説明

ハブとタイヤの間の膨張性断熱層

ドアアセンブリは、出入口を定めるフレームに取り付けられたドアヘッダと、フレームに移動可能に支持されたドアと、少なくとも1つの側面に沿って少なくとも1つの支持面を備えるトラックと、を有する。トラックは、ドアヘッダに固定される。上記のアセンブリは、トラックに沿って回転するように設けられた少なくとも1つのローラを有する。ローラは、ハブ部に隣接するリム部と、リム部を囲むとともにトラックと接触するタイヤ材料と、を有する。ローラは、タイヤ材料への熱伝達を防止するように、タイヤ材料と、リム部とハブ部の少なくとも一方と、の間で、少なくとも部分的に断熱層で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは周知の規格で要求される防火基準を有するエレベータ設備で使用される昇降路クロージャーに関する。
【0002】
本願と同日に出願されたワング等による「エレベータドアのローラおよびレールの断熱層」を参照されたい。
【背景技術】
【0003】
昇降路クロージャーは、階床からかごへのアクセスを可能にし、ドアフレームの主要部品と少なくとも1つのドアパネルを含む。ドアフレームは、典型的にヘッダおよび/または天井プレートを含み、ビルの種類によって壁または基礎フレームに直接連結される。少なくとも1つのドアパネルが摺動可能にドアフレームに取り付けられる。ドアパネルの構成の可能な形態によって、単一パネルまたはマルチパネルのテレスコーピックドアあるいはセンタドアの区別がなされる。テレスコーピックドアは、一方側で開閉するのに対し、センタオープニングドアは、ドア開口部の中心に向かって両側から閉じる(とともにドア開口部の中心から両側に向かって開く)。各々のドアは、ドアに作用する力によって作動し、ドアに取り付けられるとともにレールと相互作用する1つまたは複数のローラを介して移動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビル火災におけるエレベータ乗場のドアシステムの耐火性は、適用される国の規格によって定められる基準によって規制されるドアアセンブリの標準耐火試験によって保証されている。例えば、米国のUL10B規格では、試験加熱炉内の温度は、実際のビルで起こりうる火災状態をシミュレートするために、90分の間で大気温度から982°Cまで徐々に上げられる。試験を通るために必要な主な条件は、試験の全期間においてドアアセンブリの全ての構成要素に可視炎がないことである。例えば、典型的な試験炉では、温度は特定の時間−温度曲線によって制御され、露出していないドア表面の着炎が記録される。この試験は、試験の最初の30分にわたって露出していない表面に炎が見られず、30分以降は5秒以上炎が持続しないことを典型的に要する。
【0005】
上述のことを踏まえて、本発明は、エレベータシステム、特にドアアセンブリに関する上述の1つまたは複数の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例は、ドアアセンブリに関し、このドアアセンブリは、出入口を定めるフレームに取り付けられたドアヘッダと、フレームに移動可能に支持されたドアと、少なくとも1つの側面に沿って少なくとも1つの支持面を備えるトラックと、を有する。トラックは、ドアヘッダに固定される。上記アセンブリは、トラックに沿って回転するように設けられた少なくとも1つのローラを有する。ローラは、ハブ部に隣接するリム部と、リム部を囲むとともにレールと接触するタイヤ材料と、を有する。ローラは、タイヤ材料への熱伝達を防止するように、タイヤ材料と、リム部とハブ部の少なくとも一方と、の間で、少なくとも部分的に断熱層で覆われている。
【0007】
本発明の他の実施例は、エレベータに関する。このエレベータは、特に、昇降路と、昇降路内で垂直移動するように構成されたかごと、を有する。昇降路は、1つまたは複数の昇降路出入口を有する。かごは、ドアアセンブリと、昇降路の1つまたは複数の出入口と整列するように設けられたかご出入口と、を有する。ドアアセンブリは、ドアヘッダと、ドアと、レールと、少なくとも1つのローラと、断熱層と、を有する。ドアヘッダは、かご出入口を定めるフレームに取り付けられる。ドアは、フレームに移動可能に支持される。レールは、該レールの少なくとも1つの側面に沿って支持面を備えるとともにドアヘッダに固定される。少なくとも1つのローラは、レールの支持面に沿って回転するように設けられる。ローラは、ハブに隣接するリムと、リムを囲むとともにレールと接触するタイヤ材料と、を有する。断熱層は、タイヤ材料への熱伝達を抑制するように、タイヤ材料と、ハブとリムの少なくとも一方と、の間に配置される。
【0008】
他の実施例では、本発明はローラアセンブリに関し、このローラアセンブリは、出入口を定めるフレームと、少なくとも1つの側面に沿って少なくとも1つの支持面を備えるレールと、を有する。レールは、フレームに固定される。少なくとも1つのローラが、レールの支持面に沿って回転するように設けられる。ローラは、ハブ部に隣接するリム部と、リム部を囲むとともにレールと接触するタイヤ材料と、を有する。ローラは、タイヤ材料への熱伝達を抑制するように、タイヤ材料と、リムとハブの少なくとも一方と、の間で、少なくとも部分的に断熱層で覆われている。
【0009】
さらに他の実施例では、方法が、少なくとも1つのドア用の出入口を定めるフレームに取り付けられたドアアセンブリを提供することを含み、上記1つのドアは、フレームに取り付けられたレールに移動可能に支持されている。レール上にドアを支持するローラが形成され、このローラは、リム部と、リム部の径方向内側に設けられたハブ部とを有する。断熱層が、リム部の径方向外側面の一部と、ハブ部の一部と、の少なくとも一方に設けられる。続いて、タイヤ材料がリム部に固定されることにより、断熱層がローラに加わる熱からタイヤ材料を絶縁するように配置される。
【0010】
上述の概要および以下の詳細な説明は単に例示的で説明的なものであり、請求項に記載された発明を限定するものではない。
【0011】
上述のおよびその他の本発明の特徴、形態および利点は、以下の説明、請求項および図示の例示的実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のエレベータかごの正面図である。
【図2】エレベータかごの上部の断面図である。
【図3】他の実施例に係るエレベータかごの上部の断面図である。
【図4A】エレベータかご用のレールとローラの斜視図である。
【図4B】図4Aのレールとローラを含むエレベータかご部分の断面図である。
【図4C】他の実施例に係るエレベータかご用のレールとローラの斜視図である。
【図5】ローラのハブに断熱層が設けられたレール上のローラの実施例の斜視図である。
【図6】ローラのリムに断熱層が設けられたレール上のローラの実施例の斜視図である。
【図7A】レールの頂部に沿って断熱層が設けられたレール上のローラの実施例の斜視図である。
【図7B】ローラと断熱サドルを含むレールの実施例の斜視図である。
【図7C】レールのくぼみに断熱サドルを含む図7Bのローラとレールの斜視図である。
【図8A】他の実施例に係るエレベータドア装置のレールとローラの側面図である。
【図8B】図8Aのレールとローラの断面を部分的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者の努力によって、ドアアセンブリは、火災時に対流熱、伝導熱および/または放射熱によって高温に達するおそれがあることが明らかになった。ドアハンガ、ローラおよびレールを含むドア構成要素は、構成要素を囲む対流熱である熱風により熱せられる。放射熱は、高温構成要素からこの高温構成要素に近接する低温構成要素への熱伝達によって発生する。典型的に、このような放射熱は、ドア自体や他のドアアセンブリ構成要素に隣接するヘッダや天井プレートなどの比較的大きい構成要素から発生する。伝導熱は、隣接する構成要素が接触しており、一方の構成要素から他方の構成要素への熱の伝達が可能となっている場合に発生する。これにより、一方の構成要素から他方の構成要素へと熱が急速に広がるおそれがある。
【0014】
火災時には、ドアおよびヘッダは直接熱にさらされうる。ドアおよびヘッダの温度が上昇すると、特定の状況によって、熱はドアからドアハンガおよび/またはヘッダからレールに広がるおそれがある。同時に、ドアの周囲の空気が自然対流によって加熱されて上昇し、熱風によって空気が漏れる流路内のトラックや他の構成要素が直接熱せられることが考えられる。ローラは、トラックやハンガからの熱および上昇する空気によって熱せられうる。火災時にドアとヘッダとの間に間隙があれば、高温箇所から漏れる熱風によってドアアセンブリの温度上昇がさらに加速されるおそれがある。
【0015】
エレベータかごおよびドアアセンブリは、典型的にポリマでコーティングされたローラを含む。このようなローラは、(綱やアルミニウムなどの)金属製のリム、軸受を受け入れるハブおよびリムの周囲に設けられた(上述のポリマなどの)タイヤ材料を有する。ローラは、ドアハンガを介してドアに連結され、ドアレール上に位置する。レールは、ドアの重量をトラックから壁に分散させるようにヘッダに固定されている。火災時には、ローラ上のタイヤのポリマが高温によって軟化して溶解し、ローラとレールの間のポリマの厚みが減少すると考えられる。このように厚みが減少した好ましくない場合には、理論的にはレールとロータとの間に熱的な近道が生じるおそれがある。このような潜在的な問題に鑑みて、以下に説明する実施例は、ビル火災に関連する熱の潜在的な負の影響に対してドアシステムがより良好に対処するのを可能にするために、従来のドアシステム(特にドアローラ)の堅牢性を向上させることを目的とする。
【0016】
図面において、対応部および相当部には同一または類似する参照符号を付している。
【0017】
図1は、従来のエレベータかご12の正面図である。図示のように、エレベータかごの(エントランスとも呼ばれる)出入口14は、かご本体12の前面に設けられている。ドアフレーム16が出入口14の幅に沿って延びており、出入口14の上方でかご本体12に固定されている。モータプーリ20を有するドアモータ18が、ドアフレーム16に取り付けられている。モータプーリ20よりも直径の大きい減速プーリ22が、モータプーリ20と減速プーリ22との間に巻き付けられたベルト24を有する。減速プーリ22よりも直径が小さく、かつ減速プーリ22と同軸の駆動プーリ26が、減速プーリ22と一体に回転可能に設けられている。従動プーリ28が、ドアフレーム16に設けられており、第2のベルト30が駆動プーリ26と従動プーリ28との間に巻き付けられている。
【0018】
ドアレール32が、出入口14の幅にわたって延びており、ドアフレーム16に取り付けられている。2つのかごドア34,35が、ドアハンガ36,37によってドアレール32に懸吊されている。各々のドアハンガ36,37は、それぞれ2つのローラ38を有し、これらのローラ38はドアレール32に沿って回転する。かごドア34,35は、ドアハンガ36,37およびベルトホルダ40,42を介して第2のベルト30に連結されている。複数のドアシュー44が、各々のドア34,35の下端に隣接して取り付けられている。これらのドアシュー44は、出入口14の下部に設けられた敷居46の溝(図示省略)に挿入される。かご本体12は、さらに、上部パネル48と天井パネル50を備えるヘッダを有する。
【0019】
動作時には、モータプーリ20がドアモータ18により回転し、この回転が減速ベルト24を介して減速プーリ22に伝達される。駆動プーリ26は、減速プーリ22とともに回転し、これに従って第2のベルト30が循環して従動プーリ28が回転する。ドアハンガ36,37がベルト30に連結されているので、ドアハンガ36,37およびドア34,35は、第2のベルト30の循環によって出入口14を開閉するようにドアレール32に沿って往復運動する。ドア34,35は、ドアレール32に懸吊され、ドア34,35のドアシュー44は、ドア34,35の開閉時に敷居46の敷居溝によって案内される。
【0020】
図2は、エレベータかご12の上部の断面図である。この図では、ドア34はドアハンガ36によってローラ38に連結されている。この実施例では、ドアハンガ36は、隣接する構成要素との連結を可能にする開口部を有する比較的平らなプレートである。締結具56によりドアハンガ36の頂部にローラ38が固定されており、締結具52によりドア34の頂部にドアハンガ36が固定されている。締結具52,56は、ボルト、ピン、小ねじ、リベットまたは当該技術で周知の同様の装置とすることができる。ローラ38は、プーリ、シーブ、リング、ホイールまたは当該技術で周知の同様の構造体とすることができる。
【0021】
ドアハンガ36には、さらに、レール底部支持部54が取り付けられている。図示の実施例では、レール底部支持部54は、レール32の底部と接触してレール32に対して移動可能な滑らかな面を備えるブラケットである。他の実施例では、レール底部支持部は、軸受、ローラ、ホイールまたはレール32との低摩擦接触を可能にする同様の構造体である。レール32は、ローラ38が移動するトラックであり、ドア34,35の頂部に実質的に平行に図示されている(図1参照)。レール32は、連結装置58によって上部パネル48に連結されており、連結装置58は、レール32を定位置に固定する締結具または取付ブラケットとすることができる。レール32は、レール32に沿ったローラ38およびドアハンガ36の移動、すなわちドア34の移動を許容するように固定されている。上部パネル48は、天井パネル50に連結されている。
【0022】
図3は、エレベータかご12の上部の他の実施例の断面図である。この実施例では、上部パネル48Aが天井パネル50Aと連続している。レール32Aは、締結具58Aによって上部パネル48Aに取り付けられている。ローラ38Aは、回転可能にレール32Aと接触し、ドアハンガ36Aによってドア34Aに連結されている。ドアハンガ36Aは、ドア34Aに対するローラ38Aの適切な位置決めを可能にするように角度づけられており、締結具52Aによってドア34Aに連結されている。ローラ38Aとドアハンガ36Aは、位置決め装置60とも連結されている。一実施例では、位置決め装置は、上下の磁石を有する。磁石の磁性は、レール32Aに対するローラ38Aの移動によってドア34Aを移動させる所望の力を発生する上下の磁石の所望の相互作用を提供するように設けられている。
【0023】
図2,図3には、ドア34(34A)の頂部に隣接して、エレベータかご12を収容するビルの火災を表す炎が図示されている。火災は、エレベータかご12を含む周囲の領域の温度上昇を招きうる。図示のように、火災は多くの方法でエレベータかごに影響を及ぼすことが考えられる。第一に、高温は、レールおよびハンガの伝導による温度上昇を招きうる。第二に、ドア34と上部パネル48(およびドア34Aと上部パネル48A)に隣接する間隙は、隣接する要素の対流加熱を引き起こしうる。第三に、空気温度の上昇は、エレベータかご12の構成要素、特にローラ38に影響を及ぼしうる。そして、最後に、火災は、ドア34、上部パネル48および天井パネル50からの放射熱を増加させるおそれがある。本発明は、火災がエレベータかご12に及ぼしうる上述の影響を最小化する。
【0024】
図4Aは、レール32とローラ38の斜視図である。図4Bは、レール32とローラ38を含むエレベータかご部分の斜視図である。ローラ38は、炭素鋼製またはアルミニウム製の機械加工されたホイールである。両図において、耐熱材料のストリップ62がレールの一部に追加されている。このストリップは、レールの長さにわたって延びて、レール32と上部パネル48との接触領域を覆う。ストリップ62は、非常に熱伝導率が低い材料またはコーティングである。ストリップ62は、図示の例では上部パネル48として示すヘッダからレール32、従ってローラ38に伝導される熱を減少させる。
【0025】
図4Cは、ローラ38Bの他の実施例とともにレール32を示す斜視図である。この実施例では、ローラ38Bは、スタンピングで製造された鋼製のホイールである。ローラ38Bは、アルミニウムや炭素鋼などの剛性材料で形成されたリム67を備える。一実施例では、ローラ38Bは、プーリやシーブなどの類似の構造体で一般的であるように、円筒形で、かつチャネルを形成するように径方向外側面から延びる2つのフランジを有する。リム67の径方向内側面は、軸受66を固定するハブ64に連結している。ハブ64は、リム67と同様もしくは同じ材料で形成されている。軸受66は、ころ軸受、玉軸受、ケージ軸受またはテーパホイール軸受などの当該技術で周知の一般的な軸受である。軸受66は、ローラ38Bをドアハンガ36に連結するために締結具56を受け入れる。リム67の外側面は、リング68を含む。リング68は、典型的にレール32と相互作用するポリマベースのタイヤ材料からなる。一実施例では、リング68は、リム67の実質的に平行な2つのフランジの間でリム67の径方向外側面に固定されたタイヤ材料である。
【0026】
耐熱材料のストリップ62が、レール32に取り付けられている。ストリップ62は、レールの長さに沿って延びて、レール32とヘッダ(図示省略)との接触領域を覆う。レール32は、金属などの剛性材料から形成される。上述と同様に、ストリップ62は、非常に熱伝導率が低い材料またはコーティングである。一実施例では、ストリップ62は、セラミック材料である。他の実施例では、ストリップ62は、レール32の材料よりも熱伝導率が低い金属、複合材、または類似の絶縁材料である。具体的には、ストリップ62は、シリカ、鉱滓綿、セラミック繊維、繊維ガラス、アルミナ繊維またはアルミナシリカ繊維である。ストリップ62は、レール32に取り付けられた固形のシート材料またはレール32に施されるコーティングとすることができる。ストリップ62は、ヘッダすなわち壁48からレール32、従ってローラ38に伝達される熱を減少させる。ドアアセンブリにストリップ62を設けることによって、レール32への伝導および放射による熱伝達を心配することなく、ローラ38およびレール32を壁48を含むヘッダにより近接して配置することが可能になる。この設計は、ドアアセンブリに必要な空間を減少させる。他の実施例では、ストリップ62は、レール32への伝導および放射による熱伝達をさらに防ぐために、レール32またはヘッダすなわち壁48のいずれかの追加の部分、または両方の追加の部分を覆うことができる。
【0027】
図5,図6は、レール32上のローラ38の斜視図である。ローラ38は、アルミニウムまたは炭素鋼などの剛性材料から形成された円形のフランジ構造体すなわちシーブであるリム67を含む。リム67は、ハブ64に連結され、このハブ64は、軸受とドアハンガ36にローラ38を取り付ける締結具を固定する。ハブ64は、リム67と同様または同一の材料から形成され、この材料はアルミニウムまたは炭素鋼などの金属とすることができる。ハブ64は、リム67の一部として製造可能である。他の実施例では、ハブ64は、リム67に固定されたフランジ構造体またはリム67に対して軸受を定位置に保持するために使用されるワッシャなどの平らな材料片である。リム67の外側面は、リング68を含む。リング68は、典型的にレール32と相互作用するポリマベースのタイヤ材料からなる。
【0028】
図5では、断熱層70がハブ64に設けられている。同様に、図6では、断熱層72がリム67に設けられている。断熱層70,72は、セラミック、複合材または同様の絶縁材料などの低熱伝導材料である。具体的には、断熱層70,72は、塗料を含むセラミックコーティング、膨張層、多層の低熱伝導層などとすることができる。断熱層70,72は、コーティング、あるいはローラ38に固定される材料片として設けられる。断熱層70,72は、ドアハンガ36からローラ38への熱伝導を減少させるとともに、高温環境におけるローラの周囲の高温空気からローラ38への熱対流を減少させる。ローラ38は、周りの隣接するドアアセンブリ構成要素およびローラ38の設計によって、一方または両方の断熱層70,72を含みうる。これにより、上述と同様に、ドアアセンブリ構成要素の間の熱伝達が減少し、より小型のドアアセンブリ設計が可能になるという利点が提供される。例えば、断熱層70は、空気からローラ38への熱伝導を防止し、断熱層72は、ローラ38のリム67からドアハンガ36,37への熱伝導を減少させる。
【0029】
図7Aは、レール32上のローラ38の斜視図である。ローラ38は、レール32と接触するポリマベースのタイヤ材料であるリング68を含む。レール32は、リング68と接触する頂部74を含む。頂部74は、熱伝導率が低い材料から形成される。頂部74は、レール32の他の部分から独立して製造可能であり、続いて2つの部分を固定することができる。頂部74は、レール32とローラ38との間の熱伝達を抑制する。
【0030】
図7B,図7Cは、いずれもレール32上のローラ38の斜視図である。上述と同様に、ローラ38は、リング68を支持するリム67を含む。ローラ38とリング68とは、上述のように構成される。同様に、レール32は、ローラ38の回転移動を可能にする金属製のトラックである。これらの実施例では、レール32は、断熱層として機能するサドル76を含む。つまり、サドル76は、レール32とローラ38との間の熱伝達を抑制する材料から形成される。サドル76を図示するために、ローラ38はレールから離間して示してある。使用時には、ローラ38は、レール32と接触する。
【0031】
サドル76は、ドアが閉位置にあるときに(図1参照)ローラ38がレール32と直接接触しないようにレール上に配置されている。つまり、サドル76は、レール32とローラ38との間に位置する。サドル76は、レール32に固定される材料片、またはレール32上の小面積のコーティングである。図7Bでは、サドル76は、既知のレール32に追加された断熱層である。図7Cでは、レール32は、くぼみ78を有するように特別に製造されている。サドル76は、レール32上でローラ38が確実に滑らかに移動するように、サドル76の頂部がレール32の頂部と平行に位置するようくぼみ78に配置されている。他の実施例では、サドル76は、レール32の長さに沿って延びうる。
【0032】
図8Aは、レール32とローラ38の他の実施例の側面図である。図8Bは、図8Aのレール32とローラ38の断面を部分的に示す斜視図である。ローラ38は、ローラをドアアセンブリに固定する締結具56を含む。ローラ38は、さらに、レール32と接触するタイヤ材料であるリング68を含む。一実施例では、リング68は、ポリウレタンなどのポリマである。この実施例では、断熱層80がローラ38のリム67とリング68との間に位置する。断熱層は、ローラ38のリム67とリング68との間に接着剤として設けることができる膨張層である。この膨張性材料は、タイヤの溶解温度よりも低い膨張開始温度を有する。膨張性材料が膨張開始温度に達すると、化学反応が始まって層が膨張する。結果的に生じる体積の増加および密度の減少は、材料の熱伝導率の減少にも関連する。一実施例では、断熱層80は、体積が350倍まで増加し、熱伝導率が10分の1に減少する。これにより、トラックからハブへの熱伝達が阻止される。リング68が熱せられる速度を減少させて、リングの温度を溶解温度より下で管理することにより、タイヤが溶解して可視炎を発生することがない。これにより、ドアの耐火試験における失敗の原因の1つが事実上なくなる。
【0033】
断熱層80として使用される材料の例は、ポリウレタンや金属面用の接着剤と、ノルド−ミン(Nord−Min)(登録商標)150、グラフガード(Grafguard)(登録商標)160、ミネルコファイヤーカーブ ティーイージー(Minelco FireCarb TEG)−160などの150〜160°Cの膨張開始温度を有する膨張黒鉛1〜20%と、の混合物である。タイヤとハブとの間の接着力は、膨張黒鉛を加える前の接着力の90%以上に保たれる。この接着力は、ローラ38の設計寿命内では減少しない。
【0034】
断熱層62,70,72,76は、少なくとも1つのドア用の出入口を定めるフレームに取り付けられたドアアセンブリが提供され、上記の少なくとも1つのドアが、フレームに固定されたレール上に支持される少なくとも1つのローラへの連結によってフレームに移動可能に支持される方法を可能とする。断熱層が、ドアアセンブリの少なくとも一部に設けられる。上述の断熱層62,70,72,76,80は、ローラ38およびレール32の設計のために要望もしくは要求されるように設けることができる。断熱層62,70,72,76,80の全ての実施例は、個々にまたは他の実施例と組み合わせて使用可能である。
【0035】
断熱層80を設けることにより、少なくとも1つのドアの出入口を定めるフレームに取り付けられたドアアセンブリが提供され、上記の少なくとも1つのドアが、フレームに固定されたレール上に支持される少なくとも1つのローラへの連結によってフレームに移動可能に支持される方法が可能となる。レール上にドアを支持するローラが形成され、このローラは、リム部とリム部の径方向内側に位置するハブ部とを備える。断熱層が、リム部の径方向外側面の少なくとも一部に設けられ、続いて、タイヤ材料がリム部の径方向外側面に固定される。
【0036】
上述の説明は、単に本発明を説明するものであり、特定の実施例または実施例の群に請求項を限定すると解釈されるべきではない。よって、特定の例示的な実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、以下の請求項に記載した発明の意図された広い範囲から逸脱せずに、本発明に種々の改良や変更を加えることができる。
【0037】
従って、明細書および図面は、説明的なものであり、請求の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の上述の開示内容に鑑みて、当業者であれば、本発明の範囲に含まれる他の実施例や改良例があることが分かるであろう。よって、当業者が想到しうる本発明の範囲内の全ての改良は、本発明のさらなる実施例として含まれる。本発明の範囲は、以下の請求項に記載のとおり定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口を定めるフレームに取り付けられたドアヘッダと、
前記フレームに移動可能に支持されたドアと、
少なくとも1つの側面に沿って少なくとも1つの支持面を備え、かつ前記ドアヘッダに固定されたトラックと、
前記トラックに沿って回転するように設けられるとともに、ハブ部に隣接するリム部と、リム部を囲むとともに前記トラックと接触するタイヤ材料と、を有する少なくとも1つのローラと、
前記タイヤ材料への熱伝達を防止するように、該タイヤ材料と、前記リム部と前記ハブ部の少なくとも一方と、の間に設けられた断熱層と、を有することを特徴とするドアアセンブリ。
【請求項2】
前記断熱層は、膨張性材料であることを特徴とする請求項1記載のドアアセンブリ。
【請求項3】
前記断熱層は、前記リム部と前記タイヤ材料との間に接着剤として設けられていることを特徴とする請求項2記載のドアアセンブリ。
【請求項4】
前記膨張性材料は、熱が加わったときに体積が350倍まで増加可能であることを特徴とする請求項2記載のドアアセンブリ。
【請求項5】
前記膨張性材料により、前記タイヤ材料と前記ローラのリム部との間の熱伝導率が約10分の1に低下することを特徴とする請求項2記載のドアアセンブリ。
【請求項6】
1つまたは複数の昇降路出入口を有する昇降路と、
昇降路内で垂直に移動するように設けられたかごと、を含むエレベータであって、前記かごは、
前記1つまたは複数の昇降路出入口と整列するように設けられたかご出入口と、
ドアアセンブリと、を有し、このドアアセンブリは、
前記かご出入口を定めるフレームに取り付けられたドアヘッダと、
前記フレームに移動可能に支持されたドアと、
少なくとも1つの側面に沿って少なくとも1つの支持面を備え、かつ前記ドアヘッダに固定されたレールと、
前記レールの支持面に沿って回転するように設けられ、かつハブに隣接するリムと、リムを囲むとともに前記レールに接触するタイヤ材料と、を有する少なくとも1つのローラと、
前記タイヤ材料への熱伝達を抑制するように、該タイヤ材料と前記ハブと前記リムの少なくとも一方と、間に設けられた断熱層と、を有することを特徴とするエレベータ。
【請求項7】
駆動プーリに接続された駆動モータと、
前記駆動プーリから離間して設けられた被駆動プーリと、
前記の駆動プーリと被駆動プーリとに巻き付けられた駆動ベルトと、をさらに有し、前記ドアが前記駆動ベルトに取り付けられていることを特徴とする請求項6記載のエレベータ。
【請求項8】
前記断熱層は、膨張性材料であることを特徴とする請求項6記載のエレベータ。
【請求項9】
前記断熱層は、前記リムと前記タイヤ材料との間に接着剤として設けられていることを特徴とする請求項8記載のエレベータ。
【請求項10】
前記膨張性材料は、熱が加わったときに体積が350倍まで増加可能であることを特徴とする請求項8記載のエレベータ。
【請求項11】
前記膨張性材料により、前記タイヤ材料と前記ローラのリムとの間の熱伝導率が約10分の1に低下することを特徴とする請求項8記載のエレベータ。
【請求項12】
出入口を定めるフレームと、
少なくとも1つの側面に沿って少なくとも1つの支持面を備え、かつ前記フレームに固定されたレールと、
前記レールに沿って回転するように設けられ、かつハブ部に隣接するリム部と、リム部を囲むとともに前記レールに接触するタイヤ材料と、を有する少なくとも1つのローラと、
前記タイヤ材料への熱伝達を防止するように、該タイヤ材料と、前記リム部と前記ハブ部の少なくとも一方と、の間に設けられた断熱層と、を有することを特徴とするローラアセンブリ。
【請求項13】
前記断熱層は、膨張性材料であることを特徴とする請求項12記載のローラアセンブリ。
【請求項14】
前記断熱層は、前記リム部と前記タイヤ材料との間に接着剤として設けられていることを特徴とする請求項13記載のローラアセンブリ。
【請求項15】
前記膨張性材料は、熱が加わったときに体積が350倍まで増加可能であることを特徴とする請求項13記載のローラアセンブリ。
【請求項16】
前記膨張性材料により、前記タイヤ材料と前記ローラのリム部との間の熱伝導率が約10分の1に低下することを特徴とする請求項13記載のローラアセンブリ。
【請求項17】
a)少なくとも1つのドア用の出入口を定めるフレームに取り付けられるドアアセンブリを提供し、前記1つのドアは、前記フレームに取り付けられたレール上に移動可能に支持されており、
b)前記ドアを前記レール上に支持するローラを形成し、前記ローラは、リム部と、該リム部の径方向内側に位置するハブ部と、を含み、
c)前記リム部の一部と前記ハブ部の一部との少なくとも一方に断熱層を設け、
d)タイヤ材料を前記リム部に固定し、これにより、前記ローラに加わる熱から該タイヤ材料を絶縁するように前記断熱層を配置することを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記断熱層は、膨張性材料であることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記膨張性材料は、前記タイヤ材料を前記リム部の径方向外側面に固定する接着剤であることを特徴とする請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2012−504537(P2012−504537A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530035(P2011−530035)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/078917
【国際公開番号】WO2010/042099
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】