説明

バイオフィルム除去剤組成物

【課題】バイオフィルムを効果的に除去できるバイオフィルム除去剤組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は炭素数4〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、X及びYは次の式
【化2】


で示される基から選ばれる基を示し、mは1〜5の整数を示す。)
で表わされる塩基性アミノ酸誘導体又はその塩と酵素を含有するバイオフィルム除去剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム除去剤に関するものであり、より詳細には、微生物が関与するさまざまな分野において、バイオフィルムを効果的に除去し、バイオフィルムに起因する危害を防止するためのバイオフィルム除去剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオフィルムは生物膜やスライムとも言われ、一般に水系で微生物が物質の表面に付着・増殖することによって微生物細胞内から多糖やタンパク質などの高分子物質を産生して構造体を形成したものを指す。バイオフィルムが形成されると、微生物を原因とする危害が発生して、様々な産業分野で問題を引き起こす。例えば、食品プラントの配管内にバイオフィルムが形成されると、このバイオフィルムが剥がれ落ち製品内への異物混入につながるだけでなく、微生物由来の毒素で食中毒の原因となる。さらに、金属表面へのバイオフィルム形成は金属腐食の原因となり、設備の老朽化を促進する。
更に、バイオフィルムを形成した微生物集合体に対しては、水系に分散浮遊状態にある微生物と比較して、殺菌剤・静菌剤のような微生物制御薬剤の十分な効果が出せないことも多い。例えば医療の面では近年、医療器具の狭い隙間や空孔内に微生物が残存してバイオフィルムを形成し、これを原因とする院内感染例が数多く報告されている。ヒト口腔内においては歯に形成するバイオフィルム、いわゆるデンタルプラーク(歯垢)がう食や歯周病の原因となることは良く知られており、これらの問題について長い間検討されている。
【0003】
これまでバイオフィルムの危害を防止するためには、微生物、特に細菌に対して殺菌作用もしくは静菌作用を与えることによって菌を増殖させない考え方が一般的に検討されてきた。特許文献1には、アルギニンの塩酸塩、アルギニンエチルエステル、アルギニングルタミン酸などのアルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を配合した抗菌製剤が記載されているが、その効果はまだ満足できるものではなく、また、この文献は微生物集合体に対する抗菌効果を示したものであり、バイオフィルムの除去を目的としたものではない。
さらに、特許文献2に開示されているように、酵素を利用してバイオフィルムを除去することによる危害の低減化方法も検討されているが完全な除去には至っていない。
【特許文献1】特開平8−151324号公報
【特許文献2】特表2001−508677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、様々な領域において微生物及び微生物産生物質からなるバイオフィルムを効果的に除去するバイオフィルム除去剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、バイオフィルム及びその中の微生物を効果的に除去するバイオフィルム除去剤を得るべく鋭意研究を行ったところ、特定のアミノ酸誘導体と酵素を組み合わせたバイオフィルム除去剤組成物が、バイオフィルム及びその中の微生物を効果的に除去できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1は炭素数4〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、X及びYは次の式
【0009】
【化2】

【0010】
で示される基から選ばれる基を示し、mは1〜5の整数を示す。)
で表わされる塩基性アミノ酸誘導体又はその塩と酵素を含有するバイオフィルム除去剤組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、アルギニン又はその塩とグリシジルエーテルとを反応させて得られるアルギニン誘導体又はその塩と酵素を含有するバイオフィルム除去剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、様々な領域において微生物ならびに微生物産生物質からなるバイオフィルムを効果的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、下記一般式(1)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R1は炭素数4〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、X及びYは次の式
【0016】
【化4】

【0017】
で示される基から選ばれる基を示し、mは1〜5の整数を示す。)
で表わされる塩基性アミノ酸誘導体又はその塩と酵素を含有する。
【0018】
一般式(1)中、R1で示されるアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよいが、バイオフィルム除去効果の点から炭素数4〜18のものであり、炭素数6〜14のものが好ましく、炭素数8〜14のものがより好ましく、炭素数10〜14のものがさらに好ましい。具体的には、n−へキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、デシル基、ドデシル基、ミリスチル基等が挙げられる。R1で示されるアルキル基又はアルケニル基は単一あるいは混合であってもよい。また、天然由来、例えばヤシ油やパーム核油由来の混合アルキル組成であってもよい。
一般式(1)中、mは、1〜5の整数を示すが、2〜4が好ましく、さらに3が好ましい。また、Xは−OCH2−CH(−OH)CH2−が好ましく、Yは−NH−C(−NH2)=NHが好ましい。
【0019】
塩基性アミノ酸誘導体(1)の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸の塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性アミノ酸塩などの有機酸の塩が挙げられ、好ましいものとしては、塩酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩が挙げられる。
【0020】
塩基性アミノ酸誘導体(1)は、塩基性アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、オルチニン、ヒスチジン、ヒドロキシヒスチジン等とグリシジルエーテル、脂肪酸クロライド、脂肪酸無水物、エポキシアルカンなどの化合物とを反応させることにより得られる。好ましいものとしては、アルギニンとグリシジルエーテル、酸クロライド、エポキシアルカンなどの化合物とを反応させることにより得られる化合物で、さらに好ましくはアルギニンとグリシジルエーテルとの反応により得られるアルギニン誘導体、すなわち下記一般式(2)の化合物である。
【0021】
【化5】

【0022】
(R2は、炭素数4〜18の直鎖または分岐鎖のアルキルまたはアルケニル基を示す。)
これら反応生成物は洗浄効果、製剤の保存安定性を阻害しない範囲で未反応物、副生成物を含んでいてもよい。
【0023】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物中の塩基性アミノ酸誘導体(1)の濃度は、用途、剤型により適宜決定することができるが、バイオフィルムへ作用させる場面においては、通常、水溶液の状態で用いられ、その濃度としてはコストと取り扱い性の面から0.001〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜7重量%、さらに好ましくは0.005〜5重量%の範囲である。
【0024】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、更に酵素を含有する。
本発明に用いる酵素としては、例えば、オキシドレダクターゼ(酸化還元酵素)、トランスフェラーゼ(転移酵素)、ヒドラーゼ(加水分解酵素)、リアーゼ及びイソメラーゼ(異性化酵素)から選ばれる1種以上の酵素が挙げられる。
【0025】
ここで、オキシドレダクターゼ(酸化還元酵素)としては、ペルオキシターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ等が挙げられる。 トランスフェラーゼ(転移酵素)としては、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ヘキソキナーゼが挙げられる。 ヒドラーゼ(加水分解酵素)としては、アミラーゼ、セルラーゼ、デキストラナーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、マンノシダーゼ、アガラーゼ、ラクトーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、キチナーゼ、キトサナーゼなどの糖質分解酵素、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ケラチナーゼ、エラスターゼ、スブチリシン、パパイン、プロメリン、カルボキシペプチターゼ、アミノペプチターゼ、サーモリシン、アクロモペプチターゼなどのタンパク質分解酵素、リパーゼ類、クチナーゼ、ホスホリパーゼ等の脂質分解酵素が挙げられる。リアーゼとしてはアルギン酸リアーゼ、アルドラーゼ、セリンデヒドラターゼ等のリアーゼが挙げられ、イソメラーゼとしては核酸分解酵素、UDP-グルコース−4−エピメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ等が挙げられる。
この内、好ましくは、ヒドラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼであり、更に好ましくは、タンパク質分解酵素、アルギン酸リアーゼ、核酸分解酵素であり、更により好ましくは、タンパク質分解酵素である。
【0026】
これらの酵素は単独あるいは2種以上を組合せて用いることができ、その濃度は、特に制限されるものではなく、その種類と酵素活性により適宜選択が可能であるが、経済性と効果の観点からバイオフィルム除去剤作用系内に、好ましくは0.01〜20,000ppm、さらに好ましくは0.1〜2,000ppm、特に好ましくは1〜200ppmである。
塩基性アミノ酸誘導体(1)と酵素の含有質量比は、本発明の効果を奏する観点から、50/1〜1/5、更に30/1〜1/3、特に10/1〜1/2が好ましい。
【0027】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、塩基性アミノ酸誘導体(1)の溶解性を高める、あるいはバイオフィルム除去性能を向上させる、さらには洗浄効果を高める目的で、塩基性アミノ酸誘導体(1)以外の界面活性剤を併用することができる。当該界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0028】
陰イオン性界面活性剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン(以下、POEと記す)アルキルスルホン酸塩、POEアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、POEアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、POEアリールフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、POEアルキルエーテル硫酸エステル塩、POEアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、POEトリベンジルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルリン酸塩、POEトリベンジルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩(石けん)、POEアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられ、中でもアルキル硫酸エステル塩やPOEアルキルエーテル硫酸エステル塩又はPOEアルキルエーテル酢酸塩を用いることがより好ましい。
【0029】
非イオン性界面活性剤としては、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POEアリールフェニルエーテル、POEスチレン化フェニルエーテル、POEトリベンジルフェニルエーテル等の1価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸アルカノールアミド等の多価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤等が挙げられ、中でもPOEアルキルエーテル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、ソルビタン脂肪酸エステル又はPOEソルビタン脂肪酸エステルを用いることがより好ましい。
【0030】
両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、脂肪酸アミドベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられ、中でもアルキルジメチルアミンオキサイドを用いることが好ましい。
【0031】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、中でもアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。前記塩としては、ハロゲン化物が好ましく、塩化物、臭化物がより好ましい。
【0032】
これらの界面活性剤は塩基性アミノ酸誘導体(1)と目的に応じて任意の割合で併用することができる。好ましい割合は、塩基性アミノ酸誘導体(1)の溶解性、洗浄効果の点で、重量比で、成分(A):成分(C)=90:10〜1:99であり、更に好ましくは、50:50〜10:90である。
【0033】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物の剤型としては、用途、目的に応じて、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶剤に溶かした溶液、あるいは固体、ゲル状、乳化・分散状、粉末状、エアゾールなどが挙げられ、これらから適宜選択することができ、作用濃度に合わせた製品形態はもちろんのこと、高濃度の製品形態にしておき、使用場面において希釈する、あるいは使用場面において界面活性剤を配合し使用することも可能である。
【0034】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、増粘剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、蛍光剤、賦形剤、ソイルリリース剤、漂白剤、漂白活性化剤、粉末化剤、造粒剤、コーティング剤などを配合することができる。
【0035】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物はバイオフィルムの危害が懸念される広い分野に使用することが可能である。例えば菌汚染リスクの高い食品製造又は飲料製造プラント用洗浄剤、台所、厨房、浴室、便器、台所又は厨房などの排水溝、排水管に応用できる。また、産業用の冷却タワーなどの冷却水系、脱塩装置、パルプ及び紙製造系や浴槽、プール、人工池などの循環水系路に応用できる。バイオフィルムが形成しやすい医療機器、例えば内視鏡やカテーテル、人工透析機等の洗浄剤にも応用できる。更に、入れ歯ケア剤、コンタクトレンズ洗浄剤などに使用することも可能である。
【0036】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、バイオフィルムを形成した面に水溶液を接触させることにより効果を発揮し、その方法としては浸漬、塗布あるいは散布するなどがある。さらに、スポンジ、タオル、ブラシ、水流などの物理力を加えてもよい。また、バイオフィルム除去剤組成物を作用させておく時間は、付着しているバイオフィルムの量、バイオフィルム除去剤組成物を作用させる濃度、作用温度、物理力の有無により異なるが、通常は数秒から数時間の範囲である。また、作用後は流水などにより、除去されたバイオフィルムを速やかにすすぎ流すことが望ましい。
【実施例】
【0037】
製造例1:塩基性アミノ酸誘導体(1)の製造方法
N-[2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシル)オキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩の合成
合成は、特開平9-271655記載の製造例1を参考に行った。
還流冷却管、滴下ロート、温度計及び撹拌羽根を備えた200mLの四つ口フラスコに、L(+)-アルギニン9.4g(53.7mmol)、水50.0g、エタノール50.0gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌を行いながら78℃に昇温した。次に、反応系内を78〜80℃に保ち、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル10.0g(53.7mmol)を滴下した。その後、78〜80℃で4時間熟成を行った後、室温に戻した。次に、6mol/Lの塩酸水溶液9.8g(53.7mmol)を添加し、中和を行った。反応溶液から減圧で水とエタノールを完全に留去し、N-[2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシル)オキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩の白色固体21.6g得た。
同様にR1がC10(イソデシル)、C12(直鎖)、C16(直鎖)のものを合成した。
【0038】
実施例に使用した酵素は次の通りである。
(酵素A)アルカラーゼ2.5L,TypeDX 〔タンパク質分解酵素、ノボザイムズ(株)製〕
(酵素B)サビナーゼ16L,TypeEX〔タンパク質分解酵素、ノボザイムズ(株)製〕
(酵素C)デキストラナーゼ L「アマノ」〔天野エンザイム(株)製〕
(酵素D)デュラミル 〔α−アミラーゼ、ノボザイムズ(株)製〕
【0039】
実施例1
<バイオフィルム除去能の検定>
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC13275)、セラチア菌(Serratia marcescens NBRC12648)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis NBRC12773)をそれぞれ大豆−カゼインダイジェストアガー(Soybean-Casein Digest Agar)〔SCD寒天培地:日本製薬(株)製〕を用いて、37℃、24時間の前培養してコロニー形成したものから極少量の菌塊を、滅菌済みの竹串を用いて、ミューラーヒントン培地を各1.5mL注加した24ウェルマイクロプレート内に接種した。これを37℃、24時間培養後に培養液を廃棄し、精製水2mLで各ウェルを5回リンスし、マイクロプレート壁にバイオフィルムを形成、付着させた。ただちに、表2に示す調製したバイオフィルム除去剤組成物を2mL注加し、室温で10分間作用させた後、各ウェル中のバイオフィルム除去剤組成物を廃棄した。精製水2mLで各ウェルを2回リンスした後、0.1%クリスタルバイオレット2mLを注加し、マイクロプレート壁に残存するバイオフィルムを染色した。余分な染色液を水でリンス後に80%エタノール2mLを注加し、バイオフィルムを染色したクリスタルバイオレットを均一に溶解後、570nmで吸光度を測定し測定値とした。同様にバイオフィルム除去剤組成物を作用させていないウェルについて0.1%クリスタルバイオレットで処理後、吸光度を測定し初期値とした。また、24ウェル中にミューラーヒントン培地を各1.5mLはするが菌塊を接種しないものを同様に行い、吸光度を測定してブランク値とした。各試験は5回行い平均した値を用いた。除去率は下記の式にて算出した。表中の濃度は全量に対する有効分濃度(重量%)で示し、また、pHは必要に応じて水酸化カリウムあるいは塩酸を用いて調整した。
【0040】
除去率(%)=100×[{(初期値−ブランク値)−(測定値−ブランク値)}/(初期値−ブランク値)]
【0041】
得られた結果を表2に示した。
なお、表中の化合物A〜Dは次の表1に示すものである。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
以上の結果より、本発明のバイオフィルム除去剤組成物を用いることによりバイオフィルムを効果的に除去できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数4〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、X及びYは次の式
【化2】

で示される基から選ばれる基を示し、mは1〜5の整数を示す。)
で表わされる塩基性アミノ酸誘導体又はその塩と酵素を含有するバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項2】
一般式(1)中、mが3であり、かつYが−NH−C(−NH2)=NHである請求項1記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項3】
一般式(1)中、Xが−OCH2−CH(−OH)CH2−である請求項1又は2記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項4】
アルギニン又はその塩とグリシジルエーテルとを反応させて得られるアルギニン誘導体又はその塩と酵素を含有するバイオフィルム除去剤組成物。

【公開番号】特開2010−126710(P2010−126710A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306387(P2008−306387)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】