説明

ハンドリング治具

【課題】 筒状の搬送対象物を素手で触れることなく、容易にクランプでき、かつ、搬送し易いハンドリング治具を提供する。
【解決手段】 ハンドリング治具10は、実質的に左右対称な第1、第2のクランプアーム11、12を有し、中央で回動自在に連結された本体フレーム13と、第1、第2のクランプアーム11、12の下端部にそれぞれ取付けられて、筒状の搬送対象物14を内側から押圧する第1、第2の押圧部材15、16と、第1、第2のクランプアーム11、12の上半分の中間位置に跨がって配置され、第1、第2の押圧部材15、16が搬送対象物14を内側から押圧したことを維持するクランプ機構17と、第1、第2のクランプアーム11、12の上部に取付けられた把手18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、モータコア等の円筒状物を人が手で触れることなくクランプ(把持)して搬送する場合に使用するハンドリング治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に重量物である円筒状のワークを移動するには、クランプ治具によりワークの外側又は内側から、バネや梃子の作用を利用してワークをクランプして、クランプ治具をクレーン等により移動している。クランプ治具の一例としてワークの大きさやクランプ箇所の状況に合わせてクランプでき、コンパクトで操作性に優れた汎用クランプ治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、円筒状のワークが人が持てる程度の軽量物であれば、人が手で持って移動している。
【0003】
【特許文献1】特開平9−273513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の円筒状物のワークのハンドリング方法では未だ解決すべき以下のような問題があった。
ワークが重量物の場合には、クランプ治具を作動する駆動源(例えば、圧縮エア)を必要としたり、また、搬送用にクレーン等が必要であった。一方、ワークが軽量物の場合には、人が直接手で運ぶこともあるが、ワークが円筒状のため持ち難く、気を遣いながらの作業となる上、落下させた場合には怪我の恐れもあった。また、手で直接触れることができない物は手袋をする必要があった。
例えば、図6(A)及び(B)に、ワークの重さが約20kgのモータコア170の場合で具体的に説明する。
図6(A)に示すように、通常の量産時では、決まった場所で、例えば、エア式のクランプ治具171で作業をするので問題がないが、図6(B)に示す非定常作業の場合では、エア式のクランプ治具171を使用できないので、モータコア170を人が手172で持つため、重労働となり、作業性が劣っていた。なお、図6(A)では、クランプ治具171の爪173が圧縮エアにより半径方向外側に張り出し、モータコア170をクランプすると共に、クレーン等の吊り手段174によりクランプ治具171を介してモータコア170を搬送するようになっている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、筒状の搬送対象物を素手で触れることなく、容易にクランプでき、かつ、搬送し易いハンドリング治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係るハンドリング治具は、実質的に左右対称な第1、第2のクランプアームを有し、中央で回動自在に連結された本体フレームと、前記第1、第2のクランプアームの下端部にそれぞれ取付けられて、筒状の搬送対象物を内側から押圧する第1、第2の押圧部材と、前記第1、第2のクランプアームの上半分の中間位置に跨がって配置され、前記第1、第2の押圧部材が前記搬送対象物を内側から押圧したことを維持するクランプ機構と、前記第1、第2のクランプアームの上部に取付けられた把手とを有する。
【0007】
第1の発明に係るハンドリング治具において、前記第1、第2の押圧部材の下部には、前記搬送対象物の下端を掛止する掛止突起を設けてもよい。
第1の発明に係るハンドリング治具において、前記第1、第2の押圧部材はスプリングによって常時開く方向に付勢されてもよい。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係るハンドリング治具は、下部には対向する水平ガイドを両側に有し、上部には内側に空間部が形成された把手が設けられた本体フレームと、対向する前記水平ガイド内を摺動する第1、第2のロッドをそれぞれ内側に備え、スプリングによって付勢されて、筒状の搬送対象物を内側から押圧する第1、第2の押圧部材と、前記第1、第2のロッドそれぞれの内側端部に上端部が回動自在に取付けられ、下端部は回動自在に連結された第1、第2のリンクアーム、及び前記把手の空間部に操作部が設けられ、該操作部に連結される垂直ロッドの下端部に取付けられた水平部材の両側には前記第1、第2のリンクアームの外側にそれぞれ接して回転する第1、第2のローラを備え、前記操作部を上昇させることによって、前記第1、第2の押圧部材の距離を縮める拡縮操作機構とを有する。
【0009】
第1、第2の発明に係るハンドリング治具において、前記第1、第2の押圧部材にはそれぞれ磁石が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び請求項1に従属する請求項2、3、5記載のハンドリング治具は、実質的に左右対称な第1、第2のクランプアームを有し、中央で回動自在に連結された本体フレームを備えて、第1、第2のクランプアームの下端部にそれぞれ取付けられた第1、第2の押圧部材を、第1、第2のクランプアームの上半分の中間位置に跨がって配置されたクランプ機構により、筒状の搬送対象物に内側から押圧したことを維持するようにしているので、搬送対象物に素手で触れることがないため汚れの付着を心配する必要がなく、また、搬送対象物をクランプし易く、かつ、第1、第2のクランプアームの上部に取付けられた把手により搬送し易いため作業性が向上する。
【0011】
特に、請求項2記載のハンドリング治具においては、第1、第2の押圧部材の下部には、搬送対象物の下端を掛止する掛止突起を設けているので、搬送対象物の落下を確実に防止することができる。
請求項3記載のハンドリング治具においては、第1、第2の押圧部材はスプリングによって常時開く方向に付勢されているので、スプリングの付勢力によって搬送対象物に対するクランプ力が増す。
【0012】
請求項4及び請求項4に従属する請求項5記載のハンドリング治具は、下部には対向する水平ガイドを両側に有し、上部には内側に空間部が形成された把手が設けられた本体フレームを備えて、対向する水平ガイド内を摺動する第1、第2のロッドをそれぞれ内側に備え、スプリングによって付勢されて、筒状の搬送対象物を内側から押圧する第1、第2の押圧部材の距離を、把手を把持した状態で操作部を上昇させることによって、拡縮操作機構を介して縮めて第1、第2の押圧部材を搬送対象物の内側に挿入し、その後、操作部を下降させることによって搬送対象物をクランプするので、搬送対象物をクランプし易く、しかも、本体フレームに取付けられた把手により搬送し易いため作業性が向上する。また、搬送対象物を素手で触れることがないため汚れの付着を心配する必要がない。
【0013】
特に、請求項5記載のハンドリング治具においては、第1、第2の押圧部材にはそれぞれ磁石が設けられているので、磁石の磁力による搬送対象物に対するクランプ力が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係るハンドリング治具の説明図、図2(A)、(B)はそれぞれ、同ハンドリング治具のトグルクランプの側面図、平面図、図3は同ハンドリング治具の変形例の説明図、図4は本発明の第2の実施の形態に係るハンドリング治具の説明図、図5は同ハンドリング治具の変形例の説明図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るハンドリング治具10は、実質的に左右対称な第1、第2のクランプアーム11、12を有し、中央で回動自在に連結された本体フレーム13と、第1、第2のクランプアーム11、12の下端部にそれぞれ取付けられて、筒状の搬送対象物の一例であるモータコア14を内側から押圧する第1、第2の押圧部材15、16と、第1、第2のクランプアーム11、12の上半分の中間位置に跨がって配置され、第1、第2の押圧部材15、16がモータコア14を内側から押圧したことを維持するクランプ機構(手動式締結機構)の一例であるトグルクランプ17と、第1、第2のクランプアーム11、12の上部に取付けられた把手18とを有して構成されている。以下、これらについて説明する。
【0016】
図1に示すように、第1、第2のクランプアーム11、12は、それぞれ一枚の板材から形成されており、下部に水平に配置された水平部19、20と、水平部19、20に一体的に設けられ、X字状にクロスして配置され、中央部がピン21を介して回動可能に連結された傾斜部22、23と、傾斜部22、23の上側に略垂直に一体的に設けられた垂直部24、25とを有している。
第1、第2のクランプアーム11、12の水平部19、20の先端部には、ピン26、27を介して第1、第2の押圧部材15、16が微小な角度で回動自在に連結されている。即ち、第1、第2の押圧部材15、16がモータコア14の内側に挿入された後、外側に押出された第1、第2の押圧部材15、16の外面がモータコア14の内周面に倣って当接するように連結されている。
【0017】
図1に示すように、第1、第2の押圧部材15、16は、内側に取付けられた図示しないブラケットにピン26、27を介して連結されたベース部材28、29と、ベース部材28、29の外側に一体的に設けられ、モータコア14の内周面に当接する当接部材30、31とを有している。ベース部材28、29及び当接部材30、31は平面視して円弧(例えば、1/8円弧)状に形成されており、金属製のベース部材28、29の外面に、ウレタンゴム等の軟質材からなる当接部材30、31が固着されている。
【0018】
第1、第2のクランプアーム11、12の垂直部24、25の中間位置を跨いでトグルクランプ17が設けられている。
図2(A)、(B)に示すように、トグルクランプ17は、第1のクランプアーム11の垂直部24にねじ締結された矩形状の取付板32と、取付板32の表面に間隔をあけて対向して立設された対となる矩形板状の軸受ブラケット33、34と、軸受ブラケット33、34間に一側端部が配置され、かつ、軸受ブラケット33、34を貫通して設けられた固定軸35に一側端部が微小な角度で回動自在に連結された断面が円形の進退ロッド36とを有している。
【0019】
トグルクランプ17は、更に、第2のクランプアーム12の垂直部25にねじ締結された略6角形状の取付板37と、取付板37上に左右方向に伸びて設けられたブラケット38の垂直部24側に設けられ、進退ロッド36の進退をガイドするガイドブロック39と、ブラケット38のガイドブロック39と反対側に一側端部がピン40を介して設けられたく字状のリンク41と、リンク41の中間位置にピン42を介して一側端部が連結され、他側端部が進退ロッド36の他側端部にピン43を介して連結されたく字状のリンク44と、リンク41の他側端部が固定ピン45、46を介して固定されたハンドル47とを備えている。
【0020】
かかる構成によって、ハンドル47を、リンク41を介してピン40回りに回動すると、トグル機構によりピン42を介してリンク44を左右方向に進退させ、進退ロッド36を押し引きすることができ、この結果、第1、第2のクランプアーム11、12の垂直部24、25間の距離Kを拡大及び縮小することができる。
【0021】
なお、図2(A)、(B)に実線で示す状態は、ハンドル47を矢印A方向に回動させて、距離Kが拡大した状態を示しており、この状態でハンドル47を操作しないなら、ピン43、42、40の位置関係(ピン42の位置が進退ロッド36の軸の延長線よりも下側にある、即ち、支点超え)により、進退ロッド36をその位置でロックすることができる。即ち、第1、第2の押圧部材15、16を外側に押して、モータコア14の内周面をクランプして保持することができる。逆に、ハンドル47を矢印B方向に回動させて、距離Kが縮小すると、第1、第2の押圧部材15、16はモータコア14の内周面から離れて、クランプが解除される。進退ロッド36のストロークは約30mmである。
【0022】
図1に示すように、内側に矩形状の空間Sを有して外形が矩形状に形成された把手18は、第2のクランプアーム12の垂直部25の上端部に固定され、第1のクランプアーム11の垂直部24の上端部にはガイド部材48が設けられている。ガイド部材48は、第1、第2のクランプアーム11、12の垂直部24、25間の距離Kに応じて、把手18の下部で垂直部24側に水平に形成されたスライドガイド溝49内をガイドされるようになっている。
【0023】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るハンドリング治具10の使用方法及び作用について、図1及び図2(A)、(B)を参照しながら説明する。
作業者 (図示せず)がハンドリング治具10の把手18を、例えば、右手で把持し、左手でトグルクランプ17のハンドル47を、図2(A)の矢印B方向に操作して第1、第2の押圧部材15、16を内側(閉じ側)に移動させる。
【0024】
この状態で、右手で把持したハンドリング治具10の第1、第2の押圧部材15、16を、上方から作業台(図示せず)上に配置されているモータコア14の内側に挿入する。
その後、左手でトグルクランプ17のハンドル47を図2(A)の矢印A方向に操作して第1、第2の押圧部材15、16を外側に移動させて、トグル機構による大きな力によりモータコア14の内周面に押圧してクランプする。
第1、第2の押圧部材15、16をモータコア14にクランプした状態で、右手で把持したハンドリング治具10を移動して所定の場所まで搬送して、モータコア14を図示しない載置台に載せる。
【0025】
右手で把手18を握ったまま、左手でトグルクランプ17のハンドル47を、図2(A)の矢印B方向に操作して第1、第2の押圧部材15、16を内側に移動させてクランプを解除した後、第1、第2の押圧部材15、16をモータコア14から上方に抜き去る。
次にハンドリングするモータコア14の所まで、右手に把持したハンドリング治具10を移動する。
【0026】
図3にはハンドリング治具10の変形例であるハンドリング治具50を示す。なお、ハンドリング治具10と同一の構成要素については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
ハンドリング治具50においては、第1、第2の押圧部材51、52の下部には、モータコア14の下端を掛止する断面が三角形状の掛止突起53、54が設けられている。また、第1、第2の押圧部材51、52は圧縮式のスプリング55によって常時開く方向(左右方向外側)に付勢されている。
【0027】
かかる構成により、スプリング55による付勢力に抗して、トグルクランプ17のハンドル47を、図2(A)の矢印B方向に回動させて、第1、第2の押圧部材51、52を閉じる方向に移動させて、第1、第2の押圧部材51、52を、掛止突起53、54がモータコア14の下面より下方位置になるまでモータコア14の上方から内側に挿入し、その後、ハンドル47を、図2(A)の矢印A方向に回動させて、スプリング55の付勢力により、第1、第2の押圧部材51、52の掛止突起53、54より上側をモータコア14の内周面に当接させると共に、掛止突起53、54によりモータコア14の下面を支持することができる。
【0028】
図4に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るハンドリング治具60は、下部に水平に配置された対向する水平ガイド61、62を両側に有し、上部には内側に空間部Xが形成された把手63が設けられた本体フレーム64と、対向する水平ガイド61、62内を摺動する第1、第2のロッド65、66をそれぞれ内側に備え、スプリング67によって付勢されて、モータコア14を内側から押圧する第1、第2の押圧部材68、69と、それぞれ第1、第2のロッド65、66の内側端部に上端部がピン70、71を介して回動自在に取付けられ、下端部はピン72を介して回動自在に連結された第1、第2のリンクアーム73、74とを有している。
【0029】
ハンドリング治具60は、更に、把手63の空間部Xに操作部75が設けられ、操作部75に連結される垂直ロッド76の下端部に取付けられた水平部材77の両側には第1、第2のリンクアーム73、74の外側にそれぞれ接して回転する第1、第2のローラ78、79を備え、操作部75を上昇させることによって、第1、第2の押圧部材68、69の距離を縮める拡縮操作機構80を有する。なお、水平ガイド61、62の下部でピン70、71側には、第1、第2のリンクアーム73、74が開閉するために必要な切欠きが形成されている。以下、これらについて説明する。
【0030】
第1、第2の押圧部材68、69は、第1、第2の押圧部材15、16と同様、内側に取付けられた図示しないブラケットにピン81、82を介して連結されたベース部材83、84と、ベース部材83、84の外側に一体的に設けられ、モータコア14の内周面に当接する当接部材85、86とを有している。第1、第2のロッド65、66の先端部に第1、第2の押圧部材68、69が微小な角度で回動自在にピン81、82を介して連結されている。即ち、第1、第2の押圧部材68、69がモータコア14の内側に挿入された後、外側に押出された第1、第2の押圧部材68、69の外面がモータコア14の内周面に倣って当接するようになっている。
【0031】
ベース部材83、84及び当接部材85、86は平面視して円弧(例えば、約1/8円弧)状に形成されており、金属製のベース部材83、84の外面に、ウレタンゴム等の軟質材からなる当接部材85、86が固着されている。
本体フレーム64は、断面が矩形状の水平ガイド61、62と、下端部が水平ガイド61、62の内側端部に垂直に固定され、内部を断面矩形状の垂直ロッド76が摺動する筒状部材87と、筒状部材87の上端部に固定され、正面視した外形が矩形状の把手63とを備えている。垂直ロッド76の上端には二又状のブラケット88が固定されており、ブラケット88の上端部には断面が円形の操作部75が水平に取付けられている。
【0032】
垂直ロッド76の下端部には、正面視して矩形板状の水平部材77が設けられており、水平部材77の左右方向両側には対となる第1、第2のローラ78、79が固定軸及びベアリング等を介して取付けられている。
一方、下端部が回動自在に連結され、内側に向かって下方に傾斜した矩形板状の対となる第1、第2のリンクアーム73、74の外側面89、90には、対となる第1、第2のローラ78、79が当接するように構成されている。
【0033】
ここで、第1、第2の押圧部材68、69の距離を縮める拡縮操作機構80は、操作部75、ブラケット88、垂直ロッド76、水平部材77、第1、第2のローラ78、79、及び第1、第2のリンクアーム73、74を有して構成されている。
【0034】
かかる構成によって、常時スプリング67によってモータコア14の内周面をクランプする付勢力が作用している第1、第2の押圧部材68、69を、把手63の空間部Xの操作部75を手で把持して、上昇することにより、垂直ロッド76、第1、第2のローラ78、79及び第1、第2のリンクアーム73、74を介して、第1、第2のロッド65、66をそれぞれ内側に移動して、第1、第2の押圧部材68、69の距離を縮めた後、第1、第2の押圧部材68、69をモータコア14の内側に挿入することができ、その後、操作部75を離すと、スプリング67による付勢力により、第1、第2の押圧部材68、69がモータコア14の内周面をクランプすることができる。
【0035】
図5にはハンドリング治具60の変形例であるハンドリング治具100を示す。なお、ハンドリング治具60と同一の構成要素については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
ハンドリング治具100においては、第1、第2の押圧部材101、102にはそれぞれ、金属製のベース部材103、104の外面に、磁石105、106が設けられている。また、第1、第2の押圧部材101、102間に設けたスプリング107によって第1、第2の押圧部材101、102が付勢されて、磁石105、106がモータコア14の内側面に当接するようになっている。
【0036】
かかる構成によって、常時スプリング107によってモータコア14の内周面に当接する程度の付勢力が作用している第1、第2の押圧部材101、102を付勢力に抗して、把手63の空間部Xの操作部75を手で把持して、上昇することにより、拡縮操作機構80により第1、第2の押圧部材101、102間の距離を縮め、第1、第2の押圧部材101、102をモータコア14の内側に挿入することができ、その後、操作部75から手を離すと、スプリング107によって第1、第2の押圧部材101、102が外側に付勢されてモータコア14の内周面に当接して、モータコア14を押圧することができる。
【0037】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明のハンドリング治具を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
筒状の搬送対象物の一例としてモータコア14を用いたが、これに限定されず、必要に応じて、その他のものに適用することもできる。
【0038】
ハンドリング治具50の掛止突起53、54の断面を三角形状としたが、これに限定されず、必要に応じて、その他の形状に形成することもできる。
ハンドリング治具100において、第1、第2の押圧部材101、102の磁石105、106をモータコア14に直接、当接するようにしたが、これに限定されず、必要に応じて、金属同士の接触を避けるために、磁石のモータコア14との接触部にスポット的に又は全体をカバーする薄い軟質材を設けることもできる。
第1、第2の押圧部材をモータコア14に押圧する力として、スプリングや磁石を用いたが、これに限定されず、必要に応じて、例えば、電動又は油圧モータ等を用いることもできる。
クランプ機構としてトグルクランプを使用したが、これに限定されず、搬送対象物の大きさや重量に応じて、例えば、パッチン錠等の他のクランプ機構を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るハンドリング治具の説明図である。
【図2】(A)、(B)はそれぞれ、同ハンドリング治具のトグルクランプの側面図、平面図である。
【図3】同ハンドリング治具の変形例の説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るハンドリング治具の説明図である。
【図5】同ハンドリング治具の変形例の説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ、従来例に係るモータコアのハンドリング方法の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10:ハンドリング治具、11:第1のクランプアーム、12:第2のクランプアーム、13:本体フレーム、14:モータコア(搬送対象物)、15:第1の押圧部材、16:第2の押圧部材、17:トグルクランプ(クランプ機構)、18:把手、19、20:水平部、21:ピン、22、23:傾斜部、24、25:垂直部、26、27:ピン、28、29:ベース部材、30、31:当接部材、32:取付板、33、34:軸受ブラケット、35:固定軸、36:進退ロッド、37:取付板、38:ブラケット、39:ガイドブロック、40:ピン、41:リンク、42:ピン、43:ピン、44:リンク、45、46:固定ピン、47:ハンドル、48:ガイド部材、49:スライドガイド溝、50:ハンドリング治具、51:第1の押圧部材、52:第2の押圧部材、53、54:掛止突起、55:スプリング、60:ハンドリング治具、61、62:水平ガイド、63:把手、64:本体フレーム、65:第1のロッド、66:第2のロッド、67:スプリング、68:第1の押圧部材、69:第2の押圧部材、70、71:ピン、72:ピン、73:第1のリンクアーム、74:第2のリンクアーム、75:操作部、76:垂直ロッド、77:水平部材、78:第1のローラ、79:第2のローラ、80:拡縮操作機構、81、82:ピン、83、84:ベース部材、85、86:当接部材、87:筒状部材、88:ブラケット、89、90:外側面、100:ハンドリング治具、101:第1の押圧部材、102:第2の押圧部材、103、104:ベース部材、105、106:磁石、107:スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に左右対称な第1、第2のクランプアームを有し、中央で回動自在に連結された本体フレームと、
前記第1、第2のクランプアームの下端部にそれぞれ取付けられて、筒状の搬送対象物を内側から押圧する第1、第2の押圧部材と、
前記第1、第2のクランプアームの上半分の中間位置に跨がって配置され、前記第1、第2の押圧部材が前記搬送対象物を内側から押圧したことを維持するクランプ機構と、
前記第1、第2のクランプアームの上部に取付けられた把手とを有することを特徴とするハンドリング治具。
【請求項2】
請求項1記載のハンドリング治具において、前記第1、第2の押圧部材の下部には、前記搬送対象物の下端を掛止する掛止突起を設けたことを特徴とするハンドリング治具。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載のハンドリング治具において、前記第1、第2の押圧部材はスプリングによって常時開く方向に付勢されていることを特徴とするハンドリング治具。
【請求項4】
下部には対向する水平ガイドを両側に有し、上部には内側に空間部が形成された把手が設けられた本体フレームと、
対向する前記水平ガイド内を摺動する第1、第2のロッドをそれぞれ内側に備え、スプリングによって付勢されて、筒状の搬送対象物を内側から押圧する第1、第2の押圧部材と、
前記第1、第2のロッドそれぞれの内側端部に上端部が回動自在に取付けられ、下端部は回動自在に連結された第1、第2のリンクアーム、及び
前記把手の空間部に操作部が設けられ、該操作部に連結される垂直ロッドの下端部に取付けられた水平部材の両側には前記第1、第2のリンクアームの外側にそれぞれ接して回転する第1、第2のローラを備え、前記操作部を上昇させることによって、前記第1、第2の押圧部材の距離を縮める拡縮操作機構とを有することを特徴とするハンドリング治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンドリング治具において、前記第1、第2の押圧部材にはそれぞれ磁石が設けられていることを特徴とするハンドリング治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−54914(P2007−54914A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243132(P2005−243132)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000144038)株式会社三井ハイテック (300)
【Fターム(参考)】