説明

バイオコークス製造装置

【課題】バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置を提供する。
【解決手段】バイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置1であって、複数の反応シリンダ2がターンテーブル20の同一円周上に同一間隙を隔てて固定され、円周方向に沿って順に、反応シリンダ2内にバイオマス粉砕物を充填して予備加圧するA充填圧縮位置と、予備加圧後のバイオマス粉砕物を加圧した状態で一定時間加熱した後冷却するB反応位置と、反応終了後のバイオコークスを排出するC製品排出位置とが定位置に設定されるとともに、上記した各位置が夫々2以上設けられ、少なくともB反応位置がターンテーブル20の回転中心を通る直線上に対向して位置するように設定され、夫々の位置に対応した操作が複数の反応シリンダ2にて同時に行われるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特に石炭コークスの代替燃料として効果的に利用可能であるバイオコークスを工業的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO排出の削減が推進されている。特に、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多いが、この化石燃料は、CO排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
そこで、化石燃料の代替として、バイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用することができる。
【0003】
バイオマスを燃料化する方法としては、バイオマスを乾燥させて燃料化する方法、加圧して燃料ペレット化する方法、炭化、乾留させて燃料化する方法等が知られている。しかし、バイオマスを乾燥させるのみでは、空隙率が大きくみかけ比重が低くなるため、輸送や貯留が困難であり、長距離輸送や貯留して使用する燃料としては有効とはいえない。
一方、バイオマスを燃料ペレット化する方法は、特許文献1(特公昭61−27435号公報)に開示されている。この方法は、細断された有機繊維材料の含水量を16〜28%に調節し、これをダイス内で圧縮して乾燥し燃料ペレットを製造するようにしている。
また、バイオマスを乾留して燃料化する方法は、特許文献2(特開2003−206490号公報)等に開示されている。この方法は、酸素欠乏雰囲気中において、バイオマスを200〜500℃、好適には250〜400℃で加熱して、バイオマス半炭化圧密燃料前駆体を製造する方法となっている。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−27435号公報
【特許文献2】特開2003−206490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、圧縮成形を行うことによりバイオマスを燃料化しているが、生成した燃料ペレットは水分量が多いため発熱量が低く、燃料としては適していない。
また、特許文献2等に記載されるように乾留によりバイオマスを燃料化する方法では、加工処理を施さないバイオマスに比べると燃料として価値が高いものとなっているが、やはり石炭コークスに比べてみかけ比重が低く、発熱量が低い。さらに、石炭コークスに比べて硬度が低いため、石炭コークスの代替として利用するには不十分である。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
近年、石炭コークスの代替として、バイオコークスが研究されている。
バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後、冷却することにより製造される。加圧、加熱条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲に設定する。これにより以下の反応機構が成立し、高硬度で高発熱量を有するバイオコークスが製造できる。
その反応機構は、上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物のヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、反応容器内に発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できるものである。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0007】
図8に、バイオコークスの物性値を他の燃料と比較した表を示す。尚、この表は実験的に得られた数値を記載しているのみであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
この表に示されるように、バイオコークスは、みかけ比重1.2〜1.38、最高圧縮強度60〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kgの物性値を示す硬度、燃焼性ともに優れた性能を有しており、未加工の木質バイオマスが、みかけ比重約0.4〜0.6、発熱量約17MJ/kg、最高圧縮強度約30MPaであるのと比べると、発熱量及び硬度の点において格段に優れていることが判る。また、石炭コークスの物性値である、みかけ比重約1.85、最高圧縮強度約15MPa、発熱量約29MJ/kgに比しても、バイオコークスは燃焼性、硬度とも遜色ない性能を有する。
従って、バイオコークスは石炭コークスの代替として有効な燃料であるとともに、マテリアル素材としての利用価値も高い。
【0008】
しかし、このバイオコークスは未だ実験段階にとどまっており、反応容器にバイオマス粉砕物を人手で充填して一つの反応容器でバッチ的に製造しているのが実状であった。
そこで本発明は、上記したバイオコークスを効率的に製造する装置を提案する。
【0009】
本発明は、所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
複数の円筒状反応シリンダが、ターンテーブルの同一円周上に同一間隙を隔てて載置されており、前記ターンテーブルの円周方向に沿って順に、前記反応シリンダ内にバイオマス粉砕物を充填して予備加圧する充填圧縮位置と、前記予備加圧後のバイオマス粉砕物を前記加圧範囲に加圧した状態で前記温度範囲にて一定時間加熱した後冷却する反応位置と、前記反応終了後のバイオコークス製品を排出する製品排出位置と、が前記ターンテーブルの回転に関わらず定位置に設定されるとともに、
上記した各位置が夫々2以上設けられ、少なくとも前記反応位置が、前記ターンテーブルの回転中心を通る直線上に対向して位置するように設定され、
夫々の位置に対応した操作が複数の反応シリンダにて同時に行われるようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能なバイオコークスを効率的に製造可能である。即ち、複数の反応シリンダを設置することにより連続した処理が可能となり、バイオコークスを工業的に大量生産することができるようになる。
また、本発明では複数の反応シリンダを載置したターンテーブルを備え、バイオコークス生産に必要な単位操作を少なくともA原料充填圧縮位置、B反応位置、C製品排出位置に分け、これらを同時に行えるようにしたため、設備数の低減及び時間の短縮化が可能となる。
さらに本発明では、各位置を少なくとも2以上ずつ設け、且つB反応位置がターンテーブルの回転中心を通る直線上にて対向して配置されるようにしており、これにより大きな加圧力が加わるB反応位置にて、加圧時に力学的バランスを取ることができ、ターンテーブルに歪みが生じることなく円滑に反応を行うことが可能となる。
【0011】
また、前記充填圧縮位置と前記反応位置と前記製品排出位置には、夫々の位置に応じた操作を補助する専用の加圧シリンダが前記ターンテーブルの回転に影響されない位置に固定配置されており、これらの加圧シリンダは、そのシリンダ長及び加圧能力が夫々の位置にて異なるようにしたことを特徴とする。
このように、夫々の操作に適した加圧シリンダを設置することにより、設備コストを低減し、各操作における高効率化が達成できる。
【0012】
さらに、前記充填圧縮位置には、前記反応シリンダの上部開口に当接するごとく設けられたガイド筒と、前記ガイド筒の上方に配置された予備加圧シリンダと、該シリンダにより上下方向に往復動する予備加圧ピストンと、が前記ターンテーブルの回転に影響されない位置に固定配置されており、
前記充填圧縮位置にて、前記ガイド筒を介して前記反応シリンダ内に供給されるバイオマス粉砕物を、前記予備加圧ピストンにより圧縮することを特徴とする。
本発明によれば、嵩密度の大きいバイオマス粉砕物の予備加圧にて、前記ガイド筒を用いる構成としたため、反応シリンダ長を短くすることができる。
【0013】
また、前記反応シリンダが温度調節手段を有するとともに、
前記反応位置には、前記反応シリンダの上方に配置された反応用加圧シリンダと、該シリンダにより上下方向に往復動する反応用加圧ピストンと、が前記ターンテーブルの回転に影響されない位置に固定配置されており、
前記反応位置にて、前記反応用加圧ピストンによりバイオマス粉砕物を加圧した状態で前記温度調節手段により一定時間加熱した後冷却することを特徴とする。
このように、反応位置に専用の反応用加圧シリンダとピストンを設置することにより、大きな加圧力が必要とされる反応用加圧シリンダの設置数を最小限に抑えることが可能で、設備コストを低減できるとともに、反応時の加圧力を適切に制御することが可能となり高品質の製品を製造できる。
【0014】
さらに、前記製品排出位置には、前記反応シリンダの上方に配置された製品排出用加圧シリンダと、該シリンダにより上下方向に往復動する製品排出用加圧ピストンと、が前記ターンテーブルの回転に影響されない位置に固定配置されており、
前記製品排出位置にて、前記製品排出用加圧ピストンにより反応シリンダ内のバイオコークス製品を下方に押し出して排出することを特徴とする。
これにより、製造されたバイオコークス製品を円滑に装置外部へ排出することが可能となる。
【0015】
さらにまた、前記製品排出位置の後流側に、前記反応シリンダのメンテナンスを行うメンテナンス位置を設けたことを特徴とする。
このように、反応シリンダの清掃、交換等のメンテナンスを行うDメンテナンス位置を設けることにより、運転中における故障、不具合の発生を防ぎ、安定運転が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量を有するバイオコークスを、効率的に大量生産することが可能となる。
また、複数の反応シリンダを載置したターンテーブルを備え、バイオコークス生産に必要な単位操作を少なくともA原料充填圧縮位置、B反応位置、C製品排出位置に分け、これらを同時に行えるようにしたため、設備数の低減及び時間の短縮化が可能となる。
さらに、B反応位置を、ターンテーブルの回転中心を通る直線上にて対向して配置することにより、加圧時に力学的バランスを取ることができ、ターンテーブルに歪みが生じることなく円滑に反応を行うことが可能となる。
【0017】
また、夫々の位置に応じた操作を補助する専用の加圧シリンダを各位置に固定配置することにより、設備コストを低減し、各操作における高効率化が達成できる。
さらに、前記充填圧縮位置にて、嵩密度の大きいバイオマス粉砕物の予備加圧にて、ガイド筒を用いる構成としたため、反応シリンダ長を短くすることができる。
さらにまた、前記反応位置に専用の反応用加圧シリンダ、ピストンを設置することにより、大きな加圧力が必要とされる反応用加圧シリンダの設置数を最小限に抑えることが可能で、設備コストを低減できるとともに、反応時の加圧力を適切に制御することが可能となり高品質の製品が製造できる。
【0018】
また、前記製品排出位置にて、製品排出用加圧ピストンにより反応シリンダ内のバイオコークス製品を下方に押し出して排出する構成とすることにより、製造されたバイオコークス製品を円滑に装置外部へ排出することが可能となる。
さらに、前記製品排出位置の後流側に、反応シリンダの清掃、交換等のメンテナンスを行うDメンテナンス位置を設けることにより、運転中における故障、不具合の発生を防ぎ、安定運転が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例に係るバイオコークス製造装置の平面図、図2は本実施例の各位置における装置の概略構成を示す側断面図、図3は本実施例のA原料充填圧縮位置における装置構成を示す側断面図、図4は本実施例のB反応位置における装置構成を示す側断面図、図5は本実施例のC製品排出位置における装置構成を示す側断面図、図6は本実施例のDメンテナンス位置における装置構成を示す側断面図、図7は図1の他の実施例に係るバイオコークス製造装置の平面図である。
本実施例において、バイオコークスの原料となるバイオマスは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスであり、例えば、廃木材、間伐材、剪定枝、植物、農業廃棄物、コーヒー粕や茶粕等の厨芥廃棄物等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
本実施例では、バイオマスを予め所定の含水率になるように水分調整するとともに、所定粒径以下まで粉砕する前処理を行ったバイオマス粉砕物を原料としている。
本実施例のバイオコークス装置は、このバイオマス粉砕物を所定の圧力、温度条件にて加圧、加熱して一定時間保持した後、冷却することによりバイオコークスを製造するものである。上記した圧力、温度条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲とする。即ち、前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲である。
【0021】
図1を参照して、本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成につき説明する。
本実施例のバイオコークス製造装置1は、ターンテーブル20に複数の円筒状反応シリンダ2を載置し、ターンテーブル20を回して、各操作位置に固定された専用の加圧シリンダの下で個別の操作を行う構成としている。この構成により、原料の充填・圧縮操作、反応操作、製品排出操作を同時に行うことが可能となり、設備数の低減及び時間の短縮化が達成できるものである。
【0022】
即ち、図1に示すように、ターンテーブル20の円周方向に沿って順に、(A)反応シリンダ内にバイオマス粉砕物を充填して予備加圧する充填圧縮位置と、(B)前記予備加圧後のバイオマス粉砕物を前記加圧範囲に加圧した状態で前記温度範囲にて一定時間加熱した後冷却する反応位置と、(C)前記反応終了後のバイオコークス製品を排出する製品排出位置と、を少なくとも有する(図2参照)。さらに好適には、C製品排出位置の後流側にDメンテナンス位置が存在するとよい。また、各位置は夫々2以上設けられる。これらは、ターンテーブル20の回転に関わらず定位置に設定されている。夫々の位置における具体的な装置構成については後述する。
さらに、上記した各位置が夫々2以上設けられ、少なくともB反応位置が、前記ターンテーブル20の回転中心を通る直線上に対向して位置するように設定され、夫々の位置に対応した操作が複数の反応シリンダ2にて同時に行われるようになっている。
【0023】
一例として図1には、2連式の装置構成を示している。この2連式の装置では、ターンテーブル20上にB反応位置が対向して2つ設けられており、これに対応して、A原料充填圧縮位置、C製品排出位置、Dメンテナンス位置が夫々2つずつ設けられている。
また他の例として、図7に4連式の装置構成を示す。この4連式の装置では、ターンテーブル20上に、円周に沿って90度間隔でB反応位置が4つ設けられており、これに対応してA原料充填圧縮位置、C製品排出位置、Dメンテナンス位置が夫々4つずつ設けられている。何れの構成においてもB反応位置はターンテーブル20の回転中心を通る直線上に対向して位置しているため、加圧時に力学的バランスを取ることができ、ターンテーブル20に歪みが生じることなく円滑に反応を行うことが可能である。
【0024】
具体的な装置構成につき、以下に示す。
本実施例の装置は、バイオマス粉砕物が投入される円筒形の反応シリンダ2を複数有している。該反応シリンダ2は、図1に示すようにターンテーブル20の同一円周上に同一間隙を隔てて固定されている。また、図3乃至図6に示すように該反応シリンダ2は、温度調節手段としてジャケットを設けた二重管構造とし、内筒と外筒の間に冷熱媒通路3が設けられている。該冷熱媒通路3には、熱媒若しくは冷媒(以後、冷熱媒と称する)が通流し、該冷熱媒によりシリンダ内筒に充填されたバイオマス粉砕物に熱エネルギを与えるようになっている。冷熱媒通路3の下方側には冷熱媒入口3aが設けられ、上方側には冷熱媒出口3bが設けられている。尚、温度調節手段として本実施例では冷熱媒通路を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば電磁誘導ヒータ等の加熱手段と、空冷又は水冷等の冷却手段の組み合わせとしてもよい。
【0025】
前記ターンテーブル20の回転中心には回転軸23が配設され、該回転軸23はモータ21により回転駆動される。この回転軸23には、水平方向に対して放射状に支持アーム24が延設され、該支持アーム24の先端には前記反応シリンダ2が固定されている。そして、回転軸23の回転に伴い、支持アーム24の先端に固定された反応シリンダ2が回転し、操作位置A乃至Dで停止して各操作が行われるようになっている。各位置における位置合わせには、例えば光学的位置センサ等が用いられる。
【0026】
前記反応シリンダ2の下方には、ターンテーブル20上に固定された底板シリンダ11と、該底板シリンダ11に対応した底板ピストン12が配設されている。該底板シリンダ11はターンテーブル20上に載置された油圧ユニット30に接続され、該油圧ユニットによって底板ピストン12は底板シリンダ11内を上下動自在に駆動される。尚、本実施例では底板シリンダ11が油圧駆動回路により駆動する構成を例示したが、他にも電動回路等を用いることができる。
【0027】
次に、各位置における装置構成の具体例につき説明する。
A原料充填圧縮位置では、反応シリンダ2内に原料を供給して、バイオマス粉砕物を予備加圧する工程を行う。
図3に、A原料充填圧縮位置における装置構成を示す。本装置は、前記反応シリンダ2の上方に円筒形のガイド筒5が配置されている。該ガイド筒5は、ターンテーブル20の回転の影響を受けない位置に固定されている。前記反応シリンダ2の位置合わせにおいて、ガイド筒5の下側開口と反応シリンダ2の上側開口が当接するように設定する。
前記ガイド筒5には原料フィーダ7を介して、原料であるバイオマス粉砕物が投入される原料ホッパ6が連結されている。原料フィーダ7にはこれを駆動するモータ8が連結されており、該原料フィーダ12による原料供給量は、モータ8の回転数を制御することにより調整される。
また、前記ガイド筒5の上方には、前記ガイド筒5と同様にターンテーブル20の回転の影響を受けない位置に固定された予備加圧シリンダ9と、該シリンダ9内を摺動する予備加圧ピストン10が設けられている。該予備加圧ピストン10は、不図示の電動回路若しくは油圧駆動回路により前記予備加圧シリンダ9に対して上下方向に往復動するようになっている。
前記反応シリンダ2の下方には、該シリンダ2の底部開口を封止して底面を形成するごとく前記底板ピストン12が配置される。
【0028】
このような構成を有する装置によりA原料充填圧縮位置では、原料ホッパ6から供給されたバイオマス粉砕物を原料フィーダ7により所定量ずつガイド筒5及び反応シリンダ2内に供給し、該ガイド筒5の上方から予備加圧ピストン10によりバイオマス粉砕物を押し込み、予備加圧する。
尚、原料となるバイオマス粉砕物の前処理として、バイオマスの含水率を5〜10%に乾燥させる水分調整を行い、該乾燥したバイオマスを粒子径3mm以下、好ましくは0.1mm以下に粉砕することが好ましい。また、バイオマスの種類によっては乾燥・粉砕後に調湿する場合もある。
【0029】
A原料充填圧縮位置にてバイオマス粉砕物の充填、圧縮(予備加圧)が終了したら、予備加圧シリンダ9にてピストン10を引き上げた後、ターンテーブル20を回転させ(図1では45°)、反応シリンダ2、底板シリンダ11及びピストン12をB反応位置まで回して位置合わせを行う。
【0030】
B反応位置では、反応シリンダ2内の予備加圧されたバイオマス粉砕物を加圧し、該加圧した状態で加熱して一定時間保持した後、冷却する工程を行う。
図4に、B反応位置における具体的な装置例を示す。本装置は、A原料充填圧縮位置から移動してきた反応シリンダ2と、底板シリンダ11及びピストン12を備えるとともに、前記反応シリンダ2の上方に、ターンテーブル20の回転の影響を受けない位置に固定された反応用加圧シリンダ15と、該シリンダ15により上下方向に往復動する反応用加圧ピストン16とを備えている。
【0031】
このような構成を有する装置によりB反応位置では、反応用加圧シリンダ15にて加圧ピストン16を駆動し、該加圧ピストン16により反応シリンダ2内のバイオマス粉砕物を8〜25MPaに加圧して圧縮する。同時に、反応シリンダ2の冷熱媒通路3に熱媒を通流し、シリンダ2内のバイオマス粉砕物を115〜230℃に加熱する。このとき、予め反応シリンダ2内を加熱しておいてから加圧してもよいし、逆に加圧してから加熱してもよく、ほぼ同時に加熱と加圧を行うようにする。
上記した温度、圧力、及び含水率は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンが熱分解又は熱硬化反応が誘起される範囲に設定される。言い換えれば、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する範囲である。ここで含水率は、反応シリンダ2内にて水分が亜臨界状態を形成するのに十分な範囲となっている。
【0032】
反応シリンダ2内のバイオマス粉砕物は、上記した加圧、加熱状態を一定時間保持する。
上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物の成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、反応シリンダ2内に発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できる。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0033】
反応終了後に、反応シリンダ2の冷熱媒通路3から熱媒を抜き、冷媒を通流させる。尚、本実施例において、熱媒としてはシリコンオイル、スチームが好適に用いられ、冷媒としてはシリコンオイル、水、或いは空気が好適に用いられる。シリンダ2内の加圧状態を維持した状態で、冷媒により50℃以下、好適には40℃以下になるまで冷却する。尚、この温度より高い温度でバイオコークスを取り出すと、ヘミセルロースによる接着効果が低下するため、冷却した後に排出するようにする。
【0034】
一方、上記したように、B反応位置に反応シリンダ2が到達した時、A原料充填圧縮位置には新しい反応シリンダ2’が来るので、該新しい反応シリンダ2’では上記操作と並行して原料充填圧縮工程を行うようにする。尚、図1において、反応シリンダ2’、2”は反応シリンダ2に含まれる。
【0035】
B反応位置にて反応工程の終了後、B反応位置の反応用加圧ピストン16と、A原料充填圧縮位置の予備加圧ピストン10が上昇したことを確認した後、ターンテーブル20を回転させ(図1では45°)、反応シリンダ2、底板シリンダ11及びピストン12をC製品排出位置まで移動させる。
【0036】
図5に、C製品排出位置における具体的な装置例を示す。本装置は、B反応位置から移動してきた反応シリンダ2と、底板シリンダ11とピストン12を備えるとともに、前記反応シリンダ2の上方に、ターンテーブル20の回転の影響を受けない位置に固定された製品排出用加圧シリンダ17と、該シリンダ17により上下方向に往復動する製品排出用加圧ピストン18とを備えている。
このような構成を有する装置によりC製品排出位置では、製品排出用加圧シリンダ17にて製品排出用加圧ピストン18を駆動し、該加圧ピストン18により反応シリンダ2内のバイオコークスを押し下げ、同時に底板シリンダ11により底板ピストン12を下降させることによって、バイオコークス製品を反応シリンダ2の下方に押し出し、該製品を回収する。
【0037】
同時に、A原料充填圧縮位置に新しい反応シリンダ2”が来るので、原料の充填、予備加圧を行い、B反応位置に移動した反応シリンダ2’は反応工程を行う。
C製品排出位置での排出工程が終了後、製品排出用加圧ピストン18と、B反応位置の反応用加圧ピストン16と、A原料充填圧縮位置の予備加圧ピストン10が上昇したことを確認した後、ターンテーブル20を回転させ(図1では45°)、反応シリンダ2及び底板シリンダ11、ピストン12をDメンテナンス位置まで回す。同時に、A、B、Cの各位置では新たに回ってきた反応シリンダ2に所定の操作を行う。
【0038】
図6に、メンテナンス位置における具体的な装置例を示す。Dメンテナンス位置では、反応シリンダ2の整備と、油圧ユニット30により底板シリンダ11を介して底板ピストン12の上昇操作を行う。そして、Dメンテナンス位置での整備、点検等のメンテナンス、及びA、B、Cの各位置での所定の操作が終了したことを確認した後、ターンテーブル20を回転し、反応シリンダ2を第2の原料ホッパ6の下に移動させ、上記した同様の操作を繰り返す。
【0039】
本実施例のバイオコークス製造装置1を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
また、本実施例では複数の反応シリンダ2を載置したターンテーブル20を備え、バイオコークス生産に必要な単位操作を少なくともA原料充填圧縮位置、B反応位置、C製品排出位置に分け、これらを同時に行えるようにしたため、設備数の低減及び時間の短縮化が可能となる。
【0040】
さらに、本実施例では各位置を少なくとも2以上ずつ設け、且つB反応位置がターンテーブル20の回転軸23を通る直線上にて対向して配置されるようにしており、これにより大きな加圧力が加わるB反応位置にて、加圧時に力学的バランスを取ることができ、ターンテーブル20に歪みが生じることなく円滑に反応を行うことが可能となる。
また、本実施例では夫々の位置に応じた操作を補助する専用の加圧シリンダを各位置に固定配置することにより、設備コストを低減し、各操作における高効率化が達成できる。
さらにまた、嵩密度の大きいバイオマス粉砕物の予備加圧にて、ガイド筒5を用いる構成としたため、反応シリンダ2のシリンダ長を短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本実施例に係るバイオコークス製造装置を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例に係るバイオコークス製造装置の平面図である。
【図2】本実施例の各位置における装置の概略構成を示し、(A)は原料充填圧縮位置における側断面図、(B)は反応位置における側断面図、(C)は製品排出位置における側断面図である。
【図3】本実施例のA原料充填圧縮位置における装置構成を示す側断面図である。
【図4】本実施例のB反応位置における装置構成を示す側断面図である。
【図5】本実施例のC製品排出位置における装置構成を示す側断面図である。
【図6】本実施例のDメンテナンス位置における装置構成を示す側断面図である。
【図7】図1の他の実施例に係るバイオコークス製造装置の平面図である。
【図8】バイオコークスの物性値を比較する表である。
【符号の説明】
【0043】
1 バイオコークス製造装置
2 反応シリンダ
3 冷熱媒通路(温度調節手段)
5 ガイド筒
6 原料ホッパ
9 予備加圧シリンダ
10 予備加圧ピストン
11 底板シリンダ
12 底板ピストン
15 反応用加圧シリンダ
16 反応用加圧ピストン
17 製品排出用加圧シリンダ
18 製品排出用加圧ピストン
20 ターンテーブル
23 回転軸
30 油圧ユニット
A 原料充填圧縮位置
B 反応位置
C 製品排出位置
D メンテナンス位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
複数の円筒状反応シリンダが、ターンテーブルの同一円周上に同一間隙を隔てて載置されており、前記ターンテーブルの円周方向に沿って順に、前記反応シリンダ内にバイオマス粉砕物を充填して予備加圧する充填圧縮位置と、前記予備加圧後のバイオマス粉砕物を前記加圧範囲に加圧した状態で前記温度範囲にて一定時間加熱した後冷却する反応位置と、前記反応終了後のバイオコークス製品を排出する製品排出位置と、が前記ターンテーブルの回転に関わらず定位置に設定されるとともに、
上記した各位置が夫々2以上設けられ、少なくとも前記反応位置が、前記ターンテーブルの回転中心を通る直線上に対向して位置するように設定され、
夫々の位置に対応した操作が複数の反応シリンダにて同時に行われるようにしたことを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記充填圧縮位置と前記反応位置と前記製品排出位置には、夫々の位置に応じた操作を補助する専用の加圧シリンダが前記ターンテーブルの回転に影響されない位置に固定配置されており、これらの加圧シリンダは、そのシリンダ長及び加圧能力が夫々の位置にて異なるようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記充填圧縮位置には、前記反応シリンダの上部開口に当接するごとく設けられたガイド筒と、前記ガイド筒の上方に配置された予備加圧シリンダと、該シリンダにより上下方向に往復動する予備加圧ピストンと、が前記ターンテーブルの回転に影響されない位置に固定配置されており、
前記充填圧縮位置にて、前記ガイド筒を介して前記反応シリンダ内に供給されるバイオマス粉砕物を、前記予備加圧ピストンにより圧縮することを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項4】
前記反応シリンダが温度調節手段を有するとともに、
前記反応位置には、前記反応シリンダの上方に配置された反応用加圧シリンダと、該シリンダにより上下方向に往復動する反応用加圧ピストンと、が前記ターンテーブルの回転に影響されない位置に固定配置されており、
前記反応位置にて、前記反応用加圧ピストンによりバイオマス粉砕物を加圧した状態で前記温度調節手段により一定時間加熱した後冷却することを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項5】
前記製品排出位置には、前記反応シリンダの上方に配置された製品排出用加圧シリンダと、該シリンダにより上下方向に往復動する製品排出用加圧ピストンと、が前記ターンテーブルの回転に影響されない位置に固定配置されており、
前記製品排出位置にて、前記製品排出用加圧ピストンにより反応シリンダ内のバイオコークス製品を下方に押し出して排出することを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項6】
前記製品排出位置の後流側に、前記反応シリンダのメンテナンスを行うメンテナンス位置を設けたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−185183(P2009−185183A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26956(P2008−26956)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】