説明

バイオチップ、バイオチップ読み取り装置、およびバイオチップ読み取り方法

【課題】 サイトの位置を容易に検出できるバイオチップ等を提供する。
【解決手段】 バイオチップ60の基板61上にサイト領域62が形成されている。サイト領域62には多数のサイトがマトリクス状に配置されている。サイト領域62の周囲には4つのマーカ63が設けられている。サイト領域62のサイトはDNA溶液等のスポット液を滴下することで形成されている。また、マーカ63もサイトの形成に用いる装置を用いて、不透明な液を滴下することで形成されている。サイトおよびマーカ63は同一装置によるスポットで連続して形成されているため、互いの位置関係が精度良く規定されている。基板61は例えばガラスを用いて形成される。基板61は透明であってもよく、あるいは表面に金属層を設けるなどして不透明、あるいは反射性であってもよい。マーカ63は基板61との関係で、反射光あるいは透過光によって、その位置が認識可能なように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトで発生する蛍光の光量分布に基づいて分析を行うバイオチップ、バイオチップ読み取り装置およびバイオチップ読み取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA等の生体高分子を同定する方法として、バイオチップを用いた方法が知られている。例えばDNAを同定する場合、既知の塩基配列を有するDNAプローブをバイオチップの各サイトに固定し、ハイブリダイゼーションによって相補的な塩基配列をもつDNAを各サイトに結合させるものである。結合したDNAを蛍光分子で標識しておくことで、結合量を蛍光の光量として認識できる。
【0003】
【非特許文献1】牧野徹・狩野恭一、会誌「光学」 ライフサイエンスにおける光技術 「DNA解析と光技術」、第28巻10号(1999)、(社)応用物理学会分科会 日本光学会、1999年、p549〜552
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光量は専用の読み取り装置を用いて計測する。各サイトの光量を計測するためにはサイトの位置を検出する必要がある。しかし、スポット液で形成されたサイトは透明であるため、撮影による位置の検出はできない。ハイブリダイズされたサイトの蛍光を利用してサイトの位置を検出することもできるが、サイトの蛍光が暗いような場合には、サイトの位置を確定することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、サイトの位置を容易に検出できるバイオチップ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバイオチップは、サイトで発生する蛍光の光量分布に基づいて分析を行うバイオチップにおいて、前記サイトとの位置関係が予め規定されたマーカが形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記サイトおよび前記マーカが、同一装置による同等の工程により形成されていてもよい。
【0008】
前記マーカは、染料、顔料、生体高分子に結合された金属コロイド、生体高分子に結合された染料および生体高分子に結合された顔料の少なくともいずれか一方であることを特徴とする。
【0009】
本発明のバイオチップ読み取り装置は、バイオチップ上のサイトで発生する蛍光の光量分布に基づいて分析を行うバイオチップ読み取り装置において、バイオチップに形成された、前記サイトとの位置関係が予め規定されたマーカの位置を検出するマーカ位置検出手段と、検出されたマーカの位置に基づいてバイオチップ上のサイトの位置を認識する認識手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のバイオチップ読み取り方法は、バイオチップ上のサイトで発生する蛍光の光量分布に基づいて分析を行うバイオチップ読み取り方法において、バイオチップに形成された、前記サイトとの位置関係が予め規定されたマーカの位置を検出するステップと、検出されたマーカの位置に基づいてバイオチップ上のサイトの位置を認識するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバイオチップによれば、サイトとの位置関係が予め規定されたマーカが形成されているので、マーカの位置に基づいてサイトの位置を容易に認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1〜図3を参照して、本発明によるバイオチップの一実施形態について説明する。
【0013】
図1は本実施形態のバイオチップの構成を示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、バイオチップ60の基板61上にはサイト領域62が形成されている。サイト領域62には多数のサイトがマトリクス状に配置されている。サイト領域62の周囲には4つのマーカ63が設けられている。
【0015】
サイト領域62のサイトはDNA溶液等のスポット液を滴下することで形成されている。また、マーカ63もサイトの形成に用いる装置を用いて、不透明な液を滴下することで形成されている。サイトおよびマーカ63は同一装置によるスポットで連続して形成されているため、互いの位置関係が精度良く規定されている。位置関係が規定できれば、製造方法は限定されない。不透明な液は、染料、顔料、或いはDNAに金コロイドを結合させたり、DNAにビオチンを介して染料や顔料などの色素を結合させることでも実現できる。
【0016】
基板61は例えばガラスを用いて形成される。基板61は透明であってもよく、あるいは表面に金属層を設けるなどして不透明、あるいは反射性であってもよい。
【0017】
マーカ63は基板61との関係で、反射光あるいは透過光によって、その位置が認識可能なように形成される。マーカ63が形成された領域と形成されていない領域との間で、後述する照明光に対する反射率あるいは透過率が異なればよい。
【0018】
図2は、バイオチップ60を読み取るためのバイオチップ読み取り装置の光学系の構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のバイオチップ読み取り装置は、バイオチップ60に励起光を照射するための光学系として、励起光を発生するレーザ光源1と、光学系2と、レーザ光を折り曲げるダイクロイックミラー3と、を備える。
【0020】
レーザ光源1の波長は、例えば、cy3やcy5の蛍光分子の励起光に合致するものである。
【0021】
また、本実施形態のバイオチップ読み取り装置は、バイオチップ60からの光を受けるための光学系として、光路に配置されたバリアフィルタ11および光学系12と、光学系12を通過した光を受けるCCDカメラ13と、を備える。
【0022】
さらに、本実施形態のバイオチップ読み取り装置は、バイオチップ60の反射照明を行うための光学系として、白色光を出力する光源21と、バリアフィルタ21と、光源21からの光を折り曲げるダイクロイックミラー23と、を備える。バリアフィルタ22は光源21から出力される光のうち、蛍光分子の励起光の波長成分を除去し、あるいは励起光よりも長い波長の光のみを通過させる機能を有する。これにより、蛍光分子の蛍光退色を防止している。
【0023】
さらにまた、本実施形態のバイオチップ読み取り装置は、バイオチップ60の透過照明を行うための光学系として、白色光を出力する光源31と、バリアフィルタ32と、を備える。バリアフィルタ32は光源31から出力される光のうち、蛍光分子の励起光の波長成分を除去し、あるいは励起光よりも長い波長の光のみを通過させる機能を有する。これにより、蛍光分子の蛍光退色を防止している。
【0024】
図1に示すように、バイオチップ60はテーブル41に載置される。
【0025】
図2は本実施形態のバイオチップ読み取り装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、本実施形態のバイオチップ読み取り装置は、種々の演算を行う演算部51と、レーザ光源1、光源21、光源31、CCDカメラ13および演算部51を制御する制御部61と、を備える。
【0027】
次に、バイオチップ60上のサイトの位置を検出する手順について説明する。
【0028】
本実施形態では、バイオチップの構成に応じて反射光あるいは透過光を用いてマーカ63の位置を検出し、マーカ63の位置に基づいてサイト領域62の位置を認識することができる。
【0029】
反射光を用いる場合には光源21を作動させる。光源21からの光はバリアフィルタ22を通ってダイクロイックミラー23で折り曲げられ、ダイクロイックミラー3を通過してバイオチップ60を照明する。バイオチップ60における反射光は図1において上方に進み、CCDカメラ13に入射する。CCDカメラ13の出力信号は演算部51に送られ、演算部51ではバイオチップ60上のマーカ63の位置を検出する。
【0030】
上記のように、本発明のバイオチップではマーカ63とサイト領域62との位置関係が規定されているので、演算部51において、マーカ63の位置に基づいてサイト領域62の位置を認識できる。
【0031】
サイトの位置検出に透過光を用いる場合には、光源31を作動させる。光源31からの光はバリアフィルタ32を通ってバイオチップ60をテーブル41の側から照明する。透過光は上記の反射光と同様、図1において上方に進み、CCDカメラ13に入射する。CCDカメラ13の出力信号は演算部51に送られ、演算部51ではバイオチップ60上のサイトの位置を検出する。
【0032】
上記のように、バイオチップではマーカ63とサイト領域62との位置関係が規定されているので、演算部51において、マーカ63の位置に基づいてサイト領域62の位置を認識できる。
【0033】
次に、バイオチップ60の測定時の動作について説明する。
【0034】
測定時には、レーザ光源1から出力されたレーザ光は光学系2を通り、ダイクロイックミラー3で折り曲げられてバイオチップ60に照射される。
【0035】
レーザ光による励起により発生したバイオチップ60からの蛍光は、ダイクロイックミラー3、ダイクロイックミラー23、バリアフィルタ11および光学系12を介してCCDカメラ13に入射する。CCDカメラ13の出力信号は演算部51に送られ、演算部51ではバイオチップ60上の各サイトの蛍光の光量を測定する。
【0036】
各サイトの蛍光の光量を算出するためには、各サイトの位置を特定する必要がある。ここでは、上記手順による検出結果に従って、画像処理によりCCDカメラ13による画像からサイトの位置を切り出したうえで、その領域の光量を計測している。上記のように本実施形態では、マーカ63の位置からサイト領域62の位置が正確に認識されるので、各サイトの光量が精度良く測定できる。
【0037】
なお、バイオチップ60からの蛍光をCCDカメラで取り込んだ後、マーカ63の位置を検出してもよい。取り込んだ画像をマーカ63の位置の検出結果に基づいて後から切り出し、蛍光の光量を測定することができる。
上記実施形態では、蛍光分子の蛍光退色を避ける目的で照明光の波長を制限しているが、蛍光退色が問題とならないのであれば、照明光の波長は任意に選択できる。
【0038】
上記実施形態では、白色光源とバリアフィルタを組み合わせて照明光を得ているが、これに代えて、LED、エレクトロ・ルミネセンス、あるいはレーザ光源等を用いることもできる。
また、対象となる生体高分子は、DNAに限るものではなく、RNA、たんぱく、糖鎖、生体代謝物でも良い。
【0039】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、サイトで発生する蛍光の光量分布に基づいて分析を行うバイオチップ、およびそのようなバイオチップを読み取る場面に対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態のバイオチップの構成を示す平面図。
【図2】本実施形態のバイオチップ読み取り装置の光学系の構成を示す図。
【図3】本実施形態のバイオチップ読み取り装置の制御系の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0041】
13 CCDカメラ(マーカ位置検出手段)
51 演算部(マーカ位置検出手段、認識手段)
21 光源(照明手段)
22 バリアフィルタ(照明手段)
31 光源(照明手段)
22 バリアフィルタ(照明手段)
60 バイオチップ
62 サイト領域(サイト)
63 マーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトで発生する蛍光の光量分布に基づいて分析を行うバイオチップにおいて、
前記サイトとの位置関係が予め規定されたマーカが形成されていることを特徴とするバイオチップ。
【請求項2】
前記サイトおよび前記マーカが、同一装置による同等の工程により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項3】
前記マーカは、染料、顔料、生体高分子に結合された金属コロイド、生体高分子に結合された染料および生体高分子に結合された顔料の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイオチップ。
【請求項4】
バイオチップ上のサイトで発生する蛍光の光量分布に基づいて分析を行うバイオチップ読み取り装置において、
バイオチップに形成された、前記サイトとの位置関係が予め規定されたマーカの位置を検出するマーカ位置検出手段と、
検出されたマーカの位置に基づいてバイオチップ上のサイトの位置を認識する認識手段と、
を備えることを特徴とするバイオチップ読み取り装置。
【請求項5】
バイオチップ上のサイトで発生する蛍光の光量分布に基づいて分析を行うバイオチップ読み取り方法において、
バイオチップに形成された、前記サイトとの位置関係が予め規定されたマーカの位置を検出するステップと、
検出されたマーカの位置に基づいてバイオチップ上のサイトの位置を認識するステップと、
を備えることを特徴とするバイオチップ読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−93248(P2007−93248A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279503(P2005−279503)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】