説明

ハードコートフィルムの製造方法及びハードコートフィルム

【課題】 本発明は、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体や液晶ディスプレイ、タッチパネル等の被覆対象物の保護用のフィルムとして、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、ハードコート層と基材フィルムの密着性及びハードコート層の表面平滑性が良好であり、厚さむらがなく、指紋の拭き取り性に優れたハードコートフィルムの製造方法及びその製造方法によって得られたハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、平均表面粗さRaが0.1μm以下の剥離フィルム上に形成されたエネルギー線硬化性ハードコート組成物層に基材フィルムを貼り合わせ、加熱後、エネルギー線を照射することによって前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を硬化させて基材フィルムにハードコート層を密着形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体や液晶ディスプレイ、タッチパネル等の記録特性や光学特性を損なわないために表面を保護するハードコートフィルムに関し、特に、ハードコート層と基材フィルムの密着性及びハードコート層の表面平滑性が良好であり、厚さむらがなく、指紋拭き取り性に優れたハードコートフィルムの製造方法及びその製造方法によって得られたハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク等の光記録媒体の表面に微細な凹凸等の欠陥が存在したり、汚れ等が付着していると、その部分で光が散乱、屈折し、レーザー光の集光度が低下し、書き込み時や読みとり時のエラーの原因になる問題があった。また、液晶ディスプレイの表面やタッチパネル等においても表面に微細な凹凸状の欠陥があると、その部分で光が散乱、屈折して反射し、曇りを生じるために、視認性が低下するという問題があった。このため、光ディスク等の光記録媒体やタッチパネル等には、ハードコート組成物を基材フィルムに塗工形成したハードコートフィルムを貼着するようにして、表面を保護することが一般的に行われている。
【0003】
しかしながら、ハードコートフィルムの基材フィルムに凹凸状の欠陥がある場合は、この凹凸状の欠陥に沿ってハードコート組成物が塗工されるため、表面に凹凸形状が表れてしまい、ハードコートフィルムの表面平滑性が低下し、光の屈折が生じる問題や、厚さむらが生じる問題があった。
ハードコートフィルムの表面を平滑とするために、表面張力を低下させるレベリング剤をハードコート組成物に添加した場合であっても、塗工されたハードコート組成物が、基材フィルム表面の凹凸状の欠陥に沿って若干へこみ又は膨らむため、厚さむらが生じるという問題があった。また、レベリング剤としてジメチルシロキサン系化合物又はフッ素系化合物等が添加された場合は、指紋や皮脂等の拭き取り性が悪化するという問題があった。特に、指先で触れて操作するタッチパネルの表面に用いるハードコートフィルムにレベリング剤が添加されている場合は問題があった。例えば、特許文献1に記載のように、レベリング剤を添加したハードコート層の上部にさらに防汚層を設ければ指紋拭き取り性は向上するが、防汚層を設けると、工程数が増加し、防汚層の材料価格も高価であることから、製品単価が高騰するという問題があった。
【0004】
ハードコートフィルムの表面を平滑とするためには、基材フィルム自体の表面を平滑にすることも考えられる。例えば、特許文献2には、表面平滑な芳香族ポリカーボネートからなる光学用フィルム及びその製造方法が開示されている。前記光学用フィルムの製造方法は、支持体に芳香族ポリカーボネート溶液をフィルム状に流延し、雰囲気温度を調整して、前記芳香族ポリカーボネート溶液中の溶媒濃度を調整し、表面平滑性に影響を与える前記支持体と接触している面の前記芳香族ポリカーボネートの結晶化度を調整して、表面平滑な芳香族ポリカーボネートからなる基材フィルムを得るようにしている。
【特許文献1】特開平9−111223号公報
【特許文献2】特許第3531835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の光学用フィルムは、フィルム状に形成された芳香族ポリカーボネートが所定の結晶化度となるように、雰囲気温度等を調整する必要があり、表面平滑な基材フィルムを得るために煩雑な手間が必要となる問題があった。また、表面が平滑となるように製造した場合であっても、製造過程で不可避的に前記光学用フィルムの表面に凹凸状の欠陥が生じてしまう場合もあり、また、表面に異物が付着してしまう場合もあった。
そこで、本発明は、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体や液晶ディスプレイ、タッチパネル等の被覆対象物の保護用のフィルムとして、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、ハードコート層と基材フィルムの密着性及びハードコート層の表面平滑性が良好であり、厚さむらがなく、指紋の拭き取り性に優れたハードコートフィルムの製造方法及びその製造方法によって得られたハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、請求項1に記載の通り、平均表面粗さRaが0.1μm以下の剥離フィルム上に形成されたエネルギー線硬化性ハードコート組成物層に基材フィルムを貼り合わせ、加熱後、エネルギー線を照射することによって前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を硬化させて前記基材フィルムにハードコート層を密着形成することを特徴とする。
また、請求項2記載のハードコートフィルムの製造方法は、請求項1記載のハードコートフィルムの製造方法において、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を形成するエネルギー線硬化性ハードコート組成物は、ウレタン(メタ)アクリルレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする。
また、請求項3記載のハードコートフィルムの製造方法は、請求項1又は2記載のハードコートフィルムの製造方法において、前記加熱を50℃〜130℃で行うことを特徴とする。
また、請求項4記載のハードコートフィルムの製造方法は、請求項1乃至3の何れかに記載のハードコートフィルムの製造方法において、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層に、ジメチルシロキサン系化合物又はフッ素系化合物を含まないことを特徴とする。
本発明のハードコートフィルムは、請求項5に記載の通り、請求項1乃至4の何れかの方法によって製造されたことを特徴とする。
また、請求項6記載のハードコートフィルムの製造方法は、請求項5記載のハードコートフィルムにおいて、光ディスクに用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、平均表面粗さRaが0.1μm以下の剥離フィルム上に形成されたエネルギー線硬化性ハードコート組成物層に基材フィルムを貼り合わせ、加熱後、エネルギー線を照射することによって前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を硬化させて前記基材フィルムにハードコート層を密着形成する。
本発明の製造方法によれば、エネルギー線硬化性ハードコート組成物層が、基材フィルムと貼り合わされた状態で加熱されて流動化され、前記基材フィルムの表面に存在する微小な凹凸に追従し、その後、エネルギー線の照射によって、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層が硬化されるため、ハードコート層と基材フィルムの密着性が向上する。また、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層が、基材フィルムと剥離フィルムとの間にはさまれた状態で硬化されるため、平均表面粗さRaが0.1μm以下の剥離フィルムの平滑な表面がハードコート層に転写され、ハードコート層の表面平滑性が良好となる。また、剥離フィルムと基材フィルムとの間にはさまれた状態でハードコート層が形成されるため、厚さむらのないハードコートフィルムを得ることができる。
また、本発明のハードコートフィルムの製造方法によれば、ジメチルシロキサン系化合物又はフッ素系化合物からなるレベリング剤を用いることなく表面平滑性を向上させたハードコート層を形成できるため、指紋や皮脂等の拭き取り性が向上し、防汚性を向上させたハードコートフィルムを得ることができる。
本発明の製造方法によって得たハードコートフィルムは、前記剥離フィルムを保護シートとして用いることにより、表面平滑性が高いハードコート層同士の摩擦によるブロックキング現象を生じさせることなく、ハードコートフィルムをロール状に巻き取って供給することができ、取り扱い性が向上する。また、本発明の製造方法によって得たハードコートフィルムは、表面平滑性が向上されているため、光の散乱、屈折がなく、光ディスクの保護用のフィルムとして適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、平均表面粗さRaが0.1μm以下の剥離フィルム上に形成されたエネルギー線硬化性ハードコート組成物層に基材フィルムを貼り合わせ、加熱後、エネルギー線を照射することによって前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を硬化させて前記基材フィルムにハードコート層を密着形成することを特徴とする。
エネルギー線硬化性ハードコート組成物としては、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射により硬化するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種からなるものを用いることができる。また、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物には、照射するエネルギー線の種類によって、適した光重合開始剤を含んだものを用いることが好ましい。また、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物には、表面修飾された反応性シリカゾルを含んだものを用いてもよい。前記シリカゾルの平均粒径は200nm以下のものを用いることが好ましい。ハードコート層の厚さは、特に限定されるものではないが、0.5〜20μmが好ましく、1〜10μmのものがより好ましい。
【0009】
前記剥離フィルムとしては、剥離フィルム表面の微細な凹凸が転写された状態でハードコート層が形成されるため、少なくとも片面の平均表面粗さRaが0.1μm以下のものを用いる必要があり、平均表面粗さRaが0.05μm以下のものが好ましい。前記剥離フィルム表面の平均表面粗さRaが0.1μm以下であれば、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層の表面に前記剥離フィルムの表面が転写されるため、硬化後のハードコート層の表面は平滑性が優れたものとなる。
前記剥離フィルムは、特に限定されるものではないが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂からなるフィルム又は前記樹脂をラミネートした紙、及び、前記フィルム又は紙に剥離処理を施したものを用いることができる。剥離処理の方法としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤を前記フィルムに塗工する方法が挙げられる。尚、剥離処理剤は前記剥離処理剤に限らず、他の剥離処理剤を使用してもよい。また、剥離フィルムとしてポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを用いた場合は、エネルギー線硬化性ハードコート組成物との密着性が乏しいため易剥離性となり、しかも、安価であるため好ましい。剥離フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、厚さは10〜200μmが好ましく、30〜100μmのものがより好ましい。
【0010】
前記基材フィルムとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、シクロオレフィン系樹脂等からなるものを使用することができる。透明性、耐衝撃性、価格の点からポリカーボネートからなるものを用いることが好ましい。また、基材フィルムは、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物との密着性を向上させるために、コロナ処理等を行ってもよい。基材フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、10〜200μmが好ましく、20〜100μmのものがより好ましい。
【0011】
次に、本発明のハードコートフィルムの製造方法の一実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、以下に記載の方法に限定されるものではない。
図1に示すように、先ず、ロール5から平均表面粗さRaが0.1μm以下の剥離フィルム1が巻き出されて、バックアップロール6のところでバーコーター7からエネルギー線硬化性ハードコート組成物が剥離フィルム1に塗工され、その後、60℃〜130℃の乾燥機8を通過させ、エネルギー線硬化性ハードコート組成物が乾燥されて剥離フィルム1上にエネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’が形成される。尚、エネルギー線硬化性ハードコート組成物の塗工方法としては、バーコーター法、ダイコーター法、グラビアコーター法、ナイフコーター法等の方法を用いることができる。
次いで、乾燥機8を通過した剥離フィルム1上に形成されたエネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’と、ロール9から巻き出された基材フィルム3とが、相対する一対の加圧ロール10,11の間で貼り合わされる。
そして、エネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’と基材フィルム3とが、貼り合わされた状態で、熱風炉、電気ヒーター、加熱ロール等の加熱手段14によって、50℃〜130℃の温度で加熱される。
その後、エネルギー線照射装置12からエネルギー線が剥離フィルム1側から照射され、エネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’が硬化されて、基材フィルム3にハードコート層2が密着形成され、ハードコートフィルム4が得られる。前記エネルギー線として、近赤外線、可視光線、紫外線、電子線等を照射してエネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’を硬化させることができる。
尚、剥離フィルム1を剥離することなく保護シートとして用いると、表面平滑性を有するハードコート層同士の摩擦によるブロッキング現象を生じさせることなく、ハードコートフィルム4をロール13に巻き取ることができる。前記ハードコートフィルム4がロール13に巻き取られた後、前記ハードコートフィルム4は、裁断加工工程、抜き加工工程等を経ることになるが、これらの工程においても前記剥離フィルム1を保護シートとして用いることが可能である。
【0012】
図2に示すように、剥離フィルム1に塗工されたエネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’と凸状の欠陥を有する基材フィルム3とが、貼り合わされた状態で加熱されると、エネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’と基材フィルム3が密着する。その後、エネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’が、基材フィルム3と表面平均粗さRaが0.1μm以下の剥離フィルム1との間にはさまれた状態で硬化されるため、剥離フィルム1の平滑な表面が転写され、ハードコート層2の表面平滑性が良好となる。また、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’は、剥離フィルム1と基材フィルム3との間にはさまれた状態で硬化されるため、厚さむらのないハードコートフィルム4が得られる。
【0013】
前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’と基材フィルム3とを貼り合わせた状態で加熱処理を行うと、エネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’が流動化され、基材フィルム3の表面に存在する微小な凹凸に追従するため、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’と基材フィルム3との密着性が向上する。加熱処理は、50℃〜130℃の温度で行うことが好ましい。50℃未満の加熱では、貼り合わされた状態のエネルギー線硬化性ハードコート組成物層2’と基材フィルム3との十分な密着性を得ることができない場合があり、130℃を超える加熱では、基材フィルム3と剥離フィルム1との熱膨張係数が異なる場合に、基材フィルム3と剥離フィルム1との熱膨張係数の差により、エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を硬化させた後、ハードコートフィルムに反りが発生したり、基材フィルム3が熱収縮する場合があるからである。前記加熱は、70℃〜130℃の温度で行うことがより好ましい。また、加熱処理時間としては、30秒〜5分程度が好ましく、より好ましくは1分〜3分程度で加熱処理を行うとよい。
【実施例】
【0014】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
(実施例1)
ウレタンアクリレート(荒川化学工業株式会社製、製品名:ビームセット575CB、固形分濃度:100%、光重合開始剤入り)を希釈用溶剤であるメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解させて30%の塗工液とし、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、製品名:PET75T600、厚さ:75μm、平均表面粗さRa:0.01μm)上に前記塗工液を、バーコーターを用いて、前記塗工液の乾燥後の膜厚が3μmとなるように塗工し、90℃で1分間乾燥して剥離フィルム上にエネルギー線硬化性ハードコート組成物層を形成した。前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層に、基材フィルムとしてポリカーボネートフィルム(帝人化成株式会社製、製品名:ピュアエースC110−77、厚さ:77μm、平均表面粗さRa:0.01μm)を貼り合わせ、70℃で2分間加熱処理を行った。その後、紫外線照射装置(リンテック株式会社製、装置名:Adwill RAD−2000、光量:250mJ/cm2)を用いて、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム側から紫外線を照射し、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を硬化させ、前記ポリカーボネートフィルムにハードコート層を密着形成し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して、ハードコートフィルムを得た。
【0015】
(実施例2)
前記ウレタンアクリレートの代わりに、ポリエステルアクリルレート(大日精化工業株式会社製、製品名:セイカビームEXF−01L(NS)、固形分濃度:100%、光重合開始剤入り)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0016】
(実施例3)
前記ウレタンアクリレートの代わりに、エポキシアクリレート(旭電化工業株式会社製、製品名:アデカオプトマーKR−566、固形分濃度:95%、光重合開始剤入り)を用いたことを以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0017】
(実施例4)
前記ポリカーボネートフィルムの代わりに、易接着層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製、製品名:PET1250FW、厚さ:125μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0018】
(実施例5)
前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層と基材フィルムを貼り合わせた後の加熱処理を100℃で1分間行ったこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0019】
(比較例1)
前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層と基材フィルムを貼り合わせた後の加熱処理を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0020】
(比較例2)
実施例1に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、ポリエチレンテレフタレートフィルム(株式会社きもと製、製品名:PET100Sマット、厚さ:100μm、平均表面粗さRa:0.39μm)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0021】
(従来例1)
ウレタンアクリレート(荒川化学工業株式会社製、製品名:ビームセット575CB、固形分濃度:100%、光重合開始剤入り)100重量部に、ジメチルシロキサン系レベリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、製品名:SH28PA、固形分濃度:100%)0.1重量部を加え、希釈溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)に溶解させて30%の塗工液とし、基材フィルムとしてポリカーボネートフィルム(帝人化成株式会社製、製品名:ピュアエースC110−77、厚さ:77μm、平均表面粗さRa:0.01μm)上に前記塗工液を、バーコーターを用いて、前記塗工液の乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、90℃で1分間乾燥した後、紫外線照射装置(リンテック株式会社製、装置名:Adwill RAD−2000、光量:250mJ/cm2)を用いて、前記塗工液を塗布した側から紫外線を照射し、前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を硬化させてハードコート層とし、ハードコートフィルムを得た。
【0022】
次に、得られた実施例1〜5、比較例1〜2及び従来例1のハードコートフィルムについて、ハードコート層の基材フィルムへの密着性、SW硬度、指紋拭き取り性、平均表面粗さRaについて評価した。結果を表1に示す。尚、評価は以下の方法で行った。
[密着性]
JIS K5600−5−6に準じて、碁盤目法にて確認した。
[SW硬度]
100g/cm2荷重で100mmの長さを3往復擦過し、その後のハードコート層の面状態を目視で確認した。
判定基準;傷なしを○、傷ありを×とした。
[指紋の拭き取り性]
5名の試験者による官能評価を行った。指紋をハードコート表面に押し付け、市販のティッシュペーパーを用いて拭き取り、その後、指紋の拭き取り後など残っていないか目視で確認を行った。
判定基準;官能評価を行った者5人のうち、4〜5人が拭き取り性良好と回答した場合を拭き取り性良好とした。また、官能評価を行った者のうち、3人以下の者が拭き取り姓良好と回答した場合は、拭き取り性不良とした。
[平均表面粗さRa]
接触式表面粗さ計(ミツトヨ株式会社製、SV3000S4)を使用し、ISO4287に準じて測定した。
【0023】
【表1】

【0024】
表1から以下のようなことが分かった。
実施例1〜5に示すように、基材フィルムと貼り合わせ、加熱された後に、硬化されたハードコート層は、ハードコート層と基材フィルムの密着性が100%と良好であり、しかも、ハードコート層の平均表面粗さRaが0.01μm以下と表面平滑性も良好であることが確認できた。これに対し、比較例1のように、基材フィルムと貼り合わせ、加熱されずに、硬化させたハードコート層は、基材フィルムとの密着性が悪化した。また、比較例2のように、剥離フィルムとして、平均表面粗さRaが0.1μmを超えるものを用いた場合は、剥離フィルムの表面粗さが転写された状態で前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層が硬化されるため、ハードコート層の表面平滑性は低下した。
また、従来例1のように、剥離フィルムを用いることなく、基材フィルムにエネルギー線硬化性ハードコート組成物を塗工した場合は、表面を平滑とするためにレベリング剤を添加しているため、指紋拭き取り性が悪化した。
また、実施例1〜5、比較例1〜2及び従来例1のハードコート層は、十分なSW硬度を有し、耐擦傷性、耐摺動性を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体や液晶ディスプレイ、タッチパネル等に用いることが可能であり、基材フィルムとハードコート層の密着性及びハードコート層の表面平滑性が良好であり、厚さむらがなく、指紋拭き取り性に優れたハードコートフィルムの製造方法及びハードコートフィルムを提供することができる点において有効である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のハードコートフィルムの製造方法の一実施の形態を示す説明図
【図2】本発明のハードコートフィルムの概略構成を示す断面図
【符号の説明】
【0027】
1 剥離フィルム
2 ハードコート層
2’ エネルギー線硬化性ハードコート組成物層
3 基材フィルム
4 ハードコートフィルム
5 ロール
6 バックアップロール
7 バーコーター
8 乾燥機
9 ロール
10 加圧ロール
11 加圧ロール
12 エネルギー線照射装置
13 ロール
14 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均表面粗さRaが0.1μm以下の剥離フィルム上に形成されたエネルギー線硬化性ハードコート組成物層に基材フィルムを貼り合わせ、加熱後、エネルギー線を照射することによって前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を硬化させて前記基材フィルムにハードコート層を密着形成することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層を形成するエネルギー線硬化性ハードコート組成物は、ウレタン(メタ)アクリルレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記加熱を50℃〜130℃で行うことを特徴とする請求項1又は2記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記エネルギー線硬化性ハードコート組成物層に、ジメチルシロキサン系化合物又はフッ素系化合物を含まないことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの方法によって製造されたことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項6】
光ディスクに用いることを特徴とする請求項5記載のハードコートフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−43919(P2006−43919A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224572(P2004−224572)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】