説明

ハロゲン化アルキル基と結合した2,2,2−ビシクロオクタンを有する新規な化合物およびこれを用いた液晶組成物

【課題】 化合物に必要な一般的物性、小さな粘度、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供する。
【解決手段】 式(1)で表される化合物。


例えば、Rは炭素数1〜10のアルキルであり;環A、環Aおよび環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;Z、ZおよびZは、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−CFO−、−(CH−、−CHCHCFO−、−CHCHCHO−、−CH=CHCHO−、−CH=CH−CHCH−、−CHCO−、−COO−、−CF=CF−、または−C≡C−であり;Yは炭素数1〜10のパーフルオロアルキルであり;mおよびnは0または1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化アルキル基を側鎖にした2,2,2−ビシクロオクタンを有する化合物および液晶組成物に関する。更に詳しくはハロゲン化アルキル基と結合した2,2,2−ビシクロオクタンを有する化合物、これを含有する液晶組成物および該液晶組成物を含むことからなる。
【背景技術】
【0002】
液晶性化合物(本願において、液晶性化合物なる用語は、液晶相を示す化合物および液晶相を示さないが液晶組成物の構成成分として有用である化合物の総称として用いられる。)を用いた表示素子は、時計、電卓、ワ−プロなどのディスプレイに広く利用されている。これらの表示素子は液晶性化合物の屈折率異方性、誘電率異方性などを利用したものである。
【0003】
液晶相には、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相があるが、ネマチック液晶相を利用したものが最も広く用いられている。また表示方式としては動的散乱(DS)型、配向相変形(DAP)型、ゲスト/ホスト(GH)型、ねじれネマチック(TN)型、超ねじれネマチック(STN)型、薄膜トランジスタ(TFT)型、垂直配向(VA)型、インプレ−ンスイッチング(IPS)型などがある。
【0004】
これらの表示方式で用いられる液晶性化合物は、室温を中心とする広い温度範囲で液晶相を示し、表示素子が使用される条件下で十分に安定であり、さらに表示素子を駆動させるに十分な特性を持たなくてはならないが、現在のところ単一の液晶性化合物でこの条件を満たすものは見いだされていない。
【0005】
このため数種類から数十種類の液晶性化合物を混合することにより要求特性を備えた液晶組成物を調製しているのが実状である。これらの液晶組成物は、表示素子が使用される条件下で通常存在する水分、光、熱、空気に対して安定であり、また電場や電磁放射に対しても安定であるうえ、混合される化合物に対し化学的にも安定であることが要求される。また、液晶組成物には、その屈折率異方性値(Δn)および誘電率異方性値(Δε)などの諸物性値が表示方式や表示素子の形状に依存して適当な値をもつことが必要とされる。さらに液晶組成物中の各成分は、相互に良好な溶解性を持つことが重要である。
【0006】
モバイルPCやPDA、携帯電話など携帯情報端末用ディスプレイには薄型、軽量、低消費電力が求められる。これまでに開発された透過型ディスプレイには、バックライトが必要であるため低消費電力の面で不利であり、また屋外など明るい場所では表面反射による散乱光によってコントラストが大きく低下する等の問題点がある。即ち、透過型ディスプレイは、携帯情報端末用ディスプレイとして用いるには性能が十分でない。この問題を解決するために、バックライトを使用しない反射型アクティブマトリクスディスプレイ(以下、アクティブマトリクスディスプレイをAM−LCDで表記することがある。)が開発された。
【0007】
反射型AM−LCDは、S.T.Wu等によりSID97 Digesut/643に報告されているように、光が液晶層を2回通過する。このため、液晶層の厚み(d)と液晶の屈折率異方性値(△n)の積(△n・d)を小さく設定しなければならない。従来の透過型TNタイプのAM−LCD用液晶組成物の場合は、要求される△nが0.075〜0.120程度であるが、反射型タイプのAM−LCD用液晶組成物の場合は0.075以下である。
【0008】
従来、ハロゲン化アルキルが2,2,2−ビシクロオクタン環に結合した化合物としていくつか合成報告例はあるが(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)、液晶表示素子に応用した例はほとんど知られていない。
【0009】
【非特許文献1】J. Phys. Chem. A, 2006, 110, 10122-10129.
【非特許文献2】J. Org. Chem., 1985, 50, 2551-2557.
【非特許文献3】J. Org. Chem., 1982, 47, 2957-2966.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の1つは、例えば、化合物に必要な一般的物性、小さな粘度、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することである。本発明の他の目的は、例えば、この化合物を含有し、ネマチック相の広い温度範囲、小さな粘度、適切な光学異方性、および低いしきい値電圧を有する液晶組成物を提供することである。本発明の他の目的は、例えば、これらの液晶組成物を含有し、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト、および高い電圧保持率を有する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のような化合物、液晶組成物、および液晶組成物を含有する液晶表示素子等を提供する。
【0012】
[1] 式(1)で表される化合物。

【0013】
式中、Rは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は−O−、−S−、−CO−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;
環A、環Aおよび環Aは独立して、次の1)または2)であり:
1)1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、これらの1つの−CH−または隣接していない2つ以上の−CH−は−O−により置き換えられてもよく;
2)1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、このうちの1,4−フェニレンの1つまたは2つの−CH=は−N=により置き換えられてもよく;
1)または2)に記載の基において任意の水素はハロゲン、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF2、または−OCHFで置き換えられてもよく;
、ZおよびZは独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−CFO−、−(CH−、−CHCHCFO−、−CHCHCHO−、−CH=CHCHO−、−CH=CH−CHCH−、−CHCO−、−COO−、−CF=CF−、または−C≡C−であり;
Yは炭素数1〜10のパーフルオロアルキルであり;
mおよびnは独立して0または1である。
【0014】
[2] Rが炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜11のアルケニルまたは炭素数1〜9のアルコキシであり;
環A、環Aおよび環Aが独立して、次の1)または2)であり;
1)1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
2)1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
2)に記載の基において任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;
、ZおよびZが独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−(CH−、−CHCHCHO−、−CH=CHCHCH−、または−COO−である、
項[1]に記載の化合物。
【0015】
[3] Rが炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜11のアルケニルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
環A、環Aおよび環Aが独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
、ZおよびZが独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−(CH−、または−COO−である、
項[1]に記載の化合物。
【0016】
[4] Rが炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
環A、環Aおよび環Aが独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
、ZおよびZが独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、または−CH=CH−である、
項[1]に記載の化合物。
【0017】
[5] 式(1−1)〜式(1−6)のいずれか1つで表される化合物。

【0018】
式中、Rは炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;


は、1,4−フェニレン、または1つ〜2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり、;
は単結合であり;
Yは−CFである。
【0019】
[6] 式(1−7)〜式(1−9)のいずれか1つで表される化合物。


式中、Rは炭素数1〜5のアルキルである。
【0020】
[7] 項[1]〜[6]のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する、2成分以上からなる液晶組成物。
【0021】
[8] 式(2)、(3)および(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、項[7]に記載の液晶組成物。

【0022】
式中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
はフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1−ピラン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;
およびLは独立して水素またはフッ素である。
【0023】
[9] 式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[7]に記載の液晶組成物。

【0024】
式中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環B、環Bおよび環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1−ピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;
およびLは独立して水素またはフッ素であり;
qは独立して0、1または2であり、rは独立して0または1である。
【0025】
[10] 式(6)、(7)、(8)、(9)および(10)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、項[7]に記載の液晶組成物。

【0026】
式中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環C、環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、6−ピラン−2,5−ジイルまたはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
、Z、ZおよびZは独立して−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH22−、または単結合であり;
およびLは独立してフッ素または塩素であり;
j、k、l、mおよびnは独立して0または1であり、k+l+m+nは1または2である。
【0027】
[11] 式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、項[7]に記載の液晶組成物。

【0028】
式中、RおよびRは独立して炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環D、環Dおよび環Dは独立して1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【0029】
[12] 項[9]記載の一般式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[8]に記載の液晶組成物。
【0030】
[13] 項[11]記載の一般式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[8]に記載の液晶組成物。
【0031】
[14] 項[11]記載の一般式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[9]に記載の液晶組成物。
【0032】
[15] 項[11]記載の一般式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[10]に記載の液晶組成物。
【0033】
[16] 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する項[7]〜[15]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0034】
[17] 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含む項[7]〜[16]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
[18] 項[7]〜[17]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0036】
本発明の化合物は、例えば、化合物に必要な一般的物性、小さい粘度、熱、光などに対する安定性、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する。本発明の液晶組成物は、例えば、これらの化合物の少なくとも一つを含有し、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、低いしきい値電圧を有する。また、本発明の液晶表示素子は、例えば、この組成物を含有し、そして使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きなコントラスト比、低い駆動電圧を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。
「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。
液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ「化合物」、「組成物」、「素子」と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。
ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に「上限温度」と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に「下限温度」と略すことがある。
【0038】
式(1)で表わされる化合物を「化合物(1)」と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。
式(1)から式(14)において、六角形で囲んだA、B、D、Eなどの記号はそれぞれ環A、環B、環D、環Eなどに対応する。
百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。
【0039】
「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。任意のAがB、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける他の基に結合していない末端の−CH−が−O−で置き換えられることも好ましくない。
以下に本発明をさらに説明する。また、以下に、化合物(1)における末端基、環および結合基等に関して好ましい例も述べる。
【0040】
1−1 本発明の化合物
本発明の第1の態様は、化合物(1)に関する。
【0041】

【0042】
式(1)においてRは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−または−CH=CH−で置き換えられてもよい。例えば、CH(CH−において任意の−CH−を−O−または−CH=CH−で置き換えた基の例は、CH(CHO−、CH−O−(CH−、CH−O−CH−O−、CH=CH−(CH−、CH−CH=CH−(CH−、CH−CH=CH−CHO−などである。
【0043】
このようなRの例は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アシル、アシルアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル等である。これらの基において分岐よりも直鎖の方が好ましい。Rが分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。
【0044】
アルキルとしては、直鎖、分枝鎖または環状のいずれでもよく、アルキルの具体的な例は、例えば、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、および−C1021である。
【0045】
アルコキシの具体的な例は、例えば、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、および−OC15である。
【0046】
アルコキシアルキルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルコキシアルキルの具体的な例は、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CHOCH、−(CHOC、−(CHOC、−(CHOCH、−(CHOCH、および−(CHOCHである。
【0047】
アルケニルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルの具体的な例は、例えば、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、および−CH=CH−(CH−CH=CHである。
【0048】
アルケニルオキシとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルオキシの具体的な例は、例えば、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCである。
【0049】
Rは、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜11のアルケニルが好ましく、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜11のアルケニル、または炭素数1〜9のアルコキシがより好ましく、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−OCH、−OC、−OC、−CHOCH、−CH=CH、−CH=CHCH、−(CHCH=CH、または−(CHCH=CHCHであることがさらに好ましい。
【0050】
式(1)における環A、環Aおよび環Aは独立して、次の1)または2)である。
1)1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、これらの基の任意の1つの−CH−または隣接していない2つ以上の−CH−は−O−により置き換えられていてもよい。
2)1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルまたはデカヒドロナフタレン−2,6、−ジイルであり、このうちの1,4−フェニレンの任意の1つまたは2つの−CH=は−N=により置き換えられていてもよく、
1)または2)に記載の基において任意の水素は、ハロゲン、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFで置き換えられてもよい
【0051】
好ましくは、式(1)における環A、環Aおよび環Aは独立して、次の1)または2)である。
1)1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、これらの1つの−CH−または隣接していない2つ以上の−CH−は−O−により置き換えられてもよい。
2)1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、1,4−フェニレンの1つまたは2つの−CH=は−N=により置き換えられてもよく、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0052】
具体的には、環A、環Aおよび環Aの好ましい例は、下記の式(15−1)〜式(15−11)で表される基である。
【0053】


【0054】
上記の定義による範囲に含まれる環A、環Aおよび環Aにおいて、任意の水素はハロゲン、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFで置き換えられてもよい。
【0055】
環A、環Aおよび環Aの好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン(15−1)、テトラヒドロピラン2,5−ジイル(15−2)(15−3)、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル(15−4)(15−5)、1,4−シクロヘキセニレン(15−10)、(15−11)、1,4−フェニレン(15−12)、ピリジン−2,5−ジイル(15−13)、およびピリミジン−2,5−ジイル(15−14)(15−15)であり、この場合は上限温度が比較的高くなる。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスが好ましい。1,3−ジオキサン−2,5−ジイルは、4,6−ジオキサン−2,5−ジイルと構造的に同一であるので、後者は例示しなかった。この規則は、2−フルオロ−1,4−フェニレンと2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用される。
【0056】
環A、環Aおよび環Aのさらに好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、テトラヒドロピラン2,5−ジイル、1,3−ジオキサン2,5−ジイル、1,4−フェニレン、およびピリミジン−2,5−ジイルであり、この場合は誘電率異方性が比較的大きくなる。
【0057】
環A、環Aおよび環Aの最も好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、テトラヒドロピラン2,5−ジイル、および1,3−ジオキサン2,5−ジイルであり、この場合は光学異方性が比較的小さくなる。
【0058】
式(1)におけるZ、ZおよびZは独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH−、−(CHCFO−、−CHCHCHO−、−CH=CHCHO−、−CH=CH−CHCH−、−CHCO−、−COO−、−OCO−、または−CF=CF−である。Z、ZおよびZは、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−CFO−、−(CH−、−OCF−、−CHCHCFO−、−CHCHCHO−、−CH=CHCHO−、−CH=CH−CHCH−、−CHCO、−COO−、または−OCO−の場合は比較的液晶相の温度が広いのでより好ましい。Z、ZおよびZは、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−CFO−、−(CH−、−CHCHCFO−、−CHCHCHO−、−CH=CHCHO−、または−CH=CH−CHCH−の場合は比較的安定で比較的劣化をおこしにくいのでさらに好ましい。また、Z、ZおよびZは、単結合、−(CH−、−CHO−、−CFO−、および−CH=CH−の場合は比較的光学異方性が比較的小さくなるので最も好ましい。
これらの結合において、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−CHO−、および−OCH−CH=CH−のような結合基の二重結合に関する立体配置はシスよりもトランスが好ましい。
【0059】
式(1)におけるYは炭素数1〜10のパーフルオロアルキルである。
式(1)におけるmおよびnは独立して0または1である。
【0060】
1−2 本発明の化合物の性質およびその調整方法
本発明の化合物(1)をさらに詳細に説明する。
この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶性化合物との相溶性がある。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。この組成物を低い温度で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は、化合物に必要な一般的物性、適切な光学異方性、そして適切な誘電率異方性を有する。また、化合物(1)は、誘電率異方性が正に大きい。大きな誘電率異方性を有する化合物は、組成物のしきい値電圧を下げるための成分として有用である。
【0061】
化合物(1)のR、環A、環A、環A、Z、Z、ZおよびYを適切に選択することによって、光学異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。R、環A、環A、環A、Z、Z、ZおよびYの種類が、化合物(1)の物性に与える影響を以下に説明する。
【0062】
式(1)におけるRが直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広くそして粘度が小さい。Rが分岐鎖であるときは他の液晶性化合物との相溶性がよい。Rが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。Rが光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。Rがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0063】
式(1)における環A、環Aおよび環Aが、任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは誘電率異方性が比較的大きい。環A、環AおよびAが、任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリダジン−3,6−ジイルであるときは光学異方性が比較的大きい。環A、環Aおよび環Aが、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロフラン−2,5−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは光学異方性が比較的小さい。
【0064】
環A、環Aおよび環Aが1,4−シクロヘキシレンであるときは、上限温度が比較的高く、光学異方性が比較的小さく、そして粘度が比較的小さい。少なくとも一つの環Aまたは環Aが1,4−フェニレンのときは、光学異方性が比較的大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が比較的大きい。また環A、環Aおよび環Aのいずれかが1,4−フェニレンであるときは、光学異方性が比較的大きく、液晶相の温度範囲が比較的広く、そして上限温度が比較的高い。
【0065】
、ZおよびZが単結合、−(CH22−、−CH2O−、−CFO−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−(CH2−であるときは粘度が比較的小さい。Z、ZおよびZが単結合、−(CH22−、−OCF−、−CFO−、または−CH=CH−であるときは粘度がより小さい。Z、ZおよびZが−CH=CH−であるときは液晶相の温度範囲が比較的広く、そして弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)が比較的大きい。Z、ZおよびZが−C≡C−のときは光学異方性が比較的大きい。Z、ZおよびZが単結合、−(CH22−、−CH2O−、−CFO−、−(CH2−であるときは化学的に比較的安定であって、比較的劣化をおこしにくい。
【0066】
化合物(1)が二環を有するときは、比較的粘度が小さい。化合物(1)が三環を有するときは、比較的上限温度が高い。化合物(1)が四環を有するときは、さらに上限温度が高い。
【0067】
以上のように、R、環A、環A、環A、Z、ZおよびZの種類、環の数を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)はPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に用いられる組成物の成分として有用である。
【0068】
1−3 化合物(1)の具体例
化合物(1)の好ましい例は、化合物(1−1)〜(1−6)である。化合物(1)のより好ましい例は、化合物(1−7)〜(1−9)である。より具体的な例は、後述の実施例5に示した化合物(1−10)〜(1−104)である。
【0069】


式中、Rは炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;
は単結合であり;
Yは−CFである。
【0070】


式中、Rは炭素数1〜5のアルキルである。
【0071】
1−4 化合物(1)の合成
次に、化合物(1)の合成方法について説明する。化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0072】
1−4−1 結合基Z、ZおよびZを生成する方法
化合物(1)における結合基Z、ZおよびZを生成する方法の一例は、下記のスキームの通りである。このスキームにおいて、MSGまたはMSGは少なくとも一つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1J)は化合物(1)に相当する。
【0073】

【0074】

【0075】


【0076】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(16)と公知の方法で合成される化合物(17)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(18)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(17)を反応させることによっても合成される。
【0077】
(II)−COO−の生成
化合物(18)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(19))を得る。化合物(19)と、公知の方法で合成されるフェノール(20)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。
【0078】
(III)−CFO−との生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(21)を得る。化合物(21)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CFO−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(21)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。Peer. Kirsch et al., Anbew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこの結合基を生成させることも可能である。
【0079】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(18)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(23)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(22)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(238)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0080】
(V)−(CH−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0081】
(VI)−(CH−の生成
ホスホニウム塩(22)の代わりにホスホニウム塩(24)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0082】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(18)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(25)を得る。ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(25)を化合物(17)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0083】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(18)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(26)を得る。化合物(17)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(26)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0084】
(IX)−CHO−または−OCH−の生成
化合物(23)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(27)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(28)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(28)を化合物(20)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0085】
1−4−2 環A、環Aおよび環Aを合成する方法
1,4−シクロヘキサノン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。そこで、下記の化合物(31)および(42)の合成について説明する。
(化合物(38)の合成)
【0086】

【0087】
2,3−ビストリフルオロメチルフェニレンの構造単位は、Org. Lett., 2000, 2(21), 3345の文献に記載された方法で合成する。フラン(36)と1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブチンとを高温でディールズ・アルダー型の反応をさせることによってアニリン(37)を合成する。この化合物から、Org. Synth. Coll., Vol. 2, 1943, 355に記載された方法に従ってサンド・マイヤー型反応によってヨウ素化物(38)を得る。この化合物は、有機合成化学の一般的な手法によって化合物(1)に変換される。
(化合物(42)の合成)
【0088】

【0089】
2−ジフルオロメチル−3−フルオロフェニレンの構造単位は、次のような方法で合成する。化合物(32)の水酸基を適切な保護基で保護して化合物(33)を得る。Pは保護基を意味し、例えば、Me基である。化合物(33)に、sec−ブチルリチウムを作用させ、続いてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を反応させてアルデヒド(34)を得る。この化合物をジメチルアミノサルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化し、続いて脱保護してフェノール(35)を得る。この化合物は、有機合成化学の一般的な手法によって化合物(1)に変換される。なお、上記におけるQは次の式で表される基である。
【0090】


式中、環A、Z、およびYは、式(1)において定義された意味と同一である。
【0091】
1−4−3 式(1)で表される化合物を合成する方法
化合物(1)を合成する方法は複数あるが、ここにその一例を示す。
1−4−3−1 出発原料である化合物(37)および(38)を合成する方法
出発原料となる2,2,2−ビシクロオクタン環誘導体である化合物(37)および(38)を合成する方法について説明する。
【0092】
Yが−CFである場合の出発原料となる(37)および(38)の合成法
【0093】

【0094】
アクリル酸エチルからJ. Org. Chem., 1982, 47, 2957-2966.に従って合成された(36)をJ. Org. Chem., 1985, 50, 1079-1087.に従って(37)または(38)が得られる。
【0095】
Yが炭素数2〜10のハロゲン化アルキルである場合の出発原料となる(41)および(42)の合成法
【0096】


【0097】
上記で合成された(36)をJ. Org. Chem., 1988, 53, 5259-5266.および日本化学会誌, 1973, 2351-2356に従ってパーフルオロ体(Rf=C2n+1)(41)または(42)が得られる。
【0098】
1−4−3−2 化合物(43)または(44)から化合物(1)を合成する方法
出発原料である化合物(38)または(42)から(1)を合成する方法について説明する。
化合物(1)は、出発原料である化合物(38)または(42)から有機合成化学における一般的な手法を用いることにより合成することができる。
以下に、化合物(1)を合成するための一般的な合成例(A)〜(C)を示す。
(A) 環Aがシクロヘキシレンであり、かつZが単結合である場合、またはZがアルキレンでYがハロゲン化アルキルである場合の化合物(45)の合成法
【0099】

【0100】
なお、本明細書におけるQは次の式で表される基である。
【0101】



式中、R、環A、環A、環A、Z、Z、Z、m、およびnは、式(1)において定義された意味と同一である。
【0102】
上記スキーム1に示すように、最初に有機合成化学の方法に従ってシクロヘキサノン誘導体(43)、またはカルボニル誘導体(44)を準備し、適切なグリニャール試薬(38)、(42)を用いたグリニャール反応、酸による脱水反応、およびPd触媒を用いた水素還元を順次行い、その後は必要により再結晶を行ったり、アルコール体を有機化学合成協会誌 1983, 41,48-63に記載されているFITS試薬またはAngew. Chem. Int. Ed.,2000, 39, 4216-4235. に記載されている方法でフッ素化することで、化合物(45)を合成することができる。
【0103】
(B−1) 環Aがフェニレン、ピリミジンなどであり、かつZが単結合であり、Yがハロゲン化アルキルである場合の化合物(47)の合成法
【0104】

【0105】
(B−2) 環Aがフェニレン、ピリミジンなどであり、かつZがアルケニレンであり、Yがハロゲン化アルキルである場合の化合物(49)の合成法
【0106】

【0107】
(B−3) 環Aがフェニレン、ピリミジンなどであり、かつZがアルキニレンであり、Yがハロゲン化アルキルである場合の化合物(50)の合成法
【0108】

【0109】
上記に示すように、最初に有機合成化学の方法に従って化合物(48)を準備し、カップリング反応を行うことによって容易に化合物(50)に誘導することができる。
【0110】
(C) Zが−CFO−であり、Yがハロゲン化アルキルである場合の化合物(52)の合成法
【0111】



式中、R、環A、環A、Z、Z、m、およびnは、式(1)において定義された意味と同一である。
【0112】
最初に有機合成化学の方法に従って化合物(51)を準備し、出発原料となる2,2,2,−ビシクロオクタン環誘導体である化合物(37)または(41)などとエステル化反応させ、その後に上記に記載した結合基の合成スキーム(III)を用いることによって、容易に化合物(52)に誘導することができる。
【0113】
2 本発明の組成物
本発明の化合物は、公知の同様な構造の化合物に比べ、他の液晶材料との相溶性に優れかつ低粘度であり、液晶温度レンジも広い。また、類似の化合物と比較し、低いしきい値電圧を有するうえ比較的低粘度を示す。さらに本発明化合物は液晶表示素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に十分安定であり、ネマチック液晶組成物の構成成分として極めて優れ、TN型、STN型およびTFT型用の液晶組成物の構成成分として好適に使用することができる。
【0114】
本発明の液晶組成物は、本発明の式(1)で示される化合物を成分Aとして含む必要がある。この成分Aのみの組成物、または成分Aと本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分との組成物でもよいが、この成分Aに以下に示す成分B、C、DおよびEから選ばれた成分を加えることにより種々の特性を有する本発明の液晶組成物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)などが提供できる。
【0115】
成分Aに加える成分として、式(2)、(3)および(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分B、および/または式(5)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分C、および/または式(6)、(7)、(8)、(9)および(10)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Dを混合したものが好ましい〔液晶組成物(b)、(c)および(d)〕。
【0116】
さらに式(11)、(12)および(13)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Eを混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性値、誘電率異方性値および粘度等を調整することができる〔前記液晶組成物(e)〕。
また、本発明に使用される液晶組成物の各成分は、各元素の同位体元素からなる類縁体でもその物理特性に大きな差異がない。
【0117】
上記成分Bのうち、式(2)で示される化合物の好適例として式(2−1)〜(2−15)、式(3)で示される化合物の好適例として式(3−1)〜(3−112)、そして式(4)で示される化合物の好適例として式(4−1)〜(4−52)をそれぞれ挙げることができる。
【0118】

【0119】

【0120】

【0121】

【0122】

【0123】

【0124】

【0125】


式中、R、X1は前記と同じ意味である。
【0126】
これらの式(2)〜(4)で示される化合物すなわち成分Bは、誘電率異方性値が正であり、熱安定性や化学的安定性が非常に優れているので、TFT用の液晶組成物を調製する場合に用いられる。本発明の液晶組成物における成分Bの含有量は、液晶組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適するが、好ましくは10〜97重量%の範囲、より好ましくは40〜95重量%の範囲である。また式(11)〜(13)で表される化合物(成分E)をさらに含有させることにより粘度調整をすることができる。
式(5)で示される化合物すなわち成分Cのうちの好適例として、式(5−1)〜(5−62)を挙げることができる。
【0127】

【0128】

【0129】


式中、RおよびX2は前記と同じ意味である。
【0130】
これらの式(5)で示される化合物すなわち成分Cは、誘電率異方性値が正でその値が非常に大きいのでSTN,TN用の液晶組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Cを含有させることにより、組成物のしきい値電圧を小さくすることができる。また、粘度の調整、屈折率異方性値の調整および液晶相温度範囲を広げることができる。さらに急峻性の改良にも利用できる。
STNまたはTN用の液晶組成物を調製する場合には、成分Cの含有量は0.1〜99.9重量%の範囲が適用できるが、好ましくは10〜97重量%の範囲、より好ましくは40〜95重量%の範囲である。また、後述の成分を混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性値、誘電率異方性値及び粘度などを調整できる。
【0131】
式(6)〜(8)および(10)からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる成分Dは、垂直配向モ−ド(VAモ−ド)などに用いられる誘電率異方性が負の本発明の液晶組成物を調製する場合に、好ましい成分である。
この式(6)〜(8)および(10)で示される化合物(成分D)の好適例として、それぞれ式(6−1)〜(6−5)、(7−1)〜(7−9)、(8−1)〜(8−3)および(10−1)〜(10−11)を挙げることができる。
【0132】


式中、R,Rは前記と同じ意味である。
【0133】
これら成分Dの化合物は主として誘電率異方性の値が負であるVAモ−ド用の液晶組成物に用いられる。その含有量を増加させると組成物のしきい値電圧が低くなるが、粘度が大きくなるので、しきい値電圧の要求値を満足している限り含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、誘電率異方性値の絶対値が5程度であるので、含有量が40重量%より少なくなると電圧駆動ができなくなる場合がある。
【0134】
成分Dのうち式(6)で表される化合物は2環化合物であるので、主としてしきい値電圧の調整、粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果がある。また、式(7)および式(8)で表される化合物は3環化合物であるので透明点を高くする、ネマチックレンジを広くする、しきい値電圧を低くする、屈折率異方性値を大きくするなどの効果が得られる。
【0135】
成分Dの含有量は、VAモ−ド用の組成物を調製する場合には、組成物全量に対して好ましくは40重量%以上、より好ましくは50〜95重量%の範囲である。また、成分Dを混合することにより、弾性定数をコントロ−ルし、組成物の電圧透過率曲線を制御することが可能となる。成分Dを誘電率異方性値が正である組成物に混合する場合はその含有量が組成物全量に対して30重量%以下が好ましい。
【0136】
式(11)、(12)および(13)で表わされる化合物(成分E)の好適例として、それぞれ式(11−1)〜(11−11)、(12−1)〜(12−18)、および(13−1)〜(13−6)を挙げることができる。
【0137】

【0138】


式中、RおよびRは前記と同じ意味である。
【0139】
式(11)〜(13)で表される化合物(成分E)は、誘電率異方性値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。式(11)で表される化合物は主として粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果があり、また式(12)および(13)で表される化合物は透明点を高くするなどのネマチックレンジを広げる効果、または屈折率異方性値の調整の効果がある。
【0140】
成分Eで表される化合物の含有量を増加させると液晶組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが望ましい。TFT用の液晶組成物を調製する場合に、成分Eの含有量は、組成物全量に対して好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。また、STNまたはTN用の液晶組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物全量に対して好ましくは70重量%以下より好ましくは60重量%以下である。
【0141】
本発明の液晶組成物は、本発明の式(1)で示される化合物の少なくとも1種類を0.1〜99重量%の割合で含有することが、優良な特性を発現せしめるために好ましい。
本発明の液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法などにより一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物を添加して、例えばつぎに述べるような光学活性化合物を含む本発明の液晶組成物(f)、染料を添加したGH型用の液晶組成物を調製することができる。通常、添加物は当該業者によく知られており、文献などに詳細に記載されている。
【0142】
本発明の液晶組成物(f)は、前述の本発明の液晶組成物にさらに1種以上の光学活性化合物を含有することができる。
光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加する。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれを防ぐといった効果を有する。キラルド−プ剤の例として以下の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0143】

【0144】
本発明の液晶組成物(f)は、通常これらの光学活性化合物を添加して、ねじれのピッチを調整する。ねじれのピッチはTFT用およびTN用の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STN用の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。また、双安定TN(Bistable TN)モ−ド用の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で2種以上の光学活性化合物を添加しても良い。
【0145】
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH型用の液晶組成物として使用することもできる。
また、本発明の液晶組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAPや、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)例えばポリマ−ネットワ−ク液晶表示素子(PNLCD)用をはじめ、複屈折制御(ECB)型やDS型用の液晶組成物としても使用できる。
【0146】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、各実施例中において、Cは結晶を、SAはスメクチックA相を、SBはスメクチックB相を、SXは相構造未解析のスメクチック相を、Nはネマチック相を、Iは等方相を示し、相転移温度の単位はすべて℃である。
【実施例】
【0147】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によって制限されない。また、得られた化合物は核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトルなどで構造を同定したので、まず分析方法について説明をする。
【0148】
1H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0149】
GC分析:測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0150】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0151】
なお、試料の希釈溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0152】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶化合物成分(被検成分)と基準となる液晶化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0153】
液晶化合物等の物性値の測定試料
液晶化合物の物性値を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0154】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記式に示す式に示す外挿法にしたがって、外挿値を計算する。この外挿値をこの化合物の物性値とする。
【0155】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈液晶化合物の重量%〉
【0156】
液晶化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、液晶化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性値を測定し上記式にしたがって外挿値を求めて、これを液晶化合物の物性値とする。
【0157】
測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在するが、例えば、母液晶Aの組成(重量%)は以下のとおりである。
母液晶A:

【0158】
液晶化合物等の物性値の測定方法
物性値の測定は後述する方法で行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0159】
測定値のうち、液晶化合物そのものを試料とした場合は、得られた値を実験データとして記載した。液晶化合物と母液晶との混合物を試料として用いた場合は、外挿法で得られた値を実験データとして記載した。
【0160】
相構造および相転移温度(℃):以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、液晶相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、相転移温度を決定した。
【0161】
以下、結晶はCと表し、さらに結晶の区別がつく場合は、それぞれC1またはC2と表した。また、スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれS、またはSと表した。相転移温度の表記として、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への相転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への相転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0162】
ネマチック相の上限温度(TNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0163】
低温相溶性:母液晶と液晶化合物とを、液晶化合物が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を作製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶もしくはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0164】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):液晶化合物と母液晶との混合物を、E型回転粘度計を用いて測定した。
【0165】
屈折率異方性(Δn):測定は25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0166】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0167】
[実施例1]
化合物(1−11)の合成
化合物(1)の1つとして、式(1−11)に示される化合物を合成した。
【0168】

【0169】
下記のスキームに従って、化合物(1−11)を合成した。

【0170】
(第1段)
窒素雰囲気下でEtO(50ml)を−78℃に冷却後、t-ブチルリチウム(1.7mol/l)(13.325ml)を加えてから、ヨウ素体(3.444g)をEtO(20ml)に溶かしたものを−70℃以下で滴下した。1時間後、4−プロピルシクロヘキサノン(3.176g)をEtO(10ml)に溶かしたものを−70℃以下で滴下した。30分後、室温に戻して一晩攪拌した後、飽和塩化アンモニウムでクエンチしトルエン(50ml)で3回抽出し、抽出液を常法により水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥し次いで濃縮を行った。残渣をヘプタン:酢酸エチル=9:1のシリカゲルカラムに通すことでアルコール体(1−11a)を得た。
つづいて、アルコール体(2.900g)とp-トルエンスルホン酸一水和物(130mg)をトルエン(50ml)に溶かして4時間加熱還流した。反応液を室温に冷却後、飽和重曹水(20ml)、水(20ml)でそれぞれ洗浄、次いで濃縮を行った後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メタノールで再結晶を行うことで化合物(1−11b)(1.900g)を単離した。
得られた化合物(1−11b)の物理化学性状を以下に示す。
H−NMR(CDCl、ppm): δ 0.86 (3H,t, J=7.4Hz ), 1.11-2.50 (24H, m), 5.36-5.37 (1H, m).
19F−NMR(CDCl、ppm): δ-79.1 (3F,s).
【0171】
(第2段)
脱水体(1−11b)(1.900g)をトルエン−ソルミックス(50ml)の混合溶媒(1:1)に溶かして5%Pd−C(190mg)を加えて水素雰囲気下で5日間攪拌した。反応液をろ過してPd-Cを除去した後、濃縮を行いシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メタノールで再結晶を行うことで化合物(1−11)1.0g)を単離した。
【0172】
得られた化合物(1−11)の物理化学性状を以下に示す。
H−NMR(CDCl、ppm): δ0.86 (3H,t, J=7.4Hz ), 0.79-1.78 (14H,m), 1.38-1.41 (6H, m), 1.61-1.63 (6H, m).
19F−NMR(CDCl、ppm): δ-79.0 (3F,s).
MS: 302(M
【0173】
得られた化合物(No.1−11)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度 :C 45.8 S 71.5 I 。
【0174】
[実施例2]
化合物(1−37)の合成
化合物(1)の1つとして、式(1−37)に示される化合物を合成した。


【0175】
下記のスキームに従って、化合物(1−37)を合成した。

【0176】
(第一段)
窒素雰囲気下でEtO(50ml)を−78℃に冷却後、t-ブチルリチウム(1.7mol/l)(4.640ml)を加えてから、ヨウ素体(1.200g)をEtO(20ml)に溶かしたものを−70℃以下で滴下した。1時間後、4−プロピルシクロヘキシルシクロヘキサノン(0.856g)をEtO(10ml)に溶かしたものを−70℃以下で滴下した。30分後、室温に戻して2日間攪拌した後、飽和塩化アンモニウムでクエンチしEtO(30ml)で3回抽出し、抽出液を常法により水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥し次いで濃縮を行った。残渣をヘプタン:酢酸エチル=9:1のシリカゲルカラムに通すことでアルコール体(1−37a)を得た。
つづいて、アルコール体(0.900g)とp-トルエンスルホン酸一水和物(90mg)をトルエン(50ml)に溶かして4時間加熱還流した。反応液を室温に冷却後、飽和重曹水(20ml)、水(20ml)でそれぞれ洗浄、次いで濃縮を行った後、残渣をヘプタンのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メタノールで再結晶を行うことで化合物(1−37b)(0.690g)を単離した。
得られた化合物(1−37b)の物理化学性状を以下に示す。
H−NMR(CDCl、ppm): δ 0.80-2.10 (33H, m), 0.86 (3H,t, J=7.4Hz ), 5.37 (1H, t, , J=2.5Hz).
19F(CDCl、ppm): δ-79.1 (3F,s).
【0177】
(第2段)
脱水体(1−37b)(0.690g)をトルエン−ソルミックス(30ml)の混合溶媒(1:1)に溶かして5%Pd−C(70mg)を加えて水素雰囲気下で3日間攪拌した。反応液をろ過してPd-Cを除去した後、濃縮を行いシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メタノール、ソルミックスで再結晶を行うことで化合物(1−37)1.0g)を単離した。
【0178】
得られた化合物(1−37)の物理化学性状を以下に示す。
H−NMR(CDCl、ppm): δ 0.79-1.74 (36H, m), 0.86 (3H,t, J=7.4Hz ).
19F(CDCl、ppm): δ-79.0 (3F,s).
【0179】
[実施例3]
[実施例1]および前記の合成法に基づいて、本発明の化合物(1)である化合物(1−10)〜(1−104)を合成できる。
【0180】

【0181】

【0182】

【0183】

【0184】

【0185】
次に、本発明の化合物(1)を含む本発明の代表的な組成物例を以下に示す。物性値の測定方法は後述する方法に従った。
[実施例4](組成物例1)
4つの化合物を混合して、ネマチック相を有する母液晶Aを調製した。4つの化合物は、
4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(24重量%)、
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(36重量%)、
4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(25重量%)、および
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−4’−シアノビフェニル(15重量%)であった。
【0186】
母液晶Aの物性値は次のとおりであった。上限温度(NI)=71.7℃;粘度(η20)=27.0mPa・s;光学異方性(Δn)=0.137;誘電率異方性(Δε)=11.0。
この母液晶Aに、実施例1に記載の化合物(1−11)を添加して(組成物例1)を調製した。具体的には、化合物(1−11)を、組成物に対して10重量%となるように添加して本発明の(組成物例1)を調製した。この(組成物例1)の物性値を測定した結果、上限温度(NI)=11.7℃;光学異方性(Δn)=0.0303;誘電率異方性(Δε)=7.6であった。
【0187】
[実施例5](組成物例2)
母液晶Aに、実施例1に記載の化合物(1−37)を添加して組成物例2を調製した。具体的には、化合物(1−37)を、組成物に対して5重量%となるように添加して本発明の組成物例2を調製した。この(組成物例2)の物性値を測定した結果、上限温度(NI)=NI)=157.7℃;光学異方性(Δn)=0.097;誘電率異方性(Δε)=8.1であった。
【0188】
[実施例6](組成物例3〜16)
さらに、化合物(1)を含む本発明の代表的な組成物として、(組成物例3)〜(組成物16)について、組成物の成分である化合物とその量(重量%)、および物性値を示した。
各組成物例に含まれる化合物は表1の取り決めに従い、左末端基、結合基、環構造、および右末端基の記号によって表示した。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランスである。末端基の記号がない場合は、末端基が水素であることを意味する。
【0189】

【0190】
また、各組成物例の物性値を測定して示した。具体的には、ネマチック相の上限温度(NI;℃)、ネマチック相の下限温度(T;℃)、化合物の相溶性、粘度(η;20℃で測定;mPa・s)、光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定)、誘電率異方性(Δε;25℃で測定)およびしきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)を測定して示した。物性値の測定は、日本電子機械工業規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法に従い、具体的には以下のように測定した。
【0191】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0192】
ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、Tを≦−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0193】
化合物の相溶性:類似の構造を有する幾つかの化合物を混合してネマチック相を有する母液晶を調製した。測定する化合物とこの母液晶とを混合した組成物を得た。混合する割合の一例は、15%の化合物と85%の母液晶である。この組成物を−20℃、−30℃のような低い温度で30日間保管した。この組成物の一部が結晶(またはスメクチック相)に変化したか否かを観察した。必要に応じて混合する割合と保管温度とを変更した。このようにして測定した結果から、結晶(またはスメクチック相)が析出する条件および結晶(またはスメクチック相)が析出しない条件を求めた。これらの条件が相溶性の尺度である。
【0194】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):粘度の測定にはE型粘度計を用いた。
【0195】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって光学異方性を測定した。試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと光学異方性を測定した。化合物の光学異方性は外挿値である。
【0196】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと誘電率異方性を測定した。化合物の誘電率異方性は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0197】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあとしきい値電圧を測定した。化合物のしきい値電圧は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した光学異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が10%になったときの電圧の値を測定した。
【0198】
らせんピッチ(20℃で測定;μm):らせんピッチの測定には、カノのくさび型セル法を用いた。カノのくさび型セルに試料を注入し、セルから観察されるディスクリネーションラインの間隔(a;単位はμm)を測定した。らせんピッチ(P)は、式P=2・a・tanθから算出した。θは、くさび型セルのおける2枚のガラス板の間の角度である。
【0199】
(組成物例3)
3−HBi−CF3 20%

2−BEB(F)−C 5%
3−BEB(F)−C 4%
4−BEB(F)−C 12%
1V2−BEB(F,F)−C 13%
3−HB−O2 5%
3−HH−4 3%
3−HHB−F 3%
3−HHB−1 4%
3−HHB−O1 4%
3−HBEB−F 3%
3−HHEB−F 4%
5−HHEB−F 4%
3−H2BTB−2 4%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
3−HB(F)TB−2 4%
NI=71.6℃;Δn=0.127;Δε=27.0;Vth=1.11V.
【0200】
(組成物例4)
3−HHBi−CF3 8%

2−HB−C 5%
3−HB−C 12%
3−HB−O2 7%
2−BTB−1 3%
3−HHB−F 4%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
3−HHB−3 14%
3−HHEB−F 4%
5−HHEB−F 4%
2−HHB(F)−F 7%
3−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 7%
3−HHB(F,F)−F 5%
【0201】
(組成物例5)
3−HHVBi−CF3 8%

3−BEB(F)−C 8%
3−HB−C 8%
V−HB−C 8%
1V−HB−C 8%
3−HB−O2 3%
3−HH−2V 6%
3−HH−2V1 7%
V2−HHB−1 15%
3−HHB−1 5%
3−HHEB−F 7%
3−H2BTB−2 6%
3−H2BTB−3 6%
3−H2BTB−4 5%
【0202】
(組成物例6)
3−HBi−CF3 10%
3−HHBi−CF3 5%

5−BEB(F)−C 5%
V−HB−C 5%
5−PyB−C 6%
4−BB−3 11%
3−HH−2V 10%
5−HH−V 10%
V−HHB−1 7%
V2−HHB−1 7%
3−HHB−1 9%
1V2−HBB−2 10%
3−HHEBH−3 5%
【0203】
(組成物例7)
3−HHBi−CF3 5%
3−HHVBi−CF3 5%

1V2−BEB(F,F)−C 6%
3−HB−C 18%
2−BTB−1 10%
5−HH−VFF 20%
3−HHB−1 4%
VFF−HHB−1 8%
VFF2−HHB−1 11%
3−H2BTB−2 5%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
【0204】
(組成物例8)
3−HBi−CF3 10%

5−HB−CL 16%
3−HH−4 8%
3−HH−5 4%
3−HHB−F 4%
3−HHB−CL 3%
4−HHB−CL 4%
3−HHB(F)−F 8%
4−HHB(F)−F 8%
5−HHB(F)−F 8%
7−HHB(F)−F 7%
5−HBB(F)−F 3%
1O1−HBBH−5 3%
3−HHBB(F,F)−F 2%
4−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 3%
4−HH2BB(F,F)−F 3%
NI=107.3℃;Δn=0.087;Δε=4.2;Vth=2.07V.
上記組成物100部に光学活性化合物(Op−05)を0.25部添加したときのピッチは61.0μmであった
【0205】
(組成物例9)
3−HBi−CF3 7%
3−HHVBi−CF3 7%

3−HHB(F,F)−F 9%
3−H2HB(F,F)−F 8%
4−H2HB(F,F)−F 8%
5−H2HB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 17%
5−HBB(F,F)−F 15%
3−H2BB(F,F)−F 5%
5−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHEBB−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 2%
1O1−HBBH−4 4%
1O1−HBBH−5 4%
【0206】
(組成物例10)
3−HBi−CF3 5%
3−HHBi−CF3 5%
3−HHVBi−CF3 5%

5−HB−F 8%
6−HB−F 8%
7−HB−F 7%
2−HHB−OCF3 7%
3−HHB−OCF3 7%
4−HHB−OCF3 7%
5−HHB−OCF3 5%
3−HH2B−OCF3 4%
5−HH2B−OCF3 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 5%
3−HH2B(F)−F 3%
3−HBB(F)−F 5%
5−HBB(F)−F 5%
5−HBBH−3 3%
3−HB(F)BH−3 3%
【0207】
(組成物例11)
3−HHBi−CF3 10%

5−HB−CL 11%
3−HH−4 8%
3−HHB−1 5%
3−HHB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 20%
5−HBB(F,F)−F 5%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 3%
5−HHEB(F,F)−F 3%
2−HBEB(F,F)−F 3%
3−HBEB(F,F)−F 5%
5−HBEB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 6%
【0208】
(組成物例12)
3−HHVBi−CF3 15%

3−HB−CL 6%
5−HB−CL 4%
3−HHB−OCF3 5%
3−H2HB−OCF3 5%
5−H4HB−OCF3 5%
V−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F)−F 5%
5−HHB(F)−F 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 5%
5−H2HB(F,F)−F 5%
5−H4HB(F,F)−F 7%
2−H2BB(F)−F 5%
3−H2BB(F)−F 10%
3−HBEB(F,F)−F 5%
【0209】
(組成物例13)
3−HBi−CF3 5%
3−HHBi−CF3 5%

5−HB−CL 17%
7−HB(F,F)−F 3%
3−HH−4 10%
3−HH−5 5%
3−HB−O2 6%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
2−HHB(F)−F 7%
3−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 7%
3−HHB(F,F)−F 5%
3−H2HB(F,F)−F 5%
4−H2HB(F,F)−F 5%
【0210】
(組成物例14)
3−HHBi−CF3 4%
3−HHVBi−CF3 6%

5−HB−CL 3%
7−HB(F)−F 7%
3−HH−4 9%
3−HH−EMe 13%
3−HHEB−F 8%
5−HHEB−F 8%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 5%
4−HGB(F,F)−F 5%
5−HGB(F,F)−F 6%
2−H2GB(F,F)−F 4%
3−H2GB(F,F)−F 5%
5−GHB(F,F)−F 7%
【0211】
(組成物例15)
3−HBi−CF3 5%
3−HHBi−CF3 5%
3−HHVBi−CF3 5%

3−HH−4 8%
3−HHB−1 6%
3−HHB(F,F)−F 10%
3−H2HB(F,F)−F 9%
3−HBB(F,F)−F 15%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F 20%
1O1−HBBH−5 7%
2−HHBB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 4%
【0212】
(組成物例16)
3−HBi−CF3 8%
3−HHBi−CF3 6%

5−HB−CL 7%
3−HB−O2 10%
3−PyB(F)−F 7%
5−PyB(F)−F 7%
3−HBB(F,F)−F 7%
3−PyBB−F 10%
4−PyBB−F 10%
5−PyBB−F 10%
5−HBB(F)B−2 9%
5−HBB(F)B−3 9%
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明は、他の液晶材料との相溶性に優れ、小さなΔnの値を有する新規ビシクロオクタンを有する液晶化合物を提供する。
また、本発明は、この液晶化合物を成分として、その化合物を構成する環、置換基、結合基などを適当に選択することにより、所望の物性を有する上記の特徴を備えた新たな液晶組成物を提供し、さらにこの液晶組成物を用いて構成した液晶表示素子を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。


式中、Rは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は−O−、−S−、−CO−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;
環A、環Aおよび環Aは独立して、次の1)または2)であり:
1)1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、これらの1つの−CH−または隣接していない2つ以上の−CH−は−O−により置き換えられてもよく;
2)1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、このうちの1,4−フェニレンの1つまたは2つの−CH=は−N=により置き換えられてもよく;
1)または2)に記載の基において任意の水素はハロゲン、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF2、または−OCHFで置き換えられてもよく;
、ZおよびZは独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−CFO−、−(CH−、−CHCHCFO−、−CHCHCHO−、−CH=CHCHO−、−CH=CH−CHCH−、−CHCO−、−COO−、−CF=CF−、または−C≡C−であり;
Yは炭素数1〜10のパーフルオロアルキルであり;
mおよびnは独立して0または1である。
【請求項2】
Rが炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜11のアルケニルまたは炭素数1〜9のアルコキシであり;
環A、環Aおよび環Aが独立して、次の1)または2)であり;
1)1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
2)1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
2)に記載の基において任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく;
、ZおよびZが独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−(CH−、−CHCHCHO−、−CH=CHCHCH−、または−COO−である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜11のアルケニルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
環A、環Aおよび環Aが独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
、ZおよびZが独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−CH=CH−、−(CH−、または−COO−である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
環A、環Aおよび環Aが独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
、ZおよびZが独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、または−CH=CH−である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(1−1)〜式(1−6)のいずれか1つで表される化合物。


式中、Rは炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;


は、1,4−フェニレン、または1つ〜2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり、;
は単結合であり;
Yは−CFである。
【請求項6】
式(1−7)〜式(1−9)のいずれか1つで表される化合物。


式中、Rは炭素数1〜5のアルキルである。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する、2成分以上からなる液晶組成物。
【請求項8】
式(2)、(3)および(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、請求項7に記載の液晶組成物。


式中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
はフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1−ピラン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;
およびLは独立して水素またはフッ素である。
【請求項9】
式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項7に記載の液晶組成物。


式中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環B、環Bおよび環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1−ピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;
およびLは独立して水素またはフッ素であり;
qは独立して0、1または2であり、rは独立して0または1である。
【請求項10】
式(6)、(7)、(8)、(9)および(10)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、請求項7に記載の液晶組成物。


式中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環C、環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、6−ピラン−2,5−ジイルまたはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
、Z、ZおよびZは独立して−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH22−、または単結合であり;
およびLは独立してフッ素または塩素であり;
j、k、l、mおよびnは独立して0または1であり、k+l+m+nは1または2である。
【請求項11】
式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、請求項7に記載の液晶組成物。


式中、RおよびRは独立して炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環D、環Dおよび環Dは独立して1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【請求項12】
請求項9記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項13】
請求項11記載の式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項14】
請求項11記載の式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項15】
請求項11記載の式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する請求項7〜15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含む請求項7〜16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項18】
請求項7〜17のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2008−247890(P2008−247890A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48044(P2008−48044)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】