説明

バイオディスクを有するサンプル調製用流体回路及びそれに関連した方法

流体を受け取ると共に流体の成分を流体から分離する流体回路は、流体を受け取る分離チャンバと、分離チャンバと流体連通する空気チャンバと、分離チャンバと流体連通する戻り流路とを含む。有利な一実施形態では、当該流体回路は遠心力等の力を受け、それにより、流体の成分のほぼすべてが戻り流路に移動し、流体の残部のほぼすべてが分離チャンバに移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
[発明の分野]
本発明は、包括的に、光ディスク、光ディスクドライブ、及び光ディスクインタロゲーション(optical disc interrogation)方法、特に光ディスク内でのサンプル調製に関する。より具体的には、本発明は、回転式に制御される液体弁を有する流体回路を有する光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連技術の説明]
光バイオディスク(バイオコンパクトディスク(BCD)、バイオ光ディスク、光分析ディスク、又はコンパクトバイオディスクとも呼ばれる)は、各種タイプの生化学分析を行う当該技術分野において既知である。特に、光ディスクは、光学的記憶デバイスのレーザ源を用いて、ディスク自体の動作面上での又はその動作面付近での生化学反応を検出することができる。これらの反応は、ディスクの内側の小さな流路において起こっている可能性があるか、又はディスクの開面上で起こる反応であり得る。システムがどんなものであっても、複数の反応部位を用いて、種々の反応を同時に検出するか、又は、エラーを検出する目的で同じ反応を繰り返すことができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[発明のいくつかの実施形態の概説]
一つの実施の態様では、本発明は、サンプル分離に用いられる空気圧流体変位のために、個別に又は空気チャンバと組み合わせて用いることができる回転式に制御される液体弁を有する流体回路を有する光ディスク、及び関連したディスクドライブシステム及び方法を対象とする。
【0004】
例示的な一つの実施の態様では、本発明は光分析バイオディスクを対象とする。当該ディスクは、内周及び外周を有する基板と、基板に付随すると共に情報トラックに沿って位置する符号化情報を有する動作層と、調査特徴(investigational features)を有する分析区域とを有利に含むことがあり得る。この実施の態様では、分析区域は、内周と外周との間に位置し、情報トラックに沿って導かれ、そのため、電磁エネルギーの入射ビームがそれら情報トラックに沿ってトラッキングすると、それにより、分析区域内の調査特徴が円周方向にインタロゲートされる(interrogated)ようになっている。
【0005】
別の実施の態様では、本発明は、上記に定義された光分析ディスクであって、電磁エネルギーの入射ビームが情報トラックに沿ってトラッキングすると、それにより、分析区域内の調査特徴が、螺旋経路に従って、又は概して変化する角座標の経路に従ってインタロゲートされる、光分析ディスクを対象とする。
【0006】
一つの有利な実施の態様では、基板は、内周から外周に延びる半径に応じて円周が増す一連のほぼ円形の情報トラックを有し、分析区域は、予め選択された数の円形の情報トラック間に円周方向に延び、調査特徴は、予め選択された内周と外周との間の円形の情報トラックにほぼ沿ってインタロゲートされる。
【0007】
一つの実施の態様では、分析区域は流体チャンバを有する。好ましくは、バイオディスクの回転により、分析区域に沿ってほぼ一定の分布で、且つ/又は分析区域に沿ってほぼ
均一な分布で調査特徴が分配される。
【0008】
本発明はさらに、光分析バイオディスクを対象とする。この実施の態様では、バイオディスクは、内周及び外周を有する基板と、調査特徴を有する分析領域であって、基板の内周と外周との間に位置すると共に、変化する角座標に従って、好ましくは、ほぼ円周方向又は螺旋の経路に従って延びる分析領域とを含む。
【0009】
好ましくは、分析領域は、変化する角度及び動径座標に従って延びる。代替的な一つの実施の態様では、分析領域は、変化する角座標に従って、且つほぼ固定された動径座標で延びる。
【0010】
一つの実施の態様では、ディスクは、基板に付随すると共に、情報トラックにほぼ沿って位置する符号化情報を有する動作層を含む。
【0011】
別の実施の態様によれば、基板は、好ましくはほぼ円形の外形を有する、内周から外周に延びる半径に応じて円周が増す一連の情報トラックを有し、分析領域は、情報トラックにほぼ沿って導かれ、そのため、電磁エネルギーの入射ビームが情報トラックに沿ってトラッキングすると、それにより、分析領域内の調査特徴が円周方向にインタロゲートされるようになっている。一つの実施の態様では、分析領域は、予め選択された数の円形の情報トラック間に円周方向に延び、調査特徴は、予め選択された内周と外周との間の円形の情報トラックにほぼ沿ってインタロゲートされる。
【0012】
別の実施の態様では、分析領域は、複数の反応部位及び/又は複数の捕捉領域、又は変化する角座標に従って配置された標的領域を有する。
【0013】
光分析バイオディスクはまた、基板の内周と外周との間に位置する複数の分析領域を有し、これら分析領域のうちの少なくとも1つは変化する角座標に従って延びる。
【0014】
好ましくは、複数の分析領域は、ほぼ円周方向の経路に従って延び、バイオディスクの内周の周りに同心配置される。
【0015】
異なる一つの実施の態様では、ディスクは、分析領域の複数の段を有し、各分析領域は、ほぼ円周方向の経路に従って延び、各段は、バイオディスク上の各動径座標に配置される。
【0016】
さらなる好適な実施の態様では、分析領域は、変化する角座標に従って延びる1つ又は複数の流体チャンバを有し、当該チャンバ(複数可)は、変化する角座標に従って延びる中央部、及び半径方向に従って延びる2つの側方向アーム部を有する。
【0017】
好ましくは、チャンバの中央部は、比θa/θが0.25以上である(角度θはチャンバのアーム部間である)角度延長θaを有する。
【0018】
さらに、かかる実施の態様では、分析領域がほぼ円周方向の経路に沿って延びる液体含有流路を少なくとも有し、流路の曲率半径rc及びその流路内に含まれる液体カラムの長さbは、比rc/bが0.5以上、より好ましくは1以上であっても良い。
【0019】
さらに、光分析ディスクは、分析領域に対してバイオディスク自体の下方の動径座標に位置する2つの注入ポートを有し得る。好ましくは、かかるポートはそれぞれ、流体チャンバの各側方向アーム部の一端に位置する。
【0020】
さらに好適な実施の態様では、少なくとも1つの流体チャンバは、変化する角座標に従って延びる流体流路である。
【0021】
かかる実施の態様では、ディスクは、分析流体流路の複数の段を有しても良く、最終的に、各種検定、血液型、培養細胞の濃度等を有しても良い。流体流路のセットもまた、ほぼ同一の動径座標に配置することができる。さらに、流体流路は、同じサイズ又は異なるサイズを有することができる。
【0022】
ディスクは、反射型又は透過型の光バイオディスクであり得る。先の実施の態様におけるように、好ましくは、バイオディスクの回転により、分析領域に沿ってほぼ一定且つ/又は均一な分布で調査特徴が分配される。
【0023】
別の好適な実施の態様によれば、光分析バイオディスクは、内周及び外周を有する基板と、調査特徴を有すると共に基板の内周と外周との間に位置する分析領域とを有し得る。分析領域は、少なくともほぼ円周方向の経路に沿って延びる部分を有する液体含有流路を少なくとも有する。流路の円周方向部分の曲率半径rc及び流路内に含まれる液体カラムの長さbは、好ましくは、比rc/bが0.5以上である。より好ましくは、比rc/bは1以上である。また、この実施の態様では、ディスクは、反射型又は透過型の光バイオディスクであり得る。
【0024】
本発明は、これまで定義したように、光分析バイオディスクと共に使用する光分析バイオディスクシステムであって、調査特徴を変化する角座標に従ってインタロゲートするようになっている、調査特徴のインタロゲーションデバイス(interrogation devices)を有する、光分析バイオディスクシステムも対象とする。
【0025】
かかるインタロゲーションデバイスは、電磁エネルギーの入射ビームがディスク情報トラックに沿ってトラッキングすると、それにより、分析領域内のいかなる調査特徴も円周方向にインタロゲートされるようなものであり得る。
【0026】
好ましくは、インタロゲーションデバイスは、ほぼ固定された動径座標にて変化する角座標に従って、又は代替的に変化する角度及び動径座標に従って調査特徴をインタロゲートするようになっている。
【0027】
より好ましくは、インタロゲーションデバイスを用いて、螺旋又はほぼ円周方向の経路に従って調査特徴をインタロゲートする。
【0028】
さらなる好適な実施の態様によれば、インタロゲーションデバイスを用いて、変化する角座標に従って配置された複数の反応部位又は捕捉領域又は標的領域にて調査特徴を呼びかける。
【0029】
本発明はまた、これまで定義したように、光分析バイオディスク内で調査特徴をインタロゲートする方法も対象とする。当該方法は、変化する角座標に従って、好ましくは螺旋又はほぼ円周方向の経路に従って、調査特徴のインタロゲーションを行う。
【0030】
また、かかるインタロゲーションステップは、電磁エネルギーの入射ビームがディスク情報トラックに沿ってトラッキングすると、それにより、分析領域内のいかなる調査特徴も円周方向にインタロゲートされるようなものであり得る。
【0031】
好ましくは、インタロゲーションステップは、ほぼ固定された動径座標にて変化する角座標に従って、又は代替的には変化する角度及び動径座標に従って調査特徴のインタロゲ
ーションを行う。
【0032】
さらなる好適な実施の態様によれば、インタロゲーションステップは、変化する角座標に従って配置された複数の同様の又は異なる反応部位、捕捉領域、又は標的領域にて調査特徴のインタロゲーションを行う。
【0033】
本発明又は本発明の各種態様は、従来技術に開示されているディスク、検定、及びシステムの多くにおいて容易に実施され得るか、又はそれらに適合し得る。
【0034】
本明細書に開示される本発明による上述の方法及び装置は、試験を実行するのに熟練技術者を必要としない単純且つ迅速なオンディスク(on-disc)処理、サンプルが小体積であること、安価な物質の使用、既知の光ディスクフォーマットの使用及びドライブ製造が挙げられるがこれらに限定されない1つ又は複数の利点を有することができる。これら及び他の特徴並びに利点は、添付の図面及び技術の実施例と共に以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【0035】
本発明のさらに別の目的は、当該目的に寄与する追加の特徴及び当該目的から生じる利点と共に、以下の本発明の好ましい実施形態の説明から明らかになるであろう。これらの好ましい実施形態は、添付図面の図に示される。添付図面の図では、全体を通して、同様の参照番号は同様の構成要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
[好適な実施形態の詳細な説明]
次に、本発明の実施形態を添付の図を参照しながら説明するが、同様の数字は図面を通して同様の要素を指す。本明細書中に提示される説明に用いられる術語は、本発明の或るいくつかの特定の実施形態の詳細な説明と共に用いられているにすぎないため、限定的又は制限的に解釈されることは意図されない。さらに、本発明の実施形態はいくつかの新規な特徴を有しても良く、そのうちの1つだけがその所望の属性に関与する唯一のものではなく、又は本明細書に記載されている本発明を実施するのに必要不可欠であるわけではない。
【0037】
図1は、生化学分析、特に細胞計数及び分画細胞計数を実施するための、光バイオディスク110の斜視図である。該光バイオディスク110は、光ディスクドライブ112及び表示モニタ114と共に示される。
【0038】
図2は、光バイオディスク110の一実施形態の主要な構造上の要素の分解斜視図である。図2は、本明細書に記載のシステム及び方法と組み合わせて使用することができる反射領域の光バイオディスク110(以下「反射型ディスク」と呼ぶ)の例である。光バイオディスク110には、キャップ部116、接着部材又は流路層118及び基板120が含まれる。図2の実施形態において、キャップ部116は、1つ又は複数の注入ポート122及び1つ又は複数の通気ポート124を含む。キャップ部116は、ポリカーボネートで作製することができ、図2の斜視図に見られるように、その底部は、反射面146(図4に示す)で被覆されることが好ましい。一実施形態では、トリガマーク又はトリガマーキング126が、反射層142(図4に示す)の表面上に備えられる。トリガマーキング126には、バイオディスクの3つの層すべてにおいて透明窓、不透明区域又は反射区域若しくは半反射区域が含まれ得る。これらの透明窓、不透明区域又は反射区域若しくは半反射区域には、情報が符号化される。この情報は、プロセッサ166にデータを送信し、次に、インタロゲーションビーム又は入射ビームの操作機能と相互作用する」。
【0039】
図2に示す実施形態において、接着部材又は流路層118は、流体回路128、すなわ
ち内部に形成されたU字型流路を有する。この流体回路128は、膜を打ち抜くか、又は膜を切り取ってプラスチック薄膜を除去し、図示するような形状を形成することにより形成され得る。流体回路128のそれぞれは、フロー流路又は分析領域130及び戻り流路132を含む。図2に示す流体回路128のいくつかは、混合チャンバ134を含む。2つの異なる型の混合チャンバ134が示されている。第1の混合チャンバは、フロー流路130に対して対称的に形成された対称混合チャンバ136である。第2の混合チャンバは、オフセット混合チャンバ138である。このオフセット混合チャンバ138は、図示するように、フロー流路130の一方の側に形成される。
【0040】
図2の実施形態では、基板120は、標的領域又は捕捉領域140を含む。有利な実施形態において、基板120は、ポリカーボネートで作製され、その上部には上記の反射層142が堆積されている(図4に示す)。標的領域140は、反射層142を除去することにより、図示した形状又は代替的に任意の所望の形状に形成される。代替的には、標的領域140は、反射層142を施す前に標的領域140の領域をマスクすることを含むマスク技法によって形成することもできる。反射層142は、例えばアルミニウム又は金といった金属から形成することができる。
【0041】
図3は、図2に示す光バイオディスク110の平面図であり、ディスク内に位置する流体回路128、標的領域140及びトリガマーキング126が見えるように、キャップ部116上の反射層146が透明で示されている。
【0042】
図4は、一実施形態による反射領域型の光バイオディスク110の拡大斜視図である。図4は、光バイオディスク110の種々の層の一部を示し、この一部は、いくつかの層の部分断面を示すために切り取られている。特に図4は、反射層142で被覆された基板120を示す。反射層142上には、活性層144が施される。好ましい実施形態では、活性層144は、ポリスチレンから形成することができる。代替的には、ポリカーボネート、金、活性ガラス(activated glass)、変性ガラス(modified glass)又は変性ポリスチレン、例えばポリスチレン−co−マレイン酸無水物(polystyrene-co-maleic anhydride)を使用することができる。さらに、ハイドロゲルを使用することができる。代替的には、この実施形態に示すように、活性層144上には、プラスチック接着部材118を施す。プラスチック接着部材118の露出部分は、切り取られたか、又は打ち抜かれたU字型を示し、このU字型が流体回路128を形成する。本バイオディスクのこの反射区域の実施形態の最後の主要な構造上の層は、キャップ部116である。図4の実施形態において、キャップ部116は、その底部に反射面146を含む。反射面146は、アルミニウム又は金といった金属から作製することができる。
【0043】
図5Aは、透過型光バイオディスク110のいくつかの要素の分解斜視図を示す。この透過型光バイオディスク110は、キャップ部116、接着部材又は流路部材118及び基板120の層を含む。本実施形態において、キャップ部116は、1つ又は複数の注入ポート122及び1つ又は複数の通気ポート124を含む。キャップ部116は、ポリカーボネート層から形成することができる。オプションのトリガマーキング126を、薄い半反射層143の表面に含むことができる。トリガマーキング126には、バイオディスクにおける3つの層すべての透明窓、不透明区域又は反射区域若しくは半反射区域が含まれ得る。これらの透明窓、不透明区域又は反射区域若しくは半反射区域には、情報が符号化される。この情報は、プロセッサ166(図6)にデータを送信し、次に、インタロゲーションビーム152の操作機能と相互作用する。
【0044】
流体回路128、すなわちU字型流路が形成された接着部材又は流路層118が示される。この流体回路128は、膜を打ち抜くか、又は膜を切り取ってプラスチック薄膜を除去し、図示するような形状を形成することにより形成される。図5Aの実施形態では、流
体回路128のそれぞれは、フロー流路130及び戻り流路132を含む。図5Aに示す流体回路128のいくつかは、図2に関して説明したような混合チャンバ134を含む。
【0045】
基板120は、標的領域又は捕捉領域140を含み得る。一実施形態において、基板120は、ポリカーボネートで作製され、図5Bに示すように、その上部には上記の薄い半反射層143が堆積されている。図5A及び図5Bに示すディスク110の基板120に付随した半反射層143は、図2、図3及び図4に示す反射型ディスク110の基板120上の反射層142よりかなり薄くても良い。このより薄い半反射層143により、インタロゲーションビーム152の一部は、図5Bに示すように、透過型ディスクの構造上の層を透過することができる。薄い半反射層143は、例えばアルミニウム又は金といった金属から形成することができる。
【0046】
図5Bは、図5Aに示す光バイオディスク110の透過型の実施形態における基板120及び半反射層143の一部を示す拡大部分切り欠き斜視図である。薄い半反射層143は、例えばアルミニウム又は金といった金属から作製することができる。有利な実施形態では、図5A及び図5Bに示す透過型ディスクの薄い半反射層143は、約100〜300Åの厚さであり、400Åを越えない。このより薄い半反射層143により、入射ビーム又はインタロゲーションビーム152の一部は、半反射層143を貫通して通過することが可能になり、それにより、上部検出器158(図6)によって検出される。一方、その光の一部は反射される、すなわち入射経路に沿って戻される。
【0047】
次に図6を参照すると、光コンポーネント148、入射ビーム又はインタロゲーションビーム152を生成する光源150、戻りビーム154及び透過ビーム156を示すブロック斜視図が示されている。図4に示す反射型バイオディスクの場合、戻りビーム154は、光バイオディスク110のキャップ部116の反射面146から反射される。本光バイオディスク110のこの反射型の実施形態では、戻りビーム154は、底部検出器157によって検出され、信号要素の存在が分析される。他方、透過型バイオディスクフォーマットでは、透過ビーム156は、上述した上部検出器158によって検出され、信号要素の存在を同様に分析される。透過型の実施形態では、上部検出器158として、光検出器を使用することができる。
【0048】
図6は、ディスク上のトリガマーキング126及び上述したトリガ検出器160を含むハードウェアトリガメカニズムも示している。このハードウェアトリガメカニズムは、反射型バイオディスク(図4)及び透過型バイオディスク(図5B)の双方で使用される。トリガメカニズムにより、プロセッサ166は、インタロゲーションビーム152がそれぞれの標的領域140、例えば所定の反応部位にある場合にのみ、データを収集することが可能になる。さらに、透過型バイオディスクシステムでは、ソフトウェアトリガも使用することができる。このソフトウェアトリガは、インタロゲーションビーム152がそれぞれの標的領域140の端部に当たるとすぐに、底部検出器を使用してプロセッサ166に信号を送り、データを収集する。さらに、図6は、光バイオディスク110の回転を制御する駆動モータ162とコントローラ164とを示している。また、図6は、代替形態において実施されるプロセッサ166及び分析装置168を示しており、これらは、透過型光バイオディスクに関連した戻りビーム154と透過ビーム156とを処理する。
【0049】
図7に示すように、光バイオディスク110の反射型ディスクの実施形態の部分断面図が表されている。図7は、基板120及び反射層142を示している。上述したように、反射層142は、例えばアルミニウム、金又は他の適切な反射材といった材料から作製することができる。本実施形態では、基板120の上面は滑らかになっている。図7は、反射層142上に施された活性層144も示している。また、図7に示すように、標的領域140は、所望の場所における反射層142の区域又は一部を除去することによるか、代
替的には、反射層142を施す前に所望の区域をマスクすることにより形成される。図7にさらに示すように、プラスチック接着部材118が活性層144上に施される。図7は、キャップ部116及びこのキャップ部116に付随した反射面146も示している。したがって、キャップ部116が、所望の切り取り形状を備えたプラスチック接着部材118に貼付されると、それによりフロー流路130が形成される。図7に示す矢印により図示するように、入射ビーム152の経路は、最初、ディスク110の下から基板120の方向に向けられている。次いで、この入射ビームは、反射層142の近くの一点で合焦する。この合焦は、反射層142の一部が存在しない標的領域140で起こるので、入射は、活性層144を通ってフロー流路130内に入る経路に沿って進み続ける。その後、入射ビーム152は、上方に進み続けてフロー流路を横切り、最終的には反射面146に入射する。この時点で、入射ビーム152は、入射経路に沿って戻され、すなわち反射し戻され、それによって戻りビーム154を形成する。
【0050】
多くの医学診断用途では、流体サンプル中に含まれる1つ又は複数の成分を分離し、次いで各成分を別個のチャンバに移動又は分離するために、流体サンプルを遠心分離することが有用である。例えば、全血から血球を遠心分離し、次いで、分析のために別個のチャンバへ血漿を分離するのに有用である場合が多い。液体のこのような分離及び移動を流体回路内で行うことが有利である。バイオディスク内に配置された流体回路では、流体回路内で流体を移動させるために遠心力及び毛管力を用いることができる。或るいくつかの検定では、(多くの場合、前の遠心分離ステップの後で)2種以上の試薬を混合する必要がある場合があり、これは、外部の干渉なしにバイオディスク上で有利に行うことができる。
【0051】
流体回路内の流体流を制御する1つの方法は、毛管弁の使用であり、該使用において、流体通路の或る狭小化地点又は表面張力の変化地点で液体が抑止され、或る速度を上回る遠心分離のみにより液体が誘導されてこのバリアを横断する。以下に記述したものは、改良型のサンプルの分離、単離、及び分析装置又はシステム、及びディスクベースの診断システムに適した方法の実施形態である。
【0052】
制限流路又は通路を通して液体を押し流すことができる種々の原動力として、例えば遠心力及び毛管作用が挙げられる。システム及び方法は、[1]液体が入口又は注入ポートを介して充填チャンバ、混合チャンバ、又は分離チャンバへ充填又は導入されることができ、[2]ディスクが不所望の粒子を分離するために遠心分離されても良く、且つ[3]遠心分離の停止時に、液体を新たなチャンバへ移動又は分離することができるようにこれらの力を用いることが望まれる。図8〜図11はそれぞれ、複数の流体回路を示し、ある流体回路は、かかる流体回路がサンプル調製プロセスにおける異なるステップにある状態での物質の位置を示し、且つ、上記に挙げたサンプル調製ステップに対応する[1]、[2]、又は[3]により示されている。通常の対称的な流体回路では、遠心分離の停止時に、液体が静止したままである(状態[2])か、又は、別の又は隣接する流路に移動(状態[3])せずに元の配置(状態[1])に移動するであろう。状態[1]及び/又は状態[2]の際、遠心分離が停止すると状態[3]が最も安定した状態となるように何かが変化することを保証する改良型のシステム及び方法が以下に詳細に説明される。
【0053】
液体が毛管力により流路に入るには、流路の親水性が十分に高くなければならないだけでなく、液体移動によって変位した空気が逃げることができなければならない。流路がシール又は閉鎖されている場合、毛管力はもっぱら、流路内の空気圧が同等の力及び対向する力をもたらすように高くなるまで液体を流路に引き込むことになる。
【0054】
図8A、図8B、図8C、及び図8Dはそれぞれ、先の図に関して説明したバイオディスク等のバイオディスク上に位置するように配置されている流体回路の平面図であり、図
8B、図8C、及び図8Dは、検定プロセスにおける例示的なステップである。図8A、図8B、図8C、及び図8Dの実施形態では、戻り流路610は、流体出口部612及び流体入口部614を有するループとして配置される。流体出口部612は、回転可能な基板(図示せず)の内半径にあり、入口部614は、回転可能な基板の外半径により近い。流体回路600A(図8B)、600B(図8C)、及び600C(図8D)はそれぞれ、全血等のサンプルからの血漿等の成分を分離する各種段階での流体回路内の物質の位置を示す。図8Bに示すように、状態[1](流体回路600A)では、液体620は、充填チャンバ616に導入され、ループの出口部612に引き込まれる。しかしながら、液体620は、例えば、毛管弁、表面張力の変化、フィルタ、又は疎水性被覆等のストッパ618により、戻り流路610へ入らないようにされる。液体620はまた、戻り流路610の入口部614に流入するが、戻り流路610の出口部612での流体阻止により生じる圧力上昇すなわち「エアロック」により、戻り流路610に完全に入ることができない。
【0055】
流体回路600を含む光バイオディスクが回転すると、遠心力により、戻り流路610の出口部612の液体620が出口部612から流れ出ることにより、出口部612がブロック化されなくなり、エアロックが低減するか又はなくなる。エアロックが低減すると、充填チャンバ616内の液体620は、入口部614を介して戻り流路610に入る。図8Cに示すように、図8Cは、遠心分離中の流体回路600の状態を示し、状態[2]とも呼ばれる。状態[2]では、液体620は、遠心力の強度と充填チャンバ616内の液体620の量とによって決まるレベルまで戻り流路610を満たす。図8Dの流体回路に示すように、図8Dは、遠心分離後の流体回路600の状態を示し、状態[3]と呼ばれる。状態[3]では、毛管力は戻り流路610を介して液体620を引き込み、それによって、戻り流路610が液体620で満たされる。
【0056】
図9は、サンプルを分離するように配置されている流体回路710を有するバイオディスクの平面図であり、ここでは、流体回路710A、710B、及び710Cがそれぞれ、上述したように3つの状態[1]、[2]、及び[3]にある。例示的な流体回路710は、充填チャンバ712、及び充填チャンバ712に充填すべきサンプルを受け取るように配置されている注入ポート714を有する。流体回路710はさらに、充填チャンバ712と流体連通する戻り流路716を有する。図9の実施形態では、戻り流路716は、充填チャンバ712と流体連通する入口部718、及び入口部718と流体連通するエルボセクション720を有する。図9の実施形態では、エルボセクション720は、U字形セクション724と流体連通する分析チャンバ722に開口し、U字形セクションは、戻り流路716の出口部726に接続される。この実施形態では、出口部726は、充填チャンバ712と流体連通し、入口部718よりも光バイオディスク700の中心の近くに位置する。
【0057】
図9の実施形態では、注入ポート714は、戻り流路716の出口部726に近接して有利に位置することで、流体が注入ポート714を介して充填されたときに流体の一部が戻り流路の出口部に入り、それにより、充填チャンバ712内の流体が戻り流路716のエルボセクション720に入らないようにする流体又は液体弁を形成する。流体回路710は、流体回路710Dに示すように、充填チャンバ712と流体連通する通気チャンバ728を任意選択的に有しても良く、この通気チャンバ728は、充填チャンバ712を通気させて、充填チャンバ712へのサンプルの充填を可能にする。
【0058】
一実施形態では、流体回路710は、全血サンプルから血漿を分離及び単離するのに有利に用いられ得る。上述したように、流体回路710A、710B、及び710Cはそれぞれ、サンプル調製プロセスの3つの状態[1]、[2]、及び[3]にある例示的な流体回路を示す。特に、流体回路710A(状態[1])は、血液等のサンプル730が注
入ポート714を介して充填チャンバ712へ充填されている状態で示され、ここでは、サンプル730の一部はループの出口部726に入る。出口部726は本質的にサンプル730の一部により遮断されるため、サンプル730が入口部718と接触してサンプル730の一部が戻り流路716の入口部718に流入すると「エアロック」が形成される。したがって、エアロックにより、サンプルが戻り流路716の残部に入らないようにされる。出口部726の遮断は、ディスクを回転させることで無くなり、これにより、エアロックが無くなり、血液サンプル中の細胞が、流体回路710B(状態[2])に示すようにディスクをさらに回転させることで分離される。
【0059】
ディスク710が停止すると、血漿は入口部718に引き込まれ、エルボセクション720を介して、流体回路710C(状態[3])に示すように毛管力により戻り流路716の分析チャンバ722に入る。図9に示す配置では、血漿は、戻り流路716内の毛管弁により抑止され得るため、分析チャンバ722内での反応のための時間が得られる。続いて回転することにより、検出又はさらなる反応のために戻り流路716の残部に反応生成物が引き込まれる。
【0060】
代替的な流体回路、及びかかる流体回路と共にサンプルの分離及び単離を達成する関連した方法は、空気圧式駆動型のサンプルの分離及び単離流体回路を使用することである。空気圧式駆動型流体回路の一例は、図10A、図10B、図10C、及び図10Dに示され、ここでは、閉鎖U字形流路を用いて細胞を分離し、通常の表面張力に加えて、遠心分離の際の圧力上昇により、液体が戻り流路に流れるように導かれる(状態[3])。この実施形態で用いられ得る原動力は、空気チャンバ内で圧縮された空気の「ピストン」(「高圧空気」)である。
【0061】
図10A、図10B、図10C、及び図10Dはそれぞれ、先の図に関して説明したバイオディスク等のバイオディスク上に位置するように配置されている流体回路の上面図であり、図10B、図10C、及び図10Dは、空気圧式駆動型の流体分離システムのステップを示す。流体回路800のそれぞれは、2つの主流路、すなわち第1の主流路810及び第2の主流路820を有する。第1の主流路810は、充填チャンバ812へサンプルを充填するために、気密な又はシールされた空気チャンバ814及び注入ポート816と流体連通する、分離又は充填チャンバ812を有する。第2の主流路820は、分離チャンバ812に接続される入口部822を介して第1の主流路810と流体連通する。図10A、図10B、図10C、及び図10Dの実施形態では、入口部822と分離チャンバ812との接続部が分離チャンバ内にあることで、サンプル828が戻り流路824に入らないようにしてからサンプル828の不所望の成分を分離するようになっている。エルボセクション826は、入口部822に接続されると共に入口部822と流体連通して、戻り流路824へサンプル828がさらに流れないようにし、サンプル分離中に予め分離したサンプル828が分離チャンバ812へ流れ戻ることを可能にし得る。エルボセクション826の一部を疎水性バリア又はフィルタ要素830で被覆するか又は塞ぐことで、サンプル828の一部が戻り流路824に早期に入らないようにすることもできる。戻り流路824はさらに、エルボセクション826と流体連通するU字形セグメント832を有し得る。一実施形態では、U字形セグメント832は、通気ポート834に開口し、内部に試薬が配置される分析区域又は分析セクションを有し得る。一実施形態では、試薬により、単離サンプル828中に存在する分析物の検出及び/又は定量が可能となる。
【0062】
流体回路800A(図10B)、800B(図10C)、及び800C(図10D)は、流体回路800を用いての、全血等のサンプルから血漿等の物質の成分を分離する3つの段階を示す。図10Bに示すように、状態「1」(流体回路800A)では、全血サンプル828は、注入ポート816を介して分離チャンバ812へ充填され得る。次いで、サンプル828は、分離チャンバ812へ流入しても良く、疎水性バリア830によりエ
ルボセクション826に入らないようにされる。図10Cに示すように、状態[2](流体回路800B)では、その後、注入ポート816はシールされ、血液サンプル828中の細胞838から血漿842を分離することを可能にする所定の速度及び時間でディスクが回転することができる。回転の際、血漿842の一部は、空気チャンバ814に入り、そのため、空気チャンバ814の内側の空気が圧縮され、空気チャンバ814内に加圧空気が形成される。図10Dは、ディスクの回転が停止する状態[3]の流体回路800Cを示す。この状態では、空気チャンバ814内の加圧空気により、分離チャンバ812内の血漿842が戻り流路824の入口部822へ移動し、フィルタ又は疎水性バリア830を介して戻り流路824のU字形セグメント832に入る。注入ポート816はシールされるが通気ポート834は開いたままであるため、血漿842のほとんどは戻り流路824に導かれる。
【0063】
図11A、図11B、図11C、及び図11Dはそれぞれ、先の図に関して説明したバイオディスク等のバイオディスクに位置されるように配置されている流体回路の上面図である。図11A、図11B、図11C、及び図11Cのこの実施形態では、流体回路900は、単一ポートが入口及び通気ポート916として用いられるように配置されている。流体回路900は、図10と共に説明した回路の多く構成部品を有し、細胞等のサンプルから大きな粒子を捕捉すると共にサンプルの液体部分(例えば血漿)を通過させるように構成されている狭小流路とすることができるサンプル分離部910をさらに含む。図11A、図11B、図11C、及び図11Dの実施形態では、流体回路900は、入口及び通気ポート916、空気チャンバ914、及び戻り流路を有する。流体回路900A(図11B)、900B(図11C)、及び900C(図11D)は、全血等のサンプルから血漿等のサンプル成分を分離する3つの段階を示す。特に、図11Bに示すように、流体回路900Aは状態[1]にある。この状態では、サンプル928の一部は、フィルタ又はシーブを含み得るサンプル分離部910を通過し得る。一実施形態では、サンプル分離部910は、血漿がサンプル分離部910を通過するようにさせる一方で、細胞は通過させないようにする。図11Cは、遠心分離が開始した状態[2]の流体回路900Bを示す。図11Cに示すように、細胞936は分離部910にて又はその周りに蓄積するか又はペレット化するが、血漿はサンプル分離部910を通過する。この実施形態では、サンプル分離部910を通る細胞938は、分離チャンバ912内で蓄積又はペレット化する。分離部912内に又はその周りでペレット化する細胞938は本質的に、充填チャンバ940への流体の逆流を阻止する。図11Dは、遠心分離が停止した状態[3]の流体回路900Cを示す。図11Dに示すように、血漿942は、空気チャンバ914の高圧空気により戻り流路920に空気圧により導かれる。流体は、細胞936のペレットにより生じる遮断のため充填チャンバ940には入らない。上述したように、戻り流路920は、分離されたサンプル中の分析物の検出及び定量を可能にするために試薬で予め充填され得る。
【0064】
上述の、図8A、図8B、図8D、図9、図10A、図10B、図10C、図10D、図11A、図11B、図11C、及び図11Dに関する戻り流路は、1つ又は複数の分析チャンバに接続されると共に当該分析チャンバと流体連通しても良く、ここで、分離サンプルの一部が、異なる標的又は分析物に導き直されるか又は移され、異なる標的又は分析物に対して分析される。例えば、全血の単一のサンプルは、上述のように処理され得る。次いで、単離血漿が戻り流路から1つ又は複数の分析チャンバに導かれ得る。一実施形態では、裏血液型判定(reverse typing)試薬を有する第1の分析チャンバ、グルコース定量用の試薬を有する第2の分析チャンバ、及びコレステロール分析用の試薬を有する第3の分析チャンバを含む3つの分析チャンバが流体回路内に含まれる。したがって、このような設定により、単一のサンプルから3つの異なる分析物を分析することが可能となる。当業者には明らかなように、複数の分析物は、上述のシステム及び方法を用いて検出及び分析されるても良い。光バイオディスクを用いた血液型判定に関するさらなる詳細は、「
Methods and Apparatus for Blood Typing with Optical Bio-Discs」と題する米国特許出願第10/298,263号に開示されている。
【0065】
次に、図12を参照すると、サンプルの調製及び分析用の流体回路128を有する光バイオディスク110の特定の構造上の要素の分解斜視図が示されている。図12に示す構造上の要素は、キャップ部116、接着部材又は流路部材118、及び基板120層を有する。例示的なキャップ部116は、1つ又は複数の注入ポート122及び1つ又は複数の通気ポート124を有する。キャップ部116は任意選択的に、内部に形成された流体回路の部分を有する。
【0066】
例示的な接着層又は流路層118は、内部に形成される流体回路128を有する。流体回路128は、メンブレンを型押し又はカットしてその一部を取り除いて図示のような形状を形成することによって形成される。流体回路128は、例えば図8〜図11において説明した例示的な流体回路を含めた、上述した流体回路のうちのいずれかを含み得る。
【0067】
例示的な基板120は、標的領域又は捕捉領域140を含み得る。一実施形態では、基板120は、ポリカーボネートで作製され、その上部に薄い半反射層143(図示せず)を有し、この半反射層143は図6と共に図示し上記している。一実施形態では、ディスク110の基板120に付随した半反射層143は、図2、図3、及び図4に示す、反射ディスク110の基板120上の反射層142よりも著しく薄い。上述のように、半反射層143がより薄いことにより、例えば図5Bに示すように、透過ディスクの構造上の層を介してインタロゲーションビーム152の一部の透過が可能となる。薄い半反射層143は、アルミニウム又は金等の金属から形成され得る。
【0068】
次に図13を参照すると、図12に示す透過型光バイオディスク110の上面図が示されている。図13は、ディスク内に位置する流体回路又は流路128、位置合わせ穴1000、及び標的領域140の異なる実施形態を示す透明キャップ部116を有する透過型光ディスクを示す。一実施形態では、位置合わせ穴1000は、ディスク110の各種層を互いに位置合わせして配置して流体回路128を形成するためにガイドとして用いられる。流体回路128のそれぞれは、サンプル注入ポート1004開口を有するサンプル充填チャンバ1002を有し得る。回路128はまた、バッファ注入ポート1008開口を有するバッファ充填チャンバ1006を有する。サンプル充填チャンバ1002は、半径方向向きのサンプル通過流路1010の第1の端と流体連通する。第1の端に対しディスクの中心から最も遠くに位置する、サンプル通過流路1010の第2の端は、サンプル分離チャンバ1012と流体連通する。サンプル通過流路1010は、第1の毛管弁1014を任意選択的に有し得る。チャンバ1012はまた、混合チャンバ1018の第1の端に終端すると共に当該第1の端と流体連通する、サンプルフロー流路1016の第1の端と流体連通する。混合チャンバ1018の第2の端は、1つ又は複数の分析領域、捕捉領域、又は標的領域140を有し得る分析チャンバ1020と流体連通する。
【0069】
図13の例示的な実施形態では、バッファ充填チャンバ1006は、バッファ通過流路1022の第1の端に接続すると共に第1の端と流体連通する。流路1022の第2の端は、第2の端にて混合流路1018の第1の端とも流体連通する、バッファフロー流路1024の第1の端と流体連通する。第2の毛管弁1026は任意選択的に、図示のサンプルフロー流路1016、バッファフロー流路1024、及び混合流路1018の接合部に配置され得る。第3の毛管弁1028は任意選択的に、バッファ通過流路1022内に配置され得る。分析チャンバ1020はまた、流体回路128内での空気の遮断を防止するために分析チャンバを通気させることを可能にする通気ポート124に開口する通気流路1030を有する。混合流路1018は、乱流がほとんどないか又は全くない状態で流体流が続く滑らかな非傾斜の流路とは対照的に、急峻に傾斜したエッジ、コーナー、又はタ
ーンを有するジグザグ状又は鋸歯状流路又は段状流路として配置され得る。有利な実施形態では、急峻な傾斜縁を有する混合流路は、乱流を生じさせることによって流体回路内の流体の混合を高める。混合流路1018の経路は、例えば、コーナーの角度に応じた階段関数(step function)又は鋸歯関数(sawtooth function)によって画定される。コーナーの角度は例えば5〜160度とすることができる。図示のように、混合流路内の流体流は、混合流路内のターンが約90度の角度である階段関数によって画定される。
【0070】
代替的に、図13に示すように、流体回路128は、過剰なサンプル及び/又は過剰なバッファを保持する廃棄チャンバを有し得る。代替的な一実施形態では、流体回路は、サンプル水流路1032を介してサンプル通過チャンバ1010に接続されるサンプル廃棄チャンバ1032を有する。廃棄チャンバ1032はまた、通気ポート1038を有する自身の通気流路1036を有する。別の代替的な実施形態では、流体回路128は、バッファ廃棄流路1042による流路1022とバッファフロー流路1024との接合部にてバッファ通過流路1022に接続されるバッファ廃棄チャンバ1040を有し得る。廃棄チャンバ1040はまた、流路1042及びチャンバ1040内の空気遮断を防止するためにチャンバ1040を通気させることを可能にする通気ポート開口1046を有する通気流路1044を有し得る。
【0071】
図12及び図13に関して図示し説明した流体回路は、裏血液型判定、グルコース、コレステロール、LDH、ミオグロビン、トリグリセリド、GSH、TSH、HCG検定、及び各種腫瘍マーカ検定が挙げられるがそれらに限定されない、全血サンプルからの血漿サンプルを必要とする検定において用いられ得る。
【0072】
例えば、特定の分析物について血漿を分析するために、全血が注入ポート1004を介してサンプル充填チャンバ1002に充填される。血液は、第1の毛管弁1014により流体回路の残部へ流入しないようにされる。希釈バッファは、注入ポート1008を介してバッファ充填チャンバ1006に充填され得る。チャンバ1006に充填されるバッファの量は、検定に必要とされる希釈倍率によって決まる。バッファは、第3の毛管弁1028により流体回路の残部に移動しないようにされる。サンプル及びバッファが充填された後、各注入ポートは流体回路から流体が漏れないようにシールされる。次いで、ディスクが光ディスクドライブに装填され、所定の速度及び時間で回転して、充填チャンバから弁1014を介して分離チャンバ1012へ血液を移動させる。結果として、バッファはまた、弁1028を押し通り、それにより、毛管弁を無視して、回路128内を自由に移動することができるようになる。ディスクはさらに回転して血球から血漿を分離する。これが達成されると、回転は、所定時間停止して、フロー流路1024へのバッファの移動と、分離チャンバ1012からフロー流路1016への分離血漿の移動とを可能にすることによって、サンプルフロー流路1016及びバッファフロー流路1024をプライミングする。次いで、分析ソフトウェアプログラムを用いて、ディスク回転の速度、加速、減速、ランピング、及び持続時間を制御することができる。バッファ及び血漿は、弁1026により混合流路1018に入らないようにされる。過度の血漿及びバッファ(もし在れば)は、それらの各自の廃棄流路1034及び1042を介して各自の廃棄チャンバ1032及び1040へ移動する。フロー流路1016及び1024をプライミングした後、ディスクは別の所定速度で、且つ或る所定時間回転して、流体が弁626を通過して混合チャンバ618へ移動することを可能にする。血漿及びバッファは、混合チャンバ618を通過する際に混合されることで、血漿サンプルを希釈する。希釈された血漿サンプルは、分析チャンバ620へ移動し、そこにおいて、対象の分析物について試験される。
【0073】
上述したように、分析チャンバは、サンプル中に存在する対象の分析物と結合する捕捉剤を有する分析領域140を有し得る。分析領域140内で捕捉される分析物の検出及び定量を可能にするシグナル剤又はリポータ剤もまた、分析チャンバ1020に予め充填さ
れ得る。例えば、リポータ剤は対象の分析物に特異的に結合する結合剤等のシグナル分子で被覆されたマイクロスフェア又はナノスフェアを有し得る。検出は、光ディスクドライブを用いて、分析領域を介して光読み取りビーム152(図6)を導光及び走査し、且つ戻りビーム154又は透過ビーム156(図6)を分析することによって行われ、分析領域に在るシグナル剤の存在及びその量を測定する。分析物の分析及び定量は、分析ソフトウェアを用いて行うことができる。捕捉剤及びシグナル剤を用いてのサンプルの分析は、例えば、「Multi-Purpose Optical Analysis Disc for Conducting Assays and Related Methods for Attaching Capture Agents」と題する、上記で参照した同一人に譲渡された同時係属中の米国特許出願第10/348,049号、「Surface Assembly for Immobilizing DNA Capture Probes and Bead-Based Assay Including Optical Bio-Discs and Methods Relating Thereto」と題する同第10/035,836号、及び「Surface Assembly for Immobilizing DNA Capture Probes and Bead-Based Assay Including Optical Bio-Discs and Methods Relating Thereto」と題する同第10/035,836号に開示されている。
【0074】
代替的に、分析チャンバ全体を分析領域として用いてもよい。この実施形態では、分析チャンバは、希釈された血漿サンプル中の特定の分析物と反応する分析試薬で予め充填されて、変色又は発色等の検出可能なシグナルを生成し得る。結果として得られる、プロセス中の発色は、サンプル中の分析物の量に比例することが好ましい。次いで、分析物は、分析チャンバ内を読み取りビームで走査し、戻りビーム154又は透過ビーム156(図6)を検出し、且つ戻りビーム又は透過ビームの強度に基づいて分析物の量を測定することにより、定量することができる。1つ又は複数の検定標準点を用いて、試薬ブランク分析チャンバ又は既知の量の分析物を有するチャンバを分析することによって、分析物を正確に定量し得る。光バイオディスクを用いての比色検定に関するさらなる詳細は、例えば、2003年6月27日付けで出願された、「Fluidic Circuits, Methods and Apparatus for Use of Whole Blood Samples in Colorimetric Assays」と題する、同一人に譲渡された同時係属中の米国仮出願第60/483,342号(参照によりその全体が本明細書に完全に繰り返されるかのように援用される)に開示されている。
【0075】
上記に説明し、図8〜図11に示した流体分離システムは、裏血液型判定、グルコース、コレステロール、LDL、ミオグロビン、LDH、各種腫瘍マーカ検定、及び他の免疫血液学検定及び遺伝学検定等、血漿サンプルを必要とするどの検定に対しても用いることができる。さらに、流体分離システムは、均質組織サンプル中のタンパク質、有機抽出物のエマルジョン中の油又は疎水性層、微細粒子懸濁液からの上清の単離、及び流体の分離に必要な任意のプロセスに用いることができる。
【0076】
[結論]
本明細書中に述べたすべての特許、仮出願、特許出願、及び他の刊行物は、参照によりその全体が本明細書中に援用される。
【0077】
いくつかの好ましい実施形態を参照して、本発明を詳細に説明してきたが、本発明は、まさにそれらの実施形態に限定されるものでないことが理解されるべきである。逆に、本発明を実施するのに現在のところ最良の形態を説明する本開示を考慮すると、当業者には、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、多くの変更及び変形が思い浮かぶであろう。したがって、本発明の範囲は、上記の説明ではなく、以下の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味するもの及び均等物の範囲内に入るすべての改変、変更及び変形は、特許請求の範囲内にあるものとみなされるべきである。
【0078】
さらに、当業者は、日常的な実験以上のものを用いることなく、本明細書で説明した本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は把握することができるで
あろう。かかる等価物はまた、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】バイオディスクシステムのイラスト表現である。
【図2】反射型バイオディスクの分解斜視図である。
【図3】図2に示すディスクの平面図である。
【図4】切り取り部分がディスクの種々の層を示す、図2に示すディスクの斜視図である。
【図5A】透過型バイオディスクの分解斜視図である。
【図5B】切り取り部分がディスクの半反射層の機能的態様を示す、図5Aに示すディスクを表す斜視図である。
【図6】図1のシステムをより詳細に示すブロック斜視図表現である。
【図7】図2、図3、及び図4に示す反射型光バイオディスクに形成されたフロー流路を示す、当該反射型光バイオディスクの半径に対して垂直な部分断面図である。
【図8A】バイオディスク上に位置するように配置されている流体回路の上面図である。
【図8B】バイオディスク上に位置するように配置されている流体回路の上面図であり、検定プロセスにおけるステップを示す。
【図8C】バイオディスク上に位置するように配置されている流体回路の上面図であり、検定プロセスにおけるステップを示す。
【図8D】バイオディスク上に位置するように配置されている流体回路の上面図であり、検定プロセスにおけるステップを示す。
【図9】サンプルを分離する、液体弁を有する流体回路を有するバイオディスクの平面図であり、或るいくつかの流体回路での検定プロセス中の流体回路内での物質の移動を示す。
【図10A】空気圧流体変位のための空気チャンバを有する流体回路の上面図である。
【図10B】空気圧流体変位のための空気チャンバを有する流体回路の上面図であり、流体回路を用いてサンプルを分離する際のステップを示す。
【図10C】空気圧流体変位のための空気チャンバを有する流体回路の上面図であり、流体回路を用いてサンプルを分離する際のステップを示す。
【図10D】空気圧流体変位のための空気チャンバを有する流体回路の上面図であり、流体回路を用いてサンプルを分離する際のステップを示す。
【図11A】流体の別の実施形態の上面図である。
【図11B】流体の別の実施形態の上面図であり、流体回路を用いてサンプルを分離するステップを示す。
【図11C】流体の別の実施形態の上面図であり、流体回路を用いてサンプルを分離するステップを示す。
【図11D】流体の別の実施形態の上面図であり、流体回路を用いてサンプルを分離するステップを示す。
【図12】サンプルを処理する流体回路を有するバイオディスクのさらに別の実施形態の分解斜視図である。
【図13】流体回路の各種実施形態を示す図12のディスクの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を処理する流体回路であって、
サンプル注入ポートを有する、処理用の或る量の流体を受け取るサンプル充填チャンバと、
第1の端及び第2の端を有するサンプル通過流路と、
前記サンプル通過流路の前記第2の端と流体連通する分離チャンバと、
第1の端及び第2の端を有するサンプルフロー流路と、
前記サンプルフロー流路の前記第2の端と流体連通する分析チャンバと
を含み、
前記サンプル通過流路の前記第1の端は、前記サンプル充填チャンバと流体連通し、
前記サンプルフロー流路の前記第1の端は、前記サンプル通過流路と流体連通する、
流体を処理する流体回路。
【請求項2】
流体を処理する流体回路であって、
サンプル注入ポートを有する、処理用の或る量の流体を受け取るサンプル充填チャンバと、
第1の端及び第2の端を有するサンプル通過流路と、
前記サンプル通過流路の前記第2の端と流体連通する分離チャンバと、
第1の端及び第2の端を有するサンプルフロー流路と、
第1の端及び第2の端を有する混合チャンバと、
前記混合チャンバの前記第2の端と流体連通する分析チャンバと
を含み、
前記サンプル通過流路の前記第1の端は、前記サンプル充填チャンバと流体連通し、
前記サンプルフロー流路の前記第1の端は、前記サンプル通過流路と流体連通し、
前記混合チャンバの前記第1の端は、前記サンプルフロー流路の前記第2の端と流体連通する、
流体を処理する流体回路。
【請求項3】
第1の端及び第2の端を有する通気流路と、
前記通気流路の前記第2の端と流体連通する通気ポートと
をさらに含み、
前記通気流路の前記第1の端は、前記分析チャンバと流体連通する、請求項2に記載の流体回路。
【請求項4】
バッファ(buffer)注入ポートを有する、或る量の流体を受け取るバッファ充填チャンバと、
第1の端及び第2の端を有するバッファ通過流路と、
第1の端及び第2の端を有するバッファフロー流路と
をさらに含み、
前記バッファ通過流路の前記第1の端は、前記バッファ充填チャンバと流体連通し、
前記サンプルフロー流路の前記第1の端は、前記バッファ通過流路の前記第2の端と流
体連通し、前記バッファフロー流路の前記第2の端は、前記混合チャンバの前記第1の
端と流体連通する、請求項3に記載の流体回路。
【請求項5】
第1の端及び第2の端を有するサンプル廃棄流路と、
前記サンプル廃棄流路の前記第2の端と流体連通するサンプル廃棄チャンバと、
前記サンプル廃棄チャンバと流体連通するサンプル廃棄通気流路と、
前記サンプル通気流路と流体連通するサンプル通気ポートと
をさらに含み、
前記サンプル廃棄流路の前記第1の端は、前記サンプル通過流路に接続されると共に該サンプル通過流路と流体連通する、請求項4に記載の流体回路。
【請求項6】
第1の端及び第2の端を有するバッファ廃棄流路と、
前記バッファ廃棄流路の前記第2の端と流体連通するバッファ廃棄チャンバと、
前記バッファ廃棄チャンバと流体連通するバッファ廃棄通気流路と、
前記バッファ通気流路と流体連通するバッファ通気ポートと
をさらに含み、
前記バッファ廃棄流路の前記第1の端は、前記バッファ通過流路に接続されると共に該バッファ通過流路と流体連通する、請求項4に記載の流体回路。
【請求項7】
前記分離チャンバと流体連通するサンプル廃棄通気流路と、
前記サンプル廃棄通気流路と流体連通するサンプル通気ポートと
をさらに含む、請求項4に記載の流体回路。
【請求項8】
前記サンプル通過流路内に第1の毛管弁をさらに含む、請求項7に記載の流体回路。
【請求項9】
前記サンプルフロー流路の前記第2の端と前記混合チャンバの前記第1の端との接合部に第2の毛管弁をさらに含む、請求項7に記載の流体回路。
【請求項10】
前記バッファ通過流路内に第3の毛管弁をさらに含む、請求項7に記載の流体回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−500351(P2007−500351A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521955(P2006−521955)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/023891
【国際公開番号】WO2005/011830
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(591177749)長岡実業株式会社 (7)
【出願人】(501074711)バースタイン テクノロジーズ,インコーポレイティド (5)
【Fターム(参考)】