説明

ハンドガン制御装置

【課題】ハンドガンの位置に応じて塗料の霧化状態や噴射形状を調整する。
【解決手段】ハンドガン20はエアーにより車両に塗料を吹付ける。ハンドガン位置認識部41は車両に対するハンドガン20の位置を認識する。エアー供給量記憶部42はハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係を記憶する。エアー供給量制御部43はハンドガン位置認識部41が認識したハンドガン20の位置とエアー供給量記憶部43が記憶するハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係から、ハンドガン20に供給するエアーの量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンドガン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の一部をハンドガンで塗装している。ハンドガンは、作業者が手に持って車両に塗料を吹付ける塗装ガンである。ハンドガンは、塗料を霧化する霧化エアーの量と霧化した塗料の噴射形状を決めるパターンエアーの量をそれぞれ個別に調整するニードルバルブを備えている。
【0003】
作業者は、塗装作業の開始前に、ニードルバルブを動かして、霧化エアーの量とパターンエアーの量を調整する。つまり、車両のさまざまな形状の塗装部位を効率的に塗装できるように、塗料の霧化状態や噴射形状を調整する。
【0004】
ニードルバルブの調整及びハンドガンによる塗装作業は熟練を要する。このため、例えば下記特許文献1に記載されているような塗装作業訓練用のハンドガンを用いて、実際の塗装作業を体現できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−134258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、塗装作業の開始前に時間をかけて調整した塗料の霧化状態や噴射形状は、必ずしも車両の全ての塗装部位の形状に合致するものではない。塗料の霧化状態や噴射形状は、対象とするさまざまな形状の塗装部位でもある程度効率的な塗装ができるように、汎用性を持たせているからである。
【0007】
なお、塗装作業の開始後に、作業者が塗料の霧化状態や噴射形状を塗装部位の形状に合致させることは理論的には可能である。しかし、塗料の霧化状態や噴射形状の調整は熟練者でも時間がかかるため、塗装作業が中断されて作業効率が著しく悪化する。
【0008】
したがって、塗装作業の開始後に、作業者が塗料の霧化状態や噴射形状を塗装部位の形状に合致させることは現実的ではない。
【0009】
本発明は、従来のハンドガンの問題点を解消するために成されたものであり、ハンドガンの位置に応じて塗料の霧化状態や噴射形状を調整することができるハンドガン制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るハンドガン制御装置は、ハンドガン、ハンドガン位置認識部、エアー供給量記憶部、エアー供給量制御部を有する。
【0011】
ハンドガンはエアーにより被塗装物に塗料を吹付ける。ハンドガン位置認識部は被塗装物に対するハンドガンの位置を認識する。エアー供給量記憶部はハンドガンの位置とハンドガンに供給するエアーの量との関係を記憶する。エアー供給量制御部はハンドガン位置認識部が認識したハンドガンの位置とエアー供給量記憶部が記憶するハンドガンの位置とハンドガンに供給するエアーの量との関係から、ハンドガンに供給するエアーの量を制御する。エアーの量は、ハンドガンに至る供給経路内に設置された計測器によって計測、表示され、調整することができる。エアーの量の制御は、供給経路に加えられるエアーの圧力を変化させることで行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るハンドガン制御装置によれば、ハンドガンの位置に応じてハンドガンに供給するエアーの量が調整されるので、塗料の霧化状態や噴射形状を塗装部位の形状に合致させることができる。このため、塗り薄が生じたり、塗料流れが生じたりすることを容易に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係るハンドガン制御装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】実施形態1に係るハンドガン制御装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】ハンドガンの概略構成図であり、Aはハンドガンの側面図を、Bはハンドガンのノズル部分の正面図を、Cはノズル部分の側面図を示す。
【図4】パターンエアーの量によって変化する塗料の噴射形状の一例を示す図である。
【図5】実施形態1に係るハンドガン制御装置の制御系のブロック図である。
【図6】図5に示したハンドガン制御装置の動作フローチャートである。
【図7】図5に示したハンドガン制御装置の変形例である。
【図8】図7に示したハンドガン制御装置の動作フローチャートである。
【図9】実施形態2に係るハンドガン制御装置の概略構成を示す平面図である。
【図10】実施形態2に係るハンドガン制御装置の制御系のブロック図である。
【図11】図10に示したハンドガン制御装置の動作フローチャートである。
【図12】実施形態3に係るハンドガン制御装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るハンドガン制御装置を[実施形態1]から[実施形態3]に分けて説明する。
【0015】
[実施形態1]
図1は実施形態1に係るハンドガン制御装置の概略構成を示す平面図であり、図2は実施形態1に係るハンドガン制御装置の概略構成を示す側面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、塗装ライン100は、ハンドガン20、センサ30A、30B、ハンドガン制御部40を有している。
【0017】
塗装ライン100には被塗装物である車両10A、10B、10Cが搬送される。本実施形態の場合、車両10A、10B、10Cは、一定の速度で連続搬送される。本実施形態の場合、一定の速度で連続搬送される形態を採用しているが、塗装作業中は搬送が停止され、塗装作業が終わると次の車両10Aが作業者の前に搬送される、いわゆる順送り搬送の形態であっても良い。
【0018】
ハンドガン20は作業者によって支持され、ハンドガン制御部40から供給されるエアーの力を借りて車両10Bに塗料を吹付ける。ハンドガン20は車両10Bに静電塗装ができるように、ハンドガン20の塗料噴射口付近28に40KV〜60KVの高電圧が印加される。このため、塗装作業中はハンドガン20の塗料噴射口付近28から電磁波が放出される。ハンドガン20の塗料噴射口付近28は電磁波を放出する波動源となる。ハンドガン20の塗料噴射口付近28から放出される電磁波は波動となる。
【0019】
センサ30A、30Bは、ハンドガン20の塗料噴射口付近28から放出される電磁波を検出し、検出した電磁波の強度に応じた大きさの電気信号を出力する。センサ30A、30Bは、電磁波を検出することができるものであればどのような電磁波検出センサを用いても良い。本実施形態では電磁波検出センサとして特定の周波数帯の電波を受信できるアンテナを使用する。
【0020】
なお、本実施形態ではハンドガン20の塗料噴射口付近28から放出される電磁波を利用してハンドガン20の位置を認識している。これ以外に、ハンドガン20に超音波を発生する音源を取り付け、センサ30A、30Bに、音波検出センサとして超音波を入力できるマイクを使用しても良い。この場合、波動源はハンドガン20に取り付けた超音波を発生する音源であり、波動源は音源が発生する超音波となる。
【0021】
図2に示すように、センサ30A、30Bは、塗装ライン100に設けた仕切壁150に取り付けてある。センサ30Aは、車両10Bのフロントドアウインドウ12B上部の高さと同じくらいの高さに取り付ける。センサ30Bは、車両10Bのフロントドア14Bの下部の高さと同じくらいの高さに取り付ける。
【0022】
センサ30A、30Bは、仕切壁150の上下方向に高さを違えて取り付けてあるので、センサ30Aと30Bが検出する電磁波の強度によってハンドガン20のおおよその高さがわかる。例えば、図2に示すように、ハンドガン20がフロントドアウインドウ12Bの中間の高さに位置しているとき(実線位置)、センサ30Aが受信する電磁波の強度はセンサ30Bが受信する電磁波の強度よりも相対的に大きい。また、ハンドガン20がフロントドア14Bの鋼板部分の中間の高さに位置しているとき(点線位置)、センサ30Aが受信する電磁波の強度はセンサ30Bが受信する電磁波の強度よりも相対的に小さい。
【0023】
ハンドガン制御部40はハンドガン20とセンサ30A、30Bを接続する。ハンドガン制御部40は、センサ30A、30Bが検出する電磁波の強度から車両10Bに対するハンドガン20の上下方向の位置を認識する。ハンドガン20の上下方向の位置は、センサ30Aが受信する電磁波の強度とセンサ30Bが受信する電磁波の強度の差に基づいて認識する。また、ハンドガン制御部40はハンドガン20に塗料を供給し、ハンドガン20の位置に応じてハンドガン20に供給するエアーの量を制御する。例えば、ハンドガン20がフロントドアウインドウ12Bの中間の高さに位置しているとき(規定高さよりも高いとき)には、作業者がフロントドア14Bのピラー部分を塗装すると判断して塗装の噴射形状を円形状にする。また、ハンドガン20がフロントドア14Bの鋼板部分の中間の高さに位置しているとき(規定高さよりも低いとき)には、作業者がフロントドア14Bの鋼板部分を塗装すると判断して塗装の噴射形状を楕円形にする。
【0024】
本実施形態では、静電塗装をする際に発生する電磁波を利用してハンドガン20の位置を認識できるようにしているので、ハンドガン20の位置の認識に特別な装置は不要である。また、ハンドガン20の位置を認識するために超音波を用いると、他の作業者のハンドガン20から放出される電磁波の影響を受けることがなく、複数の作業者が塗装作業をする塗装ラインでもハンドガン20の位置の認識精度が向上する。作業者ごとに周波数の異なる超音波を音源から放出させることができるからである。
【0025】
図3は、ハンドガン20の概略構成図である。同図Aはハンドガン20の側面図を、同図Bはハンドガン20のノズル部分の正面図を、同図Cはノズル部分の側面図を示す。
【0026】
図3Aに示すようにハンドガン20には塗料噴射レバー21が取り付けられている。塗料噴射レバー21を図示矢印方向に引くとノズル部分25から塗料とエアーが噴射される。
【0027】
図3B、Cに示すようにハンドガン20のノズル部分25は、塗料噴射口22、霧化エアー噴射口23、パターンエアー噴射口24を備える。
【0028】
塗料噴射口22はハンドガン制御部40が供給する塗料を噴射する。霧化エアー噴射口23は塗料噴射口22の周囲を取り囲むように設けてある。霧化エアー噴射口23は塗料を霧化するための霧化エアーを噴射する。塗料噴射口22から噴射する塗料はその塗料よりも高速で噴射する霧化エアーで引きちぎられ霧化される。パターンエアー噴射口24は図3B、Cに示すように塗料の噴射方向に突出するパターンエアー噴射突起26A、26Bに設ける。パターンエアー噴射突起26A、26Bはノズル部分25の先端に対向して設ける。パターンエアー噴射突起26A、26Bは塗料の噴射方向に対して傾斜する傾斜面を有する。パターンエアー噴射口24はパターンエアー噴射突起26A、26Bの傾斜面に2つずつ開口する。パターンエアー噴射口24は霧化した塗料の噴射形状を変化させるためのパターンエアーを噴射する。パターンエアー噴射口24は霧化した塗料に対して塗料の噴射方向斜め後ろ側からエアーを噴出する。
【0029】
したがって、パターンエアー噴射口24から少量のエアーを噴出することで霧化した塗料の噴射形状を円形にできる。また、パターンエアー噴射口24から多量のエアーを噴出することで霧化した塗料の噴射形状を楕円形にできる。つまり、パターンエアー噴射口24から噴射するエアーの量を調整することで、霧化した塗料の噴射形状を円形からスリット状の細長い楕円形まで変化させることができる。
【0030】
図4は、パターンエアーの量によって変化する塗料の噴射形状の一例を示す図である。図示Aはパターンエアーの噴射量が少量であるときの塗料の噴射形状である。霧化された塗料はおおよそ円形状に噴射される。パターンエアーの噴射量が少ないと、円形状に噴射された塗料があまり形状を変えずに噴射される。塗料が円形状に噴射されているときには、塗装範囲の狭い、例えばフロントドア14Bのピラー部分の塗装に適する。
【0031】
図示Bはパターンエアーの噴射量が多量であるときの塗料の噴射形状である。霧化された塗料はおおよそ円形状に噴射されるが、パターンエアーが対向する2方向から同時に高速で噴射されると、塗料の噴射範囲が円柱状から平面状に変形する。このため、円形状に噴射されている塗料がスリット状の細長い楕円形に変形されて噴射される。塗料が楕円形に噴射されているときには、塗装範囲が広がるので、塗装範囲の広い、例えばフロントドア14Bの鋼板部分の塗装に適する。
【0032】
図5は、実施形態1に係るハンドガン制御装置の制御系のブロック図である。
【0033】
ハンドガン制御装置200は、ハンドガン20、センサ30A、30B、ハンドガン制御部40を有する。ハンドガン20、センサ30A、30Bについては既に説明した。
【0034】
ハンドガン制御部40は、ハンドガン位置認識部41、エアー供給量記憶部42、エアー供給量制御部43、エアー供給部44、塗料供給部45、エアー計測部47を備える。
【0035】
ハンドガン位置認識部41はセンサ30A、30Bが接続される。ハンドガン位置認識部41はセンサ30Aが検出する電磁波の強度とセンサ30Bが検出する電磁波の強度を入力する。センサ30Aが検出する電磁波の強度とセンサ30Bが検出する電磁波の強度からハンドガン20の位置を認識する。
【0036】
ハンドガン20がセンサ30Aとセンサ30Bの中間の高さに位置するとき、センサ30Aとセンサ30Bが検出する電磁波の強度は同一である。ハンドガン20が高さを同一にしてセンサ30Aとセンサ30Bに対して左右方向に離れても電磁波の強度自体は変わるが、センサ30Aとセンサ30Bが検出する電磁波の強度は同一である。
【0037】
また、ハンドガン20がセンサ30Aと同じ位置にあるときにはセンサ30Aが検出する電磁波の強度が最も大きくなる。ハンドガン20が高さを同一にしてセンサ30Aとセンサ30Bに対して左右方向に離れると、ハンドガン20とセンサ30Aの距離、ハンドガン20とセンサ30Bの距離によってセンサ30Aとセンサ30Bが検出する電磁波の強度が変わる。さらに、ハンドガン20がセンサ30Bと同じ位置にあるときにはセンサ30Bが検出する電磁波の強度が最も大きくなる。ハンドガン20が高さを同一にしてセンサ30Aとセンサ30Bに対して左右方向に離れると、ハンドガン20とセンサ30Bの距離、ハンドガン20とセンサ30Aの距離によってセンサ30Aとセンサ30Bが検出する電磁波の強度が変わる。
【0038】
ハンドガン位置認識部41は、ハンドガン20の位置と、センサ30Aとセンサ30Bが検出する電磁波の強度との関係を一般化した数式を持つ。したがって、ハンドガン位置認識部41は、センサ30Aとセンサ30Bで検出された電磁波の強度をこの数式に代入し演算することによってハンドガン20の大方の位置を認識する。具体的には、センサ30Aとセンサ30Bそれぞれが検出する電磁波の各平均強度とその平均強度との差からハンドガン20の位置を認識するための数式である。
【0039】
本実施形態では、例えば、ハンドガン20の位置が車両10B(図2)のフロントドア14Bの鋼板部分に位置するか、それともフロントドアウインドウ12Bに位置するかを認識できるようにしている。したがって、ハンドガン20の位置はフロントドア14Bの鋼板部分とフロントドアウインドウ12Bのガラス部分との境目の高さHよりも上か下かを認識できさえすればよい。そのため、数式を用いてハンドガン20の位置を認識することができる。
【0040】
ハンドガン20の位置を細かく認識できるようにするためには、ハンドガン20の位置と、センサ30Aとセンサ30Bが検出する電磁波の強度との関係を、何十点かとって、それを記憶装置に記憶させておけば良い。本実施形態では、ハンドガン20が規定高さより上か下かを認識できれば良いので、ハンドガン位置認識部41で数式による演算をさせている。
【0041】
なお、ハンドガン20の波動源(塗料噴射口付近28)、センサ30A、センサ30B及びハンドガン位置認識部41はハンドガン位置認識部を構成する。ハンドガン位置認識部を波動源と波動を検出するセンサで構成することによって、作業環境があまり優れず、視界の良好でない塗装ライン100でも、ハンドガン20の位置を容易に認識することができる。
【0042】
エアー供給量記憶部42は、ハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係を記憶する。具体的には、ハンドガン20がフロントドア14Bの鋼板部分とフロントドアウインドウ12Bのガラス部分との境目の高さHよりも上(規定高さより上の位置A)にあるとき、霧化エアーの量がa、パターンエアーの量がイと記憶されている。また、ハンドガン20がフロントドア14Bの鋼板部分とフロントドアウインドウ12Bのガラス部分との境目の高さHよりも下(規定高さより下の位置B)にあるとき、霧化エアーの量がb、パターンエアーの量がロと記憶されている。
【0043】
エアー供給量制御部43は、ハンドガン位置認識部41が認識したハンドガン20の位置とエアー供給量記憶部42が記憶するハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係から、ハンドガンに供給するエアーの量を制御する。例えば、ハンドガン20が規定高さより上の位置Aにあるとき、霧化エアーの量がa、パターンエアーの量がイに調整される。その結果、図4A、図5に示すような円形状に塗料が噴射される。また、ハンドガン20が規定高さより下の位置Bにあるとき、霧化エアーの量がb、パターンエアーの量がロに調整される。この結果、図4B、図5に示すようなスリット状の細長い縦長の楕円形に塗料が噴射される。
【0044】
上記の例では、ハンドガン20の位置によって、霧化エアーの量とパターンエアーの量の両方を変化させた。しかし、車両の塗装部位の形状によっては、ハンドガン20の位置によって、霧化エアーの量またはパターンエアーの量のいずれか一方を変化させても良い。このように霧化エアー噴射口23またはパターンエアー噴射口24の少なくともいずれか一方から噴射するエアーの量を制御すると、塗料の噴射量や噴射形状をきめ細かく変化させることができる。このため、塗装部位の形状に応じた最適な塗装をすることが可能になる。
【0045】
エアー供給部44は、ハンドガン20の霧化エアー噴射口23とパターンエアー噴射口24から噴射させるエアーをハンドガン20に供給する。霧化エアー噴射口23とパターンエアー噴射口24から噴射させるエアーの量は、エアー供給量制御部43によって指示される。
【0046】
エアー計測部47は、エアー供給部44からハンドガン20に供給されているエアーの量を計測する。
【0047】
塗料供給部45は、車両の指定色の塗料をハンドガン20の塗料噴射口22に供給する。塗料は、車種、色によって粘度などの物性値が異なるため、塗料供給部45は規定された最適な流量(リットル/分)で塗料を塗料噴射口22に供給する。
【0048】
図6は、図5に示したハンドガン制御装置の動作フローチャートである。
【0049】
センサ30A、30Bは、ハンドガン20の塗料噴射口付近28から放出されている電磁波を検出する。各センサ30A、30Bが検出する電磁波の強度はハンドガン20の位置によって異なる(S1)。
【0050】
ハンドガン位置認識部41は、センサ30A、30Bで検出されている電磁波の平均強度を演算する。次に、求めた平均強度から電磁波の強度差を演算する。例えば、センサ30Aで検出されている電磁波の平均強度がα、センサ30Bで検出されている電磁波の平均強度がβであるとすると、ハンドガン位置認識部41はα−βから電磁波の強度差εを演算する(S2)。
【0051】
ハンドガン位置認識部41は、平均強度の大きい方のαと電磁波の強度差εを数式に代入して、ハンドガン20の大方の位置を演算する。この数式は、平均強度と強度差の関係からハンドガン20の位置を求めるものである(S3)。
【0052】
エアー供給量制御部43は、ハンドガン位置認識部41が認識したハンドガン20の位置を入力する。そして、入力したハンドガン20の位置が規定高さ以上であるか否かを判断する。ここで、規定高さとは、ハンドガン20に供給するエアーの量を切り替えるために設けた高さである。本実施形態の場合、フロントドア14Bの鋼板部分とフロントドアウインドウ12Bのガラス部分との境目の高さHである(S4)。
【0053】
エアー供給量制御部43は、ハンドガン20の位置が規定高さ以上であれば(S4:YES)、エアー供給部44に指示を出してハンドガン20に供給するエアー供給量を絞る。具体的には、エアー供給量制御部43は、エアー供給量記憶部42にアクセスして、ハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係を見る。エアー供給量制御部43は、ハンドガン位置認識部41が認識したハンドガン20の位置を上記の関係に適用してエアーの量を取得する。取得したエアーの量はエアー供給部44に指示される。エアー供給部44は指示されたエアーをハンドガン20に供給する。さらに具体的に説明すると、ハンドガン20が規定高さより上の位置A(図2参照)にあるので、エアー供給量制御部43はエアー供給部44に霧化エアーの量がa、パターンエアーの量がイという指示をする。この指示にしたがって、エアー供給部44は、ハンドガン20の霧化エアー噴射口23からaの量の霧化エアーを噴射し、ハンドガン20のパターンエアー噴射口24からイの量のパターンエアーを噴射する。このため、図4A、図5に示すような円形状に塗料が噴射される。この塗料の噴射形状は、塗装範囲の狭い、例えばフロントドア14B(図2参照)のピラー部分の塗装に適する(S5)。
【0054】
エアー供給量制御部43は、ハンドガン20の位置が規定高さ以上でなければ(S4:NO)、エアー供給部44に指示を出してハンドガン20に供給するエアー供給量を増加する。具体的には、エアー供給量制御部43は、エアー供給量記憶部42にアクセスして、ハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係を見る。エアー供給量制御部43は、ハンドガン位置認識部41が認識したハンドガン20の位置を上記の関係に適用してエアーの量を取得する。取得したエアーの量はエアー供給部44に指示される。エアー供給部44は指示されたエアーをハンドガン20に供給する。さらに具体的に説明すると、ハンドガン20が規定高さより下の位置B(図2参照)にあるので、エアー供給量制御部43はエアー供給部44に霧化エアーの量がb、パターンエアーの量がイよりもはるかに多いロという指示をする。この指示にしたがって、エアー供給部44は、ハンドガン20の霧化エアー噴射口23からbの量の霧化エアーを噴射し、ハンドガン20のパターンエアー噴射口24からロの量のパターンエアーを噴射する。このため、図4B、図5に示すようなスリット状の細長い縦長の楕円形に塗料が噴射される。この塗料の噴射形状は、塗装範囲の広い、例えばフロントドア14Bの鋼板部分(図2参照)の塗装に適する(S6)。
【0055】
ハンドガン制御部40は、塗装作業が終了したか否かを、作業者の塗装終了指示やハンドガン20の塗料噴射レバー21の操作状態から判断する(S7)。塗装作業が終了していないと判断されれば(S7:NO)、ステップS1の処理に戻って、以上のステップS7までの処理を繰り返す。一方、塗装作業が終了したと判断されれば(S7:YES)、塗料供給部45に塗料供給の停止が指示され、エアー供給部44にエアー供給の停止が指示される。そして、塗装作業が終了する。
【0056】
[実施形態1の変形例]
図7は、図5に示したハンドガン制御装置の変形例である。この変形例は、実施形態1に係るハンドガン制御装置の構成に、傾斜センサと、ハンドガン姿勢演算部を付加している。
【0057】
ハンドガン制御装置200Aは、ハンドガン20、傾斜センサ29、センサ30A、30B、ハンドガン制御部40Aを有する。ハンドガン20、センサ30A、30Bについては既に説明した。
【0058】
傾斜センサ29はハンドガン20に内蔵される。傾斜センサ29はハンドガン20の傾きを検出する。傾斜センサ29には半導体基板に形成されたジャイロセンサを用いる。ジャイロセンサは3次元方向の角度の変化を検出することができるセンサである。したがって、このジャイロセンサをハンドガン20に内蔵し、ジャイロセンサからの信号を処理することによってハンドガン20の姿勢が認識できる。本実施形態では、ハンドガン20の3次元方向の角度の変化を検出できるセンサを用いているが、傾斜センサ29は、少なくとも、ハンドガン20が水平方向から上下方向にどの程度の角度傾いているのかを検出できれば良い。
【0059】
ハンドガン制御部40Aは、ハンドガン位置認識部41A、エアー供給量記憶部42、エアー供給量制御部43、エアー供給部44、塗料供給部45、ハンドガン姿勢認識部46を備える。エアー供給量記憶部42、エアー供給量制御部43、エアー供給部44、塗料供給部45、エアー計測部47については既に説明した。
【0060】
ハンドガン姿勢認識部46は傾斜センサ29が接続される。ハンドガン姿勢認識部46は傾斜センサ29からの信号を処理することによってハンドガン20の姿勢を認識する。具体的には、ハンドガン20の塗料噴射口付近28が上下どちらの方向を向いているのかを認識する。ハンドガン20の姿勢を認識するのは、ハンドガン20の位置が前述の規定高さ以上であるのにハンドガン20の塗料噴射口付近28が下を向いているときには、フロントドア14Bの鋼板部分(図2参照)の塗装をしようとしている可能性があるからである。逆に、ハンドガン20の位置が前述の規定高さよりも下であるのにハンドガン20の塗料噴射口付近28が上を向いているときには、フロントドア14B(図2参照)のピラー部分の塗装をしようとしている可能性があるからである。
【0061】
ハンドガン姿勢認識部46は認識したハンドガン20の姿勢からハンドガン20の位置を補正するための補正信号を出力する。例えば、ハンドガン20の姿勢が30度以上下向きになっているときには、ハンドガン20の位置をH1だけ下に補正する補正信号を出力する。また、ハンドガン20の姿勢が30度以上上向きになっているときには、ハンドガン20の位置をH1だけ上に補正する補正信号を出力する。なお、ハンドガン20の位置をハンドガン20の傾きによってどの程度補正するのかは角度ごとに細かく決めておいても良い。ハンドガン20の角度のみを見て位置を補正するのは合理性がないように思われる。しかし、ハンドガン20の塗料噴射口付近28と被塗装物との距離は、塗装中は作業者ごとに大きく変わるものではない。したがって、ハンドガン20の塗料噴射口付近28と被塗装物との距離が一定であると考えれば、ハンドガン20の角度のみを見て位置を補正することには一定の合理性がある。
【0062】
ハンドガン位置認識部41Aは、ハンドガン姿勢認識部46が認識したハンドガン20の姿勢によって、ハンドガン位置認識部41Aがセンサ30A、30Bにより認識したハンドガン20の位置を補正する。具体的には、ハンドガン位置認識部41Aがセンサ30A、30Bが検出する電磁波の強度から認識したハンドガン20の位置を、ハンドガン姿勢認識部46が出力した補正信号で補正する。
【0063】
このように、ハンドガン20の姿勢によってハンドガン20の位置を補正すると、作業者がハンドガン20の姿勢をあまり気にすることなく、塗装作業をすることができる。つまり、作業者の意図に反して塗料の噴射形状が変化してしまうようなことがなくなり、作業者にとって使い勝手の良い制御装置が実現できる。
【0064】
図8は、図7に示したハンドガン制御装置の動作フローチャートである。
【0065】
このフローチャートにおいてS11〜S13の処理は、図6に示したフローチャートのS1〜S3の処理と同一である。
【0066】
S13までの処理でハンドガン20の位置が認識されると、傾斜センサ29はハンドガン20の傾きを検出する。傾斜センサ29はハンドガン20の姿勢が水平に対して何度下向きまたは上向きになっているのかを検出し、ハンドガン20の姿勢に応じた信号を出力する。ハンドガン姿勢認識部46は、傾斜センサ29が出力する信号に基づいてハンドガン20の姿勢を認識する(S14)。
【0067】
ハンドガン位置認識部41Aは、ハンドガン姿勢認識部46が認識したハンドガン20の姿勢によって、ハンドガン位置認識部41Aがセンサ30A、30Bにより認識したハンドガン20の位置を補正する。例えば、ハンドガン位置認識部41Aがセンサ30A、30Bにより、ハンドガン20がフロントドア14Bの鋼板部分とフロントドアウインドウ12Bのガラス部分との境目の高さH(図2参照)付近にあると判断したとする。そして、ハンドガン姿勢認識部46がハンドガン20の姿勢が30度以上下向きになっていることを認識しているとする。このときには、ハンドガン姿勢認識部46からハンドガン20の位置をH1だけ下に補正する補正信号が出力されている。ハンドガン20は実際には高さH付近にあったとしても、ハンドガン20の姿勢が30度以上下向きになっていれば、作業者は高さHよりも下側に位置する、フロントドア14Bの鋼板部分(図2参照)の塗装をしようとしているはずだからである。ハンドガン位置認識部41Aはこの補正信号により、高さHにあるハンドガン20の位置をH1だけ下に補正する。この補正によって、鋼板部分(図2参照)の塗装に適した、図4B、図5に示すようなスリット状の細長い縦長の楕円形に塗料が噴射される(S15)。
【0068】
S16〜S19の処理は、図6に示したフローチャートのS4〜S7の処理と同一である。
【0069】
以上のように、実施形態1に記載したハンドガン制御装置によれば、ハンドガン20の位置に応じてハンドガン20に供給するエアーの量を調整するので、塗料の霧化状態や噴射形状を車両の塗装部位の形状に合致させることができる。このため、塗り薄が生じたり、塗料流れが生じたりすることを容易に回避することができ、塗料の塗着ロスが低減する。
【0070】
また、実施形態1の変形例に記載したハンドガン制御装置によれば、ハンドガン20の姿勢によって、ハンドガン20の位置を補正し、補正後のハンドガン20の位置に応じてハンドガン20に供給するエアーの量を調整する。このため、作業者が塗装しようとしている部位の形状に適した噴射形状で塗料を吹き付けることができ、使い勝手の良い制御装置を実現できる。
【0071】
[実施形態2]
図9は、実施形態2に係るハンドガン制御装置の概略構成を示す平面図である。
【0072】
実施形態2に係るハンドガン制御装置の概略構成は、実施形態1に係るハンドガン制御装置の概略構成と類似している。しかし、実施形態2の場合、塗装ライン100に搬送されている車両10A、10B、10Cは、停止することなく連続的に搬送されている。また、ハンドガン20の位置を検出するセンサは、ハンドガン20の上下方向に加えて左右方向の位置を検出するために、4つのセンサ30A〜30Dを配置してある。さらに、車両の搬送位置を検出するために車両搬送位置検出センサ50を設けている。そして、搬送されている車両は一台ずつ車種や塗色が異なるため、作業者が塗装しようとしている車両はどの車種のどの塗色の車両であるのかを特定できるように、ハンドガン制御部40には上位コンピュータから車両情報が入力される。
【0073】
図9に示すように、塗装ライン100は、ハンドガン20、センサ30A、30B、30C、30D、ハンドガン制御部40B、車両搬送位置検出センサ50を有している。
【0074】
塗装ライン100には被塗装物である車両10A、10B、10Cが搬送される。本実施形態の場合、車両10A、10B、10Cは、塗装作業中であるか否かにかかわらず、一定の速度で連続搬送される。
【0075】
車両搬送位置検出センサ50は、塗装ライン100に車両を搬送する図示していないコンベアに取り付けられる。車両搬送位置検出センサ50は具体的にはエンコーダである。車両の搬送に応じてエンコーダが出力するパルスの数を計測することで、車両10A、10B、10Cの正確な搬送位置を検出できる。
【0076】
ハンドガン20は作業者によって支持され、ハンドガン制御部40Bから供給されるエアーの力を借りて車両10Bに塗料を吹付ける。ハンドガン20は車両10Bに静電塗装ができるように、ハンドガン20の塗料噴射口付近28に40KV〜60KVの高電圧が印加される。このため、塗装作業中はハンドガン20の塗料噴射口付近28から電磁波が放出される。ハンドガン20の塗料噴射口付近28は電磁波を放出する波動源となる。ハンドガン20の塗料噴射口付近28から放出される電磁波は波動となる。
【0077】
センサ30A、30B、30C、30Dは、ハンドガン20の塗料噴射口付近28から放出される電磁波を検出し、検出した電磁波の強度に応じた大きさの電気信号を出力する。センサ30A、30B、30C、30Dは、電磁波を検出することができるものであればどのような電磁波検出センサを用いても良い。本実施形態では電磁波検出センサとして特定の周波数帯の電波を受信できるアンテナを使用する。
【0078】
なお、本実施形態ではハンドガン20の塗料噴射口付近28から放出される電磁波を利用してハンドガン20の位置を認識している。これ以外に、ハンドガン20に超音波を発生する音源を取り付け、センサ30A、30B、30C、30Dに、音波検出センサとして超音波を入力できるマイクを使用しても良い。この場合、波動源はハンドガン20に取り付けた超音波を発生する音源であり、波動源は音源が発生する超音波となる。
【0079】
図9に示すように、センサ30A、30B、30C、30Dは、塗装ライン100に設けた仕切壁150に取り付けてある。センサ30A、30Cは、図2と同様に、車両10Bのフロントドアウインドウ12B上部の高さと同じくらいの高さに取り付ける。センサ30B、30Dは、車両10Bのフロントドア14Bの下部の高さと同じくらいの高さに取り付ける。また、センサ30A、30Bとセンサ30C、30Dは、車両の搬送方向に一定の距離を隔てて配置する。
【0080】
センサ30Aと30B、センサ30Cと30Dは、仕切壁150の上下方向に高さを違えて取り付けてあり、センサ30A、30Bとセンサ30C、30Dは、仕切壁150の図9の左右方向に一定の距離を隔てて配置している。このため、センサ30A、30B、30C、30Dのそれぞれが検出する電磁波の強度によってハンドガン20のおおよその位置がわかる。例えば、センサ30A、30B、30C、30Dで囲まれる四角形の中心からその四角形の面に対して垂直に伸びる中心線の延長線上にハンドガン20が位置する場合には、センサ30A、30B、30C、30Dが受信する電磁波の強度は同一である。ハンドガン20がその中心線の延長線上から上下左右方向にずれると、センサ30A、30B、30C、30Dが受信する電磁波の強度はそれぞれ異なってくる。したがって、センサ30A、30B、30C、30Dが検出する電磁波の強度と各センサ間の電磁波の強度差からハンドガン20のおおよその位置が認識できる。
【0081】
ハンドガン制御部40Bはハンドガン20、センサ30A、30B、30C、30D及び車両搬送位置検出センサ50を接続する。ハンドガン制御部40は、センサ30A、30B、30C、30Dが検出する電磁波の強度と各センサ間の電磁波の強度差からハンドガン20の上下左右方向の位置を認識する。また、ハンドガン制御部40は、車両搬送位置検出センサ50から出力されるパルスの数を計測して車両10A、10B、10Cの正確な搬送位置を検出する。ハンドガン制御部40は、センサ30A、30B、30C、30Dにより検出されるハンドガン20の位置と、車両搬送位置検出センサ50により検出される車両10A、10B、10Cの搬送位置とによって、車両10Bに対するハンドガン20の位置を認識する。換言すれば、作業者が車両10のどの部分を塗装しようとしているのかを認識する。
【0082】
ハンドガン制御部40Bは、上位コンピュータから車両情報(車種と塗色)を入力する。車両情報に応じて、ハンドガン20から噴射する塗料の色とハンドガン20に供給するエアーの量を調整するためである。したがって、ハンドガン制御部40Bは、車両の塗装部位の形状、その車両の車種と塗色に最適な塗料の霧化状態と噴射形状を実現することができる。
【0083】
実施形態2に係るハンドガン制御装置の場合、センサ30A、30B、30C、30Dと車両搬送位置検出センサ50によって、車両10Bのどの部分にハンドガン20が位置しているのかを認識できる。また、車両情報によって車両の車種と塗色が認識できる。このため、実施形態1のように、ハンドガン20の上下方向の位置に応じて塗料の噴射形状を変えるだけではなく、車両10Bの塗装部位の位置に応じて、塗料の噴射形状を変える。しかも、塗料の霧化状態及び噴射形状は車種と塗色に応じても変えることができる。なお、実施形態1の変形例を実施形態2に適用することもできる。実施形態1の変形例を実施形態2に適用すれば、ハンドガン20の姿勢も考慮されるため、さらに使い勝手の良い塗装制御が実現できる。
【0084】
本実施形態のハンドガン制御装置100によれば、被塗装物である車両のどこを塗装しようとしているのかがわかるので、その車両の塗装部位の形状に応じた塗料の霧化状態と噴射形状を実現できる。しかも、その霧化状態と噴射形状を、塗料の物性に応じた最適なものとすることができる。
【0085】
図10は、実施形態2に係るハンドガン制御装置の制御系のブロック図である。
【0086】
ハンドガン制御装置200は、ハンドガン20、センサ30A、30B、30C、30D、ハンドガン制御部40B、車両搬送位置検出センサ50を有する。ハンドガン20、センサ30A、30B、30C、30D、車両搬送位置検出センサ50については既に説明した。
【0087】
ハンドガン制御部40Bは、ハンドガン位置認識部41B、エアー供給量記憶部42A、エアー供給量制御部43A、エアー供給部44、塗料供給部45、エアー計測部47を備える。
【0088】
ハンドガン位置認識部41Bにはセンサ30A、30B、30C、30D及び車両搬送位置検出センサ50が接続される。ハンドガン位置認識部41Bはセンサ30A〜30Dが検出する電磁波の強度を入力する。センサ30A〜30Dが検出するそれぞれの電磁波の強度と各センサ間の電磁波の強度差からハンドガン20の位置を認識する。ハンドガン位置認識部41Bは車両搬送位置検出センサ50が出力するパルスの数に基づいて車両の搬送位置を検出する。
【0089】
ハンドガン位置認識部41Bは、ハンドガン20の位置と、センサ30A〜30Dが検出する電磁波の強度との関係を一般化した数式を持つ。したがって、ハンドガン位置認識部41Aは、センサ30A〜30Dのそれぞれによって検出された電磁波の強度をこの数式に代入し演算することによってハンドガン20の大方の位置を認識する。具体的には、センサ30A〜30Dそれぞれが検出する電磁波の各平均強度とその平均強度との差からハンドガン20の位置を認識するための数式である。
【0090】
本実施形態では、センサ30A〜30Dを四角形に配置しているので、その四角形で囲まれる領域のどのあたりにハンドガン20があるのかが認識できる。なお、ハンドガン20の位置を細かく認識できるようにするためには、ハンドガン20の位置と、センサ30A〜30Dのそれぞれが検出する電磁波の強度との関係を、何十点かとって、それを記憶装置に記憶させておけば良い。本実施形態では、ハンドガン20のおおよその位置が認識できれば良いので、ハンドガン位置認識部41Bで数式による演算をさせている。
【0091】
なお、ハンドガン20の波動源(塗料噴射口付近28)、センサ30A〜30D、車両搬送位置検出センサ50及びハンドガン位置認識部41Bはハンドガン位置認識部を構成する。ハンドガン位置認識部を波動源と波動を検出するセンサで構成することによって、作業環境があまり優れず、視界の良好でない塗装ライン100でも、ハンドガン20の位置を容易に認識することが可能となる。また、ハンドガン位置認識部41Bを、車両搬送位置検出センサ50を含めて構成することによって、車両10Bの位置に対するハンドガン20の位置を認識することができ、作業者が車両のどの部分を塗装しようとしているのかが認識できる。
【0092】
エアー供給量記憶部42Aは、車両10Bに対するハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係を、車種・塗色ごとに記憶する。具体的には、ハンドガン20が車両10Bのフロントドア14Bの鋼板部分とフロントドアウインドウ12Bのガラス部分との境目の高さHよりも上(規定高さより上の位置A)にあるとき、霧化エアーの量がa、パターンエアーの量がイと記憶されている。また、ハンドガン20が車両10Bのフロントドア14Bの鋼板部分とフロントドアウインドウ12Bのガラス部分との境目の高さHよりも下(規定高さより下の位置B)にあるとき、霧化エアーの量がb、パターンエアーの量がロと記憶されている。さらに、ハンドガン20が車両Bのボンネットの位置(位置C)にあるときに、霧化エアーの量がc、パターンエアーの量がハと記憶されている。
【0093】
エアー供給量制御部43Aは、上位コンピュータから入力した車両情報(車種・塗色)、ハンドガン位置認識部41Aが認識した車両10Bに対するハンドガン20の位置、及びエアー供給量記憶部42が記憶する、その車両情報に適合する、ハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係から、ハンドガンに供給するエアーの量を制御する。例えば、ハンドガン20がフロントドア付近で規定高さより上の位置Aにあるとき、霧化エアーの量がa、パターンエアーの量がイに調整される。その結果、図4A、図10に示すように円形状に塗料が噴射される。また、ハンドガン20がフロントドア付近で規定高さより下の位置Bにあるとき、霧化エアーの量がb、パターンエアーの量がロに調整される。この結果、図4B、図10に示すようなスリット状の細長い縦長の楕円形に塗料が噴射される。さらに、ハンドガン20がボンネット付近の位置Cにあるとき、霧化エアーの量がc、パターンエアーの量がイに調整される。この結果、フロントドア付近で形成されるスリット状の細長い縦長の楕円形よりもさらに縦長にされた楕円形に塗料が噴射される。
【0094】
上記の例では、車両10に対するハンドガン20の位置によって、霧化エアーの量とパターンエアーの量の両方を変化させた。しかし、車両の塗装部位の形状によっては、ハンドガン20の位置によって、霧化エアーの量またはパターンエアーの量のいずれか一方を変化させても良い。このように霧化エアー噴射口23またはパターンエアー噴射口24の少なくともいずれか一方から噴射するエアーの量を制御すると、塗料の噴射量や噴射形状をきめ細かく変化させることができる。このため、塗装部位の形状に応じた最適な塗装をすることが可能になる。
【0095】
エアー供給部44、塗料供給部45、エアー計測部47は実施形態1で既に説明した。
【0096】
図11は、図10に示したハンドガン制御装置の動作フローチャートである。
【0097】
ハンドガン制御部40Bのエアー供給量制御部43Aは、上位コンピュータから作業者がこれから塗装しようとしている車両10Bの車両情報(車種・塗色)を入力する。塗料は車種・塗色ごとに粘度などの物性が異なる。このため、車両10Bに最適な塗装ができるように車両情報(車種・塗色)を入力する(S21)。
【0098】
ハンドガン位置認識部41Bは、車両搬送位置検出センサ50からパルスを入力し、そのパルスの数を計測することで車両搬送位置を検出する(S22)。
【0099】
センサ30A、30B、30C、30Dは、ハンドガン20の塗料噴射口付近28から放出されている電磁波を検出する。各センサ30A、30B、30C、30Dが検出する電磁波の強度はハンドガン20の位置によって異なる(S23)。
【0100】
ハンドガン位置認識部41Bは、センサ30A、30B、30C、30Dで検出されている電磁波の平均強度を演算する。次に、求めた平均強度から各センサ間の電磁波の強度差を演算する。例えば、センサ30A〜30Dで検出されている電磁波の平均強度がαA〜αDであるとする。ハンドガン位置認識部41Bは、センサ30Aとセンサ30Bとの電磁波の強度差ε1をαA−αBによって、センサ30Aとセンサ30Cとの電磁波の強度差ε2をαA−αCによって、センサ30Aとセンサ30Dとの電磁波の強度差ε3をαA−αDによって求める。また、ハンドガン位置認識部41Bは、センサ30Bとセンサ30Cとの電磁波の強度差ε4をαB−αCによって、センサ30Bとセンサ30Dとの電磁波の強度差ε5をαB−αDによって、センサ30Cとセンサ30Dとの電磁波の強度差ε6をαC−αDによって求める(S24)。
【0101】
ハンドガン位置認識部41Bは、これらの平均強度αA〜αDと強度差ε1〜ε6を、ハンドガン20の位置を認識するための数式に代入して、ハンドガン20のおおよその位置を演算する。この数式は、平均強度と強度差の関係からハンドガン20の位置を求めるものである。そして、ハンドガン位置認識部41Bは、検出した車両搬送位置に、演算したハンドガン20の位置を重ねて、車両10Bに対するハンドガン20の位置、換言すれば塗料の吹付位置を認識する(S25)。
【0102】
エアー供給量制御部43Aは、ハンドガン位置認識部41Bが認識したハンドガン20の位置を入力する。エアー供給量制御部43Aは、エアー供給量記憶部42Aにアクセスして、既に入力した車両情報に対する、ハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係を見る。エアー供給量制御部43Aは、ハンドガン位置認識部41Bが認識したハンドガン20の位置を上記の関係に適用してエアーの量を取得する。取得したエアーの量はエアー供給部44に設定される(S26)。
【0103】
エアー供給量制御部43Aは、ハンドガン位置認識部41Bが認識したハンドガン20の位置に応じてエアー供給量を調整する(S27)。
【0104】
ハンドガン制御部40Bは、塗装作業が終了したか否かを、作業者の塗装終了指示やハンドガン20の塗料噴射レバー21の操作状態から判断する(S28)。塗装作業が終了していないと判断されれば(S28:NO)、ステップS21の処理に戻って、以上のステップS28までの処理を繰り返す。一方、塗装作業が終了したと判断されれば(S28:YES)、塗料供給部45に塗料供給の停止が指示され、エアー供給部44にエアー供給の停止が指示される。そして、塗装作業が終了する。
【0105】
実施形態2に係るハンドガン制御装置では、エアー供給量記憶部42Aが、車両10Bに対するハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係を、車両10Bの種類及び塗色ごとに記憶している。このため、車種及び塗色に応じて異なる塗料の物性に適合させた状態で塗装ができる。
【0106】
また、実施形態2に係るハンドガン制御装置では、エアー供給量記憶部42Aが記憶する車両10Bの種類及び塗色ごとのハンドガン20の位置とハンドガン20に供給するエアーの量との関係から、ハンドガン20に供給するエアーの量を制御している。このため、車両10Bの塗装位置に応じて、最適な霧化状態及び噴射形状で塗料を噴射できる。
【0107】
[実施形態3]
図12は、実施形態3に係るハンドガン制御装置の概略構成を示す平面図である。
【0108】
実施形態3に係るハンドガン制御装置の個々の構成は、実施形態2に係るハンドガン制御装置の構成と同一である。実施形態3の場合、塗装ライン100に、実施形態2に係るハンドガン制御装置が3台配置される。塗装ライン100に3人の作業者が配置され、それぞれの作業者は個別に車両10A、10B、10Cの塗装をする。このため、車両10A、10B、10Cは、3台1組として順送り搬送され、搬送された後に一定の速度で連続搬送される。3台の塗装作業が終了すると、3台の車両が一斉に順送りされる。
【0109】
塗装作業中のハンドガン制御装置の動作は、実施形態2と同一である。また、実施形態1の変形例を実施形態3に適用することもできる。
【0110】
実施形態3に係るハンドガン制御装置は次のような構成を有する。
【0111】
塗装ライン100は、ハンドガン20A、20B、20C、センサ30A〜30L、ハンドガン制御部40B1、40B2、40B3、車両搬送位置検出センサ50を有している。
【0112】
ハンドガン20A、センサ30A〜30D、ハンドガン制御部40B1、車両搬送位置検出センサ50で1つのハンドガン制御装置を構成する。ハンドガン20B、センサ30E〜30H、ハンドガン制御部40B2、車両搬送位置検出センサ50でもう1つのハンドガン制御装置を構成する。ハンドガン20C、センサ30I〜30L、ハンドガン制御部40B3、車両搬送位置検出センサ50でさらにもう1つのハンドガン制御装置を構成する。
【0113】
ハンドガン20A、20B、20Cは、実施形態1、2で説明したハンドガン20Aと同一の構造を有する。すなわち、図3及び図4に基づいて説明した通りである。
【0114】
センサ30A〜30Lは、実施形態1、2で説明したセンサ30A〜30Dと同一である。センサ30A〜30D、センサ30E〜30H、センサ30I〜30Lは実施形態2のセンサ30A〜30Dと同様に仕切壁150に四角形に配置される。センサ30A〜30Dでハンドガン20Aの位置を検出し、センサ30E〜30Hでハンドガン20Bの位置を検出し、センサ30I〜30Lでハンドガン20Cの位置を検出する。
【0115】
ハンドガン制御部40B1、40B2、40B3の構成や動作は、図10に示したハンドガン制御部40Bと全く同一である。
【0116】
以上のように、実施形態3に係るハンドガン制御装置によれば、1つの塗装ライン100に複数のハンドガン制御装置を配置しているので、塗装作業の効率をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0117】
10A、10B、10C 車両(被塗装物)、
12B フロントドアウインドウ、
14B フロントドア、
20 ハンドガン、
21 塗料噴射レバー、
22 塗料噴射口、
23 霧化エアー噴射口、
24 パターンエアー噴射口、
25 ノズル部分、
26A、26B パターンエアー噴射突起、
28 塗料噴射口付近(波動源)
29 傾斜センサ、
30A〜30L センサ(電磁波検出センサ、音波検出センサ)、
40、40A、40B、40B1〜40B3 ハンドガン制御部、
41、41A、41B ハンドガン位置認識部、
42、42A エアー供給量記憶部、
43、43A エアー供給量制御部、
44 エアー供給部、
45 塗料供給部、
46 ハンドガン姿勢認識部、
47 エアー計測部、
50 車両搬送位置検出センサ、
100 塗装ライン、
150 仕切壁、
200 ハンドガン制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアーにより被塗装物に塗料を吹付けるハンドガンと、
前記被塗装物に対する前記ハンドガンの位置を認識するハンドガン位置認識部と、
前記ハンドガンの位置と前記ハンドガンに供給するエアーの量との関係を記憶するエアー供給量記憶部と、
ハンドガン位置認識部が認識したハンドガンの位置とエアー供給量記憶部が記憶するハンドガンの位置とハンドガンに供給するエアーの量との関係から、ハンドガンに供給するエアーの量を制御するエアー供給量制御部と、
を有することを特徴とするハンドガン制御装置。
【請求項2】
さらに、前記ハンドガンの姿勢を認識するハンドガン姿勢認識部を有し、
前記ハンドガン位置認識部は、前記ハンドガン姿勢認識部が認識した前記ハンドガンの姿勢によって、前記ハンドガン位置認識部が認識した前記ハンドガンの位置を補正することを特徴とする請求項1に記載のハンドガン制御装置。
【請求項3】
前記エアー供給量記憶部は、前記ハンドガンの位置と前記ハンドガンに供給するエアーの量との関係を、前記被塗装物の種類及び塗色ごとに記憶し、
前記エアー供給量制御部は、入力した前記被塗装物の種類及び塗色、前記ハンドガン位置認識部が認識した前記ハンドガンの位置と、前記エアー供給量記憶部が記憶する前記被塗装物の種類及び塗色ごとのハンドガンの位置とハンドガンに供給するエアーの量との関係から、ハンドガンに供給するエアーの量を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のハンドガン制御装置。
【請求項4】
前記ハンドガン位置認識部は、
前記ハンドガンが有する波動源と、
前記波動源が放出する波動を検出するために前記被塗装物の塗装ラインに設けた複数のセンサと、
前記複数のセンサが検出したそれぞれの波動の強度から前記被塗装物に対する前記ハンドガンの位置を演算するハンドガン位置認識部と、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハンドガン制御装置。
【請求項5】
さらに、前記被塗装物の搬送位置を検出する被塗装物搬送位置検出センサを有し、
前記ハンドガン位置認識部は、前記被塗装物搬送位置検出センサが検出した前記被塗装物の搬送位置と、前記複数のセンサが検出したそれぞれの波動の強度とから、前記被塗装物に対する前記ハンドガンの位置を認識することを特徴とする請求項4に記載のハンドガン制御装置。
【請求項6】
前記波動源は、静電塗装を行うための電圧が印加される前記ハンドガンの塗料噴射口付近であるか、前記ハンドガンに取り付けた音源であり、
前記複数のセンサは、前記電磁波を検出する電磁波検出センサであるか、前記音波を検出する音波検出センサであることを特徴とする請求項4または5に記載のハンドガン制御装置。
【請求項7】
前記ハンドガンは、前記塗料を霧化するための霧化エアーを噴射する霧化エアー噴射口と、霧化した塗料の噴射形状を変化させるためのパターンエアーを噴射するパターンエアー噴射口とを有し、
前記エアー供給量制御部は、前記霧化エアー噴射口または前記パターンエアー噴射口の少なくともいずれか一方から噴射するエアーの量を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のハンドガン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−17970(P2013−17970A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154252(P2011−154252)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】