる添加材よりも少なくなるように調整された粉末およびグラファイト、澱粉またはポリエチレン樹脂等の造孔剤の所定量を添加した後、さらに可塑剤,増粘剤,滑り剤および水等を加えて、万能攪拌機,回転ミルまたはV型攪拌機等を使ってスラリー(以下、このスラリーをスラリーBという。)を作製する。そして、このスラリーBを三本ロールミルや混練機等を用いて混練して、可塑化した杯土(以下、この杯土を杯土Bという。)を得る。
【0068】
また、杯土A,Bの少なくともいずれかに、硼素の粉末を添加する場合は、硼素は非晶質硼素または結晶質硼素のいずれでもよいが、焼結性および反応性の活性化の点から非晶質硼素の粉末が好適である。
【0069】
次に、成形体の外径を決定する内径が、例えば、100mm以上250mm以下であるとともに、ハニカム構造体1の隔壁4を形成するためのスリットを有する成形型を備えた押出成形機に杯土Aおよび杯土Bを順次投入し、圧力を加えてハニカム状に成形し、乾燥させてから、所定の長さに切断して、流出側が杯土Aからなり、流入側が杯土Bからなる成形体を得ることができる。なお、押出成形機には杯土を押し出すための機構として、押出成形機内にあるスクリューが回転することにより杯土を押し出すスクリュー式と、ピストンシリンダーなどで杯土に圧力をかけて押し出すプランジャー式があるが、本発明では、杯土Aと杯土Bとを押し出すとき押出成形機内部で杯土Aと杯土Bとが混ざるのを避けるため、プランジャー式の押出成形機を用いることが好適である。また、杯土を重力に従い下向きに押し出すと、横向きに押し出す場合よりも、自重による成形体の変形を低減できるため、寸法精度の良い成形体を連続して成形できるので、下向きに杯土を押し出す縦型押出成形機を用いることが好適である。
【0070】
また、押出成形機で成形したものを所定の長さに切断するときに、杯土Aと杯土Bとを識別できるように杯土Aまたは杯土Bを着色してもよい。
【0071】
そして、電気炉、ガス炉等の焼成炉に成形体を配置した後、酸化雰囲気中、温度を800
℃〜1000℃として1〜10時間保持した後、温度を1300℃〜1380℃として3〜5時間保持することによって、焼結体を得ることができる。得られた焼結体の流出側の端面(OF)側で封止材3bが封止する部分ができるように市松模様にマスキングし、焼結体の流出側の端面(OF)側をスラリーAまたはスラリーBに浸漬する。ここで、スラリーAは、硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる粉末をスラリーBよりも多く含有していることから、焼結体の流出側は、スラリーAに浸漬することが好適である。
【0072】
そして、スラリーAまたはスラリーBに焼結体の流出側を浸漬した状態で、流入側の端面(IF)から撥水性樹脂がコーティングされたピンを挿入し、ピンの先端部の位置を調節した後、常温にて乾燥し、封止材3bを形成する。封止材3bを形成した後、ピンを抜き、上述した作業と同じ作業を焼結体の流入側でも行ない、封止材3aを形成する。
【0073】
封止材3aおよび3bを形成し、電気炉またはガス炉等の焼成炉を用い、焼結体を1250℃〜1300℃として再度焼成することによって、本発明のハニカム構造体1を得ることができる。
【0074】
さらに、隔壁4の壁面4aに触媒を担持するハニカム構造体1を得るには、上述した製造方法によって得られたハニカム構造体1を、触媒となる、例えば、ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウムおよび白金等の白金族金属の可溶性の塩と、ポ
リビニルアルコール等のバインダーと水とからなるスラリーに浸漬させた後、温度を100
℃以上150℃以下で1時間以上48時間以下保持することによって乾燥すればよい。
【0075】
ここで、可溶性の塩としては、例えば、硝酸パラジウム(Pd(NO),硝酸ロジウム(Rh(NO)),塩化ルテニウム(RuCl),塩化イリジウム酸(HIrCl・nHO),塩化白金酸(HPtCl・nHO)およびジニトロジアンミン白金(Pt(NO(NH)等があり、担持させようとする触媒に応じてこれら可溶性の塩から選べばよい。また、不純物の混入を防ぐため、水はイオン交換水であることが好適である。
【0076】
そして、乾燥させた後、400℃以上600℃以下で1時間以上10時間以下保持することによって、触媒が隔壁4の壁面4aに担持してなるハニカム構造体1を得ることができる。
【0077】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0078】
まず、酸化アルミニウムの粉末を30質量%,酸化第二鉄の粉末を14質量%,酸化マグネシウムの粉末を10質量%および酸化チタンの粉末を36質量%として、これら粉末を調合した調合原料を水とともに混合したスラリーを噴霧乾燥法によって乾燥し、平均粒径が175
μmである顆粒を得た。ここで、酸化アルミニウム,酸化第二鉄,酸化マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末は、いずれも純度が99.5質量%の粉末を用いた。
【0079】
次に、得られた顆粒を大気雰囲気中、温度を1450℃として、3時間で仮焼することにより、元素Ti,Al,MgおよびFeが互いに固溶した擬ブルッカイト型の結晶からなる仮焼粉末を得た。
【0080】
この仮焼粉末をASTM E 11−61に記載されている粒度番号が200のメッシュの篩い
に通すことによって、粒径が74μm以下に分級された仮焼粉末を得た。そして、この分級された仮焼粉末の一部を取り出し、この一部の仮焼粉末100質量部に対して、添加量が2.5質量部である、平均粒径が2μmの酸化珪素の粉末、種類および添加量が表1に示される、平均粒径が2.5μmの各添加材の粉末および添加量が7質量部であるポリエチレン樹脂
を添加した後、さらに可塑剤,増粘剤,滑り剤および水等を加え、万能攪拌機を使ってスラリーAを作製した。そして、このスラリーAを、混練機を用いて混練して、可塑化した杯土Aを得た。
【0081】
また、残りの仮焼粉末100質量部に対して、添加量が2.5質量部である、平均粒径が2μmの酸化珪素の粉末、種類および添加量が表1に示される、平均粒径が2.5μmの各添加
材の粉末および添加量が7質量部であるポリエチレン樹脂を添加した後、さらに可塑剤,増粘剤,滑り剤および水等を加え、万能攪拌機を使ってスラリーBを作製した。そして、このスラリーBを、混練機を用いて混練して、可塑化した杯土Bを得た。
【0082】
次に、成形体の外径を決定する内径が250mmであり、ハニカム構造体1の隔壁4を形
成するためのスリットを有する成形型が装着されたプランジャー式の縦型押出成形機に杯土A,杯土Bを順次投入し、圧力を加えてハニカム状に成形し、乾燥させてから、杯土Aからなる部分と杯土Bからなる部分の長さ(図1に示すA軸方向の長さ)が同じになるように切断して、流出側が杯土Aからなり、流出側が杯土Bからなる成形体を得た。
【0083】
そして、電気炉に成形体を配置した後、酸化雰囲気中、温度を1380℃として5時間保持することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の流出側の端面(OF)で封止材3bが
封止する部分ができるように市松模様にマスキングし、焼結体の流出側の端面(OF)側をスラリーAに浸漬した。
【0084】
そして、スラリーAに焼結体の流出側を浸漬した状態で、撥水性の樹脂が被覆された先端部を備え、この先端部が平坦に形成されたピンを、流入側の端面(IF)から封止材3bを形成する流通孔2に挿入して、ピンの先端部の位置を調節して、封止材3bの厚みが2.5mmとなるようにした後、流出側で流通孔2に浸入したスラリーAを常温にて乾燥さ
せることによって、成形体の流出側の封止材3bを形成した。そして、ピンを抜き、上述の作業と同じ作業を流入側の端面(IF)側でも行ない、成形体の流入側の封止材3aを形成した。
【0085】
そして、電気炉を用いて成形体を、温度を1300℃として、2時間保持して、流入側の端面(IF)および流出側の端面(OF)がそれぞれ図4(a),図4(b)に示されるハニカム構造体である試料No.1〜15を得た。
【0086】
なお、試料No.1〜15は、いずれも外径および軸方向Aの長さがそれぞれ144mm,156mmであって,軸方向Aに対して垂直な断面における流通孔2の単位面積当たりの個数が300CPSIであるハニカム構造体1とした。
【0087】
そして、流通孔2の流入側および流出側のそれぞれを形成する隔壁4に含まれる添加材は蛍光X線分析法を用いてその含有量を求めた。その値を表1に示す。
【0088】
そして、別途各試料の流入側の端面(IF)をそれぞれディーゼル微粒子発生装置(図示しない)に接続した後、この装置から微粒子を含む、温度25℃の乾燥空気を単位時間当たりの流量を2.27Nm/分として各試料に向かって噴射して、ハニカム構造体の体積0.001mに対して、微粒子を12g捕集させた。
【0089】
そして、ハニカム構造体の流入側の端面(IF)側に配置された電気ヒータ(図示しない)を用い、捕集された微粒子を燃焼除去することによってハニカム構造体を再生した。
【0090】
再生条件は、流入側の端面(IF)付近における燃焼温度および燃焼時間をそれぞれ1200℃,10分として、ハニカム構造体に空気を供給し、この空気の単位時間当たりの流量を1.0m/分とした。ハニカム構造体を再生した後、再度、上述した方法と同じ方法で、
各試料に、ハニカム構造体の体積0.001mに対して、微粒子を12g捕集させた。この捕
集および再生を1サイクルとして、このサイクルを繰り返し、再生した後に、隔壁を目視で観察し、クラックが初めて観察されたサイクル数を表1に示した。
【0091】
また、耐溶損性を評価するために、別途上述した方法で、体積0.001mに対して、微
粒子を12g捕集したハニカム構造体を大気雰囲気中で、1600℃で保持し、4時間経過した後、30分毎に隔壁を目視で確認し、溶損が始めて確認された時間を表1に示した。
【0092】
【表1】

【0093】
表1に示すように、試料No.1は、流入側および流出側とも硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる添加材を含んでいないことから、局部的な温度上昇が生じるとともに、燃焼した後に、比較的早く冷えたため、早い段階でクラックや溶損が観察されている。
【0094】
一方、本発明の試料No.2〜15は、少なくとも流出側に硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる添加材を含んでいることから、添加材の元素は、融点が1852℃以上と高いため、微粒子の燃焼時に隔壁の温度が上昇しても添加材は溶けにくく、しかも比熱容量が265J/(kg・K)以上と高いため、局部的な温度上昇が抑制
されるとともに、燃焼を終えても急激に冷えず、緩やかに冷えるので、隔壁4に溶損やクラックが生じにくくなっている。
【0095】
特に、試料No.3〜5および8〜15は、添加材が流入側よりも流出側に多く含まれていることから、温度上昇が生じやすい流出側の隔壁に、より溶損やクラックが生じにくいので、隔壁4全体を効率的に再生することができるといえる。
【0096】
また、試料No.3〜8は、隔壁4の流出側における添加材の含有量が5質量%以上なので、添加材の効果が比較的大きく、隔壁4に溶損やクラックがより生じにくい。また、隔壁4の流出側における添加材の含有量が30質量%以下なので隔壁自体の質量がほとんど増えないので、ハニカム構造体の質量増加による内燃機関の燃費の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0097】
1:ハニカム構造体
2,2a,2b:流通孔
3,3a,3b:封止材
4:隔壁
5:断熱材層
6:ケース
7:流入口
8:流出口
9:排気管
10:排気ガス処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿った壁面を有する通気性の隔壁により仕切られた複数の流通孔と、該複数の流通孔の流入側および流出側のそれぞれを交互に封止する封止材とを備えてなるハニカム構造体であって、前記隔壁はチタン酸アルミニウムを主成分とする焼結体からなり、少なくとも前記流出側に硼素,クロム,ジルコニウムおよびニオブの少なくとも1種からなる添加材を含んでいることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記添加材は、前記流入側よりも前記流出側に多く含まれていることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記隔壁の前記流出側における前記添加材の含有量は5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁の前記壁面に触媒を担持していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のハニカム構造体を備えていることを特徴とする排気ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206635(P2011−206635A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74587(P2010−74587)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】