説明

バイオプロセス環境における低電力センサのための非接触給電解決策

より信頼性の高いワイヤレス通信および電力を電気的に困難なバイオプロセス環境のセンサへ供給するための方法と装置が開示される。バイオプロセス環境内に非接続アンテナが、好ましくは第1のパワードアンテナと同一平面上に配置される。この非接続アンテナは、反射アンテナとも呼ばれ、パワードアンテナにより生成される電磁場を強化し、制限する。この反射アンテナは、センサ又は通信装置を含む装置に組み込まれるか近接される。ある実施形態では、反射アンテナはフィルタ筐体に組み込まれる。他の実施形態では、それはフィルタリングエレメント自身に組み込まれる。他の実施形態では、それはバッグ及びチューブ等のディスポーザブルバイオプロセス物品に組み込まれるか取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオプロセス環境における低電力センサのための非接触給電解決策に関する。この出願は、2008年3月26日に提出された米国特許出願第12/079,396号に基づく優先権を主張し、この開示は参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグ、及びブルートゥース(登録商標)及びジグビー(登録商標)装置等の他の電子機器の使用が広く用いられてきており、特に資産の管理において特にこれらの応用が在庫管理に関連づけられている。例えば、RFIDタグの使用は、生産ラインの監視及びサプライチェーンを介した資産又は物品の移動を可能にする。
【0003】
この概念を例証するために、製造エンティティが、それが生産施設に入る際にRFIDタグを物品に付着させることができる。これらの物品はその後、生産フローに挿入され、他の物品と組み合わされてサブアッセンブリを形成し、最終的には最終製品が得られる。RFIDタグの使用は、作業員が製造エンティティの中で製造プロセスを通じて特定の部品の移動を追跡することを可能にする。それはまた、そのエンティティが任意の特定のアッセンブリ又は最終製品を備える特定の物品を特定できることを可能にする。
【0004】
また、RFIDタグの使用は、薬品及び製薬産業において支持されてきている。2004年2月に、アメリカ連邦医薬品局は、薬品をラベル付け及び監視するためにRFIDタグの使用を支持するレポートを発行した。これは、経歴を与え、偽処方箋薬品が市場及び消費者へ浸透するのを制限するための試みである。
【0005】
彼らの発表では、RFIDタグは、フィルタ製品におけるプロセス制御のための情報を特定及び供給するため等の多くの用途に用いられてきている。1997年にデン・デッカーに対して発行された米国特許第5,674,381号(米国再発行特許発明第39,361E号)は、フィルタリング装置及び交換可能なフィルタアッセンブリと併せた「電子ラベル」の使用を記載する。具体的には、その特許は、読み出し/書き込みメモリを有する電子ラベルを有するフィルタ及びそのラベルに対して反応する読み出し手段を有する関連フィルタリング装置を記載する。電子ラベルは、交換可能なフィルタの実際の操作時間を計算及び保存するように構成されている。フィルタリング装置は、このリアルタイム数に基づいて、フィルタの使用又は拒否を行うことを可能にするように構成されている。その特許はまた、電子ラベルが交換可能なフィルタについての識別情報を保存するのに用いられることを記載している。
【0006】
ベーカーらによる米国特許第7,259,675号は、プロセス装置追跡システムを記載する。このシステムは、プロセス装置と併せたRFIDタグの使用を含む。RFIDタグは、「少なくとも1の追跡可能なイベント」を保存することが可能なものとして記載されている。これらの追跡可能なイベントは、クリーニング日時及びバッチプロセス日時として列挙されている。その公開物には、プロセス装置データベースが存在するPC又はインターネットに接続可能なRFIDリーダも記載している。このデータベースは、多数の追跡可能なイベントを含み、「蓄積されたデータに基づくプロセス装置の耐用年数」を決定するのに有用な情報を供給することができる。その出願は、バルブ、ポンプ、フィルタ及び紫外線ランプ等の種々のプロセス装置を有するこのタイプのシステムの使用を含む。
【0007】
RFIDタグに加えて、可能性は、同様にフィルタリングエレメントにおける他の電子機器を含むために存在している。ジョルニッツらによる米国特許第7,048,775号は、フィルタリング設備の完全性を監視するための装置及び方法を記載する。
【0008】
この公開物は、フィルタ筐体と併せてオンボードメモリチップ及び通信用装置を含むフィルタの使用を記載する。フィルタ筐体は、監視及び完全性テスタとして働く。その出願は、マルチラウンドの筐体に用いられるフィルタリングエレメントの完全性を確立するために用いられる方法のセットもまた記載する。これらの方法は、使用されるフィルタの種類、その限界データ及びその生産リリースデータを検証するために、メモリエレメントに検索要求することを含む。
【0009】
ますます、圧力センサ、温度センサ及び濃度センサを含むセンサ等の他の電子機器が、またこれらの装置の性能を更に拡張するためにフィルタリングエレメントに追加されてきている。係属中の米国特許出願公開第2007/0240578号、2007/0243113号及び2007/0240492号はすべてシステム性能及び有用性を改善するためにフィルタリングエレメントに追加されることのできる追加電子機器を記載する。
【0010】
しかしながら、機能の急速な増加と、フィルタリングエレメントへの高度な電子機器を追加するための要望にも関わらず、重大な欠点が残っている。例えば、ステンレススチール(又は他の金属)筐体内の電子装置と有効に通信する点については、問題を抱えたままである。
【0011】
同様に、ディスポーザブルバイオプロセスシステムにも、ワイヤレスパワー(給電)及び通信の困難性が存在し得る。この環境で、ディスポーザブル物品は、RFIDタグ、温度センサ又は圧力センサ、または他の適当な物品等のような1以上のワイヤレス電子装置とよく組み合わされる。これらのディスポーザブルシステムは、金属筐体には含まれないが、それらの環境は依然として電気的に難しい(チャレンジングな)場合がある。例えば、典型的なバイオプロセスシステムは流体を流す。流体及び他の水性環境は、無線信号を歪めるか、又はまたは減衰させるため、任意のワイヤレスパワーや通信スキームにマイナスの影響を有することが知られている。更に、主としてプラスチックで構成されるこれらのディスポーザブルシステムは、金属組織か固定具によりしばしば支持されている。流体のように、これらの金属組織は、それらの付近でワイヤレス信号を低減させるか又は歪める傾向にある。更に、ディスポーザブルバイオプロセスのセットアップの大きさは、ディスポーザブル物品内のアンテナからセンサまでの距離が問題になるのに十分な大きさを有し得るかもしれない。したがって、ディスポーザブルシステムは、伝統的な筐体環境に含まれるバイオプロセスシステムに影響を与えるワイヤレス通信及びパワーに関する同じ問題に遭遇し得る。
【0012】
電気的に困難なバイオプロセス環境において通信し、ワイヤレスで給電する装置のより信頼性のあるシステム及び方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5674381号明細書(米国再発行特許発明第39361E号明細書)
【特許文献2】米国特許7259675号明細書
【特許文献3】米国特許7048775号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0240578号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0243113号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0240492号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術の問題は、電気的に困難なバイオプロセス環境において、センサに対してより信頼性のあるワイヤレス通信及び給電を提供するための方法及び装置を記載する本発明によって最小化される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
非接続アンテナは、バイオプロセス環境に配置される。本質的には、この非接続アンテナは、特性の周波数を放出するパワード(電源付)アンテナと共振するように設計されたアンパワード(電源無)電磁共振回路である。反射アンテナとも呼ばれるこの非接続アンテナは、パワードアンテナにより生成された電磁場を強化し、制御する。この反射アンテナは、センサ又は通信装置を含む装置に組み込まれるか、または近接する。電磁誘導は、アンテナの設計または形状に依存するため、反射アンテナは、磁気ループまたは電気双極子であり得る。
【0016】
一実施形態においては、ループアンテナにより誘導場が生成される。このループアンテナの位置は、バイオプロセス環境中の寄生により制限され得る。例えば、ループをフィルタエレメント内の通信装置の十分近くに配置することは、非実用的な場合がある。これに対する様々な理由があり得、それはループが温度分布または流体流れを有する場合の影響を含んだ懸念を含む。したがって、誘導ループの効力には危うさがある。環境における流体と金属の量に結びつけられたこの事実は、誘導ループの性能を大いに下げることができるのである。
【0017】
システム中の電子物品内又はその近くに反射アンテナを配置することにより、電磁場を強化し、適切に閉じこめることが可能である。一実施形態において、反射アンテナはフィルタ筐体に組み込まれる。別の実施形態では、それはフィルタエレメント自身に組み込まれる。更に別の実施形態では、それは例えばバイオリアクタバッグ又はチューブ等のディスポーザブルバイオプロセス物品に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の主要物品を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態により利用可能な代表的なステンレス鋼筐体を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に用いられる誘導ループを示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態を示す。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
誘導が、物理的な接続がない装置へ電力を供給するのに利用できることはよく知られている。一般に、ワイヤコイルは何度も巻回され、交流電流がそれを通過する。この交流電流は、コイルの周囲に変更磁場を生じさせる。第1のコイルから物理的に分離されて離間する装置内に配置された第2のコイルは、この変更磁場を交流電流に変換するために用いることができる。この電流は、その組み込み電子機器を動かすために用いることができる。
【0020】
図1は、本発明に用いられる主要物品の概略図を示す。電源ループ200は電源210に接続されており、好ましくは交流電流を供給する。この電流が振動する周波数は本発明にクリティカルではなく、すべての周波数が予定される。ある実施の形態では、存在し得る任意の他のワイヤレス動作を有する電磁場の相互作用により、特定の周波数又は周波数域が好ましいであろう。例えば、特定の実施形態では、ワイヤレス通信は、2.4GHzで行われる場合がある。この場合、電源ループの周波数は、メガヘルツ範囲(例えば13.56MHzまたは950MHz)にあるのが好ましいであろう。関心の電子装置220は、電源ループ200より上に描かれている。この装置220は、センサ、RFIDタグまたは他の任意の好適な電子物品または物品のセットであり得る。装置に組み込まれる電子機器であるため、それは高性能装置としても知られている。また、この装置はワイヤレストランスミッタ等の通信部品をも典型的には含み得る。この装置は、RAMまたはROM等のストレージエレメントをも含み得る。装置220内には、電源ループ200によって発生する電磁場を受けてそれを交流電流に変換するために構成された小さいループアンテナがある。装置220において発生した電力はその後、高性能装置中の残りの電子機器を動かすために用いられる。装置に供給されたエネルギー量は、装置のコイルの寸法および巻線の数に関連する磁束密度と同様に、装置の近くの電磁場の強さの関数である。反射アンテナ230が、電源ループ200及び電子装置220の上に描かれる。上記のように、反射アンテナは、パワードアンテナと共振するように設計されており、所定の周波数で発信する、アンパワード(電源無)電磁共振ループまたは回路である。この位置では、反射アンテナ230は、この所定の周波数で、それと電源ループ200の間で電磁場を強化して、制限する能力を有する。このように、電子装置220は、強化電磁束を経験し、装置220内により多くの電力が誘導されることを可能にする。これは、電源ループ200単独では必要とされる場へ供給するのに不十分である環境における装置220の動作を可能にする。
【0021】
図2は、医薬品及び他の流体をフィルタリング(ろ過)するのに用いられる従来のステンレス鋼筐体アッセンブリ100を示す。伝統的なシステムでは、筐体アッセンブリ100は、上部筐体110および下部筐体120の2つの部品に分けられる。下部筐体120は、ユニットに対する配管および電気接続を含むため、典型的には所定の位置に固定される。フィルタリングされてない流体は、入口導管130を介して下部筐体120に流入し、フィルタリングされた材料が、出口導管140を介して下部筐体120から流出する。
【0022】
伝統的には、これらの筐体を製造するためにはステンレススチールが用いられる。しかしながら、他の金属が用いられることも可能である。他の実施の形態では、プラスチック材料も、筐体物品を形成するためにモールドされ得る。
【0023】
1以上のフィルタエレメントが下部筐体の中に設置され得る。これらのエレメントが設置された後、上部筐体110が下部筐体の上に位置づけされ、所定の位置に固定される。典型的には、金属締め具、トリ・クランプ、ラディッシュ・クランプまたはバンド・クランプ等の固定具150が、2つの部分を一緒に保持するために用いられる。
【0024】
上部及び下部筐体の間の適切なシール(封止)を確実にするために、O−リング等のようなガスケット160が典型的には用いられる。多くの場合において、このガスケット160はリング状又は環状である。このガスケット160は、筐体内に達成する温度に耐えることのできる生体適合性材料から構成される。また、材料は、空気及び流体の密封を形成するように、十分に弾力(伸縮性)もなければならない。好ましい実施の形態では、シリコーン・ベースの材料が必要な形状にモールドされる。このガスケット160はその後上部筐体110及び下部筐体120の間に配置され、組み立て中の適正なアライメントを確実にするために、上部筐体及び下部筐体のいずれか一方又は両方に形成された溝内に配置されるのが好ましい。
【0025】
ある実施形態では、ワイヤ等の1以上の電気導管(図示せず)が、ガスケット160の中にモールドされる。ガスケット160は、好ましくは、導管がガスケット材料の中に完全に封止されることを確実にするように、ダブルモールディングプロセスを用いて製造される。
【0026】
ある実施形態では、図3に示すように、1つの大きな誘導ループが、環状ガスケットの内周に沿って提供される。電気導管は、より大きな磁場を誘導するより多くの巻線を有してガスケット300を複数回取り囲んでいる。この実施形態は、筐体アッセンブリ内の常流体流れに対して最小限の乱れを与える。図3に示すように、3つのフィルタエレメント310が示されることに留意されたい。発明は、この実施形態に制限されず、それ以上またはそれ以下のフィルタリングエレメントが使用され得る。一般に、そのようなシステムは、1、3、5、10、12、24又は30個のフィルタエレメントを筐体内に使用する。
【0027】
場を強化するかまたは制限するために、非接続の、反射性のアンテナ(図示せず)が環境中に挿入される。この反射アンテナの設置は、必要な結果を達成するために必須(クリティカル)である。ある実施形態において、反射アンテナは、フィルタリングエレメント自身内に配置される。
【0028】
図4は、従来のフィルタリングエレメント400を示す。フィルタリングエレメント400は、第1のエンドキャップ420、第2のエンドキャップ415、多孔質コア450および膜430により形成される。この図から示されるように、第2のエンドキャップ415から延びる出口410がある。エッジシール(図示せず)は、カートリッジの外側のすべての流体が、カートリッジ内部又は出口410に到達する前に、膜430を通過しななければならないように、膜の端部とエンドキャップとの間に一体化した、流体密封を形成するために、第1のエンドキャップ及び第2のエンドキャップに対して結合される。膜の外側は、多孔質な外側ケージ440である。ケージ440は、筐体中で高温に耐えることが可能なプラスチックであるのが好ましい。よって、得られるフィルタリングエレメント400は、1の開放端と1の閉端を有する中空の内部シリンダと、外部シリンダを有する。これらの2本のシリンダ間の領域は、エレメントの枠、膜の位置又はフィルタ材料を定義する。フィルタ(ろ過)されていない材料は、フィルタリングエレメントの外面に表され、フィルタ材料を通過し、シリンダの開放端を経て流出する。
【0029】
フィルタは、微多孔膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜または逆浸透膜を含むが、これに限らず、ろ過において一般的に用いられる任意の種々の1以上の膜で作られていてもよい。好ましくは、微多孔質膜が用いられる。代表的な適切な微多孔質膜は、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン及びポリアリールスルホンを含むポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、超高分子量ポリエチレン等のポリオレフィン、低密度ポリエチレンおよびポリプロピレン、ナイロンおよび他のポリアミド、PTFE、ポリ(TFE−co−PFAVE)、例えばPFA等の熱可塑性フッ化ポリマー、ポリカーボネートまたはEMPORE.RTM.などの粒子充填膜、ミネソタ州ミネアポリスの3Mから入手可能な膜を含む。そのような膜は、当該技術分野で周知であり、対称形かまたは非対称形か2つの組み合わせとすることができ、マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア社から利用可能なDurapore(登録商標)膜及びMillipore Express(登録商標)膜が市販されている。
【0030】
代表的な限外濾過またはナノ濾過膜は、ポリエーテルスルホンを含むポリスルホン、ポリアリールスルホン、ポリフッ化ビニリデンおよびセルロースを含む。これらの膜は、高度に多孔質構造で形成される支持層を一般的には含んでいる。これらの支持層の典型的な材料は、スパンボンド系ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの様々な不織布材料、またはガラスまたは同一または異なるポリマーが膜自身として形成された細孔材料を含む。そのような膜は当該技術分野によく知られており、マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア社等の種々のソースから市販されている。
【0031】
継続中の米国特許公開第2007/0240578、第2007/0243113および第2007/0240492を含む数多くの特許出願はすべて、システム効率及び有用性を向上させるためのフィルタリングエレメントに付け加えられ得る追加電子機器を記載する。これらの電子装置470の多数は、フィルタリングエレメントの中空の内部シリンダ内に最も有利に配置される。この方法で、ろ過した材料の温度、圧力、濃度および他のパラメータが測定できる。更に、電子装置470上に配置されるか、またはフィルタリングエレメントの閉端420に取り付けられるのが望ましい。
【0032】
これらのフィルタリングエレメントの寸法は、フィルタリングエレメントの基部(即ち開放端)と対向する閉端との間に、数インチ及び時には数フィートであり得ることを意味し、そこに電子装置が通常配置される。図2および3に示すように、誘導ループ300は開放端の近くに配置され、この距離が問題を含み得る。加えて、電子装置は、典型的には流体経路にあり、これが更に電磁場を危うくすることとなる。更に、フィルタリングエレメントを取り囲むステンレス鋼筐体は、ワイヤレス性能を減損させる。これらの要因のため、電子装置の近くにおいてその影響が最大になるように、電磁波を強化又は制限することが必要であろう。
【0033】
ある実施形態においては、反射アンテナ480は、フィルタリングエレメント400の中空内部シリンダ内に配置される。ループ480は、電子装置470と近くなるように、閉端420近くに配置されてもよい。或いは、それは、他のいかなる適切な位置にも配置され得る。好ましくは、反射アンテナ480は、流体経路に晒されないように、その内面455に沿ってフレーム440にモールドされる。このように、反射アンテナ480は、中空内部シリンダとフィルタ材料の間に配置されなければならない。
【0034】
他の実施形態では、反射アンテナ480は、フィルタリングエレメントの閉端420に配置される。また、反射アンテナは、流体経路に晒されないように、プラスチック内にモールドされるのが好ましい。
【0035】
他の実施形態では、反射アンテナ480は、フィルタ装置400の外面460に沿って、フレーム440内に配置される。また、ループは、流体の流れに晒されないように、プラスチック内にモールドされるのが好ましい。
【0036】
反射アンテナ480が接続されていないため、ループにはいかなる電気導管も供給する必要がない。よって、フィルタリングエレメント400へのその統合は、ループをプラスチック筐体内にモールドすることによって達成される。上記のように、フィルタリングエレメント内のループ480の正確な位置は実装決定であり、本発明により制限されるものではない。
【0037】
上述の説明は、フィルタリングエレメント内の単一の反射アンテナの包含を詳述する。本発明はそれには制限されない。例えば、反射アンテナは、必要に応じて多くの巻回を有することができる。同様に、1以上の反射アンテナが単一のフィルタリングエレメントに組み込まれることができる。さらに、単一のハウジング内に複数のフィルタリングエレメントを有する環境で、そのフィルタリングエレメントのそれぞれが、それ自身に関連する反射アンテナを備えていることができることが想定される。あるいは、ハウジング内のすべてのフィルタリングエレメントが、反射アンテナを備えている必要があるというわけではない。
【0038】
上述の説明は、筐体アッセンブリ内の上部及び下部筐体の間に存在するガスケットについて述べているが、他の位置もまた可能である。例えば、記載されたガスケットの種類は、筐体の任意の2つの分離可能な部分の間に導入され得る。例えば、特定の実施の形態では、ガスケットは、頂部通気口(ベント)及び頂部通気口パイプの間に存在する。この実施の形態では、これらの2つの分離可能な部分の間に本発明のガスケットを挿入することが可能である。筐体の2つの分離可能な部分が一緒になった任意の場所にこのガスケットが用いられ得る。
【0039】
筐体環境においては、反射アンテナが配置されることのできる他の位置がある。例えば、しばしば、アライメント板がフィルタリングエレメントの上に、それらを所定の位置に保持するために配置される。図3は、アライメント板330の使用が所定の位置に複数のフィルタリングエレメント310を保持していることを示す。このアライメント板は、プロセスの間、腐食に耐え、機械的支持を保持するステンレス鋼または他の剛性材料から典型的には構成される。このアライメント板がフィルタリングエレメント310の閉端の近くに配置されるため、組込形電子装置の近くで電磁場にプラスの影響を及ぼすことができる。反射アンテナは、多くの方法によりこの板内に埋設されることが可能である。ある実施形態においては、アライメント板は、電磁場を制御するのと同様に、フィルタを保持するための機能を達成するように構成される。高温熱可塑性または熱硬化性ポリマーのような、筐体環境の劣化に耐え、構造的に頑丈で、電気的に中性を維持する材料を選択することは、当業者にとって明らかである。第1の実施形態においては、単一の反射アンテナは、それがすべての3つのフィルタリングエレメントと外接するように、アライメント板内に埋められる。第2の実施形態においては、複数の反射アンテナ、好ましくは各関連するフィルタリングエレメントの1つが埋設される。この場合、各反射アンテナは、その関連するフィルタリングエレメントのみに外接する。反射アンテナは、単にフィルタリングエレメントの上にアライメント板を配置することによって、環境に容易に組み込まれる。しかしながら、反射アンテナは、アライメント板330内に埋められる必要はない。他の実施態様においては、それは任意の方法を用いて所定の位置に配置され、接着され、熱結合され、取り付けられる。更に、アライメント板は、1以上の反射アンテナを含むプラスチック材料が取り付けられるステンレス鋼板でもよい。
【0040】
フィルタ筐体に用いられる高性能装置に加え、本発明は、ディスポーザブル(使い捨て可能)なバイオプロセス解決策を有するという有用性を有する。ディスポーザブルバイオプロセス解決策は、再使用可能な永久部品をディスポーザブル部品に置き換えることによって、製造プロセスの基本的なユニット動作を複製する。多数の利点がディスポーザブルなバイオプロセス解決策にあるにもかかわらず、それらの中の主なものは、クリーニング及びテストからメンテナンスを除去するコスト削減である。ディスポーザブルなバイオプロセス解決策は、通常、再使用可能な支持構造内に配置される低コストで物理的にフレキシブルな物品でできている。ミリポア社からのMobius(商標)ディスポーザブルソリューションのような市販のシステムは、ディスポーザブル物品を含む。ディスポーザブル物品は、チューブ、コネクタ、貯蔵のためのバッグ、混合、細胞増殖(バイオリアクタ)、反応などを行うこと、フィルタおよび他の類似の構成物品を含む。バイオプロセス環境は、卓上のような平坦面上に作られ得るか、またはフレーム上に積層され得る。各種物品は、特定のタスクにより必要に応じて配置される。これらの構成物品の多くは、しばしば電子装置または高性能装置に装備される。これらの高性能装置は、温度、圧力、pH、濃度または他の情報を測定するために用いることができる。
【0041】
付属品または構造物は、しばしば強度のために金属でできているが、このバイオプロセスセットアップにおける様々な物品を補助する。これらの高性能装置を給電するために、バイオプロセスセットアップの近くに電源(パワード)誘導ループが配置され得る。ある実施形態においては、電源ループが平坦面上に置かれ、バイオプロセスセットアップの1以上のエレメントを囲む。このループにより発生する電磁場は、その後、上述した技術を用いて、高性能装置の1又はそれぞれに用いられる。追加電源ループがまた、希望に応じてエレメントの塊または個々のエレメントのために用いられ得る。
【0042】
しかしながら、例えば距離、水環境および高い金属濃度等の前述の困難性の多くは、ディスポーザルバイオプロセスセットアップにも存在し得る。したがって、電源ループからの電磁力の送信を最大化するため、反射アンテナがディスポーザル医薬物品の一部または全部に取り付けられることが可能である。
【0043】
バイオリアクタバッグの場合、反射アンテナは、必要に応じて少なくとも一部のバッグまたは全てのバッグを形成するために用いられる材料内に埋設され得るか、またはバッグの少なくとも一部の外面に取り付けられることができる。ある実施形態では、電子装置がバッグの外面に配置され、反射アンテナもまた装置周辺のバッグに取り付けられる。
【0044】
図5は、ディスポーザブルバイオプロセス解決策の利用のための本発明の実施形態を例示する。バイオリアクタバッグ500は、入口導管510および出口導管520を有し、支持構造530内に任意に配置される。電源誘導ループ540は好ましくは平坦な支持面にある。図5において、ループ540は、支持構造530の直下に配置されるが、本発明はこの実施形態には制限されない。ループ540は、より大きい直径を有することができ、複数の構成物品を囲むことができる。更に、誘導ループ540は、ディスポーザブル物品が配置されるマットまたは他の表面内に埋設されることができる。この種のシナリオにおいて、装置が配置される位置にループが配置されるように、ワークフローのレイアウトを似た一連のループがマット内に埋設される。
【0045】
電子物品または高性能装置550は、バイオリアクタバッグ500上に置かれる。この高性能装置の近くの電磁場を改善するために、バイオリアクタバッグ500の周囲に反射アンテナ560が配置される。図5の反射アンテナ560は、電源誘導ループ540と高性能装置550との間に配置されるが、本発明はそれには制限されない。高性能装置は、反射アンテナ560と動力入誘導ループ500との間に配置されることも想定される。
【0046】
ある実施形態では、反射アンテナ560は、例えば加熱により、バイオリアクタバッグ500に取り付けられる。他の実施形態では、反射アンテナ560は、バイオリアクタバッグ500内に埋設される。他の実施形態では、反射アンテナ560は支持構造530に取り付けられ、それが順にバイオリアクタバッグ500を保持する。他の実施形態では、反射アンテナ560は、支持構造530内に埋設される。当業者は、反射アンテナ560をバイオリアクタバッグ500または支持構造530に取り付けるために様々な技術が用いられ得ることを認識するであろう。
【0047】
上述では、用語バイオリアクタバッグが用いられるが、本発明はいかなる容器でも操作できると理解されるべきであろう。更に、例えばチューブのような他のディスポーザル物品を用いて類似する方法が用いることが可能である。好ましくはチューブの外面に、反射アンテナは、プラスチックチューブ内に埋設されるか、好ましくはそのチューブの外面に取り付けられることが可能である。
【0048】
誘導アンテナ設計における当業者は、ソースおよびレシーバコイルを最適化することにより誘導電流を最大化することが可能であるが、それでもなおレシーバコイルの寸法またはコストには制限があり得る。装置への反射アンテナの統合(一体化)は、装置と関連する電磁束を改善することによって、コスト及びセットアップ複雑性を減少させる。これは、装置の製造者ではないユーザが、装置の物理的セットアップを決定する場合にディスポーザルバイオプロセス解決策にとっては特に真実であり得る。この発明は、ユーザーサイトでの物理的セットアップの柔軟性を改善する。
【0049】
電力の誘導を向上させる反射アンテナの使用が、エンドデバイスとワイヤレスで通信する能力を向上させるために用いることもできることが知られている。パワードアンテナは、エンドデバイスに電力および双方向通信を供給する調整された電気信号を有するトランシーバアンテナとして用いられることが可能である。これは、RFIDリーダアンテナの典型的機能である。同様に図5では、バイオファーマシューティカルバイオリアクタバッグ500は、バッグ上に、ユーザに認識されなければならない電子ラベルを有することができる。バイオリアクタバッグの高さを拡大することは、電子ラベルがパワード通信ループと通信する能力を損ない得る。適切に配置された反射アンテナ560は、電気的に積極的な環境においてよく通信する。単一の反射アンテナは、リーダに対して給電及び通信に用いることができる。
【0050】
この開示の実施形態では主として磁気誘導ループを記載するが、この発明はそれには制限されない。反射アンテナは、双極子のように異なる形状を有することができ、より典型的には通信に用いられる。
【符号の説明】
【0051】
110…上部筐体
120…下部筐体
130…入口導管
140…出口導管
150…固定具
160…ガスケット
200…電源ループ
210…電源
220…電子装置
230…反射アンテナ
300…ガスケット(誘導ループ)
310…フィルタ(フィルタリング)エレメント
330…アライメント板
400…フィルタリングエレメント(フィルタ装置)
410…出口
420…閉端
430…膜
440…ケージ(フレーム)
450…多孔質コア
455…内面
460…外面
470…電子装置
480…反射アンテナ
500…バイオリアクタバッグ
510…入口導管
520…出口導管
530…支持構造
540…電源誘導ループ
550…高性能装置
560…反射アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタリングエレメントであって、
a.ろ過されていない材料に晒される外面と内面とを有する円筒形本体と、
b.閉端と、
c.ろ過された材料が流れる開放端と、
d.前記フィルタリングエレメントに取り付けられたワイヤレス電子装置と、
e.前記電子装置に近接して前記フィルタリングエレメントに取り付けられたアンパワード電磁共振アンテナと
を備えるフィルタリングエレメント。
【請求項2】
前記アンパワードアンテナが、前記円筒形本体の前記内面に取り付けられる請求項1に記載のフィルタリングエレメント。
【請求項3】
前記アンパワードアンテナが、前記円筒形本体の前記外面に取り付けられる請求項1に記載のフィルタリングエレメント。
【請求項4】
前記アンパワードアンテナが、前記閉端に取り付けられる請求項1に記載のフィルタリングエレメント。
【請求項5】
前記電子装置が、前記閉端に取り付けられる請求項1に記載のフィルタリングエレメント。
【請求項6】
前記アンパワードアンテナがループ形状を有する請求項1に記載のフィルタリングエレメント。
【請求項7】
フィルタリングシステムであって、
a.筐体と、
b.前記筐体内部のパワード誘導ループと、
c.ワイヤレス電子装置を備えるフィルタリングエレメントと、
d.前記電子装置に近接するアンパワード電磁共振アンテナと
を備えるフィルタリングシステム。
【請求項8】
前記筐体内のアライメント板を更に備え、前記アンパワードアンテナが前記アライメント板に取り付けられる請求項7に記載のフィルタリングシステム。
【請求項9】
前記筐体内のアライメント板を更に備え、前記アンパワードアンテナが前記アライメント板に埋設される請求項7に記載のフィルタリングシステム。
【請求項10】
前記アンパワードアンテナが、前記筐体に取り付けられる請求項7に記載のフィルタリングシステム。
【請求項11】
前記アンパワードアンテナが、前記フィルタリングエレメントに取り付けられる請求項7に記載のフィルタリングシステム。
【請求項12】
前記アンパワードアンテナが、ループ形状を有する請求項7に記載のフィルタリングシステム。
【請求項13】
医薬品を製造するためのディスポーザブルシステムであって、
a.パワー誘導ループと、
b.電子装置を備え、医薬材料を保持するための容器と、
c.前記電子装置に近接するアンパワード電磁共振アンテナと
を備えるディスポーザブルシステム。
【請求項14】
前記アンパワードアンテナが、前記容器に取り付けられる請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記アンパワードアンテナが、前記容器に埋設される請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記電子装置が、センサを備える請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記電子装置が、ワイヤレス通信装置を備える請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記電子装置が、ストレージエレメントを備える請求項13に記載のシステム
【請求項19】
前記容器が、バイオリアクタバッグを備える請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記容器が、チューブを備える請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
前記容器を支持するための支持構造を更に備え、前記アンパワードアンテナが前記支持構造に取り付けられる請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記容器を支持するための支持構造を更に備え、前記アンパワードアンテナが前記支持構造に埋設される請求項13に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−518653(P2011−518653A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501789(P2011−501789)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/001627
【国際公開番号】WO2009/120271
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】