説明

ハードコート転写箔、その転写箔を用いた成形品及びハードコート転写箔の製造方法

【課題】被転写物の表面硬度を向上させることができるハードコート転写箔とその転写箔を用いた成形品とハードコート転写箔の製造方法とを提供する。
【解決手段】ハードコート転写箔12は、支持フィルム1と、支持フィルム1の一方の面に形成された離型層2と、離型層2の支持フィルム1と接している面とは反対側の面に形成された、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する表面保護層3と、表面保護層3の離型層2と接している面とは反対側に形成された接着層8とを少なくとも含み、表面保護層3と接着層8との間にフィルム層6が形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キズ防止の表面保護層を有する転写箔、即ちハードコート転写箔とその転写箔を用いた成形品とハードコート転写箔の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、耐キズ性、耐薬品性などに優れた表面を転写後に得られる転写箔としては、離型性フィルムの離型面上に、紫外線硬化性樹脂からなる表面保護層が設けられ、その上に絵柄層、接着層などが設けられている転写箔が提案されている(特許文献1を参照)。このような耐キズ性を有する表面保護層を有する加飾転写箔は、ポリカーボネイト樹脂を代表する軟らかいプラスチックの表面を保護する目的で使用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2538479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ポリカーボネイト樹脂のように軟らかい材料上に表面保護層を有する転写箔を転写すると、下地が軟らかいために凹み痕やクラックなどが起こりやすく、いくら表面保護層材料の硬度を向上させても被転写物の表面硬度は上がらないことが多かった。そして、このことが課題となっていた。
また、転写箔上にさまざまな加飾を施そうとすると転写箔がゆえに部分的に剥がれが生じやすく、印刷加工上にも不便な点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意研究されたものであり、被転写物の表面硬度を向上させることができるハードコート転写箔とその転写箔を用いた成形品とハードコート転写箔の製造方法とを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本願発明の一態様は、支持フィルムと、前記支持フィルムの一方の面に形成された離型層と、前記離型層の、前記支持フィルムと接している面とは反対側の面に形成された、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する表面保護層と、前記表面保護層の、前記離型層と接している面とは反対側に形成された接着層とを少なくとも含むハードコート転写箔において、前記表面保護層と前記接着層との間にフィルム層が形成されていることを特徴とするハードコート転写箔である。
【0006】
上記態様によれば、表面保護層と接着層との間にフィルム層が形成されている。このため、上記態様に係るハードコート転写箔であれば、被転写物が外力によって凹む場合(つまり、下地となる樹脂が軟らかい場合)であっても、フィルム層が補強材の役割を果たすので、この転写箔を転写することで被転写物が凹むのを抑制することができる。その結果、被転写物の表面硬度を向上させることができる。
【0007】
また、本願発明の別の態様は、前記フィルム層は、前記支持フィルムよりも厚みが薄いこととしても良い。
上記態様によれば、支持フィルムの厚さは、フィルム層の厚さよりも厚くなっている。このため、上記態様に係るハードコート転写箔であれば、フィルムインサート成形した場合に、支持フィルムがフィルム層を保護することができるので、フィルム層が破断される割合を小さくすることができる。
【0008】
また、本願発明の別の態様は、前記フィルム層は、所定の寸法に切り込みが施されていることとしても良い。
上記態様によれば、フィルム層には、所定の寸法に切り込みが施されている。このため、上記態様に係るハードコート転写箔であれば、成形品の端部に転写された余分な転写箔を簡単に切り離すことができる。
【0009】
また、本願発明の別の態様は、前記フィルム層は、表面に所定の加飾が施されたフィルム層であり、前記フィルム層と前記表面保護層とを貼合することによって製造されたこととしても良い。
上記態様によれば、フィルム層と表面保護層とを貼合しているので、表面保護層上にフィルム層や加飾層などを順次積層して転写箔を製造する場合と比較して、工程ロスによる損失を小さくすることができる。
【0010】
また、本願発明の別の態様は、前記フィルム層は、屈折率の異なる材料が複数積層されて形成された多層フィルムであることとしても良い。
上記態様によれば、フィルム層は、屈折率の異なる材料が複数積層されて形成された多層フィルムとなっている。このため、上記態様に係るハードコート転写箔であれば、例えば、見る角度を変化させることでカラーシフトするため、意匠性を高めることができる。
【0011】
また、本願発明の別の態様は、上記態様のハードコート転写箔が、射出成形または加熱転写によって転写されたことを特徴とする成形品である。
上記態様によれば、上述したハードコート転写箔を用いて、射出成形または加熱転写をしている。このため、上記態様に係る成形品であれば、その表面硬度は向上したものとなる。
【0012】
また、本願発明の別の態様は、支持フィルムの一方の面に離型層を形成する工程と、形成された前記離型層の、前記支持フィルムが形成された面とは反対側の面に、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する表面保護層を形成する工程と、上記各層とは別のフィルム層と前記表面保護層とをプライマー層を挟んで貼合する工程と、貼合された前記フィルム層の、前記プライマー層が形成された側とは反対側に接着層を形成する工程とを含むことを特徴とするハードコート転写箔の製造方法である。
【0013】
上記態様によれば、表面保護層と接着層との間にフィルム層を形成することができる。このため、上記態様で製造されたハードコート転写箔であれば、被転写物が外力によって凹む場合(つまり、下地となる樹脂が軟らかい場合)であっても、フィルム層が補強材の役割を果たすので、この転写箔を転写することで被転写物が凹むのを抑制することができる。このため、被転写物の表面硬度を向上させたハードコート転写箔を製造することができる。
【0014】
また、上記態様によれば、フィルム層と表面保護層とをプライマー層を挟んで貼合することで、表面保護層と接着層との間にフィルム層を形成している。このため、上記態様に係るハードコート転写箔の製造方法であれば、表面保護層上にフィルム層や加飾層などを順次積層して転写箔を製造する場合と比較して、工程ロスによる損失を低減したハードコート転写箔を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、従来の表面保護層を有する転写箔に比較して、被転写物の表面硬度を容易に向上させることができる。また、加飾転写箔では加工が難しかった加飾表現も容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るハードコート転写箔の断面図。
【図2】ハーフカット工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(ハードコート転写箔)
以下、本発明の実施形態に係るハードコート転写箔について、図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るハードコート転写箔12の断面図である。図1に示すように、転写箔12は、支持フィルム1と、離型層2と、表面保護層3と、プライマー層4と、第1加飾層5と、フィルム層6と、第2加飾層7と、接着層8とを有する積層体である。ここで、離型層2は、支持フィルム1の一方の面に形成されている。そして、表面保護層3は、離型層2の、支持フィルム1が形成された面とは反対側の面に形成されている。そして、プライマー層4は、表面保護層3の、離型層2が形成された面とは反対側の面に形成されている。そして、第1加飾層5は、プライマー層4の、表面保護層3が形成された面とは反対側の面に形成されている。そして、フィルム層6は、第1加飾層5の、プライマー層4が形成された面とは反対側の面に形成されている。そして、第2加飾層7は、フィルム層6の、第1加飾層5が形成された面とは反対側の面に形成されている。そして、接着層8は、第2加飾層7の、フィルム層6が形成された面とは反対側の面に形成されている。
なお、必要がない場合には、第1加飾層5や第2加飾層7を省略することも可能である。以下、ハードコート転写箔12の各層について説明する。
【0018】
基材フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム、セロファンフィルム、アクリルフィルムといった基材が使用可能である。使用可能なフィルム厚みとしては、25μm〜150μmであるが、好ましくは、38μm〜50μmである。
【0019】
離型層2は、後述する表面保護層3からの剥離性が最も重要であるが、耐熱性、耐溶剤性、延伸性も必要とされるので、硬化系の樹脂であることが好ましい。このため、離型層2としては、例えば、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸セルロースなどの硬化物が使用可能である。離型層2の厚みは、特に制限が無いが、0.1μm〜3μmが最適である。
【0020】
表面保護層3は、転写前はタックフリー状態であり、被転写物に転写後、紫外線やエレクトロンビームを照射することで架橋できる樹脂からなるものが好ましい。転写後に架橋する理由としては、この転写箔12は、射出成形や加熱転写法で使用されることが多いが、予め架橋すると転写の延伸時にクラックが生じやすく、外観不良となるためである。転写前にタックフリー性を実現する方法としては、主に以下の3つの方法がある。第1の方法としては、高分子型のアクリレートやメタクリレートを使用する方法である。第2の方法としては、イソシアネート/ポリオール樹脂やエポキシ樹脂/アミン類などの架橋系で少し硬化させてタックフリーとする方法である。第3の方法は、紫外線やエレクトロンビームを僅かに照射して半硬化状態にする方法である。
【0021】
本実施形態において、紫外線硬化樹脂とは、紫外線(UV)によって硬化する樹脂をいう。代表的なラジカル重合反応する樹脂は、分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するアクリル樹脂であり、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリオールアクリレート系のオリゴマー、ポリマーと単官能・2官能・あるいは多官能重合性(メタ)アクリル系モノマー、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレート、2ーヒドロキシエチルアクリレート、2ーヒドロキシー3ーフェノキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートなどのモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの混合物である。そして、本実施形態においては、これらの樹脂を使用することができる。中でも溶剤乾燥のみでタックフリーを実現するには、分子量5000〜300000程度のウレタンアクリレートやアクリルアクリレートが良い。エレクトロンビームで硬化させる際は、上記樹脂のみで硬化架橋するが、紫外線で架橋硬化させるためには紫外線重合開始剤を0.5重量%〜10重量%添加する必要がある。また、諸物性を向上させるため、レベリング剤、ワックス、シリカ微粒子等を添加しても構わない。
【0022】
また、表面保護層3の厚みは、3μm〜10μmが最適である。
プライマー層4は、表面保護層3と第1加飾層5またはフィルム層6との密着を保つ為の層であり、ポリエステルポリオールやアクリルポリオールなどのポリオール樹脂及び/または、水酸基含有塩酢ビ樹脂など水酸基含有の樹脂とポリイソシアネートからなる樹脂であることが好ましい。
【0023】
また、プライマー層4の厚みは、特に制限はないが、0.5μm〜10μmが最適である。
第1加飾層5及び第2加飾層7は、特に材料的な違いはないが、本実施形態で採用可能な加飾技術としては、色インキによる一般印刷は勿論のこと、パールや蛍光、ミラー、再帰反射、磁気印刷などの特殊印刷、熱や紫外線によって凹凸構造(各種レンズ効果やホログラム)を形成するエンボス加工、アルミニウムや銀、クロム、酸化チタン、硫化亜鉛などを真空蒸着やスパッタによって形成する薄膜形成技術を採用することが可能である。
【0024】
第1加飾層5や第2加飾層7は材料コストが高い場合が多く、表面保護層3の形成もコストが高い場合が多い。このため、表面保護層3が積層された支持フィルム1上に順に加飾層を積層していくと、工程ロスによる損失が大きくなってしまう場合がある。そこで、表面保護層3は離型層2を挟んで支持フィルム1上に、また、第1加飾層5及び第2加飾層7は第2フィルム上に、それぞれ予め形成しておき、プライマー層4でお互いを貼合する方法が本実施形態では望ましい製造方法である。
フィルム層6としては、硬度が比較的高いフィルムが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セロファンフィルム、アクリルフィルムといった基材が最適である。
【0025】
また、フィルム層6の厚みとしては、厚いと箔切れ性が悪くなり、薄いと表面硬度向上効果が少ないので、好ましくは3μm〜25μmの間であり、さらに最適な領域は12μm〜16μmである。このように、フィルム層6は、支持フィルム1よりも膜厚が薄くなっている。
また、意匠性向上のために、屈折率の異なる材料(例えば、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレート)を共押出しで、交互に数百層重ねたフィルムを代用することも可能である。この積層フィルムは、金属光沢や見る角度を変化させることでカラーシフトするため意匠性は高い。しかし、従来のフィルムインサート成形(このフィルムを成形金型に挿入し一体成形する成形方法)では、意匠が施されたフィルムが破断してしまい使用不可能であった。一方、本実施形態の場合、厚手の支持フィルム1で保護されるため、このような薄手の高意匠性フィルムが使用可能である。
【0026】
接着層8としては、公知のヒートシール性接着剤または粘着剤を使用できる。例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、塩酢ビ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などがあげられる。接着層の厚みとしては、0.5μm〜10μmの範囲が最適である。
【0027】
ここで、本実施形態に係る転写箔12をインモールド成形(金型内に転写箔を挿入しておき、成形と同時に転写する方法)や加熱転写で使用する際には、バリが問題になることがある。フィルム層6が薄い場合には、問題にならないことも多いが、厚くなるに従い、バリが大きくなる。このため、転写前に図2に示すように、予めハーフ抜き型(腐食刃9)などで所定の切り込み(ハーフカット)を行うことで、転写箔12にハーフカット溝13を形成することで、バリの発生を無くすことが可能となる。
【0028】
また、フィルム層6を含まない転写箔は、成形品の端部に転写された余分な転写箔を簡単に切り離すことができる。一方、フィルム層6を含む転写箔は、このフィルム層6により、フィルム層6を含まない転写箔の場合と比較して、機械的強度が向上している。このため、成形品の端部に転写された余分な転写箔を簡単に切り離すことができない。そこで、例えば、成形品の外形に合わせた形状のハーフカット溝13を入れておくことで、フィルム層6を含む転写箔であっても、成形品の端部に転写された余分な転写箔を簡単に切り離すことができる。
なお、図2は、転写箔12にハーフカット溝13を入れる様子を示した図である。以下、転写箔12にハーフカット溝13を入れる工程を簡単に説明する。
【0029】
図2に示すように、転写箔12の接着層8側にはマグネットシリンダー10が配置されており、転写箔12の支持フィルム1側には台座ロール11が配置されている。そして、転写箔12は、転写箔12の両面からマグネットシリンダー10と台座ロール11とで挟まれている。マグネットシリンダー10の外周面には、所定の形状で腐食刃9が配置されているおり、マグネットシリンダー10と台座ロール11とは、それぞれ図中の矢印で示すように回転可能である。この結果、マグネットシリンダー10と台座ロール11とが回転することで、転写箔12は矢印で示す方向に移動しつつ、転写箔12の接着層8側にはハーフカット溝13が形成される。
【0030】
以上のように、本実施形態に係るハードコート転写箔12によれば、表面保護層3と接着層8との間にフィルム層6が形成されている。このため、本実施形態に係るハードコート転写箔12であれば、被転写物が外力によって凹む場合(つまり、下地となる樹脂が軟らかい場合)であっても、フィルム層6が補強材の役割を果たすので、この転写箔12を転写することで被転写物が凹むのを抑制することができる。その結果、被転写物の表面硬度を向上させることができる。
【0031】
(ハードコート転写箔の製造方法)
次に、本実施形態に係るハードコート転写箔12の製造方法について、簡単に説明する。
まず、支持フィルム1の一方の面に離型層2を形成する。次に、この離型層2の、支持フィルム1が形成された面とは反対側の面に、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する表面保護層3を形成する。次に、上記各層とは別のフィルム層6と表面保護層3とをプライマー層4を挟んで貼合する。次に、フィルム層6の、プライマー層4が形成された側とは反対側に接着層8を形成する。こうすることで、本実施形態に係るハードコート転写箔12を製造することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係るハードコート転写箔12の製造方法によれば、表面保護層3と接着層8との間にフィルム層6を形成することができる。このため、本実施形態で製造されたハードコート転写箔12であれば、被転写物が外力によって凹む場合であっても、フィルム層6が補強材の役割を果たすので、この転写箔12を転写することで被転写物が凹むのを抑制することができる。このため、被転写物の表面硬度を向上させたハードコート転写箔12を製造することができる。
【実施例】
【0033】
支持フィルム1である、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製G440E50)上に、グラビア法でアクリルメラミン樹脂(日立化成ポリマー製テスファイン)をDry0.2μm厚で形成して離型層2を得た。ここで、「Dry0.2μm厚」とは、乾燥時に0.2μm厚になるということを意味している。これと同様に、以下に記載される「Dry○○μm厚」とは、乾燥時に○○μm厚になるということを意味している。
続いて、離型層2上に、リバースグラビア法でタックフリー性紫外線硬化樹脂(DIC製RC29−117)をDry5μm厚で塗布して表面保護層3を形成した。
【0034】
次に、フィルム層6である、13μm厚の多層フィルム(帝人デュポン製スペクトロフィルムNo13)に所定のカラー印刷を施し、第1加飾層5及び第2加飾層7を形成した。
次に、第1加飾層5上にプライマー層4(密着層)を形成した。プライマー層4として、ポリエステルポリオール/イソシアネート系インキ(東洋インキ製TM−595)をグラビア法でDry2μm厚塗布後、前述の表面保護層3と100℃で熱ラミネートした。
続いて、第2加飾層7上に、ポリエステル樹脂(バイロン200)をトルエン及びメチルエチルケトンに溶かしたインキをグラビア法でDry1μm厚塗布して、接着層8を形成した。
【0035】
次に、所定デザインの腐食刃9をロータリーダイ方式で所定の寸法にハーフカットを行い、本実施形態のハードコート転写箔12を得た。
続いて、射出成形機の金型内部にこのハードコート転写箔12をセットして、ポリカーボネイト樹脂で射出成形を行い、本実施形態の転写箔12が転写された成形品を得た。
【比較例】
【0036】
支持フィルム1である、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製G440E50)上に、グラビア法でアクリルメラミン樹脂(日立化成ポリマー製テスファイン)をDry0.2μm厚で形成して離型層2を得た。
続いて、リバースグラビア法でタックフリー性紫外線硬化樹脂(DIC製RC29−117)をDry5μm厚で塗布して表面保護層3を形成した。
【0037】
次に、プライマー層4(密着層)として、ポリエステルポリオール/イソシアネート系インキ(東洋インキ製TM−595)をグラビア法でDry2μm厚塗布、所定のカラー印刷を施し、加飾層を形成した。
続いて、加飾層上に、接着層8としてポリエステル樹脂(バイロン200)をトルエン及びメチルエチルケトンに溶かしたインキをグラビア法でDry1μm厚塗布して、比較例に係る転写箔を得た。このように、比較例に係る転写箔は、フィルム層6を含んでいない点以外は、実施例の転写箔と同じ構造である。
続いて、射出成形機の金型内部にこのハードコート転写箔をセットして、ポリカーボネイト樹脂で射出成形を行い、この転写箔が転写された成形品を得た。
【0038】
(評価)
実施例及び比較例で得た成形品を鉛筆硬度試験(JIS K5600−5−4)で硬度評価したところ、実施例の成形品はHであり、比較例の成形品はHBであった。なお、硬度評価において、「H」は「HB」よりも硬度が高いことを意味している。
また、実施例の成形品は青みを帯びた金属光沢をしており、意匠性が優れる外観を示していた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により得られた転写箔は、家電製品、住宅機器、事務機器、自動車部品などに利用されるパネル部材等の耐キズ防止対策及び加飾に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…支持フィルム、2…離型層、3…表面保護層、4…プライマー層
5…第1加飾層、6…フィルム層、7…第2加飾層、8…接着層
9…腐食刃、10…マグネットシリンダー、11…台座ロール、
12…転写箔(被カット物)、13…ハーフカット溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムと、
前記支持フィルムの一方の面に形成された離型層と、
前記離型層の、前記支持フィルムと接している面とは反対側の面に形成された、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する表面保護層と、
前記表面保護層の、前記離型層と接している面とは反対側に形成された接着層とを少なくとも含むハードコート転写箔において、
前記表面保護層と前記接着層との間にフィルム層が形成されていることを特徴とするハードコート転写箔。
【請求項2】
前記フィルム層は、前記支持フィルムよりも厚みが薄いことを特徴とする請求項1に記載のハードコート転写箔。
【請求項3】
前記フィルム層は、所定の寸法に切り込みが施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハードコート転写箔。
【請求項4】
前記フィルム層は、表面に所定の加飾が施されたフィルム層であり、
前記フィルム層と前記表面保護層とを貼合することによって製造されたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のハードコート転写箔。
【請求項5】
前記フィルム層は、屈折率の異なる材料が複数積層されて形成された多層フィルムであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のハードコート転写箔。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載のハードコート転写箔が、射出成形または加熱転写によって転写されたことを特徴とする成形品。
【請求項7】
支持フィルムの一方の面に離型層を形成する工程と、
形成された前記離型層の、前記支持フィルムが形成された面とは反対側の面に、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する表面保護層を形成する工程と、
上記各層とは別のフィルム層と前記表面保護層とをプライマー層を挟んで貼合する工程と、
貼合された前記フィルム層の、前記プライマー層が形成された側とは反対側に接着層を形成する工程とを含むことを特徴とするハードコート転写箔の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−59889(P2013−59889A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198780(P2011−198780)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】