説明

ハードコートフィルム、偏光板および画像表示装置

【課題】耐剥離性に優れたハードコートフィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルム312と、該基材フィルム312の一方の面に積層されたハードコート層311とを備えるハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層311が、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させながら硬化させることにより形成され、かつ、前記ハードコート層311の対水接触角θが、下記式(1)を満たすハードコートフィルム31。
|θ−θ|≦15° (1)
(式中、θは、基材フィルムの一方の面に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させずに25℃の気体中で硬化させて形成したハードコート層の対水接触角を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関する。また、本発明は、当該ハードコートフィルムを用いた偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置には、様々な外力に起因する傷付きを防止するために、多くの場合、ハードコートフィルムが設けられている。そして、このようなハードコートフィルムには、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理が施されるのが一般的である。
【0003】
かかるハードコートフィルムを得る方法として、例えば、特許文献1には、ハードコート層を形成するための樹脂組成物をエンボスロールに塗布した後、そのエンボスロールに基材フィルムを接触させながら、特に接触温度を調整することなく電離放射線を照射することにより、前記樹脂組成物を硬化させて基材フィルム上にハードコート層を形成し、次いで、該ロールから該フィルムを剥離する方法が開示されている。また、特許文献2には、ハードコート層を形成するための樹脂組成物を基材フィルム上に塗工した後、該塗工面をエンボスロールに接触させながら、特に接触温度を調整することなく活性エネルギー線を照射することにより、前記樹脂組成物を硬化させて基材フィルム上にハードコート層を形成し、次いで、該ロールから該フィルムを剥離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/020613号パンフレット
【特許文献2】特開2007−76089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のハードコートフィルムは、基材フィルムからハードコート層が剥がれてしまうことがあり、ハードコート層の基材フィルムからの耐剥離性において必ずしも十分なものではなかった。そこで、本発明の目的は、ハードコート層の基材フィルムからの耐剥離性に優れたハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に積層したハードコート層とを備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させながら硬化させることにより形成され、かつ、前記ハードコート層の対水接触角θが、下記式(1)を満たすハードコートフィルムを提供するものである。
【0007】
|θ−θ|≦15° (1)
【0008】
(式中、θは、基材フィルムの一方の面に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させずに25℃の気体中で硬化させて形成したハードコート層の対水接触角を表す。)
【0009】
また、本発明は、前記ハードコートフィルムの製造方法であって、基材フィルムの一方の面に、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する工程と、塗工した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に55℃以下の鋳型を接触させながら活性エネルギー線を照射し、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてハードコート層を形成する工程と、前記ハードコート層を前記鋳型から剥離する工程と、を含むハードコートフィルムの製造方法を提供するものである。
【0010】
さらに、本発明は、前述したハードコートフィルムと、前記ハードコート層の前記基材フィルムの他方の面に積層された偏光フィルムとを備える偏光板を提供するものであり、該偏光板と、画像表示素子とを備え、前記偏光板は、前記ハードコート層よりも前記偏光フィルムの方が前記画像表示素子に近くなるように、前記画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハードコート層の基材フィルムからの耐剥離性に優れたハードコートフィルムが提供される。また、該ハードコートフィルムは、偏光板や画像表示装置に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像表示装置の基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ハードコートフィルム>
本発明は、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に積層したハードコート層とを備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させながら硬化させることにより形成され、かつ、前記ハードコート層の対水接触角θが、下記式(1)を満たす。
【0014】
|θ−θ|≦15° (1)
【0015】
式中、θは、基材フィルムの一方の面に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させずに25℃の気体中で硬化させて形成したハードコート層の対水接触角を表し、空気雰囲気下で形成されるハードコート層の対水接触角である。
【0016】
本発明のハードコートフィルムは、前記式(1)を満たすことにより、ハードコート層の基材フィルムからの耐剥離性に優れるものとなっている。
【0017】
基材フィルムとしては、光学的に透明性を有するフィルムであって、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることができる活性エネルギー線を透過するものであれば特に制限されるものではなく、各種の透明樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;スチレン系樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリ塩化ビニル;などからなるフィルムが例示される。以上の中でも、透明性、機械強度、熱安定性、低透湿性、等方性などの点からセルロースアセテート、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート等からなるフィルムが好ましく、透明性、機械強度の点からセルロースアセテートからなるフィルムがより好ましい。
【0018】
基材フィルムの厚みは、20μm以上250μm以下であることが好ましく、より好ましくは、30μm以上150μm以下である。基材フィルムの厚みが20μm未満である場合には、ハードコートフィルムとしての十分な硬度を得ることが難しいことがある。また、基材フィルムの厚みが250μmを上回ることは最近の画像表示装置の薄型化への要求およびコスト等の観点から好ましくない。ハードコートフィルム全体の厚みを薄くする観点からは、基材フィルムの厚みは150μm以下、さらには120μm以下とするのがより好ましい。
【0019】
また、基材フィルムの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗工面および/またはその反対側の表面には、帯電防止層や易接着層を設けてもよい。帯電防止層や易接着層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗工性や密着性を低下させるもの、あるいは必要以上の色づきや曇化を起こすもの、活性エネルギー線の透過率を著しく低下させるものでない限り特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。
【0020】
本発明のハードコートフィルムを光学用途、特に液晶ディスプレイ(LCD)を構成する光学部材として使用する場合、たとえば、偏光板の保護フィルムとして使用する場合、偏光フィルムや液晶セルなどの他の光学部材を紫外線から保護するため、基材フィルムは、UV吸収剤を含有することが好ましい。
【0021】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射により重合、硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する重合開始剤と、界面活性剤とを含有する。活性エネルギー線硬化性樹脂は、たとえば、多官能(メタ)アクリレート系化合物を含有するものであることができる。多官能(メタ)アクリレート系化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤は、市販品であってもよい。多くの場合、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤、その他必要に応じて添加された界面活性剤等の添加剤を含むものとして市販されている。
【0022】
多官能(メタ)アクリレート系化合物の具体例を挙げれば、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、;ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物;ならびに、上記各化合物の2量体、3量体などのようなオリゴマーなどである。これらの化合物はそれぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0023】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート系化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート系樹脂を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート系化合物としては、たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独または2種類以上を混合して用いられる。単官能(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分中、10重量%以下であることが好ましい。
【0024】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、ハードコート層の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリル−スチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体などのマクロモノマーを挙げることができる。重合性オリゴマーの含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂固形分中、5〜50重量%であることが好ましい。
【0025】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラtert−ブチルパーオキシカルボニルベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。上記で例示した重合開始剤は、いずれも活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤である。
【0026】
重合開始剤は色素増感剤と組み合わせて用いてもよい。色素増感剤としては、たとえば、キサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンなどが挙げられる。重合開始剤と色素増感剤との組み合わせとしては、たとえば、BTTBとキサンテンとの組み合わせ、BTTBとチオキサンテンとの組み合わせ、BTTBとクマリンとの組み合わせ、BTTBとケトクマリンとの組み合わせなどが挙げられる。
【0027】
重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂に対して1〜10重量%の範囲が好ましく、3〜6重量%の範囲がより好ましい。重合開始剤の含有量が1重量%未満であると、十分に硬化反応が進行せず、鋳型に未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂が付着したり、優れた硬度を有するハードコートフィルムが得られない場合がある。また、重合開始剤の含有量が10重量%を超えると、活性エネルギー線硬化性樹脂の重合度が低下し、優れた硬度を有するハードコートフィルムが得られない場合がある。
【0028】
上述のように、基材フィルムはUV吸収剤を含有することが好ましく、通常UV吸収剤は、360〜380nm未満の波長の紫外線を吸収する。なお、本発明の(第一)硬化工程では、後で詳述するように、基材フィルム側から活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるのが、好ましい。そのため、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤のうち少なくとも1種は、380nm以上に吸収波長を有することが望ましい。このような重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイド等があげられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤のすべてが、380nm未満にのみ吸収波長を有する重合開始剤であると、前述した(第一)硬化工程終了後も、活性エネルギー線硬化性樹脂の多くが未硬化のまま残る恐れがあり、このような未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂が基材フィルムを剥離した後も鋳型に付着したままになると、汚染の原因や、鋳型の表面形状を正確に転写することを妨げることになるため好ましくない。
【0029】
ここで、「380nm以上に吸収波長を有する」とは、波長380nm以上の活性エネルギー線を照射した際に、重合反応の開始に必要十分な量のラジカルを発生し、重合開始剤として有効に機能する、という意味である。
【0030】
なお、基材フィルムに含まれるUV吸収剤として、より低波長側に吸収波長を有するUV吸収剤を用いることで、380nm以上に吸収波長を有さない重合開始剤のみを使用することが可能となる。このような手法は、本発明の製造方法によって得られるハードコートフィルムを、画像表示装置において、液晶セルなどの光学部材に対して視認側とは反対側、すなわちリア側(たとえば、液晶ディスプレイにおいては、液晶パネルのバックライト側)に配置する場合は有効である。しかしながら、ハードコートフィルムを画像表示装置において、液晶セルなどの光学部材に対して視認側、すなわちフロント側(たとえば、液晶ディスプレイにおいては、液晶パネルのフロント側)に配置する場合においては、偏光フィルムや液晶セルなどの光学部材を紫外線から保護するという観点から、基材フィルムに360〜380nm未満の波長の紫外線を吸収するUV吸収剤を添加し、活性エネルギー線硬化性樹脂に含まれる少なくとも1種を、380nm以上に吸収波長を有する重合開始剤とすることが好ましい。
【0031】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される界面活性剤としては、平滑性を向上させるためのレベリング剤、鋳型との離型性を向上させるための離型剤、防汚性を発現させたり耐指紋付着性を発現させたりするための防汚剤、フィルムの帯電を防止するための導電剤等があげられる。これらの添加剤は、活性エネルギー線硬化性樹脂の重合反応を阻害するものや、重合反応後の硬度や基材フィルムへの密着性を低下させない限り特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。
【0032】
界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等から適宜選択して使用でき、また、必要に応じてこれらの2種以上を併用することができる。なかでも機能性の面から、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、あるいはその両方を含有するものがより好ましい。
【0033】
フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩類、パーフルオロアルキル基含有スルホン酸塩類、パーフルオロアルキル基含有リン酸塩類、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸エステル類、パーフルオロアルキル基含有スルホン酸エステル類、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル類、パーフルオロアルキル基・親油性基含有オリゴマー類、パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー類、または上記のパーフルオロアルキル基をパーフルオロアルケニル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0034】
シリコン系界面活性剤の例としては、ポリエーテル変性ポリシロキサン類、ポリエステル変性ポリシロキサン類、アルキル変性ポリシロキサン類、アラルキル変性ポリシロキサン類、高級脂肪酸変性ポリシロキサン類、エポキシ変性ポリシロキサン類、アミノ変性ポリシロキサン類、カルボキシル変性ポリシロキサン類、アルコール変性ポリシロキサン類などの、有機変性ポリシロキサンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0035】
また、フッ素原子およびケイ素原子の両方を含む界面活性剤も使用することができ、その例としては、上記シリコン系界面活性剤のアルキル基の水素の一部または全部をフッ素で置換した、フッ素化変性ポリシロキサン類等が挙げられる。
【0036】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その塗工性を向上させるために、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、たとえば、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類などから適宜選択して用いることができる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工工程後、(第一)硬化工程の前に、溶剤を蒸発させて乾燥させることが好ましいため、溶剤の沸点は60〜160℃の範囲であることが望ましい。また、20℃における飽和蒸気圧は0.1〜20kPaの範囲であることが好ましい。溶剤の種類および含有量は、用いる活性エネルギー線硬化性化合物の種類や含有量、基材フィルムの材質、形状、塗布方法、目的とするハードコート層の厚みなどに応じて適宜選択される。
【0037】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、ギラツキの低減等のために内部ヘイズを付与することを目的として、透光性微粒子を添加してもよい。透光性微粒子としては、特に限定されるものではなく従来公知のものが使用できる。たとえば、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等からなる有機微粒子や、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス等からなる無機微粒子等を透光性微粒子として使用することができる。有機重合体のバルーンやガラス中空ビーズを使用することもできる。これらの透光性微粒子は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。透光性微粒子の形状は、球状、扁平状、板状、針状、不定形状等のいずれであってもよい。
【0038】
透光性微粒子の粒子径や屈折率は特に制限されるものではないが、効果的に内部ヘイズを発現させる点から、粒子径は0.5μm〜20μmの範囲であることが好ましい。また、同様の理由から、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化後の屈折率と透光性微粒子の屈折率との差は0.04〜0.15の範囲であることが好ましい。透光性微粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して3〜60重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。透光性微粒子の含有量が、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して3重量部未満では、ギラツキ低減のための十分な内部ヘイズが得られない。一方、60重量部を超えると、ハードコートフィルムの透明性が損なわれる場合があり、また、ハードコートフィルムを液晶表示装置において視認側に配置した場合に、光散乱が強すぎるため、たとえば黒表示において、液晶パネルの正面方向に対して斜めに漏れ出してくる光がハードコート層により正面方向へ強く散乱されてしまう等の理由によりコントラストが低下する場合がある。
【0039】
鋳型は、ハードコート層表面に所望の形状を付与するためのものであり、当該所望の形状の転写構造からなる表面形状を有している。鋳型の表面形状は、鏡面等の平滑面であってもよいし、ハードコートフィルムに防眩性を付与するための凹凸形状であってもよい。凹凸形状のパターンは、規則的なパターンであってもよいし、ランダムパターン、あるいは特定サイズの1種類以上のランダムパターンを敷き詰めた、擬似ランダムパターンであってもよいが、ハードコートフィルムの表面形状に起因する反射光の干渉により、反射像が虹色に色づくことを防止する点から、ランダムパターンまたは擬似ランダムパターンであることが好ましい。
【0040】
鋳型の形状は特に制限されるものではなく、平板状であってもよいし、円柱状または円筒状のロールであってもよいが、連続生産性の点から、鏡面ロールやエンボスロール等の、円柱状または円筒状の鋳型であることが好ましい。この場合、円柱状または円筒状の鋳型の側面に所定の表面形状が形成される。
【0041】
鋳型の基材の材質は特に制限されるものではなく、金属、ガラス、カーボン、樹脂、あるいはそれらの複合体から適宜選択できるが、加工性等の点から金属が好ましい。好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄、またはアルミニウムもしくは鉄を主体とする合金などが挙げられる。
【0042】
鋳型を得る方法としては、たとえば、基材を研磨し、サンドブラスト加工を施した後、無電解ニッケルめっきを施してロール金型を作成する方法(特開2006−53371号公報);基材に銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、クロムめっきを施す方法(特開2007−187952号公報);銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、エッチング工程または銅めっき工程を施し、ついでクロムめっきを施す方法(特開2007−237541号公報);金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、研磨された面に感光性樹脂膜を塗布形成し、該感光性樹脂膜上にパターンを露光した後、現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行い、感光性樹脂膜を剥離し、さらにエッチング処理を行い、凹凸面を鈍らせた後、形成された凹凸面にクロムめっきを施す方法;および旋盤等の工作機械を用いて、切削工具により鋳型となる基材を切削する方法(国際公開第2007/077892号パンフレット)等が挙げられる。
【0043】
ランダムパターンまたは擬似ランダムパターンからなる鋳型の表面凹凸形状は、たとえば、FMスクリーン法、DLDS(Dynamic Low−Discrepancy Sequence)法、ブロック共重合体のミクロ相分離パターンを利用する方法またはバンドパスフィルター法等によって生成されたランダムパターンを感光性樹脂膜上に露光、現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行うことにより形成することができる。
【0044】
本発明では、基準として、基材フィルムの一方の面に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させずに25℃の気体中で硬化させて形成したハードコート層の対水接触角θを測定し、このθと、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を前記鋳型と接触させながら硬化させることにより形成された本発明のハードコート層の対水接触角θとが、前記式(1)を満たす。なお、式(1)でいう、|θ−θ|は、θとθとの差分の絶対値を意味するものである。|θ−θ|の値が15°を超える場合は、基材フィルムからハードコート層が剥がれやすいことがある。
【0045】
|θ−θ|の値を15°以下にするには、例えば、鋳型の温度を制御する方法、表面張力の低下能が低い界面活性剤を使用する方法、界面活性剤の添加量を下げる方法、鋳型にフッ素コート等の特殊な表面処理を施して鋳型の表面自由エネルギーを低くする方法等を適宜採用できるが、界面活性剤の添加量を過度に減らすことなく、レベリング性、硬化後のフィルムのすべり性、水はじき性などの界面活性剤の添加による十分な効果を得られること、鋳型や製造装置の製造が比較的容易であることなどから、鋳型の温度を制御することにより、|θ−θ|の値を15°以下に調節する方法が好ましい。具体的には、例えば鋳型の温度を55℃以下に制御することで|θ−θ|の値を15°以下にすることができる。
【0046】
<ハードコートフィルムの製造方法>
次に、本発明のハードコートフィルムの製造方法について説明する。本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの一方の面に、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する工程と、塗工した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に55℃以下の鋳型を接触させながら活性エネルギー線を照射し、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてハードコート層を形成する工程と、前記ハードコート層を前記鋳型から剥離する工程と、を含む製造方法により製造することができる。すなわち、〔1〕塗工工程、〔2〕硬化工程、〔3〕剥離工程をこの順で含むものであり、以下に詳細に説明する。
【0047】
〔1〕塗工工程
前述した基材フィルムの一方の面に、前述した活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工して、塗工層を形成する。かかる塗工法としては、公知の方法を適宜選択でき、具体的には、ワイヤーバーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、スロットダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スライドコート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。なかでも、塗工時の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中への異物等の混入を極力防止する点から、スロットダイコート法が望ましい。
【0048】
〔2〕硬化工程(第一硬化工程)
次いで、前記塗工層を前述した鋳型と、鋳型の表面温度を55℃以下にして接触させながら活性エネルギー線を照射して前記塗工層を硬化させる。また、これにより、鋳型の表面形状が塗工層に転写され、ハードコート層が形成される。このように、接触温度、すなわち鋳型の表面温度を55℃以下にして、鋳型と接触させながら硬化させることにより、所望の対水接触角を得ることができ、ハードコート層の基材フィルムからの耐剥離性を向上させることが可能となる。一方、前記接触温度が、20℃を下回ると鋳型の表面が結露してしまう懸念がある。
【0049】
前述した接触温度とするため、さらには、活性エネルギー線の照射による過熱から保護するため、前記鋳型には冷却機構が備え付けられているのが好ましい。かかる冷却機構としては、たとえば、鋳型の内部に冷却管を設け、鋳型内部の冷却管と外部に設置したチラーユニットとを接続し、冷媒を循環させる構造が挙げられる。この冷却機構により、鋳型の表面を冷却することが可能となり、これにより前述した接触温度となるよう調整される。
【0050】
塗工層と鋳型を密着させる方法に特に制限はないが、塗工層と鋳型との間に気泡が混入することを防止するため、ニップロール等の圧着装置を用いることが好ましい。ニップロールを用いる場合、ニップ圧に特に制限はないが、好ましくは0.05MPa以上、1.0MPa以下である。ニップ圧が0.05MPa未満であると、塗工層と鋳型との間に気泡が混入しやすくなる。一方、ニップ圧が1.0MPaを超えると、基材フィルムの搬送時のわずかなずれにより基材フィルムが破断したり、塗工層が基材フィルムの端部からはみ出して汚染の原因となったりする場合がある。
【0051】
活性エネルギー線として、活性エネルギー線硬化性樹脂や重合開始剤の種類に応じてγ線、X線、紫外線、近紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、電子線などから適宜選択することができるが、これらの中で紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で、高エネルギーが得られるため硬化性や生産性に優れるという観点から、紫外線が好ましい。
【0052】
紫外線の光源としては、たとえば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、紫外線を発生する光源であれば特に制限はない。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。なかでも、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、メタルハライドランプが好ましく利用できる。
【0053】
紫外線を照射するための紫外線照射装置と光源の組み合わせの例としては、Fusion UV SYSTEMS社製UV照射装置「F600」や「LH10」と、Hバルブ(水銀ランプ相当)やDバルブまたはVバルブ(メタルハライドランプ相当)との組み合わせ、株式会社GSユアサ社製株式会社製「CSシリーズ」と、水銀ランプやメタルハライドランプとの組み合わせ、オーク製作所製「QRM−2288」や「QRM−2300」等のUV照射装置と、メタルハライドランプや高圧水銀ランプとの組み合わせ、ウシオ電機株式会社製「ユニキュアシステム」とメタルハライドランプや高圧水銀ランプとの組み合わせが挙げられる。紫外線照射装置と光源は、同じ組み合わせのものを単独または複数用いてもよいし、異なる組み合わせのものを複数用いてもよい。
【0054】
紫外線のUVAにおける積算光量は、好ましくは40mJ/cm以上であり、より好ましくは70mJ/cm以上である。積算光量が40mJ/cm未満であると、紫外線硬化性樹脂の硬化が不十分となり、鋳型に未硬化の紫外線硬化性樹脂が付着することがある。一方、積算光量の上限については、前述した接触温度の範囲内であれば、特に制限はない。
【0055】
紫外線の照射は、1回のみであってもよく、2回以上行なってもよい。また、硬化工程において用いられる光源(紫外線照射装置)の数に特に制限はなく、1灯であってもよいし、2灯以上であってもよい。
【0056】
〔3〕剥離工程
前記硬化工程の後、ハードコートフィルム(基材フィルムとハードコート層との積層体)が鋳型から剥離される。剥離方法としては、特に制限されないが、たとえば、鋳型がロール形状である場合には、ハードコートフィルムと鋳型との分離点にニップロール等の圧着装置を設置し、この圧着装置を支点に鋳型からフィルムを剥離する方法が好ましく用いられる。これにより、活性エネルギー線の照射中にフィルムが鋳型から剥がれることが効果的に防止され、鋳型とフィルムとの密着状態が維持されるとともに、上記支点に到達したフィルムを効率的かつ安定的に剥離することが可能となる。
【0057】
かくして、本発明のハードコートフィルムを得ることができるが、さらに、ハードコート層の硬化反応をさらに促進させることを目的として、ハードコート層側からさらに活性エネルギー線を照射するのが好ましい。この工程を第二硬化工程と呼び、以下にその説明を行なう。
【0058】
〔4〕第二硬化工程
第二硬化工程に用いる活性エネルギー線は、γ線、X線、紫外線、近紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、電子線などから適宜選択することができるが、それらの中で紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で、高エネルギーが得られるため硬化性や生産性に優れるという観点から、紫外線が好ましい。また、活性エネルギー線は、前述した第一硬化工程の際に使用した活性エネルギー線と同種の物を用いることが好ましい。異なる種類の活性エネルギー線を用いる場合、それにあわせて複数の樹脂や重合開始剤を使用する必要があり、樹脂組成物の設計が複雑になる恐れがある。
【0059】
第二硬化工程に用いる紫外線の照射装置の光源としては、たとえば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、紫外線を発生する光源であれば特に制限はない。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。なかでも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンアークランプ、メタルハライドランプが好ましく利用できる。紫外線照射装置と光源は、同じ組み合わせのものを単独または複数用いてもよいし、異なる組み合わせのものを複数用いてもよい。
【0060】
なお、第二硬化工程に用いる紫外線の照射装置や光源の種類は、ハードコート層に含まれる重合開始剤が有効に機能する紫外線であれば、第一硬化工程の紫外線と異なっていてもよい。たとえば、第一硬化工程ではメタルハライドランプを使用し、第二硬化工程では高圧水銀ランプを使用してもよい。
【0061】
第二硬化工程の紫外線のUVAにおける積算光量は、好ましくは200mJ/cm以上であり、より好ましくは300mJ/cm以上である。積算光量の上限については特に制限はない。
【0062】
第二硬化工程における紫外線の照射は、1回のみであってもよく、2回以上行ってもよい。また。第二硬化工程において用いられる紫外線照射装置や光源の数に特に制限はなく、1灯のみであってもよいし、2灯以上あってもよい。なお、第二硬化工程において紫外線の照射を2回以上行う場合、上記積算光量は、第二硬化工程の紫外線についての上記積算光量の合計値である。
【0063】
第二硬化工程では、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化が酸素によって阻害されることを防止するため、基材フィルムおよびハードコート層からなる積層体と照射装置との間は不活性ガスを充填することが好ましい。不活性ガスは、窒素、アルゴン、ネオン等から適宜選択されるが、取り扱いの簡易性やコストの点から窒素が好ましい。また、その際の酸素濃度は0.1%以下が好ましい。
【0064】
第二硬化工程における活性エネルギー線の具体的な照射方法に特に制限はなく、たとえば、バックアップロール等のロール上に基材フィルムを密着させた状態で照射してもよいし、ガイドロールとガイドロールとの間の中空部分に活性エネルギー線照射装置を設置して照射してもよい。また、活性エネルギー線の照射を2回以上行う場合、照射方法はそれぞれ同じであってもよく、異なる照射方法であってもよい。例えば、1回目および2回目ともに、バックアップロールを使用して活性エネルギー線を照射してもよいし、1回目はバックアップロールを使用して活性エネルギー線を照射し、2回目はガイドロールとガイドロールとの間の中空部分に活性エネルギー線照射装置を設置して活性エネルギー線を照射するようにしてもよい。
【0065】
活性エネルギー線による基材フィルムへの熱ダメージや熱皺の発生を防止するため、冷却機構を備えたバックアップロールを使用する照射方法が好ましい。冷却されたバックアップロールの表面温度は一般に10℃〜70℃の範囲であり、好ましくは20℃〜60℃の範囲である。バックアップロールを使用する場合、第二硬化工程の入口側、あるいは入口側と出口側の両方に基材フィルムに皺が入ることを防ぐための皺とり装置を設置してもよい。
【0066】
ハードコート層や基材フィルムを保護するため、必要に応じて、基材フィルムとハードコート層との積層体の片面または両面に保護フィルムを貼合してもよい。
【0067】
本発明のハードコートフィルムは、種々の光学部材として使用しうるが、例えば、偏光板の保護フィルムとして好適に使用される。また、その偏光板を画像表示装置に使用することが可能である。
【0068】
<偏光板>
本発明の偏光板は、前述したハードコートフィルムと、前記ハードコートフィルムの前記基材フィルムの他方の面に積層した偏光フィルムとを有するものである。偏光フィルムは、入射光から直線偏光を取り出す機能を有するものであって、その種類は特に限定されない。好適な偏光フィルムの例として、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルのケン化物であるポリビニルアルコールのほか、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物などが挙げられる。二色性色素としては、ヨウ素又は二色性の有機染料が用いられる。また、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のポリエン配向フィルムも、偏光フィルムとなりうる。偏光フィルムの厚さは通例5〜80μm程度である。
【0069】
本発明の偏光板は、上記偏光フィルムの片面または両面(通常は片面である)に本発明のハードコートフィルムを積層したものであってもよく、上記偏光フィルムの一方の面に透明保護層を積層し、他方の面に本発明のハードコートフィルムを積層したものであってもよい。この際、ハードコートフィルムは、偏光フィルムの透明保護層としての機能も有する。ハードコートフィルムのハードコート層に表面凹凸形状が付与されている場合、このハードコート層は防眩層としての機能も有する。透明保護層は、フィルムを、接着剤等を用いて貼合する方法や塗工液を塗布する方法などによって積層される。同様に、本発明のハードコートフィルムは、接着剤等を用いて偏光フィルムに貼合することができる。
【0070】
透明保護層は、透明性や機械強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れるものであることが好ましく、このようなものとしては、たとえば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;スチレン系樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリ塩化ビニルなどからなるフィルムが例示される。これらのフィルムは、光学的に等方性のものであってもよいし、画像表示装置に組み込んだ際の視野角の補償を目的として、光学的に異方性を持つものであってもよい。
【0071】
本発明の偏光板を液晶セル上に配置して液晶パネルを製造する場合、液晶セルの片面あるいは両面に偏光板を配置した際に、本発明の偏光板のハードコート層(または防眩層)よりも偏光フィルムの方が液晶セルに近くなるように、偏光板が配置される。このとき、偏光板は、視認側に配置してもよいし、バックライト側に配置してもよいし、あるいはその両方に配置してもよい。偏光板を視認側に配置した場合、ハードコート層は、外力に起因する傷等を防止するとともに、防眩層としても機能する場合にはギラツキや外光の映りこみを防止する。一方、偏光板をバックライト側に配置した場合は、ハードコート層は、液晶ディスプレイの組立工程において発生しうる外力に起因する傷、たとえば拡散板等への接触に伴う傷を防止するとともに、防眩層としても機能する場合には、バックライトから液晶パネルに入射する光に対して、モアレ等を防止する拡散板の役割を果たす。
【0072】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の方法によって製造されたハードコートフィルムと、種々の情報を画面に映し出す画像表示装置とを組み合わせたものである。本発明の画像表示装置において、画像表示装置の種類は特に限定されず、上記液晶パネルを使用した液晶ディスプレイ(LCD)のほか、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、電解放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、有機ELディスプレイ、レーザーディスプレイ、プロジェクタテレビのスクリーン等が挙げられる。
【0073】
本発明に係るハードコートフィルムは、これらのディスプレイの画像表示素子の視認側表面に配置されるのが好ましく、この場合、画像表示装置としては、偏光板と、画像表示素子とを備え、前記偏光板が、前記ハードコート層よりも前記偏光フィルムの方が前記画像表示素子に近くなるように、前記画像表示素子の視認側に配置される。しかしながら、本発明に係るハードコートフィルムは、画像表示素子のバックライト側に配置される場合のように、画像表示装置の内部に組み込まれてもよい。本発明の画像表示装置は、本発明に係るハードコートフィルムを備えたものであるため、傷つきが生じにくく、優れた強度を有する。
【0074】
図1は、本発明の画像表示装置の基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。図1に示される画像表示装置100は、バックライト10、光拡散板50、液晶パネル60をこの順で備える。液晶パネル60は、画像表示素子40と、画像表示素子40のバックライト側(図1においてz軸の負方向)に配置される偏光板20と、画像表示素子40の視認側(図1においてz軸の正方向)に配置される偏光板30とを備える。画像表示素子40の視認側に配置される偏光板30は、ハードコートフィルム31と、偏光フィルム33とを備える。ハードコートフィルム31は、基材フィルム312と基材フィルム312の一方の面に積層されたハードコート層311とを備え、基材フィルム312の他方の面に偏光フィルム33が積層される。画像表示装置100において、偏光板30は、ハードコート層311よりも偏光フィルム33の方が画像表示素子40に近くなるように、画像表示素子40の視認側に配置される。バックライト10の光出射面の垂線が、Z軸と略平行とされている。また、光拡散板50、偏光板20、画像表示素子40、偏光板30の光入射面の垂線は、Z軸と略平行とされている。
【0075】
本発明の画像表示装置100の偏光板30に用いられる本発明のハードコートフィルム31は、基材フィルム312と、基材フィルム312の一方の面に積層されたハードコート層311とを備え、ハードコート層311が、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させながら硬化させることにより形成され、かつ、ハードコート層311の対水接触角θが、上記式(1)を満たす。かかる本発明のハードコートフィルム31は、ハードコート層311の基材フィルム312からの耐剥離性に優れている。
【0076】
なお、本発明の画像表示装置は、図1に示される構成に限定されるものではなく、種々の変形を加えることができる。たとえば、図1の画像表示素子40のバックライト側に配置される偏光板20が本発明のハードコートフィルム31を備える偏光板30であることもでき、その場合、偏光板30を画像表示素子40の視認側とバックライト側との両方に配置してもよく、バックライト側の片方のみに配置してもよい。バックライト側に偏光板30を配置する場合、ハードコート層311が偏光フィルム33に対してバックライト側になるように、すなわち、ハードコート層311よりも偏光フィルム33の方が画像表示素子40に近くなるように、偏光板30を配置するのが好ましい。また、光拡散板50やバックライト10は、必ずしも必要ではなく省略されてもよい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0078】
[ハードコートフィルムの対水接触角の測定]
後述するハードコートフィルムについて、協和界面化学株式会社製、接触角計、CA−X型を使用して対水接触角を測定した。
【0079】
[ハードコートフィルムの耐剥離性の測定]
後述するハードコートフィルムについて、JIS K5400に準拠して、碁盤目試験を行い、ハードコート層の基材フィルムからの耐剥離性を評価した。評価は、該ハードコートフィルムのハードコート層を、コーテック社製のCCJ−1をガイドに用いて1マスが1mm四方となるように10マス×10マスの100マスにカットし、ニチバン社製のセロテープ(登録商標)CT−24を用いて、3回剥離試験を行い、ハードコート層の基材フィルムからの剥離状態を比較した。
【0080】
[実施例1]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、以下の紫外線硬化性樹脂組成物を使用した。
・紫外線硬化性樹脂:商品名「NKハード KCR2803−50A」
(新中村化学(株)製のウレタンアクリレート系樹脂、樹脂固形分濃度:60重量%、希釈溶剤:酢酸エチル、重合開始剤:TPO(化学名:2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)を紫外線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して5.0重量%含有。)
・界面活性剤:商品名「メガファック F−477」
(パーフルオロアルキル基、親水性基、親油性基含有オリゴマー、紫外線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して0.5重量%となるよう添加。)
【0081】
厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(商品名「TDY80UL」、富士フィルム(株)製)上に、ダイコーターにて乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で20秒間乾燥させた。次いで、得られたTACフィルムと紫外線硬化性樹脂組成物の塗工層との積層体を、表面温度を38℃に制御したエンボスロールに、周囲温度25℃で、塗工層がエンボスロール側となるようにニップロールで押し付けて密着させた。この状態で、TACフィルム側から、紫外線照射装置としてオーク社製UV照射装置と、光源としてメタルハライドランプを用いて、UVAの積算光量が200mJ/cmとなるように紫外線を1回照射し、塗工層を硬化させて、ハードコート層を形成した。
【0082】
次に、TACフィルムをハードコート層ごとエンボスロールから剥離した後、積層体に対して、ハードコート層側から、紫外線照射装置としてオーク社製UV照射装置と、光源として高圧水銀ランプを用いて、UVAの積算光量が500mJ/cmとなるように紫外線を1回照射してハードコートフィルムを作成した。該フィルムにおけるハードコート層の対水接触角θと、ハードコート層の基材フィルムからの耐剥離性の結果を表1に記載する。
【0083】
[実施例2、3および比較例1]
エンボスロールの表面温度を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。これらフィルムにおけるハードコート層の対水接触角θと、ハードコート層の基材フィルムからの耐剥離性の結果を表1に記載する。
【0084】
[基準サンプル]
エンボスロールと接触させずに室温(25℃)、空気雰囲気下で硬化した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。該フィルムにおけるハードコート層の対水接触角θを表1に記載する。
【0085】
【表1】

【符号の説明】
【0086】
10…バックライト、20、30…偏光板、31…ハードコートフィルム、311…ハードコート層、312…基材フィルム、33…偏光フィルム、40…画像表示素子、50…光拡散板、60…液晶パネル、100…液晶表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に積層されたハードコート層とを備えるハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させながら硬化させることにより形成され、かつ、前記ハードコート層の対水接触角θが、下記式(1)を満たすハードコートフィルム。
|θ−θ|≦15° (1)
(式中、θは、基材フィルムの一方の面に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させずに25℃の気体中で硬化させて形成したハードコート層の対水接触角を表す。)
【請求項2】
前記界面活性剤が、フッ素系界面活性剤及び/又はシリコン系界面活性剤である請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
基材フィルムの一方の面に、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する工程と、塗工した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に55℃以下の鋳型を接触させながら活性エネルギー線を照射し、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてハードコート層を形成する工程と、前記ハードコート層を前記鋳型から剥離する工程と、を含むハードコートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記鋳型が、鏡面ロール又はエンボスロールである請求項3に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載されたハードコートフィルムと、前記ハードコートフィルムの前記基材フィルムの他方の面に積層された偏光フィルムとを備える偏光板。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の方法により製造されたハードコートフィルムと、前記ハードコートフィルムの前記基材フィルムの他方の面に積層された偏光フィルムとを備える偏光板。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の偏光板と、画像表示素子とを備え、
前記偏光板は、前記ハードコート層よりも前記偏光フィルムの方が前記画像表示素子に近くなるように、前記画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−227488(P2011−227488A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72356(P2011−72356)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】