説明

ハンドオーバ制御装置、基地局、エッジルータ、中継ルータ、無線端末機、移動通信システム及びハンドオーバ制御方法

【課題】 ハンドオーバ制御における移動後の無線端末機へのパケットデータ転送を最適経路で実現することによって、ネットワーク資源の有効利用及びハンドオーバ処理の減少を図ること。
【解決手段】 基地局34,36間を無線端末機30が跨ぐハンドオーバが行われる際に、基地局34,36毎に設けられたエッジルータ40,42のうち無線端末機30が移動前に接続されていたエッジルータ40によって、このエッジルータ40と移動先の候補となる全ての基地局36のエッジルータ42とが配下に接続される中継ルータ48に、通信相手からのデータを保持する指示を行い、その指示により該当中継ルータ48に保持されたデータを、ハンドオーバ後に移動後の無線端末機30へ転送する指示を行い、保持データを無線端末機30へ転送する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハンドオーバ制御装置、基地局、エッジルータ、中継ルータ、無線端末機、移動通信システム及びハンドオーバ制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、IETF(Internet Engineering Task Force)において提案されている方式(例えば、Govind Krishnamurthi Robert C. Chalmers Charles E. Perkins, "Buffer management for smooth handovers in mobile ipv6.", INTERNET DRAFT, July 2001参照)では、パケットデータのバッファリングを行うハンドオーバ制御が行われている。
【0003】このハンドオーバ制御では、パケットデータロスの発生しないハンドオーバ制御を実現するために、無線端末機がハンドオーバ中は、移動前の基地局に設けられたエッジルータにおいてパケットデータをバッファリングする。そして、ハンドオーバ終了後に移動先のエッジルータに向けて、バッファリングしておいたパケットデータをフォワーディングするようになっている。
【0004】このようなハンドオーバ制御が行われる移動通信システムの構成を図6に示し、その説明を行う。
【0005】この図6に示す移動通信システムは、携帯電話機等の移動通信手段である無線端末機10と、この無線端末機10と無線通信を行う複数の基地局12,14,16と、これら基地局12〜16に設けられたエッジルータ18,20,22と、これらエッジルータ18〜22に接続されたCOR(Cross Over Router)24,26,28とを備えて構成されている。ここで、COR24〜28は、COR28を頂点とした階層構造となっており、COR24はエッジルータ18,20を配下にし、COR26はエッジルータ22を配下にし、COR28は、COR24、26を介してエッジルータ18〜22を配下にしている。
【0006】このような構成で、無線端末機10がエッジルータ20への接続エリアからエッジルータ22への接続エリアに移動する際のハンドオーバ制御では、バッファリングを行う場所を移動前のエッジルータ20としていた。このハンドオーバ制御では、無線端末機10がハンドオーバ中に送信元である図示せぬ通信ノードから送られてきた全てのパケットデータは、矢印Y1で示すように、COR28,24を介して一旦移動前のエッジルータ20まで転送され、ここでバッファリングされていた。
【0007】その後、無線端末機10がエッジルータ22に接続されるハンドオーバを完了すると、移動前のエッジルータ20に対してバッファリングしていたパケットデータのフォワーディングを指示し、この指示によって矢印Y2で示すように、エッジルータ20から複数のCOR24,28,26を介して移動後のエッジルータ22に接続された無線端末機10までパケットデータがフォワーディングされる。このように移動前のエッジルータ20においてバッファリングを行うことで、ロスの無いハンドオーバが実現されていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のハンドオーバ制御方法においては、ハンドオーバ中に無線端末機10が移動前に接続されていたエッジルータ20においてパケットデータのバッファリングを行っているので、無線端末機10がハンドオーバした後、バッファリングされたデータの転送が完了するまでは、矢印Y2で示すように、移動前のエッジルータ20から複数のCOR24,28,26を介して移動後のエッジルータ22に接続された無線端末機10までパケットデータがフォワーディングされることになる。つまり、ハンドオーバ制御時に、パケットデータが冗長経路により転送されるため、ネットワーク資源を無駄に消費してしまうという問題がある。
【0009】また、このハンドオーバ制御では、バッファリングしておいたパケットデータを、図6に示すように、エッジルータ20からエッジルータ22へ転送する符号Y2のパスと、通信ノードからエッジルータ22へ転送する符号Y3のパスとの2つが同時に存在してしまうため、両パスそれぞれを経由するパケットデータが混在して到着するので、ハンドオーバ時におけるパケットの順序違いが発生するという問題がある。
【0010】本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ハンドオーバ制御における移動後の無線端末機へのパケットデータ転送を最適経路で実現することによって、ネットワーク資源の有効利用及びハンドオーバ時におけるパケットの順序違いの発生の防止を図ることができるハンドオーバ制御装置、基地局、エッジルータ、中継ルータ、無線端末機、移動通信システム及びハンドオーバ制御方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明のハンドオーバ制御装置は、無線端末機と無線通信を行う各基地局毎に設けられたエッジルータ間を無線端末機が跨ぐハンドオーバの制御を行うハンドオーバ制御装置において、上記ハンドオーバ中に、上記無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持する制御を行う制御手段を具備することを特徴としている。
【0012】この構成によれば、中継ルータに通信相手からのデータを保持するので、パケットデータを転送する際に、冗長なパスを取り去ることが可能であるため、これによってネットワーク資源の有効活用を図ることができる。従来技術では、ハンドオーバ中に無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータにデータを保持していたので、移動前のエッジルータから複数のルータを介する冗長経路にて移動後の無線端末機までデータが転送され、ネットワーク資源を無駄に消費していた。また、移動前のエッジルータから移動後のエッジルータへバッファリングしていたパケットデータを転送するパスと通信相手から移動後のエッジルータへパケットデータを転送するパスとが同時に存在するため、パケットデータが混在して到着するので、順序違いが発生していた。
【0013】また、本発明のハンドオーバ制御装置においては、上記通信相手からのデータが保持される中継ルータは、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、上記無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータが適用されることを特徴とすることが好適である。
【0014】この構成によれば、ハンドオーバー後、保持されたパケットデータを転送するパスに、冗長経路が生じないため、よりネットワーク資源の有効活用を図ることができる。
【0015】また、本発明のハンドオーバ制御装置においては、上記制御手段は、上記中継ルータの保持データに上記無線端末機の移動先アドレスとともにパケットを識別する識別子を付し、このアドレスへ上記保持データを転送することを特徴とすることが好適である。
【0016】この構成によれば、ハンドオーバによって移動後の無線端末機へ適正に保持データを転送することができる。
【0017】上記課題を解決するために、本発明の基地局は、無線端末機のハンドオーバを検出する基地局において、隣接基地局及びこの隣接基地局が接続される中継ルータの位置情報を保持する保持手段と、上記保持された位置情報を基に、無線端末機が移動前に接続されていた基地局と移動先の候補となる全ての基地局とが配下に接続される中継ルータを決定する決定手段と、上記決定された中継ルータに通信相手からのデータを保持する指示を行う指示手段とを具備することを特徴としている。
【0018】この構成によれば、適切な中継ルータに通信相手からのデータを保持する指示を行うので、ハンドオーバ中の無線端末機に送信されるべきデータを保持してデータ受信ロスが生じないようにすることができる。
【0019】また、本発明の基地局においては、上記決定手段は、上記中継ルータを決定する際に、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、移動する可能性があるすべての候補の基地局を配下にする各中継ルータのうち無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータに決定することを特徴とすることが好適である。
【0020】この構成によれば、ハンドオーバ後、保持されたパケットデータを転送するパスに冗長経路を生じさせない中継ルータにおいて、通信相手からのデータを保持するように指示することができる。
【0021】また、本発明の基地局においては、上記指示手段は、上記無線端末機のハンドオーバによる移動後に、上記決定手段で決定された中継ルータに保持データを上記移動後の無線端末機へ転送する指示を行うことを特徴とすることもできる。
【0022】この構成によれば、ハンドオーバ後、保持されたパケットデータを転送するパスに冗長経路を生じさせない中継ルータにおいて、保持された通信相手からのデータを転送するように指示することができる。
【0023】上記課題を解決するために、本発明のエッジルータは、無線端末機のハンドオーバを検出する基地局に設けられ、上記無線端末機が無線通信により接続されるエッジルータにおいて、隣接エッジルータ及びこの隣接エッジルータが接続される中継ルータの位置情報を保持する保持手段と、上記保持された位置情報を基に、無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータを決定する決定手段と、上記決定された中継ルータに通信相手からのデータを保持する指示を行う指示手段とを具備することを特徴としている。
【0024】この構成によれば、中継ルータに通信相手からのデータを保持するので、パケットデータを転送する際に、冗長なパスを取り去ることが可能であるため、これによってネットワーク資源の有効活用を図ることができる。従来技術では、ハンドオーバ中に無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータにデータを保持していたので、移動前のエッジルータから複数のルータを介する冗長経路にて移動後の無線端末機までデータが転送され、ネットワーク資源を無駄に消費していた。また、移動前のエッジルータから移動後のエッジルータへバッファリングしていたパケットデータを転送するパスと通信相手から移動後のエッジルータへパケットデータを転送するパスとが同時に存在するため、パケットデータが混在して到着するので、順序違いが発生していた。
【0025】また、本発明のエッジルータにおいては、上記決定手段は、上記中継ルータを決定する際に、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、上記無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータに決定することを特徴とすることが好適である。
【0026】この構成によれば、無線端末機が移動前に接続されていた基地局と移動先の候補となる全ての基地局とが配下に接続される中継ルータであって、上記無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータに、通信相手からのデータを保持するように指示することができる。
【0027】また、本発明のエッジルータにおいては、上記指示手段は、上記無線端末機のハンドオーバによる移動後に、上記決定手段で決定された中継ルータに保持データを上記移動後の無線端末機へ転送する指示を行うことを特徴とすることが好適である。
【0028】この構成によれば、無線端末機が移動前に接続されていた基地局と移動先の候補となる全ての基地局とが配下に接続される中継ルータに保持された通信相手からのデータを転送するように指示することができる。
【0029】上記課題を解決するために、本発明の中継ルータは、上記何れかの基地局又は、上記何れかのエッジルータの指示手段によるデータ保持の指示に応じて通信相手からのデータを保持し、ハンドオーバ後無線端末機のデータ転送の指示に応じて無線端末機の移動先のアドレスへパケットの転送先を変更し、パケットを識別する識別子を付し、当該パケットを無線端末機の現在のアドレスへ転送することを特徴としている。
【0030】この構成によれば、無線端末機のハンドオーバ中にその無線端末機へ送信されるデータを保持し、この保持データを無線端末機が移動した後に適正に保持データを転送することができる。また、この構成によれば、識別子が中継ルータで生成されるため、送信元である通信相手から送られるパケットデータを書き換えることないため、セキュリティの問題に関与することなく、移動後の無線通信端末機に送信することが可能になる。
【0031】また、本発明の中継ルータにおいては、ハンドオーバにおける中継ルータでの無線端末機を識別するアドレスを記憶する記憶手段と、中継ルータにおいて保持していたパケットデータを移動先の無線端末機へ送信する指示を出す指示手段と、上記の中継ルータから転送されてきた上記パケットデータを受信し、この受信データ中に上記記憶手段に記憶されたアドレスと同アドレスが存在する場合に、上記同アドレスが付加されたデータを取得する取得手段とを具備することを特徴とすることが好適である。
【0032】この構成によれば、中継ルータにおいて無線端末機の移動後に新たな無線端末機のアドレスを付してパケットデータを送信することができるため移動前に自無線端末機宛てに送られてきたデータを無線端末機は適正に取得することができる。
【0033】また、上記課題を解決するために、本発明の無線端末機は各基地局と無線通信を行い、各基地局毎に設けられたエッジルータ間を跨ぐハンドオーバに際し、当該ハンドオーバの制御を行う無線端末機であって、上記ハンドオーバ中に、上記無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持させる制御を行う制御手段を具備することを特徴とする。
【0034】この構成によれば、中継ルータに通信相手からのデータを保持するので、パケットデータを転送する際に、冗長なパスを取り去ることが可能であるため、これによってネットワーク資源の有効活用を図ることができる。従来技術では、ハンドオーバ中に無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータにデータを保持していたので、移動前のエッジルータから複数のルータを介する冗長経路にて移動後の無線端末機までデータが転送され、ネットワーク資源を無駄に消費していた。また、移動前のエッジルータから移動後のエッジルータへバッファリングしていたパケットデータを転送するパスと通信相手から移動後のエッジルータへパケットデータを転送するパスとが同時に存在するため、パケットデータが混在して到着するので、順序違いが発生していた。
【0035】また、本発明の無線端末機においては、上記通信相手からのデータが保持される中継ルータとして、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、当該無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータを選択し、適用することを特徴とすることが好適である。
【0036】この構成によれば、ハンドオーバー後、保持されたパケットデータを転送するパスに、冗長経路が生じないため、よりネットワーク資源の有効活用を図ることができる。
【0037】また、本発明の無線端末機においては、上記制御手段は、上記中継ルータの保持データに当該無線端末機の移動先アドレスとともにパケット識別する識別子を付させ、このアドレスへ上記保持データを転送させることを特徴とすることが好適である。
【0038】この構成によれば、ハンドオーバによって移動後の無線端末機へ適正に保持データを転送することができる。
【0039】上記課題を解決するために、本発明の移動通信システムは、基地局間を無線端末機が跨ぐハンドオーバが行われる移動通信システムにおいて、上記基地局の上位に階層構造で接続され、上記基地局へのデータの中継とデータの保持を行う中継ルータと、上記ハンドオーバ中に上記無線端末機が移動前に接続されていた基地局と移動先の候補となる全ての基地局とが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持する指示を行うと共に、この指示により該当中継ルータに保持されたデータを移動後の無線端末機へ転送する指示を行う基地局毎に設けられたエッジルータと、を具備することを特徴としている。
【0040】この構成によれば、中継ルータに通信相手からのデータを保持するので、パケットデータを転送する際に、冗長なパスを取り去ることが可能であるため、これによってネットワーク資源の有効活用を図ることができる。従来技術では、ハンドオーバ中に無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータにデータを保持していたので、移動前のエッジルータから複数のルータを介する冗長経路にて移動後の無線端末機までデータが転送され、ネットワーク資源を無駄に消費していた。また、移動前のエッジルータから移動後のエッジルータへバッファリングしていたパケットデータを転送するパスと通信相手から移動後のエッジルータへパケットデータを転送するパスとが同時に存在するため、パケットデータが混在して到着するので、順序違いが発生していた。
【0041】また、本発明の移動通信システムにおいては、上記中継ルータは、無線端末機に対してデータパケットの識別を行うパケットデータの識別子を付することを特徴とすることが好適である。
【0042】この構成によれば、識別子が中継ルータで生成されるため、送信元である通信相手から送られるパケットデータを書き換えることないため、セキュリティの問題に関与することなく、移動後の無線通信端末機に送信することが可能になる。
【0043】また、本発明の移動通信システムにおいては、上記無線端末機は、上記中継ルータに通信相手からのデータの保持容量をネゴシエーションすることを特徴とすることが好適である。
【0044】この構成によれば、必要なデータ保持容量のみを中継ルータに確保することができるので、バッファの有効利用につながる。
【0045】また、本発明の移動通信システムにおいては、上記無線端末機は、上記中継ルータに上記ネゴシエーションによって決定されたデータ保持容量を超える前に、自無線端末機での受信済みデータの情報を通知することを特徴とすることが好適である。
【0046】この構成によれば、中継ルータにおいて、通信相手からのデータ保持中にこの保持データの転送先の無線端末機でどのデータが受信されたかを知ることができる。
【0047】また、本発明の移動通信システムにおいては、上記中継ルータは、上記ネゴシエーションによって決定されたデータ保持容量を超えてデータ保持を行う際に古い順にデータを削除することを特徴とすることが好適である。
【0048】この構成によれば、中継ルータにおいて、通信相手からのデータ保持中に、保持データが保持容量を越える場合、新規順にデータを保持しておくことができる。
【0049】また、本発明の移動通信システムにおいては、上記中継ルータは、上記無線端末機から通知された受信済みのデータを削除するとともに、当該無線端末機のために確保されたバッファ領域の有効期限を更新することが好適である。
【0050】この構成によれば、中継ルータにおいて、通信相手からのデータを保持する際に無線端末機で受信済みのデータは削除することができるので、効率の良いデータ保持を行うことができる。
【0051】また、本発明の移動通信システムにおいては、上記中継ルータは、有効期限の過ぎたバッファ領域を削除することを特徴とすることが好適である。
【0052】この構成によれば、中継ルータにおけるバッファ領域を有効利用することができる。
【0053】また、本発明の移動通信システムにおいては、上記無線端末機は、ハンドオーバ後に、上記中継ルータに対してハンドオーバ前に受信済みのデータの情報を通知することを特徴とすることが好適である。
【0054】この構成によれば、中継ルータにおいてハンドオーバ前に転送先の無線端末機でどのデータが受信されたかを知ることができる。
【0055】また、本発明の移動通信システムにおいては、上記中継ルータは、上記無線端末機から通知されたハンドオーバ前に受信済みのデータを削除し、これ以外のデータを該当無線端末機へ転送することを特徴とすることが好適である。
【0056】この構成によれば、中継ルータにおいて、保持データの中から無線端末機でハンドオーバ前に受信済みのデータは削除し、これ以外のデータを無線端末機へ転送するので、必要なデータのみを転送することができ、これによって効率の良いデータ転送を行うことができると共にデータの重複が生じないようにすることができる。
【0057】上記課題を解決するために、本発明のハンドオーバ制御方法は、無線端末機と無線通信を行う各基地局毎に設けられたエッジルータ間を無線端末機が跨ぐハンドオーバの制御を行うハンドオーバ制御方法において、通信相手からのデータを保持する旨の指示に応じて、上記無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持する制御を行う制御ステップを具備することを特徴としている。
【0058】この構成によれば、中継ルータに通信相手からのデータを保持するので、パケットデータを転送する際に、冗長なパスを取り去ることが可能であるため、これによってネットワーク資源の有効活用を図ることができる。従来技術では、ハンドオーバ中に無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータにデータを保持していたので、移動前のエッジルータから複数のルータを介する冗長経路にて移動後の無線端末機までデータが転送され、ネットワーク資源を無駄に消費していた。また、移動前のエッジルータから移動後のエッジルータへバッファリングしていたパケットデータを転送するパスと通信相手から移動後のエッジルータへパケットデータを転送するパスとが同時に存在するため、パケットデータが混在して到着するので、順序違いが発生していた。
【0059】また、本発明のハンドオーバ制御方法においては、上記通信相手からのデータが保持される中継ルータは、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、移動する可能性があるすべての候補の基地局を配下にする各中継ルータのうち無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータが適用されることを特徴とすることが好適である。
【0060】この方法によれば、移動後の無線端末機に最も近い中継ルータに通信相手からのデータを保持するので、最短経路で移動後の無線端末機へ転送することができ、これによって、よりネットワーク資源の有効活用を図ることができる。
【0061】また、本発明のハンドオーバ制御方法においては、上記制御ステップは、上記中継ルータの保持データに上記無線端末機の移動先アドレスを付し、このアドレスへ上記保持データを転送することを特徴とすることが好適である。
【0062】この方法によれば、ハンドオーバによって移動後の無線端末機へ適正に保持データを転送することができる。
【0063】また、本発明のハンドオーバ制御方法においては、上記制御ステップは、上記保持データを転送する際にデータの識別子を付けることを特徴とすることが好適である。
【0064】この方法によれば、識別子が中継ルータで生成されるため、送信元である通信相手から送られるパケットデータを書き換えることが無いため、かつ、セキュリティの問題に関与することなく、移動後の無線通信端末機に送信することが可能になる。
【0065】また、本発明のハンドオーバ制御方法においては、上記制御ステップは、上記中継ルータにおける通信相手からのデータの保持容量をネゴシエーションすることを特徴とすることが好適である。
【0066】この方法によれば、必要なデータ保持容量のみを中継ルータに確保することができるので、バッファの有効利用につながる。
【0067】また、本発明のハンドオーバ制御方法においては、上記制御ステップは、上記ネゴシエーションによって決定されたデータ保持容量を超えてデータ保持を行う際に古い順にデータを削除することを特徴とすることが好適である。
【0068】この方法によれば、中継ルータにおいて、通信相手からのデータ保持中に、保持データが保持容量を越える場合、新規順にデータを保持しておくことができる。
【0069】また、本発明のハンドオーバ制御方法においては、上記制御ステップは、上記無線端末機から通知された受信済みのデータを削除することを特徴とすることが好適である。
【0070】この方法によれば、中継ルータにおいて、通信相手からのデータを保持する際に無線端末機で受信済みのデータは削除することができるので、効率の良いデータ保持を行うことができる。
【0071】また、本発明のハンドオーバ制御方法においては、上記制御ステップは、上記無線端末機がハンドオーバした後、上記中継ルータの保持データから当該無線端末機でハンドオーバ前に受信済みのデータを削除し、これ以外のデータを当該無線端末機へ転送することを特徴とすることが好適である。
【0072】この方法によれば、中継ルータにおいて、保持データの中から無線端末機でハンドオーバ前に受信済みのデータは削除し、これ以外のデータを無線端末機へ転送するので、必要なデータのみを転送することができ、これによって効率の良いデータ転送を行うことができると共にデータの重複が生じないようにすることができる。
【0073】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0074】図1は、本発明の実施形態に係る移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【0075】この図1に示す移動通信システムは、携帯電話機等の移動通信手段である無線端末機30と、この無線端末機30と無線通信を行う複数の基地局32,34,36と、これら基地局32〜36に設けられたエッジルータ38,40,42と、これらエッジルータ38〜42に接続されたCOR44,46,48とを備えて構成されている。
【0076】ここで、COR44〜48は、COR48を頂点とした階層構造となっており、COR44はエッジルータ38,40を配下にし、COR46はエッジルータ42を配下にし、COR48は、COR44、46を介してエッジルータ38〜42を配下にしている。また、エッジルータ38,40,42には、次に無線端末機30が移動することが予想される周辺エッジルータの情報が保持されている。例えば、エッジルータ40には、次に無線端末機30が移動することが予想される周辺エッジルータの情報として、隣接するエッジルータ38,42の情報が保持されている。
【0077】なお、この移動通信システムは、IETFにおいて提案されているRegiona1 Registrations, Hierarchical Mobile IPなどの手法等に応じて構築されたものである。
【0078】このような構成で、無線端末機30がエッジルータ40への接続エリアからエッジルータ42への接続エリアに移動する際のハンドオーバ制御は、無線端末機30又は無線端末機30が現在接続されているエッジルータ40により無線リンクの電波状態に応じて開始される。このとき、無線端末機30又はエッジルータ40は、エッジルータ40に登録されている周辺エッジルータ情報を基に複数のCOR44〜48の中から中継ルータとなるCOR48を決定する。
【0079】この中継ルータの決定方法を図2及び図3を参照して説明する。まず、図2に示すように、各基地局に設けられた各エッジルータ50,52にCOR58が接続され、更に各エッジルータ54,56にCOR60が接続され、それらCOR58,60の上位にCOR62が接続されている場合に、例えば無線端末機30がエッジルータ56と接続状態にあるとする。
【0080】この際に、エッジルータ56に保持された周辺エッジルータ情報から、無線端末機30の移動先の候補となるエッジルータがエッジルータ54の1つであると認識された場合は、現接続状態のエッジルータ56と移動先候補のエッジルータ54との双方に上位で接続されている(現接続状態のエッジルータ56と移動先候補のエッジルータ54との双方を配下に接続する)COR60が中継ルータとして決定される。つまり、現接続状態のエッジルータ56と移動先候補のエッジルータ54との双方に、通信ノードからのパケットデータを伝送可能で、且つ該当無線端末機30からのホップ数が最小となるCOR60が中継ルータとして決定される。ホップ数とは、無線端末機からデータを保持する中継ルータまでの距離を示すものである。
【0081】また、図3に示すように、各基地局に設けられた各エッジルータ50,52にCOR58が接続され、更に各エッジルータ54,56にCOR60が接続され、それらCOR58,60の上位にCOR62が接続され、更に、各エッジルータ70,72にCOR78が接続され、更に各エッジルータ74,76にCOR80が接続され、それらCOR78,80の上位にCOR82が接続され、COR62,82の上位にCOR84が接続されている場合に、例えば無線端末機30がエッジルータ54と接続状態にあるとする。
【0082】この際に、エッジルータ54に保持された周辺エッジルータ情報から、無線端末機30の移動先の候補となるエッジルータがエッジルータ52,56の2つであると認識されたとする。この場合は、現接続状態のエッジルータ54と移動先候補のエッジルータ56とに上位で接続されているCOR60と、もう1つの移動先候補のエッジルータ52に上位で接続されているCOR58との双方に更に上位で接続されているCOR62が中継ルータとして決定される。
【0083】つまり、現接続状態のエッジルータ54と全ての移動先候補のエッジルータ56,52とに、通信ノードからのパケットデータを伝送可能で、且つ該当無線端末機30からのホップ数が最小となるCOR62が中継ルータとして決定される。
【0084】このように決定される図1に示すCOR(中継ルータ)48に対して、無線端末機30又は無線端末機30と現接続状態のエッジルータ40から矢印Y3で示すようにバッファリング指示メッセージを送信する。このメッセージを受信したCOR48は、以降中継ルータとして通信ノードから矢印Y4で示すように送信されてくるパケットデータをバッファリングする。その後、無線端末機30は、移動先候補のエッジルータ38,42の中から1つのエッジルータ42ヘハンドオーバを行う。
【0085】新規のエッジルータ42ヘハンドオーバを行った無線端末機30は、そのエッジルータ42で使用するアドレスを取得し、この新規アドレスの位置登録を行うために位置登録メッセージを矢印Y5で示すようにCOR(中継ルータ)48を介して図示せぬホームネットワーク及び通信相手に送信する。
【0086】この送信を行う場合、本発明では位置登録メッセージとフォワーディング指示メッセージを別々に送信する方法、又は1つのメッセージに双方を含んで送信する2つの方法が考えられる。フォワーディング指示メッセージがCOR(中継ルータ)48を通過する際に、そのフォワーディング指示メッセージを受信したCOR(中継ルータ)48は、現在の無線端末機30のアドレスによりバッファリングしていたパケットデータをカプセル化して、矢印Y6で示すようにエッジルータ42を介して無線端末機30ヘフォワーディングする。これによって位置登録が完了すると、送信元の通信ノードから無線端末機30へ送信されるパケットデータは、移動先のアドレスに向けて送信されることによりCOR(中継ルータ)48でのバッファリングが終了する。
【0087】ここで、COR(中継ルータ)48にバッファリングされたパケットデータをフォワーディングする動作を、図4を参照して説明する。中継ルータでの無線端末機を識別するアドレスがAの無線端末機30は、ハンドオーバ前にCOR(中継ルータ)48に対してアドレスA宛てのパケットデータをバッファリングするようにバッファリング指示メッセージによって指示する。この指示によって符号90で示す通信相手からのアドレスA宛のパケットデータがCOR(中継ルータ)48にバッファリングされる。
【0088】更に無線端末機30は、ハンドオーバ後にアドレスBが割り当てられると、通信相手に対してそのアドレスBの位置登録を行うメッセージ(位置登録メッセージ)と、アドレスA宛てのパケットデータのフォワーディングを指示するメッセージ(フォワーディング指示メッセージ)とを送信する。これらのメッセージは1つのメッセージとして送信することも可能である。
【0089】COR(中継ルータ)48は、それらのメッセージを受信すると、バッファリングしていたアドレスA宛てのパケットデータを符号91で示すように送信先アドレスBを付けてカプセル化し、これをアドレスBに送信する。無線端末機30は、そのB宛てのパケットデータ91を受信すると、符号92で示すようにデカプセル化を行う。このとき、デカプセル化されたパケットデータ92の宛先アドレスはAとなっているため、本来であれば無線端末機30はパケットデータ92を受信することができない。しかし、本発明では無線端末機30が移動前のアドレスAを記憶するように成されているので、アドレスA宛のパケットデータ92も受信することができ、これによってハンドオーバ中にCOR(中継ルータ)48にバッファリングされていたアドレスA宛のパケットデータを受信することができる。
【0090】このように、実施形態の移動通信システムによれば、基地局34,36間を無線端末機30が跨ぐハンドオーバが行われる際に、基地局34,36毎に設けられたエッジルータ40,42のうち無線端末機30が移動前に接続されていたエッジルータ40によって、このエッジルータ40と移動先の候補となる全ての基地局36のエッジルータ42とが配下に接続される中継ルータ48に、通信相手からのパケットデータを保持する指示を行い、その指示により該当中継ルータ48に保持されたパケットデータを、ハンドオーバ後に移動後の無線端末機30へ転送する指示を行い、保持パケットデータを無線端末機30へ転送するようにした。
【0091】これによって、ハンドオーバ中に中継ルータ48に通信相手からのパケットデータを保持するので、パケットデータを転送する際に、冗長なパスを取り去ることが可能であるため、これによってネットワーク資源の有効活用を図ることができる。また、ハンドオーバ時におけるパケットの順序違いが生じない。従来技術では、ハンドオーバ中に無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータにパケットデータを保持していたので、移動前のエッジルータから複数のルータを介する冗長経路にて移動後の無線端末機までパケットデータが転送され、ネットワーク資源を無駄に消費していた。また、移動前のエッジルータから移動後のエッジルータへバッファリングしていたパケットデータを転送するパスと通信相手から移動後のエッジルータへパケットデータを転送するパスとが同時に存在するため、パケットデータが混在して到着するので、順序違いが発生していた。
【0092】また、通信相手からのパケットデータが保持される中継ルータ48は、複数が階層構造に接続された各中継ルータ44〜48の内、移動する可能性があるすべての候補の基地局を配下にする各中継ルータのうち無線端末機30からのホップ数が最小となる中継ルータが適用されるようになっている。これによって、無線端末機30が移動前に接続されていた基地局と移動先の候補となる全ての基地局とが配下に接続される中継ルータであって、上記無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータ48に通信相手からのパケットデータを保持するので、最短経路で移動後の無線端末機30へ転送することができ、これによって、よりネットワーク資源の有効活用を図ることができる。
【0093】また、本実施形態においては、各エッジルータに、隣接エッジルータ及びこの隣接エッジルータが接続される中継ルータの位置情報を保持しておき、当該保持された位置情報を基に、ハンドオーバ中の無線端末機30が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータを決定し、この決定された中継ルータに通信相手からのパケットデータを保持する指示を行う。これによって、基地局でのハンドオーバ検出時に、適切な中継ルータに通信相手からのパケットデータを保持する指示を行うので、ハンドオーバ中の無線端末機に送信されるべきパケットデータを保持してパケットデータ受信ロスが生じないようにすることができる。
【0094】また、本実施形態においては、中継ルータを決定する際に、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、移動する可能性があるすべての候補の基地局を配下にする各中継ルータのうち無線端末機30からのホップ数が最小となる中継ルータに決定する機能を備える。これによって、移動後の無線端末機30に最も近い中継ルータに、通信相手からのパケットデータを保持するように指示することができる。
【0095】また、本実施形態においては、無線端末機30のハンドオーバによる移動後に、パケットデータを保持している中継ルータに保持パケットデータを移動後の無線端末機30へ転送する指示を行う機能を備える。これによって、無線端末機30が移動前に接続されていた基地局と移動先の候補となる全ての基地局とが配下に接続される中継ルータであって、上記無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータに保持された通信相手からのパケットデータを転送するように指示することができる。
【0096】また、上記の中継ルータは、エッジルータからのパケットデータ保持の指示に応じて通信相手からのパケットデータを保持し、エッジルータからのパケットデータ転送の指示に応じて保持パケットデータに無線端末機30の移動先アドレスを付してカプセル化するとともに、パケット識別子を付して、このカプセル化データを移動先アドレスへ転送する機能を備える。これによって、その無線端末機30へ送信されるパケットデータを保持し、この保持パケットデータを無線端末機30が移動した後に適正に保持パケットデータを転送することができる。
【0097】また、無線端末機30は、ハンドオーバにおける中継ルータでの無線端末機を識別するアドレスを記憶し、中継ルータから転送されてきたカプセル化データを受信し、この受信パケットデータ中に記憶されたアドレスと同アドレスが存在する場合に、同アドレスが付加されたパケットデータを取得する。これによって、移動後に無線端末機30に新規アドレスが付けられても、カプセル化データ中から移動前のアドレスを認識し、この認識されたアドレスが付加されたパケットデータを取得することができる。つまり、移動前に自無線端末機宛に送られてきたパケットデータをアドレスが変更となった移動後でも適正に取得することができる。
【0098】以上説明した他、エッジルータ又は無線端末機から中継ルータへ送信されるバッファリング指示メッセージは、中継ルータが変更された場合、無線端末機が中継ルータのバッファ量を変化させる必要が生じた場合、そのバッファの有効期限が迫った場合に発生するようになっている。但し、大規模ネットワークを考えた場合、各無線端末機毎に中継ルータとメッセージ交換を行うよりもRA(RouterAdvertisement)と共に全ての無線端末機に対してデフォルトバッファ値を通知する方法も考えられる。バッファリング指示メッセージは、実際にパケットデータを受け取った際の応答{BA(Buffer Acknowledgement)}を受信するまで所定間隔で再送される。
【0099】そのBA送出後は、中継ルータにおいて無線端末機向けにフォワーディングされる全てのパケットデータがバッファにコピーされて保存される。この後、無線端末機は、既に受信したパケットデータをクリアする情報{BC(Buffer Clear)}を中継ルータに通知することで、通知されたパケットデータまでをバッファから削除する。
【0100】また、中継ルータにおいて、BC受信前に用意してあったバッファが一杯になった場合は、古いパケットデータから順に削除する。なお、BCを上げるタイミングは、割り当てられたバッファの有効期限内に、この有効期限を更新する目的、及び割り当てられたバッファ領域が満杯になるのを防ぐ目的で送られる。
【0101】本発明では、中継ルータから無線端末機に送られるカプセル化する外のヘッダ中にシーケンスナンバ又はタイムスタンプを挿入することで、上記方法を後述のように実現している。
【0102】前述したように中継ルータと無線端末機間のデータ転送にはカプセル化技術が用いられるが、カプセル化するのに用いられるヘッダに関しては、中継ルータで生成されるため、送信元である通信相手から送られるパケットデータを書き換える時に生じるようなセキュリティの問題を考慮せずに自由に構成することが可能になる。このため、カプセル化するヘッダに、到着したパケットデータのシーケンスナンバ又はタイムスタンプを示すオプションヘッダを導入する。このオプションは、同一無線端末機宛のパケットについて中継ルータに到着した順番が記入される。この値は無限に増加する事が考えられるので、用意されたフィールドが取り得る値の最大値のモジュロ(modulo)を取るなどして、ある一定間隔毎に再利用する。
【0103】なお、応答を要求するメッセージであるバッファリング指示メッセージ、フォワーディング指示メッセージにおいても、同様のオプションが必須となる。そして、それらの応答についてもどのメッセージに対する応答なのかを明確にするため、応答メッセージのトリガとなったメッセージの識別子が明記される。
【0104】ハンドオーバ後に送信される前述したフォワーディング指示メッセージには、ハンドオーバ前に受信したパケットの最大のシーケンスナンバ又はタイムスタンプが示される。フォワーディング指示メッセージを受け取った中継ルータは、フォワーディング指示メッセージに記されているパケットデータまでを削除すると共に、それ以降のパケットデータを無線端末機に対してフォワーディングする。なお、先に述べられたメッセージは全てデータパケット又はMobile IPで用いられるシグナリングパケットに合い乗りさせることができる。
【0105】シーケンスナンバについては、それぞれのフロー毎にシーケンスナンバを管理する必要がある。しかし、タイムスタンプを用いた場合、シーケンスナンバを利用する場合に比べて、フロー毎の管理を必要としないため、大規模ネットワーク等においては有効である。
【0106】以上記述したように、中継ルータは、エッジルータ又は基地局又は無線端末機の転送指示に応じて保持データを無線端末機へ転送する際にデータの識別子を付ける機能を備える。これによって、識別子が中継ルータで生成されるため、送信元である通信相手から送られるパケットデータを書き換える時に生じるようなセキュリティの問題を考慮せずに自由に構成することが可能になる。
【0107】また、無線端末機は、中継ルータに通信相手からのデータの保持容量をネゴシエーションする機能を備える。より具体的には、無線端末機は、中継ルータに対し、通信相手からのデータの保持容量としてどれだけの容量を確保してほしいかに関する情報を送信する。これによって、必要なデータ保持容量のみを中継ルータに確保することができるので、効率のよいデータ保持を行うことができる。
【0108】また、無線端末機は、中継ルータに上記ネゴシエーションによって決定されたデータ保持容量を超える前に、自無線端末機での受信済みデータの情報を通知する機能を備える。これによって、中継ルータにおいて、通信相手からのデータ保持中にこの保持データの転送先の無線端末機でどのデータが受信されたかを知ることができる。
【0109】また、中継ルータは、ネゴシエーションによって決定されたデータ保持容量を超えてデータ保持を行う際に古い順にデータを削除する機能を備える。これによって、中継ルータにおいて、通信相手からのデータ保持中に、保持データが保持容量を越える場合、新規順にデータを保持しておくことができる。
【0110】また、中継ルータは、無線端末機から通知された受信済みのデータを削除する機能を備える。これによって中継ルータにおいて、通信相手からのデータを保持する際に無線端末機で受信済みのデータは削除することができるので、効率の良いデータ保持を行うことができる。
【0111】また、無線端末機は、ハンドオーバ後に、中継ルータに対してハンドオーバ前に受信済みのデータの情報を通知する機能を備える。これによって、中継ルータにおいてハンドオーバ前に転送先の無線端末機でどのデータが受信されたかを知ることができる。
【0112】また、中継ルータは、無線端末機から通知されたハンドオーバ前に受信済みのデータを削除し、これ以外のデータを該当無線端末機へ転送する機能を備える。これによって、中継ルータにおいて、保持データの中から無線端末機でハンドオーバ前に受信済みのデータは削除し、これ以外のデータを無線端末機へ転送するので、必要なデータのみを転送することができ、これによって効率の良いデータ転送を行うことができると共にデータの重複が生じないようにすることができる。
【0113】また、上記実施形態においては、ハンドオーバの検出時に、エッジルータに保持された位置情報を基に、ハンドオーバ中の無線端末機30が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータを決定し、この決定された中継ルータに通信相手からのパケットデータを保持する指示(バッファリング指示)を行っていたが、これは、ハンドオーバの検出に先立って(すなわち、ハンドオーバ検出とは無関係に)、上記中継ルータの決定及びバッファリング指示を行っても良い。この場合、ハンドオーバが行われる以前から、無線端末機30に対して送信されてきたデータは、中継ルータにバッファリングされるとともに、移動元のエッジルータを介して無線端末機30に送信される。また、この場合、中継ルータは、識別子を付したデータを、移動元のエッジルータを介して無線端末機30に送信する。
【0114】また、上記実施形態においては、図4を用いて説明したように、中継ルータが、バッファリングしていたアドレスA宛てのパケットデータを送信先アドレスBを付けてカプセル化してアドレスBに送信し、無線端末機30が、当該B宛てのパケットデータ91を受信してデカプセル化していた。しかし、これは、図5に示すように、無線端末機30の登録時に設定されたアドレスHAを含むアドレスA宛てのパケットデータ95を受信した中継ルータが、アドレスHAをキーにしてこのパケットデータをアドレスB宛てのパケットデータに書き換え、移動後の無線端末機30に送信しても良い。
【0115】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、基地局間を無線端末機が跨ぐハンドオーバが行われる際に、基地局毎に設けられたエッジルータのうち無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータによって、このエッジルータと移動先の候補となる全ての基地局のエッジルータとが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持する指示を行い、その指示により該当中継ルータに保持されたデータを、ハンドオーバ後に移動後の無線端末機へ転送する指示を行い、保持データを無線端末機へ転送するようにした。これによって、ハンドオーバ制御における移動後の無線端末機へのパケットデータ転送を最適経路で実現することによって、ネットワーク資源の有効利用及びハンドオーバ時におけるパケットの順序違いの発生の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る移動通信システムにおける中継ルータの決定方法を説明するための第1のブロック図である。
【図3】実施形態に係る移動通信システムにおける中継ルータの決定方法を説明するための第2のブロック図である。
【図4】実施形態に係る移動通信システムにおいて中継ルータにバッファリングされたパケットデータをフォワーディングする動作を説明するためのブロック図である。
【図5】実施形態に係る移動通信システムにおいて中継ルータにバッファリングされたパケットデータをフォワーディングする動作を説明するためのブロック図である。
【図6】従来の移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
30…無線端末機、32,34,36…基地局、38,40,42…エッジルータ、44,46,48…COR(Cross Over Router)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 無線端末機と無線通信を行う各基地局毎に設けられたエッジルータ間を無線端末機が跨ぐハンドオーバの制御を行うハンドオーバ制御装置において、前記ハンドオーバ中に、前記無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持する制御を行う制御手段を具備することを特徴とするハンドオーバ制御装置。
【請求項2】 前記通信相手からのデータが保持される中継ルータは、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、前記無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータが適用されることを特徴とする請求項1記載のハンドオーバ制御装置。
【請求項3】 前記制御手段は、前記中継ルータの保持データに前記無線端末機の移動先アドレスとともにパケット識別する識別子を付し、このアドレスへ前記保持データを転送することを特徴とする請求項1又は2に記載のハンドオーバ制御装置。
【請求項4】 無線端末機のハンドオーバを検出する基地局において、隣接基地局及びこの隣接基地局が接続される中継ルータの位置情報を保持する保持手段と、前記保持された位置情報を基に、無線端末機が移動前に接続されていた基地局と移動先の候補となる全ての基地局とが配下に接続される中継ルータを決定する決定手段と、前記決定された中継ルータに通信相手からのデータを保持する指示を行う指示手段とを具備することを特徴とする基地局。
【請求項5】 前記決定手段は、前記中継ルータを決定する際に、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、移動する可能性があるすべての候補の基地局を配下にする各中継ルータのうち無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータに決定することを特徴とする請求項4記載の基地局。
【請求項6】 前記指示手段は、前記無線端末機のハンドオーバによる移動後に、前記決定手段で決定された中継ルータに保持データを前記移動後の無線端末機へ転送する指示を行うことを特徴とする請求項4又は5記載の基地局。
【請求項7】 無線端末機のハンドオーバを検出する基地局に設けられ、前記無線端末機が無線通信により接続されるエッジルータにおいて、隣接エッジルータ及びこの隣接エッジルータが接続される中継ルータの位置情報を保持する保持手段と、前記保持された位置情報を基に、無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータを決定する決定手段と、前記決定された中継ルータに通信相手からのデータを保持する指示を行う指示手段とを具備することを特徴とするエッジルータ。
【請求項8】 前記決定手段は、前記中継ルータを決定する際に、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、前記無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータに決定することを特徴とする請求項7記載のエッジルータ。
【請求項9】 前記指示手段は、前記無線端末機のハンドオーバによる移動後に、前記決定手段で決定された中継ルータに保持データを前記移動後の無線端末機へ転送する指示を行うことを特徴とする請求項7又は8記載のエッジルータ。
【請求項10】 請求項4〜6のいずれかに記載の基地局又は、請求項7〜9のいずれかに記載のエッジルータの指示手段によるデータ保持の指示に応じて通信相手からのデータを保持し、前記指示手段によるデータ転送の指示に応じて通信相手からのデータを保持し、現在の無線端末機のアドレスを付すとともに、パケットを識別する識別子を付し、パケットデータを前記現在の無線端末機のアドレスに転送するとともに、無線端末機の移動後は、前記転送の指示に応じて、当該パケットデータを前記現在の無線端末機のアドレスへ転送することを特徴とする中継ルータ。
【請求項11】 ハンドオーバにおける中継ルータでの無線端末機を識別するアドレスを記憶する記憶手段と、中継ルータにおいてハンドオーバ後にパケットデータの転送先を、無線端末機の移動前のアドレスから、現在の無線端末機のアドレスへ変更するために、中継ルータへ現在の無線端末機のアドレスへパケットデータを送信する指示を出す指示手段を具備することを特徴とする無線端末機。
【請求項12】 各基地局と無線通信を行い、各基地局毎に設けられたエッジルータ間を跨ぐハンドオーバに際し、当該ハンドオーバの制御を行う無線端末機であって、前記ハンドオーバ中に、前記無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持させる制御を行う制御手段を具備することを特徴とする無線端末機。
【請求項13】 前記通信相手からのデータが保持される中継ルータとして、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、当該無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータを選択し、適用することを特徴とする請求項12記載の無線端末機。
【請求項14】 前記制御手段は、前記中継ルータの保持データに当該無線端末機の移動先アドレスとともにパケット識別する識別子を付させ、このアドレスへ前記保持データを転送させることを特徴とする請求項12又は13に記載の無線端末機。
【請求項15】 基地局間を無線端末機が跨ぐハンドオーバが行われる移動通信システムにおいて、前記基地局の上位に階層構造で接続され、前記基地局へのデータの中継とデータの保持を行う中継ルータと、前記ハンドオーバ中に前記無線端末機が移動前に接続されていた基地局と移動先の候補となる全ての基地局とが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持する指示を行うと共に、この指示により該当中継ルータに保持されたデータを移動後の無線端末機へ転送する指示を行う基地局毎に設けられたエッジルータと、を具備することを特徴とする移動通信システム。
【請求項16】 前記中継ルータは、前記エッジルータのパケットデータを保持する指示に応じて、中継ルータにおいてパケットデータを保持しつつ、無線端末機に対してデータの識別子を付してパケットデータを転送し、ハンドオーバ後の無線端末機のパケットデータ転送指示に応じて、現在の無線端末機のアドレスへパケットデータを転送することを特徴とした請求項15記載の移動通信システム。
【請求項17】 前記無線端末機は、前記中継ルータに通信相手からのデータの保持容量をネゴシエーションすることを特徴とする請求項15又は16に記載の移動通信システム。
【請求項18】 前記無線端末機は、前記中継ルータに前記ネゴシエーションによって決定されたデータ保持容量を超える前に、自無線端末機での受信済みデータの情報を通知することを特徴とする請求項17記載の移動通信システム。
【請求項19】 前記中継ルータは、前記ネゴシエーションによって決定されたデータ保持容量を超えてデータ保持を行う際に古い順にデータを削除することを特徴とする請求項17記載の移動通信システム。
【請求項20】 前記中継ルータは、前記無線端末機から通知された受信済みのデータを削除するとともに、当該無線端末機の為に確保されたバッファ領域の有効期限を更新することを特徴とする請求項18記載の移動通信システム。
【請求項21】 前記中継ルータは、有効期限の過ぎたバッファ領域を削除することを特徴とする請求項18記載の移動通信システム。
【請求項22】 前記無線端末機は、ハンドオーバ後に、前記中継ルータに対してハンドオーバ前に受信済みのデータの情報を通知することを特徴とする請求項16〜21のいずれかに記載の移動通信システム。
【請求項23】 前記中継ルータは、前記無線端末機から通知されたハンドオーバ前に受信済みのデータを削除し、これ以外のデータを該当無線端末機へ転送することを特徴とする請求項22記載の移動通信システム。
【請求項24】 無線端末機と無線通信を行う各基地局毎に設けられたエッジルータ間を無線端末機が跨ぐハンドオーバの制御を行うハンドオーバ制御方法において、通信相手からのデータを保持する旨の指示に応じて、前記無線端末機が移動前に接続されていたエッジルータと移動先の候補となる全てのエッジルータとが配下に接続される中継ルータに、通信相手からのデータを保持する制御を行う制御ステップを具備することを特徴とするハンドオーバ制御方法。
【請求項25】 前記通信相手からのデータが保持される中継ルータは、複数が階層構造に接続された各中継ルータの内、前記無線端末機からのホップ数が最小となる中継ルータが適用されることを特徴とする請求項24記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項26】 前記制御ステップは、前記中継ルータの保持データに前記無線端末機の現在のアドレスを付し、このアドレスへ前記保持データを転送することを特徴とする請求項24又は25に記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項27】 前記制御ステップは、前記保持データを転送する際にデータの識別子を付けることを特徴とする請求項26記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項28】 前記制御ステップは、前記中継ルータにおける通信相手からのデータの保持容量をネゴシエーションすることを特徴とする請求項26又は27に記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項29】 前記制御ステップは、前記ネゴシエーションによって決定されたデータ保持容量を超えてデータ保持を行う際に古い順にデータを削除することを特徴とする請求項28記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項30】 前記制御ステップは、前記無線端末機から通知された受信済みのデータを削除することを特徴とする請求項28記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項31】 前記制御ステップは、前記無線端末機がハンドオーバした後、前記中継ルータの保持データから当該無線端末機でハンドオーバ前に受信済みのデータを削除し、これ以外のデータを当該無線端末機へ転送することを特徴とする請求項26〜30のいずれかに記載のハンドオーバ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−69617(P2003−69617A)
【公開日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−256760(P2001−256760)
【出願日】平成13年8月27日(2001.8.27)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】