説明

ハロゲン系防炎剤の分散液とそれを用いる防炎加工方法

【課題】CDP(カチオン可染型ポリエステル)繊維とポリエステル繊維との混紡繊維、種々の機能性を付与した繊維に、耐久性のある優れた防炎性能を付与することができる防炎加工剤および防炎加工方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)であらわされるハロゲン化合物および/または臭素原子で置換されたジフェニルスルホンの誘導体と、界面活性剤とを含有する水性分散液。更に、上記水性分散液に臭素原子で置換されたジフェニルプロパンの誘導体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維構造物に耐久性にすぐれる防炎性能を付与することができるハロゲン系化合物を含有する防炎加工剤の水性分散液とそれを用いた繊維の防炎加工方法およびそれにより防炎加工された繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維に後加工処理によって防炎性能を付与する方法としては、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)のような臭素化シクロアルカンを水に分散させて防炎加工剤とし、これを用いて繊維を防炎加工する方法が知られている。しかしながら、これらの臭素化シクロアルカン化合物は自然環境に有害な影響を及ぼす可能性がある等の問題により使用が規制されている。そこで、近年、この臭素化シクロアルカン化合物に代わる種々のリン系化合物が検討され、特許文献1〜4に記載の有機リン酸エステルのようなリン系化合物を用いた防炎剤およびそれを用いる繊維の防炎加工方法等が提案されている。
【0003】
しかし、これらのリン系化合物を用いた場合には、繊維、特にCDP(カチオン可染型ポリエステル)繊維とポリエステル繊維との混紡繊維や、抗菌加工、消臭加工、表面加工等の種々の機能性を付与した繊維には十分な防炎性能を付与することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−254268号公報
【特許文献2】特開2000−328445号公報
【特許文献3】特開2004−225176号公報
【特許文献4】特開2006−70417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、繊維、特にCDP繊維とポリエステル繊維との混紡繊維、機能性を付与した繊維に、耐久性のある優れた防炎性能を付与することができる防炎加工剤および防炎加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記課題を解決する為に鋭意研究した結果、特定のハロゲン化合物を用いることによって、耐久性にすぐれる防炎性能を繊維に付与することができることを見出して、本発明に至ったものである。
【0007】
即ち、本発明は以下の1)〜11)に関する。
1)下記式(1)であらわされるハロゲン化合物(A)および/または下記式(2)であらわされるハロゲン化合物(B)と、界面活性剤を含有する水性分散液。
【化1】

【化2】

【0008】
2)更に、下記式(3)であらわされるハロゲン化合物(C)を含有する前記1)に記載の水性分散液。
【化3】

【0009】
3)ハロゲン化合物(A)および/またはハロゲン化合物(B)を水性分散液中に総量で1〜90重量%含有する前記1)に記載の水性分散液。
4)ハロゲン化合物(A)および/またはハロゲン化合物(B)と、ハロゲン化合物(C)を水性分散液中に総量で1〜90重量%含有する前記2)に記載の水性分散液。
【0010】
5)界面活性剤が非イオン型界面活性剤またはアニオン型界面活性剤、あるいはその両者である前記1)〜4)のいずれか一項に記載の水性分散液。
6)更に、紫外線吸収剤を含有する前記1)〜5)のいずれか一項に記載の水性分散液。
7)繊維用の防炎剤として使用する前記1)〜6)のいずれか一項に記載の水性分散液。
8)繊維がポリエステル繊維である前記7)に記載の水性分散液。
9)ポリエステル繊維がカチオン可染型ポリエステル繊維またはカチオン可染型ポリエステル繊維を含有する混紡繊維である前記8)に記載の水性分散液。
【0011】
10)前記1)〜9)のいずれか一項に記載の水性分散液を用いることを特徴とする繊維の防炎加工方法。
11)前記10)に記載の方法により防炎加工された繊維。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防炎用水性分散液は、前記式(1)〜(3)で表される低毒性ハロゲン化合物と界面活性剤を含有するものであり、これを用いて繊維に防炎加工を施すことによって、耐光性、耐久性を有する優れた防炎性能を繊維、特にCDP繊維やそれとポリエステル繊維との混紡繊維、機能性を付与した繊維に付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水性分散液は、前記式(1)であらわされるハロゲン化合物(A)および/または前記式(2)であらわされるハロゲン化合物(B)と、界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0014】
前記式(1)であらわされるハロゲン化合物(A)は文献公知の化合物であり、例えば、商品名SAYTEX BT−93(アルベマール製)として市販されている。
前記式(2)であらわされるハロゲン化合物(B)は文献公知の化合物であり、例えば、Bis(3,5−dibromo−4−(2,3−dibromopropoxy)phenyl)sulfone(APAC Pharmaceutical,LLC製)として市販されている。
本発明の水性分散液中、ハロゲン化合物(A)および/またはハロゲン化合物(B)は総量で1〜90重量%含有するのが好ましい。
【0015】
本発明の水性分散液には前記式(3)であらわされるハロゲン化合物(C)を含有してもよい。ハロゲン化合物(C)は文献公知の化合物であり、例えば、商品名SAYTEX HP−800(アルベマール製)として市販されている。
本発明の水性分散液中にハロゲン化合物(C)を含有する場合、ハロゲン化合物(A)および/またはハロゲン化合物(B)と、ハロゲン化合物(C)は総量で1〜90重量%含有するのが好ましい。
【0016】
本発明の水性分散液に含有されていてもよい紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収する化合物であれば特に制限無く使用することが可能である。また、該紫外線吸収剤は耐光堅牢度をより向上させるために使用される。
【0017】
該紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物、桂皮酸系化合物、スチルベン系化合物;または、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物(いわゆる、蛍光増白剤)も用いることができる。
【0018】
本発明の水性分散液に含有されていてもよい紫外線吸収剤の内、好ましい化合物の構造式を下記に示す。
【化4】


【0019】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤である上記式(106)中、Rとしては(C1−C12)直鎖または分岐鎖アルキル基あるいはクミル基が挙げられ、より好ましくは(C3−C6)直鎖または分岐鎖アルキル基が挙げられ、更に好ましくは(C3−C5)分岐鎖アルキル基が挙げられ、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基等が挙げられる。
【0020】
上記式(106)中、Rとしては水酸基、(C1−C12)直鎖または分岐鎖アルキル基、(C1−C12)直鎖または分岐鎖アルコキシ基あるいはベンジルオキシ基が挙げられ、(C1−C12)直鎖または分岐鎖アルキル基が好ましい。より好ましくは(C1−C6)直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、更に好ましくは(C1−C3)直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0021】
上記式(106)中、Rとしては水素原子、水酸基、(C1−C12)直鎖または分岐鎖アルキル基あるいは(C1−C12)直鎖または分岐鎖アルコキシ基が挙げられ、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはイソプロピル基が好ましく、水素原子がより好ましい。また、Rとしては水素原子または水酸基が挙げられ、水酸基が好ましく、Xとしては水素原子または塩素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0022】
特に好ましいR乃至RおよびXの組合せとしては、Rがt−ブチル基、Rがメチル基、Rが水素原子、Rが水酸基、Xが塩素原子である。
【0023】
また、上記式(106)で示されるベンゾトリアゾール系化合物以外の紫外線吸収剤として好ましい化合物としては、上記式(101)、式(102)、式(103)で表されるベンゾフェノン系化合物、式(104)で表されるトリアジン系化合物(式中、RおよびR10はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基または(C1−C5)アルキル基を示す。)、式(105)で表されるベンゾトリアゾール系とベンゾフェノン系の複合系化合物(式中、Rは(C1−C2)アルキル基またはクミル基を、Rは水酸基、(C1−C2)アルコキシ基またはベンジルオキシ基を、Rは水素原子、水酸基または(C1−C2)アルコキシ基を、Rは水素原子または水酸基を、Xは水素原子または塩素原子を示す。)が挙げられる。
【0024】
本発明の水性分散液に含有されていてもよい紫外線吸収剤として特に好ましい化合物は式(106)で表されるベンゾトリアゾール系化合物である。
【0025】
界面活性剤としてはカチオン型、非イオン型またはアニオン型が知られており、本発明の水性分散液に含有される界面活性剤としては、いずれの種類でも使用することが可能である。本発明の水性分散液を調製する場合には、非イオン型またはアニオン型、または非イオン型とアニオン型とを混合して用いるのが好ましい。
【0026】
該アニオン型界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステル等のアルキルサルフェート塩やアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルスルホネート塩、更には、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等のアルキルホスフェート塩が挙げられる。また、アルキルアリールスルホネート塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアルキルエステルホスフェート塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシレート塩、ポリカルボン酸塩、ロート油、石油スルホネート、アルキルジフェニルエーテルスルホネート塩等が挙げられ、中でもポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩若しくはポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩等が例示される。
【0027】
本発明の水性分散液に含有されていてもよいアニオン型界面活性剤として、下記式(107)
【化5】

(式中、Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子、(C1−C18)アルキル基、スチリル基またはベンジル基を示し、nは1〜15の整数を示す。)で表わされるポリオキシエチレンフェニルエーテルの硫酸エステルあるいは下記一般式(31)
【化6】

(式中、R'は(C8−C30)アルキル基または(C8−C30)アルキルアリール基を、yは1〜30の整数を、R''は水酸基またはR'O(CHCHO)基を示す。)で表されるポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルが特に好ましい。
【0028】
一般式(31)で表される化合物としては、例えば、プライサーフAL(商品名、第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0029】
なお、一般式(107)、一般式(31)では便宜上、遊離酸として記載したが、アルカリ金属、アンモニウム等を対カチオンとする塩として使用してもよく、該対カチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、中でもナトリウム塩またはアンモニウム塩が好ましい。
【0030】
好ましい式(107)で表わされる化合物としては、Rが(C1−C12)直鎖アルキル基、nが4〜12である化合物が挙げられ、Rがn−ノニル基、nが7の化合物が特に好ましい。
【0031】
該非イオン型界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルまたはポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル等を好ましく用いることができる。
【0032】
該ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルとしては、例えば、下記式(108)で表される化合物または式(108)で表される化合物の混合物が挙げられる。式(108)において、m'は1〜3、n'は8〜30の化合物が好ましい。
【化7】

【0033】
上記式(108)で表される化合物の混合物としては、例えば、ノイゲンEA−87(商品名、第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0034】
上記の界面活性剤は単独で用いても混合して用いてもよい。即ち、アニオン型または非イオン型をそれぞれ1〜複数種類用いてもよいし、それぞれ1〜複数種類のアニオン型および非イオン型を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明の防炎剤の水性分散液における好ましい態様としては以下のものが挙げられる。
即ち、ハロゲン化合物は水性分散液中、総量として1〜90重量%、好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは5〜30重量%の範囲で含有される。
【0036】
紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は水性分散液中、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の範囲で含有される。
【0037】
界面活性剤はハロゲン化合物および任意成分である紫外線吸収剤の総量に対して、通常5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜35重量%の範囲で含有される。
【0038】
本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、本発明の水性分散液には前記以外の界面活性剤や分散剤等の添加剤を含んでいてもよい。更に必要に応じて、貯蔵安定性を高めるために、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン糊等の保護コロイド剤、リン酸エステルやリン酸アミド等の防炎効果を高めるための防炎助剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。更に、必要に応じて、アルカリ剤、酸類、油脂、高級アルコール類、高級脂肪酸、低級アルコール類、有機溶剤、浸透促進剤、多価アルコール、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、色素または顔料等を添加してもよい。
【0039】
上記の各成分を水に加えることにより、本発明の水性分散液が調製される。
【0040】
本発明の分散液により防炎加工し得る繊維としては特に限定されないが、ポリエステル繊維、特にCDP繊維およびCDP繊維とポリエステル繊維の混紡繊維が挙げられる。また、抗菌加工、消臭加工、表面加工等の種々の機能性を付与した繊維も挙げられる。
【0041】
CDP繊維やポリエステル繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステルの繊維、および上記のポリエステルに、付加的成分として、イソフタル酸、アジピン酸、スルホイソフタル酸のようなジカルボン酸成分や、プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールのようなジオール成分を共重合させた材質の繊維等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、繊維構造物としては糸、織物、編物、不織布等のいずれの形態のものであってもよい。
【0043】
本発明の水性分散液によって繊維を防炎加工するには、浸染同浴法やパディング法等の公知の方法を用いることができる。
【0044】
浸染同浴法を用いる場合には、繊維用の分散染料や分散型カチオン染料等と前記の水性分散液とを併用し、110〜150℃、好ましくは120〜140℃の範囲の温度で10〜60分間程度加工処理を行う。必要に応じて蛍光染料等の染料を更に加えることもできる。
【0045】
パディング法を用いる場合には、繊維構造物をパッド後、乾熱処理、または、飽和常圧スチーム処理、過熱スチーム処理若しくは高圧スチーム処理等の蒸熱処理によって熱処理する。乾熱処理、蒸熱処理のいずれにおいても、熱処理温度は、通常110〜210℃の範囲であり、好ましくは170〜210℃の範囲である。熱処理温度が210℃を超えるとポリエステル系合成繊維の黄変や脆化のおそれがある。
【0046】
必要に応じて、浸染同浴法とパディング法を併用してもよい。この場合には浸染同浴法で繊維に防炎加工を行った後、パディング法により再加工するのがよい。この方法により、更に高い防炎性能を付与することもできる。
【0047】
本発明には前記例示を含む繊維の防炎加工方法及び防炎加工された繊維も含まれる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例中「部」および「%」と表記した場合には特に断りのない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
【0049】
なお、以下の比較例で使用した化合物の構造式を、下記にまとめて記載する。各化合物の製造は文献公知の製造法または該製造法を応用して製造することができる。
【0050】
式(301)の化合物は大八化学(株)製、商品名NDPPとして市販されている。
【0051】
式(302)の化合物は北興化学(株)製、商品名TPPOとして市販されている。
【0052】
式(303)の化合物は、大八化学(株)製、商品名TPPとして市販されている。
【化8】

【0053】
以下の表に示す各ハロゲン化合物を、必要に応じてサンドグラインダーにて粉砕し、各成分を水に加えて水性分散液を得た。
【0054】
実施例1
表1
水 63.0%
ハロゲン化合物(A) 30.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0055】
実施例2
表2
水 63.0%
ハロゲン化合物(B) 30.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0056】
実施例3
表3
水 63.0%
ハロゲン化合物(A) 15.0%
ハロゲン化合物(B) 15.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0057】
実施例4
表4
水 63.0%
ハロゲン化合物(A) 15.0%
ハロゲン化合物(C) 15.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0058】
実施例5
表5
水 63.0%
ハロゲン化合物(B) 15.0%
ハロゲン化合物(C) 15.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0059】
実施例6
表6
水 63.0%
ハロゲン化合物(A) 10.0%
ハロゲン化合物(B) 10.0%
ハロゲン化合物(C) 10.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0060】
比較例1
表7
水 63.0%
式(301) 30.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0061】
比較例2
表8
水 63.0%
式(302) 30.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0062】
比較例3
表9
水 63.0%
式(303) 30.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0063】
比較例4
表10
水 63.0%
ハロゲン化合物(C) 30.0%
プライサーフALNa塩 6.3%
増粘剤 0.5%
消泡剤 0.1%
防カビ剤 0.1%
100.0%
【0064】
上記の実施例1〜6または比較例1〜4で調製した防炎剤の水性分散液を用い、浸染同浴処理法にて、ポリエステル70%およびCDPを30%含有する混紡繊維の布帛40センチ四方をそれぞれ染色すると同時に防炎加工した。
【0065】
即ち、染浴として分散染料0.72%o.w.f.(on weight of fiber)とカチオン染料0.92%o.w.f.と実施例1〜6または比較例1〜4で調整した防炎加工剤をそれぞれ浴比1:20、130℃×60分間処理した。
【0066】
使用した染料は、分散染料としてカヤロンマイクロエステルイエローAQ−LE0.24%、カヤロンマイクロエステルレッドAQ−LE0.24%、カヤロンマイクロエステルブルーAQ−LE0.24%、カチオン染料としてカヤクリルイエロー3RL−ED0.46%(いずれも日本化薬(株)製)、カヤクリルレッドGL−ED0.24%、カヤクリルブルーGSL−ED0.22%(いずれも日本化薬(株)製)である。
【0067】
その後、各布帛に対して還元洗浄を行い、次いで、170℃で60秒間熱処理を実施した。更に、JIS K3371に従って、弱アルカリ性第1種洗剤を1g/Lの割合で用い、浴比1:40として、60℃±2℃で15分間、各布帛を水洗濯した後、40℃±2℃で5分間のすすぎを3回、遠心脱水を2分間行ない、その後、60℃±5℃で熱風乾燥する1サイクルとして5サイクル行なった。
【0068】
上記の操作で得た10種類の混紡繊維布帛を試験片とし、これらについて燃焼性試験を行った。
【0069】
なお、上記の還元洗浄とは以下の操作をいう。即ち、ハイドロサルファイト2g/L、苛性ソーダ2g/L、ノニオン界面活性剤1g/Lの水溶液を調製し、これを80℃に加温した後、防炎加工済の上記の布帛を加えて10分間処理する操作である。
【0070】
燃焼性試験の試験方法
消防法JIS L1091A−1法(45度ミクロバーナー法)にて試験を行い、以下の評価を行った。その結果を下記表に示す。
【0071】
評価A:合格率
残炎時間が3秒以下の場合を合格とし、測定回数でその測定中における合格回数を除した数値を合格率として記載した。小数点以下は四捨五入とし単位は%である。合格率の高いほど防炎性能が高い。
合格率の後ろの括弧書きは、合格率の算出に使用した合格回数と測定回数であり、「(合格回数/測定回数)」で表示した。
【0072】
評価B:平均残炎時間
試験Aにて測定した残炎時間の総合計を、測定回数で除することにより、平均残炎時間を算出した。単位は秒である。平均残炎時間の短いほど防炎性能が高い。
【0073】
表11
防炎剤 対繊維 評価
(重量%) A B
未処理布 0 0( 0/23) 42.2
実施例1 20% 95(20/21) 1.1
実施例2 20% 95(20/21) 0.9
実施例3 20% 100(21/21) 0.7
実施例4 20% 100(21/21) 0.6
実施例5 20% 100(21/21) 0.7
実施例6 20% 100(21/21) 0.8
比較例1 20% 65(13/20) 4.5
比較例2 20% 65(13/20) 6.2
比較例3 20% 64(14/22) 4.0
比較例4 20% 82(18/22) 2.5
【0074】
表11の結果から、評価Aの合格率は本発明の実施例1〜6が95〜100%であるのに対して、各比較例が64〜82%であり、本発明の実施例の方が合格率が高かった。また、評価Bの平均残炎時間については実施例1〜6が0.6〜1.1であるのに対して、各比較例は2.5〜6.2であり、後者は平均残炎時間が長かった。
【0075】
以上のように本発明の水性分散液を用いた試験片は、優れた防炎性能を示すことが判明した。また、本発明の水性分散液を用いた試験片は水洗濯等を5サイクルも繰り返して行ったにもかかわらず、上記の性能を保持していることから、耐久性においても極めて優れたものであることが明白である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
繊維、特にCDPとポリエステルの混紡繊維に耐久性のある優れた防炎性能を付与することができる低毒性の非ハロゲン系防炎剤の水性分散液を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)であらわされるハロゲン化合物(A)および/または下記式(2)であらわされるハロゲン化合物(B)と、界面活性剤を含有する水性分散液。
【化1】

【化2】

【請求項2】
更に、下記式(3)であらわされるハロゲン化合物(C)を含有する請求項1に記載の水性分散液。
【化3】

【請求項3】
ハロゲン化合物(A)および/またはハロゲン化合物(B)を水性分散液中に総量で1〜90重量%含有する請求項1に記載の水性分散液。
【請求項4】
ハロゲン化合物(A)および/またはハロゲン化合物(B)と、ハロゲン化合物(C)を水性分散液中に総量で1〜90重量%含有する請求項2に記載の水性分散液。
【請求項5】
界面活性剤が非イオン型界面活性剤またはアニオン型界面活性剤、あるいはその両者である請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項6】
更に、紫外線吸収剤を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項7】
繊維用の防炎剤として使用する請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項8】
繊維がポリエステル繊維である請求項7に記載の水性分散液。
【請求項9】
ポリエステル繊維がカチオン可染型ポリエステル繊維またはカチオン可染型ポリエステル繊維を含有する混紡繊維である請求項8に記載の水性分散液。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性分散液を用いることを特徴とする繊維の防炎加工方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法により防炎加工された繊維。

【公開番号】特開2011−37966(P2011−37966A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185416(P2009−185416)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】