バイオコークス製造装置
【課題】バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置を提供する。
【解決手段】所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造する装置1であって、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、底板5と、油圧駆動手段7、8により該底板に向けて移動する天板4とを備えるとともに、底板と天板との間に1又は複数の中板6が配置され、底板、天板、中板からなる加圧板が多段に形成され、加圧板の夫々に加熱と冷却の切り替え自在な温度調節手段20が設けられ、各段の加圧板に載置されたバイオマス粉砕物を油圧駆動手段により前記圧力範囲に加圧した状態にて、温度調節手段により前記温度範囲に加熱して一定時間保持した後、冷却するようにした。
【解決手段】所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造する装置1であって、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、底板5と、油圧駆動手段7、8により該底板に向けて移動する天板4とを備えるとともに、底板と天板との間に1又は複数の中板6が配置され、底板、天板、中板からなる加圧板が多段に形成され、加圧板の夫々に加熱と冷却の切り替え自在な温度調節手段20が設けられ、各段の加圧板に載置されたバイオマス粉砕物を油圧駆動手段により前記圧力範囲に加圧した状態にて、温度調節手段により前記温度範囲に加熱して一定時間保持した後、冷却するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特に石炭コークスの代替燃料として効果的に利用可能であるバイオコークスを工業的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO2排出の削減が推進されている。特に、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多いが、この化石燃料は、CO2排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
そこで、化石燃料の代替として、バイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用することができる。
【0003】
バイオマスを燃料化する方法としては、バイオマスを乾燥させて燃料化する方法、加圧して燃料ペレット化する方法、炭化、乾留させて燃料化する方法等が知られている。しかし、バイオマスを乾燥させるのみでは、空隙率が大きくみかけ比重が低くなるため、輸送や貯留が困難であり、長距離輸送や貯留して使用する燃料としては有効とはいえない。
一方、バイオマスを燃料ペレット化する方法は、特許文献1(特公昭61−27435号公報)に開示されている。この方法は、細断された有機繊維材料の含水量を16〜28%に調節し、これをダイス内で圧縮して乾燥し燃料ペレットを製造するようにしている。
また、バイオマスを乾留して燃料化する方法は、特許文献2(特開2003−206490号公報)等に開示されている。この方法は、酸素欠乏雰囲気中において、バイオマスを200〜500℃、好適には250〜400℃で加熱して、バイオマス半炭化圧密燃料前駆体を製造する方法となっている。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−27435号公報
【特許文献2】特開2003−206490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、圧縮成形を行うことによりバイオマスを燃料化しているが、生成した燃料ペレットは水分量が多いため発熱量が低く、燃料としては適していない。
また、特許文献2等に記載されるように乾留によりバイオマスを燃料化する方法では、加工処理を施さないバイオマスに比べると燃料として価値が高いものとなっているが、やはり石炭コークスに比べてみかけ比重が低く、発熱量が低い。さらに、石炭コークスに比べて硬度が低いため、石炭コークスの代替として利用するには不十分である。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
近年、石炭コークスの代替として、バイオコークスが研究されている。
バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後、冷却することにより製造される。加圧、加熱条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲に設定する。これにより以下の反応機構が成立し、高硬度で高発熱量を有するバイオコークスが製造できる。
その反応機構は、上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物のヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、反応容器内に発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できるものである。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0007】
図11に、バイオコークスの物性値を他の燃料と比較した表を示す。尚、この表は実験的に得られた数値を記載しているのみであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
この表に示されるように、バイオコークスは、みかけ比重1.2〜1.38、最高圧縮強度60〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kgの物性値を示す硬度、燃焼性ともに優れた性能を有しており、未加工の木質バイオマスが、みかけ比重約0.4〜0.6、発熱量約17MJ/kg、最高圧縮強度約30MPaであるのと比べると、発熱量及び硬度の点において格段に優れていることが判る。また、石炭コークスの物性値である、みかけ比重約1.85、最高圧縮強度約15MPa、発熱量約29MJ/kgに比しても、バイオコークスは燃焼性、硬度とも遜色ない性能を有する。
従って、バイオコークスは石炭コークスの代替として有効な燃料であるとともに、マテリアル素材としての利用価値も高い。
【0008】
しかし、このバイオコークスは未だ実験段階にとどまっており、反応容器にバイオマス粉砕物を人手で充填して一つの反応容器でバッチ的に製造しているのが実状であった。
そこで本発明は、上記したバイオコークスを効率的に製造する装置を提案する。
【0009】
本発明は、所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
平板状の底板と、油圧駆動手段により該底板に向けて移動する天板とを備えるとともに、前記底板と前記天板との間に1又は複数の平板状の中板が水平方向に配置され、前記底板、前記天板、前記中板からなる加圧板が多段に形成され、前記加圧板の夫々に加熱と冷却の切り替え自在な温度調節手段が設けられており、
各段の加圧板に載置されたバイオマス粉砕物を、前記油圧駆動手段により前記圧力範囲に加圧した状態にて、前記温度調節手段により前記温度範囲に加熱して一定時間保持した後、冷却するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能なバイオコークスを効率的に製造可能である。即ち、底板と天板と中板からなる加圧板と、油圧駆動手段と、加圧板に装備された温度調節手段により一度の大量のバイオマス粉砕物を処理できる構成であるため、バイオコークスを工業的に大量生産することが可能となる。
さらに、加熱と冷却に切り替え自在な温度調節機構を備えることにより、バイオマス粉砕物を加圧した状態で加熱工程と冷却工程を行うことが可能となる。
また、加圧板を垂直方向に複数段設け、油圧駆動手段により各段を同時に加圧する構成としているため、1段にて加圧する構成に比べてプレス圧力を大幅に低減することが可能となり、油圧駆動手段を安価にでき、また製造コストの低減が可能で、生産効率を向上させることができる。さらに、バイオマス粉砕物の加圧面積を小さくすることができるため、原料分散のばらつきの影響を抑えることができ、均一に圧力を加えることが可能となる。さらにまた、装置の設置面積を小さくすることが可能である。
【0011】
また、前記バイオマス粉砕物が載置される前記底板と前記中板の上面周囲に上下動自在の原料サポートリングが配置され、該原料サポートリングは、前記バイオマス粉砕物の供給時には上方に位置し、前記加圧時には前記加圧板に伴い下降動作するようにし、前記バイオコークスの排出時には下方に位置するように構成されることを特徴とする。
このように、加圧板の周囲に上下動自在の原料サポートリングを配置した構成とすることにより、バイオマス粉砕物が周囲にこぼれ落ちることを防止し、均一な加圧が達成できる。
【0012】
さらに、前記底板と前記中板上に前記バイオマス粉砕物を供給する原料供給ユニットを備え、該原料供給ユニットは垂直方向及び水平方向に自在に移動可能で、垂直方向に移動して前記加圧板の各段に順次バイオマス粉砕物を供給するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、一の原料供給ユニットにて各段へバイオマス粉砕物を供給することができるようになり、装置の部品点数を削減でき、コスト低減が可能となる。
【0013】
さらにまた、前記各段の加圧板間には夫々開放用油圧駆動手段が設けられ、バイオコークスの反応終了時に、該開放用油圧駆動手段により各段の加圧板を上昇させるようにしたことを特徴とする。
この構成により、反応終了時に加圧板の各段を確実に開放することができ、バイオコークスを円滑に排出することが可能となる。
【0014】
また、前記温度調節手段として、前記加圧板内に熱媒若しくは冷媒が通流する冷熱媒配管が形成され、前記加圧板のうち前記中板には、前記冷熱媒配管が上面近傍及び下面近傍に設けられるとともに、これらの冷熱媒配管の間に断熱層を形成したことを特徴とする。
このように、前記冷熱媒配管を上面近傍及び下面近傍のみに設け、その間に断熱層を介在させることにより、熱効率を向上させることができる。
【0015】
また、前記加圧板の表面に、剥離材をコーティングしたことを特徴とする。
これにより、製造したバイオコークスが加圧板に張り付くことを防止し、バイオコークスの円滑な排出が可能となる。
さらにまた、前記天板及び前記中板の下面側に、所定の模様を成すように線状に突出させた押し型を形成したことを特徴とする。
このように加圧板の下面に押し型を形成することにより、バイオコークスが加圧板に張り付くことを防止し、バイオコークスの円滑な排出が可能となるとともに、排出された大径のバイオコークスに前記模様に沿った溝が形成されているため、所定の大きさに切断することが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量を有するバイオコークスを、効率的に大量生産することが可能となる。
また、加熱と冷却に切り替え自在な温度調節機構を備えることにより、バイオマス粉砕物を加圧した状態で加熱工程と冷却工程を行うことが可能となる。
さらに、加圧板を垂直方向に複数段設け、油圧駆動手段により各段を同時に加圧する構成としているため、1段にて加圧する構成に比べてプレス圧力を大幅に低減することが可能となり、油圧駆動手段を安価にでき、また製造コストの低減が可能で、生産効率を向上させることができる。さらにまた、バイオマス粉砕物の加圧面積を小さくすることができるため、原料分散のばらつきの影響を抑えることができ、均一に圧力を加えることが可能となる。また、装置の設置面積を小さくすることが可能となる。
【0017】
また、加圧板周囲に原料サポートリングを配置することにより、バイオマス粉砕物が周囲にこぼれ落ちることを防止し、均一な加圧が達成できる。
さらに、バイオマス粉砕物を供給する原料供給ユニットを垂直方向及び水平方向に自在に移動可能とすることにより、一の原料供給ユニットで各段へ均一にバイオマス粉砕物を供給することができ、装置の部品点数を削減し、コスト低減が可能となる。
さらにまた、加圧板間に夫々開放用油圧駆動手段を設けることにより、反応終了時に加圧板の各段を確実に開放することができ、バイオコークスを円滑に排出することが可能となる。
【0018】
また、温度調節手段として冷熱媒配管を形成するとともに、中板の冷熱媒配管を上面近傍及び下面近傍のみに設け、その間に断熱層を介在させることにより、熱効率を向上させることができる。
さらに、加圧板の表面に剥離材をコーティングすることにより、製造したバイオコークスが加圧板に張り付くことを防止し、バイオコークスの円滑な排出が可能となる。
さらにまた、天板及び中板の下面側に押し型を形成することにより、バイオコークスが加圧板に張り付くことを防止し、バイオコークスの円滑な排出が可能となるとともに、排出された大径のバイオコークスに前記模様に沿った溝が形成されているため、所定の大きさに切断することが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成図、図2は図1のバイオコークス製造装置のA−A線断面図、図3は原料サポートリングの動作を説明する図、図4は冷熱媒配管の配置構成の一例を示す平面図、図5は冷熱媒配管の側断面図、図6は断熱層を介在させた場合の中板の側断面図、図7は鋳ぐるみ成形に適した金属材料の物性値を示すグラフ、図8は本実施例の冷熱媒回路を含む機器系統図、図9は天板及び中板の他の一例を示す側断面図、図10は押し型を示す平面図である。
本実施例において、バイオコークスの原料となるバイオマスは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスであり、例えば、廃木材、間伐材、剪定枝、植物、農業廃棄物、コーヒー粕や茶粕等の厨芥廃棄物等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
本実施例では、バイオマスを予め所定の含水率になるように水分調整するとともに、所定粒径以下まで粉砕する前処理を行ったバイオマス粉砕物を原料としている。
本実施例のバイオコークス装置は、このバイオマス粉砕物を所定の圧力、温度条件にて加圧、加熱して一定時間保持した後、冷却することによりバイオコークスを製造するものである。上記した圧力、温度条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲とする。即ち、前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲である。
【0021】
まず、図1を参照して、本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成を説明する。
バイオコークス製造装置1の主要構成は、上フレーム2と、下フレーム3と、該上フレーム2に固定された天板4と、該下フレーム3に固定された底板5と、前記天板4と底板5の間に水平に配設された1又は複数の中板6と、前記上フレーム2と下フレーム3との間に介在された主加圧シリンダ7と、天板4と中板6の間及び中板6間及び中板6と底板5の間に夫々介在された開放シリンダ8と、中板6及び底板5の周囲に配設された原料サポートリング9と、中板6又は底板5に原料を供給する原料供給ユニット10と、製造されたバイオコークスを排出する製品押出ユニット15と、天板4、底板5、中板6に組み込まれ、熱媒体によりこれらの板を加熱又は冷却する温度調節機構(冷熱媒配管)20と、からなる。尚、以下において天板4、底板5、中板6を加圧板と総称する。
【0022】
前記下フレーム3は床面に固定され、さらに下フレーム3の上面には底板5が固定されている。前記下フレーム3に対して主加圧シリンダ7を介して固定される上フレーム2には天板4が固定されており、天板4と底板5の間には、夫々開放シリンダ8を介して所定距離隔てて中板6が水平に設置されている。天板4、底板5、中板6からなる加圧板は夫々同軸上に配設され、水平断面は円形状、方形状等の何れでもよいが、円形状に形成されることが好ましい。
【0023】
前記主加圧シリンダ7は、不図示の油圧駆動回路により上下動自在に制御され、原料加圧時に所定の圧力にて加圧板間の原料を加圧するようになっている。尚、該主加圧シリンダ7は、原料供給時及び製品搬出時には伸張して前記各加圧板間を開放するように作動される。
前記開放シリンダ8も同様に不図示の油圧駆動回路により上下動自在に制御され、原料を加圧成型後、夫々の加圧板間を開放するために伸張される。尚、該開放シリンダ8は、原料供給時には伸張状態に維持され、原料加圧成型時には圧縮方向に加圧される。
また、これらのシリンダ7、8は、図2のA−A線断面図に示されるように、底板5又は中板6の直径延長線上に、該板を挟んで夫々2本設けることが好ましいが、原料を均一に加圧でき且つ原料の供給、排出を阻害しない位置であれば、その位置及び本数は限定されない。
【0024】
前記原料供給ユニット10は、原料であるバイオマス粉砕物が投入される粉砕物ホッパ11と、該粉砕物ホッパ11から所定量ずつバイオマス粉砕物を供給するスクリューフィーダ12と、該スクリューフィーダを駆動するモータ13とから構成される。尚、図示されないが本実施例では、粉砕物ホッパ11より上流側に、バイオマス原料を所定の含水率に水分調整するとともに所定粒径以下まで粉砕する前処理装置と、製造された大径のバイオコークスを所望の大きさまで破砕する破砕装置と、を備えることが好ましい。
また、この原料供給ユニット10は、垂直方向及び水平方向に移動自在に構成される。これは、原料供給時にスクリューフィーダ12の先端部から加圧板上に原料を落下させる構成となっているが、一の加圧板上への原料の供給を終了したら垂直方向に該ユニット10を移動し、他の加圧板上へ原料の供給を行い、順次原料を供給していく。また、原料が加圧板上に出来るだけ均一に載置されるように、原料供給ユニット10は水平方向にも移動するようになっている。
【0025】
前記製品押出ユニット15は、水平方向に移動自在に構成され、原料を加圧成型した後に製造されたバイオコークスを、加圧板上から装置外へ押出す機能を有する。該製品押出ユニット15は、バイオコークス製品の形状に沿った形状を有し、的確に搬送コンベア上に製品を押出せるように構成することが好ましい。例えば製品の形状が円盤状である場合は、製品押出ユニット15の押出部はさすまた状に形成されるとよい。この製品押出ユニット15は、各段に夫々一基ずつ設置してもよいし、押出ユニット15を垂直方向に移動可能とし、一基のユニット15により各段の製品を順次押出すようにしてもよい。
【0026】
前記原料サポートリング9は、円環状に形成されており、中板6及び底板5の上面周囲に配置される。また該原料サポートリング9は油圧により上下動自在に構成されており、中板6及び底板5上に供給された原料が周囲にこぼれ落ちることを防止する機能を有する。また、該原料サポートリング9は上下動自在に構成され、原料供給時には図3(A)に示されるように底板5及び中板6の上面から上方に突出する状態に維持され、加圧成型時には、原料サポートリング9にかかる油圧をフリーの状態にし加圧面に密接して自由に動くようにし、製品押出時には図3(B)に示されるように該原料サポートリング9を底板5及び中板6の上面より下方に位置するように下降させる。
【0027】
前記天板4、底板5、中板6からなる加圧板は、熱伝導性が高い金属材料で形成され、これらの加圧板の内部には温度調節機構である冷熱媒配管20が配設されている。該冷熱媒配管20は、原料の加圧面近傍に配設され、該原料に対して均一に加熱、冷却が行えるような配置構成とすることが好ましい。好適には、図4に示すように、前記冷熱媒配管20を渦巻き状に形成する。
また、中板6については、上面及び下面ともに原料の加圧面となるため、図5に示すように上面側と下面側に冷熱媒配管20が分岐するように配設している。
【0028】
これらの冷熱媒配管20は、鋳ぐるみ成形により製造することが好ましい。これは、鋳込金属と同種又は異種の金属材料からなる被鋳ぐるみ部材(冷熱媒配管)を鋳型の中に配置しておき、溶融又は半溶融状態の鋳込金属(加圧板)を鋳型に充填し、鋳込金属と被鋳ぐるみ部材を溶着させて一体化する方法である。被鋳ぐるみ部材となる冷熱媒配管20には、加圧板に用いられる金属材料より高い融点を有する金属材料を用いることで、配管の空洞を残したまま加圧板を成形することが可能となる。図7に示すように、被鋳ぐるみ部材に鋼管(SPG鋼管等)を用いた場合、鋼管に比べて融点が低く鋳ぐるみ可能な材料としてリン青銅、アルミ青銅、真鍮、銅等が好適に用いられる。
【0029】
さらに本実施例では、中板6において、上面と下面の間に断熱層22を設けることが好ましい。該断熱層22は、空気層としてもよいし、断熱材料からなる層としてもよい。この断熱層22は、例えば上記した鋳ぐるみ成形により空気層を形成したり、或いは鋳ぐるみにより形成した空気層に、外部から断熱材を注入したりすることにより設けられる。
【0030】
前記冷熱媒配管20には、原料の加熱時には熱媒が供給され、冷却時には冷媒が供給される。各段の冷熱媒配管20は、図8に示すような冷熱媒回路40に接続される。
冷熱媒回路40は、熱媒を加熱する加熱タンク41を備えた熱媒回路と、冷媒を冷却する冷媒タンク45と冷媒熱交換器46を備えた冷媒回路とからなる。そして、加熱時には、熱媒回路により所定温度まで加熱された熱媒を加圧板に供給し、冷却時には、この熱媒回路から冷媒回路に切り替えて、該冷媒回路により所定温度まで冷却された冷媒を各加圧板に供給する。
【0031】
ここで、図8を参照して、本実施例の冷熱媒回路40の一例につき説明する。本実施例のバイオコークス製造装置では、加圧板の加熱と冷却を切り替える手段を具備した温度調節機構が必須構成となる。従って、図8に示すような冷熱媒回路を設けることにより、熱効率が高く且つ安全性の高い温度調節手段とすることができる。
冷熱媒としては水/水蒸気、シリコンオイル等が好適に用いられる。
【0032】
本実施例にて、加圧板の冷熱媒入口と出口は、同図に示される冷熱媒回路40に夫々接続されている。該冷熱媒回路40は、冷媒回路と熱媒回路とが組み合わされた構成となっている。冷熱媒出口は、冷熱媒排出ライン51に接続され、該排出ライン51上の三方バルブ55を介して熱媒戻りライン52と、冷媒戻りライン53に分岐している。
熱媒戻りライン52は熱媒タンク41に接続されている。該熱媒タンク41は、加熱器41aと、撹拌機41bを具備しており、冷却された熱媒を昇温するようになっている。必要に応じてN2ボンベからN2ガスが供給されるようにし、タンク内を不活性雰囲気に保持して安全性を確保することが好ましい。熱媒タンク41の出口側は、三方バルブ56を介して冷熱媒供給ライン50に接続されている。
このような構成を用いて、加圧板の加熱時には、三方バルブ55、56により熱媒タンク41側に熱媒が循環するようにし、熱媒タンク41、冷熱媒供給ライン50、冷熱媒通路、冷熱媒排出ライン51、熱媒戻りライン52からなる熱媒回路を形成する。
【0033】
冷媒戻りライン53は、冷媒熱交換器46に接続されている。該冷媒熱交換器46は、上水等の冷却水と冷媒とを熱交換し、冷媒を冷却する構成となっている。
さらに、冷媒戻りライン53の冷媒熱交換器46より上流側に、冷媒タンク45を設けた構成としている。この冷媒タンク45は、少なくとも冷媒温度を水の沸点以下、好適には80℃以下まで冷却する能力を有するものとする。本実施例では、上記温度まで冷却するための容積を有する冷媒タンク45とする。さらに、冷媒タンク45は、撹拌機45aを具備することが好ましく、これにより冷却能力を向上させる。
このような構成を用いて、加圧板の冷却時には、三方バルブ55、56を冷媒タンク45側に切り替えて、該冷媒タンク45側に冷媒が循環するようにし、冷媒タンク45、冷媒熱交換器46、冷熱媒供給ライン50、冷熱媒通路(加圧板と底板)、冷熱媒排出ライン51、冷媒戻りライン53からなる冷媒回路を形成する。
【0034】
また、本実施例において、加圧板表面、即ち天板4下面、底板5上面、中板6上下面にバイオコークスの剥離を促進する表面処理を行うとよい。表面処理としては、剥離材をコーティングする方法が好ましく、金属皮膜、セラミックコーティング、フッ素樹脂コーティング等が挙げられる。
さらに、図9に示されるように、加圧板の下面側、即ち天板4の下面及び中板6の下面に、所定の模様を成すように線状に突出させた押し型25を形成することが好ましい。尚、同図において中板6の表面には剥離材をコーティングしたコーティング層26を形成した場合を示している。
図10に、前記押し型25の平面図を示す。この押し型25は、製造するバイオコークスに筋状の溝を形成するため、平板状のバイオコークスが溝に沿って割れやすくなり、大径のバイオコークスを容易に且つ適当な形状に切断ことが可能となる。
また、前記押し型25の先端は、鋭角状に形成するか若しくは曲面Rをつけ、先端に向かって幅が狭くなるように構成することが好ましい。これにより、製造されたバイオコークスが加圧板の下面に張り付くことがなく、剥離しやすくなる。
【0035】
次に、上記した構成を有するバイオコークス製造装置の作用につき、操作方法を含めて説明する。尚、ここで記載する温度、圧力、含水率、大きさ等の数値範囲は、本装置における好適な一例であるが、これに限定されるものではない。
まず、原料となるバイオマス粉砕物の前処理として、バイオマスの含水率を5〜10%に乾燥させる水分調整を行い、該乾燥したバイオマスを粒子径3mm以下、好ましくは0.1mm以下に粉砕する。また、バイオマスの種類によっては乾燥・粉砕後に調湿する物もある。これにより、各加圧板上に積層する際、嵩密度が向上し均質な充填が可能となり、加熱成形においてバイオマス間の接触が高まり、成形後の硬度も向上する。
【0036】
粉砕したバイオマスを粉砕物ホッパ11に投入する。このとき、原料供給ユニット10は、一番上の中板6にバイオマス粉砕物を供給できる位置に移動している。また、各段の原料サポートリング9は、上方に位置させ、原料がこぼれ落ちるのを防止する状態となっている。さらに、開放シリンダ8及び主加圧シリンダ7は全開状態となっている。
粉砕物ホッパ11に貯留されたバイオマス粉砕物を、スクリューフィーダ12にて所定量だけ中板6上に適宜供給する。スクリューフィーダ12の供給量は、モータ13の回転数を制御することにより調整する。
【0037】
そして、中板6上にバイオマス粉砕物が積層されたら、該中板6より一段下方の中板6にバイオマス粉砕物を供給できる位置に原料供給ユニット10を移動する。該中板6においても、上記と同様にスクリューフィーダ12によりバイオマス粉砕物を供給して中板上に積層する。
同様にして、最下段の底板5まで原料供給ユニット10を順次移動させ、各段にバイオマス粉砕物を積層する。
【0038】
全段の加圧板にバイオマス粉砕物の供給が終了したら、不図示の油圧駆動装置により主加圧シリンダ7、開放シリンダ8内の油圧を調整してピストンの先端に固定された加圧板によりバイオマス粉砕物を8〜25MPaに加圧して圧縮する。同時に、加圧板内の温度調節手段を作動して、バイオマス粉砕物を115〜230℃に加熱する。温度調節手段として、冷熱媒を用いる場合は、所定温度の冷熱媒通路に熱媒を通流させる。
このとき、予め加圧板内を加熱しておいてから加圧してもよいし、逆に加圧してから加熱してもよく、ほぼ同時に加熱と加圧を行うようにする。
上記した温度、圧力、及び含水率は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応が誘起される範囲に設定される。言い換えれば、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する範囲である。ここで含水率は、シリンダ内にて水分が亜臨界状態を形成するのに十分な範囲となっている。
【0039】
加圧板に挟持され加圧されたバイオマス粉砕物は、上記した加圧、加熱状態を一定時間保持する。
上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物の成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、バイオマス粉砕物から発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できる。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0040】
一定時間保持後に、加圧板の温度調節手段にて、加熱から冷却に切り替える。このとき、温度調節手段に冷熱媒を用いる場合は、冷熱媒通路20から熱媒を抜き、冷媒を通流させる。尚、本実施例において、熱媒としてはシリコンオイル、スチームが好適に用いられ、冷媒としてはシリコンオイル、水、或いは空気が好適に用いられる。
加圧板により加圧状態を維持した状態で、バイオマス粉砕物を50℃以下、好適には40℃以下になるまで冷却する。尚、この温度より高い温度でバイオコークスを取り出すと、ヘミセルロースによる接着効果が低下するため、冷却した後に排出するようにする。
そして、冷却後に、主加圧シリンダ7及び開放シリンダ8により各段の加圧板を上昇させて、製品押出ユニット15によりバイオコークスを押出し、不図示の製品コンベアにてこれを搬出する。本装置にて製造されるバイオコークスは大径であるため、所望の大きさまで適宜切断して製品化することが好ましい。
【0041】
本実施例のバイオコークス製造装置を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【0042】
即ち、本実施例によれば、一度の大量のバイオマス粉砕物を処理できる構成であるため、バイオコークスを工業的に大量生産することができるようになる。
また、天板と底板の間に、1又は複数の中板を設けて、多段にして加圧する構成としたため、1段にて加圧する構成に比べてプレス圧力を大幅に低減することが可能となり、油圧駆動手段を安価にでき、また製造コストの低減が可能で、生産効率を向上させることができる。さら、バイオマス粉砕物の加圧面積を小さくすることができるため、原料分散のばらつきの影響を抑えることができ、均一に圧力を加えることが可能となる。さらにまた、設備の設置面積を小さくすることが可能となる。
【0043】
例えば、1段構造の装置で製造面直径が500mmφ、プレス圧力が約400tの設備を用いた場合に比較して、中板を4枚備えた本実施例の構成を用いると、約400tのプレス圧力で、1度の生産量を1段構造の5倍とすることが可能である。さらに、この生産量を1段構造で行うと、プレス面の製造面直径1118mmφとなり、プレス圧力は2000t以上の超大型装置となり、さらにまた製造面積が広いことによる原料分散のばらつきの影響が大きくなり、装置の傾き、原料充填の悪い部分の未反応部の増大を防止できる。
【0044】
また、本実施例では加圧板の周囲に上下動自在の原料サポートリングを配置した構成であるため、バイオマス粉砕物が周囲にこぼれ落ちることを防止し、且つ均一な加圧が達成できる。
さらに、加圧板表面に剥離促進用の表面処理を行うことにより、製造されたバイオコークスが簡単に排出できる。さらにまた、加圧板下面側に押し型を設けることにより、バイオコークスの剥離を促進するとともに、製造された大径のバイオコークスを適切な大きさに切断することが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本実施例に係るバイオコークス製造装置を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成図である。
【図2】図1のバイオコークス製造装置のA−A線断面図である。
【図3】原料サポートリングの動作を説明する図で、(A)は原料供給時の側断面図、(B)は原料押出時の側断面図である。
【図4】冷熱媒配管の配置構成の一例を示す平面図である。
【図5】図4に示した冷熱媒配管の側断面図である。
【図6】断熱層を介在させた場合の中板の側断面図である。
【図7】鋳ぐるみ成形に適した金属材料の物性値を示すグラフである。
【図8】本実施例の冷熱媒回路を含む機器系統図である。
【図9】天板及び中板の他の一例を示す側断面図である。
【図10】押し型を示す平面図である。
【図11】バイオコークスの物性値を比較する表である。
【符号の説明】
【0047】
1 バイオコークス製造装置
2 上フレーム
3 下フレーム
4 天板
5 底板
6 中板
7 主加圧シリンダ
8 開放シリンダ
9 原料サポートリング
10 原料供給ユニット
15 製品押出ユニット
20 冷熱媒配管
22 断熱層
25 押し型
26 コーティング層
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特に石炭コークスの代替燃料として効果的に利用可能であるバイオコークスを工業的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO2排出の削減が推進されている。特に、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多いが、この化石燃料は、CO2排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
そこで、化石燃料の代替として、バイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用することができる。
【0003】
バイオマスを燃料化する方法としては、バイオマスを乾燥させて燃料化する方法、加圧して燃料ペレット化する方法、炭化、乾留させて燃料化する方法等が知られている。しかし、バイオマスを乾燥させるのみでは、空隙率が大きくみかけ比重が低くなるため、輸送や貯留が困難であり、長距離輸送や貯留して使用する燃料としては有効とはいえない。
一方、バイオマスを燃料ペレット化する方法は、特許文献1(特公昭61−27435号公報)に開示されている。この方法は、細断された有機繊維材料の含水量を16〜28%に調節し、これをダイス内で圧縮して乾燥し燃料ペレットを製造するようにしている。
また、バイオマスを乾留して燃料化する方法は、特許文献2(特開2003−206490号公報)等に開示されている。この方法は、酸素欠乏雰囲気中において、バイオマスを200〜500℃、好適には250〜400℃で加熱して、バイオマス半炭化圧密燃料前駆体を製造する方法となっている。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−27435号公報
【特許文献2】特開2003−206490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、圧縮成形を行うことによりバイオマスを燃料化しているが、生成した燃料ペレットは水分量が多いため発熱量が低く、燃料としては適していない。
また、特許文献2等に記載されるように乾留によりバイオマスを燃料化する方法では、加工処理を施さないバイオマスに比べると燃料として価値が高いものとなっているが、やはり石炭コークスに比べてみかけ比重が低く、発熱量が低い。さらに、石炭コークスに比べて硬度が低いため、石炭コークスの代替として利用するには不十分である。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
近年、石炭コークスの代替として、バイオコークスが研究されている。
バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後、冷却することにより製造される。加圧、加熱条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲に設定する。これにより以下の反応機構が成立し、高硬度で高発熱量を有するバイオコークスが製造できる。
その反応機構は、上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物のヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、反応容器内に発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できるものである。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0007】
図11に、バイオコークスの物性値を他の燃料と比較した表を示す。尚、この表は実験的に得られた数値を記載しているのみであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
この表に示されるように、バイオコークスは、みかけ比重1.2〜1.38、最高圧縮強度60〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kgの物性値を示す硬度、燃焼性ともに優れた性能を有しており、未加工の木質バイオマスが、みかけ比重約0.4〜0.6、発熱量約17MJ/kg、最高圧縮強度約30MPaであるのと比べると、発熱量及び硬度の点において格段に優れていることが判る。また、石炭コークスの物性値である、みかけ比重約1.85、最高圧縮強度約15MPa、発熱量約29MJ/kgに比しても、バイオコークスは燃焼性、硬度とも遜色ない性能を有する。
従って、バイオコークスは石炭コークスの代替として有効な燃料であるとともに、マテリアル素材としての利用価値も高い。
【0008】
しかし、このバイオコークスは未だ実験段階にとどまっており、反応容器にバイオマス粉砕物を人手で充填して一つの反応容器でバッチ的に製造しているのが実状であった。
そこで本発明は、上記したバイオコークスを効率的に製造する装置を提案する。
【0009】
本発明は、所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
平板状の底板と、油圧駆動手段により該底板に向けて移動する天板とを備えるとともに、前記底板と前記天板との間に1又は複数の平板状の中板が水平方向に配置され、前記底板、前記天板、前記中板からなる加圧板が多段に形成され、前記加圧板の夫々に加熱と冷却の切り替え自在な温度調節手段が設けられており、
各段の加圧板に載置されたバイオマス粉砕物を、前記油圧駆動手段により前記圧力範囲に加圧した状態にて、前記温度調節手段により前記温度範囲に加熱して一定時間保持した後、冷却するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能なバイオコークスを効率的に製造可能である。即ち、底板と天板と中板からなる加圧板と、油圧駆動手段と、加圧板に装備された温度調節手段により一度の大量のバイオマス粉砕物を処理できる構成であるため、バイオコークスを工業的に大量生産することが可能となる。
さらに、加熱と冷却に切り替え自在な温度調節機構を備えることにより、バイオマス粉砕物を加圧した状態で加熱工程と冷却工程を行うことが可能となる。
また、加圧板を垂直方向に複数段設け、油圧駆動手段により各段を同時に加圧する構成としているため、1段にて加圧する構成に比べてプレス圧力を大幅に低減することが可能となり、油圧駆動手段を安価にでき、また製造コストの低減が可能で、生産効率を向上させることができる。さらに、バイオマス粉砕物の加圧面積を小さくすることができるため、原料分散のばらつきの影響を抑えることができ、均一に圧力を加えることが可能となる。さらにまた、装置の設置面積を小さくすることが可能である。
【0011】
また、前記バイオマス粉砕物が載置される前記底板と前記中板の上面周囲に上下動自在の原料サポートリングが配置され、該原料サポートリングは、前記バイオマス粉砕物の供給時には上方に位置し、前記加圧時には前記加圧板に伴い下降動作するようにし、前記バイオコークスの排出時には下方に位置するように構成されることを特徴とする。
このように、加圧板の周囲に上下動自在の原料サポートリングを配置した構成とすることにより、バイオマス粉砕物が周囲にこぼれ落ちることを防止し、均一な加圧が達成できる。
【0012】
さらに、前記底板と前記中板上に前記バイオマス粉砕物を供給する原料供給ユニットを備え、該原料供給ユニットは垂直方向及び水平方向に自在に移動可能で、垂直方向に移動して前記加圧板の各段に順次バイオマス粉砕物を供給するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、一の原料供給ユニットにて各段へバイオマス粉砕物を供給することができるようになり、装置の部品点数を削減でき、コスト低減が可能となる。
【0013】
さらにまた、前記各段の加圧板間には夫々開放用油圧駆動手段が設けられ、バイオコークスの反応終了時に、該開放用油圧駆動手段により各段の加圧板を上昇させるようにしたことを特徴とする。
この構成により、反応終了時に加圧板の各段を確実に開放することができ、バイオコークスを円滑に排出することが可能となる。
【0014】
また、前記温度調節手段として、前記加圧板内に熱媒若しくは冷媒が通流する冷熱媒配管が形成され、前記加圧板のうち前記中板には、前記冷熱媒配管が上面近傍及び下面近傍に設けられるとともに、これらの冷熱媒配管の間に断熱層を形成したことを特徴とする。
このように、前記冷熱媒配管を上面近傍及び下面近傍のみに設け、その間に断熱層を介在させることにより、熱効率を向上させることができる。
【0015】
また、前記加圧板の表面に、剥離材をコーティングしたことを特徴とする。
これにより、製造したバイオコークスが加圧板に張り付くことを防止し、バイオコークスの円滑な排出が可能となる。
さらにまた、前記天板及び前記中板の下面側に、所定の模様を成すように線状に突出させた押し型を形成したことを特徴とする。
このように加圧板の下面に押し型を形成することにより、バイオコークスが加圧板に張り付くことを防止し、バイオコークスの円滑な排出が可能となるとともに、排出された大径のバイオコークスに前記模様に沿った溝が形成されているため、所定の大きさに切断することが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量を有するバイオコークスを、効率的に大量生産することが可能となる。
また、加熱と冷却に切り替え自在な温度調節機構を備えることにより、バイオマス粉砕物を加圧した状態で加熱工程と冷却工程を行うことが可能となる。
さらに、加圧板を垂直方向に複数段設け、油圧駆動手段により各段を同時に加圧する構成としているため、1段にて加圧する構成に比べてプレス圧力を大幅に低減することが可能となり、油圧駆動手段を安価にでき、また製造コストの低減が可能で、生産効率を向上させることができる。さらにまた、バイオマス粉砕物の加圧面積を小さくすることができるため、原料分散のばらつきの影響を抑えることができ、均一に圧力を加えることが可能となる。また、装置の設置面積を小さくすることが可能となる。
【0017】
また、加圧板周囲に原料サポートリングを配置することにより、バイオマス粉砕物が周囲にこぼれ落ちることを防止し、均一な加圧が達成できる。
さらに、バイオマス粉砕物を供給する原料供給ユニットを垂直方向及び水平方向に自在に移動可能とすることにより、一の原料供給ユニットで各段へ均一にバイオマス粉砕物を供給することができ、装置の部品点数を削減し、コスト低減が可能となる。
さらにまた、加圧板間に夫々開放用油圧駆動手段を設けることにより、反応終了時に加圧板の各段を確実に開放することができ、バイオコークスを円滑に排出することが可能となる。
【0018】
また、温度調節手段として冷熱媒配管を形成するとともに、中板の冷熱媒配管を上面近傍及び下面近傍のみに設け、その間に断熱層を介在させることにより、熱効率を向上させることができる。
さらに、加圧板の表面に剥離材をコーティングすることにより、製造したバイオコークスが加圧板に張り付くことを防止し、バイオコークスの円滑な排出が可能となる。
さらにまた、天板及び中板の下面側に押し型を形成することにより、バイオコークスが加圧板に張り付くことを防止し、バイオコークスの円滑な排出が可能となるとともに、排出された大径のバイオコークスに前記模様に沿った溝が形成されているため、所定の大きさに切断することが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成図、図2は図1のバイオコークス製造装置のA−A線断面図、図3は原料サポートリングの動作を説明する図、図4は冷熱媒配管の配置構成の一例を示す平面図、図5は冷熱媒配管の側断面図、図6は断熱層を介在させた場合の中板の側断面図、図7は鋳ぐるみ成形に適した金属材料の物性値を示すグラフ、図8は本実施例の冷熱媒回路を含む機器系統図、図9は天板及び中板の他の一例を示す側断面図、図10は押し型を示す平面図である。
本実施例において、バイオコークスの原料となるバイオマスは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスであり、例えば、廃木材、間伐材、剪定枝、植物、農業廃棄物、コーヒー粕や茶粕等の厨芥廃棄物等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
本実施例では、バイオマスを予め所定の含水率になるように水分調整するとともに、所定粒径以下まで粉砕する前処理を行ったバイオマス粉砕物を原料としている。
本実施例のバイオコークス装置は、このバイオマス粉砕物を所定の圧力、温度条件にて加圧、加熱して一定時間保持した後、冷却することによりバイオコークスを製造するものである。上記した圧力、温度条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲とする。即ち、前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲である。
【0021】
まず、図1を参照して、本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成を説明する。
バイオコークス製造装置1の主要構成は、上フレーム2と、下フレーム3と、該上フレーム2に固定された天板4と、該下フレーム3に固定された底板5と、前記天板4と底板5の間に水平に配設された1又は複数の中板6と、前記上フレーム2と下フレーム3との間に介在された主加圧シリンダ7と、天板4と中板6の間及び中板6間及び中板6と底板5の間に夫々介在された開放シリンダ8と、中板6及び底板5の周囲に配設された原料サポートリング9と、中板6又は底板5に原料を供給する原料供給ユニット10と、製造されたバイオコークスを排出する製品押出ユニット15と、天板4、底板5、中板6に組み込まれ、熱媒体によりこれらの板を加熱又は冷却する温度調節機構(冷熱媒配管)20と、からなる。尚、以下において天板4、底板5、中板6を加圧板と総称する。
【0022】
前記下フレーム3は床面に固定され、さらに下フレーム3の上面には底板5が固定されている。前記下フレーム3に対して主加圧シリンダ7を介して固定される上フレーム2には天板4が固定されており、天板4と底板5の間には、夫々開放シリンダ8を介して所定距離隔てて中板6が水平に設置されている。天板4、底板5、中板6からなる加圧板は夫々同軸上に配設され、水平断面は円形状、方形状等の何れでもよいが、円形状に形成されることが好ましい。
【0023】
前記主加圧シリンダ7は、不図示の油圧駆動回路により上下動自在に制御され、原料加圧時に所定の圧力にて加圧板間の原料を加圧するようになっている。尚、該主加圧シリンダ7は、原料供給時及び製品搬出時には伸張して前記各加圧板間を開放するように作動される。
前記開放シリンダ8も同様に不図示の油圧駆動回路により上下動自在に制御され、原料を加圧成型後、夫々の加圧板間を開放するために伸張される。尚、該開放シリンダ8は、原料供給時には伸張状態に維持され、原料加圧成型時には圧縮方向に加圧される。
また、これらのシリンダ7、8は、図2のA−A線断面図に示されるように、底板5又は中板6の直径延長線上に、該板を挟んで夫々2本設けることが好ましいが、原料を均一に加圧でき且つ原料の供給、排出を阻害しない位置であれば、その位置及び本数は限定されない。
【0024】
前記原料供給ユニット10は、原料であるバイオマス粉砕物が投入される粉砕物ホッパ11と、該粉砕物ホッパ11から所定量ずつバイオマス粉砕物を供給するスクリューフィーダ12と、該スクリューフィーダを駆動するモータ13とから構成される。尚、図示されないが本実施例では、粉砕物ホッパ11より上流側に、バイオマス原料を所定の含水率に水分調整するとともに所定粒径以下まで粉砕する前処理装置と、製造された大径のバイオコークスを所望の大きさまで破砕する破砕装置と、を備えることが好ましい。
また、この原料供給ユニット10は、垂直方向及び水平方向に移動自在に構成される。これは、原料供給時にスクリューフィーダ12の先端部から加圧板上に原料を落下させる構成となっているが、一の加圧板上への原料の供給を終了したら垂直方向に該ユニット10を移動し、他の加圧板上へ原料の供給を行い、順次原料を供給していく。また、原料が加圧板上に出来るだけ均一に載置されるように、原料供給ユニット10は水平方向にも移動するようになっている。
【0025】
前記製品押出ユニット15は、水平方向に移動自在に構成され、原料を加圧成型した後に製造されたバイオコークスを、加圧板上から装置外へ押出す機能を有する。該製品押出ユニット15は、バイオコークス製品の形状に沿った形状を有し、的確に搬送コンベア上に製品を押出せるように構成することが好ましい。例えば製品の形状が円盤状である場合は、製品押出ユニット15の押出部はさすまた状に形成されるとよい。この製品押出ユニット15は、各段に夫々一基ずつ設置してもよいし、押出ユニット15を垂直方向に移動可能とし、一基のユニット15により各段の製品を順次押出すようにしてもよい。
【0026】
前記原料サポートリング9は、円環状に形成されており、中板6及び底板5の上面周囲に配置される。また該原料サポートリング9は油圧により上下動自在に構成されており、中板6及び底板5上に供給された原料が周囲にこぼれ落ちることを防止する機能を有する。また、該原料サポートリング9は上下動自在に構成され、原料供給時には図3(A)に示されるように底板5及び中板6の上面から上方に突出する状態に維持され、加圧成型時には、原料サポートリング9にかかる油圧をフリーの状態にし加圧面に密接して自由に動くようにし、製品押出時には図3(B)に示されるように該原料サポートリング9を底板5及び中板6の上面より下方に位置するように下降させる。
【0027】
前記天板4、底板5、中板6からなる加圧板は、熱伝導性が高い金属材料で形成され、これらの加圧板の内部には温度調節機構である冷熱媒配管20が配設されている。該冷熱媒配管20は、原料の加圧面近傍に配設され、該原料に対して均一に加熱、冷却が行えるような配置構成とすることが好ましい。好適には、図4に示すように、前記冷熱媒配管20を渦巻き状に形成する。
また、中板6については、上面及び下面ともに原料の加圧面となるため、図5に示すように上面側と下面側に冷熱媒配管20が分岐するように配設している。
【0028】
これらの冷熱媒配管20は、鋳ぐるみ成形により製造することが好ましい。これは、鋳込金属と同種又は異種の金属材料からなる被鋳ぐるみ部材(冷熱媒配管)を鋳型の中に配置しておき、溶融又は半溶融状態の鋳込金属(加圧板)を鋳型に充填し、鋳込金属と被鋳ぐるみ部材を溶着させて一体化する方法である。被鋳ぐるみ部材となる冷熱媒配管20には、加圧板に用いられる金属材料より高い融点を有する金属材料を用いることで、配管の空洞を残したまま加圧板を成形することが可能となる。図7に示すように、被鋳ぐるみ部材に鋼管(SPG鋼管等)を用いた場合、鋼管に比べて融点が低く鋳ぐるみ可能な材料としてリン青銅、アルミ青銅、真鍮、銅等が好適に用いられる。
【0029】
さらに本実施例では、中板6において、上面と下面の間に断熱層22を設けることが好ましい。該断熱層22は、空気層としてもよいし、断熱材料からなる層としてもよい。この断熱層22は、例えば上記した鋳ぐるみ成形により空気層を形成したり、或いは鋳ぐるみにより形成した空気層に、外部から断熱材を注入したりすることにより設けられる。
【0030】
前記冷熱媒配管20には、原料の加熱時には熱媒が供給され、冷却時には冷媒が供給される。各段の冷熱媒配管20は、図8に示すような冷熱媒回路40に接続される。
冷熱媒回路40は、熱媒を加熱する加熱タンク41を備えた熱媒回路と、冷媒を冷却する冷媒タンク45と冷媒熱交換器46を備えた冷媒回路とからなる。そして、加熱時には、熱媒回路により所定温度まで加熱された熱媒を加圧板に供給し、冷却時には、この熱媒回路から冷媒回路に切り替えて、該冷媒回路により所定温度まで冷却された冷媒を各加圧板に供給する。
【0031】
ここで、図8を参照して、本実施例の冷熱媒回路40の一例につき説明する。本実施例のバイオコークス製造装置では、加圧板の加熱と冷却を切り替える手段を具備した温度調節機構が必須構成となる。従って、図8に示すような冷熱媒回路を設けることにより、熱効率が高く且つ安全性の高い温度調節手段とすることができる。
冷熱媒としては水/水蒸気、シリコンオイル等が好適に用いられる。
【0032】
本実施例にて、加圧板の冷熱媒入口と出口は、同図に示される冷熱媒回路40に夫々接続されている。該冷熱媒回路40は、冷媒回路と熱媒回路とが組み合わされた構成となっている。冷熱媒出口は、冷熱媒排出ライン51に接続され、該排出ライン51上の三方バルブ55を介して熱媒戻りライン52と、冷媒戻りライン53に分岐している。
熱媒戻りライン52は熱媒タンク41に接続されている。該熱媒タンク41は、加熱器41aと、撹拌機41bを具備しており、冷却された熱媒を昇温するようになっている。必要に応じてN2ボンベからN2ガスが供給されるようにし、タンク内を不活性雰囲気に保持して安全性を確保することが好ましい。熱媒タンク41の出口側は、三方バルブ56を介して冷熱媒供給ライン50に接続されている。
このような構成を用いて、加圧板の加熱時には、三方バルブ55、56により熱媒タンク41側に熱媒が循環するようにし、熱媒タンク41、冷熱媒供給ライン50、冷熱媒通路、冷熱媒排出ライン51、熱媒戻りライン52からなる熱媒回路を形成する。
【0033】
冷媒戻りライン53は、冷媒熱交換器46に接続されている。該冷媒熱交換器46は、上水等の冷却水と冷媒とを熱交換し、冷媒を冷却する構成となっている。
さらに、冷媒戻りライン53の冷媒熱交換器46より上流側に、冷媒タンク45を設けた構成としている。この冷媒タンク45は、少なくとも冷媒温度を水の沸点以下、好適には80℃以下まで冷却する能力を有するものとする。本実施例では、上記温度まで冷却するための容積を有する冷媒タンク45とする。さらに、冷媒タンク45は、撹拌機45aを具備することが好ましく、これにより冷却能力を向上させる。
このような構成を用いて、加圧板の冷却時には、三方バルブ55、56を冷媒タンク45側に切り替えて、該冷媒タンク45側に冷媒が循環するようにし、冷媒タンク45、冷媒熱交換器46、冷熱媒供給ライン50、冷熱媒通路(加圧板と底板)、冷熱媒排出ライン51、冷媒戻りライン53からなる冷媒回路を形成する。
【0034】
また、本実施例において、加圧板表面、即ち天板4下面、底板5上面、中板6上下面にバイオコークスの剥離を促進する表面処理を行うとよい。表面処理としては、剥離材をコーティングする方法が好ましく、金属皮膜、セラミックコーティング、フッ素樹脂コーティング等が挙げられる。
さらに、図9に示されるように、加圧板の下面側、即ち天板4の下面及び中板6の下面に、所定の模様を成すように線状に突出させた押し型25を形成することが好ましい。尚、同図において中板6の表面には剥離材をコーティングしたコーティング層26を形成した場合を示している。
図10に、前記押し型25の平面図を示す。この押し型25は、製造するバイオコークスに筋状の溝を形成するため、平板状のバイオコークスが溝に沿って割れやすくなり、大径のバイオコークスを容易に且つ適当な形状に切断ことが可能となる。
また、前記押し型25の先端は、鋭角状に形成するか若しくは曲面Rをつけ、先端に向かって幅が狭くなるように構成することが好ましい。これにより、製造されたバイオコークスが加圧板の下面に張り付くことがなく、剥離しやすくなる。
【0035】
次に、上記した構成を有するバイオコークス製造装置の作用につき、操作方法を含めて説明する。尚、ここで記載する温度、圧力、含水率、大きさ等の数値範囲は、本装置における好適な一例であるが、これに限定されるものではない。
まず、原料となるバイオマス粉砕物の前処理として、バイオマスの含水率を5〜10%に乾燥させる水分調整を行い、該乾燥したバイオマスを粒子径3mm以下、好ましくは0.1mm以下に粉砕する。また、バイオマスの種類によっては乾燥・粉砕後に調湿する物もある。これにより、各加圧板上に積層する際、嵩密度が向上し均質な充填が可能となり、加熱成形においてバイオマス間の接触が高まり、成形後の硬度も向上する。
【0036】
粉砕したバイオマスを粉砕物ホッパ11に投入する。このとき、原料供給ユニット10は、一番上の中板6にバイオマス粉砕物を供給できる位置に移動している。また、各段の原料サポートリング9は、上方に位置させ、原料がこぼれ落ちるのを防止する状態となっている。さらに、開放シリンダ8及び主加圧シリンダ7は全開状態となっている。
粉砕物ホッパ11に貯留されたバイオマス粉砕物を、スクリューフィーダ12にて所定量だけ中板6上に適宜供給する。スクリューフィーダ12の供給量は、モータ13の回転数を制御することにより調整する。
【0037】
そして、中板6上にバイオマス粉砕物が積層されたら、該中板6より一段下方の中板6にバイオマス粉砕物を供給できる位置に原料供給ユニット10を移動する。該中板6においても、上記と同様にスクリューフィーダ12によりバイオマス粉砕物を供給して中板上に積層する。
同様にして、最下段の底板5まで原料供給ユニット10を順次移動させ、各段にバイオマス粉砕物を積層する。
【0038】
全段の加圧板にバイオマス粉砕物の供給が終了したら、不図示の油圧駆動装置により主加圧シリンダ7、開放シリンダ8内の油圧を調整してピストンの先端に固定された加圧板によりバイオマス粉砕物を8〜25MPaに加圧して圧縮する。同時に、加圧板内の温度調節手段を作動して、バイオマス粉砕物を115〜230℃に加熱する。温度調節手段として、冷熱媒を用いる場合は、所定温度の冷熱媒通路に熱媒を通流させる。
このとき、予め加圧板内を加熱しておいてから加圧してもよいし、逆に加圧してから加熱してもよく、ほぼ同時に加熱と加圧を行うようにする。
上記した温度、圧力、及び含水率は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応が誘起される範囲に設定される。言い換えれば、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する範囲である。ここで含水率は、シリンダ内にて水分が亜臨界状態を形成するのに十分な範囲となっている。
【0039】
加圧板に挟持され加圧されたバイオマス粉砕物は、上記した加圧、加熱状態を一定時間保持する。
上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物の成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、バイオマス粉砕物から発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できる。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0040】
一定時間保持後に、加圧板の温度調節手段にて、加熱から冷却に切り替える。このとき、温度調節手段に冷熱媒を用いる場合は、冷熱媒通路20から熱媒を抜き、冷媒を通流させる。尚、本実施例において、熱媒としてはシリコンオイル、スチームが好適に用いられ、冷媒としてはシリコンオイル、水、或いは空気が好適に用いられる。
加圧板により加圧状態を維持した状態で、バイオマス粉砕物を50℃以下、好適には40℃以下になるまで冷却する。尚、この温度より高い温度でバイオコークスを取り出すと、ヘミセルロースによる接着効果が低下するため、冷却した後に排出するようにする。
そして、冷却後に、主加圧シリンダ7及び開放シリンダ8により各段の加圧板を上昇させて、製品押出ユニット15によりバイオコークスを押出し、不図示の製品コンベアにてこれを搬出する。本装置にて製造されるバイオコークスは大径であるため、所望の大きさまで適宜切断して製品化することが好ましい。
【0041】
本実施例のバイオコークス製造装置を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【0042】
即ち、本実施例によれば、一度の大量のバイオマス粉砕物を処理できる構成であるため、バイオコークスを工業的に大量生産することができるようになる。
また、天板と底板の間に、1又は複数の中板を設けて、多段にして加圧する構成としたため、1段にて加圧する構成に比べてプレス圧力を大幅に低減することが可能となり、油圧駆動手段を安価にでき、また製造コストの低減が可能で、生産効率を向上させることができる。さら、バイオマス粉砕物の加圧面積を小さくすることができるため、原料分散のばらつきの影響を抑えることができ、均一に圧力を加えることが可能となる。さらにまた、設備の設置面積を小さくすることが可能となる。
【0043】
例えば、1段構造の装置で製造面直径が500mmφ、プレス圧力が約400tの設備を用いた場合に比較して、中板を4枚備えた本実施例の構成を用いると、約400tのプレス圧力で、1度の生産量を1段構造の5倍とすることが可能である。さらに、この生産量を1段構造で行うと、プレス面の製造面直径1118mmφとなり、プレス圧力は2000t以上の超大型装置となり、さらにまた製造面積が広いことによる原料分散のばらつきの影響が大きくなり、装置の傾き、原料充填の悪い部分の未反応部の増大を防止できる。
【0044】
また、本実施例では加圧板の周囲に上下動自在の原料サポートリングを配置した構成であるため、バイオマス粉砕物が周囲にこぼれ落ちることを防止し、且つ均一な加圧が達成できる。
さらに、加圧板表面に剥離促進用の表面処理を行うことにより、製造されたバイオコークスが簡単に排出できる。さらにまた、加圧板下面側に押し型を設けることにより、バイオコークスの剥離を促進するとともに、製造された大径のバイオコークスを適切な大きさに切断することが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本実施例に係るバイオコークス製造装置を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成図である。
【図2】図1のバイオコークス製造装置のA−A線断面図である。
【図3】原料サポートリングの動作を説明する図で、(A)は原料供給時の側断面図、(B)は原料押出時の側断面図である。
【図4】冷熱媒配管の配置構成の一例を示す平面図である。
【図5】図4に示した冷熱媒配管の側断面図である。
【図6】断熱層を介在させた場合の中板の側断面図である。
【図7】鋳ぐるみ成形に適した金属材料の物性値を示すグラフである。
【図8】本実施例の冷熱媒回路を含む機器系統図である。
【図9】天板及び中板の他の一例を示す側断面図である。
【図10】押し型を示す平面図である。
【図11】バイオコークスの物性値を比較する表である。
【符号の説明】
【0047】
1 バイオコークス製造装置
2 上フレーム
3 下フレーム
4 天板
5 底板
6 中板
7 主加圧シリンダ
8 開放シリンダ
9 原料サポートリング
10 原料供給ユニット
15 製品押出ユニット
20 冷熱媒配管
22 断熱層
25 押し型
26 コーティング層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
平板状の底板と、油圧駆動手段により該底板に向けて移動する天板とを備えるとともに、前記底板と前記天板との間に1又は複数の平板状の中板が水平方向に配置され、前記底板、前記天板、前記中板からなる加圧板が多段に形成され、前記加圧板の夫々に加熱と冷却の切り替え自在な温度調節手段が設けられており、
各段の加圧板に載置されたバイオマス粉砕物を、前記油圧駆動手段により前記圧力範囲に加圧した状態にて、前記温度調節手段により前記温度範囲に加熱して一定時間保持した後、冷却するようにしたことを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記バイオマス粉砕物が載置される前記底板と前記中板の上面周囲に上下動自在の原料サポートリングが配置され、該原料サポートリングは、前記バイオマス粉砕物の供給時には上方に位置し、前記加圧時には前記加圧板に伴い下降動作するようにし、前記バイオコークスの排出時には下方に位置するように構成されることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記加圧板上に前記バイオマス粉砕物を供給する原料供給ユニットを備え、該原料供給ユニットは垂直方向及び水平方向に自在に移動可能で、垂直方向に移動して前記加圧板の各段に順次バイオマス粉砕物を供給するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項4】
前記各段の加圧板間には夫々開放用油圧駆動手段が設けられ、バイオコークスの反応終了時に、該開放用油圧駆動手段により各段の加圧板を上昇させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項5】
前記温度調節手段として、前記加圧板内に熱媒若しくは冷媒が通流する冷熱媒配管が形成され、前記加圧板のうち前記中板には、前記冷熱媒配管が上面近傍及び下面近傍に設けられるとともに、これらの冷熱媒配管の間に断熱層を形成したことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項6】
前記加圧板の表面に、剥離材をコーティングしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項7】
前記天板及び前記中板の下面側に、所定の模様を成すように線状に突出させた押し型を形成したことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項1】
所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
平板状の底板と、油圧駆動手段により該底板に向けて移動する天板とを備えるとともに、前記底板と前記天板との間に1又は複数の平板状の中板が水平方向に配置され、前記底板、前記天板、前記中板からなる加圧板が多段に形成され、前記加圧板の夫々に加熱と冷却の切り替え自在な温度調節手段が設けられており、
各段の加圧板に載置されたバイオマス粉砕物を、前記油圧駆動手段により前記圧力範囲に加圧した状態にて、前記温度調節手段により前記温度範囲に加熱して一定時間保持した後、冷却するようにしたことを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記バイオマス粉砕物が載置される前記底板と前記中板の上面周囲に上下動自在の原料サポートリングが配置され、該原料サポートリングは、前記バイオマス粉砕物の供給時には上方に位置し、前記加圧時には前記加圧板に伴い下降動作するようにし、前記バイオコークスの排出時には下方に位置するように構成されることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記加圧板上に前記バイオマス粉砕物を供給する原料供給ユニットを備え、該原料供給ユニットは垂直方向及び水平方向に自在に移動可能で、垂直方向に移動して前記加圧板の各段に順次バイオマス粉砕物を供給するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項4】
前記各段の加圧板間には夫々開放用油圧駆動手段が設けられ、バイオコークスの反応終了時に、該開放用油圧駆動手段により各段の加圧板を上昇させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項5】
前記温度調節手段として、前記加圧板内に熱媒若しくは冷媒が通流する冷熱媒配管が形成され、前記加圧板のうち前記中板には、前記冷熱媒配管が上面近傍及び下面近傍に設けられるとともに、これらの冷熱媒配管の間に断熱層を形成したことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項6】
前記加圧板の表面に、剥離材をコーティングしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項7】
前記天板及び前記中板の下面側に、所定の模様を成すように線状に突出させた押し型を形成したことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−185180(P2009−185180A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26825(P2008−26825)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
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