説明

バイオマス燃料の燃焼装置

【課題】燃焼室に灰を堆積させず、灰の排出作業を不要にしたバイオマス燃料の燃焼装置を提供する。
【解決手段】燃焼バーナ9が設けられた燃焼室13に対してバイオマス燃料を粉粒状態で供給する燃料供給手段3と、上記燃焼室13の内周壁から燃焼用空気を旋廻流となるよう供給する周壁ノズル17と、上記燃焼室13の底部に向かって上記旋廻流と同方向の旋廻流となるよう燃焼用空気を供給する底部ノズル18と、上記燃焼室13の頂部近傍において燃焼ガスを灰とともに誘引して排出する誘引排出手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として未利用バイオマス燃料(林産資源、農産資源・稲わら、もみ殻、麦わら等)及び廃棄物系バイオマス燃料(食品加工残渣、生ゴミ、動植物残渣等の食品資源、家畜排泄物等の畜産資源、下水汚泥、パルプ排水等の産業資源、建築廃材等の林産資源)等に代表されるような有機性バイオマス燃料の燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から燃焼の燃料として使用されている化石燃料の石炭や石油は、二酸化炭素等の温室効果ガスによる地球温暖化の問題で、温室効果ガスの発生をより少なくする資源への転換が急務となっている。そこで近年、化石燃料を主燃料として燃焼するボイラでのCO排出削減策の1つとして木質系バイオマスの燃焼技術が注目されている。このようなバイマス燃料の燃焼装置として、例えば、下記の特許文献1に開示されたものが提案されている。
【特許文献1】特開2006−242539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載のバイオマス燃料燃焼装置は、燃焼室にペレット状のバイオマス燃料を投入して燃焼するため、燃焼室の底部に灰が堆積し、所定の使用期間が経過する度に堆積した灰を除去する作業が必要になっていた。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、燃焼室に灰を堆積させず、灰の排出作業を不要にしたバイオマス燃料の燃焼装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のバイオマス燃料の燃焼装置は、燃焼バーナが設けられた燃焼室に対してバイオマス燃料を粉粒状態で供給する燃料供給手段と、上記燃焼室の内周壁から燃焼用空気を旋廻流となるよう供給する周壁ノズルと、上記燃焼室の底部に向かって上記旋廻流と同方向の旋廻流となるよう燃焼用空気を供給する底部ノズルと、上記燃焼室の頂部近傍において燃焼ガスを灰とともに誘引して排出する誘引排出手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
すなわち、本発明は、上記燃焼室の内周壁から燃焼用空気を旋廻流となるよう供給するとともに、上記燃焼室の底部に向かって上記旋廻流と同方向の旋廻流となるよう燃焼用空気を供給する。この状態で、バイオマス燃料を燃焼室に対して粉粒状態で供給して燃焼させる。これにより、供給された粉粒状のバイオマス燃料は、燃焼室内で旋廻しながら燃焼して灰化し、燃焼熱で燃焼室内を上昇して燃焼室の頂部近傍の誘引排出手段から排出される。このため、燃焼室内に灰が堆積することがなく、燃焼室内に堆積した灰の除去作業も不要になる。また、燃焼中は周壁ノズルおよび底部ノズルから燃焼用空気が供給されることから、周壁および底部の炉壁の加熱が防止され、耐火材料を節約できて炉体を安価に作成できるうえ、炉壁の損傷を防止してメンテナンスコストも節減できる。
【0007】
本発明において、上記燃焼室の略中心部近傍から外向きに燃焼用空気を供給する中心部ノズルをさらに備えている場合には、燃焼用空気の流速が小さな旋廻流の中心において、外向きに燃焼用空気を供給することから、流速が小さな旋廻流の中心近傍で速度の落ちた灰が旋廻流に向かって戻されるので、中心部で灰が底部に堆積するのが防止される。このため、燃焼室内に灰が堆積することがなく、燃焼室内に堆積した灰の除去作業も不要になる。
【0008】
本発明において、上記燃料供給手段は、ファンの風力によって燃料を燃焼室内に供給するように構成されている場合には、粉粒状のバイオマス燃料がファンの風力によって吹き飛ばされながら燃焼室内に供給されることから、バイオマス燃料が塊になって燃焼室内に供給されてそのまま灰が燃焼室内に堆積するのが防止される。このため、燃焼室内に灰が堆積することがなく、燃焼室内に堆積した灰の除去作業も不要になる。
【0009】
なお、本発明でいうバイオマス燃料とは、化石燃料以外の有機性の燃料であり、その種類を限定するものではないが、例えば、特に食品加工残渣、生ゴミ、動植物残渣や生ゴミなどや森林や生活リサイクルとして出てくる全ての廃材や汚泥、さらにその二次加工製品等を含む燃料となりうる発熱量を有する有機系燃料をいうものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
図1〜図4は、本発明のバイオマス燃料の燃焼装置の一実施形態を示す図である。図1は燃焼装置の全体構成を示す図、図2は燃焼炉1の詳細を示す縦断面図、図3は上記燃焼炉1の詳細を示す横断面図、図4はノズルユニット12を示す図である。この実施形態では、燃焼装置として、燃焼熱を水の加熱および燃焼炉1の下流に配置された排熱利用設備2で利用するボイラ装置に適用した例を説明する。
【0012】
この装置は、燃焼バーナ9が設けられた燃焼室13を有する燃焼炉1と、上記燃焼炉1に対してバイオマス燃料を粉粒状態で供給する燃料供給手段3と、上記燃焼炉1から排出された排熱を利用する排熱利用設備2と、上記排熱利用設備2から排出された排ガスから塵埃を除去する集塵装置4とを備えて構成されている。
【0013】
より詳しく説明すると、上記燃料供給手段3は、バイオマス燃料(以下単に「燃料」という)をエアシュートによって供給するエアシュート供給機6と、エアシュート供給機6で供給された燃料を燃焼炉1に投入するための投入ホッパ7とを備えている。
【0014】
上記エアシュート供給機6は、燃料をストックするストッカー24の底部に、燃料を少しずつ送り出すスクリュー25が設けられ、上記スクリュー25の先端部に、スクリュー25で押出された燃料をエアシュートで気送するための空気を送るブロア26が設けられて構成されている。上記ブロア26で送り出された燃料は、気送管27により投入ホッパ7の上部に送られるようになっている。
【0015】
上記投入ホッパ7に導入された燃料は、下部に設けられた燃料供給管28を通って燃焼炉1の側壁部から燃焼室13内に供給されるようになっている。また、投入ホッパ7の下部と燃料供給管28の接続部には、燃料供給管28内に気流を送って燃焼室13内に燃料を吹き飛ばすようにして投入するための燃料投入ファン8が設けられている。
【0016】
そして、ストッカー24からスクリュー25で少しずつ送り出された燃料をエアシュートで投入ホッパ7まで気送し、気送された燃料をさらに燃料投入ファン8で吹き飛ばしながら燃焼室13内に投入する。このように、上記燃料供給手段3は、ファンの風力によって燃料を燃焼室13内に供給するように構成されているため、燃料は塊にならずに細かな粉粒状にばらされた状態で燃焼室13内に供給される。
【0017】
上記燃焼炉1は、燃焼室13の底部近傍に向かって火炎を噴射する燃焼バーナ9を備えている。燃焼室13は略円筒状に形成され、頂部に円錐状の先窄まり部29およびそれに続く排気集約部30が形成されている。上記排気集約部30には、排気を誘引する熱風誘引ファン11が設けられた排気管36が接続され、排気を排熱利用設備2に導入するようになっている。上記熱風誘引ファン11および排気管36は、燃焼室13の頂部近傍において燃焼ガスを灰とともに誘引して排出する本発明の誘引排出手段として機能する。
【0018】
上記燃焼室13の周壁部および底部には、エア導入ファン10によって燃焼用空気が導入される空気導入層31が設けられている。そして、燃焼室13の内周壁には、周壁部の空気導入層31と連通して燃焼室13の内周壁から燃焼用空気を旋廻流となるよう供給する周壁ノズル17が設けられている。上記周壁ノズル17は、所定間隔で複数(この例では5つ)縦方向に列設されてノズル列を形成し、このノズル列が所定間隔で複数列(この例では8列)周方向に配置されている。各周壁ノズル17からの空気の噴出し方向は、中心向きよりもやや接線方向に斜めに設定され、燃焼用空気を旋廻流として供給しうるようになっている。
【0019】
このように、周壁ノズル17により燃焼用空気を旋廻流として供給することにより、上部から粉粒状で供給された燃料が底部近傍の燃焼バーナ9の火炎で燃焼され、燃焼室13内を旋廻流で旋廻しながら燃焼熱で上昇し、灰化された灰とともに燃焼ガスが熱風誘引ファン11で排出される。
【0020】
また、燃焼室13内には、燃焼室13内に燃焼用の空気を導入するためのノズルユニット12が配置されている。上記ノズルユニット12は、底部の空気導入層31と連通して燃焼室13の略中心に立設された中空状の中心ノズル管20と、上記中心ノズル管20から底部近傍で分岐する中空状の底部ノズル管21とから構成されている。上記底部ノズル管21は、この例では複数本(この例では5本)がラジアル方向に延びるように配置されている。
【0021】
そして、上記各底部ノズル管21には、上記燃焼室13の底部に向かって上記旋廻流と同方向の旋廻流となるよう燃焼用空気を供給する底部ノズル18が形成されている。この例では、各底部ノズル管21にそれぞれ底部ノズル18が所定間隔で複数(この例では2つずつ)形成されている。上記底部ノズル18からの空気の噴出し方向は、上記周壁ノズル17による旋廻流の下流側に向かって斜め下向きに設定され、燃焼用空気を底部に向かって旋廻流として供給しうるようになっている。
【0022】
このように、各底部ノズル18により燃焼用空気を底部に向かって旋廻流として供給することにより、上部から粉粒状で供給された燃料が底部近傍の燃焼バーナ9の火炎で燃焼され、底部に堆積することなく、燃焼室13内を旋廻流で旋廻しながら燃焼熱で上昇し、灰化された灰とともに燃焼ガスが熱風誘引ファン11で排出される。
【0023】
また、上記中心ノズル管20には、上記燃焼室13の略中心部近傍から外向きに燃焼用空気を供給する中心部ノズル19が設けられている。上記中心部ノズル19は、縦方向に所定間隔を隔てて複数(この例では2個もしくは3個)並べられ、空気の噴出し方向がラジアルな3方向に向かうように配置されている。
【0024】
このように、各中心部ノズル19により燃焼用空気を中心から外側に向かって供給することにより、旋廻流の中心付近で流速が落ちた灰を底部に堆積させることなく、再び旋廻流に戻し、燃焼室13内を旋廻流で旋廻させながら上昇させ、灰化された灰とともに燃焼ガスが熱風誘引ファン11で排出される。
【0025】
また、上記燃焼炉1には、その周壁に熱水管32が配置されて燃焼熱を水の加熱で回収するようになっている。上記熱水管32には、給水タンク14から水が供給され、加熱された水は排水部34から排出されて熱交換器15で熱交換された後還流部33から還流されるようになっている。
【0026】
熱風誘引ファン11で誘引された高温の燃焼ガスは排熱利用設備2に導入され、排熱を利用して例えば含水廃棄物の乾燥処理等を行なうことができる。排熱利用設備2から排出された排ガスは、集塵装置4で集塵されて煙突35から排出される。上記集塵装置4は、サイクロン集塵器22と洗浄集塵器23とを備えて構成されている。排熱利用設備2から排出される排ガスは、排ガス誘引ファン16で誘引されて、まずサイクロン集塵器22に導入されて集塵され、その後洗浄集塵器23に導入されて気液接触によりさらに集塵される。
【0027】
以上のように、本実施形態の燃焼装置によれば、上記燃焼室13の内周壁から燃焼用空気を旋廻流となるよう供給するとともに、上記燃焼室13の底部に向かって上記旋廻流と同方向の旋廻流となるよう燃焼用空気を供給する。この状態で、バイオマス燃料を燃焼室13に対して粉粒状態で供給して燃焼させる。これにより、供給された粉粒状のバイオマス燃料は、燃焼室13内で旋廻しながら燃焼して灰化し、燃焼熱で燃焼室13内を上昇して燃焼室13の頂部近傍の誘引排出手段から排出される。このため、燃焼室13内に灰が堆積することがなく、燃焼室13内に堆積した灰の除去作業も不要になる。また、燃焼中は周壁ノズル17および底部ノズル18から燃焼用空気が供給されることから、周壁および底部の炉壁の加熱が防止され、耐火材料を節約できて炉体を安価に作製できるうえ、炉壁の損傷を防止してメンテナンスコストも節減できる。
【0028】
また、上記燃焼室13の略中心部近傍から外向きに燃焼用空気を供給する中心部ノズル19をさらに備えているため、燃焼用空気の流速が小さな旋廻流の中心において、外向きに燃焼用空気を供給することから、流速が小さな旋廻流の中心近傍で速度の落ちた灰が旋廻流に向かって戻されるので、中心部で灰が底部に堆積するのが防止される。このため、燃焼室13内に灰が堆積することがなく、燃焼室13内に堆積した灰の除去作業も不要になる。
【0029】
また、上記燃料供給手段3は、ファンの風力によって燃料を燃焼室13内に供給するように構成されているため、粉粒状のバイオマス燃料がファンの風力によって吹き飛ばされながら燃焼室13内に供給されることから、バイオマス燃料が塊になって燃焼室13内に供給されてそのまま灰が燃焼室13内に堆積するのが防止される。このため、燃焼室13内に灰が堆積することがなく、燃焼室13内に堆積した灰の除去作業も不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の燃焼装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】燃焼炉を示す縦断面図である。
【図3】燃焼炉を示す横断面図である。
【図4】ノズルユニットを示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1:燃焼炉
2:排熱利用設備
3:燃料供給手段
4:集塵装置
6:エアシュート供給機
7:投入ホッパ
8:投入ファン
9:燃焼バーナ
10:エア導入ファン
11:熱風誘引ファン
12:ノズルユニット
13:燃焼室
14:給水タンク
15:熱交換器
16:排ガス誘引ファン
17:周壁ノズル
18:底部ノズル
19:中心部ノズル
20:中心ノズル管
21:底部ノズル管
22:サイクロン集塵器
23:洗浄集塵器
24:ストッカー
25:スクリュー
26:ブロア
27:気送管
28:燃料供給管
29:先窄まり部
30:排気集約部
31:空気導入層
32:熱水管
33:還流部
34:排水部
35:煙突
36:排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼バーナが設けられた燃焼室に対してバイオマス燃料を粉粒状態で供給する燃料供給手段と、
上記燃焼室の内周壁から燃焼用空気を旋廻流となるよう供給する周壁ノズルと、
上記燃焼室の底部に向かって上記旋廻流と同方向の旋廻流となるよう燃焼用空気を供給する底部ノズルと、
上記燃焼室の頂部近傍において燃焼ガスを灰とともに誘引して排出する誘引排出手段とを備えたことを特徴とするバイオマス燃料の燃焼装置。
【請求項2】
上記燃焼室の略中心部近傍から外向きに燃焼用空気を供給する中心部ノズルをさらに備えている請求項1記載のバイオマス燃料の燃焼装置。
【請求項3】
上記燃料供給手段は、ファンの風力によって燃料を燃焼室内に供給するように構成されている請求項1または2記載のバイオマス燃料の燃焼装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−286451(P2008−286451A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130639(P2007−130639)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(507152202)
【出願人】(507153405)
【Fターム(参考)】