説明

ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体、並びにパティキュレートフィルタ

【課題】被捕集物の捕集効率を向上させると共に、圧力損失を低減することが可能なハニカム構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、セラミックス粉末と孔形成剤とを含有する原料を成形して成形体を形成する工程と、当該成形体を焼成してハニカム構造体を製造する工程と、を備え、孔形成剤が、成形体を焼成する焼成温度以下で消失する素材によって形成された粉体であり、当該粉体が、小粒径粉体と大粒径粉体とを混合して得られ、小粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径が、5〜20μmであり、大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径が、30μm以上であり、大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が90%である90%粒径が、80μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体、並びにパティキュレートフィルタに関する。詳しくは、本発明は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のすす等の微粒子を捕集することにより排ガスの浄化を達成するパティキュレートフィルタ、並びに当該パティキュレートフィルタ等のセラミックスフィルタとして好適に使用されるハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被捕集物を含む流体から当該被捕集物を除去するためのセラミックスフィルタとして、内燃機関から排出される排ガスを浄化するための排ガスフィルタ、飲食物の濾過等に用いる濾過フィルタ、ガス成分を選択的に透過させるための選択透過フィルタなどが知られている。例えば、現在、内燃機関であるディーゼルエンジンなどでは、排ガスに含まれるすす等の微粒子(パティキュレート)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタとして、筒状に形成されたセラミックス製のハニカム構造体が一般的に使用されている。このようなパティキュレートフィルタでは、ハニカム構造体の両軸端部の開口部を交互に封口することにより、すすを捕集する機能をハニカム構造体に付与している(下記特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、図5(A)、(B)に示すように、セラミックス製のハニカム構造体100は、当該ハニカム構造体100を軸方向に貫通する複数の貫通孔(以下、場合により「セル」という)105を備えており、隣接する貫通孔105は、隔壁(壁面)101により仕切られている。ハニカムを形成する隔壁101は、当該隔壁101の内部を気体が通過できるように形成されている。ハニカム構造体100の各貫通孔105のいずれか一方の軸端の開口は、封口材106によって封口されている。そして、ハニカム構造体100における同じ軸端では、図5に示すように、封口されている一つのセル105aに隣接するセル105bが開口状態となるように各セルが形成されている。つまり、ハニカム構造体100を軸端側から見ると、封口されているセル105aが、千鳥配置となるように配設されている(図5(A)参照)。
【0004】
ハニカム構造体100がかかる構成を有している場合、ハニカム構造体100がパティキュレートフィルタとして以下のように機能して排ガスが清浄化される。
まず、清浄化したい排ガスGは、パティキュレートフィルタに対してその軸方向の一端(図5(B)では左端)から供給される。この場合、排ガスGは、封口されていないセル105b(流入側セル105b)からパティキュレートフィルタに流入する。これらの流入側セル105bの他端は封口されているため、排ガスGは隔壁101の内部を通って、隣接するセル105a(排出側セル105a)に流入する。この排出側セル105aにおけるパティキュレートフィルタの軸方向の他端(図5(B)では右端)が開口しているので、排ガスGは、排出側セル105aの当該他端から流出する。つまり、パティキュレートフィルタでは、隣接するセルを区切る隔壁101がフィルタとして機能し、排ガスGに含まれているすす等を隔壁101によって捕捉できるため、排ガスGを清浄化することができる。そして、捕集されたすすは、ハニカム構造体100を燃焼することにより除去される。
【0005】
上記のごときパティキュレートフィルタでは、隔壁101が多孔質となっている。そのため、すすを隔壁101によって捕捉できるのであるが、すすの捕集効率を高める上では、隔壁101の気孔率が高く且つ隔壁101の気孔が小さいことが好ましい。
一方、パティキュレートフィルタの隔壁101の気孔が小さい場合(気孔が細かい場合)、排ガスGが隔壁101を通過する際の圧力損失が大きくなる。つまり、パティキュレートフィルタとしての圧力損失が大きくなる。この場合、内燃機関の性能低下につながるため、パティキュレートフィルタの圧力損失を小さくすることが好ましい。パティキュレートフィルタの圧力損失を小さくする上では、パティキュレートフィルタの隔壁101の気孔が大きい方が好ましいが、すすの捕集効率が低下する。
つまり、パティキュレートフィルタの隔壁101は、すすの捕集効率の向上と圧力損失の低減という、互いに相反する要求を満たすことができるように、隔壁101に気孔を形成しなければならない。
【0006】
上述したような相反する要求を満たすような気孔を形成することを目的とした技術が下記特許文献2、3に提案されている。
【0007】
特許文献2では、化学組成がSiO245〜55重量%、Al2333〜42重量%、MgO12〜18重量%よりなるコージェライトを主成分とするハニカム構造体であって、25〜800℃の間における熱膨張係数が0.3×10−6/℃以下であり、気孔率が55〜80%であり、平均細孔径が25〜40μmであり、且つ隔壁表面の細孔が5〜40μmの小孔と40〜100μmの大孔とからなり、上記小孔の数は上記大孔の数の5〜40倍であるものが提案されている。
この特許文献2には、水酸化アルミニウム粒子として、粒径が0.5〜3μmの小粒子と粒径が5〜15μmの大粒子とが他の粒径の粒子に比べて多く存在しているものを使用する旨や、小粒子が主に0.3〜0.7μmの孔を形成し、大粒子が主に3〜7μmの孔を形成する旨が記載されている。
そして、特許文献2には、上記小粒子に対する上記大粒子の重量配合比を5/95〜95/5の範囲で適宜選択することによって,隔壁表面の細孔における上記特定の大きさの小孔と大孔との割合を特定範囲内に規制することにより、高気孔率であり且つ平均細孔径が大径であっても、すす等の捕集率を高く維持することができる旨が記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、ディーゼルパティキュレートフィルタの基体として用いられる炭化ケイ素質多孔体であって、気孔直径40〜50μmの大径の気孔が、気孔直径5〜20μmの小径の気孔によって連結された、アリの巣状の気孔構造を有するものが提案されている。
この特許文献3には、骨材としての炭化ケイ素と、ケイ素源としての窒化ケイ素と、炭素源としての炭素質固体とを有する原料混錬物を成形し焼成することによって炭化ケイ素質多孔体が製造される旨が記載されている。特許文献3には、焼成工程において、ケイ素源としての窒化ケイ素と、炭素源としての炭素質固体とが反応して炭化ケイ素が生成し、骨材としての炭化ケイ素を取り囲むように反応焼結する旨が記載されている。
また、特許文献3には、マトリックス中に散在する炭素質固体の燃焼跡に形成された大径の気孔がマトリックス中の小さな気孔によって連結されて、アリの巣状の気孔構造が形成される旨が記載されている。
そして、特許文献3には、小径の気孔と大径の気孔とが複雑に連結して、アリの巣状の気孔構造を形成していることにより、すす等の捕集効率が極めて高いと同時に、圧力損失の上昇が抑制される旨が記載されている。
【0009】
このように特許文献2の技術では、隔壁表面の細孔における特定の大きさの小孔と大孔との割合を制御しているが、微粒子捕集機能および圧力損失は、隔壁表面の状態だけでなく隔壁内部の状態の影響を受ける。しかし、特許文献2の技術では、隔壁内部における気孔の状態を制御していないため、所望の微粒子捕集機能および圧力損失を有するハニカム構造体を得ることは難しい。
【0010】
一方、特許文献3には、大径の気孔をマトリックス中の小径の気孔によって連結して、隔壁内部にアリの巣状の気孔構造を形成する旨が記載されている。しかし、小径の気孔の気孔径が大きくなると、微粒子捕集機能を十分に発揮できなくなり、逆に、小径の気孔の気孔径が小さくなると、圧力損失が大きくなってしまう。そして、特許文献3の技術において大径の気孔を連結する小径の気孔は、マトリックス中に自然に形成される気孔であるため、小径の気孔の気孔径を制御することは困難である。したがって、特許文献3の技術においても、隔壁内部における小径の気孔の状態を制御することが困難であるため、所望の微粒子捕集機能および圧力損失を有する炭化ケイ素質多孔体を得ることは難しい。
【0011】
つまり、特許文献2、3の技術では、いずれも隔壁内部における気孔の状態を制御することが困難であり、微粒子等の被捕集物の捕集効率を向上させると共に、圧力損失を低減することが可能なハニカム構造体や炭化ケイ素質多孔体を得ることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−270755号公報
【特許文献2】特開平9−77573号公報
【特許文献3】特開2009−292709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、隔壁内部における気孔の状態を制御することにより、被捕集物の捕集効率を向上させると共に、圧力損失を低減することが可能なハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体、並びにパティキュレートフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係るハニカム構造体の製造方法は、セラミックス粉末と孔形成剤とを含有する原料を成形して成形体を形成する工程と、当該成形体を焼成してハニカム構造体を製造する工程と、を備え、前記孔形成剤が、前記成形体を焼成する焼成温度以下で消失する素材によって形成された粉体であり、当該粉体が、小粒径粉体と大粒径粉体とを混合して得られ、前記小粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径が、5〜20μmであり、前記大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径が、30μm以上であり、前記大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が90%である90%粒径が、80μm以下であることを特徴とする。
第2発明に係るハニカム構造体の製造方法は、25μm以下の粒径を有する粉体の合計質量が、前記孔形成剤の全質量に対して30〜80%であることを特徴とする。
第3発明に係るハニカム構造体の製造方法は、前記原料における前記孔形成剤の含有量が、前記セラミックス粉末100質量部に対して1〜40質量部であることを特徴とする。
第4発明に係るハニカム構造体の製造方法は、前記大粒径粉体の中心粒径を前記小粒径粉体の中心粒径で除した値が2.0以上であることを特徴とする。
第5発明に係るハニカム構造体の製造方法は、前記小粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が10%である10%粒径と前記小粒径粉体の中心粒径との差を当該小粒径粉体の中心粒径によって除した値が0.7よりも小さく、前記大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が10%である10%粒径と前記大粒径粉体の中心粒径との差を当該大粒径粉体の中心粒径によって除した値が0.7よりも小さいことを特徴とする。
第6発明に係るハニカム構造体の製造方法は、前記大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が10%である10%粒径が、前記小粒径粉体の中心粒径よりも大きいことを特徴とする。
第7発明に係るハニカム構造体の製造方法は、前記セラミックス粉末の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径が、前記大粒径粉体の中心粒径よりも小さいことを特徴とする。
(ハニカム構造体)
また、本発明は、上記製造方法により得られるハニカム構造体も提供する。
第8発明に係るハニカム構造体は、複数の隔壁を有するハニカム構造体であって、前記隔壁のX線CT分析結果に基づいて前記隔壁中に存在する気孔の体積を算出した場合において、全気孔の合計体積に対する気孔径5〜25μmである気孔の合計体積の割合が10%以上であり、全気孔の合計体積に対する気孔径50〜100μmである気孔の合計体積の割合が15〜30%であることを特徴とする。
第9発明に係るハニカム構造体は、全気孔の合計体積に対する気孔径100μm以上である気孔の合計体積の割合が1%以下であることを特徴とする。
第10発明に係るハニカム構造体は、前記隔壁の気孔率が30〜70体積%であり、前記隔壁の平均気孔径が5〜25μmであることを特徴とする。
第11発明に係るハニカム構造体は、チタン酸アルミニウムを含有することを特徴とする。
第12発明に係るハニカム構造体は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの含有量が85〜99質量%であり、アルミノケイ酸塩の含有量が1〜5質量%であり、酸化アルミニウムの含有量が5質量%以下であり、二酸化チタンの含有量が5質量%以下であることを特徴とする。
(パティキュレートフィルタ)
第13発明に係るパティキュレートフィルタは、上記ハニカム構造体を有し、前記隔壁の平均厚さが0.1〜0.5mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明では、成形体を焼成する際に孔形成剤が消失することにより、孔形成剤が消失した箇所に気孔が形成される。第1発明では、孔形成剤が小粒径粉体と大粒径粉体とを混合して得られるため、大径の気孔間が小径の気孔によって連結された気孔群をハニカム構造体の隔壁中に形成することができる。さらに、小粒径粉体の中心粒径が5〜20μmであることから、小径の気孔をある程度の大きさに維持できるため、微粒子等の被捕集物を捕捉する効率を高く維持しつつ、圧力損失が大きくなることを防ぐことができる。また、大粒径粉体の中心粒径が30μm以上であり、且つ、大粒径粉体の90%粒径が80μm以下であることから、圧力損失を低く抑えつつ被捕集物の漏れの発生を防ぐことができる。以上により、第1発明によれば、被捕集物の捕集効率を向上させると共に、圧力損失を低減することができる。
第2発明によれば、大径の気孔同士を連結する小径の気孔の割合を適切に調整することができるため、圧力損失を更に低く抑えつつ被捕集物の漏れの発生を更に防ぐことができる。
第3発明によれば、隔壁中の気孔率を適切な値に調整することができるため、大径の気孔同士を連結する小径の気孔の割合を適切に調整することができる。これにより、圧力損失を更に低く抑えつつ被捕集物の漏れの発生を更に防ぐことができる。
第4発明によれば、大径の気孔の気孔径と小径の気孔の気孔径との差をある程度大きく維持できるため、大径の気孔における被捕集物の捕集効率を更に高く維持することができる。
第5発明によれば、大径の気孔の気孔径と小径の気孔の気孔径との差をある程度大きく維持できるため、大径の気孔における被捕集物の捕集効率を更に高く維持することができる。さらに、隔壁中に形成されている大径の気孔の気孔径および小径の気孔の気孔径のそれぞれをある程度揃えることができる。これにより、隔壁の全面にわたって、気孔を均一に形成させることができる。
第6発明によれば、大粒径粉体に含まれる小径の粉体の量が少ないことから、大径の気孔の割合と小径の気孔の割合をある程度の範囲に維持することができる。これにより、小径の気孔からなる狭い流路が過剰に形成されることを防ぐことができるため、ハニカム構造体の圧力損失が増加することを更に抑えることができると共に、局所的な被捕集物の堆積を抑制することができる。
第7発明によれば、セラミックス粉末の平均粒径が小粒径粉体の中心粒径よりも小さいため、孔形成剤が偏在することを防ぐことができる。この場合、隔壁に均一な気孔群を形成しやすくなることから、ハニカム構造体内における被捕集物の捕集効率や圧力損失を均一にすることができる。
(ハニカム構造体)
第8発明によれば、ハニカム構造体の隔壁中に適切な構造の気孔群が形成されているため、被捕集物を捕捉する効率を高く維持しつつ、圧力損失を低く維持することができる。
第9発明によれば、気孔径が大きすぎる気孔が少ないため、被捕集物の漏れを更に抑制することができる。
第10発明によれば、隔壁の気孔率が30〜70体積%であり且つ隔壁の平均気孔径が5〜25μmであることにより、内燃機関からの排ガス中に含まれる50〜100nmの粒子等の被捕集物を効率的に捕集できる。
第11発明によれば、ハニカム構造体がチタン酸アルミニウムを含有しているため、ハニカム構造体の耐熱衝撃性に優れており、捕集した微粒子等を燃焼させた場合であっても、その発熱によってハニカム構造体が破損しにくいという利点が得られる。
第12発明によれば、材料が適切な組成となっているため、耐熱性や機械的強度を向上させることができる。
(パティキュレートフィルタ)
第13発明によれば、隔壁の平均厚さが0.1〜0.5mmであるため、高いすす捕集効率と低い圧力損失を更に高度に両立することができる。さらに、捕集したすす等の微粒子(パティキュレート)を燃焼させたときの吸熱や、室温での発熱が起こりにくい。よって、ディーゼルエンジン等の内燃機関からの排ガス中の微粒子を捕集するパティキュレートフィルタとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は、本発明のハニカム構造体における隔壁の内部構造の概略説明図であり、(B)、(C)は、X線CT分析を説明するための概略説明図である。
【図2】孔形成剤における大粒径粉体および小粒径粉体の粒度分布プロファイルの一例を模式的に示した図である。
【図3】(A)は、中空片の概略説明図であり、(B)は、圧力損失測定の概略説明図であり、(C)は、すす漏れ試験の概略説明図である。
【図4】(A)は、X線CT測定で得られた気孔径に対する気孔体積の分布を示したグラフであり、(B)は、気孔体積の分布表である。
【図5】ハニカム構造体の概略説明図であって、(A)は正面図であり、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[ハニカム構造体]
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明のハニカム構造体は、微粒子を含む気体から微粒子を捕集して除去するフィルタに使用することが可能であり、ハニカム構造体の隔壁における気孔の状態を、上記気体に含まれる微粒子を効率よく捕集できるように調整したことを特徴としている。
【0018】
本発明のハニカム構造体は、とくに、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関から排出される排ガスを浄化するパティキュレートフィルタに使用した場合に、排ガス中のすす等の微粒子(例えば0.1〜0.3μm程度の粒子)を効率よく捕集することができるものである。
そして、本発明のハニカム構造体をパティキュレートフィルタとして使用する場合には、隔壁の平均厚さ(セル壁厚)が0.1〜0.5mmであることが好ましい。かかる隔壁の厚さとすれば、高いすす捕集効率と低い圧力損失とを更に高度に両立できる上に、捕集したすす(パティキュレート)を燃焼させたときの吸熱や、室温での発熱が起こりにくい、という利点が得られる。隔壁の「平均厚さ」とは、隣接する一対の貫通孔を任意に10箇所選択した場合における、それぞれの貫通孔間における隔壁の厚みの平均値をいう。
なお、本発明のハニカム構造体は、内燃機関から排出される排ガスを浄化するフィルタ以外にも、被捕集物を含む流体(例えば気体や液体)から被捕集物を除去するために用いることが可能である。例えば、本発明のハニカム構造体は、焼却炉や石油精製設備、外燃機関などから排出される排気ガスの後処理装置にも使用できる。
【0019】
(ハニカム構造体の構造)
つぎに、本発明のハニカム構造体の構造について説明する。
本発明のハニカム構造体100は、筒状に形成された部材であって、複数の隔壁101によって分離されていると共にハニカム構造体100を軸方向に貫通する複数の貫通孔105を備えている(図5参照)。複数の貫通孔105のうちの一部のセル(貫通孔)105aの一端及び複数の貫通孔105のうちの残部のセル(貫通孔)105bの他端は、封口材106により封口されている。
このハニカム構造体100において、複数の貫通孔105を分離する複数の隔壁101は、気体が隔壁101を透過できるような構造を有している。具体的には、この隔壁101内には、多数の気孔が形成されており、この多数の気孔が互いに連通して、気体を通過し得る多数の流通経路が形成されている。
【0020】
そして、図1(A)に示すように、隔壁101内に形成されている多数の流通経路10は、流通経路10内を気体が通過するときに、その気体に含まれる、上述したような微粒子等の被捕集物を効率よく捕集できるような構造となっている。
かかる被捕集物を効率よく捕集できるような構造とは、隔壁101に対してX線CT分析を行った結果に基づいて隔壁101中に存在する気孔の体積を算出した場合において、全気孔の合計体積に対する気孔径5〜25μmである気孔(小径気孔)の体積割合(合計体積の割合)が10%以上であり、全気孔の合計体積に対する気孔径50〜100μmである気孔(大径気孔)の体積割合(合計体積の割合)が15〜30%となるような構造である。なお、本明細書において、「全気孔の合計体積」とは、X線CT分析により検出し得る全気孔の合計体積を意味する。
【0021】
隔壁101が上記構造を有している場合、図1(A)に示すように、隔壁101内における大径気孔12が、大径気孔12よりも気孔径が小さい気孔(小径気孔や、中間的な大きさの気孔)によって連結されるように気孔が存在する状態となる。さらに、隔壁101が上記構造を有している場合、隔壁101の両面間をつなぐ流通経路10に、直径25μm以下の小径気孔が隔壁101内に形成されるように気孔が位置すると考えられる。
【0022】
被捕集物を含む流体(例えば、微粒子を含む気体)を上記のごとき隔壁101に流した場合、流通経路10における大径気孔12間の小径気孔(経路)11では気孔径が狭くなっているため、被捕集物が壁面と衝突しやすく、被捕集物が壁面に付着して捕捉されるものと考えられる。
一方、小径気孔11から大径気孔12に流体が流入すると、気孔径が広くなることにより流体の速度が低下し、大径気孔12の内壁に被捕集物が付着し易いものと考えられる。
また、流通経路10中に大径気孔12が存在していることにより、流通経路10の全体が小径気孔11のみによって形成されている場合に比べて、流体が流通する経路が被捕集物の捕捉後も維持される結果、圧力損失を小さくすることができる。
つまり、本発明のハニカム構造体では、隔壁101中の気孔の状態が上記のごとき状態となっていることにより、被捕集物の捕集効率を極めて高くすることができると同時に、圧力損失の上昇も抑制することができる。
【0023】
また、流通経路10中に大径気孔12が存在することによって圧力損失の上昇は抑えることができるが、気孔径が非常に大きい大径気孔12が多く存在すると、流通経路10において、被捕集物の漏れが生じやすくなる傾向がある。
しかし、X線CT分析の結果に基づいて気孔の体積を算出した場合において、隔壁101中に存在する全気孔の合計体積に対して、気孔径100μm以上である気孔の体積割合(合計体積の割合)が1%以下であると、気孔径が大きすぎる大径気孔12の存在量が少ないため、被捕集物の漏れが生じくいという利点が得られる。
【0024】
そして、隔壁101の気孔率(開気孔率)および気孔径(細孔径)を、公知の水銀圧入法による測定結果に基づいて算出した場合に、気孔率が30〜70体積%であり、平均気孔径(平均細孔直径)が5〜25μmであれば、被捕集物の捕集効率を更に向上させることが可能である。この場合、隔壁101の内部構造が、エンジン等の内燃機関から排出される平均粒子径10nm〜1μmのすす等の被捕集物を捕集する用途に更に好ましい構造となる。
【0025】
(X線CT分析における気孔径および気孔体積の算出)
隔壁101のX線CT分析を行うことにより、隔壁101中の気孔の分布、つまり、隔壁101中の流通経路10の形状が3次元データとして得られる。そして、上述した気孔の体積および気孔径は、この3次元データに基づいて算出することができる。
具体的には、図1(B)に示すように、大径気孔12と小径気孔11とが連結された流通経路10の形状がX線CT分析を行うことにより3次元データとして得られる。そして、この3次元データにおいて小径気孔11の気孔径(R11)、および大径気孔12の気孔径(R12)を以下のように定義する。
流通経路10のうち、近接する大径気孔12の間に位置する小径気孔11(ハッチング部分A)を画像認識して、小径気孔11の容積V11を算出する。そして、この容積V11と同等の容積VD11を有する真球状の球体を求め、得られた球体の直径D11を小径気孔11の気孔径R11として定義する(図1(C))。同様に、流通経路10のうち、近接する小径気孔11の間に位置する大径気孔12(ハッチング部分B)を画像認識して、大径気孔12の容積V12を算出する。この容積V12と同等の容積VD12を有する真球状の球体を求め、得られた球体の直径D12を大径気孔12の気孔径R12として定義する。
【0026】
(ハニカム構造体の材料)
また、本発明のハニカム構造体は、種々の材料から形成することができるが、とくに、チタン酸アルミニウムを含有する材料によって形成されていることが好ましい。
【0027】
まず、ハニカム構造体をすす等の微粒子を捕集するフィルタとして使用した場合、微粒子が隔壁101上や隔壁101中(つまり、流通経路10内)に一旦堆積されると、堆積された微粒子と同一箇所に、新たな微粒子が優先的に積み重なるように堆積されると考えられている。この場合、ハニカム構造体を再生燃焼させたときに、微粒子が大量に堆積された部分では発熱量が大きく熱的応力が集中する結果、隔壁101の熱破損や溶損が引き起こる可能性がある。このため、ハニカム構造体は、ある程度の期間使用すると、微粒子が大量に堆積される前に、再生燃焼が行われる。
ここで、ハニカム構造体がチタン酸アルミニウムを含有する材料によって形成されている場合には、ハニカム構造体の耐熱衝撃性や機械的強度を高くすることができる。このため、ハニカム構造体中に大量に微粒子が堆積している状態でハニカム構造体を再生燃焼させた場合であっても、その際に発生する熱に起因する熱衝撃等によってハニカム構造体が損傷することを抑制することができる。
これにより、少量の微粒子が堆積する度にハニカム構造体を再生燃焼させなくてもよくなる。つまり、ハニカム構造体を頻繁に再生燃焼させる必要がないことから、微粒子が大量に堆積するまで連続してハニカム構造体を使用することが可能となる。
この場合、ハニカム構造体の圧力損失が所定の値以上となるまで長期間継続してハニカム構造体をフィルタとして使用することができると共に、その後再生燃焼してハニカム構造体を再利用することができる。これにより、メンテナンス性を向上させることができると共に、微粒子の捕集効率を更に向上させることができる。
【0028】
本発明のハニカム構造体は、主にチタン酸アルミニウム系結晶からなる多孔性のセラミックスによって形成されていることが好ましい。「主にチタン酸アルミニウム系結晶からなる」とは、チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を構成する主結晶相がチタン酸アルミニウム系結晶相であることを意味する。チタン酸アルミニウム系結晶相は、例えば、チタン酸アルミニウム結晶相、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相などであってもよい。
【0029】
本発明のハニカム構造体は、チタン酸アルミニウム系結晶相以外の相(結晶相)を含んでいてもよい。このようなチタン酸アルミニウム系結晶相以外の相(結晶相)としては、チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体の作製に用いる原料由来の相などを挙げることができる。原料由来の相とは、より具体的には、本発明のハニカム構造体を後述する製造方法に従い製造する場合における、チタン酸アルミニウム系結晶相を形成することなく残存したアルミニウム源粉末、チタニウム源粉末および/またはマグネシウム源粉末由来の相である。
また、本発明のハニカム構造体は、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウムまたはチタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶パターンのほか、アルミナ、チタニアなどの結晶パターンを含んでいてもよい。
【0030】
ハニカム構造体を形成するための原料混合物がケイ素源粉末を含む場合、本発明のハニカム構造体(例えばチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体)は、ケイ素源粉末由来のガラス相を含んでいてもよい。ガラス相とは、SiO2が主要成分である非晶質相を指す。この場合、ガラス相の含有率は、5質量%以下であることが好ましく、また、2質量%以上であることが好ましい。ガラス相を5質量%以下含むことにより、パティキュレートフィルタなどのセラミックスフィルタに要求される細孔特性を充足するチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体が得られやすくなる。
【0031】
ハニカム構造体は、上述のとおりチタン酸アルミニウムを含有していることが好ましく、本発明のハニカム構造体の組成は、例えば、組成式:Al2(1−x)MgxTi(1+x)5で表すことができる。xの値は、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.03以上0.15以下であり、更に好ましくは0.03以上0.12以下である。なお、ハニカム構造体の組成は、上記組成に限定されない。また、ハニカム構造体は、原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0032】
また、ハニカム構造体は、ハニカム構造体の熱応力に対する耐久性を更に向上させることができるため、以下の組成を有していることが好ましい。
チタン酸アルミニウムマグネシウム : 85〜99質量%
アルミノケイ酸塩 : 1〜5質量%
酸化アルミニウム : 5質量%以下(0〜5質量%)
二酸化チタン : 5質量%以下(0〜5質量%)
なお、ハニカム構造体の組成は、上記組成に限定されない。
【0033】
[ハニカム構造体の製造方法]
つぎに、上述したような本発明のハニカム構造体の製造方法を説明する。
本発明のハニカム構造体は、セラミックス粉末と孔形成剤とを含む原料を成形して成形体を形成し、この成形体を焼成して製造される。本発明のハニカム構造体の製造方法では、原料に含まれる孔形成剤を所定の状態に調整することにより、上述したようなハニカム構造体を製造することができる。
【0034】
(製造方法の概略説明)
本発明のハニカム構造体の製造方法は、例えば成形工程、脱脂工程及び焼成工程をこの順に備えている。
成形工程では、まず、セラミックス粉末と孔形成剤とを混合した後に混練して原料混合物を調製し、この原料混合物を所定の形状の成形物、つまり、ハニカム構造を有する成形物に成形する。なお、原料混合物には、セラミックス粉末と孔形成剤以外に、種々の添加剤が混合される。原料混合物には、例えばバインダ、可塑剤、分散剤、溶媒などが添加剤として配合される。
ついで、脱脂工程において、成形物は、孔形成剤、有機成分などを除去するために脱脂される。
そして、焼成工程において、脱脂された成形物を公知の焼成炉によって焼成することにより、多孔質の隔壁を有する、本発明のハニカム構造体が製造される。
【0035】
そして、本発明のハニカム構造体の製造方法では、孔形成剤として、成形体を焼成する焼成温度以下で消失する素材によって形成されたものを使用する。
この場合、脱脂工程や焼成工程において、孔形成剤を含有する成形体が加熱されると、孔形成剤は燃焼などによって消滅する。これにより、孔形成剤が存在していた箇所に空間ができると共に、この空間同士の間に位置するセラミックス粉末が焼成の際に収縮することとなり、ハニカム構造体の隔壁101の構造を、気体等の流体を流すことができる流通経路10を有する構造とすることができる。
【0036】
原料混合物におけるセラミックス粉末に対する孔形成剤の含有量(混合割合)は、セラミックス粉末100質量部に対して、好ましくは1〜40質量部であり、より好ましくは5〜25質量部となるように調整されている。かかる含有量とすれば、隔壁101中の気孔率を適切な値に調整しやすくなるため、小径気孔11の割合を適切な値に調整しやすくなる。
【0037】
(原料の詳細な説明)
<孔形成剤>
本発明のハニカム構造体を製造する上で重要である、孔形成剤(造孔剤)について詳細に説明する。
【0038】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、ハニカム構造体の隔壁101に上述したような構造の流通経路10を形成するために、小粒径粉体と大粒径粉体とを混合して得られる粉体(混合粉体)を孔形成剤として使用している。
【0039】
図2は、孔形成剤における大粒径粉体および小粒径粉体の粒度分布プロファイルの一例を模式的に示した図である。
混合粉体に混合されている粉体の粒度分布は、大粒径粉体および小粒径粉体が下記の粒度分布を有するように調整されている。小粒径粉体を構成する粉体の粒径は、図2に示すように好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは5〜30μmである。小粒径粉体の中心粒径D50は、5〜20μmである。
なお、小粒径粉体の中心粒径D50とは、混合粉体に混合されている全ての小粒径粉体の合計質量に対して、粒径の小さい粉体から当該粉体の質量を積算した累積質量の割合が50%となる粒径を意味している。
小粒径粉体の粒径は、レーザ回折法によって求めた値である。
【0040】
一方、大粒径粉体を構成する粉体の粒径は、図2に示すように好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは20〜100μmである。大粒径粉体の中心粒径D50は、30μm以上であり、累積質量が90%となる大粒径粉体の粒径D90は、80μm以下である。大粒径粉体の中心粒径D50の上限値は、例えば45μmである。大粒径粉体の粒径D90の下限値は、例えば60μmである。
なお、大粒径粉体の中心粒径D50とは、混合粉体に混合されている全ての大粒径粉体の合計質量に対して、粒径の小さい粉体から当該粉体の質量を積算した累積質量の割合が50%となる粒径を意味している。
また、累積質量が90%となる大粒径粉体の粒径D90とは、混合粉体に混合されている全ての大粒径粉体の合計質量に対して、粒径の小さい粉体から当該粉体の質量を積算した累積質量の割合が90%となる粒径を意味している。
大粒径粉体の粒径は、小粒径粉体同様、レーザ回折法によって求めた値である。
【0041】
このような粒度分布を有する小粒径粉体と大粒径粉体とを含む混合粉体を孔形成剤として使用することにより、大粒径粉体が消失した箇所に大径気孔12を形成することができると共に、小粒径粉体が消失した箇所に小径気孔11を形成することができる。さらに、小粒径粉体は、大粒径粉体間に配置されるため、大径気孔12間が小径気孔11によって連結された気孔群(つまり、流通経路10)をハニカム構造体の隔壁101中に形成することができる。
【0042】
また、大粒径粉体の中心粒径D50が30μm以上であることから、大粒径粉体が消失することによって形成される大径気孔12として、ある程度以上の大きさ(例えば、50μm以上)の気孔を形成することができる。さらに、大粒径粉体の粒径D90が80μm以下であることから、気孔径が100μm以上であるような大きすぎる大径気孔12の存在量を少なくすることができる。そのため、流通経路10に大径気孔12が存在することによって圧力損失を低く抑えつつ、大径気孔12が存在しても被捕集物が隔壁101を透過してしまうことを防ぐことができる。
【0043】
一方、小粒径粉体の中心粒径が5〜20μmであることから、小粒径粉体が消失することによって形成される小径気孔11をある程度の大きさに維持できる。つまり、流通経路10における大径気孔12間の小径気孔11の直径をある程度の大きさ(例えば、5〜25μm程度)に維持できる。この場合、大径気孔12間の小径気孔11がそれ程狭くないため、圧力損失が大きくなることを防ぐことができる上、大径気孔12間の小径気孔11が広すぎないため、被捕集物を捕捉する機能を高く維持することができる。
【0044】
(混合粉体の粒径分布について)
25μm以下の粒径を有する粉体の合計質量(図2におけるハッチング部分C及びハッチング部分Dの合計)は、全混合粉体の合計質量(孔形成剤の全質量)の30〜80%であるように、混合粉体全体が調整されていることが好ましい。25μm以下の粒径を有する粉体の合計質量が30%未満であると、流通経路10の径が大きくなるため、圧力損失は低くできるものの被捕集物の漏れが発生する可能性が高くなる傾向がある。一方、25μm以下の粒径を有する粉体の合計質量が80%を超えると、流通経路10の径が細くなると共に大径気孔12の存在量が少なくなり、圧力損失が大きくなる傾向がある。
よって、25μm以下の粒径を有する粉体の合計質量を全混合粉体の合計質量の30〜80%とすることが好ましく、かかる範囲とすれば、大径気孔12をつなぐ流通経路10を適切な径の流路とすることができるため、圧力損失を更に低く抑えつつ被捕集物の漏れの発生を更に防ぐことができる。
【0045】
(小粒径粉体と大粒径粉体の粒度分布について)
大粒径粉体の中心粒径D50を小粒径粉体の中心粒径D50で除した値(大粒径粉体のD50/小粒径粉体のD50)は、2.0以上であることが好ましい。当該値が2.0未満であると、小粒径粉体の中心粒径D50と大粒径粉体の中心粒径D50とが近すぎるものとなる。この場合、流通経路10において、大径気孔12の気孔径と大径気孔12間の小径気孔11の気孔径との差が小さくなることから、小径気孔11から大径気孔12に気体等の流体が流入する際の流速が充分に低下し難くなる傾向がある。この場合、流速が充分に低下しないことに起因して、大径気孔12において被捕集物を捕捉する機能が低下する傾向がある。
よって、大粒径粉体の中心粒径D50を小粒径粉体の中心粒径D50で除した値は、2.0以上であることが好ましく、かかる範囲とすれば、大径気孔12おける被捕集物の捕集効率を高く維持しやすくなる。なお、大粒径粉体の中心粒径D50を小粒径粉体の中心粒径D50で除した値の上限値は、例えば9.0(45μm/5μm)である。
【0046】
さらに、各粉体(小粒径粉体および大粒径粉体)は、中心粒径D50が互いにある程度離れていると共に、各粉体の粒度分布が狭くなるように調整されていることが好ましい。
この場合、大径気孔12の中心粒径D50と大径気孔12間の小径気孔11の中心粒径D50との差(図2のA2)をある程度大きく維持できるため、大径気孔12における被捕集物の捕集効率を高く維持しやすくなる。
さらに、隔壁101中に形成されている大径気孔12の気孔径をある程度揃えることができ、同様に、小径気孔11の気孔径(つまり、大径気孔12間の経路の径)をある程度揃えることができる。この場合、隔壁101中には多数の流通経路10が形成されるが、流通経路10の状態をある程度揃えることができる。つまり、いずれの流通経路10においても、気体等の流体の流れ易さをほぼ同じ状態とすることができることから、特定の流通経路10に流体が選択的に流れて、その流通経路10に被捕集物が大量に堆積されることを防ぐことができる。言い換えれば、隔壁101中に形成されている多数の流通経路10内に、満遍なく被捕集物を堆積させることができる。
よって、被捕集物が大量に堆積して、他の流通経路10に比べて内部の空間が狭くなった流通経路10が局所的に形成されることを防ぐことができるため、ハニカム構造体の圧力損失の上昇(悪化)を防ぎやすくすることができる。
【0047】
小粒径粉体及び大粒径粉体の粒度分布のプロファイルはとくに限定されないものの、小粒径粉体および大粒径粉体の粒度分布がそれぞれ狭くなっていることが好ましい。
例えば、小粒径粉体は、小粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が10%である10%粒径(D10)と小粒径粉体の中心粒径D50との差(図2のA1)を、小粒径粉体の中心粒径D50によって除した値((小粒径粉体のD50−小粒径粉体のD10)/小粒径粉体のD50)が0.7よりも小さくなるように調整される。なお、当該値の下限値は、例えば0.3である。
また、例えば、大粒径粉体は、大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が10%である10%粒径(D10)と大粒径粉体の中心粒径D50との差(図2のA3)を、大粒径粉体の中心粒径D50によって除した値((大粒径粉体のD50−大粒径粉体のD10)/大粒径粉体のD50)が0.7よりも小さくなるように調整される。なお、当該値の下限値は、例えば0.3である。
かかる小粒径粉体と大粒径粉体とを混合した混合粉体を孔形成剤として用いることにより、上述したように、流通経路10が隔壁101内の局所に集中して形成されることを防ぐことができ、ハニカム構造体の圧力損失の上昇(悪化)を防ぎやすくすることができる。
【0048】
そして、大粒径粉体の粒径D10は、小粒径粉体の中心粒径D50よりも大きいことが好ましい(図2参照)。
かかる状態となるように小粒径粉体および大粒径粉体を調整することにより、大粒径粉体に含まれる小径の粉体の量が少ないことから、小径気孔11が多数形成されることを防ぐことができる。これにより、大径気孔12間に狭い小径気孔11が過剰に形成されることを防ぐことができるため、ハニカム構造体の圧力損失が増加することを更に抑えることができる。そして、狭い小径気孔11に被捕集物が大量に堆積することによって生じる圧力損失の悪化も更に抑制することができる。
【0049】
(孔形成剤とセラミックス粉末との関係)
また、原料混合物における孔形成剤の含有量は、上述したように、セラミックス粉末100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましい。孔形成剤の含有量がかかる範囲に調整されていることにより、圧力損失を更に低く抑えつつ被捕集物の漏れの発生を更に防ぐことができる上、ハニカム構造体の強度を維持することもできる。なお、孔形成剤の含有量は、小粒径粉体の含有量と大粒径粉体の含有量との合計量を意味する。
とくに、孔形成剤の含有量は、セラミックス粉末100質量部に対して5〜25質量部であることがより好ましい。
孔形成剤の含有量が、セラミックス粉末100質量部に対して1質量部より少なくなると、隔壁101に形成される気孔(つまり、流通経路10)が少なくなるため、圧力損失が大きくなる可能性が高くなる。一方、孔形成剤の含有量が、セラミックス粉末100質量部に対して40質量部より多くなると、隔壁101に形成される気孔の割合が大きくなりすぎるため、被捕集物の漏れが発生する可能性が高くなる上、隔壁101の強度が弱くなってしまう可能性が高くなる。
よって、孔形成剤の含有量は、セラミックス粉末100質量部に対して1〜40質量部となるように調整されることが好ましく、セラミックス粉末100質量部に対して5〜25質量部となるように調整されることがより好ましい。
【0050】
とくに、孔形成剤における大粒径粉体の中心粒径D50が、セラミックス粉末の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径D50よりも大きくなるように(すなわち、セラミックス粉末の中心粒径D50が大粒径粉体の中心粒径D50よりも小さくなるように)セラミックス粉末及び孔形成剤を調整することにより、セラミックス粉末と孔形成剤とを混合したときにセラミックス粉末と孔形成剤を容易に均一に混合させることができる。これにより、成形体を形成したときに、孔形成剤が隔壁101中に偏在することを防ぐことができることから、隔壁101に均一な流通経路10を形成しやすくなり、ハニカム構造体内における被捕集物の捕集効率や圧力損失を均一にすることができる。なお、セラミックス粉末が複数種類の粉末を含む場合は、大粒径粉体の中心粒径D50が、いずれのセラミックス粉末の中心粒径D50よりも大きくなることが好ましい。
【0051】
(孔形成剤の素材)
上述した孔形成剤の材料は、後述する成形体を焼成する焼成温度以下で消失する素材であればとくに限定することなく使用できる。孔形成剤の材料としては、例えば、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;澱粉、ナッツ殻、クルミ殻、コーン等の植物系材料などを挙げることができる。上述した植物系材料のうち、澱粉としては、例えばトウモロコシ澱粉、大麦澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ポテト澱粉(馬鈴薯デンプン粉末)、豆澱粉、米澱粉、エンドウ澱粉、サンゴヤシ澱粉、カンナ澱粉等を挙げることができる。
【0052】
また、孔形成剤における大粒径粉体および小粒径粉体は、上述したような粒度分布および性質を有するものであれば、とくに限定されず、両粉体が全く別の異なる材料から形成されていてもよい。
しかし、両粉体が、粒度分布の異なると共に同じ材料から形成された物質である場合や、同じ材料ではないが前記成形体の焼成温度以下で消失する物質であれば、粉体が消失するタイミング等を調整しやすくなるため、適切な構造の流通経路10を形成しやすくなる。
一方、両粉体が全く別の異なる材料から形成されている場合でも、両粉体が消失する温度が大きく異なる場合には、焼失に伴う急な発熱を抑えることができるという利点が得られる。
【0053】
<セラミックス粉末>
本発明のハニカム構造体は、種々の材料から形成することができるが、上述したように、チタン酸アルミニウムを含有する材料によって製造することが好ましい。
以下では、本発明のハニカム構造体がチタン酸アルミニウムを含有する材料から製造される場合、つまり、ハニカム構造体がチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体である場合において使用される原料を説明する。
【0054】
(アルミニウム源粉末)
チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体であるハニカム構造体(以下では、単に「ハニカム構造体」という)の製造において用いられる原料混合物は、アルミニウム源粉末を含有する。このアルミニウム源粉末は、ハニカム構造体を構成するアルミニウム成分となる化合物の粉末である。アルミニウム源粉末としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)の粉末が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。なかでも、α型のアルミナが好ましく用いられる。
【0055】
本発明のハニカム構造体の製造に用いられるアルミニウム源粉末は、単独で空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0056】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩の具体例としては、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウム等のアルミニウム硝酸塩;炭酸アンモニウムアルミニウム等のアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。アルミニウム有機塩としては、例えば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0057】
また、アルミニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0058】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0059】
本発明のハニカム構造体の製造において、アルミニウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記のなかでも、アルミニウム源粉末としては、アルミナ粉末が好ましく、α型のアルミナ粉末がより好ましい。なお、アルミニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0061】
ここで、本発明のハニカム構造体の製造方法において使用するアルミニウム源粉末の、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)は、20μm以上60μm以下の範囲内であることが好ましい。アルミニウム源粉末のD50をこの範囲内に調整することにより、優れた多孔性を示すチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体が得られると共に、焼成収縮率をより効果的に低減させることができる。アルミニウム源粉末のD50は、より好ましくは30μm以上60μm以下である。
【0062】
(チタニウム源粉末)
本発明のハニカム構造体の製造方法において使用する原料混合物に含有されるチタニウム源粉末は、ハニカム構造体を構成するチタン成分となる化合物の粉末であり、かかる化合物としては、例えば酸化チタンの粉末が挙げられる。酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0063】
本発明のハニカム構造体の製造方法において用いられるチタニウム源粉末は、単独で空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、例えば、チタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
【0064】
チタニウム塩としては、具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタニウムアルコキシドとしては、具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0065】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、チタニウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記のなかでも、チタニウム源粉末としては、酸化チタン粉末が好ましく、酸化チタン(IV)粉末がより好ましい。なお、チタニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0066】
チタニウム源粉末の粒径は、特に限定されないが、チタニウム源粉末としては、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)が0.1〜25μmの範囲内であるものが用いられる。また、チタニウム源粉末としては、十分に低い焼成収縮率を達成するため、D50が1〜20μmの範囲内であるチタニウム源粉末を用いることが好ましい。なお、チタニウム源粉末は、バイモーダルな粒径分布を示すことがあるが、このようなバイモーダルな粒径分布を示すチタニウム源粉末を用いる場合においては、レーザ回折法により測定される、粒径が大きい方のピークを形成する粒子の粒径は、好ましくは20〜50μmの範囲内である。
【0067】
また、レーザ回折法により測定されるチタニウム源粉末のモード径は、特に限定されないが、0.1〜60μmの範囲内であるものをチタニウム源粉末として用いることができる。
【0068】
(アルミニウム源粉末とチタニウム源粉末とのモル比)
本発明のハニカム構造体の製造方法においては、原料混合物中におけるAl23(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末とのモル比(アルミニウム源粉末:チタニウム源粉末)は、35:65〜45:55の範囲内であることが好ましく、40:60〜45:55の範囲内であることがより好ましい。このような範囲内で、チタニウム源粉末をアルミニウム源粉末に対して過剰に用いることにより、原料混合物の成形体の焼成収縮率をより効果的に低減させることが可能となる。
【0069】
(マグネシウム源粉末)
また、本発明のハニカム構造体の製造方法において使用する原料混合物は、マグネシウム源粉末を更に含有していてもよい。原料混合物がマグネシウム源粉末を含む場合、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶を含む焼成体である。マグネシウム源粉末としては、マグネシア(酸化マグネシウム)の粉末のほか、単独で空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物の粉末が挙げられる。後者の例としては、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
【0070】
マグネシウム塩としては、具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0071】
マグネシウムアルコキシドとしては、具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。なお、マグネシウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0072】
マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いることもできる。このような化合物としては、例えば、マグネシアスピネル(MgAl24)が挙げられる。なお、マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いる場合、アルミニウム源粉末のAl23(アルミナ)換算量、および、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物粉末に含まれるAl成分のAl23(アルミナ)換算量の合計量と、チタニウム源粉末のTiO2(チタニア)換算量とのモル比が、原料混合物中において上記範囲内となるように調整される。
【0073】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、マグネシウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
マグネシウム源粉末の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるマグネシウム源粉末が用いられ、原料混合物の成形体の焼成収縮率を低減する観点からは、D50が3〜20μmの範囲内であるマグネシウム源粉末を用いることが好ましい。
【0075】
(アルミニウム源粉末とチタニウム源粉末に対するマグネシウム源粉末の混合割合)
本発明のハニカム構造体の製造方法において使用する原料混合物中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源粉末の含有量は、Al23(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量に対して、モル比で、0.03〜0.15であることが好ましく、0.03〜0.12であることがより好ましい。マグネシウム源粉末の含有量をこの範囲内に調整することにより、耐熱性がより向上されると共に、大きい気孔径および気孔率を有するチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を比較的容易に得ることができる。
【0076】
(ケイ素源粉末)
また、本発明のハニカム構造体の製造方法において使用する原料混合物は、ケイ素源粉末を更に含有していてもよい。ケイ素源粉末は、シリコン成分となってチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体に含まれる化合物の粉末であり、ケイ素源粉末の使用により、耐熱性がより向上されたチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を得ることが可能となる。ケイ素源粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)の粉末が挙げられる。
【0077】
また、ケイ素源粉末は、単独で空気中で焼成することによりシリカに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、例えば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットなどが挙げられる。なかでも、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。ケイ素源粉末として、長石とガラスフリットとの混合物からなる粉末を用いることも好ましい。
【0078】
ガラスフリットを用いる場合、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体の耐熱分解性をより向上させるという観点から、屈伏点が600℃以上のものをガラスフリットとして用いることが好ましい。本明細書において、ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analysis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0079】
上記ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸〔SiO2〕を主成分(全成分中50質量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ〔Al23〕、酸化ナトリウム〔Na2O〕、酸化カリウム〔K2O〕、酸化カルシウム〔CaO〕、マグネシア〔MgO〕等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrO2を含有していてもよい。
【0080】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、ケイ素源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
ケイ素源粉末の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるケイ素源粉末が用いられ、原料混合物の成形体の充填率をより向上させ、機械的強度のより高い焼成体を得るためには、D50が1〜20μmの範囲内であるケイ素源粉末を用いることが好ましい。
【0082】
(アルミニウム源粉末とチタニウム源粉末に対するケイ素源粉末の混合割合)
本発明のハニカム構造体の製造方法において使用する原料混合物がケイ素源粉末を含む場合、原料混合物中におけるケイ素源粉末の含有量は、Al23(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量100質量部に対して、SiO2(シリカ)換算で、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。なお、ケイ素源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0083】
(他の原料)
なお、本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記マグネシアスピネル(MgAl24)などの複合酸化物のように、チタニウム、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を構成成分とする化合物を原料粉末として用いることができる。この場合、そのような化合物は、それぞれの金属源化合物を混合した原料混合物と同じであると考えることができる。このような考えに基づき、原料混合物中におけるアルミニウム源原料、チタニウム源原料、マグネシウム源原料およびケイ素源原料の含有量が上記範囲内に調整される。
【0084】
また、本発明のハニカム構造体の製造方法において使用する原料混合物にはチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウム自体が含まれていてもよく、例えば、原料混合物の構成成分としてチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、該チタン酸アルミニウムマグネシウムは、チタニウム源、アルミニウム源およびマグネシウム源を兼ね備えた原料に相当する。
このようなチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムは、本発明の製造方法により得られたハニカム構造体から得られるものであってもよい。例えば、本発明の製造方法により得られたハニカム構造体が割れた場合において、損傷したハニカム構造体やその破片などを粉砕して使用することもできる。このようにして得られた粉末をチタン酸アルミニウムマグネシウム粉末とする。
【0085】
<その他の混合物>
本発明のハニカム構造体の製造方法においては、例えば、上述したようなセラミックス粉末と孔形成剤に加えて、バインダ、可塑剤、分散剤、溶媒などの有機成分(添加剤)が原料混合物に更に配合されてもよい。
【0086】
(バインダ)
上記バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコール等のアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の塩;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックスなどが挙げられる。バインダの添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下である。
【0087】
(可塑剤)
上記可塑剤としては、グリセリン等のアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩などが挙げられる。可塑剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常0〜10質量部であり、好ましくは1〜5質量部である。
【0088】
(分散剤)
上記分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常0〜20質量部であり、好ましくは2〜8質量部である。
【0089】
(溶媒)
また、上記溶媒としては、通常は水が用いられ、不純物が少ない点で、好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常10〜100質量部、好ましくは20〜80質量部である。
【0090】
(製造工程の説明)
本発明のハニカム構造体の製造方法では、成形工程、脱脂工程、焼成工程がこの順で行われる。以下では、本発明のハニカム構造体の製造方法における各工程の詳細を説明する。
【0091】
(成形工程)
本発明のハニカム構造体の製造方法において、成形に供される原料混合物は、孔形成剤、上記アルミニウム源粉末およびチタニウム源粉末、任意で使用されるマグネシウム源粉末およびケイ素源粉末などの無機成分、並びに、任意で使用される上記の各種有機成分(添加剤)を混練することにより得ることができる。すなわち、成形工程では、中心粒径が5〜20μmである小粒径粉体(第1の孔形成剤)と、中心粒径が30μm以上であり且つ90%粒径が80μm以下である大粒径粉体(第2の孔形成剤)と、セラミックス粉末とを少なくとも混合して原料混合物を得ることができる。このような原料混合物を用いることにより、全気孔の合計体積に対する気孔径5〜25μmである気孔の合計体積の割合を10%以上に調整すると共に、全気孔の合計体積に対する気孔径50〜100μmである気孔の合計体積の割合を15〜30%に調整することができる。
【0092】
本発明のハニカム構造体の製造方法においては、上記アルミニウム源粉末およびチタニウム源粉末、任意で使用されるマグネシウム源粉末およびケイ素源粉末などの無機成分、並びに、孔形成剤などを混練して得られた原料混合物を成形してセラミックス成形体を得た後、当該成形体を脱脂工程および焼成工程に付すことにより、チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を得る。成形してから焼成を行なうことにより、焼成により生成した多孔質性のチタン酸アルミニウム結晶の細孔形状が維持されたチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を得ることができる。
【0093】
なお、原料混合物を成形する方法はとくに限定されないが、例えば、一軸押出機により原料混合物を混練しながらダイから押出す、いわゆる押出成形法を採用することができる。
また、ダイから押出された成形体は、各貫通孔の一方の軸端の開口を封口してもよい。例えば、封口すべき開口に、上記原料混合物と同様の混合物を詰めてもよい。
さらに、原料混合物に添加剤として可塑剤を添加した場合、可塑剤の多くは、ダイから原料混合物を押出す際に、原料混合物とダイとの間の摩擦を低減する潤滑剤としても機能させることができる。例えば、上述した各可塑剤であれば、潤滑剤として機能させることができる。
【0094】
(脱脂工程)
本発明のハニカム構造体の製造方法において、成形されたセラミックス成形体は、焼成工程に付される前に、セラミックス成形体中(原料混合物中)に含まれる孔形成剤などを除去するための脱脂工程に付される。脱脂工程は、酸素濃度0.1%以下の雰囲気中で行われる。
なお、本明細書において酸素濃度の単位として用いられる「%」は、「体積%」を意味する。脱脂工程(昇温時)の酸素濃度を0.1%以下の濃度に管理することにより、有機物の発熱が抑えられ、脱脂後の割れを抑制することができる。脱脂工程が酸素濃度0.1%以下の雰囲気中で行われることにより、脱脂工程においては、孔形成剤などの有機成分の一部が除去され、残部が炭化されてセラミック成形体中に残存することが好ましい。このように、セラミックス成形体中に微量のカーボンが残存することで、成形体の強度が向上し、セラミックス成形体の焼成工程への仕込みが容易になる。そのような雰囲気としては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気や、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス雰囲気、真空中などが挙げられる。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよく、炭と一緒に蒸し込んで酸素濃度を低減させてもよい。
【0095】
脱脂工程の温度条件は、最高温度が700℃以上1100℃以下であることが好ましい。最高温度は、800℃以上1000℃以下であることがより好ましい。脱脂工程の最高温度を従来の600〜700℃程度から、700〜1100℃に上昇させることで、粒成長によって、脱脂工程後のセラミックス成形体の強度が向上するため、セラミックス成形体の焼成工程への仕込みが容易になる。また、脱脂工程おいては、セラミックス成形体の割れを防止するために、最高温度に到達するまでの昇温速度を極力抑えることが好ましい。
【0096】
脱脂は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉、ガス燃焼炉などの通常の焼成に用いられるものと同様の炉を用いて行なわれる。脱脂は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、脱脂は静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0097】
脱脂に要する時間は、セラミックス成形体中に含まれる有機成分の一部が消失するために十分な時間であればよく、好ましくは、セラミックス成形体中に含まれる有機成分の90質量%以上99質量%以下が消失する時間である。具体的には、原料混合物の量、脱脂に用いる炉の形式、温度条件、雰囲気などにより異なるが、最高温度でキープする時間は、通常1分〜10時間であり、好ましくは1〜7時間である。
【0098】
(焼成工程)
本発明のハニカム構造体の製造方法において、セラミックス成形体は、上記の脱脂工程の後に焼成工程に付される。焼成工程における焼成温度は、通常1300℃以上であり、好ましくは1400℃以上である。また、焼成温度は、通常1650℃以下であり、好ましくは1550℃以下である。
焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。ケイ素源粉末を用いる場合には、焼成工程の前に、1100〜1300℃の温度範囲で3時間以上保持する工程を設けることが好ましい。これにより、ケイ素源粉末の融解、拡散を促進させることができる。
【0099】
本発明のハニカム構造体の製造方法における焼成工程においては、酸素濃度1%以上6%以下の雰囲気中において焼成が行われることが好ましい。酸素濃度を6%以下とすることによって脱脂工程で発生した残存炭化物の燃焼を抑制することができるため、焼成工程におけるセラミックス成形体の割れが生じにくくなる。また、適度な酸素が存在するため、最終的に得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス成形体の有機成分を完全に除去することができる。酸素濃度は、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体中に有機成分に由来する炭化物(すす)が残存しないことから、1%以上が好ましい。用いる原料粉末、すなわちアルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0100】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉、ガス燃焼炉などの通常の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、焼成は静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0101】
焼成に要する時間は、原料混合物の成形体がチタン酸アルミニウム系結晶に遷移するのに十分な時間であればよく、原料混合物の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0102】
(その他)
以上の工程を順に行うことによって、チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体である本発明のハニカム構造体を得ることができる。このような本発明のハニカム構造体は、成形直後の成形体の形状をほぼ維持した形状を有するが、焼成後に研削加工等を行って、所望の形状に加工することもできる。
【実施例】
【0103】
本発明のハニカム構造体の製造方法によって製造されたハニカム構造体(実施例1,2:孔形成剤が大粒径粉体と小粒径粉体とを含む混合粉体である場合)と、従来の製造方法によって製造されたハニカム構造体(比較例1:孔形成剤が単一粉体である場合)について、得られたハニカム構造体の構造評価(細孔分布測定等)や性能評価(圧力損失測定、すす漏れ試験)を行った。
なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0104】
各実施例や比較例で用いた原料粉末の粒度分布測定、得られたハニカム構造体の構造評価法としてのX線回折測定、細孔分布測定およびX線CT測定、並びに、性能評価法としての圧力損失測定およびすす漏れ試験は、以下のとおりである。
【0105】
(1)原料粉末の粒度分布測定
原料粉末の、体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)、累積百分率90%相当粒径(D90)および累積百分率10%相当粒径(D10)は、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製:Microtrac HRA(X−100)を用いて測定した。
【0106】
(2)X線回折測定
チタン酸アルミニウム化率(AT化率)は、焼成体(ハニカム構造体)を乳鉢にて解砕して得られる粉末の粉末X線回折スペクトルにおける2θ=27.4°の位置に現れるピーク(チタニア・ルチル相(110)面)の積分強度(I)と、2θ=33.7°の位置に現れるピーク〔チタン酸アルミニウムマグネシウム相(230)面〕の積分強度(IAT)とから、下記式(1)により算出した。
AT化率(%)=IAT/(I+IAT)×100 ・・・(1)
【0107】
(3)細孔分布測定
0.4gの焼成体(ハニカム構造体)を砕き、得られた約2mm角の小片を、120℃で4時間、空気中で、電気炉を用いて乾燥させた後、水銀圧入法により、細孔直径を測定範囲0.005〜200.0μmで測定し、累積細孔容積Vtotal(ml/g)および平均細孔直径(μm)を求めた。測定装置には、Micromeritics社製の「オートポアIII9420」を用いた。得られた累積細孔容積Vtotalに基づき多孔質体(ハニカム構造体)の開気孔率を下記式(2)により求めた。
開気孔率(体積%)=100×(1−1/(1+Vtotal×D)) ・・・(2)
ここで、式(2)中のDはセラミックス体の密度(g/cm)を表し、一般的なチタン酸アルミニウムの密度3.7g/cmをDとして開気孔率を算出した。
【0108】
(4)X線CT測定
得られたハニカム構造体のX線CT測定を以下の測定条件で行った。なお、ハニカム構造体の隔壁から試験片を切り出し、当該試験片を測定サンプルとしてX線CT測定を行った。なお、試験片のサイズは、例えば1.0cm×2.0cm×0.3cmであった。
(測定条件)
a)使用装置:三次元計測X線CT装置 TDM1000−IS/SP(ヤマト科学製)
b)管電圧:60kV
c)管電流:50μA
d)画素数:512×512pixel
e)視野サイズ:0.8mmφ×0.8mmh(高さ)
f)スケール(解像度):1.5μm/pixel
なお、X線CT測定の結果から、3次元定量解析を行い、気孔径に対する気孔体積を算出した。3次元定量解析には、定量解析ソフトTRI/3D−BON,PRT(ラトックシステムエンジニアリング製)を使用した。
ここで、得られた気孔体積と同等の体積を有する真球状の球体の直径を気孔径として算出し、気孔体積分布として、5〜25μm、25〜50μm、50〜100μmのそれぞれの気孔径を有する気孔の合計体積の体積百分率を全気孔体積に対して算出した。
【0109】
(5)圧力損失測定
(中空片)
圧力損失測定は、得られたハニカム構造体の一部を切り出して、その切り出した一部である柱状の中空片(長さ30〜45mm)を用いて行った。
この中空片は、ハニカム構造体が有する1つのセルの一部と、そのセルの四方を囲むセル壁(つまり、隣接していたセル間を仕切るセル壁)とを含んだ形状に切り出されている。このため、中空片は、当該中空片の長さ方向と平行に中空片を貫通する貫通穴を有している。
つまり、中空片は、図3(A)に示すような井桁状の断面状を有するように切りだされている。
なお、セル壁の厚みは0.2〜0.4mmであり、また貫通穴(セル)の断面形状は、縦横それぞれ0.5〜0.7mmの正方形であった。
(圧力測定)
圧力測定では、まず、上記中空片の貫通穴の片方の開口端をエポキシ樹脂により封止して、試験片を作製した。そして、図3(B)に示すように、得られた試験片を装置へ接続し、計装空気(圧力値 1MPa)を250ml/分、500ml/分、750ml/分、950ml/分の各流量値で試験片内へ流入させた時の圧力値と大気圧値の差分(差圧;ΔP(単位:kPa))をマノメーターにより求めた。
(評価方法)
圧力損失を示す指標として、以下のようにして算出される勾配Gを用いた。
まず、各流量時におけるセル壁を通過するガス流速u(単位:ms−1)を寸法面積より算出した。そして、得られた流速に対する差圧値ΔP/uをプロットすることによって直線を得た後、得られた直線の勾配G(単位:kPa/(ms−1))を算出した。すなわち、勾配Gの値が低いほど試験片の前後の圧力損失が低く、パティキュレートフィルタとしてのフィルタ性能が高いことを表している。
【0110】
(6)すす漏れ試験
得られたハニカム構造体のすす漏れ評価法として、(5)圧力損失測定に使用した試験片を図3(C)に示すような装置に接続し、漏れ試験を実施した。カーボン発生器(DNP−2000 PALAS社製;カーボン粒子(すす)の平均粒径 60nm)、希釈器(MD−19−1E,Matter社製)、計測器(EEPS−3000,TSI社製)を用いて、カーボン発生器から発生したカーボン粒子が試験片の流路内を通過し始めてから180秒後のカーボン粒子の個数濃度を計測した。
なお、試験片通過後の個数濃度が低いほどパティキュレートフィルタとしての捕集性能が高いことを示している。
【0111】
<実施例1>
実施例1では、原料粉末として以下のものを用いた。
下記の原料粉末の仕込み組成は、アルミナ〔Al23〕、チタニア〔TiO2〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO2〕換算のモル比で、〔Al23〕/〔TiO2〕/〔MgO〕/〔SiO2〕=35.1%/51.3%/9.6%/4.0%であった。
また、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量中のケイ素源粉末の含有率は、4.0質量%であった。
(原料粉末)
(1)アルミニウム源粉末
中心粒径(D50)が29μmの酸化アルミニウム粉末(α−アルミナ粉末)
38.48質量部
(2)チタニウム源粉末
D50が1.0μmの酸化チタン粉末(ルチル型結晶)
41.18質量部
(3)マグネシウム源粉末
D50が3.4μmの酸化マグネシウム粉末
2.75質量部
(4)ケイ素源粉末
D50が8.5μmのガラスフリット(屈伏点:642℃)
3.29質量部
(5)孔形成剤(小麦粉デンプン粉末)
10.30質量部
孔形成剤(馬鈴薯デンプン粉末)
4.0質量部
【0112】
実施例1では、小麦粉デンプン粉末を小粒径粉体として用い、馬鈴薯デンプン粉末を大粒径粉体として用いた。小麦粉デンプン粉末及び馬鈴薯デンプン粉末の粒度分布の測定結果は下記のとおりである。
小麦粉デンプン粉末のD50:19μm
小麦粉デンプン粉末のD10:11μm
馬鈴薯デンプン粉末のD90:67μm
馬鈴薯デンプン粉末のD50:43μm
馬鈴薯デンプン粉末のD10:24μm
また、孔形成剤における25μm以下の粒径を有する粉体の合計質量は、孔形成剤の全質量に対して72%であった。
【0113】
上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末、および孔形成剤からなる混合物に、混合物100質量部に対して、結合剤(バインダ)としてメチルセルロース5.49質量部およびヒドロキシメチルセルロース2.35質量部、潤滑剤としてグリセリン0.40質量部およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル4.64質量部を加えた。さらに、分散媒として水を29.03質量部加えた後、混練・押出機を用いて押し出し成形して、ハニカム形状のセラミックス成形体(セル密度300cpsi、セル壁厚0.3mm)を形成した。
なお、成形体は、直径25mm、高さ50mmの円柱状であって、高さ方向に多数の貫通孔を有するように形成した。
得られた成形体に対して、大気雰囲気下で、バインダを除去する脱脂工程を含む焼成を行ない、ハニカム形状の多孔質焼成体(ハニカム構造体)を得た。焼成時の最高温度を1500℃とし、最高温度での保持時間を5時間とした。
【0114】
得られたハニカム構造体を乳鉢にて解砕して粉末を得た後、粉末X線回折法により、得られた粉末の回折スペクトルを測定したところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示した。この粉末のAT化率を求めたところ、100%であった。得られたチタン酸アルミニウム系焼成体の平均細孔径は15μmであり、開気孔率は44体積%であった。
【0115】
得られた多孔質焼成体のX線CT測定を実施し、気孔径に対する気孔体積の分布を算出したところ、気孔径5〜25μmである気孔の体積割合が23%であり、気孔径50〜100μmである気孔の体積割合が18%であった(図4参照)。また、気孔径100μm以上である気孔の体積割合は、0%であった。
【0116】
また、得られた多孔質焼成体の圧力損失測定を行ったところ、勾配Gは6.9kPa/(ms−1)であった。
さらに、得られた多孔質焼成体のすす漏れ試験を行ったところ、180秒後のすす個数濃度は1.0×10個/cm以下であった。
【0117】
<実施例2>
実施例2では、孔形成剤の配合割合を変更した点、各原料粉末の配合量を変更した点、および、チタン酸アルミニウムマグネシウム粉末を添加した点以外は、実施例1と同様にして、ハニカム形状の多孔質焼成体を得た。
各原料粉末の仕込み組成は、アルミナ〔Al23〕、チタニア〔TiO2〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO2〕換算のモル比で、〔Al23〕/〔TiO2〕/〔MgO〕/〔SiO2〕=35.1%/51.3%/9.6%/4.0%であった。
また、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、チタン酸アルミニウムマグネシウム粉末およびケイ素源粉末の合計量中のケイ素源粉末の含有率は、4.0質量%であった。
(原料粉末)
(1)アルミニウム源粉末
中心粒径(D50)が29μmの酸化アルミニウム粉末(α−アルミナ粉末)
35.59質量部
(2)チタニウム源粉末
D50が1.0μmの酸化チタン粉末(ルチル型結晶)
35.27質量部
(3)マグネシウム源粉末
D50が3.4μmの酸化マグネシウム粉末
1.82質量部
(4)ケイ素源粉末
D50が8.5μmのガラスフリット(屈伏点:642℃)
2.91質量部
(5)孔形成剤(小麦粉デンプン粉末)
6.0質量部
孔形成剤(馬鈴薯デンプン粉末)
10.0質量部
(6)チタン酸アルミニウムマグネシウム粉末
8.40質量部
なお、上記(6)チタン酸アルミニウムマグネシウム粉末は、明細書の段落0084に記載したように、上述したような方法で製造されたチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体(多孔質焼成体)を粉砕して得られた粉末を使用した。
【0118】
孔形成剤としては、実施例1と同様の孔形成剤を用いた。また、孔形成剤における25μm以下の粒径を有する粉体の合計質量は、孔形成剤の全質量に対して38%であった。
【0119】
上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末、チタン酸アルミニウムマグネシウム粉末および孔形成剤からなる混合物に、該混合物100質量部に対して、結合剤(バインダ)としてメチルセルロース5.49質量部およびヒドロキシメチルセルロース2.35質量部、潤滑剤としてグリセリン0.40質量部およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプチルエーテル4.64質量部を加えた。さらに、分散媒として水を28.45質量部加えた後、混練・押出機を用いて押し出し成形して、ハニカム形状のセラミックス成形体(セル密度300cpsi、セル壁厚0.3mm)を形成した。
なお、成形体は、直径25mm、高さ50mmの円柱状であって、高さ方向に多数の貫通孔を有するように形成した。
得られた成形体に対して、大気雰囲気下で、バインダを除去する脱脂工程を含む焼成を行ない、ハニカム形状の多孔質焼成体(ハニカム構造体)を得た。焼成時の最高温度を1500℃とし、最高温度での保持時間を5時間とした。
【0120】
得られた多孔質焼成体を乳鉢にて解砕し、チタン酸アルミニウムマグネシウムの粉末を得た。このチタン酸アルミニウムマグネシウム粉末の組成は、アルミナ、チタニア、マグネシア、およびシリカ換算のモル比で、〔Al23〕/〔TiO2〕/〔MgO〕/〔SiO2〕=35.1%/51.3%/9.6%/4.0%であった。粉末X線回折法により、得られた粉末の回折スペクトルを測定したところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示した。この粉末のAT化率を求めたところ、100%であった。得られたチタン酸アルミニウム系焼成体の平均細孔径は15μmであり、開気孔率は47体積%であった。
【0121】
得られた多孔質焼成体のX線CT測定を実施し、気孔径に対する気孔体積の分布を算出したところ、気孔径5〜25μmである気孔の体積割合が22%であり、気孔径50〜100μmである気孔の体積割合が26%であった(図4参照)。また、気孔径100μm以上である気孔の体積割合は、0%であった。
【0122】
得られた多孔質焼成体の圧力損失測定を行ったところ、勾配Gは6.8kPa/(ms−1)であった。
さらに、得られた多孔質焼成体のすす漏れ試験を行ったところ、180秒後のすす個数濃度は1.0×10個/cm以下であった。
【0123】
<比較例1>
孔形成剤として一種類の粉体(小麦粉デンプン粉末)のみを使用した点以外は、実施例1と同様にして、ハニカム形状の多孔質焼成体を得た。なお、孔形成剤としては、実施例1と同様の小麦粉デンプン粉末を用いた。
各原料粉末の仕込み組成は、実施例1と同じく、アルミナ〔Al23〕、チタニア〔TiO2〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO2〕換算のモル比で、〔Al23〕/〔TiO2〕/〔MgO〕/〔SiO2〕=35.1%/51.3%/9.6%/4.0%であった。
また、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量中のケイ素源粉末の含有率は、4.0質量%であった。
(原料粉末)
(1)アルミニウム源粉末
中心粒径(D50)が29μmの酸化アルミニウム粉末(α−アルミナ粉末)
38.48質量部
(2)チタニウム源粉末
D50が1.0μmの酸化チタン粉末(ルチル型結晶)
41.18質量部
(3)マグネシウム源粉末
D50が3.4μmの酸化マグネシウム粉末
2.75質量部
(4)ケイ素源粉末
D50が8.5μmのガラスフリット(屈伏点:642℃)
3.29質量部
(5)孔形成剤(小麦粉デンプン粉末)
14.30質量部
【0124】
上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末および孔形成剤からなる混合物に、該混合物100質量部に対して、結合剤(バインダ)としてメチルセルロース5.49質量部およびヒドロキシメチルセルロース2.35質量部、潤滑剤としてグリセリン0.40質量部およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル4.64質量部を加えた。さらに、分散媒として水を29.03質量部加えた後、混練・押出機を用いて押し出し成形して、ハニカム形状のセラミックス成形体(セル密度300cpsi、セル壁厚0.3mm)を作製した。
なお、成形体は、直径25mm、高さ50mmの円柱状であって、高さ方向に多数の貫通孔を有するように形成した。
得られた成形体に対して、大気雰囲気下で、バインダを除去する脱脂工程を含む焼成を行ない、ハニカム形状の多孔質焼成体(ハニカム構造体)を得た。焼成時の最高温度を1500℃とし、最高温度での保持時間を5時間とした。
【0125】
得られた多孔質焼成体を乳鉢にて解砕して粉末を得た後、粉末X線回折法により、得られた粉末の回折スペクトルを測定したところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示した。この粉末のAT化率を求めたところ、100%であった。得られたチタン酸アルミニウム系焼成体の平均細孔径は15μmであり、開気孔率は42体積%であった。
【0126】
得られた多孔質焼成体のX線CT測定を実施し、気孔径に対する気孔体積の分布を算出したところ、気孔径5〜25μmである気孔の体積割合が21%であり、気孔径50〜100μmである気孔の体積割合が32%であった(図4参照)。また、気孔径100μm以上である気孔の体積割合は、0%であった。
【0127】
得られた多孔質焼成体の圧力損失測定を行ったところ、勾配Gは10.5kPa/(ms−1)であった。
また、得られた多孔質焼成体のすす漏れ試験を行ったところ、180秒後のすす個数濃度は1.0×10個/cm以下であった。
【0128】
(実施例、比較例の比較)
以上のごとく、実施例1では、全気孔の合計体積に対する気孔径5〜25μmの気孔の体積割合が10%以上(23%)であり、全気孔の合計体積に対する気孔径50〜100μmの気孔の体積割合が15〜30%の範囲内(18%)であった。
また、実施例2では、全気孔の合計体積に対する気孔径5〜25μmの気孔の体積割合が10%以上(22%)であり、全気孔の合計体積に対する気孔径50〜100μmの気孔の体積割合が15〜30%(26%)であった。
つまり、実施例1、2では、X線CT分析結果に基づいて得られる隔壁中の気孔の状態が、いずれも本発明のハニカム構造体の状態を満たすことが確認できた。
【0129】
一方、比較例1では、気孔径5〜25μmの気孔の体積割合は10%以上(21%)であるが、気孔径50〜100μmの気孔の体積割合は32%であり、30%を超えていた。つまり、比較例1では、X線CT分析結果に基づいて得られる隔壁中の気孔の状態について、小径気孔の割合は本発明のハニカム構造体における小径気孔の割合に入っているが、大径気孔の割合は本発明のハニカム構造体における大径気孔の割合を超えていることが確認できた。
【0130】
以上のごとく、実施例1、2および比較例1の対比において、すす漏れ試験の結果は同等(1.0×10個/cm以下)であったが、勾配Gの値は、比較例1に比べて実施例1、2の値が小さくなっていることが確認された。具体的には、実施例1、2の勾配Gの値は、比較例1の値の2/3程度となっていることが確認された。このことから、実施例1、2は、比較例1に比べて圧力損失が小さくなっていることが確認できた。
【0131】
この結果より、ハニカム構造体の隔壁における気孔の状態を本発明のような状態とすれば、すすの捕集効率を高く維持しつつ、圧力損失を小さくできるため、パティキュレートフィルタの隔壁に適した構造が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガスの浄化に用いられる排ガスフィルタ、触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルタ、石油精製時に生じるガス成分(例えば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素など)を選択的に透過させるための選択透過フィルタなどのセラミックスフィルタなどに適したハニカム構造体を製造する方法として適している。
【符号の説明】
【0133】
10…流通通路、11…小径気孔、12…大径気孔、101…隔壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス粉末と孔形成剤とを含有する原料を成形して成形体を形成する工程と、
当該成形体を焼成してハニカム構造体を製造する工程と、を備え、
前記孔形成剤が、前記成形体を焼成する焼成温度以下で消失する素材によって形成された粉体であり、
当該粉体が、小粒径粉体と大粒径粉体とを混合して得られ、
前記小粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径が、5〜20μmであり、
前記大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径が、30μm以上であり、
前記大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が90%である90%粒径が、80μm以下である、ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
25μm以下の粒径を有する粉体の合計質量が、前記孔形成剤の全質量に対して30〜80%である、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記原料における前記孔形成剤の含有量が、前記セラミックス粉末100質量部に対して1〜40質量部である、請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記大粒径粉体の中心粒径を前記小粒径粉体の中心粒径で除した値が2.0以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記小粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が10%である10%粒径と前記小粒径粉体の中心粒径との差を当該小粒径粉体の中心粒径によって除した値が0.7よりも小さく、
前記大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が10%である10%粒径と前記大粒径粉体の中心粒径との差を当該大粒径粉体の中心粒径によって除した値が0.7よりも小さい、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記大粒径粉体の合計質量に対する累積質量の割合が10%である10%粒径が、前記小粒径粉体の中心粒径よりも大きい、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記セラミックス粉末の合計質量に対する累積質量の割合が50%である中心粒径が、前記大粒径粉体の中心粒径よりも小さい、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
複数の隔壁を有するハニカム構造体であって、
前記隔壁のX線CT分析結果に基づいて前記隔壁中に存在する気孔の体積を算出した場合において、全気孔の合計体積に対する気孔径5〜25μmである気孔の合計体積の割合が10%以上であり、全気孔の合計体積に対する気孔径50〜100μmである気孔の合計体積の割合が15〜30%である、ハニカム構造体。
【請求項9】
全気孔の合計体積に対する気孔径100μm以上である気孔の合計体積の割合が1%以下である、請求項8に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記隔壁の気孔率が30〜70体積%であり、前記隔壁の平均気孔径が5〜25μmである、請求項8又は9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
チタン酸アルミニウムを含有する、請求項8〜10のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
チタン酸アルミニウムマグネシウムの含有量が85〜99質量%であり、アルミノケイ酸塩の含有量が1〜5質量%であり、酸化アルミニウムの含有量が5質量%以下であり、二酸化チタンの含有量が5質量%以下である、請求項8〜11のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載のハニカム構造体を有し、
前記隔壁の平均厚さが0.1〜0.5mmである、パティキュレートフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−213585(P2011−213585A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58417(P2011−58417)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】