ハニカム構造体及びその製造方法
【課題】 排ガス等の流体の流れを改善し、圧力損失を低減できるハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】 隔壁170cにより区画された複数の流路170aを有するハニカム状の柱状体170と、流路170aの一方の端部を塞ぐ封口部170bと、を備え、複数の流路170aのうち一部の流路は、柱状体170の第一端面F1において封口部170bで塞がれ、第二端面F2においては開き、他の流路は、第二端面F2において封口部170bで塞がれ、第一端面F1において開いており、封口部170bがセラミックスを含み、柱状体170がセラミックス及びその原料粉末のうちの少なくとも一方を含み、第一端面F1及び第二端面F2のうちの少なくとも一方の端面における少なくとも一部の封口部170b上に、柱状体170の外側に向かって突出した凸部170dを有する、ハニカム構造体。
【解決手段】 隔壁170cにより区画された複数の流路170aを有するハニカム状の柱状体170と、流路170aの一方の端部を塞ぐ封口部170bと、を備え、複数の流路170aのうち一部の流路は、柱状体170の第一端面F1において封口部170bで塞がれ、第二端面F2においては開き、他の流路は、第二端面F2において封口部170bで塞がれ、第一端面F1において開いており、封口部170bがセラミックスを含み、柱状体170がセラミックス及びその原料粉末のうちの少なくとも一方を含み、第一端面F1及び第二端面F2のうちの少なくとも一方の端面における少なくとも一部の封口部170b上に、柱状体170の外側に向かって突出した凸部170dを有する、ハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれるカーボン粒子等の微細粒子を捕集するためのセラミックスフィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)として、多孔質のセラミックスからなるハニカム構造体が用いられている。
【0003】
DPF用のハニカム構造体は通常柱状体であり、柱状のハニカム構造体には、その対向する端面間を貫通する複数の貫通孔(流路)が形成されている。ハニカム構造体の一方の端面(第一端面)では、開いた貫通孔の端部と封口部で塞がれた貫通孔の端部とが、格子状に交互に配置されている。第一端面において端部が開いている貫通孔は、第一端面と反対側の第二端面において封口部で塞がれている。また、第一端面において端部が封口部で塞がれている貫通孔は、第二端面において開いている。したがって、DPF用のハニカム構造体の製造では、柱状体に形成された貫通孔の端部の一方だけを封口材で塞ぐ工程(以下、「封口工程」という。)が必要となる。
【0004】
下記特許文献1には、上記の封口工程の一例として、複数の貫通孔が形成されたコージェライトの柱状体をシリンダー内に設置し、柱状体の端面に開いた一部の貫通孔をフィルムで塞ぎ、当該端面にスラリー状の封口材を塗り、ピストンをシリンダー内に押し込むことにより、封口材をピストンで一部の貫通孔内に導入する工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されたような封口工程を含む方法により製造されたハニカム構造体は、その一方の端面側から排ガスを供給した場合、端面近傍で排ガスの流れが乱れて圧力損失が生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、排ガス等の流体の流れを改善し、圧力損失を低減できるハニカム構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、隔壁により区画された互いに略平行な複数の流路を有するハニカム状の柱状体と、上記流路の一方の端部を塞ぐ封口部と、を備え、上記複数の流路のうち一部の流路は、上記流路に略直交する上記柱状体の第一端面及び第二端面のうち上記第一端面において上記封口部で塞がれ、上記第二端面においては開き、他の上記流路は、上記第二端面において上記封口部で塞がれ、上記第一端面において開いており、上記封口部がセラミックスを含み、上記柱状体がセラミックス及びその原料粉末のうちの少なくとも一方を含み、上記第一端面及び上記第二端面のうちの少なくとも一方の端面における少なくとも一部の上記封口部上に、上記柱状体の外側に向かって突出した凸部を有する、ハニカム構造体を提供する。
【0009】
従来のハニカム構造体では、その一方の端面側から排ガス等の流体を供給した場合、封口部に流体が衝突して流れが乱れることとなる。これに対し、本発明のハニカム構造体によれば、柱状体の一方の端面の封口部上に凸部を有することにより、当該凸部を有する端面側から排ガス等の流体を供給した場合に、凸部に沿った流体の流れが形成され、流体の流れがスムーズになり、圧力損失を低減することができる。
【0010】
本発明はまた、原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、上記原料スラリーをハニカム成形体の所定の流路の端部に充填し、上記ハニカム成形体の端面近傍まで封口部を形成する封口工程と、少なくとも一部の上記封口部上に、上記原料スラリーを用いて、上記ハニカム成形体の外側に向かって突出した凸部を形成する凸部形成工程と、を有するハニカム構造体の製造方法を提供する。かかる製造方法により、上述した本発明のハニカム構造体を製造することができる。
【0011】
本発明の製造方法の上記凸部形成工程においては、上記原料スラリーの液滴をインクジェット法により上記封口部上に飛ばして上記凸部を形成することが好ましい。インクジェット法を用いることで、凸部の形成を簡易に行うことができる。また、インクジェット法を用いることで、凸部を精度良く、且つ効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排ガス等の流体の流れを改善し、圧力損失を低減できるハニカム構造体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のハニカム構造体の端面図である。
【図2】図2は、図1(a)に示したハニカム構造体のI−I線断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造過程で形成されるハニカム成形体の斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のハニカム成形体の端面図である。
【図4】図4は、原料スラリーをインクジェットヘッドに供給する手段を示す模式図である。
【図5】図5は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の一例(バブルジェット(登録商標)方式)を示す部分破断斜視図である。
【図6】図6は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の他の一例(ピエゾ方式)を示す部分破断斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法の封口工程により封口部が形成されたハニカム成形体を示す模式断面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図11】図11(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における凸部形成工程の一部を示す模式断面図であり、図11(b)は、形成した凸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当部分には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
<ハニカム構造体>
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のハニカム構造体の端面図である。また、図2は、図1(a)に示したハニカム構造体のI−I線断面図である。図1及び図2に示すように、ハニカム構造体200は、隔壁170cにより区画された互いに略平行な複数の流路170aを有するハニカム状の柱状体170と、流路170aの一方の端部を塞ぐ封口部170bと、を備えている。また、複数の流路170aのうち一部の流路は、流路170aに略直交する柱状体の第一端面F1及び第二端面F2のうち第一端面F1において封口部170bで塞がれ、第二端面F2においては開き、他の流路は、第二端面F2において封口部170bで塞がれ、第一端面F1において開いている。そして、ハニカム構造体200は、第一端面F1における少なくとも一部の封口部170b上に、柱状体170の外側に向かって突出した凸部170dを有している。
【0016】
図1及び図2に示したハニカム構造体200において、凸部170dは、断面が三角形(二等辺三角形又は正三角形)である四角錐形状を有している。なお、凸部170dの形状は特に限定されず、例えば、断面が釣鐘型や半円型等の流線型である形状を有していてもよい。また、凸部170dは、封口部170b表面の一部のみを覆うように形成されていてもよい。更に、開口している流路170aを塞がない限りにおいては、封口部170b表面からはみ出して、隔壁170cの一部を覆っていてもよい。柱状体170の第一端面F1からの凸部170dの高さHは、封口部170bの長辺の長さLの1〜3倍であることが好ましい。この高さHが長さLの1倍未満であると、排ガス等の流れを改善する効果が低下する傾向があり、3倍を超えると、凸部170dがわずかな応力で折れる傾向がある。
【0017】
ハニカム構造体200において、流路170aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.5〜2.5mmとすることができる。ハニカム構造体200の寸法は、図1に示したような円柱体である場合、例えば、直径約100mm以上、長さ約100mm以上、隔壁170cの壁厚は約0.5mm以下であることが好ましい。また、ハニカム構造体200におけるセル構造は流路170aの合計数として100CPSI以上、有効気孔率は30〜60体積%、平均細孔直径は1〜20μm、細孔径分布(D90−D10)/D50は0.5未満であることが好ましい。ここで、D10、D50、D90は全細孔容積のうち累積細孔容積が各々10%、50%、90%になるときの細孔直径である。
【0018】
図1及び図2に示した構造のハニカム構造体200においては、隔壁170cは多孔質のセラミックスで構成され、この隔壁がフィルターの役割を果たす。このハニカム構造体200に対し、図1の(b)に示した側の第一端面F1(図1(a)における上端面)から流体を供給した場合、流体は開口している流路170aから入り、多孔質の隔壁170cを通って、第二端面F2側が開口している流路170aに移動し、第二端面F2から排出される。このとき、第一端面F1側には凸部170dが形成されているため、流体はスムーズに流路170aに入り、流体を通過させる際の圧力損失が低減される。
【0019】
凸部170dは、必ずしも第一端面F1における全ての封口部170b上に形成する必要はない。少なくとも一部の封口部170b上に凸部170dを形成しておくことにより、流体の流れを改善する効果は得られる。現実的には、図1(b)に示すように、柱状体170の第一端面F1の周縁部においては、流路170aの断面形状が歪になり、断面積が小さくなる。そのため、そのような流路170aを塞ぐ封口部170bの表面領域も小さくなり、凸部170dを形成することが困難となる。したがって、柱状体170の周縁部の封口部170b上には凸部170dを形成せず、十分な表面領域を有する封口部170b上にのみ凸部170dを形成することが好ましい。
【0020】
また、凸部170dは、第一端面F1のみならず、第二端面F2にも形成してもよい。両端面に凸部170dを形成した場合、いずれの端面側から流体を供給しても、流体の流れを改善して圧力損失を低下させる効果が得られる。但し、流体を第一端面F1側のみから供給することが決まっている場合には、第一端面F1側のみに凸部170dを形成しておけばよい。
【0021】
ハニカム構造体200において、封口部170bはセラミックスを含み、柱状体170はセラミックス及びその原料粉末のうちの少なくとも一方を含む。また、凸部170dは、封口部170bと同じ材料を用いて形成することが好ましい。ハニカム構造体200の構成材料については、以下のハニカム構造体の製造方法において詳しく説明する。
【0022】
<ハニカム構造体の製造方法>
本発明のハニカム構造体の製造方法は、原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、上記原料スラリーをハニカム成形体の所定の流路の端部に充填し、上記ハニカム成形体の端面近傍まで封口部を形成する封口工程と、少なくとも一部の上記封口部上に、上記原料スラリーを用いて、上記ハニカム成形体の外側に向かって突出した凸部を形成する凸部形成工程と、を有する方法である。また、本発明の製造方法は、凸部形成工程後、封口部及び凸部が形成されたハニカム成形体を焼成する焼成工程を更に有することが好ましい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0023】
原料スラリー調製工程において調製する原料スラリーとしては、無機化合物粉末(セラミックス材料、セラミックスの原料粉末又はそれらの混合物)、有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等の混合物を用いればよい。原料スラリーが含有する無機化合物粉末の組成は、後述するハニカム成形体を形成するための無機化合物粉末の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、原料スラリーが含有する有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等は、後述するハニカム成形体を形成するための材料と同様のものを用いることができる。
【0024】
原料スラリーの23℃での粘度は、インクジェット法により封口部を形成する場合、0.1〜10Pa・sであることが好ましく、1〜10Pa・sであることがより好ましい。この粘度が0.1Pa・s未満であると原料スラリーの液滴がハニカム成形体の隔壁に衝突後に拡散してしまい、堆積しにくくなる傾向があり、10Pa・sを超えると原料スラリーがノズルに詰まりやすく、ノズル先端に堆積しやすくなり、飛滴しにくくなる傾向がある。
【0025】
封口工程では、原料スラリーをハニカム成形体の所定の流路の端部に充填し、ハニカム成形体の端面近傍まで封口部を形成する。
【0026】
ハニカム成形体は、例えば図3に示すような構造を有するものである。図3(a)及び図3(b)に示すように、ハニカム成形体70は、ハニカム構造を有する円柱体である。ハニカム成形体70は、その中心軸に平行であり、互いに直交する複数の隔壁70cを有する。つまり、ハニカム成形体70は、その中心軸方向に垂直な断面において格子構造を有する。換言すれば、ハニカム成形体70には、同一方向(中心軸方向)に延びる多数の流路70a(貫通孔)が形成されており、隔壁70cが各流路70aを隔てる。各流路70aはハニカム成形体70の両端面に略垂直である。なお、ハニカム成形体70が有する複数の隔壁70cが互いになす角は特に限定されず、例えば120°であってもよい。
【0027】
ハニカム成形体70は、例えば、原料混合物を押出成形して、隔壁70cにより区画された複数の流路70a(貫通孔)を有するハニカム成形体70を得る押出成形工程を経て作製することができる。
【0028】
ハニカム成形体を形成するための原料混合物は、後で焼成することにより多孔性セラミックスとなる材料であり、セラミックス原料を含む。セラミックス原料は特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0029】
原料混合物は、好ましくは、セラミックス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0030】
例えば、セラミックスがチタン酸アルミニウムの場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末、及び/又は、チタン酸アルミニウム粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末、及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0031】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0032】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0033】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。
【0034】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。
【0037】
原料混合物は、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物を混練機等により混合することで調製することができる。
【0038】
ハニカム成形体70は、上記原料混合物を隔壁70cの断面形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、必要に応じて乾燥をし、所望の長さに切ることにより得ることができる。
【0039】
封口工程において、封口部の形成方法は特に制限されないが、原料スラリーの液滴をインクジェット法によりハニカム成形体70の封口すべき箇所に飛ばして封口部70bを形成する方法を用いることが好ましい。インクジェット法により封口部を形成する装置としては、例えばインクジェットプリンタが用いられる。インクジェットプリンタの印字方式は、インクが空中を飛ぶ非接触型である。インクジェットプリンタは、通常、ヘッドが走査する機構を有し、ヘッドが複数のノズルを有する。封口工程では、ヘッドに設けられた複数のノズルから、原料スラリーの液滴を吐出する。
【0040】
図4は、原料スラリーをインクジェットプリンタのノズルに供給する手段を示す模式図である。図4に示すように、原料スラリーは、スラリー貯槽101から電磁弁102を介して供給ポンプ103により吸い上げられ、調圧弁104により圧力調整されながら、複数のノズルを有するインクジェットヘッド105に供給される。
【0041】
図5及び図6は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の一例を示す部分破断斜視図であり、図5はバブルジェット(登録商標)方式(サーマル方式)のインクジェットヘッドを、図6はピエゾ方式のインクジェットヘッドをそれぞれ示している。図5に示したバブルジェット(登録商標)方式は、インク室12に収容された原料スラリーをヒーター16により加熱することで、原料スラリーに気泡(バブル)18を発生させ、ノズル14から原料スラリーの液滴10を噴射させる方式である。一方、図6に示したピエゾ方式は、ピエゾ素子26に電圧を加えて変形させることで、インク室22に収容された原料スラリーに変形圧力を伝え、ノズル24から原料スラリーの液滴10を噴射させる方式である。本発明においては、いずれの方式も好適に使用することができる。また、本発明においては、バブルジェット(登録商標)方式及びピエゾ方式以外にも、加熱式のピエゾ駆動方式等の公知の方式を使用することができる。
【0042】
インクジェットヘッドを走査させる際の走査方向は、1次元であってもよく、2次元であってもよい。また、ノズルから吐出される液滴10の量は特に制限されないが、封口部の形成のし易さから、1〜20pLであることが好ましい。更に、ノズルから吐出される液滴10の吐出速度は特に制限されないが、封口部の形成のし易さから、0.5〜5m/sであることが好ましい。
【0043】
封口部の形成は、例えば図7〜図9に示した手順で行うことができる。すなわち、図7に示すように、ハニカム成形体70を端面が横向きになるように配置し、インクジェットヘッド105を用いて原料スラリーの液滴10を水平方向に飛ばす方法を用いることができる。これにより、図8(a)に示すように、ハニカム成形体70の封口すべき流路70aに封口層70b1を形成する。封口層70b1は、多数の液滴10をハニカム成形体70の隔壁70cに付着させることで形成することができる。また、封口層70b1の形成が容易になるため、60〜110℃程度の温度で乾燥しながら液滴10を飛ばすことが好ましい。続いて、図8(b)及び(c)に示すように、同様の手順で封口層70b2,70b3を順次積層していくことで、所望の長さの封口部70bを形成することができる。なお、封口層の積層数は特に限定されず、必要な長さの封口部70bが得られるまで積層数を増やすことができる。この方法により、ハニカム成形体70の一方の端面(第一端面)の所望の位置に封口部70bを形成した後、他方の端面(第二端面)における第一端面側で封口部70bが形成されていない流路70aに封口部70bを形成することで、図9に示した構造を有するハニカム成形体を得ることができる。第一端面側で封口部70bが形成された流路70aと、第二端面側で封口部70bが形成された流路70aとは、格子状に交互に配置される。
【0044】
図10は、原料スラリーの液滴10を飛ばして封口部70bを形成する際の他の方法を示している。すなわち、図7ではハニカム成形体70を横向きに配置したが、図10に示すように、ハニカム成形体70を端面が水平面に対して斜めになるように配置し、その上方に配置したインクジェットヘッド105から原料スラリーの液滴10を下向きに飛ばす方法を用いることもできる。この場合、飛ばした液滴10をハニカム成形体70の隔壁70cに付着させ易くなる。なお、ハニカム成形体70を端面が横向き又は縦向きになるように配置し、インクジェットヘッド105からの液滴10の吐出方向をハニカム成形体70の端面に対して斜めにしてもよい。
【0045】
また、本発明の製造方法おいて、封口工程は従来公知の方法で行ってもよい。例えば、封口部の形成は、複数の貫通孔が所望の位置に設けられたマスクをハニカム成形体70の一端面(第一端面)に密着させ、そこへ原料スラリーを供給することにより、一部の流路70aの端部に封口部70bを形成し、ハニカム成形体70の他端面(第二端面)に対しても同様にして、第一端面側に封口部70bを形成していない他の流路70aの端部に封口部70bを形成することにより行うことができる。これにより、図9に示した構造を有するハニカム成形体を得ることができる。
【0046】
原料スラリーを流路70aに供給する方法は特に限定されない。例えば、マスク上に供給した原料スラリーを、スキージを用いてマスクの貫通孔を介して流路内に押し込んでもよいし、ピストンにより押し込んでもよい。
【0047】
凸部形成工程においては、少なくとも一部の封口部70b上に、上記原料スラリーを用いて、ハニカム成形体70の外側に向かって突出した凸部70dを形成する。凸部70dの形成方法は特に限定されず、例えば、金型等を用いて形成する方法を用いてもよいが、インクジェット法により形成する方法を用いることが好ましい。インクジェット法を用いる場合、上記封口部70bをインクジェット法により形成する場合と同様に、原料スラリーの液滴をインクジェット法により封口部70b上に飛ばして凸部70dを形成する。
【0048】
図11(a)は、インクジェット法により封口部70b上に凸部70dを形成した状態を示す模式断面図であり、図11(b)は、形成した凸部70dの拡大図である。図11(b)に示すように、インクジェット法により凸部70dを形成する場合、インクジェットヘッド105の走査位置を調節することにより液滴10を飛ばす箇所を徐々に狭めることで、断面が三角形である四角錐形状の凸部70dを形成することができる。こうして形成される凸部70dは、微視的には図11(b)に示すような階段状の断面を有していてもよい。なお、段階的にインクジェットヘッド105の走査範囲を狭めていくことで凸部70dを形成した場合でも、通常、原料スラリーの液滴がハニカム成形体70に到達した際に液滴の形状がつぶれて、凸部70dの表面は滑らかになる。
【0049】
なお、凸部形成工程は、封口工程により第一端面側の封口部70bを形成した後、第二端面側の封口部70bを形成する前に行ってもよい。特に、封口部70b及び凸部70dの双方をインクジェット法により形成する場合には、第一端面において封口部70bを形成した後、続けて凸部70dを形成するのが効率的である。
【0050】
上記封口工程及び凸部形成工程によりハニカム成形体70に封口部70b及び凸部70dを形成した後、焼成工程を行う。焼成工程において、ハニカム成形体70、封口部70b及び凸部70dを仮焼(脱脂)および焼成することにより、図1(a)及び(b)に示すように、多孔質のセラミックスからなる隔壁170cにより区画され且つ一端が封口部170bで塞がれた複数の流路170aを有するハニカム構造体200を得ることができる。ハニカム構造体200では、第一端面側で封口部170bに塞がれた流路170aは、第二端面側で開いている。第二端面側で封口部170bに塞がれた流路170aは、第一端面側で開いている。また、第一端面側の少なくとも一部の封口部170b上には、凸部170dが形成されている。このように、焼成前のグリーン成形体(未焼成の成形体)に対して封口工程及び凸部形成工程を行い、その後に焼成工程を行った場合、焼成工程が1回で済むとともに、焼成後の封口部170bとハニカム構造体との良好な密着性が得られるため好ましい。
【0051】
仮焼(脱脂)は、ハニカム成形体70、封口部70b及び凸部70d中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を、焼失、分解等により除去するための工程であり、典型的には、焼成温度に至るまでの昇温段階(たとえば、150〜900℃の温度範囲)になされる。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0052】
ハニカム成形体70の焼成における焼成温度は、通常、1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。また、焼成温度は、通常、1650℃以下、好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。
【0053】
焼成は通常、大気中で行なわれるが、用いる原料粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0054】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0055】
焼成に要する時間は、セラミックスが生成するのに十分な時間であればよく、ハニカム成形体の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0056】
なお、焼成工程は、封口工程の前に行ってもよい。ただしその場合には、封口工程及び凸部形成工程後に再度焼成工程を行う必要がある。
【0057】
以上の工程を経て、目的のハニカム構造体200を得ることができる。得られたハニカム構造体200は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、本発明のハニカム構造体の形状は特に限定されず、用途に応じて任意の形状を取ることができる。例えば、外形も、円柱に限られず、例えば、正三角柱、正方形柱、正六角柱、正八角柱等の正多角柱や、正多角柱以外の、3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等の柱体とすることができる。また、各流路の断面形状も、正方形には限定されず、矩形、円形、楕円形、3角形、6角形、8角形等にすることができ、流路には、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在してもよい。さらに、流路の配置も、正方形配置に限定されず、断面において流路の中心が正三角形の頂点に配置される正三角形配置、千鳥配置等にすることができる。
【0059】
本発明のハニカム構造体は、たとえば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルターや、触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分、たとえば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素などを選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルターなどに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…液滴、70…ハニカム成形体、70a…流路、70b…封口部、70c…隔壁、105…インクジェットヘッド、170…柱状体、170a…流路、170b…封口部、170c…隔壁、170d…凸部、200…ハニカム構造体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれるカーボン粒子等の微細粒子を捕集するためのセラミックスフィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)として、多孔質のセラミックスからなるハニカム構造体が用いられている。
【0003】
DPF用のハニカム構造体は通常柱状体であり、柱状のハニカム構造体には、その対向する端面間を貫通する複数の貫通孔(流路)が形成されている。ハニカム構造体の一方の端面(第一端面)では、開いた貫通孔の端部と封口部で塞がれた貫通孔の端部とが、格子状に交互に配置されている。第一端面において端部が開いている貫通孔は、第一端面と反対側の第二端面において封口部で塞がれている。また、第一端面において端部が封口部で塞がれている貫通孔は、第二端面において開いている。したがって、DPF用のハニカム構造体の製造では、柱状体に形成された貫通孔の端部の一方だけを封口材で塞ぐ工程(以下、「封口工程」という。)が必要となる。
【0004】
下記特許文献1には、上記の封口工程の一例として、複数の貫通孔が形成されたコージェライトの柱状体をシリンダー内に設置し、柱状体の端面に開いた一部の貫通孔をフィルムで塞ぎ、当該端面にスラリー状の封口材を塗り、ピストンをシリンダー内に押し込むことにより、封口材をピストンで一部の貫通孔内に導入する工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されたような封口工程を含む方法により製造されたハニカム構造体は、その一方の端面側から排ガスを供給した場合、端面近傍で排ガスの流れが乱れて圧力損失が生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、排ガス等の流体の流れを改善し、圧力損失を低減できるハニカム構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、隔壁により区画された互いに略平行な複数の流路を有するハニカム状の柱状体と、上記流路の一方の端部を塞ぐ封口部と、を備え、上記複数の流路のうち一部の流路は、上記流路に略直交する上記柱状体の第一端面及び第二端面のうち上記第一端面において上記封口部で塞がれ、上記第二端面においては開き、他の上記流路は、上記第二端面において上記封口部で塞がれ、上記第一端面において開いており、上記封口部がセラミックスを含み、上記柱状体がセラミックス及びその原料粉末のうちの少なくとも一方を含み、上記第一端面及び上記第二端面のうちの少なくとも一方の端面における少なくとも一部の上記封口部上に、上記柱状体の外側に向かって突出した凸部を有する、ハニカム構造体を提供する。
【0009】
従来のハニカム構造体では、その一方の端面側から排ガス等の流体を供給した場合、封口部に流体が衝突して流れが乱れることとなる。これに対し、本発明のハニカム構造体によれば、柱状体の一方の端面の封口部上に凸部を有することにより、当該凸部を有する端面側から排ガス等の流体を供給した場合に、凸部に沿った流体の流れが形成され、流体の流れがスムーズになり、圧力損失を低減することができる。
【0010】
本発明はまた、原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、上記原料スラリーをハニカム成形体の所定の流路の端部に充填し、上記ハニカム成形体の端面近傍まで封口部を形成する封口工程と、少なくとも一部の上記封口部上に、上記原料スラリーを用いて、上記ハニカム成形体の外側に向かって突出した凸部を形成する凸部形成工程と、を有するハニカム構造体の製造方法を提供する。かかる製造方法により、上述した本発明のハニカム構造体を製造することができる。
【0011】
本発明の製造方法の上記凸部形成工程においては、上記原料スラリーの液滴をインクジェット法により上記封口部上に飛ばして上記凸部を形成することが好ましい。インクジェット法を用いることで、凸部の形成を簡易に行うことができる。また、インクジェット法を用いることで、凸部を精度良く、且つ効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排ガス等の流体の流れを改善し、圧力損失を低減できるハニカム構造体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のハニカム構造体の端面図である。
【図2】図2は、図1(a)に示したハニカム構造体のI−I線断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造過程で形成されるハニカム成形体の斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のハニカム成形体の端面図である。
【図4】図4は、原料スラリーをインクジェットヘッドに供給する手段を示す模式図である。
【図5】図5は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の一例(バブルジェット(登録商標)方式)を示す部分破断斜視図である。
【図6】図6は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の他の一例(ピエゾ方式)を示す部分破断斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法の封口工程により封口部が形成されたハニカム成形体を示す模式断面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図11】図11(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における凸部形成工程の一部を示す模式断面図であり、図11(b)は、形成した凸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当部分には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
<ハニカム構造体>
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のハニカム構造体の端面図である。また、図2は、図1(a)に示したハニカム構造体のI−I線断面図である。図1及び図2に示すように、ハニカム構造体200は、隔壁170cにより区画された互いに略平行な複数の流路170aを有するハニカム状の柱状体170と、流路170aの一方の端部を塞ぐ封口部170bと、を備えている。また、複数の流路170aのうち一部の流路は、流路170aに略直交する柱状体の第一端面F1及び第二端面F2のうち第一端面F1において封口部170bで塞がれ、第二端面F2においては開き、他の流路は、第二端面F2において封口部170bで塞がれ、第一端面F1において開いている。そして、ハニカム構造体200は、第一端面F1における少なくとも一部の封口部170b上に、柱状体170の外側に向かって突出した凸部170dを有している。
【0016】
図1及び図2に示したハニカム構造体200において、凸部170dは、断面が三角形(二等辺三角形又は正三角形)である四角錐形状を有している。なお、凸部170dの形状は特に限定されず、例えば、断面が釣鐘型や半円型等の流線型である形状を有していてもよい。また、凸部170dは、封口部170b表面の一部のみを覆うように形成されていてもよい。更に、開口している流路170aを塞がない限りにおいては、封口部170b表面からはみ出して、隔壁170cの一部を覆っていてもよい。柱状体170の第一端面F1からの凸部170dの高さHは、封口部170bの長辺の長さLの1〜3倍であることが好ましい。この高さHが長さLの1倍未満であると、排ガス等の流れを改善する効果が低下する傾向があり、3倍を超えると、凸部170dがわずかな応力で折れる傾向がある。
【0017】
ハニカム構造体200において、流路170aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.5〜2.5mmとすることができる。ハニカム構造体200の寸法は、図1に示したような円柱体である場合、例えば、直径約100mm以上、長さ約100mm以上、隔壁170cの壁厚は約0.5mm以下であることが好ましい。また、ハニカム構造体200におけるセル構造は流路170aの合計数として100CPSI以上、有効気孔率は30〜60体積%、平均細孔直径は1〜20μm、細孔径分布(D90−D10)/D50は0.5未満であることが好ましい。ここで、D10、D50、D90は全細孔容積のうち累積細孔容積が各々10%、50%、90%になるときの細孔直径である。
【0018】
図1及び図2に示した構造のハニカム構造体200においては、隔壁170cは多孔質のセラミックスで構成され、この隔壁がフィルターの役割を果たす。このハニカム構造体200に対し、図1の(b)に示した側の第一端面F1(図1(a)における上端面)から流体を供給した場合、流体は開口している流路170aから入り、多孔質の隔壁170cを通って、第二端面F2側が開口している流路170aに移動し、第二端面F2から排出される。このとき、第一端面F1側には凸部170dが形成されているため、流体はスムーズに流路170aに入り、流体を通過させる際の圧力損失が低減される。
【0019】
凸部170dは、必ずしも第一端面F1における全ての封口部170b上に形成する必要はない。少なくとも一部の封口部170b上に凸部170dを形成しておくことにより、流体の流れを改善する効果は得られる。現実的には、図1(b)に示すように、柱状体170の第一端面F1の周縁部においては、流路170aの断面形状が歪になり、断面積が小さくなる。そのため、そのような流路170aを塞ぐ封口部170bの表面領域も小さくなり、凸部170dを形成することが困難となる。したがって、柱状体170の周縁部の封口部170b上には凸部170dを形成せず、十分な表面領域を有する封口部170b上にのみ凸部170dを形成することが好ましい。
【0020】
また、凸部170dは、第一端面F1のみならず、第二端面F2にも形成してもよい。両端面に凸部170dを形成した場合、いずれの端面側から流体を供給しても、流体の流れを改善して圧力損失を低下させる効果が得られる。但し、流体を第一端面F1側のみから供給することが決まっている場合には、第一端面F1側のみに凸部170dを形成しておけばよい。
【0021】
ハニカム構造体200において、封口部170bはセラミックスを含み、柱状体170はセラミックス及びその原料粉末のうちの少なくとも一方を含む。また、凸部170dは、封口部170bと同じ材料を用いて形成することが好ましい。ハニカム構造体200の構成材料については、以下のハニカム構造体の製造方法において詳しく説明する。
【0022】
<ハニカム構造体の製造方法>
本発明のハニカム構造体の製造方法は、原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、上記原料スラリーをハニカム成形体の所定の流路の端部に充填し、上記ハニカム成形体の端面近傍まで封口部を形成する封口工程と、少なくとも一部の上記封口部上に、上記原料スラリーを用いて、上記ハニカム成形体の外側に向かって突出した凸部を形成する凸部形成工程と、を有する方法である。また、本発明の製造方法は、凸部形成工程後、封口部及び凸部が形成されたハニカム成形体を焼成する焼成工程を更に有することが好ましい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0023】
原料スラリー調製工程において調製する原料スラリーとしては、無機化合物粉末(セラミックス材料、セラミックスの原料粉末又はそれらの混合物)、有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等の混合物を用いればよい。原料スラリーが含有する無機化合物粉末の組成は、後述するハニカム成形体を形成するための無機化合物粉末の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、原料スラリーが含有する有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等は、後述するハニカム成形体を形成するための材料と同様のものを用いることができる。
【0024】
原料スラリーの23℃での粘度は、インクジェット法により封口部を形成する場合、0.1〜10Pa・sであることが好ましく、1〜10Pa・sであることがより好ましい。この粘度が0.1Pa・s未満であると原料スラリーの液滴がハニカム成形体の隔壁に衝突後に拡散してしまい、堆積しにくくなる傾向があり、10Pa・sを超えると原料スラリーがノズルに詰まりやすく、ノズル先端に堆積しやすくなり、飛滴しにくくなる傾向がある。
【0025】
封口工程では、原料スラリーをハニカム成形体の所定の流路の端部に充填し、ハニカム成形体の端面近傍まで封口部を形成する。
【0026】
ハニカム成形体は、例えば図3に示すような構造を有するものである。図3(a)及び図3(b)に示すように、ハニカム成形体70は、ハニカム構造を有する円柱体である。ハニカム成形体70は、その中心軸に平行であり、互いに直交する複数の隔壁70cを有する。つまり、ハニカム成形体70は、その中心軸方向に垂直な断面において格子構造を有する。換言すれば、ハニカム成形体70には、同一方向(中心軸方向)に延びる多数の流路70a(貫通孔)が形成されており、隔壁70cが各流路70aを隔てる。各流路70aはハニカム成形体70の両端面に略垂直である。なお、ハニカム成形体70が有する複数の隔壁70cが互いになす角は特に限定されず、例えば120°であってもよい。
【0027】
ハニカム成形体70は、例えば、原料混合物を押出成形して、隔壁70cにより区画された複数の流路70a(貫通孔)を有するハニカム成形体70を得る押出成形工程を経て作製することができる。
【0028】
ハニカム成形体を形成するための原料混合物は、後で焼成することにより多孔性セラミックスとなる材料であり、セラミックス原料を含む。セラミックス原料は特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0029】
原料混合物は、好ましくは、セラミックス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0030】
例えば、セラミックスがチタン酸アルミニウムの場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末、及び/又は、チタン酸アルミニウム粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末、及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0031】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0032】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0033】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。
【0034】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。
【0037】
原料混合物は、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物を混練機等により混合することで調製することができる。
【0038】
ハニカム成形体70は、上記原料混合物を隔壁70cの断面形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、必要に応じて乾燥をし、所望の長さに切ることにより得ることができる。
【0039】
封口工程において、封口部の形成方法は特に制限されないが、原料スラリーの液滴をインクジェット法によりハニカム成形体70の封口すべき箇所に飛ばして封口部70bを形成する方法を用いることが好ましい。インクジェット法により封口部を形成する装置としては、例えばインクジェットプリンタが用いられる。インクジェットプリンタの印字方式は、インクが空中を飛ぶ非接触型である。インクジェットプリンタは、通常、ヘッドが走査する機構を有し、ヘッドが複数のノズルを有する。封口工程では、ヘッドに設けられた複数のノズルから、原料スラリーの液滴を吐出する。
【0040】
図4は、原料スラリーをインクジェットプリンタのノズルに供給する手段を示す模式図である。図4に示すように、原料スラリーは、スラリー貯槽101から電磁弁102を介して供給ポンプ103により吸い上げられ、調圧弁104により圧力調整されながら、複数のノズルを有するインクジェットヘッド105に供給される。
【0041】
図5及び図6は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の一例を示す部分破断斜視図であり、図5はバブルジェット(登録商標)方式(サーマル方式)のインクジェットヘッドを、図6はピエゾ方式のインクジェットヘッドをそれぞれ示している。図5に示したバブルジェット(登録商標)方式は、インク室12に収容された原料スラリーをヒーター16により加熱することで、原料スラリーに気泡(バブル)18を発生させ、ノズル14から原料スラリーの液滴10を噴射させる方式である。一方、図6に示したピエゾ方式は、ピエゾ素子26に電圧を加えて変形させることで、インク室22に収容された原料スラリーに変形圧力を伝え、ノズル24から原料スラリーの液滴10を噴射させる方式である。本発明においては、いずれの方式も好適に使用することができる。また、本発明においては、バブルジェット(登録商標)方式及びピエゾ方式以外にも、加熱式のピエゾ駆動方式等の公知の方式を使用することができる。
【0042】
インクジェットヘッドを走査させる際の走査方向は、1次元であってもよく、2次元であってもよい。また、ノズルから吐出される液滴10の量は特に制限されないが、封口部の形成のし易さから、1〜20pLであることが好ましい。更に、ノズルから吐出される液滴10の吐出速度は特に制限されないが、封口部の形成のし易さから、0.5〜5m/sであることが好ましい。
【0043】
封口部の形成は、例えば図7〜図9に示した手順で行うことができる。すなわち、図7に示すように、ハニカム成形体70を端面が横向きになるように配置し、インクジェットヘッド105を用いて原料スラリーの液滴10を水平方向に飛ばす方法を用いることができる。これにより、図8(a)に示すように、ハニカム成形体70の封口すべき流路70aに封口層70b1を形成する。封口層70b1は、多数の液滴10をハニカム成形体70の隔壁70cに付着させることで形成することができる。また、封口層70b1の形成が容易になるため、60〜110℃程度の温度で乾燥しながら液滴10を飛ばすことが好ましい。続いて、図8(b)及び(c)に示すように、同様の手順で封口層70b2,70b3を順次積層していくことで、所望の長さの封口部70bを形成することができる。なお、封口層の積層数は特に限定されず、必要な長さの封口部70bが得られるまで積層数を増やすことができる。この方法により、ハニカム成形体70の一方の端面(第一端面)の所望の位置に封口部70bを形成した後、他方の端面(第二端面)における第一端面側で封口部70bが形成されていない流路70aに封口部70bを形成することで、図9に示した構造を有するハニカム成形体を得ることができる。第一端面側で封口部70bが形成された流路70aと、第二端面側で封口部70bが形成された流路70aとは、格子状に交互に配置される。
【0044】
図10は、原料スラリーの液滴10を飛ばして封口部70bを形成する際の他の方法を示している。すなわち、図7ではハニカム成形体70を横向きに配置したが、図10に示すように、ハニカム成形体70を端面が水平面に対して斜めになるように配置し、その上方に配置したインクジェットヘッド105から原料スラリーの液滴10を下向きに飛ばす方法を用いることもできる。この場合、飛ばした液滴10をハニカム成形体70の隔壁70cに付着させ易くなる。なお、ハニカム成形体70を端面が横向き又は縦向きになるように配置し、インクジェットヘッド105からの液滴10の吐出方向をハニカム成形体70の端面に対して斜めにしてもよい。
【0045】
また、本発明の製造方法おいて、封口工程は従来公知の方法で行ってもよい。例えば、封口部の形成は、複数の貫通孔が所望の位置に設けられたマスクをハニカム成形体70の一端面(第一端面)に密着させ、そこへ原料スラリーを供給することにより、一部の流路70aの端部に封口部70bを形成し、ハニカム成形体70の他端面(第二端面)に対しても同様にして、第一端面側に封口部70bを形成していない他の流路70aの端部に封口部70bを形成することにより行うことができる。これにより、図9に示した構造を有するハニカム成形体を得ることができる。
【0046】
原料スラリーを流路70aに供給する方法は特に限定されない。例えば、マスク上に供給した原料スラリーを、スキージを用いてマスクの貫通孔を介して流路内に押し込んでもよいし、ピストンにより押し込んでもよい。
【0047】
凸部形成工程においては、少なくとも一部の封口部70b上に、上記原料スラリーを用いて、ハニカム成形体70の外側に向かって突出した凸部70dを形成する。凸部70dの形成方法は特に限定されず、例えば、金型等を用いて形成する方法を用いてもよいが、インクジェット法により形成する方法を用いることが好ましい。インクジェット法を用いる場合、上記封口部70bをインクジェット法により形成する場合と同様に、原料スラリーの液滴をインクジェット法により封口部70b上に飛ばして凸部70dを形成する。
【0048】
図11(a)は、インクジェット法により封口部70b上に凸部70dを形成した状態を示す模式断面図であり、図11(b)は、形成した凸部70dの拡大図である。図11(b)に示すように、インクジェット法により凸部70dを形成する場合、インクジェットヘッド105の走査位置を調節することにより液滴10を飛ばす箇所を徐々に狭めることで、断面が三角形である四角錐形状の凸部70dを形成することができる。こうして形成される凸部70dは、微視的には図11(b)に示すような階段状の断面を有していてもよい。なお、段階的にインクジェットヘッド105の走査範囲を狭めていくことで凸部70dを形成した場合でも、通常、原料スラリーの液滴がハニカム成形体70に到達した際に液滴の形状がつぶれて、凸部70dの表面は滑らかになる。
【0049】
なお、凸部形成工程は、封口工程により第一端面側の封口部70bを形成した後、第二端面側の封口部70bを形成する前に行ってもよい。特に、封口部70b及び凸部70dの双方をインクジェット法により形成する場合には、第一端面において封口部70bを形成した後、続けて凸部70dを形成するのが効率的である。
【0050】
上記封口工程及び凸部形成工程によりハニカム成形体70に封口部70b及び凸部70dを形成した後、焼成工程を行う。焼成工程において、ハニカム成形体70、封口部70b及び凸部70dを仮焼(脱脂)および焼成することにより、図1(a)及び(b)に示すように、多孔質のセラミックスからなる隔壁170cにより区画され且つ一端が封口部170bで塞がれた複数の流路170aを有するハニカム構造体200を得ることができる。ハニカム構造体200では、第一端面側で封口部170bに塞がれた流路170aは、第二端面側で開いている。第二端面側で封口部170bに塞がれた流路170aは、第一端面側で開いている。また、第一端面側の少なくとも一部の封口部170b上には、凸部170dが形成されている。このように、焼成前のグリーン成形体(未焼成の成形体)に対して封口工程及び凸部形成工程を行い、その後に焼成工程を行った場合、焼成工程が1回で済むとともに、焼成後の封口部170bとハニカム構造体との良好な密着性が得られるため好ましい。
【0051】
仮焼(脱脂)は、ハニカム成形体70、封口部70b及び凸部70d中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を、焼失、分解等により除去するための工程であり、典型的には、焼成温度に至るまでの昇温段階(たとえば、150〜900℃の温度範囲)になされる。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0052】
ハニカム成形体70の焼成における焼成温度は、通常、1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。また、焼成温度は、通常、1650℃以下、好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。
【0053】
焼成は通常、大気中で行なわれるが、用いる原料粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0054】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0055】
焼成に要する時間は、セラミックスが生成するのに十分な時間であればよく、ハニカム成形体の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0056】
なお、焼成工程は、封口工程の前に行ってもよい。ただしその場合には、封口工程及び凸部形成工程後に再度焼成工程を行う必要がある。
【0057】
以上の工程を経て、目的のハニカム構造体200を得ることができる。得られたハニカム構造体200は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、本発明のハニカム構造体の形状は特に限定されず、用途に応じて任意の形状を取ることができる。例えば、外形も、円柱に限られず、例えば、正三角柱、正方形柱、正六角柱、正八角柱等の正多角柱や、正多角柱以外の、3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等の柱体とすることができる。また、各流路の断面形状も、正方形には限定されず、矩形、円形、楕円形、3角形、6角形、8角形等にすることができ、流路には、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在してもよい。さらに、流路の配置も、正方形配置に限定されず、断面において流路の中心が正三角形の頂点に配置される正三角形配置、千鳥配置等にすることができる。
【0059】
本発明のハニカム構造体は、たとえば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルターや、触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分、たとえば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素などを選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルターなどに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…液滴、70…ハニカム成形体、70a…流路、70b…封口部、70c…隔壁、105…インクジェットヘッド、170…柱状体、170a…流路、170b…封口部、170c…隔壁、170d…凸部、200…ハニカム構造体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁により区画された互いに略平行な複数の流路を有するハニカム状の柱状体と、
前記流路の一方の端部を塞ぐ封口部と、
を備え、
前記複数の流路のうち一部の流路は、前記流路に略直交する前記柱状体の第一端面及び第二端面のうち前記第一端面において前記封口部で塞がれ、前記第二端面においては開き、
他の前記流路は、前記第二端面において前記封口部で塞がれ、前記第一端面において開いており、
前記封口部がセラミックスを含み、
前記柱状体がセラミックス及びその原料粉末のうちの少なくとも一方を含み、
前記第一端面及び前記第二端面のうちの少なくとも一方の端面における少なくとも一部の前記封口部上に、前記柱状体の外側に向かって突出した凸部を有する、ハニカム構造体。
【請求項2】
原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、
前記原料スラリーをハニカム成形体の所定の流路の端部に充填し、前記ハニカム成形体の端面近傍まで封口部を形成する封口工程と、
少なくとも一部の前記封口部上に、前記原料スラリーを用いて、前記ハニカム成形体の外側に向かって突出した凸部を形成する凸部形成工程と、
を有するハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記凸部形成工程において、前記原料スラリーの液滴をインクジェット法により前記封口部上に飛ばして前記凸部を形成する、請求項2記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項1】
隔壁により区画された互いに略平行な複数の流路を有するハニカム状の柱状体と、
前記流路の一方の端部を塞ぐ封口部と、
を備え、
前記複数の流路のうち一部の流路は、前記流路に略直交する前記柱状体の第一端面及び第二端面のうち前記第一端面において前記封口部で塞がれ、前記第二端面においては開き、
他の前記流路は、前記第二端面において前記封口部で塞がれ、前記第一端面において開いており、
前記封口部がセラミックスを含み、
前記柱状体がセラミックス及びその原料粉末のうちの少なくとも一方を含み、
前記第一端面及び前記第二端面のうちの少なくとも一方の端面における少なくとも一部の前記封口部上に、前記柱状体の外側に向かって突出した凸部を有する、ハニカム構造体。
【請求項2】
原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、
前記原料スラリーをハニカム成形体の所定の流路の端部に充填し、前記ハニカム成形体の端面近傍まで封口部を形成する封口工程と、
少なくとも一部の前記封口部上に、前記原料スラリーを用いて、前記ハニカム成形体の外側に向かって突出した凸部を形成する凸部形成工程と、
を有するハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記凸部形成工程において、前記原料スラリーの液滴をインクジェット法により前記封口部上に飛ばして前記凸部を形成する、請求項2記載のハニカム構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−91097(P2012−91097A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239463(P2010−239463)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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