説明

ハロアルキルジアルキルクロルシランの製造方法

本発明は、3−クロルプロピルジメチルクロルシランをジメチルヒドロクロルシランと塩化アリルとを含む反応媒体中で触媒として有効な量のジ−μ−クロロビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウムの存在下でヒドロシリル化反応によって製造するための方法において、該方法が、遊離の又は担持された状態の少なくとも1種の助剤であって、ケトン、エーテル、キノン、無水物、芳香族の性質を有し及び/又は少なくとも1個のC=C二重結合及び/又は少なくとも1個のC≡C三重結合を含む不飽和炭化水素化合物(UHC)(ここで、これらの不飽和結合は共役又は非共役であることができ、該UHCは、線状又は環状(単環式又は多環式)であり、4〜30個の炭素原子を有し、1〜8個のエチレン性及び/又はアセチレン性不飽和を有し、そして随意として1個以上のヘテロ原子を含むものとする)及びそれらの混合物よりなる化合物の群から選択されるものを該反応媒体に添加するが、ただし、該助剤が上に定義されるような1種以上のUHCを含むときには、この(これらの)UHCをUHC以外の少なくとも1種の他の助剤と混合させることを特徴とする、3−クロルプロピルジメチルクロルシランの製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロアルキルジアルキルハロシランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
より具体的には、本発明は、塩化アリルと白金鉱金属、特にイリジウムをベースとする触媒とを使用してジメチルヒドロクロルシランをヒドロシリル化させ、そして随意として該金属を回収することによって3−ハロプロピルジメチルクロルシランを製造するための方法に関する。この例に包含される反応は、次の通りである。
【化1】

【0003】
このタイプの反応では、含まれる白金鉱金属の量は、多くの場合、満足のいく収量を得る目的のために高い。これらの条件下において、この方法が経済的に有利なままであり続けるためには、白金鉱金属を回収してこのものを触媒として再利用できることが必要である。
【0004】
この方法の経済面を改善させるための別の道筋は、該触媒の活性を最適化させることであろう。これを行うために、ヒドロシラン(II)の転化率(DC)を増加させる又は、所定のDCのために、触媒の選択性(S)を有意に増大させるようにアレンジされる。
【0005】
この説明において、転化率(DC)及び選択性は、次の定義:
【数1】

に相当する。
【0006】
イリジウムベース触媒によって触媒されるジメチルヒドロクロルシランによる塩化アリルのヒドロシリル化は、次の特許文献に開示されている:特許第2938731号公報及び特許第7126271号公報。これらの特許文献に開示された触媒は、[Ir(ジエン)Cl]2型のものであり、しかもこれは、良好な反応の選択性(3−クロルプロピルジメチルクロルシランの良好な収量YD)でもってジメチルヒドロクロルシランの完全な転化率(DC=100%)に近づくことを可能にする。しかしながら、これらの性能は、非常に大量の触媒というコストで達成される。
【0007】
欧州特許第1156052号(=米国特許第6359161号)及びDE−A−10053037号(米国特許出願第2002/0052520号)には、収量を増加させるための遊離CODの存在下での次の反応:
【化2】

(・欧州特許第1156052号:1×10-4モルの[Ir(COD)Cl]2当たり4×10-3モルの遊離COD:即ち、40の比率、
・対して、DE−A−10053037号:4.5×10-6モルの[Ir(COD)Cl]2当たり9.2×10-4モルの遊離COD:即ち、204の比率。)
が開示されている。
【0008】
BE−B−785343(米国特許第3798252号)には、クロルヘキサノンの溶液の状態のヘキサクロロ白金(IV)酸の存在下にトリクロルヒドロシランによって塩化アリルをヒドロシリル化させること(Na2SO4を使用して該溶液から水を除去すること)が開示されている。該反応の選択性を改善させるために、ケトンを白金と混合させる。
【特許文献1】特許第2938731号公報
【特許文献2】特許第7126271号公報
【特許文献3】米国特許第6359161号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0052520号明細書
【特許文献5】米国特許第3798252号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この従来技術の状況において、本発明の必須の目的の一つは、イリジウムベース触媒の活性を従来技術(特に欧州特許第1156052号(=米国特許第6359161号)及びDE−A−10053037号[米国特許出願第2002/0052520号])に教示されるものと比較して最適化させることを可能にする手段を提供することである。
【0010】
本発明の別の必須の目的は、効果的で、経済的で、しかも実施するのが容易な上記のタイプのハロアルキルジアルキルハロシランの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、とりわけ、まず、次式(I):
Hal-------(R23)Si---(CH2s---Hal
のハロアルキルジアルキルハロシランを、
反応媒体であって、
・式(II):
Hal---(R23)Si−H
のシランと、
・式(III):
CH=CH−(CH2s-2Hal
のハロゲン化アルケニルと
を含むものを酸化状態I又はIIIのイリジウムをベースとするヒドロシリル化触媒の触媒として有効な量の存在下でヒドロシリル化反応させること
(ここで、上記式(I)、(II)、(III)において、
記号Halは、塩素、臭素及び沃素原子から選択されるハロゲン原子を表し、
記号R2及びR3は同一又は異なるものであり、そしてそれぞれ、1〜6個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル基及びフェニル基から選択される1価の炭化水素基を表し、
sは2〜10の整数を表す。)
によって製造するための方法において、
該方法が、遊離の又は担持された状態の少なくとも1種の助剤であって、
・(i)ケトン、
・(ii)エーテル、
・(iii)キノン、
・(iv)無水物、
・(v)芳香族の性質を有し及び/又は少なくとも1個のC=C二重結合及び/又は少なくとも1個のC≡C三重結合を含む不飽和炭化水素化合物(UHC)(ここで、これらの不飽和結合は共役又は非共役であることができ、該UHCは、線状又は環状(単環式又は多環式)であり、4〜30個の炭素原子を有し、1〜8個のエチレン性及び/又はアセチレン性不飽和を有し、そして随意として1個以上のヘテロ原子を含むものとする。)、及び
・(vi)それらの混合物
よりなる化合物の群から選択されるものを該反応媒体に添加するが、ただし、該助剤が上に定義されるような1種以上のUHCを含むときには、この(これらの)UHCをUHC以外の少なくとも1種の他の助剤と混合させることを特徴とする、上記方法に関する本発明によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によれば、助剤化合物の用語「混合物(vi)」とは、特に、
(vi.1)化合物(i)及び/又は(ii)及び/又は(iii)及び/又は(iv)及び/又は(v)の任意の混合物、
(vi.2)化合物(i)〜(v)のケトン、エーテル、無水物、キノン、C=C及びC≡C官能基特性よりなる群から選択される少なくとも2個の異なる化学官能基を含む分子を有する任意の化合物、
(vi.3)化合物(vi.2)の任意の混合物、及び
(vi.4)少なくとも1種の化合物(i)〜(v)及び少なくとも1種の化合物(vi.2)をベースとする任意の混合物
を意味するものとする。
【0013】
好ましい形態によれば、酸化状態Iのイリジウムをベースとする触媒であって、その構造においてそれぞれのイリジウム原子がIr(L)3X型(ここで、記号L及びXは、文献「Chimie Organometallique」(有機金属化学),Didier Astruc,2000年出版,EDPサイエンセズ(特に第31頁参照)に与えられている定義を有する。)の錯体形態に相当するものを使用する。
【0014】
より好ましい形態によれば、触媒は、次式(IV):
[Ir(R4x(R5)]y (IV)
(式中、
記号R4は、単座配位子L(この場合にはx=2である)又は二座配位子(L)2(この場合にはx=1である)のいずれかを表し、
記号R5は、上に定義されるようなHal(この場合にはy=2である)又はLX型の配位子(この場合にはy=1である)のいずれかを表す。)
に相当する。
【0015】
上記のより好ましい定義に相当する触媒は、上記式中、
4が少なくとも1個のC=C二重結合及び/又は少なくとも1個のC≡C三重結合を含む配位子であり、ここで、これらの不飽和結合は共役又は非共役であることが可能であり、該配位子は線状又は環状(単環式又は多環式)であり、4〜30個の炭素原子を有し、1〜8個のエチレン性及び/又はアセチレン性不飽和を有し、そして随意として1個以上のヘテロ原子を含むものとし、
5がHalの他に、特に、アセチルアセトン、β−ケトエステル、マロン酸エステル又はアリル化合物から誘導される配位子のような配位子LXをも表すことができる
ものである。
【0016】
より好ましい形態によれば、触媒は、該触媒の記号R5がHalを表し、そしてy=2である式(IV)に相当する。
【0017】
好ましい触媒(IV)の配位子R4は、助剤のUHC(v)と同一であることができ又はそれとは異なることができる。
【0018】
イリジウムベース触媒は、例えば、特に米国特許第6177585号及び独国特許第1526324号に開示されるように、担持できる。
【0019】
本発明に従う方法に従って使用される触媒系は、式(II):(Hal---(R23)Si−H)のシランの完全な転化率(DC)の達成に必要な触媒の量を減少させ及び/又は所定の及び固定されたDCに対して選択性Sを増大させることを可能にする。
【0020】
この触媒系は、有利には、
・酸化状態I又はIIIのイリジウムをベースとする有機金属触媒と、
・該金属に対して20モル%の最小量でそれぞれ導入される1種以上の助剤と
から構成される。
【0021】
この又はこれらの助剤は、液体又は固体の形で使用できる。これらのものが液体であるならば、これらのものは、反応媒体中でヒドロシリル化促進剤として作用する他に該反応のための溶媒として作用するような量で導入できる。液体の形態で使用できるという事実は、本発明の方法にとって非常に大きな操作上の利益である。また、該助剤の見込まれる溶媒機能は、特に、これが重溶媒(即ち、例えば、ポリエーテルのような、大気圧で式(I)の化合物の沸点以上の沸点を有する溶媒)であるときに、該反応媒体の安定性及びしかして該方法の安全性を改善させることも可能にし得る。さらに、これは、触媒を容易に回収し、しかして触媒をリサイクルするという可能性を与える。
【0022】
助剤が遊離状態にあるときには、このものは、イリジウム金属に対して、少なくとも0.2、好ましくは少なくとも1のモル比に従って反応媒体に導入できる。配位子の性質によっては、10以上、さらに好ましくは100以上のモル比が選択できる。
【0023】
助剤が、単独で又は互いの混合物として得られるUHC(v)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む場合には、触媒(好ましくはIV)の濃度は、イリジウム/式(II)のシランのモル比が400×10-6以下、好ましくは200×10-6以下、さらに好ましくは50×10-6以下であるようなものである。
【0024】
好適なケトンの例としては、米国特許3798252号、PL−A−176036号、PL−A−174810号、PL−A−145670号及び特許第75024947号公報に規定されたものを参照されたい。好適なエーテル(ii)の例としては、米国特許第4820674号及び特許第52093718号に規定されたものを参照されたい。
【0025】
有利には、助剤は、特に、シクロヘキサノン、2−シクロヘキセン−1−オン、イソホロン、2−ベンジリデンシクロヘキサノン、3−メチレン−2−ノルボルナノン、4−ヘキセン−3−オン、2−アリルシクロヘキサノン、2−オキソ−1−シクロヘキサンプロピオニトリル、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、モノグリム、エチレングリコールジビニルエーテル、エチルエーテル、ベンゾキノン、フェニルベンゾキノン、無水マレイン酸、アリル琥珀酸無水物、3−ベンジリデン−2,4−ペンタジオン、フェノチアジン、(メチルビニル)シクロテトラシロキサン(ビニル化D4)、4−フェニル−3−ブチン−2−オン、1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン(COD)、1,5,9−シクロドデカトリエン、ジビニルテトラメチルシロキサン(DVTMS)、ノルボルナジエン及びそれらの混合物よりなる群から選択される。
【0026】
本発明の好ましい具体例によれば、助剤は、少なくとも1種のUHC(v)、好ましくはCOD、少なくとも1種のケトン(i)、好ましくはシクロヘキサノン、及び/又は少なくとも1種のエーテル(ii)及び/又は少なくとも1種のキノン(iii)を含む混合物(iv)である。
【0027】
本発明に従う方法のこの好ましい具体例では、好ましくは式(IV)の触媒の濃度は、イリジウム/式(II)のシランのモル比が100×10-6以下、好ましくは60×10-6以下、より好ましくは40×10-6〜1×10-6の間であるようなものである。
【0028】
この好ましい具体例に特有の手順によれば、混合物(vi)、UHC/(i)及び/又は(ii)及び/又は(iii)の成分は、反応が開始するときに反応媒体中に存在する。
【0029】
特によく適合する式(IV)のイリジウム錯体の例としては、その式において、記号R4が、1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン(COD)、1,5,9−シクロドデカトリエン、ジビニルテトラメチルシロキサン及びノルボルナジエンから選択される配位子である、さらに好ましい形態に相当するものが挙げられる。
【0030】
さらによく適合するイリジウム錯体(IV)の具体的な例としては、次の触媒:
ジ−μ−クロロビス(η−1,5−ヘキサジエン)ジイリジウム、
ジ−μ−ブロモビス(η−1,5−ヘキサジエン)ジイリジウム、
ジ−μ−ヨードビス(η−1,5−ヘキサジエン)ジイリジウム、
ジ−μ−クロロビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム、
ジ−μ−ブロモビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム、
ジ−μ−ヨードビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム、
ジ−μ−クロロビス(η−2,5−ノルボルナジエン)ジイリジウム、
ジ−μ−ブロモビス(η−2,5−ノルボルナジエン)ジイリジウム、
ジ−μ−ヨードビス(η−2,5−ノルボルナジエン)ジイリジウム
が挙げられる。
【0031】
本発明に従う方法は、連続的に、半連続的に又はバッチ式で使用できる。
【0032】
これら3つの操作方法は、特に、触媒、好ましくはIVを、本発明の好ましいアレンジに従って且つ特許第2938731号及び欧州特許第1156052号に開示されるように、均質な液体媒体中で使用するときに特に好適である。
【0033】
好ましくは、式(I)の物質は、3−クロルプロピルジメチルクロルシランであり、式(II)の物質は、ジメチルヒドロクロルシランであり、そして式(III)の物質は塩化アリルである。
【0034】
その態様のうち別のものによれば、本発明は、式(I):
Hal-------(R23)Si---(CH2s---Hal
のハロアルキルジアルキルハロシランを、
反応媒体であって、
・式(II):
Hal---(R23)Si−H
のシランと、
・式(III):
CH=CH−(CH2s-2Hal
のハロゲン化アルケニルと
(ここで、上記式(I)、(II)、(III)において、
記号Halは、塩素、臭素及び沃素原子から選択されるハロゲン原子を表し、
記号R2及びR3は同一又は異なるものであり、そしてそれぞれ、1〜6個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル基及びフェニル基から選択される1価の炭化水素基を表し、
sは2〜10の整数を表す。)
を含むものをヒドロシリル化反応させることによって製造するための触媒系において、
(1)酸化状態Iのイリジウムをベースとするヒドロシリル化触媒であって、その構造においてそれぞれのイリジウム原子がIr(L)3X型(ここで、L及びXは、文献「Chimie Organometallique」(有機金属化学),Didier Astruc,2000年出版,EDPサイエンセズ(特に第31頁参照)に与えられている定義を有する。)の錯体形態に相当し、該触媒が好ましくは次式:
[Ir(R4x(R5)]y (IV)
(式中、 記号R4は、単座配位子L(この場合にはx=2である)又は二座配位子(L)2(この場合にはx=1である)のいずれかを表し、
記号R5は、塩素、臭素及び沃素原子から選択されるハロゲン原子を表すHal(この場合にはy=2である)又はLX型の配位子(この場合にはy=1である)を表す。)
に相当するものと、
(2)遊離の状態又は担持された状態の少なくとも1種の助剤であって、
・(i)ケトン、
・(ii)エーテル、
・(iii)キノン、
・(iv)無水物、
・(v)芳香族の性質を有し及び/又は少なくとも1個のC=C二重結合及び/又は少なくとも1個のC≡C三重結合を含む不飽和炭化水素化合物(UHC)(ここで、これらの不飽和結合は共役又は非共役であることができ、該UHCは、線状又は環状(単環式又は多環式)であり、4〜30個の炭素原子を有し、1〜8個のエチレン性及び/又はアセチレン性不飽和を有し、そして随意として1個以上のヘテロ原子を含むものとする。)、及び
・(vi)それらの混合物
よりなる化合物の群から選択されるものと
を含むが、ただし、該助剤が上に定義されるような1種以上のUHCを含むときには、この(これらの)UHCをUHC以外の少なくとも1種の他の助剤と混合させることを特徴とする、上記触媒系に関するものである。
【実施例】
【0035】

次の例は、本発明をその範囲を限定することなく例示する。これらの例は、ジメチルヒドロクロルシランによる塩化アリルのヒドロシリル化のための反応において、触媒系:
[ジ−μ−クロロビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム+ヒドロシリル化助剤]
を評価するという目的を有する。
【0036】
試験は、並列反応器で実施する。それぞれの反応器は、磁気攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えている。熱交換流体を−35℃の温度にもたらすが、これは、常に95重量%以上の物質収支を得ることを可能にする。
【0037】
ヒドロシリル化助剤の効果と対照反応(この場合には、ジ−μ−クロロビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウムのみを使用した)とを比較する。この対照試験については、ほぼ50%の相当するSiH官能基の転化率を得るために、故意に低い量の触媒を導入した。
【0038】
99重量%の純度を有するジメチルヒドロクロルシランを、35℃に加熱された塩化アリル(1.05モル当量/シラン)及び触媒系[ジ−μ−クロロビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム+ヒドロシリル化助剤]から構成されるヒール上に流すことによって添加する。シランを1.3mL/分の流速でシリンジドライバーを介して流す。該反応媒体の温度は調節しない。
【0039】
反応媒体を、n−テトラデセンで較正されたガスクロマトグラフィーによって分析する。
【0040】
I:ヒドロシリル化助剤単独使用
I.1:ケトン(i)の効果。
【表1】

【0041】
I.2:エーテル(ii)の効果。
【表2】

【0042】
I.3:キノン(iii)の効果。
【表3】

【0043】
I.4:無水物(iv)の効果。
【表4】

【0044】
I.5:UHC助剤(v)の効果
【表5】

【0045】
II:ヒドロシリル化助剤の組合せ
II.1:シクロヘキサノンと1,5−シクロオクタジエン(1,5−COD)との組合せ。
【表6】

【0046】
II.2:エチルエーテルと1,5−シクロオクタジエン(1,5−COD)との組合せ。
【表7】

【0047】
II.3:ベンゾキノンと1,5−シクロオクタジエン(1,5−COD)との組合せ。
【表8】

【0048】
III:例2.4:温度の調節による例2.1の反復
92.48gの塩化アリル(1.194モル)、0.011gの触媒[Ir(COD)Cl]2(ここで、COD=1,5−シクロオクタジエンである)(2.829×10-5モル)、またCOD(0.611g、5.648ミリモル)及びシクロヘキサノン(1.067g、10.9ミリモル)を、撹拌器を備え且つ還流冷却器上に載せられた500mLの4口ガラスフラスコに装入する。この混合物を撹拌して該触媒系を完全に溶解させる。
【0049】
99重量%の純度を有するジメチルヒドロクロルシランを蠕動ポンプを介して反応媒体に導入する。その107.15g(1.117モル)を2時間30分にわたって導入する。導入のための流速を、該反応の高い発熱を考慮して、該反応媒体の温度を20〜25℃の間に維持するために調節する。反応媒体をジメチルヒドロクロルシランの導入の終了後20分間撹拌し続ける。この20分の期間の終了時に、試料を分析のために取り出す。結果は次の通りである:
ジメチルヒドロクロルシランのDC=99.8%、
クロルプロピルジメチルクロルシランについてのS=98.3%(ガスクロマトグラフィーによる分析による)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
Hal-------(R23)Si---(CH2s---Hal
のハロアルキルジアルキルハロシランを、
反応媒体であって、
・式(II):
Hal---(R23)Si−H
のシランと、
・式(III):
CH=CH−(CH2s-2Hal
のハロゲン化アルケニルと
を含むものを酸化状態I又はIIIのイリジウムをベースとするヒドロシリル化触媒の触媒として有効な量の存在下でヒドロシリル化反応させること
(ここで、上記式(I)、(II)、(III)において、
記号Halは、塩素、臭素及び沃素原子から選択されるハロゲン原子を表し、
記号R2及びR3は同一又は異なるものであり、そしてそれぞれ、1〜6個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル基及びフェニル基から選択される1価の炭化水素基を表し、
sは2〜10の整数を表す。)
によって製造するための方法において、
該方法が、遊離の又は担持された状態の少なくとも1種の助剤であって、
・(i)ケトン、
・(ii)エーテル、
・(iii)キノン、
・(iv)無水物、
・(v)芳香族の性質を有し及び/又は少なくとも1個のC=C二重結合及び/又は少なくとも1個のC≡C三重結合を含む不飽和炭化水素化合物(UHC)(ここで、これらの不飽和結合は共役又は非共役であることができ、該UHCは、線状又は環状(単環式又は多環式)であり、4〜30個の炭素原子を有し、1〜8個のエチレン性及び/又はアセチレン性不飽和を有し、そして随意として1個以上のヘテロ原子を含むものとする)、及び
・(vi)それらの混合物
よりなる化合物の群から選択されるものを該反応媒体に添加するが、ただし、該助剤が上に定義されるような1種以上のUHCを含むときには、この(これらの)UHCをUHC以外の少なくとも1種の他の助剤と混合させることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
酸化状態Iのイリジウムをベースとする触媒であって、その構造においてそれぞれのイリジウム原子がIr(L)3X型(ここで、記号L及びXは、文献「Chimie Organometallique」(有機金属化学),Didier Astruc,2000年出版,EDPサイエンセズ(特に第31頁参照)に与えられている定義を有する)の錯体形態に相当するものを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、次式(IV):
[Ir(R4x(R5)]y (IV)
(式中、
記号R4は、単座配位子L(この場合にはx=2である)又は二座配位子(L)2(この場合にはx=1である)のいずれかを表し、
記号R5は、塩素、臭素及び沃素から選択されるハロゲン原子を表すHal(この場合にはy=2である)又はLX型の配位子(この場合にはy=1である)のいずれかを表す)
に相当することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(IV)において、
4が少なくとも1個のC=C二重結合及び/又は少なくとも1個のC≡C三重結合を含む配位子であり、ここで、これらの不飽和結合は共役又は非共役であることが可能であり、該配位子は線状又は環状(単環式又は多環式)であり、4〜30個の炭素原子を有し、1〜8個のエチレン性及び/又はアセチレン性不飽和を有し、そして随意として1個以上のヘテロ原子を含むものとし、
5がHalの他に、特に、アセチルアセトン、β−ケトエステル、マロン酸エステル又はアリル化合物から誘導される配位子のような配位子LXをも表すことができる
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
助剤を、反応媒体に遊離の状態で且つイリジウム金属に対して少なくとも0.2、好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも100のモル比に従って導入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
助剤が、単独で又は互いの混合物として得られる、UHC(v)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含み、しかも触媒(好ましくはIV)の濃度が、イリジウム/式(II)のシランのモル比が400×10-6以下、好ましくは200×10-6以下、さらに好ましくは50×10-6以下であるようなものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
助剤がシクロヘキサノン、2−シクロヘキセン−1−オン、イソホロン、2−ベンジリデンシクロヘキサノン、3−メチレン−2−ノルボルナノン、4−ヘキセン−3−オン、2−アリルシクロヘキサノン、2−オキソ−1−シクロヘキサンプロピオニトリル、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、モノグリム、エチレングリコールジビニルエーテル、エチルエーテル、ベンゾキノン、フェニルベンゾキノン、無水マレイン酸、アリル琥珀酸無水物、3−ベンジリデン−2,4−ペンタジオン、フェノチアジン、(メチルビニル)シクロテトラシロキサン(ビニル化D4)、4−フェニル−3−ブチン−2−オン、1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン(COD)、1,5,9−シクロドデカトリエン、ジビニルテトラメチルシロキサン(DVTMS)、ノルボルナジエン及びそれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
助剤が、少なくとも1種のUHC(v)、好ましくはCOD、少なくとも1種のケトン(i)、好ましくはシクロヘキサノン、及び/又は少なくとも1種のエーテル(ii)及び/又は少なくとも1種のキノン(iii)を含む混合物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
好ましくは式(IV)の触媒の濃度が、イリジウム/式(II)のシランのモル比が100×10-6以下、好ましくは60×10-6以下、より好ましくは40×10-6〜1×10-6の間であるようなものであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
混合物(vi)、UHC/(i)及び/又は(ii)及び/又は(iii)の成分が、反応が開始するときに反応媒体中に存在することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
式(I)の物質が3−クロルプロピルジメチルクロルシランであり、式(II)の物質がジメチルヒドロクロルシランであり、そして式(III)の物質が塩化アリルであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
式(I):
Hal-------(R23)Si---(CH2s---Hal
のハロアルキルジアルキルハロシランを、
反応媒体であって、
・式(II):
Hal---(R23)Si−H
のシランと、
・式(III):
CH=CH−(CH2s-2Hal
のハロゲン化アルケニルと
(ここで、これらの式において、
記号Halは、塩素、臭素及び沃素原子から選択されるハロゲン原子を表し、
記号R2及びR3は同一又は異なるものであり、そしてそれぞれ、1〜6個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル基及びフェニル基から選択される1価の炭化水素基を表し、
sは2〜10の整数を表す。)
を含むものをヒドロシリル化反応させることによって製造するための触媒系において、
(1)酸化状態Iのイリジウムをベースとするヒドロシリル化触媒であって、その構造においてそれぞれのイリジウム原子がIr(L)3X型(ここで、記号L及びXは、文献「Chimie Organometallique」(有機金属化学),Didier Astruc,2000年出版,EDPサイエンセズ(特に第31頁参照)に与えられている定義を有する。)の錯体形態に相当し、該触媒が好ましくは次式:
[Ir(R4x(R5)]y (IV)
(式中、記号R4は、単座配位子L(この場合にはx=2である)又は二座配位子(L)2(この場合にはx=1である)のいずれかを表し、
記号R5は、塩素、臭素及び沃素原子から選択されるハロゲン原子を表すHal(この場合にはy=2である)又はLX型の配位子(この場合にはy=1である)を表す)
に相当するものと、
(2)遊離の又は担持された状態の少なくとも1種の助剤であって、
・(i)ケトン、
・(ii)エーテル、
・(iii)キノン、
・(iv)無水物、
・(v)芳香族の性質を有し及び/又は少なくとも1個のC=C二重結合及び/又は少なくとも1個のC≡C三重結合を含む不飽和炭化水素化合物(UHC)(ここで、これらの不飽和結合は共役又は非共役であることができ、該UHCは、線状又は環状(単環式又は多環式)であり、4〜30個の炭素原子を有し、1〜8個のエチレン性及び/又はアセチレン性不飽和を有し、そして随意として1個以上のヘテロ原子を含むものとする。)、及び
・(vi)それらの混合物
よりなる化合物の群から選択されるものとを含むが、ただし、該助剤が上に定義されるような1種以上のUHCを含むときには、この(これらの)UHCをUHC以外の少なくとも1種の他の助剤と混合させることを特徴とする、ハロアルキルジアルキルハロシランの製造用の触媒系。

【公表番号】特表2006−527742(P2006−527742A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516295(P2006−516295)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001487
【国際公開番号】WO2004/113354
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【Fターム(参考)】