説明

ハーネスクリップ

【課題】ワイヤハーネスを良好な作業性をもって適正に固定することができるハーネスクリップを提供すること。
【解決手段】ハーネスクリップ20は本体21と取付部31とを備えており、本体21と取付部31とはリーフスプリング材が使用されて一体的に形成されている。本体21はワイヤハーネス1を把持する把持部22と、ワイヤハーネス1を把持部22に導入する導入部23と、ワイヤハーネス1を把持部22へリーフスプリング材の弾性力によって付勢する付勢部24と、を備えている。ハーネスクリップ20をブレーキドラム10の指定位置に予め固定する。ワイヤハーネス1の胴部を付勢部24に当てがって付勢部24に抗して押し、ワイヤハーネス1胴部を導入部23を潜らせて把持部22に落とすと、ワイヤハーネス1はハーネスクリップ1によって把持された状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネスクリップに関する。
例えば、自動車のブレーキドラムに敷設されるワイヤハーネスを固定するのに利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキドラムには、車軸の回転数を測定する回転センサ等のためのワイヤハーネスが敷設されており、このワイヤハーネスを固定するのにハーネスクリップが使用されている。
【0003】
従来のこの種のハーネスクリップとしては、次のものがある。
(1)ハーネス保持用バンドによってワイヤハーネスを保持するとともに、クリップを取付孔に固定するもの(例えば、特許文献1参照)。
(2)塑性材料からなる保持用金具をねじ止めしておき、保持用金具を塑性変形させてワイヤハーネスを固定するもの。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−8102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記したハーネスクリップには、それぞれ次のような問題点がある。
(1)ワイヤハーネスを保持用バンドによって保持する際に、保持用バンドをワイヤハーネスに巻き付けたり挿通したりする作業が必要になるので、作業性が低い。
(2)保持用金具を塑性変形させる必要があるために、作業性が低いばかりでなく、保持の品質にばらつきが発生する。
【0006】
本発明の目的は、ワイヤハーネスを良好な作業性をもって適正に固定することができるハーネスクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)本体と取付部とを備えており、前記本体は、ワイヤハーネスを把持する把持部と、前記ワイヤハーネスを前記把持部に導入する導入部と、前記ワイヤハーネスを前記把持部へ弾性によって付勢する付勢部と、を備えているハーネスクリップ。
(2)前記本体と前記取付部とが弾性を有する材料によって一体的に形成されている(1)のハーネスクリップ。
【発明の効果】
【0008】
このハーネスクリップによれば、ワイヤハーネスを良好な作業性をもって適正に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)はその使用状態を示す正面図、(b)は(a)のb−b線に沿う側面断面図、(c)は(b)の正面図、(d)はワイヤハーネス把持途中を示す側面断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)は側面断面図、(b)は正面図、(c)はワイヤハーネス把持途中を示す側面図である。
【図3】本発明の第三実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)は側面断面図、(b)は正面図、(c)はワイヤハーネス把持途中を示す側面図である。
【図4】本発明の第四実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)は側面断面図、(b)は正面図、(c)はワイヤハーネス把持途中を示す側面図である。
【図5】本発明の第五実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)は側面断面図、(b)は正面図、(c)はワイヤハーネス把持途中を示す側面図である。
【図6】本発明の第六実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)は側面断面図、(b)は正面図、(c)はワイヤハーネス把持途中を示す側面図である。
【図7】本発明の第七実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)は側面断面図、(b)は正面図、(c)はワイヤハーネス把持途中を示す側面図である。
【図8】本発明の第八実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)は正面図、(b)は左側面断面図、(c)は右側面図である。
【図9】本発明の第九実施形態であるハーネスクリップを示しており、(a)は正面図、(b)は左側面断面図、(c)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
【0011】
図1は本発明の第一実施形態を示している。
本実施形態において、本発明に係るハーネスクリップは、車軸の回転数を測定する回転センサ等のためのワイヤハーネスを自動車のブレーキドラムに固定するのに使用されている。すなわち、図1(a)に示されているように、ブレーキドラム10にはワイヤハーネス1を固定するためのハーネスクリップ20が2個、所定の箇所に固定されている。
【0012】
ハーネスクリップ20は本体21と取付部31とから構成されており、弾性を有する材料であるリーフスプリング材が使用されて一体的に形成されている。すなわち、ハーネスクリップ20は矩形形状のリーフスプリング材がプレス加工によって図1(b)に示された形状に屈曲されることにより形成されている。
本体21はワイヤハーネス1を把持する把持部22と、ワイヤハーネス1を把持部22に導入する導入部23と、ワイヤハーネス1を把持部22へ弾性によって一方向に付勢する付勢部24とを備えている。把持部22はチャンネル(溝)型鋼形状に形成されており、その内径は断面円形形状のワイヤハーネス1の外径と略等しい寸法に設定されている。導入部23は把持部22の一方の開口縁辺部に形成されており、導入部23の把持部22の底面からの高さは、ワイヤハーネス1の外径よりも小さく設定されている。付勢部24は本体21をU字形状に屈曲されて形成されており、把持部22に把持されたワイヤハーネス1を一端部によって把持部22の底面に付勢する。
取付部31は把持部22の導入部23と反対側端と、付勢部24の付勢端と反対側端とを連結した部分が折り返されて本体21と一体的に形成されており、取付孔32が厚さ方向に貫通するように開設されている。取付部31は取付孔32にボルト33が挿通されて、ブレーキドラム10のねじ孔11にねじ込まれることにより、ブレーキドラム10に締結される。
【0013】
以上の構成に係るワイヤハーネス1のブレーキドラム10への固定作業を説明する。
図1(a)に示されているように、2個のハーネスクリップ20、20がブレーキドラム10の指定位置にそれぞれ固定される。すなわち、ハーネスクリップ20は取付部31の取付孔32にボルト33が挿通されて、ブレーキドラム10のねじ孔11にねじ込まれることにより、ブレーキドラム10に締結される。
【0014】
その後、図1(d)に示されているように、ワイヤハーネス1の胴部をハーネスクリップ20の付勢部24に当てがって付勢部24の付勢力に抗して押すと、ワイヤハーネス1の胴部は導入部23を潜り抜けて把持部22に落ち込む。ワイヤハーネス1の胴部が把持部22に落ち込むと、付勢部24がワイヤハーネス1を把持部22の底面に付勢するので、ワイヤハーネス1はハーネスクリップ20によって把持された状態になる。
【0015】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。
【0016】
(1)ワイヤハーネスをハーネスクリップによって把持する際に、ワイヤハーネスを付勢部に押し付けるだけで、ワイヤハーネスを把持部に導入部から導入することができるので、ワイヤハーネスをハーネスクリップに挿通したり巻き付けたりする作業を省略することができ、作業性を向上させることができる。
【0017】
(2)ワイヤハーネスを把持部に付勢部によって押し付けることができるので、作業性が高いばかりでなく、把持の品質にばらつきが発生するのを防止することができる。
【0018】
(3)本体と取付部とを弾性を有する材料を使用して一体的に形成することにより、製造コストを低減することができる。
【0019】
図2は本発明の第二実施形態を示している。
本実施形態に係るハーネスクリップ20Aが前記実施形態と異なる点は、本体21Aの構造である。
ワイヤハーネス1を把持する把持部22Aは断面へ字形の弯曲板形状に形成されており、その夾角はワイヤハーネス1の外径に相応する角度に設定されている。ワイヤハーネス1を把持部22Aに導入する導入部23Aは、把持部22Aの一方の開口縁辺部に形成されており、導入部23Aの把持部22A底面からの高さは、ワイヤハーネス1の外径よりも小さく設定されている。ワイヤハーネス1を把持部22Aへ弾性によって一方向に付勢する付勢部24Aは、取付部31からく字形状に屈曲されて形成されており、把持部22Aに把持されたワイヤハーネス1を一端部によって把持部22Aの底面に付勢する。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0020】
図3は本発明の第三実施形態を示している。
本実施形態に係るハーネスクリップ20Bが第一実施形態と異なる点は、本体21Bの構造である。
ワイヤハーネス1を把持する把持部22Bは断面S字形の波板形状に形成されており、ワイヤハーネス1を把持部22Bへ弾性によって一方向に付勢する付勢部24Bは、把持部22Bに鏡面対称形の波板形状に形成されているとともに、把持部22Bに鏡面対称形に対向されている。把持部22Bと付勢部24Bとが形成する楕円形の中空部の短径は、ワイヤハーネス1の外径に相応する寸法に設定されている。ワイヤハーネス1を把持部22Bに導入する導入部23Bは、把持部22Bと付勢部24Bとが形成する開口縁辺部の一方に形成されており、ワイヤハーネス1の外径よりも大きく設定されている。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0021】
図4は本発明の第四実施形態を示している。
本実施形態に係るハーネスクリップ20Cが第一実施形態と異なる点は、本体21Cの構造である。
本体21Cは断面大略W字形の波板形状に形成されている。ワイヤハーネス1を把持する把持部22Cは断面半円形の弯曲板形状に形成されており、その内径はワイヤハーネス1の外径に相応する寸法に設定されている。ワイヤハーネス1を把持部22Cに導入する導入部23Cは、把持部22Cの一方の開口縁辺部から屈曲されており、導入部23Cの把持部22C底面からの高さは、ワイヤハーネス1の外径以下に設定されている。付勢部24Cは取付部31からく字形状に屈曲されて形成されており、把持部22Cを付勢することにより、把持部22Cに把持されたワイヤハーネス1を取付部31の対向面に押し付けるようになっている。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0022】
図5は本発明の第五実施形態を示している。
本実施形態に係るハーネスクリップ20Dが第一実施形態と異なる点は、本体21Dおよび取付部31Dの構造である。
本体21Dは断面大略W字形の波板形状に形成されており、矩形の平板形状に形成された取付部31Dの取付孔32と反対側端に一体的に連設されている。ワイヤハーネス1を把持する把持部22Dは断面半円形の弯曲板形状に形成されており、把持部22Dの内径はワイヤハーネス1の外径に相応する寸法に設定されている。ワイヤハーネス1を把持部22Dに導入する導入部23Dは、把持部22Dの一方の開口縁辺部から屈曲されており、導入部23Dの把持部22D底面からの高さは、ワイヤハーネス1の外径以下に設定されている。付勢部24Dは取付部31Dから略U字形状に180度屈曲されており、把持部22Dを付勢することにより、把持部22Dに把持されたワイヤハーネス1を取付部31Dの対向面に押し付けるようになっている。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0023】
図6は本発明の第六実施形態を示している。
本実施形態に係るハーネスクリップ20Eが第一実施形態と異なる点は、本体21Eおよび取付部31Eの構造である。
本体21Eは断面S字形の波板形状に形成されており、矩形の平板形状に形成された取付部31Eの取付孔32と反対側端に一体的に連設されている。ワイヤハーネス1を把持する把持部22Eは略円筒形状に形成されており、把持部22Eの内径はワイヤハーネス1と略等しく設定されている。ワイヤハーネス1を把持部22Eに導入する導入部23Eは、把持部22Eの一方の開口縁辺部から屈曲されており、本体21EのS字の一部を構成している。付勢部24Eは取付部31Eから略U字形状に180度弯曲されており、把持部22Eを付勢することにより、把持部22Eに把持されたワイヤハーネス1を取付部31Eの対向面に押し付けるようになっている。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0024】
図7は本発明の第七実施形態を示している。
本実施形態に係るハーネスクリップ20Fが第一実施形態と異なる点は、本体21Fおよび取付部31Fの構造である。
本体21Fおよび取付部31Fは断面大略W字形の波板形状に形成されている。取付部31FはW字の一端部を構成しており、中央部には取付孔32が開設されている。ワイヤハーネス1を把持する把持部22Fは断面半円形の弯曲板形状に形成されており、その内径はワイヤハーネス1の外径に相応する寸法に設定されている。ワイヤハーネス1を把持部22Fに導入する導入部23Fは、把持部22Fの一方の開口縁辺部から屈曲されており、導入部23Fの把持部22F底面からの高さは、ワイヤハーネス1の外径以下に設定されている。付勢部24Fは取付部31Fからく字形状に屈曲されており、把持部22Fを付勢することにより、把持部22Fに把持されたワイヤハーネス1をブレーキドラム10の対向面に押し付けるようになっている。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0025】
図8は本発明の第八実施形態を示している。
本実施形態に係るハーネスクリップ20Gが第一実施形態と異なる点は、本体21Gおよび取付部31Gの構造である。
本体21Gと取付部31Gとはリーフスプリング材によって長方形の平板形状に一体的に形成されており、片側半分に本体21Gが、反対側半分に取付部31Gがそれぞれ形成されている。ワイヤハーネス1を把持する把持部22Gは、本体21Gの片側半分が切り起こされて断面へ字形の弯曲板形状に形成されており、把持部22Gの内形はワイヤハーネス1の外径に相応する弯曲面形状に設定されている。ワイヤハーネス1を把持部22Gに導入する導入部23Gは把持部22Gの開口部によって形成されている。把持部22Gから切り分けられた付勢部24Gは、取付部31Gとの境界線から屈曲されており、把持部22Gに把持されたワイヤハーネス1を把持部22Gの底面側に付勢する。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0026】
図9は本発明の第九実施形態を示している。
本実施形態に係るハーネスクリップ20Hが第一実施形態と異なる点は、本体21Hおよび取付部31Hの構造である。
本体21Hと取付部31Hとはワイヤスプリング材によってヘアピン形状に一体的に形成されており、ヘアピン形状の折り返し部によって取付孔32Hが形成されている。ワイヤハーネス1を把持する把持部22Hは、ヘアピンの片方の脚部がへ字形状に屈曲されて形成されており、把持部22Hの内形はワイヤハーネス1の外径に相応するように弯曲されている。ワイヤハーネス1を把持部22Hに導入する導入部23Hは、把持部22Hの開口部によって形成されている。付勢部24Hは他方の脚部の中央部において屈曲されており、把持部22Hに把持されたワイヤハーネス1を把持部22Hの底面側に付勢する。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0028】
例えば、第一実施形態において、把持部は断面正方形のチャンネル(溝)形型鋼形状に形成するに限らず、断面半円形や楕円形のチャンネル形型鋼形状に形成してもよい。
【0029】
本体と取付部とをリーフスプリング材またはワイヤスプリング材によって一体的に形成するに限らず、弾性を有する樹脂によって一体的に形成してもよいし、本体の付勢部を弾性を有する材料によって形成してもよい。
【0030】
取付部はボルトによって締結するように構成するに限らず、リベット等によって締結するように構成してもよいし、溶着や接着等によって固着するように構成してもよい。
【0031】
前記実施形態においては、ワイヤハーネスをブレーキドラムに固定するハーネスクリップについて説明したが、それに限定されるものではなく、本発明はワイヤハーネスを固定するハーネスクリップ全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…ワイヤハーネス、
10…ブレーキドラム、11…ねじ孔、
20…ハーネスクリップ、21…本体、22…把持部、23…導入部、24…付勢部、 31…取付部、32…取付孔、33…ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と取付部とを備えており、前記本体は、ワイヤハーネスを把持する把持部と、前記ワイヤハーネスを前記把持部に導入する導入部と、前記ワイヤハーネスを前記把持部へ弾性によって付勢する付勢部と、を備えているハーネスクリップ。
【請求項2】
前記本体と前記取付部とが弾性を有する材料が使用されて一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハーネスクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−247643(P2010−247643A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98784(P2009−98784)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000174611)埼玉機器株式会社 (4)
【Fターム(参考)】