説明

バイオマーカー

本発明は、結合剤およびグレリンシグナルペプチドについてのアッセイを提供する。これらの剤およびアッセイは、対象における急性心障害、グルコース処理障害、および糖尿病を予測する、診断する、評価する、またはモニターするための方法において有用である。本発明の方法において有用なヌクレオチド、ポリペプチド、およびキットもまた提供される。本発明はまた、対象におけるグルコース処理を評価するための方法であって、(a)グルコースの投与の後に、対象におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを測定する工程および(b)上述のGRN−SPのレベルを、コントロールからのGRN−SPと比較する工程を含み、コントロールレベルからのGRN−SPの測定レベルにおける偏差は、グルコース処理障害を示す方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレリンシグナルペプチド(GRN−SP)ならびに血行路へのマーカーの放出をもたらす生物学的事象または障害または状態の予後、診断、およびモニタリングにおけるその使用に関する。そのような状態は、肥満症ならびにグルコース処理障害(glucose handling disorder)、糖尿病、および心血管疾患、特に急性心障害などの関連する状態を含む。
【背景技術】
【0002】
肥満症は、ヒト集団において多発している。それは、西洋の世界における予防可能な死亡の主要な原因のうちの1つである。World Health Organisation(WHO)は、上位10の世界的な健康問題のうちの1つとして肥満症を認識している。
【0003】
集団における肥満症の原因は、様々な遺伝要因および社会的要因に帰することができる。しかし、根本的なレベルでは、肥満症は、エネルギー摂取がエネルギー消費を超える場合に生じる。肥満の個人は、糖尿病および心血管疾患、特に急性心障害などの関連する状態を発病する危険性がある。
【0004】
真性糖尿病(Diabetes Mellits)は、インスリン分泌、インスリン作用、またはその両方における欠乏によって特徴づけられる代謝障害である。これらの欠乏は、慢性高血糖症をもたらす。糖尿病は、世界的に、1億7000万人以上の人々を冒し、次の20年間で2倍になることが予想される。
【0005】
糖尿病は、1型糖尿病および2型糖尿病として公知の2つの型に分類される。1型糖尿病は、個人の免疫系が膵臓のベータ細胞を破壊するように作用する自己免疫関連障害である。1型糖尿病を有する個人は、一般的に、インスリン依存性である。彼らは、たとえあったとしても、限られたインスリン分泌を呈する。
【0006】
2型糖尿病は、症例の90〜95%を占める、最も一般的な形態である。大多数の2型糖尿病患者は、インスリン依存性ではないが、インスリン分泌およびインスリン作用の欠乏を呈し、高血糖症に至る。高血糖症は、多くの場合、軽度であり、認識することが困難な症状を有する。その結果として、多くの2型糖尿病患者が、長年の間、診断未確定になる。いつでも、人口の15〜20%は、2型糖尿病を発病する危険性がある可能性があるが、診断未確定であると推定されている。
【0007】
糖尿病は、グルコース処理を評価する経口グルコース負荷試験に基づいて最も一般的に診断される。個人は、グルコースに対する耐性を試験するために、一晩の絶食の後にグルコース飲料が与えられる。試験は、応答を測定するのに数時間かかる。あいにく、グルコース負荷試験および空腹時インスリンレベル試験は、糖尿病の予後の指標としてのそれらの有用性を制限する、感度の不足および偽陽性の問題がある。
【0008】
肥満はまた、心性の事象の危険性を2〜3倍増加させる、心血管疾患に対する重要な危険因子である。糖尿病、または前兆グルコース処理障害(precursor glucose handling disorder)、および心血管疾患などの関連する状態を発病する個人の危険性を評価するための診断ツールおよび予後ツールに対して必要性が認識されているにもかかわらず、簡単で正確な試験は、入手可能ではない。
【0009】
糖尿病および前兆グルコース処理障害または異常血糖(dysglycemia)もしくは異常インスリン血症(dysinsulinemia)の任意の他の形態の早期診断および継続評価は、その糖尿病の管理だけではなく、心血管疾患などの関連する状態の管理にとっても重要である。異常血糖または異常インスリン血症と関連する状態および障害、疾患のための早期検出法の提供に加えて、たとえば、本発明はまた、心血管エリアにおけるより広範な適用を有する。
【0010】
急性冠動脈症候群(ACS)を含む急性心障害は、不安定狭心症から急性心筋梗塞(AMI)まで及ぶ、広い範囲の心性虚血性事象を包含する。AMIはこれらの事象のうちで最も重篤なものとして現れ、そのため、迅速で正確な診断を必要とする。2つまたはそれを超える記載される特徴(虚血性の胸部不快感の病歴、連続心電図(ECG)トレース上の漸進的変化、ならびに血漿心性バイオマーカーの上昇および低下)の症状を示す患者は、AMIを被っているとして明らかに同定される26。しかしながら、疑わしいAMIの症状を示す、かなりの割合の患者(40%〜50%)は、ECG上の連続変化または典型的な症状を有しておらず、したがって、正確な診断のために、循環バイオマーカー濃度に関し大きな重点が置かれる26、27
【0011】
心筋梗塞の正確な早期診断は、有効な経皮的血管再生または血栓溶解血管再生ならびに付属的な抗凝固療法および抗血小板療法を含む再灌流治療の即時の導入を容易にする。そのような治療は、診断および管理におけるそれぞれの時間遅延を伴い、死亡率および罹患率を低下させるのに、漸進的に有効性が低下する2〜4。この臨床的状況における意思決定の加速に対する必要性を考慮すれば、たとえば急性心障害、特にAMIの早期で、特異的な診断を提供する循環バイオマーカーの同定に対する必要性がある。
【0012】
実際に、現在の臨床ガイドラインは、心筋梗塞および急性冠動脈症候群の同定において、バイオマーカー測定の重要性を強調する26。クレアチンキナーゼ−MB(CK−MB)、トロポニンT(TnT)、トロポニンI(TnI)BNP、N−BNP(NP−BNPとしても公知)、BNPシグナルペプチド(BNP−SP)、およびミオグロビンを含む多くのバイオマーカーは、この目的のために提案されてきたが、それらの使用に限界がある。血漿心性バイオマーカーの検出可能なまたは異常な上昇に対する時間は、6時間まで(ミオグロビン、CK−MB)〜12時間(TnT、TnI、BNP、N−BNP)であり得、ピークレベルは、傷害の発症の24〜48時間後まで生じず、的確な診断および治療に際して、時間の遅延を課す1〜4。さらに、ミオグロビンおよびCK−MBの両方は、非特異的であり、とりわけ外傷または外科手術の間に、心外性の源から分泌され得る
【0013】
そのため、公知のマーカーの長期診断/予測能力は、臨床提示の最初の数時間以内の、急性心外傷などの急性心障害の早期の特異的な診断を提供する、特異的マーカーが伴う能力を欠く。早期マーカーに対するその必要性は、なお存在する。
【0014】
本発明のさらなる目的は、急性心障害の早期マーカーを提供することおよび/または有用な選択肢を公衆に少なくとも提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
ヒトグレリンシグナルペプチド(GRN−SP)は、グレリン(プレプログレリン)(1〜117)配列番号1から切断される23アミノ酸ペプチドである。ヒトプレプログレリンのプロセシングを図5に示す。GRN−SP(1〜23)を、配列番号15に単独で示す。
【0016】
出願人らは、グレリンシグナルペプチドGRN−SPおよびその断片が血行路へ放出されることを初めて発見した。有用な循環バイオマーカーが、同定され、提供される。以前は、GRN−SPは、細胞内でしか生産されないと考えられていた25
【0017】
この発見に基づいて、出願人らは、本発明の一態様において、対象における生物学的事象または障害を予測する、診断する、評価する、またはモニターするための方法であって、事象は、血行路への、1つまたは複数のGRN−SPバイオマーカーの放出と相互に関連し、対象から採取されるまたは対象に由来する試料における1つまたは複数のGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程および上記レベルを、上述の1つまたは複数のバイオマーカーについてのそれぞれの対照標準値(reference value)または範囲と関連して分析する工程を含む方法を提供する。
【0018】
一実施形態において、GRN−SPバイオマーカーは、GRN−SPである。他の実施形態において、GRN−SPバイオマーカーは、GRN−SP断片である。好ましい一実施形態において、GRN−SP断片は、ヒトGRN−SP(1〜9)(配列番号17)である。
【0019】
他の実施形態において、本方法は、対象から採取されるまたは対象に由来する1つまたは複数の試料におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを、コントロールからのGRN−SPバイオマーカーレベルと比較する工程を含み、該コントロールレベルからの、該測定レベルにおける偏差は、生物学的事象または障害を示す。
【0020】
1型糖尿病対象などの糖尿病対象においてまたはグレリン分泌レベルの低下に起因する他の異常血糖を有する対象において、グレリンのレベルは、GRN−SPレベルおよび/またはGRN−SP断片レベルのように、正常とは異なるであろう。この発見は、GRN−SPが、そのような状態に対するマーカーとして有用であることを示す。対象のインスリン状態に依存して、対象におけるGRN−SPバイオマーカーレベルは、正常よりも高いまたは低いであろう。
【0021】
2型糖尿病対象などの糖尿病対象においてまたは他の異常インスリン血症を有する対象において、グレリンのレベルは、GRN−SPレベルおよび/またはGRN−SP断片レベルのように、正常より高くなるであろう。この発見は、GRN−SPおよび/またはGRN−SP断片が、そのような状態に対するおよびメタボリックシンドロームなどの他の高インスリン血症状態におけるマーカーとして有用であることを示す。対象のインスリン状態に依存して、対象におけるGRN−SPバイオマーカーレベルは、正常よりも高いまたは低いであろう。
【0022】
したがって、他の態様において、本発明は、糖尿病または糖尿病の可能性ならびに異常血糖および/または異常インスリン血症によって特徴づけられる他の状態を予測する、診断する、評価する、またはモニターするための方法であって、対象から採取されるまたは対象に由来する試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程および上記レベルを、上述の1つまたは複数のバイオマーカーについてのそれぞれの対照標準値と関連して分析する工程を含む方法を提供する。
【0023】
他の実施形態において、本方法は、対象から採取されるまたは対象に由来する1つまたは複数の試料におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを、コントロールからのGRN−SPバイオマーカーレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルから外れるGRN−SPの測定レベルは、糖尿病もしくは糖尿病に対する素因、または異常血糖および/もしくは異常インスリン血症と関連する他の状態を示す。一実施形態において、GRN−SPバイオマーカーレベルは、コントロールよりも低くてもよい。
【0024】
本発明はまた、対象におけるグルコース処理を評価するための方法であって、
(a)グルコースの投与の後に、対象におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを測定する工程および
(b)上述のGRN−SPのレベルを、コントロールからのGRN−SPと比較する工程を含み、
コントロールレベルからのGRN−SPの測定レベルにおける偏差は、グルコース処理障害を示す方法をも提供する。
【0025】
出願人らは、驚いたことに、GRN−SPバイオマーカーの循環濃度が、急性冠動脈症候群(ACS)の疑いの発症後の最初の数時間においてまたは疑わしい急性冠動脈症候群(ACS)の臨床提示のときに最も高いことを発見した。ピークは、これらの最初の時間において、正常コントロール集団よりも、例えば、1.5〜5倍高い、一般的には2〜3倍。
【0026】
したがって、さらなる態様において、本発明は、対象における急性心障害(ACD)を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、対象からの生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを測定する工程および上述のGRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロールまたは対照標準値もしくは対照標準値の範囲からのGRN−SPおよび/またはGRN−SP断片のレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは所定の対照標準値もしくは対照標準値の範囲よりも高いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、ACDを示す方法を提供する。
【0027】
本発明はまた、対象における、生物学的事象もしくは障害、特に急性心障害(ACD)の治療に対する応答をモニターするための方法であって、対象から採取されるまたは対象に由来する生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを測定する工程および上述のGRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロールまたは対照標準値もしくは対照標準値の範囲からのGRN−SPバイオマーカーのレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは所定の対照標準値もしくは対照標準値の範囲からのGRN−SPバイオマーカーの測定レベルにおける変化は、治療に対する応答を示す方法をも提供する。
【0028】
他の態様において、本発明はまた、対象における心臓移植拒絶エピソードを予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、心臓移植の後に、対象から採取されるまたは対象に由来する試料におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを測定する工程および上述のGRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロールまたは対照標準値もしくは対照標準値の範囲からのGRN−SPバイオマーカーのレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは対照標準値もしくは対照標準値の範囲よりも高いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、移植拒絶または移植拒絶エピソードを示す方法をも提供する。
【0029】
本発明はまた、対象における肺障害および急性心障害(ACD)を区別するための方法であって、対象から採取されるまたは対象に由来する試料におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを測定する工程および上述のGRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロールまたは対照標準値もしくは対照標準値の範囲からのGRN−SPバイオマーカーのレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは対照標準値もしくは対照標準値の範囲よりも高いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、ACDを示す方法をも提供する。
【0030】
本発明はまた、対象における急性心障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、ACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の発症またはACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の臨床提示の最初の約6もしくは4時間以内に、対象から採取されるまたは対象に由来する試料におけるGRN−SPバイオマーカー、好ましくはGRN−SP断片のレベルを測定する工程およびGRN−SPバイオマーカーの測定レベルを、コントロールまたは対照標準値もしくは対照標準値の範囲からのGRN−SPバイオマーカーのレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは対照標準値もしくは対照標準値の範囲よりも高いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、ACDまたは心臓移植拒絶を示す方法をも提供する。
【0031】
より広範な実施形態において、出願人らの発見は、GRN−SPまたはGRN−SP断片が血行路へ放出される任意の事象を予測する、診断する、評価する、またはモニターするために使用することができる。
【0032】
本発明の心性の方法の一実施形態において、GRN−SPバイオマーカーレベルは、障害の提示またはその発生(occurance)の約6時間、もしくは約4時間、もしくは約2時間、もしくは約1時間、約30分以内に、または約15分以内に、対象から採取される試料(または試料誘導体)において1回または複数回測定される。6時間、4時間、2時間、1時間、2分の1時間、および4分の1時間以内の1回または複数回のGRN−SPバイオマーカー測定は、本発明に含まれる。6時間後に、対象から引き続いて採取されるまたは対象に由来する試料におけるGRN−SPバイオマーカー測定またはさらなるGRN−SPバイオマーカー測定もまた含まれる。
【0033】
一実施形態において、本発明の方法は、インビトロ方法である。
【0034】
一実施形態において、生物学的試料は、血液、唾液、間質液、血漿、尿、血清、または心臓組織である。好ましい一実施形態において、試料は、血液または血漿である。
【0035】
一実施形態において、測定工程は、GRN−SPバイオマーカーおよびGRN−SPバイオマーカーに選択的に結合する結合剤の間の結合を検出する工程を含む。一実施形態における測定工程は、
(a)GRN−SPバイオマーカーを結合剤と結合させる工程および
(b)結合したGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程を含む。
【0036】
一実施形態における結合剤は、抗体またはその抗原結合断片である。最も一般的に、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である。一実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0037】
他の実施形態において、GRN−SPバイオマーカーのレベルは、質量分析(mass spectroscopy)を使用して測定される。
【0038】
抗体が結合するまたは抗体によって検出されるGRN−SPバイオマーカーは、完全長ヒトGRN−SP分子(配列番号15)またはその抗原性変異体もしくは抗原性断片である。一実施形態において、断片は、長さが少なくとも4つの隣接するアミノ酸である。他の実施形態において、結合するまたは検出される断片は、ヒトGRN−SP(1〜9)配列番号17である。抗体は、GRN−SPまたはGRN−SP断片のN末端またはC末端に結合し得る。
【0039】
結合剤が選択的に結合する特異的な抗原性ペプチドは、ヒトGRN−SP(1〜9)(配列番号17)、またはその抗原性結合断片もしくは抗原性結合変異体を含む。
【0040】
一実施形態におけるGRN−SPバイオマーカーの結合は、固相上に固定される抗体または抗体断片を使用して測定される。
【0041】
GRN−SPバイオマーカーのレベルは、RIA、ELISA、蛍光免疫測定、免疫蛍光アッセイ、マススペクトロメトリー(mass spectrometry)、およびイムノラジオメトリックアッセイから選択されるアッセイを用いて有用に測定されてもよい。
【0042】
したがって、本発明はまた、対象からの生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーについてのアッセイであって、任意の公知の方法を使用して、試料または試料誘導体におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを検出し、測定する工程を含むアッセイをも提供する。
【0043】
本発明はまた、GRN−SPバイオマーカーについてのアッセイであって、
(a)試料からの1つまたは複数のGRN−SPバイオマーカーを結合させる工程および
(b)結合したGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程を含むアッセイをも提供する。
【0044】
GRN−SPバイオマーカーは、本発明のGRN−SPバイオマーカー結合剤を使用して結合させてもよい。
【0045】
本発明はまた、対象における生物学的事象または障害を予測する、診断する、評価する、またはモニターするのに使用されるGRN−SPバイオマーカーアッセイを提供する。
【0046】
一実施形態において、アッセイは、インビトロアッセイである。
【0047】
本発明の異常血糖関連方法は、たとえば糖尿病の1つまたは複数の非GRN−SP/GRN−SP断片マーカーのレベルを測定する工程およびそれらのレベルを、コントロールからのマーカーレベルと比較する工程をさらに含んでいてもよく、非GRN−SPマーカーのコントロールレベルからの測定レベルにおける偏差は、GRN−SPのコントロールレベルから外れるまたはそれよりも低いGRN−SPの測定レベルと共に、たとえば糖尿病を予測するもしくは診断するのに役立つかまたはたとえば、糖尿病をモニターするために使用することができる。
【0048】
糖尿病についての非INS−SP/INS−SP断片マーカーは、グルコース、インスリン、ラクテート、およびトリグリセリドもしくは脂肪酸のレベルを含んでいてもよい。他のマーカーは、HbA1Cおよびフルクトサミン(fructoseamine)を含む。
【0049】
本発明の心性関連方法は、上述のACDまたは心臓移植拒絶またはACD/肺障害の1つまたは複数の非GRN−SPマーカーまたは非GRN−SP断片マーカーのレベルを測定する工程およびそれらのレベルを、コントロールまたは対照標準値または対照標準値の範囲からのマーカーレベルと比較する工程をさらに含んでいてもよく、非GRN−SPマーカーのコントロールレベルまたは対照標準レベルからのその測定レベルにおける偏差は、コントロールまたは対照標準GRN−SPバイオマーカーレベルよりも高いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルと共に、ACDを予測するもしくは診断するのに役立つかまたは上述のACD(心臓移植拒絶を含む)またはACD/肺障害を評価するまたはモニターするために使用することができる。
【0050】
急性冠動脈症候群との関連において使用されるマーカーは、トロポニン、トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼMB、ミオグロビン、BNP、NT−BNP、BNP−SP、BNP−SP断片、ANP、ANP−SP、ANP−SP断片、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、心臓特異的脂肪酸結合タンパク質(H−FABP)、虚血修飾アルブミン、エンドセリン、アドレノメデュリン、およびアンギオテンシンIIを含む。
【0051】
他の態様において、本発明はまた、GRN−SPバイオマーカー結合剤をも提供する。一実施形態において、本発明のGRN−SPバイオマーカー結合剤は、
(a)GRN−SP(1〜23)配列番号15、
(b)GRN−SP(1〜9)配列番号17、
(c)配列番号16もしくは配列番号18から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列、または
(d)(a)〜(c)のいずれか1つの変異体もしくは断片
に結合するまたはそれを検出する。
【0052】
結合剤は、血行路へのGRN−SPまたはGRN−SPの断片の放出と相互に関連する生物学的事象または障害を予測する、診断する、評価する、またはモニターするのに有用である。そのような事象または障害は、対象における糖尿病、グルコース処理障害、および急性心障害(ACD)を含む。
【0053】
一実施形態において、結合剤は、抗GRN−SP抗体もしくは抗GRN−SP断片抗体またはいずれかの抗原結合断片である。
【0054】
本発明はまた、
(a)GRN−SP アミノ酸配列1〜23(配列番号15)、
(b)GRN−SP アミノ酸配列1〜9(配列番号17)、
(c)配列番号16もしくは配列番号18から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列、または
(d)(a)または(c)の変異体もしくは断片
に結合する抗GRN−SPバイオマーカー抗体またはその抗原結合断片をも提供する。
【0055】
抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはいずれかの結合断片もしくは構築物であってもよい。
【0056】
本発明はまた、対象における生物学的事象もしくは障害を評価するためのGRN−SPバイオマーカーアッセイの製造における、GRN−SPバイオマーカー結合剤の使用または対象における生物学的事象もしくは障害に対する予後ツール、評価ツール、診断ツール、もしくはモニターツールの製造における、GRN−SPバイオマーカー結合剤の使用をも目的とする。一実施形態において、上記事象または障害は、グルコース処理障害、糖尿病、または急性心障害(ACD)によるものを含めた、血行路へのGRN−SPおよび/またはGRN−SP断片の放出と相互に関連する。
【0057】
本発明はまた、対象におけるグルコース処理障害、糖尿病、急性心障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を含む、血行路へのGRN−SPおよび/またはGRN−SP断片の放出と相互に関連する生物学的事象もしくは障害を評価するための予後ツール、診断ツール、評価ツール、またはモニターツールの製造における、本発明の抗体または抗原結合断片の使用にも関する。
【0058】
一実施形態において、予後ツール、診断ツール、またはモニターツールは、約0.1〜約500pmol/L、約1〜約300pmol/L、約10〜約250pmol/Lまたは約20〜約150pmol/Lの範囲におけるGRN−SPレベルを測定するために較正される。
【0059】
他の態様において、本発明は、対象における生物学的事象もしくは障害を予測する、診断する、またはモニターするためのキットであって、本発明のGRN−SPバイオマーカー結合剤を含むキットを提供する。
【0060】
一実施形態において、キットは、約0.1〜約500pmol/L、約1〜約300pmol/L、約10〜約250pmol/Lまたは約20〜約150pmol/Lの範囲におけるGRN−SPバイオマーカーレベルを測定するために較正される。
【0061】
一実施形態において、キットはまた、試料または試料の派生物(derivative)において測定されるGRN−SPバイオマーカーレベルから、対象におけるグルコース処理障害、たとえば糖尿病またはACDを含む生物学的事象または障害を予測し、診断し、評価し、またはモニターし、かつ測定レベルをコントロールレベルまたは対照標準レベルと比較するための説明書をも含む。コントロールレベルまたは対照標準レベルから外れる測定GRN−SPバイオマーカーレベルは、たとえばACD(移植拒絶を含む)、グルコース処理障害、または糖尿病などの生物学的事象または障害を示す。一実施形態において、試料は、発症または臨床提示の4時間以内に得られる。
【0062】
他の態様において、本発明は、GRN−SP断片をコードする核酸分子であって、上述の核酸は、
(a)配列番号18またはその変異体もしくは断片、
(b)配列番号18に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有する配列、
(c)配列番号18またはその変異体もしくは断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる、長さが少なくとも10ヌクレオチドの配列、および
(d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体から、配列が配列番号16ではないということを条件として、選択される核酸分子に関する。
【0063】
一実施形態において、核酸分子によってコードされるGRN−SP断片は、GRN−SP(1〜9)配列番号17である。
【0064】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含む遺伝子構築物を提供する。一実施形態において、遺伝子構築物は、発現構築物である。遺伝子構築物を含むベクター、遺伝子構築物またはベクターを含む宿主細胞、本発明の核酸分子によってコードされるポリペプチド、本発明のポリペプチドに選択的に結合する抗体、および本発明のポリペプチドを組換えで生産するための方法もまた本発明によって提供される。
【0065】
したがって、他の態様において、本発明は、
(a)GRN−SP(1〜9)(配列番号17)またはその変異体もしくは断片、
(b)配列番号17のポリペプチドに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、および
(c)本発明の核酸分子によってコードされるGRN−SPポリペプチドから選択される単離GRN−SPバイオマーカーまたはその変異体もしくは断片を提供する。
【0066】
本発明はまた、抗GRN−SPバイオマーカー抗体の調製における本発明のポリペプチドの使用に関する。
【0067】
本発明のポリペプチドを組換えで生産するための1つの方法は、
(a)本発明のポリペプチドを発現することができる本発明の遺伝子構築物を含む宿主細胞を培養する工程、
(b)本発明のポリペプチドを発現する細胞を選択する工程、
(c)細胞から発現ポリペプチドを分離する工程、および任意選択で
(d)発現ポリペプチドを精製する工程を含む。
【0068】
一実施形態において、本方法は、構築物を用いて宿主細胞をトランスフェクトするためのプレ工程を含む。
【0069】
本発明は、ここでは、添付図面における図に関連して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1Aは、患者における循環GRN−SP(1〜9)バイオマーカー濃度が、心性の源に由来することを示す棒グラフである。図1Bは、循環成熟グレリンが心臓によって除去されること示す棒グラフである。
【図2】図2は、健康なヒトにおけるGRN−SP(1〜9)バイオマーカーの血漿濃度が、BMIとの相互関係を示さないことを実証するラジオイムノアッセイの結果を示す図である。
【図3】図3は、血液におけるグレリン−SPn(1〜9)免疫反応性が正常で健康な個人における肥満度指数との相互関係を示さないことを実証するラジオイムノアッセイの結果を示す図である。
【図4】図4は、免疫反応性血漿グレリン−SPn(1〜9)が、グレリン自体のように、代謝的負荷下でのインスリン感度および放出についての一般的な試験である75gのグルコースの経口摂取によって、有意に低下することを実証するラジオイムノアッセイの結果を示す図である。
【図5】図5は、遊離シグナル、N−グレリン、およびグレリンペプチドの生成をもたらす、ヒトプレプログレリンのプロセシングを概説する概略図である。
【図6】図6は、ラジオイムノアッセイ結果を示す図である。上パネル:病院救急科での提示の時間(t=0)からの、立証されたST上昇心筋梗塞(STEMI)を有する患者におけるGHR−SPn(1〜9)バイオマーカーの連続的な血漿濃度。GHR−SPnが、提示の約1〜2時間後にピークレベルに達し、8〜12時間までに正常なレベルまで戻ったことに注目されたい。正常範囲データは、正常範囲の上位および下位の百分位数を示す赤色の線によって示される。下パネル:上パネルにおいて同定された同じSTEMI患者における、同時のTnI、CK−MB、およびミオグロビン血漿レベル。
【図7】図7は、GRN−SP(1〜9)バイオマーカー抗血清の交差反応性データの表である。
【図8】図8は、それぞれ、ラット、ヒト、ヒツジ、ブタ、マウス、イヌ、およびネコからのグレリンシグナルペプチド配列についてのコンセンサスアライメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
定義
急性心障害(ACD)は、提示されるECG上でのST上昇を伴う急性心筋梗塞(AMI)を含む急性冠動脈症候群、不安定狭心症、および急性非ST上昇心筋梗塞;心虚血;急性心外傷;急性薬物中毒に起因する急性心損傷、急性心筋症、および心臓移植拒絶を含むが、これらに限定されない。これらの障害の十分な説明的な定義は、参考文献1において見つけられる。
【0072】
ACD/肺障害は、診断未確定のまたは疑わしいACDまたは肺障害を有する対象を指す。
【0073】
急性冠動脈症候群(ACS)は、不安定狭心症、主要心電図(ECG)上でのST上昇を伴う急性心筋梗塞、およびECG上でのSTセグメント上昇を伴わない急性心筋梗塞を含む広い範囲の心虚血事象を包含する。
【0074】
用語「抗体」は、抗体を合成するために使用される抗原を含む分子と特異的に相互作用する(結合する)かまたはそれと密接に関係する抗原と特異的に相互作用する(結合する)特異的な構造を有する免疫グロブリン分子を指す。本明細書において使用されるように、用語「抗体」は、完全長抗体を広く含み、そのある種の抗体断片を含んでいてもよい。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、多価抗体および一価抗体、多特異的抗体(たとえば二特異性抗体)、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ならびに親和性成熟した抗体もまた含まれる。抗体が、GRN−SPに優先的に結合する、たとえば、非GRN−SPポリペプチドと25%未満または10%未満または1%未満または0.1%未満の交差反応性を有する場合、抗体は、本発明のGRN−SPポリペプチドに選択的にまたは特異的に結合する。通常、抗体は、抗原またはエピトープに対して、10−6もしくは10−7M以下のまたは約10−8Mもしくは10−9Mもしくは10−10もしくは10−11もしくは10−12M未満の結合親和性(解離定数(Kd)値)を有する。結合親和性は、たとえば表面プラズマ共鳴またはスキャッチャード分析を使用して評価されてもよい。
【0075】
本明細書において使用されるように、「抗原結合断片」または「抗体断片」は、好ましくは、その抗体断片の正常な機能のほとんどもしくはすべて、または最小ではその抗体断片の正常な機能の少なくとも1つを保持する、完全な抗体(intact antibody)の部分を意味する。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片、直鎖状抗体、ダイアボディ、一本鎖抗体(ScFV)、ならびに多特異的抗体を含む。
【0076】
本明細書において使用されるように、「モノクローナル抗体」は、たった1つの標的抗原に対して向けられる、高度に特異的な抗体である抗体を意味する。モノクローナル抗体は、同種の抗体または実質的に同種の抗体の集団から得られてもよく、それぞれのモノクローナル抗体は、若干、生じる可能性のある自然突然変異を除いて、同一でありそして/または同じエピトープに結合する。
【0077】
「単離抗体」は、その自然環境の構成要素から分離されたもしくは回収されたかまたはその両方である、同定された抗体である。たとえば、酵素およびホルモンを含むタンパク質から分離される。一実施形態において、抗体は、抗体の少なくとも95重量%または96重量%または97重量%または98重量%または99重量%まで精製される。純度は、たとえばローリー法によって決定することができる。通常、抗体は、少なくとも1回の精製工程によって調製される。
【0078】
本明細書において使用される用語「結合剤」は、GRN−SPまたはその断片もしくは変異体に結合することができる任意の固体または非固体物質を指す。一実施形態において、この用語は、GRN−SPまたはその断片もしくは変異体に結合する任意の天然分子または非天然分子を指す。結合剤の例は、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、および小分子化合物を含む。選択的なまたは特異的な結合剤は、抗体またはその抗原結合断片である。
【0079】
本明細書において使用される試料または生物学的試料は、スクリーニングされることとなる対象から採取されるまたはそれに由来する任意の試料を意味する。試料は、GRN−SPバイオマーカーが検出することができる、当技術分野において公知の任意の試料であってもよい。血漿、血液、唾液、間質液、血清、尿、滑液、脳脊髄液、リンパ液、精液、羊膜液、心臓周囲液、および腹水などの任意の体液ならびに心組織などの組織もまた含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンおよび/またはT細胞受容体への特異的な結合ができる任意のタンパク質決定基を含む。それは、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位である。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの、分子の化学的に活性な表面の群(grouping)から成り、通常、特異的な3次元構造の特徴および特異的な電荷の特徴を有する。エピトープは、典型的に、少なくとも3個、5個、または通常8〜10個のアミノ酸を含む。アミノ酸は、隣接アミノ酸または三次フォールディングによって近接する非隣接アミノ酸であってもよい。
【0081】
「発症または臨床提示の6時間以内」という用語は、たとえばACD、心臓移植拒絶、または診断未確定のもしくは疑わしいACD/肺障害の発症または医療施設での提示から、360分を含め、1分〜360分を含む。測定は、発症または症状から4時間(240分を含め、1分〜240分)以内に、2時間(120分を含め、1分〜120分)以内に、または1時間(60分を含め、1分〜60分)以内に、発症または提示の5〜45分以内、15〜40分以内、20〜35分以内に、または25〜30分以内になされてもよい。
【0082】
コントロールもしくは対照標準値よりも「高い」もしくは「低い」レベルまたはコントロールもしくは対照標準値からの変化、差異、もしくは偏差は、一実施形態において、統計的に有意である。レベルが、コントロールレベルまたは対照標準値と比較して、約5%以上、約10%以上、約20%以上、または約50%以上、コントロールレベルまたは対照標準値と異なる場合、コントロールレベルもしくは対照標準値または平均コントロールレベルもしくは平均対照標準値からのより高いレベル、差異、より低いレベル、または偏差またはそれからの変化は、存在すると考えることができる。統計的に有意は、その代わりに、P≦0.05として計算されてもよい。さらなる代案において、より高いレベル、より低いレベル、偏差および変化は、アッセイ対照標準限界またはアッセイ対照標準範囲により決定することができる。これらは、直感的な評価またはノンパラメトリック法から計算することができる。全体的に、これらの方法は、0.025および0.975の分位点(fractile)を0.025(n+1)および0.975(n+1)として計算する。そのような方法は、当技術分野において周知である22、23。コントロールにおいて不在のマーカー(GRN−SPを含む)の存在もまた、より高いレベル、偏差、または変化として予期される。コントロールにおいて存在するマーカー(GRN−SPを含む)の不在もまた、例えば、より低いレベル、偏差、または変化として予期される。
【0083】
グルコース処理障害、糖尿病、またはACDを含む生物学的事象または障害の病歴を有していない正常で健康な対象ならびに急性冠動脈症候群:提示されるECG上でのST上昇を伴う(AMI)、不安定狭心症、および急性非ST上昇MI;心虚血;急性心外傷;急性物中毒に起因する急性心損傷、急性心筋症、および心臓移植拒絶を含むが、これらに限定されない様々なACDを有する対象からなどの、任意の対象から採取されるまたはそれに由来する試料が含まれる。
【0084】
本明細書において使用される用語「心筋症」は、心筋層の疾患を指し、ここで、心筋層または心臓筋肉は、弱っている。これは、心臓のポンピングの低下をもたらし得る。心筋症の一般的な原因は、心臓発作、ウイルス感染症、高血圧、アルコール中毒症、および自己免疫疾患である。
【0085】
本明細書において使用される「生物学的事象または障害」は、急性および慢性の状態の両方を含む、GRN−SPバイオマーカーが対象の血行路へ放出される一連の事象を指す。例となる状態は、メタボリックシンドローム、グルコース不耐性、高血糖症、およびインスリン抵抗性を含む肥満症、糖尿病、腎疾患、グルコース処理障害;非アルコール性脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎を含む)および脂肪肝疾患(アルコール性肝疾患を含む)ならびに、心血管疾患(急性冠動脈症候群などだがこれらに限定されないACDを含む)などの代謝障害を含む。慢性の状態の例は、糖尿病および心血管疾患である。
【0086】
用語GRN−SPは、ヒトプレプログレリン配列(配列番号1)についての、完全な23アミノ酸のGRNシグナルペプチドを指す。GRN−SP(1〜23)を、配列番号15に単独で示す。GRN−SPバイオマーカーは、GRN−SP、およびGRN−SPの変異体または断片を含む、それから本質的に成る、またはそれから成るGRN−SP由来ポリペプチドまたはGRN−SP関連ポリペプチドを含む。GRN−SPバイオマーカーとして有用な断片は、GRN−SP(1〜9)(配列番号17)を含む。一実施形態において、GRN−SPは、シグナルポリペプチドとしてまたは抗体が結合することができる抗原性ポリペプチドとして機能する。GRN−SPの変異体および断片は、少なくとも抗原性結合機能を保持する変異体および断片を含む。
【0087】
本明細書および特許請求の範囲において使用される用語「含む(comprising)」は、「〜から少なくとも部分的に成る(consisting at least in part of)」ことを意味する、すなわち、「含む(comprising)」を含む本明細書および特許請求の範囲における記載を解釈する場合、それぞれの記載においてこの用語によって前置きされた特徴はすべて、存在する必要があるが、他の特徴もまた、存在することができる。「含む(comprise)」および「含まれる(comprised)」などの関連する用語は、同様に解釈されることとなる。
【0088】
本明細書において使用される用語「糖尿病」は、1型(真性糖尿病)および2型糖尿病の両方を包含する。1型糖尿病は、慢性高血糖症の状態として定義される。7.0mmol/Lを超える静脈血漿空腹時グルコースレベルおよび/またはグルコース負荷試験の2時間後のもしくは無作為試料における11.1mmol/Lを超える値は、1型糖尿病を示す(Oxford Textbook of Medicine、Warrellら;第4版、2005年、317頁を参照されたい)。
【0089】
本明細書において使用される用語「グルコース処理障害」は、高血糖症および低血糖症の様々な状態を含む(メタボリックシンドロームを含む)。高血糖症状態は、グルコース寛容減損(IGT)および空腹時グルコース減損(IFG)を含む。7.0mmol/L未満の静脈血漿空腹時グルコースレベルおよび7.8mmol/Lおよび11.1mmol/Lの間の、2時間でのグルコース負荷試験値は、IGTを示す。6.1mmol/L〜6.9mmol/Lの空腹時グルコースレベルは、IFGを示す(Oxford Textbook of Medicine、前掲を参照されたい)。
【0090】
本明細書において使用される用語「グルコース負荷試験」は、絶食の後に、250mlの水中に溶解した75gの無水グルコースを飲む対象に一般的に施される周知のグルコース試験を指す(Oxford Textbook of Medicine、前掲を参照されたい)。
【0091】
本明細書において使用される用語「(1つまたは複数の)ポリヌクレオチド」は、任意の長さの単鎖または二本鎖デオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを意味し、非限定的な例として、遺伝子のコード配列および非コード配列、センス配列およびアンチセンス配列、エキソン、イントロン、ゲノムDNA、cDNA、プレmRNA、mRNA、rRNA、siRNA、miRNA、tRNA、リボザイム、組換えポリヌクレオチド、単離されそして精製された天然に存在するDNA配列またはRNA配列、合成RNA配列および合成DNA配列、核酸プローブ、プライマー、断片、遺伝子構築物、ベクター、ならびに修飾ポリヌクレオチドを含む。核酸分子に対する言及は、同様に理解されることとなる。
【0092】
本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列の「断片」は、所望の標的に対する特異的なハイブリダイゼーションができる隣接するヌクレオチドの部分配列であり、たとえば、長さが少なくとも10ヌクレオチドである配列である。一実施形態において、本発明の断片は、配列番号16のポリヌクレオチドの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、または68の隣接するヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチド配列の断片は、マイクロアレイ中に含ませて、プライマー、プローブとして使用することができるか、または本明細書におけるポリヌクレオチドベースの選択方法において使用することができる。本発明の他のポリヌクレオチドの断片(配列番号18など)または本明細書において記載されるポリヌクレオチドの断片は、同様に理解されるはずである。たとえばGRN−SPポリヌクレオチド配列番号18において、断片は、配列番号18の少なくとも10、11、12、13、15、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26の隣接するヌクレオチドを有する。
【0093】
用語「プライマー」は、鋳型にハイブリダイズし、標的に相補的なポリヌクレオチドのポリメリゼーションのプライミングに使用される、通常遊離3’OH基を有する短いポリヌクレオチドを指す。
【0094】
用語「プローブ」は、ハイブリダイゼーションベースのアッセイにおいて、プローブに相補的なポリヌクレオチド配列を検出するために使用される短いポリヌクレオチドを指す。プローブは、本明細書において定義される、ポリヌクレオチドの「断片」から成ってもよい。
【0095】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」は、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結される、完全長配列を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。本発明において有用なポリペプチドは、精製天然産物であってもよいかまたは組換え技術もしくは合成技術を使用して部分的にもしくは全体的に生産されてもよい。用語は、ポリペプチド、二量体もしくは他の多量体などのポリペプチドの集合体、融合ポリペプチド、ポリペプチド断片、ポリペプチド変異体、またはその誘導体を指してもよい。本明細書におけるポリペプチドは、完全長GRN−SPタンパク質(配列番号15)の少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、または少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または少なくとも23のアミノ酸すべての鎖長を有していてもよい。本発明の他のポリペプチド(配列番号17など)または本明細書において記載される他のポリペプチドに対する言及は、同様に理解されるはずである。
【0096】
ポリペプチドの「断片」は、生物学的活性もしくは結合に必要とされるおよび/またはポリペプチドの3次元構造を提供する機能を果たす、ポリペプチドの部分配列である。その用語は、ポリペプチド、二量体もしくは他の多量体などのポリペプチドの集合体、融合ポリペプチド、ポリペプチド断片、ポリペプチド変異体、またはその誘導体を指してもよい。一実施形態において、断片は、上記のシグナルペプチド活性を果たすことができるかまたはGRN−SP(1〜23)、GRN−SP(1〜9)または本発明の他のポリペプチドもしくは本明細書において記載されるポリペプチドの抗原性結合特性を保持する。
【0097】
本明細書において開示されるポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に適用される用語「単離(isolated)」は、それらの自然の細胞環境から取り出される配列を指すために使用される。単離分子は、生化学的技術、組換え技術、および合成技術を含む任意の方法または生化学的技術、組換え技術、および合成技術を含む方法の組み合わせによって得られてもよい。ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、少なくとも1つの精製工程によって調製されてもよい。
【0098】
本明細書において使用される用語「精製(purified)」は、完全な純度を必要としない。精製は、一実施形態において、試料におけるポリヌクレオチド、ポリペプチド抗体、または宿主細胞の少なくとも90%または95%または98%または99%の均一性を指す。用語は、本明細書において記載される他の分子および構築物に関して同様に理解されるはずである。
【0099】
細胞または宿主細胞に適用される用語「単離」は、生物からまたはその自然環境から得られたかまたは取り出され、引き続いて、当技術分野において公知である実験室環境において維持される細胞または宿主細胞を記載する。その用語は、それ自体、単細胞類(single cells)自体に限定されないが、細胞培養物中に含まれる細胞または宿主細胞を指し、単細胞(single cell)または単一の宿主細胞を含むことができる。
【0100】
用語「組換え体(recombinant)」は、その自然の状況においてそれを囲む配列から取り出されそして/またはその自然の状況において存在しない配列で組換えられるポリヌクレオチド配列を指す。
【0101】
「組換え(recombinant)」ポリペプチド配列は、「組換え」ポリヌクレオチド配列から翻訳によって生産される。
【0102】
本明細書において使用されるように、用語「変異体」は、明確に同定される配列とは異なるポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を指し、1〜18またはそれを超えるヌクレオチド1〜6またはそれを超えるアミノ酸残基が、欠失している、置換されている、または追加されている。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18のヌクレオチドの置換が、特に企図される。1、2、3、4、5、または6のアミノ酸の置換、追加、または欠失もまた、企図される。変異体は、天然に存在する対立遺伝子変異体または天然に存在しない変異体であってもよい。変異体は、同じ種または他の種からのものであってもよく、相同体、パラログ、およびオルソログを包含していてもよい。ある実施形態において、本発明において有用なポリペプチドの変異体は、親ポリペプチドまたは親ポリヌクレオチドと同じかまたは類似しているシグナルペプチド活性または抗原性結合特性を含む生物学的活性を有する。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドに関しての用語「変異体」は、本明細書において定義されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの形態をすべて包含する。
【0103】
変異体ポリヌクレオチド配列は、本発明の配列に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を呈する。同一性は、少なくとも10のヌクレオチド位置、少なくとも15のヌクレオチド位置、少なくとも20のヌクレオチド位置、少なくとも27のヌクレオチド位置、少なくとも40のヌクレオチド位置、少なくとも50のヌクレオチド位置、少なくとも60、もしくは少なくとも65のヌクレオチド位置の比較ウィンドウにわたり見つけられるかまたは配列番号16のポリヌクレオチドの全長にわたり見つけられる。本明細書において開示される他のポリヌクレオチドについては、同一性は、同様に決定されてもよい。たとえば、配列番号18については、比較ウィンドウは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27を超えるヌクレオチド位置であってもよい。
【0104】
ポリヌクレオチド配列同一性は、グローバル配列アライメントプログラム(global sequence alignment program)を使用して、候補ポリヌクレオチド配列および対象ポリヌクレオチド配列の間の重複の全長にわたり計算し得る(たとえばNeedleman, S. B.およびWunsch, C. D.(1970年)J. Mol. Biol. 48巻、443〜453頁)。Needleman−Wunschグローバルアライメントアルゴリズムの完全な実装は、http://www.hgmp.mrc.ac.uk/Software/EMBOSS/から得ることができるEMBOSSパッケージにおけるニードルプログラム(needle program)において見つけられる(Rice,P. Longden,I.、およびBleasby,A. EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite、Trends in Genetics 2000年6月、16巻、6号、276〜277頁)。European Bioinformatics Instituteサーバーもまた、http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/で、2つの配列の間でEMBOSS−ニードルグローバルアライメントをオンラインで実行するための機能を提供している。
【0105】
その代わりに、末端ギャップにペナルティーを課さずに、2つの配列の最適なグローバルアライメントを算出するGAPプログラムが、使用されてもよい。GAPは、以下の論文において記載されている。Huang, X.(1994年)On Global Sequence Alignment(Computer Applications in the Biosciences 10巻、227〜235頁)。
【0106】
ポリヌクレオチド変異体はまた、それらの配列の機能的等価性を保つであろう1つまたは複数の明確に同定された配列に対して類似性を呈し、偶然によって生じたことを合理的に予想することができないものをも包含する。このプログラムは、配列間での、類似性の領域を見つけ、それぞれのそのような領域について、ランダム配列を含有する固定基準サイズのデータベースにおいて、そのようなマッチが偶然見られることを予想することができる回数の期待数である「E値」を報告する。このデータベースのサイズは、bl2seqプログラムにおいてデフォルトに設定されている。1よりもかなり低い、小さなE値については、E値は、ほぼ、そのようなランダムマッチの蓋然性がある。
【0107】
変異体ポリヌクレオチド配列は、好ましくは、明確に同定された配列のいずれか1つと比較した場合、1×10−5未満、1×10−6未満、1×10−9未満、1×10−12未満、1×10−15未満、1×10−18未満、または1×10−21未満のE値を呈する。
【0108】
ポリヌクレオチド配列同一性および類似性はまた、以下の方法において決定することもできる。対象ポリヌクレオチド配列は、配列アライメントアルゴリズムならびにGenbank、EMBL、Swiss−PROTおよび他のデータベースなどの配列類似性検索ツールを使用して、候補ポリヌクレオチド配列と比較される。Nucleic Acids Res 29巻:1〜10頁および11〜16頁、2001年は、オンラインリソースの例を提供する。
【0109】
BLASTNの使用は、本発明によるポリヌクレオチド変異体についての配列同一性の決定において使用するのに好ましい。
【0110】
BLASTN(bl2seqにおけるプログラムのBLASTスーツ、バージョン2.2.18 2008年4月から)(Tatiana A.ら、FEMS Microbiol Lett. 174巻:247〜250頁(1999年)、Altschulら、Nuc.Acis Res 25巻:3389〜3402頁(1997年))は、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)またはBethesda、Maryland、USAのNCB1から公的に入手可能である。ローコンプレキシティパート(low complexity part)のフィルタリングをオフにするべき以外は、bl2seqのデフォルトパラメーターが利用される。
【0111】
ポリヌクレオチド配列の同一性は、以下のUNIX(登録商標)コマンドラインパラメーターを使用して検査されてもよい。
bl2seq −i nucleotideseq1 −j nucleotideseq2 −F F −p blastn
パラメーター−F Fは、ローコンプレキシティセクション(low complexity section)のフィルタリングをオフにする。パラメーター−pは、配列のペアに適切なアルゴリズムを選択する。bl2seqプログラムは、「同一性=」という行において同一のヌクレオチドの数およびパーセンテージの両方として配列同一性を報告する。
【0112】
その代わりに、変異体ポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、指定されるポリヌクレオチド配列またはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドである。
【0113】
用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」およびその文法的な等価物は、温度および塩濃度の規定された条件下で、標的ポリヌクレオチド分子にハイブリダイズするポリヌクレオチド分子の能力を指す(サザンブロットまたはノーザンブロットなどのDNAブロットまたはRNAブロット上に固定された標的ポリヌクレオチド分子など)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする能力は、それほどストリンジェントではない条件下で最初にハイブリダイズし、次いで、望ましいストリンジェンシーまでストリンジェンシーを増加させることによって決定することができる。
【0114】
長さが約100塩基よりも大きなポリヌクレオチド分子に関して、典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、未変性二重鎖の融解温度(Tm)以下の、25〜30℃以下(たとえば10℃)である(一般的に、参照によって本明細書において組み込まれるSambrookら編、1987年、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版 Cold Spring Harbor Press;Ausubelら、1987年、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishingを参照されたい)。約100塩基よりも大きなポリヌクレオチド分子についてのTmは、式Tm=81.5+0.41%(G+C−log(Na+)によって計算することができる(Sambrookら編、1987年、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版 Cold Spring Harbor Press;BoltonおよびMcCarthy、1962年、PNAS 84巻:1390頁)。長さが100塩基よりも大きなポリヌクレオチドについての典型的なストリンジェントな条件は、6×SSC、0.2%SDSの溶液中での予洗;65℃、6×SSC、0.2%SDSで、一晩のハイブリダイズ;その後、65℃での、それぞれ1×SSC、0.1%SDS中での30分間の2回の洗浄、および65℃での、それぞれ0.2×SSC、0.1%SDS中での30分間の2回の洗浄などのハイブリダイゼーション条件になるであろう。
【0115】
一実施形態において、ストリンジェントな条件は、42℃の50%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを使用し、55℃の0.2×SSCおよび50%ホルムアミド中での42℃での洗浄、その後、55℃での、EDTAを含有する0.1×SSCからなる洗浄液で洗浄する。
【0116】
100基礎未満の長さを有するポリヌクレオチド分子に関して、例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、Tm以下の5〜10℃である。平均で、100bp未満の長さのポリヌクレオチド分子のTmは、ほぼ、(500/オリゴヌクレオチド長)℃、低下する。
【0117】
ペプチド核酸(PNA)として公知のDNA模倣物に関して(Nielsenら、Science. 1991年12月6日;254巻(5037号):1497〜500頁)、Tm値は、DNA−DNAハイブリッドまたはDNA−RNAハイブリッドについてのものよりも高く、Giesenら、Nucleic Acids Res. 1998年11月1日; 26巻(21号):5004〜6頁において記載される式を使用して計算することができる。100塩基未満の長さを有するDNA−PNAハイブリッドについての例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、Tm以下の5〜10℃である。
【0118】
変異体ポリヌクレオチドはまた、本発明の配列とは異なるが、遺伝子コードの縮重の結果として、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに類似する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをも包含する。ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない配列改変は、「サイレント変異」である。ATG(メチオニン)およびTGG(トリプトファン)を除いて、同じアミノ酸についての他のコドンは、たとえば、特定の宿主生物においてコドン発現を最適化するために、当技術分野で認識されている技術によって変化させてもよい。
【0119】
その生物学的活性を著しく変えることなく、コードされたポリペプチド配列における1つまたはいくつかのアミノ酸の保存的置換をもたらすポリヌクレオチド配列改変もまた、本発明において含まれる。当業者は、表現型的にサイレントなアミノ酸置換をなすための方法を認識しているであろう(たとえばBowieら、1990年、Science 247巻、1306頁を参照されたい)。
【0120】
コードされたポリペプチド配列におけるサイレント変異および保存的置換による変異体ポリヌクレオチドは、上記に記載されるように、tblastxアルゴリズムを介して、bl2seqプログラムを使用して決定されてもよい。
【0121】
ポリペプチドに関しての用語「変異体」はまた、天然に存在するポリペプチド、組換えで生産されたポリペプチド、および合成的に生産されたポリペプチドをも包含する。変異体ポリペプチド配列は、好ましくは、本発明の配列に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を呈する。同一性は、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも21、または少なくとも22のアミノ酸位置の比較ウィンドウにわたり見つけられるかまたは配列番号15のポリペプチドまたは本発明において開示されるかもしくは使用される他のポリペプチドの全長にわたり見つけられる。たとえば、配列番号17については、比較ウィンドウは、少なくとも5、6、7、もしくは8のアミノ酸位置にわたってもよいまたはポリペプチドの全長にわたっていてもよい。
【0122】
ポリペプチド変異体はまた、それらの配列の機能的等価性を保つ可能性がある1つまたは複数の明確に同定された配列に対して類似性を呈し、偶然によって生じたことを合理的に予想することができないものをも包含する。上記に論じられるように、GRN−SP変異体の場合には、機能は、シグナルポリペプチドもしくは抗原性ポリペプチドまたはその両方であってもよい。
【0123】
ポリペプチド配列同一性および類似性は、以下の方法において決定することができる。対象ポリペプチド配列は、BLASTP(bl2seqにおけるプログラムのBLASTスーツ、バージョン2.2.18[2008年4月]から)を使用して、候補ポリペプチド配列と比較されるが、これは、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から公的に入手可能である。ローコンプレキシティ領域(low complexity region)のフィルタリングをオフにするべき以外は、bl2seqのデフォルトパラメーターが利用される。
【0124】
ポリペプチド配列の類似性は、以下のUNIX(登録商標)コマンドラインパラメーターを使用して検査されてもよい。
bl2seq −i peptideseq1 −j peptideseq2 −F F −p blastp
パラメーター−F Fは、ローコンプレキシティセクションのフィルタリングをオフにする。パラメーター−pは、配列のペアに適切なアルゴリズムを選択する。このプログラムは、配列の間での、類似性の領域を見つけ、それぞれのそのような領域について、ランダム配列を含有する固定基準サイズのデータベースにおいて、そのようなマッチが偶然見られることを予想することができる回数の期待数である「E値」を報告する。1よりもかなり低い、小さなE値については、これは、ほぼ、そのようなランダムマッチの蓋然性がある。
【0125】
変異体ポリペプチド配列は、一般的に、明確に同定された配列のいずれか1つと比較した場合、1×10−5未満、1×10−6未満、1×10−9未満、1×10−12未満、1×10−15未満、1×10−18未満、または1×10−21未満のE値を呈する。
【0126】
ポリペプチド配列同一性もまた、グローバル配列アライメントプログラムを使用して、候補ポリペプチド配列および対象ポリペプチド配列の間の重複の全長にわたり計算し得る。EMBOSS−ニードル(http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/で入手可能)およびGAP(Huang, X.(1994年)On Global Sequence Alignment Computer Applications in the Biosciences 10巻、227〜235頁)はまた、上記に論じられるように、ポリペプチド配列同一性を計算するのに適したグローバル配列アライメントプログラムでもある。
【0127】
上記に記載されるBLASTPの使用は、本発明によるポリペプチド変異体の決定において使用するのに好ましい。
【0128】
一実施形態において、変異体は、配列が、1、2、3、4、5、6、またはそれを超える保存的アミノ酸置換、欠失、追加または挿入によって、本明細書におけるヒトGRN−SP(1〜23)配列番号15、またはGRN−SP(1〜9)配列番号17とは異なるペプチドであって、保存的突然変異は、ペプチドの生物学的活性に影響しないペプチドを含む。保存的置換は、典型的に、一つのアミノ酸による、類似する特徴を有する別のアミノ酸を代える置換、たとえば以下のグループ内の置換:バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンを含む。保存的置換の例はまた、ヒト配列と比較される、異なる哺乳動物種における置換が示される配列表において示されるように、GRN−SPの配列においても見つけることができる。他の保存的置換は、下記の図8および表1から得ることができる。
【0129】
【表1】

天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて、グループ分けされる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg:
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーの、他のクラスのメンバーとの交換を伴うであろう。
【0130】
他の変異体は、ペプチド安定性に影響を及ぼす改変を有するペプチドを含む。そのような類似体は、たとえば、ペプチド配列において、1つまたは複数の非ペプチド結合(ペプチド結合に取って代わる)を含有していてもよい。天然に存在するL−アミノ酸以外の残基、たとえば、D−アミノ酸または天然に存在しない合成アミノ酸、たとえばベータアミノ酸もしくはガンマアミノ酸および環状類似体を含む類似体もまた含まれる。
【0131】
置換、欠失、追加、または挿入は、当技術分野において公知の突然変異誘発方法によってなされてもよい。当業者は、表現型的にサイレントなアミノ酸置換をなす方法を認識しているであろう。たとえばBowieら、1990年、Science 247巻、1306頁、Kunkel, T; 1985年、PNAS, 85巻488頁27を参照されたい。
【0132】
合成の間にまたは合成の後に、たとえばビオチン化、ベンジル化、グリコシル化、リン酸化、アミド化によって、ブロッキング基/保護基を使用する誘導体化、およびその他同種のものによって改変されたものもまた本発明のポリペプチドに含まれる。そのような改変は、ポリペプチドの安定性または活性を増加させてもよい。そのような改変は、当技術分野において周知である。たとえばSambrookおよびAusubel(前掲)ならびにLundblad, R、CRC Press、1995年28を参照されたい。
【0133】
用語「遺伝子構築物」は、ポリヌクレオチド分子、通常二本鎖DNAを指し、これは、これに限定されないが、cDNA分子などの他のポリヌクレオチド分子(挿入ポリヌクレオチド分子)をそれに挿入していてもよい。遺伝子構築物は、挿入ポリヌクレオチド分子を転写し、任意選択で、転写物をポリペプチドに翻訳することを可能にする、必要なエレメントを含有していてもよい。挿入ポリヌクレオチド分子は、宿主細胞に由来してもよいしまたは異なる細胞もしくは異なる生物に由来してもよいしかつ/または組換えポリヌクレオチドであってもよい。一度、宿主細胞の内部に入ると、遺伝子構築物は、宿主染色体DNA中に組み込まれるようになり得る。遺伝子構築物は、ベクターに連結されてもよい。
【0134】
用語「ベクター」は、ポリヌクレオチド分子、通常二本鎖DNAを指し、これは、宿主細胞へ遺伝子構築物を運搬するために使用される。ベクターは、E. coliなどの少なくとも1つのさらなる宿主系において複製ができてもよい。
【0135】
用語「発現構築物」は、挿入ポリヌクレオチド分子を転写し、任意選択で、転写物をポリペプチドに翻訳することを可能にする、必要なエレメントを含む遺伝子構築物を指す。発現構築物は、典型的に、5’から3’方向に、
(a)構築物が形質転換される宿主細胞における機能的なプロモーター、
(b)発現されることとなるポリヌクレオチド、および
(c)構築物が形質転換される宿主細胞における機能的なターミネーターを含む。
【0136】
用語「コード領域」または「オープンリーディングフレーム」(ORF)は、適切な調節配列のコントロール下で、転写産物および/またはポリペプチドを生産することができる、ゲノムDNA配列またはcDNA配列のセンス鎖を指す。コード配列は、5’翻訳開始コドンおよび3’翻訳終止コドンの存在によって同定される。遺伝子構築物に挿入される場合、「コード配列」は、それが、プロモーター配列およびターミネーター配列ならびに/または他の調節エレメントに作動可能に連結される場合、発現することができる。
【0137】
「調節エレメント」および「ポリヌクレオチド調節エレメント」は、ベクター、遺伝子構築物、または発現カセットからのポリヌクレオチド挿入物の発現をコントロールするかまたはそれに影響を及ぼし、プロモーター、転写コントロール配列、翻訳コントロール配列、複製開始点、組織特異的調節エレメント、一過性調節エレメント、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リプレッサー、およびターミネーターを含む任意のエレメントを意味する。調節エレメントは、本発明によるベクター、遺伝子構築物、または発現カセットから発現されることとなるポリヌクレオチド挿入物に対して同種または異種であってもよい。
【0138】
ポリヌクレオチド調節エレメント(PRE)およびPREが遺伝子構築物において作動可能に連結される配列の間の関係に関して本明細書において使用される「同種」は、PREが、それが構築物において作動可能に連結されるコード配列と、通常、自然状態では関連することを意味する。同種のポリヌクレオチド調節エレメントは、所望のポリヌクレオチドが、本発明によるベクター、遺伝子構築物、または発現カセットから発現することができるように、所望のポリヌクレオチドに作動可能に連結されてもよい。
【0139】
ポリヌクレオチド調節エレメント(PRE)およびPREが遺伝子構築物において作動可能に連結される配列の間の関係に関して本明細書において使用される「異種」は、PREが、それが構築物において作動可能に連結されるコード配列と、通常、自然状態では関連していないことを意味する。そのようなPREは、通常、異なる遺伝子(ANP以外の)と関連するプロモーターおよび/または任意の他の細菌、ウイルス、真核生物、もしくは哺乳動物の細胞から単離されるプロモーターを含んでいてもよい。
【0140】
「作動可能に連結される」は、発現されることとなる配列が、プロモーター、転写コントロール配列、翻訳コントロール配列、複製開始点、組織特異的調節エレメント、一過性調節エレメント、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リプレッサー、およびターミネーターを含む調節エレメントのコントロール下に配置されることを意味する。
【0141】
用語「非コード領域」は、翻訳開始部位の上流および翻訳終止部位の下流にある非翻訳配列を指す。これらの配列はまた、それぞれ、5’UTRおよび3’UTRとも呼ばれる。これらの領域は、転写開始および転写終結ならびに翻訳効率の調節に必要とされるエレメントを含む。
【0142】
ターミネーターは、転写を終結させ、翻訳配列の下流の遺伝子の3’非翻訳末端において見つけられる配列である。ターミネーターは、mRNA安定性の重要な決定基で、いくつかの場合には、空間的な調節機能を有することが見つけられた。
【0143】
用語「プロモーター」は、遺伝子転写を調節する、コード領域の上流の非転写シス調節エレメントを指す。プロモーターは、転写開始部位およびTATAボックスなどの保存ボックスならびに転写因子が結合するモチーフを特定するシスイニシエーターエレメントを含む。
【0144】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの「発現を改変する」および「発現の改変」という用語は、本発明のポリヌクレオチドに対応するゲノムDNAが、改変され、したがって、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現の改変に至る状況を包含するように意図される。ゲノムDNAの改変は、遺伝子形質転換または突然変異を誘発するための、当技術分野において公知の他の方法によるものであってもよい。「発現の改変」は、生産されるメッセンジャーRNAおよび/またはポリペプチドの量の増加または減少に関するものとすることができ、また、生産されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの配列における改変により、ポリペプチドの活性の改変をもたらしてもよい。
【0145】
本明細書において使用される「対象」は、好ましくは、哺乳動物であり、ヒトならびにネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、シカ、マウス、ラット、霊長動物(ゴリラ、アカゲザル、およびチンパンジーを含む)、ポッサム、ならびに他の家畜動物または動物園の動物などの非ヒト哺乳動物を含む。一実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0146】
本明細書において使用される用語「提示」は、クリニックまたは病院などの医療施設での対象の提示を指す。
【0147】
本明細書において使用される「治療有効量」または「治療有効用量」は、望ましい生理的効果をもたらすのに十分な量または特に、疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状もしくは徴候を低下させるかもしくは取り除くことを含む、所望の疾患または状態の治療に対し、望ましい結果を達成することができる量を意味する。
【0148】
用語「治療する」「治療すること」、または「治療」および「予防すること」は、グルコース処理障害、糖尿病、高血糖症、肥満症、心血管疾患、ACD、もしくは心臓移植拒絶またはその影響、特にACSの影響を含む、正常なコントロールレベルからの偏差を示すGRN−SPレベルによって特徴づけられる生物学的事象の進行を緩和する、回復させる、管理する、予防する、抑制する、停止させる、または逆戻りさせる治療手段または予防手段を指す。対象は、グルコース、ラクテート、インスリン、脂肪酸、トリグリセリド、Tn、TnI、TnT、BNP、N−BNP、BNP−SP(およびその断片)、ANP、ANP−SP(およびその断片)、クレアチンキナーゼ−MB、ミオグロビン、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、H−FABP、虚血修飾アルブミン、エンドセリン、アドレノメデュリン、レニン、アンギオテンシンII、および、改善を示す、当業者らに公知の他の通例の臨床的マーカーのうちの1つまたは複数における、観察可能なまたは測定可能な(統計的に有意な)低下を示し得る。
【0149】
本明細書において使用される用語「マススペクトロメトリー」は、電荷に対するイオンの質量比に基づき、イオンを濾過し、検出し、測定するための方法を指す。たとえば米国特許第5,719,060号、米国特許第6,204,500号、米国特許第6,107,623号、米国特許第6,124,137号、米国特許第6,225,047号、米国特許第6,268,144号、米国特許第7,057,165号、および米国特許第7,045,366号を参照されたい。一般的なマススペクトロメトリー技術は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)および表面増強レーザー脱離イオン化法(surface-enhanced laser desorption ionization)(SELDI)を含む。両方とも、非常に短いイオンパルスでフェムトモルレベルで分析物の分析を可能にする飛行時間型分析機器とつながれてもよい(MALDI−TOFおよびSELDI−TOF)。
【0150】
本発明において有用である、たとえば米国特許第5,719,600号、米国特許第6,124,137号、および米国特許第6,225,047号において論じられるSELDIのバージョンは、表面増強アフィニティーキャプチャー(Surface-Enhanced Affinity Capture)(SEAC)、表面増強ニート脱離(Surface-Enhanced Neat Desorption)(SEND)、ならびに表面増強感光性アタッチメントおよびリリース(Surface-Enhanced Photolabile Attachment and Release)(SEPAR)を含む。
【0151】
本明細書において開示される一連の数に対する言及(たとえば1〜10)は、また、その範囲内のすべての関連する数に対する言及をも組み込み(たとえば1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)、また、その範囲内の有理数の任意の範囲をも組み込むことが意図され(たとえば2〜8、1.5〜5.5、および3.1〜4.7)、そのため、本明細書において明確に開示されるすべての範囲のすべての部分範囲は、明確に開示される。これらは、明確に意図されるものについてのほんの例であり、列挙される最低値および最高値の間の数値の可能なすべての組み合わせが、同様に、本出願において明確に述べられると考えられる。
【0152】
発明の詳細な説明
グレリン(GRN)は、胎盤、腎臓、視床下部、および脳下垂体における内分泌細胞によって生産されるポリペプチドホルモンである。胃(グレリン生産の主な部位)において、胃底を内張りする上皮細胞は、グレリンを生産する。グレリンは、エネルギーバランスの調節に関与する。グレリンは、視床下部摂食中枢を活性化することによって、個人における食欲増進、食物消費増加、および最終的に体重を増加させるように作用する。グレリンによって、高血糖症は誘発され、インスリン放出は阻害される。グレリンおよびその受容体はまた、心血管組織においても見つけられる(Garcia, Eら; Ghrelin and Cardiovascular health、Current Opinion in Pharmacology、6巻、2号、2006年、142〜147頁)。配列番号1が示すように、プレプロGRNは、117アミノ酸分子である。それは、ジスルフィド(disulsphide)架橋によって連結される2つのポリペプチド鎖(AおよびB)から成る。プレプログレリン(1〜117)は、切断されて、23アミノ酸のシグナルペプチド(配列番号15)、94アミノ酸のプログレリン、および28アミノ酸のグレリンホルモンを生じる。ヒトプレプログレリンのプロセシングを図5に示す。
【0153】
GRN−SPの機能的役割は、小胞体におけるグレリンの輸送のコントロールに限られていると長く考えられてきた。一度、これが達成されると、次いで、シグナルペプチドは、細胞からなお分泌されることなく分解されると仮定されてきた25
【0154】
従来の見解に反論する(confound)ものであるが、本出願人らは、典型的にGRN−SP断片の形態のGRN−SPが、血行路中に出現することを、今や発見した。この発見自体は、GRN−SPおよびGRN−SP断片が、一連の生物学的事象もしくは障害についての循環バイオマーカーとして有用であることを意味する。たとえば、糖尿病患者および診断未確定の糖尿病患者において、たとえば、GRN−SPのレベルは、対象が、低インスリン血症であるかまたは高インスリン血症であるかどうかに依存して、正常なコントロールレベルまたは対照標準レベルを超えるかまたはそれを下回ることが予想される。上記低レベルは、インスリン作用または分泌における欠乏の症状である。
【0155】
したがって、一態様において、本発明は、対象における生物学的事象もしくは障害を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、事象もしくは障害は、血行路への、GRN−SPバイオマーカーの放出と相互に関連し、
(a)対象からの生物学的試料中のGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程および
(b)GRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロールまたは対照標準レベルからのGRN−SPレベルと比較する工程を含み、
コントロールレベルまたは対照標準レベルからの、測定レベルにおける偏差は、生物学的事象または障害を示す方法を提供する。
【0156】
生物学的事象または障害は、グルコース処理障害、糖尿病、およびACDを含む。
【0157】
そのため、本発明はまた、対象におけるグルコース処理を評価するための方法であって、
(a)グルコースの投与の後に、対象におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程;
(b)上述のGRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロールまたは対照標準レベルからのGRN−SPと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは対照標準レベルからのGRN−SPの測定レベルにおける偏差は、グルコース処理障害を示す方法をも提供する。
【0158】
一般的に、偏差は、コントロールレベルと比較して、より低いGRN−SPの測定レベルになるであろう。たとえば高血糖症を有する対象において31
【0159】
この方法において、グルコースは、周知のグルコース負荷試験プロトコールに従って、第1のステップとして投与されてもよい(Oxford Textbook of Medicine、前掲)。
【0160】
GRN−SPバイオマーカー、通常静脈血漿GRN−SPの血漿濃度の評価は、グルコース試験が標準的なプロトコールに従って施された2時間後になされてもよい。しかしながら、グルコースの投与の後の、たとえば15、30、45、60、90、および105分後の中間の測定もまた有用である。
【0161】
本発明はまた、対象における糖尿病または糖尿病の可能性を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、
(a)対象からの生物学的試料中のGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程および
(b)GRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロールまたは対照標準からのGRN−SPレベルと比較する工程を含み、
コントロールまたは対照標準レベルよりも高いかまたは低いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、糖尿病または糖尿病に対する素因を示す31方法をも提供する。
【0162】
INS−SPバイオマーカーレベルが正常よりも高いかまたは低いかどうかは、対象のインスリン状態に依存する。
【0163】
出願人らは、驚いたことに、急性心筋梗塞(AMI)を有する患者において、GRN−SPの循環濃度が、患者の症状の発症後の最初の数時間において−実際に、病院またはクリニックへの提示の時に最も高いことを発見した。最初の2〜6時間または4時間において観察されるレベルは、驚いたことに、非常に高く、多くの場合、正常なコントロール集団におけるレベルよりもおよそ1.5〜5倍、一般には2〜3倍高いピークに達する。ACD、心臓移植拒絶についてのマーカーとしてまたは診断未確定のACDもしくは疑わしいACDもしくは肺障害での使用のためのマーカーとしてのグレリンまたはGRN−SPまたはGRN−SP断片の使用については以前には示唆されていない。
【0164】
これらの発見は、GRN−SPバイオマーカーが、心臓移植拒絶、AMIなどの急性冠動脈症候群(ACS)を含むACD、特に非ST上昇MI、および急性心虚血の非常に明瞭な初期段階マーカーとして有用であり、ACDを肺障害から区別するために使用できることを示唆する。
【0165】
これらの驚くべき発見に基づいて、本出願人らは、それが、特に障害の発症の約6、約4、もしくは約2時間以内にまたは障害の臨床提示のときに、対象から採取した生物学的試料中の循環GRN−SPまたはその変異体もしくは断片ならびにまたは代わりに、GRN−SPもしくはその変異体および断片をコードするヌクレオチド配列に対してスクリーニングするのに有用であろうということを初めて決定した。
【0166】
本発明において有用なのは、長さが最小4または5のアミノ酸であるGRN−SPの抗原性断片または変異体である。わずか4つのアミノ酸を有するペプチドは、生物学的に活性であることが公知である。たとえば、Gilchristら、Biology and Reproduction, 21巻、732〜739頁、2004年ならびにSelaら、Behring Ins. Mitt., 91巻、54〜66頁、1992年を参照されたい。特に有用な断片は、GRN−SPのN末端(1〜9)またはC末端にある。特異的な抗原性ペプチドの例は、GRN−SP(1〜9)(配列番号17)である。対応するヌクレオチド配列は、配列番号18に示す。この配列は、出願人らによって初めて提供される。核酸分子およびペプチド形態の両方は本発明の態様として形成する。
【0167】
したがって、他の態様において、本発明は、GRN−SP断片をコードする核酸分子であって、上述の核酸は、
(a)配列番号18またはその変異体もしくは断片、
(b)配列番号18に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有する配列、
(c)配列番号18またはその断片もしくは変異体に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる、長さが少なくとも10ヌクレオチドの配列、または
(d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体であり、
ただし、配列が配列番号16ではないということを条件とする核酸分子を提供する。配列番号16は、シグナルペプチドをコードする完全長核酸配列である。
【0168】
本発明はまた、本発明の核酸分子によってコードされる、単離GRN−SPポリペプチドおよびGRN−SP断片を提供する。
【0169】
本発明の特定のポリペプチドは、すべて添付の配列表に記載される配列番号17のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。本明細書において規定されるこれらのポリペプチドの変異体および断片または配列番号17のポリペプチドに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列もまた企図される。一実施形態において、変異体または断片は、機能的に等価な変異体または断片である。すなわち、変異体または断片は、抗原またはシグナルペプチドとしての配列番号17の機能を維持する。公知の完全長GRN−SP(1〜23)配列番号15は、もちろんそれ自体請求されていないが、本発明において有用である。たとえば、このポリペプチドは、抗GRN−SP抗体の調製において使用されてもよい。
【0170】
本発明のまたはそうでなければ本明細書において記載される核酸分子は、一実施形態において、単離される。それらは、当業者らに公知の様々な技術を使用して、生物学的試料から単離されてもよい。例として、そのようなポリヌクレオチドは、Mullisら編、1994年 The Polymerase Chain Reaction、Birkhauserにおいて記載されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用を通して単離することができる。本発明の核酸分子は、本発明のポリヌクレオチド配列に由来する、本明細書において規定されるプライマーを使用して増幅することができる(たとえば、Mullis, Sambrook前掲およびMolecular Diagnostic PCR Handbook Gerrit, Vら、Springer、2005年を参照されたい)。
【0171】
ポリヌクレオチドを単離するためのさらなる方法は、ハイブリダイゼーションプローブとしての、本発明のポリヌクレオチド、特に配列番号18において記載される配列を有するポリヌクレオチドのすべてまたは部分の使用を含む。ニトロセルロースフィルターまたはナイロン膜などの固体支持体上に固定されたポリヌクレオチドに、標識ポリヌクレオチドプローブをハイブリダイズするための技術は、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。同様に、プローブは、ビーズに結合し、標的配列にハイブリダイズされてもよい。単離は、磁気分離などの公知の技術プロトコールを使用して達成することができる。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は、上記に示されるとおりである。
【0172】
ポリヌクレオチド断片は、制限エンドヌクレアーゼ消化およびオリゴヌクレオチド合成などの、当技術分野において周知の技術によって生産されてもよい。
【0173】
部分的なポリヌクレオチド配列は、試料における対応する完全長ポリヌクレオチド配列を同定するために、当技術分野において周知の方法において、プローブとして使用されてもよい。そのような方法は、PCRベースの方法、5’RACE(Methods Enzymol. 218巻:340〜56頁(1993年);Sambrookら、前掲)、およびハイブリダイゼーションベースの方法、コンピューター/データベースベースの方法を含む。放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、および生物発光標識などの検出可能な標識は、検出を容易にするために使用されてもよい。逆PCRはまた、公知の領域に基づくプライマーから始めて、本明細書において開示されるポリヌクレオチド配列の側面に位置する未知の配列の獲得を可能にする(Trigliaら、Nucleic Acids Res 16巻、8186頁、(1998年))。方法は、遺伝子の公知の領域において適した断片を生成するためにいくつかの制限酵素を使用する。次いで、断片は、分子内ライゲーションによって環状化され、PCR鋳型として使用される。異なるプライマーは、公知の領域から設計される。完全長クローンを物理的に構築するために、標準的な分子生物学アプローチを利用することができる(Sambrookら、前掲)。本発明のポリヌクレオチドの増幅を可能にするプライマーおよびプライマーペアはまた、本発明のさらなる態様をも形成する。
【0174】
変異体(オルソログを含む)は、記載される方法によって同定されてもよい。変異体ポリヌクレオチドは、PCRベースの方法を使用して同定されてもよい(Mullisら編 1994年 The Polymerase Chain Reaction、Birkhauser)。典型的に、PCRによってポリヌクレオチド分子の変異体を増幅するのに有用なプライマーのポリヌクレオチド配列は、対応するアミノ酸配列の保存領域をコードする配列に基づいてもよい。
【0175】
変異体ポリヌクレオチドを同定するためのさらなる方法は、上記に記載されるように、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするための、ハイブリダイゼーションプローブとしての特定されるポリヌクレオチドのすべてまたは部分の使用を含む。典型的に、対応するアミノ酸配列の保存領域をコードする配列に基づくプローブが使用されてもよい。ハイブリダイゼーション条件もまた、プローブに同一の配列をスクリーニングする場合に使用される条件よりもストリンジェントではなくてもよい。
【0176】
ポリヌクレオチド変異体およびポリペプチド変異体の両方を含む変異体配列はまた、上記に論じられる、コンピューターベースの方法によって同定されてもよい。
【0177】
さらに、関連する配列のグループの複数回の配列アライメントは、CLUSTALW(Thompsonら、Nucleic Acids Research, 22巻:4673〜4680頁(1994年)、http://www−igbmc.u−strasbg.fr/BioInfo/ClustalW/Top.html)またはT−COFFEE(Cedric Notredameら、J. Mol. Biol. 302巻:205〜217頁(2000年)))または累進的ペアワイズアライメントを使用するPILEUP(Fengら、J. Mol. Evol. 25巻、351頁(1987年))を用いて実行することができる。
【0178】
パターン認識ソフトウェアアプリケーションは、モチーフまたはシグネチャ配列を発見するのに利用可能である。たとえば、MEME(Multiple Em for Motif Elicitation)は、配列のセットにおけるモチーフおよびシグネチャ配列を見つけ、MAST(Motif Alignment and Search Tool)は、クエリー配列における類似するまたは同じモチーフを同定するために、これらのモチーフを使用する。MAST結果は、適切な統計データおよび見つけられたモチーフの視覚的全体像と共に、一連のアライメントとして提供される。MEMEおよびMASTは、University of California、San Diegoで開発された。
【0179】
PROSITE(Bairochら、Nucleic Acids Res. 22巻、3583頁(1994年);Hofmannら、Nucleic Acids Res. 27巻、215頁(1999年))は、ゲノム配列またはcDNA配列から翻訳される、特徴づけられていないタンパク質の機能を同定するための方法である。PROSITEデータベース(www.expasy.org/prosite)は、生物学的に有意なパターンおよびプロファイルを含有し、タンパク質の公知のファミリーに新しい配列を割り当てるために、またはどの(1つもしくは複数の)公知のドメインが配列中に存在するかを決定するために、適切なコンピューターツールと共にそれを使用することができるように設計されている(Falquetら、Nucleic Acids Res. 30巻、235頁(2002年))。Prosearchは、所与の配列パターンまたはシグネチャを用いてSWISS−PROTおよびEMBLのデータベースを検索することができるツールである。
【0180】
タンパク質は、同じゲノム(パラログ)または異なるゲノム(オルソログ)における他のタンパク質に対するそれらの配列関連性に従って分類することができる。オルソロガス遺伝子は、共通の祖先の遺伝子からの種分化によって進化し、それらが進化させるのと同じ機能を通常保持する遺伝子である。パラロガス遺伝子は、ゲノム内で重複している遺伝子であり、遺伝子は、本来のものに関する可能性がある新しい特異性または修飾機能を獲得する可能性がある。系統発生解析法は、Tatusovら、Science 278巻、631〜637頁、1997年において概説される。
【0181】
上記に述べられるように、本発明はまた、本発明の核酸分子によってコードされるGRN−SPポリペプチドにも関し、これらのポリペプチドの変異体および断片を含む。
【0182】
上記に記載されるコンピューター/データベース方法に加えて、ポリペプチド変異体は、物理的方法によって、たとえば、本発明のポリペプチドに対して産生させた抗体を使用して発現ライブラリーをスクリーニングすることによって(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版 Cold Spring Harbor Press、1987年)、またSambrookらによって記載される組換えDNA技術によって、またはそのような抗体の助けによって自然源からポリペプチドを同定することによって同定されてもよい。
【0183】
変異体ポリペプチドを含むポリペプチドは、固相技術を使用する直接的なペプチド合成(たとえばMerrifield、1963年、in J. Am Chem. Soc. 85巻、2149頁;Stewartら、1969年、Solid-Phase Peptide Synthesis、WH Freeman Co、San Francisco California;Matteucciら J. Am. Chem. Soc. 103巻:3185〜3191頁、1981年、およびAthertonら、Solid Phase Peptide Synthesis: a practical approach,. IRL press(1989年))またはたとえば、Applied Biosystems(California、USA)からのシンセサイザーを使用する自動合成などの、当技術分野において周知のペプチド合成方法を使用して調製されてもよい。ポリペプチドの突然変異形態はまた、Adelmenら; DNA 2巻、183頁(1983年)によって記載されるように、アミノ酸配列をコードするDNAの部位特異的突然変異誘発などの合成方法を使用して生産されてもよい。Protein Protocols Handbook; Walker, J. Humana Press 2002年もまた参照されたい。
【0184】
本明細書におけるポリペプチドおよび変異体ポリペプチドは、一実施形態において単離される。それらは、当技術分野において周知の様々な技術を使用して、自然源から単離されてもよいしまたは精製されてもよい(たとえばDeutscher、1990年編、Methods in Enzymology、182巻、Guide to Protein Purification, および Protein Protocols Handbook、前掲)。技術は、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、および免疫クロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない。
【0185】
その代わりに、ポリペプチドおよび変異体ポリペプチドは、下記論じられるように、適した宿主細胞において組換えで発現され、細胞から分離されてよい。ポリペプチドおよび変異体は、他の使用の中でも、抗体を生成する際のおよびリガンドを生成する際の有用性を有する。
【0186】
本明細書において記載される遺伝子構築物は、本発明の開示されるポリペプチドをコードする、1つまたは複数の開示されるポリヌクレオチド配列および/またはポリヌクレオチドを含んでいてもよく、たとえば、細菌、菌類、昆虫、哺乳動物、または植物の生物体を形質転換するのに有用であり得る。本発明の遺伝子構築物は、本明細書において規定される発現構築物を含むように意図される。ベクター(pBR322、pUC18、pU19、Mp18、Mp19、ColE1、PCR1、およびpKRCなど)、ファージ(ラムダgt10など)、ならびにM13プラスミド(pBR322、pACYC184、pT127、RP4、p1J101、SV40、およびBPVなど)、コスミド、YACS、BAC、pSA3などのシャトルベクター、PAT28トランスポゾン(米国特許第5,792,294号において記載されるものなど)、ならびにその他同種のものが含まれる。
【0187】
構築物は、好都合に、選択遺伝子または選択可能マーカーを含んでいてもよい。典型的に、アンピシリン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンなどの抗生物質抵抗性マーカーが使用される。
【0188】
構築物において有用なプロモーターは、当技術分野においてすべて周知のβ−ラクタマーゼプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター系、トリプトファンプロモーター系、およびtacプロモーター系を含む。酵母プロモーターは、3−ホスホグリセレートキナーゼ、エノラーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、グルコキナーゼ、およびグリセルアルデヒドレート−3−ホスホネートデヒドロゲナーゼを含むが、これらに限定されない。
【0189】
エンハンサーもまた、転写を増強するためにプロモーターに作用するように使用されてもよい。本明細書における使用に適したエンハンサーは、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス(cytomeglovirus)初期プロモーターエンハンサー、グロビン、アルブミン、インスリン、およびその他同種のものを含む。
【0190】
構築物、プロモーター、エンハンサー、および宿主細胞の全般的な議論については、Principles of Gene Manipulation and Genomics; Primrose, Sら、Blackwell Publishing 2006年、第7版およびFrom Genes to Genomes: Concepts and Applications of DNA Technology、Dale, Jら、Wiley-Interscience、2007年、第2版を参照されたい。
【0191】
遺伝子構築物およびベクターを生産するおよび使用するための方法は、当技術分野において周知であり、一般的に、Sambrookら(前掲)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing、1987年において記載される。選択された宿主細胞をベクターを用いて形質転換するための方法、たとえば、Cohen, SN; PNAS 69巻、2110頁、1972年によって記載される塩化カルシウム処理もまた公知である。
【0192】
記載される遺伝子構築物およびベクターを含む宿主細胞は、原核生物または真核生物、たとえば酵母、細菌、菌類、昆虫(たとえばバキュロウイルス)、動物、哺乳動物、または植物の生物体の源に由来してもよい。一実施形態において、宿主細胞は、単離宿主細胞である。宿主細胞として最も一般的に使用される原核生物は、E. coliの株である。他の原核生物宿主は、Pseudomonas、Bacillus、Serratia、Klebsiella、Streptomyces、Listeria、Saccharomyces、SalmonellaおよびMycobacteriaを含むが、これらに限定されない。
【0193】
組換えタンパク質の発現のための真核細胞は、Vero細胞、HeLa、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)、293、BHK細胞、MDCK細胞、およびCOS細胞ならびにPrEC、LNCaP、Du 145、およびRWPE−2などの前立腺癌細胞系を含むが、これらに限定されない。細胞は、ATCC、Virginia、USAから入手可能である。
【0194】
本発明の核酸分子の発現と適合性の原核生物プロモーターは、公知技術の構成的プロモーター(バクテリオファージラムダのintプロモーターおよびpBR322のベータ−ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーターなど)ならびに調節可能プロモーター(lacZ、recA、およびgalなど)を含む。コード配列の上流のリボソーム結合部位もまた、発現に必要とされ得る。
【0195】
発現構築物などの遺伝子構築物を含む宿主細胞は、ポリペプチドの組換え生産のための方法において有用である。そのような方法は、当技術分野において周知である(たとえばSambrookら 前掲を参照されたい)。方法は、一般的に、本発明のポリペプチドの発現および選択に適したまたは本発明のポリペプチドの発現および選択を促す条件の適切な培地における宿主細胞の培養を含む。選択可能マーカーを有する細胞は、本発明のポリペプチドを発現する宿主細胞の選択に適切な培地上でさらに成長させてもよい。本発明のポリペプチドを発現する形質転換宿主細胞は、ポリペプチドの発現に適した条件下で選択され、培養される。発現組換えポリペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、およびその他同種のものを含む、当技術分野において周知の方法を使用して、培地から分離され、精製されてもよい(たとえばDeutscher編、1990年、Methods in Enzymology、182巻、Guide to Protein Purification)。宿主細胞はまた、本発明の発現ポリペプチドによって生成される産物の生産のための方法において有用である可能性がある。
【0196】
他の態様において、本発明は、対象における急性心障害(ACD)を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、
対象から採取されたかまたは対象に由来する生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程および上述のGRN−SPのレベルを、コントロール、対照標準値または対照標準の範囲からのGRN−SPバイオマーカーレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは対照標準レベルよりも高いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、ACDを示す方法を提供する。
【0197】
他の態様において、本発明は、対象における、急性心障害(ACD)の治療に対する応答をモニターするための方法であって、対象からの生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程および上述のGRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロール、対照標準、または対照標準の範囲からのGRN−SPレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは対照標準レベルからのGRN−SPバイオマーカーの測定レベルにおける変化は、治療に対する応答を示す方法を提供する。
【0198】
proBNP27〜102、proBNP27〜47などのBNP前駆体は、心臓移植拒絶エピソードを予測するまたは診断するのに使用することができかつ呼吸困難(息切れ)に対する肺起因と心血管起因とを区別するために使用することができることは、当技術分野において公知である。US2005/0244902を参照されたい。GRN−SPは、心組織分析に基づく心臓移植拒絶エピソードの早期マーカーとして使用することができかつ急性心障害と肺障害を区別するために使用することができることが企図される。
【0199】
したがって、本発明はまた、対象における心臓移植拒絶エピソードを予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、心臓移植後の対象からの生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程および上述のGRN−SPバイオマーカーのレベルを、コントロール、対照標準、または対照標準の範囲からのGRN−SPレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは対照標準よりも高いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、移植拒絶を示す方法をも提供する。
【0200】
本発明はまた、対象における肺障害と急性心障害(ACD)とを区別するための方法であって、対象からの生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程および上述のGRN−SPバイオマーカーのレベルをコントロールもしくは対照標準または対照標準の範囲からのGRN−SPバイオマーカーレベルと比較する工程を含み、コントロールレベルまたは対照標準レベルよりも高いGRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、ACDを示す方法をも提供する。
【0201】
一実施形態において、本発明はまた、対象における急性心障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、ACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の発症の最初の約2時間以内に、またはACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の臨床提示の最初の約2時間以内に、対象からの生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定する工程を含む方法を提供する。
【0202】
GRN−SPバイオマーカーの測定レベルは、コントロール、対照標準、または対照標準の範囲からのGRN−SPバイオマーカーレベルと比較され、コントロールレベルまたは対照標準レベルよりも高いGRN−SPの測定レベルは、ACDまたは移植拒絶を示す。
【0203】
熟練している読者は、評価目的のために、GRN−SPバイオマーカーレベルが、一般的に、対照標準値もしくは対照標準の範囲またはコントロール値と相互に関連するということを十分に理解するであろう。
【0204】
本明細書において使用されるように、コントロールは、GRN−SPバイオマーカー試料が採取され、平均GRN−SPバイオマーカーレベルが決定される個人またはグループとすることができる。通常、個人またはグループは、正常な健康な個人またはグルコース処理障害、糖尿病、ACD(心臓移植拒絶を含む)、またはACD/肺障害などの、モニターされることとなる生物学的事象に罹患していることが知られていない個人のグループを含む。ほとんどの個人におけるGRN−SPバイオマーカーレベルは、35〜50pmol/Lの間にあり、平均コントロールレベルは、約43pmol/Lである。その代わりに、コントロールレベルは、以前に試験された個人またはグループからの複数の読み取り値に基づいて評価されてもよい。
【0205】
コントロールレベルの他の例は、グルコース処理障害を有する糖尿病患者、または肥満症個人または個人からの心組織または組織における、GRN−SPバイオマーカーレベルおよびグレリンレベルの間のレシオメトリック(ratiometric)測定値である。対象の(1つまたは複数の)GRN−SPバイオマーカーレベルは、そのコントロール集団についての平均GRN−SPバイオマーカーレベルと比較することができる。心組織のコントロール集団におけるGRN−SPレベルは、正常なコントロール集団におけるGRN−SPレベルよりも、ほぼ、約1.5〜5倍、一般的に約2〜3倍、もしくは約2.5〜3倍(またはそれを超えて)高くなり得る。糖尿病患者またはグルコース処理障害コントロール集団におけるGRN−SPレベルは、正常なコントロール集団におけるGRN−SPレベルよりも、ほぼ、約2〜4倍高くてもよいしあるいは低くてもよい31
その代わりに、コントロールは、より早期の時間に、同じ対象から採取される1つまたは複数の読み取り値またはそのような読み取り値の平均値であってもよい。特定の方法に対して適切なコントロールおよびコントロールレベルを確認することは、当技術分野において周知である。
【0206】
試料におけるGRN−SPバイオマーカーレベルを測定するための工程は、試験される生物学的事象に依存して、1つの試料に対する1回の測定またはいくつかの試料に対する繰り返しの測定としてもよいことが十分に理解されるであろう。ACDの場合には、測定は、たとえば、異なる時間において対象から採取されたかまたは対象に由来する試料におけるGRN−SPバイオマーカーの1〜20回の測定、1〜10回、1〜5回、1〜3回、1もしくは2回、または2もしくは3回の測定を含んでいてもよい。一実施形態において、測定は、障害の発症の最初の約6、5、4、3、2時間以内に、または1時間以内になされてもよいしまたは障害の臨床提示の最初の約6、5、4、3、2時間以内に、または1時間以内に試料においてなされてもよい。上記の試料期間外の1回のまたは繰り返しの測定もまた、GRN−SPバイオマーカーレベルが、正常なコントロールレベルまたは心組織コントロールレベルまたは関連する対照標準レベルもしくは対照標準の範囲と比較して上昇したかまたは低下したかどうかを確証するためになされてもよい。
【0207】
一実施形態において、方法は、発症または提示の約1時間内に採取された1つまたは2つの試料におけるGRN−SPバイオマーカーレベルを測定する工程、その後の、発症もしくは提示またはGRN−SPレベルの最初の測定の約2〜約4時間以内または約2〜約3時間以内に採取された1つまたは2つの試料におけるGRN−SPバイオマーカーレベルを測定する工程を含む。
【0208】
上記に述べられるように、GRN−SPレベルは、発症または提示の最初の6、4、または2時間以内に測定され、正常なコントロールにおいて測定されるGRN−SPバイオマーカーレベルよりも1.5〜5倍高くなり得、通常は2〜3倍高い。
【0209】
他の実施形態において、試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルが、約65〜約250pmol/L、約65〜約200pmol/L、約70〜約150、または約70〜約130pmol/Lの範囲にある場合は、ACD、心臓移植拒絶を示す、またはACDを肺障害から区別する。
【0210】
たとえば糖尿病またはグルコース処理障害などの生物学的事象もしくは障害の場合には、測定は、定期的にインスリンに対して使用されるなどの、確証された臨床的評価と関連した複数の計算を含んでいてもよい。
【0211】
上記に規定される生物学的試料は、GRN−SPバイオマーカーがそこに存在し得るかまたは分泌され得る任意の生物学的物質とすることができる。一実施形態において、生物学的試料は、循環性生物学的試料、たとえば血液、血清、または血漿である。一実施形態において、生物学的試料は、心組織である。
【0212】
核酸アッセイ
試料におけるGRN−SPの存在およびその発現レベルは、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、FISH、もしくはmRNAの転写を定量するための定量的PCR[(Thomas、Proc. Nat, Acad. Sci. USA 77巻:5201〜5205頁 1980年)、(Jain KK、Med Device Technol. 2004年5月;15巻(4号):14〜7頁)]、ドットブロッティング(DNA分析)、または本明細書において提供される配列に基づいて、適切に標識されたプローブを使用するインサイツハイブリダイゼーションなどの、当技術分野において公知の方法に従って決定されてもよい。
【0213】
したがって、本発明はまた、試料における、本発明の核酸分子の存在の検出のためのアッセイであって、該方法は、
(a)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で核酸配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと試料を接触させる工程および
(b)試料におけるハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する工程を含むアッセイをも提供する。
【0214】
一実施形態において、核酸分子は、配列番号18またはその変異体もしくは断片である。
【0215】
一実施形態において、ハイブリダイゼーションプローブは、標識プローブである。標識の例は、蛍光標識、化学発光標識、放射性酵素標識、およびビオチン−アビジン標識を含む。標識プローブの標識および可視化は、上記のものなどの公知の技術の方法に従って実行される。
【0216】
便宜上、核酸プローブは、樹脂(ポリアクリルアミドなど)、炭水化物(セファロースなど)、プラスチック(ポリカーボネートなど)、およびラテックスビーズを含むが、これらに限定されない固体支持体上に固定されてもよい。
【0217】
上記に論じられるように、核酸分子プローブは、好ましくは、RNA、cDNA、またはDNA分子であってもよい。一実施形態において、プローブは、配列番号18であるかまたは配列番号18を含む。
【0218】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、上記に論じられるとおりである。
【0219】
核酸マーカーの発現レベルは、RT−PCRおよびSDS−PAGEを含む電気泳動技術などの、公知技術の技法を使用して決定されてもよい。これらの技法を使用して、本発明の核酸分子のDNA配列またはcDNA配列は、対象試料において増幅され、DNAもしくはcDNAまたはRNAのレベルが測定される。
【0220】
代替方法において、DNA、cDNA、またはRNAのレベルは、増幅を伴わないで試料において直接測定されてもよい。
【0221】
一実施形態において、方法は、ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析である。ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析における使用のためのプローブは、本明細書において同定されるGRN−SPバイオマーカー配列に基づいて調製されてもよい。一実施形態において、プローブは、対照標準配列の少なくとも10、少なくとも12、15、18、21、24、27、30、36、42、51、60、63、66、もしくは69またはそれを超える隣接するヌクレオチドを含む。
【0222】
その代わりに、発現レベルは、核酸配列に特異的なプライマーを使用して、逆転写ベースのPCR(RT−PCR)アッセイを使用して測定されてもよい。望ましい場合、試料におけるGRN−SPバイオマーカーポリヌクレオチドのレベルの比較は、コントロール核酸分子に関してなすことができ、この発現は、測定されているパラメーターまたは条件に非依存性である。コントロール核酸分子は、レベルが障害または移植拒絶状態と健康な状態との間で異ならない分子を指す。コントロール分子のレベルは、比較集団におけるレベルを標準化するために使用することができる。そのようなコントロール分子の例は、GAP−DHである。本発明のGRN−SPバイオマーカーポリヌクレオチドは、生物学的事象または障害で、レベルを変化させる。
【0223】
ペプチドアッセイ
一実施形態において、測定工程は、GRN−SPバイオマーカーと、GRN−SPまたはその断片もしくは変異体に結合する(選択的にまたは特異的に結合することを含む)結合剤との間の結合を検出する工程を含む。測定におけるプレ工程として、GRN−SPバイオマーカーポリペプチドは、GRN−SPまたはその断片もしくは変異体に結合する結合剤と結合されてもよい。
【0224】
したがって、一実施形態において、本発明は、生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーについてのアッセイであって、任意の公知の方法を使用して、試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを検出し、測定する工程を含むアッセイを提供する。
【0225】
一実施形態において、生物学的試料は、ACD、心臓移植拒絶、もしくはACD/肺障害の発症から6時間以内にもしくは4時間以内にまたはACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の臨床提示の6時間以内にもしくは4時間以内に、対象から得られる。
【0226】
一実施形態において、本発明は、GRN−SPバイオマーカーについてのアッセイであって、
(a)生物学的試料からの1つまたは複数のGRN−SPバイオマーカーポリペプチドを結合させる工程および
(b)結合したGRN−SPバイオマーカーポリペプチドのレベルを測定する工程を含むアッセイを提供する。
【0227】
一実施形態において、GRN−SPバイオマーカーポリペプチドは、グループGRN−SP 1〜9(配列番号17)またはその変異体もしくは断片から選択される。1つの実施形態において、1つを超えるタイプのGRN−SPポリペプチド、たとえばGRN−SP 1〜9、およびGRN−SP 1〜23が、アッセイにおいて結合されてもよいことが十分に理解されるであろう。
【0228】
一実施形態において、GRN−SPバイオマーカーポリペプチドは、結合剤を使用して結合される。結合剤は、選択的(特異的)結合剤であり得る。すなわち、それは、生物学的事象の他のマーカー、特にグレリンと低い交差反応性を有する。一実施形態における結合剤は、抗体またはその抗原結合断片である。抗体が、アッセイにおいて使用される場合、抗体は、N末端またはC末端を含む、GRN−SPバイオマーカーの任意の抗原性部分に対して産生されてもよい。一実施形態において、抗体は、GRN−SP (1〜23)配列番号15、GRN−SP(1〜9)配列番号17または本発明のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列またはその変異体もしくは断片に対して産生される。
【0229】
本発明はまた、そのような結合剤、抗体、および抗体の抗原結合断片ならびにそれらの使用に関する。使用は、アッセイにおいてまたはアッセイの製造において、GRN−SPについての予後ツール、診断ツール、またはモニターツールを含む。アッセイまたはツールは、グルコース処理障害、糖尿病、およびACDを含む、対象における生物学的事象または障害をモニターするために使用されてもよい。
【0230】
抗体は、単離形態または精製形態であってもよい。GRN−SPまたはその断片もしくは変異体に結合する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、一本鎖抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、および遺伝的組換えによって生産されるキメラ抗体のすべてのクラスを含む任意の形態であってもよい。マウス、ラットまたはウサギなどの動物を、GRN−SPまたはその断片もしくは変異体で免疫することによって得られる抗血清も含まれる。抗体は、GRN−SP断片のグループにおける共通のGRN−SP配列にまたは特異的なGRN−SP断片にまたはGRN−SP断片のセットに結合してもよい。
【0231】
抗体の断片または修飾抗体もまた、それが、GRN−SPまたはその断片もしくは変異体に結合する限り、本明細書において使用されてもよい。抗原結合断片は、Fab、F(ab’)、F(ab’)、Fc、またはFv断片もしくはH鎖およびL鎖からのFv断片が、適切なリンカーによってライゲーションされる一本鎖Fv(scFv)であってもよい(Hustonら Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:5879〜83頁(1988年))。抗体の「Fc」部分は、1つまたは複数の重鎖定常領域ドメイン;CH1、CH2、およびCH3を含むが重鎖可変領域を含まない免疫グロブリン重鎖の部分を指す。
【0232】
抗体の「Fv」部分は、完全抗原認識部位および抗原結合性部位を含有する最小の抗体断片である。領域は、密接な非共有結合の1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体から成る。
【0233】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CHI)を含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む、CHIドメインのFabカルボキシ末端に追加された少数の残基を有する。F(ab’)断片は、分離された、Fab’断片の間にシステインヒンジを有する、Fab’断片の対を表す。F(ab’)断片は、2つの抗原結合性部位を有する。Fab断片は、抗体のパパイン消化によって生産され得る。
【0234】
抗体および断片の議論については、たとえば、PNAS USA 81巻:6851〜6855頁(1984年)、Protein Eng 8巻(10号)1057〜1062頁(1995年);The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、Springer-verlag 1994年、RosenburgおよびMoore編;PNAS USA 90巻:6444〜6448頁(1993年);Nature 321巻:522〜525頁(1986年);Nature 332巻:323〜329頁(1988年)、ならびにWO2005/003154を参照されたい。
【0235】
抗体を調製し、抗体を検出し、改変し、単離するための方法は、当技術分野において周知である(たとえばMaintaining and using Antibodies: A Practical Handbook、Howard, Gら、CRC Press 2006年;Protein-protein Interactions: A Molecular Cloning Manual、Golemis E(編)、CSHL Press、2002年;HarlowおよびLane(1998年、11 Milstein18、Suresh19、およびBrennan20)参照。一実施形態において、使用される抗体は、適した宿主哺乳動物を免疫することによって生産される。GRN−SPを含む融合タンパク質もまた、免疫原として使用されてもよい。
【0236】
抗体は、本明細書において論じられるポリエチレングリコール(PEG)、ビオチン、ストレプトアビジン、ならびに化学発光標識、蛍光標識、熱量測定標識、および放射性免疫測定標識などの様々な分子との抱合によって改変されてもよい。改変抗体は、抗体を化学的に改変することによって得ることができる。これらの改変方法は、本分野において従来のものである。
【0237】
その代わりに、抗体は、非ヒト抗体に由来する可変領域およびヒト抗体に由来する定常領域の間のキメラ抗体として得ることができるかまたは非ヒト抗体に由来する相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域、(FR)、および定常領域を含むヒト化抗体として得られてもよい。そのような抗体は、公知技術の方法を使用して調製することができる16、17、22
【0238】
手短に言えば、ポリクローナル抗体を調製するための方法は、当業者に公知である。ポリクローナル抗体は、たとえば、免疫剤および望ましい場合、アジュバントの1回または複数回の注射によって、哺乳動物において産生させることができる。典型的に、免疫剤および/またはアジュバントは、複数回の皮下注射または腹腔内注射によって哺乳動物に注射される。免疫剤は、GRN−SPまたはその断片もしくは変異体またはその融合タンパク質を含んでいてもよい。免疫されている哺乳動物において免疫原性であることが公知のタンパク質に免疫剤を結合させることは有用である可能性がある。そのような免疫原性タンパク質の例は、キーホールリンペットヘモシニアン、ウシ血清アルブミン、ウシチログロブリン、およびダイズトリプシン阻害剤を含むが、これらに限定されない。用いられてもよいアジュバントの例は、フロイント完全アジュバントおよびMPL TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。免疫プロトコールは、不必要な実験を伴わないで当業者によって選択されてもよい。
【0239】
モノクローナル抗体は、当技術分野において周知のハイブリドーマ方法を使用して調製されてもよい。たとえばKohlerおよびMilstein、1975年11、米国特許第4,196,265号、米国特許第4,816,567号、およびGolemis(前掲)を参照されたい。ハイブリドーマ細胞は、適した培地において培養されてもよい、その代わりに、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物における腹水としてインビボで成長させてもよい。好ましい不死化細胞系は、マウス骨髄腫系であり、これは、たとえばAmerican Type Culture Collection、Virginia、USAから得ることができる。イムノアッセイは、所望の抗体を分泌する不死化細胞系をスクリーニングするために使用することができる。GRN−SPまたはその断片もしくは変異体の配列は、スクリーニングにおいて使用されてもよい。
【0240】
したがって、GRN−SP特異的モノクローナル抗体を分泌することができる不死化細胞系であるハイブリドーマもまた本明細書において企図される。
【0241】
ハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体の結合特異性を確証するための周知の手段は、免疫沈降、放射結合免疫アッセイ(radiolinked immunoassay)(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、およびウエスタンブロットを含む(Lutzら、Exp. Cell. Res. 175巻:109〜124頁(1988年)、Golemis(前掲)、およびHoward(前掲))。たとえば、モノクローナル抗体の結合親和性は、たとえば、Munsonら、Anal Biochem 107巻:220頁(1980年)において記載されるスキャッチャード分析によって決定することができる。免疫動物からの試料は、ポリクローナル抗体の存在について同様にスクリーニングされてもよい。
【0242】
モノクローナル抗体はまた、組換え宿主細胞から得ることもできる。抗体をコードするDNAは、ハイブリドーマ細胞系から得ることができる。次いで、DNAは、発現ベクターの中に配置され、宿主細胞(たとえばCOS細胞、CHO細胞、E.coli細胞)の中にトランスフェクトされ、抗体は、宿主細胞において生産される。次いで、抗体は、標準的な技術を使用して単離されてもよいしかつ/または精製されてもよい。
【0243】
ファージライブラリーからなどのモノクローナル抗体生産のための他の公知の技術の技術もまた使用されてもよい。たとえばNature 352巻:624〜628頁(1991年)を参照されたい。
【0244】
検出を容易にするために、本明細書における抗体および断片は、蛍光化合物、生物発光化合物、および化学発光化合物ならびに放射性同位体、磁気ビーズ、ならびに親和性標識(たとえばビオチンおよびアビジン)などの検出可能なマーカーを用いて標識されてもよい。結合の間接的な測定を可能にする標識の例は、基質が有色蛍光産物を提供できる酵素を含み、適した酵素は、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびその他同種のものを含む。蛍光色素(たとえばテキサスレッド、フルオレスセイン、フィコビリタンパク質、およびフィコエリトリン)は、蛍光活性化セルソーターと共に使用することができる。標識技術は、当技術分野において周知である。
【0245】
細胞によって分泌されるモノクローナル抗体は、たとえば逆相HPLC、プロテインA−セファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培地または腹水から単離されてもよいしまたは精製されてもよい。たとえばScopes、Protein Purification: Principles and Practice、Springer-Verlag、NY(1982年)を参照されたい。
【0246】
モノクローナル抗体または断片はまた、組換えDNA手段によって生産されてもよい(たとえば米国特許第4,816,567号を参照されたい)。同種のマウス配列の代わりにヒト重鎖定常ドメインおよびヒト軽鎖定常ドメインについてのコード配列を置換する(上記の米国特許第4,816,567号)などのDNA改変もまた可能である。抗体は、一価抗体であってもよい。一価抗体を調製するための方法は、当技術分野において周知である(米国特許第5,334,708号、第5,821,047号、および第7,476,724号)。キメラ(米国特許第4,816,567号)、二価抗体(米国特許第5,843,708号)、および多価抗体の生産もまた、本明細書において企図される(米国特許第6,020,153号)。
【0247】
キメラモノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体(サブ)クラスに属する抗体における対応する配列と同一であるまたは同種である抗体である。鎖の残りは、それらが、必要とされる生物学的活性を呈する限り、他の種に由来するまたは他の抗体(サブ)クラスに属する抗体における対応する配列およびその断片に同一であるまたは同種である。(米国特許第4,816,567号 前掲を参照されたい)。
【0248】
本発明の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含んでいてもよい。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が非ヒト種のCDRからの残基で交換されるヒト免疫グロブリンを含む。ウサギ、ラット、およびマウスなどの非ヒト源からのヒト化抗体の生産は、周知である13、14、15
【0249】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレーライブラリー16およびトランスジェニック方法を含む、当技術分野において公知の様々な技術を使用して生産することができる。たとえばNeuberger 1996年17およびVaughanら、1998年18を参照されたい。
【0250】
二重特異性抗体もまた、有用であり得る。これらの抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体である。GRN−SPまたはその変異体もしくは断片およびプレプログレリン、ANP、ANP−SP、CK−MB、TnT、TnI、BNP、BNP−SP、NT−BNP、ミオグロビン、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、H−FABP、虚血修飾アルブミン、エンドセリン、アドレノメデュリン、レニン、およびアンギオテンシンIIを含む群から選択される抗原。2つを超える特異性を有する抗体、たとえば三重特異性抗体もまた、本明細書において企図される。
【0251】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。たとえばMilsteinおよびCuello 1983年19、Sureshら、1986年20、およびBrennanら、1985年21を参照されたい。
【0252】
抗体が結合するまたは選択的に結合するGRN−SPバイオマーカーは、上記に論じられるGRN−SPまたはその変異体もしくは断片である。
【0253】
一実施形態において、抗体は、GRN−SPのN末端(1〜9)に結合する。結合剤が選択的に結合する特異的な抗原性ペプチドの例は、GRN−SP(1〜9)(配列番号17)を含む。
【0254】
GRN−SPバイオマーカーの結合は、特異的(抗体ベース)および非特異的(HPLC固相など)を含む、当技術分野において公知の任意の手段によって検出することができる。最も一般的に、本明細書における抗体は、上記に述べられるELISAまたはRIAなどのアッセイを使用して検出される。単独のまたはクロマトグラフィーフォーマットなどの非特異的結合剤と組み合わせた競合的結合測定、サンドイッチアッセイ、非競合的アッセイ、蛍光免疫測定、免疫蛍光アッセイ、またはイムノラジオメトリックアッセイ、ルミネセンスアッセイ、ケミルミネセンス(chemiluniescence)アッセイ、および表面増強レーザー脱離イオン化法(SELDI)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FTICR)などのマススペクトロメトリー分析もまた実行可能である。たとえばGolemis, EおよびHoward G.(前掲)を参照されたい。
【0255】
好都合に、抗体は、GRN−SP/抗体複合体の洗浄および単離を容易にするために固体基質に固定することができる。固体支持体への抗体の結合は、公知技術の技法を使用して達成されてもよい。たとえばHandbook of Experimental Immunology、第4版、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1986年)を参照されたい。抗体に有用な固体基質は、ガラス、ナイロン、紙、およびプラスチックを含む。同様に、GRN−SPは、イオン交換、逆相(たとえばC18コーティング)、または他の材料を用いて任意選択でコートされたかまたは誘導体化された吸着性シリカまたは樹脂粒子またはシリコンチップなどの固体基質上に吸着することができる。基質は、ビーズ、プレート、チューブ、スティック、またはバイオチップの形態をしていてもよい。バイオチップの例は、Ciphergen、ProteinChipアレイ(Ciphergen Biosystems(CA、USA))およびPerkin Elmer、USAから入手可能なPackard BioChipを含む。米国特許第6,225,047号および米国特許第6,329,209号を参照されたい。バイオチップは、クロマトグラフィー表面を含んでいてもよい。アドレス指定可能な位置を有するバイオチップまたはプレートおよび別々の(discreet)マイクロタイタープレートは、特に有用である。複数の分析物に向けられる抗体を含有するビーズが、単一の試料における分析物のレベルを測定するために使用される多重システムもまた使用に好ましい。測定されることとなる分析物は、他の心性のマーカーおよびGRN−SPまたはその変異体もしくは断片を含んでいてもよい。本明細書における使用に適した多重ビーズシステムの1つの例は、Luminex Flurokine Multianalyte Profilingシステムである。
【0256】
抗体アッセイ方法は、当技術分野において周知である。たとえば米国特許第5,221,685号、米国特許第5,310,687号、米国特許第5,480,792号、米国特許第5,525,524号、米国特許第5,679,526号、米国特許第5,824,799号、米国特許第5,851,776号、米国特許第5,885,527号、米国特許第5,922,615号、米国特許第5,939,272号、米国特許第5,647,124号、米国特許第5,985,579号、米国特許第6,019,944号、米国特許第6113,855号、米国特許第6,143,576号ならびに非標識アッセイについては、米国特許第5,955,377号および米国特許第5,631,171号を参照されたい。アッセイフォーマットおよび条件の記載についてはZola、Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques 147〜158頁(CRC Press, Inc 1987年)、HarlowおよびLane(1998年)Antibodies, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Publications、New York、ならびにUS 2005/0064511も参照されたい。上記の参考文献はすべて、それらの全体が参照によって本明細書において組み込まれる。
【0257】
イムノアッセイ分析機器もまた、周知であり、十分に記載されるものの中でもBeckman Accessシステム、Abbott AxSymシステム、Roche ElecSysシステム、およびDade Behring Statusシステムが挙げられる22
【0258】
GRN−SPバイオマーカーおよび抗体の結合による複合体の形成を、直接または間接的に検出することができる。直接的な検出は、蛍光、ルミネセンス、放射性核種、金属、染料、およびその他同種のものなどの標識を使用して実行される。間接的な検出は、ジゴキシンなどの検出可能な標識またはホースラディシュペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどの酵素を結合させて標識抗体を形成し、その後の工程で、検出試薬の添加により標識を検出することが含まれる。
【0259】
ホースラディシュペルオキシダーゼは、たとえば、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(OPD)およびペルオキシドなどの基質とインキュベートすることによって吸光度を測定することができる有色産物を生成することができるか、またはルミノールおよびペルオキシドとインキュベートすることによって当技術分野において公知なルミノメーターにおいて測定することができる化学発光の光を生じさせることができる。ビオチンまたはジゴキシンは、それらに強く結合する結合剤と反応させることができる。たとえば、タンパク質アビジンおよびストレプトアビジンは、ビオチンに強く結合する。次いで、さらなる測定可能な標識は、タンパク質との直接反応によってもしくはMCSおよびカルボジイミドなどの一般的に使用可能な架橋剤の使用を通してもしくはキレート剤の追加によってのいずれかでそれに共有結合させるかまたはそれに連結させる。
【0260】
一般的に、複合体は、たとえば遠心分離によって複合体を形成していない試薬から分離される。抗体が標識される場合、複合体の量は、検出される標識の量によって反映される。その代わりに、GRN−SPバイオマーカーは、抗体に結合させることによって標識されてもよく、抗体標識GRN−SPバイオマーカーが、非標識GRN−SPバイオマーカーを含有する生物学的試料とインキュベートされる場合に、結合した標識GRN−SPバイオマーカーにおける低下を測定することによる競合的アッセイにおいて検出されてもよい。他のイムノアッセイ、たとえばサンドイッチアッセイが、使用されてもよい。
【0261】
一実施形態において、通常一晩の18〜25時間、4℃での、または1〜2〜4時間、25℃〜40℃での抗体との接触後に、結合剤(抗体)に結合した標識GRN−SPバイオマーカーは、非結合の標識GRN−SPバイオマーカーから分離される。液相アッセイにおいて、分離は、セルロースまたは磁気物質などの固相粒子に結合した抗ガンマグロブリン抗体(二次抗体)の添加によって達成されてもよい。二次抗体は、一次抗体に使用される種と異なる種において産生され、一次抗体に結合する。そのため、一次抗体はすべて、二次抗体を介して固相に結合する。この複合体は、遠心分離または磁気引力によって溶液から取り出され、結合した標識ペプチドは、それに結合した標識を使用して測定される。遊離標識から結合した標識を分離するための他の選択肢は、溶液から沈殿する免疫複合体の形成、ポリエチレングリコールによる抗体の沈殿または遊離標識ペプチドの木炭への結合、およびろ過液の遠心分離による溶液からの取り出しを含む。分離した結合相または遊離相における標識は、上記に示されるものなどの適切な方法によって測定される。
【0262】
競合的結合測定はまた、固相アッセイとして構成することもでき、これらは、実行するのに、より容易であり、そのため、上記のものに好ましい。このタイプのアッセイは、ウェルを有するプレート(ELISAプレートもしくはイムノアッセイプレートとして一般的に公知)、固体ビーズ、またはチューブの表面を使用する。一次抗体は、プレート、ビーズ、もしくはチューブの表面に吸着させるかまたは共有結合させるかまたはプレートに吸着されるもしくは共有結合させた二次抗ガンマグロブリンもしくは二次抗Fc領域抗体を通して間接的に結合する。試料および標識ペプチド(上記)は、共にまたは連続的にプレートに添加され、試料中のGRN−SPと標識ペプチドとの間の抗体結合についての競合を可能にする条件下でインキュベートされる。非結合標識ペプチドは、引き続いて、吸引除去することができ、プレートをすすぎ、プレートに付着した抗体結合標識ペプチドを残す。次いで、標識ペプチドは、上記に記載される技術を使用して測定することができる。
【0263】
サンドイッチタイプアッセイは、より高い特異性、より速い速度、およびより広い測定範囲を有する。このタイプのアッセイにおいて、GRN−SPバイオマーカーに対する過剰な一次抗体は、固相競合結合アッセイについて上記に記載されるように、吸着、共有結合、または抗Fc抗体もしくは抗ガンマグロブリン抗体を介して、ELISAプレートのウェル、ビーズ、またはチューブに結合させる。試料液体または抽出物は、固相に結合した抗体と接触させられる。抗体が過剰にあるので、この結合反応は、通常、迅速である。GRN−SPバイオマーカーに対する二次抗体もまたは、一次抗体と同時にまたは連続的に試料とインキュベートされる。この二次抗体は、一次抗体の結合部位とは異なるGRN−SPバイオマーカー上の部位に結合するように選ばれる。これらの2つの抗体反応は、2つの抗体の間でサンドイッチにされた試料由来のGRN−SPバイオマーカーのサンドイッチをもたらす。二次抗体は、競合的結合測定について上記に詳述されるように、容易に測定可能な化合物を用いて通常標識される。その代わりに、二次抗体に特異的に結合する標識三次抗体が、試料と接触させられてもよい。非結合物質を洗い流した後に、結合した標識抗体は、競合的結合測定について概説される方法によって測定し、定量することができる。
【0264】
ディップスティックタイプアッセイもまた、使用されてもよい。これらのアッセイは、当技術分野において周知である。それらは、たとえば、特異的な抗体が結合した、金粒子または有色ラテックス粒子などの小さな粒子を用いる。測定されることとなる液体試料を、粒子を用いて前負荷された(preloaded)膜または紙のストリップの一方の末端に添加し、ストリップに沿って移動させてもよい。粒子への試料中の抗原の結合は、さらにストリップに沿って、抗原または抗体などの、粒子に対する結合剤を含有するトラッピング部位に結合する粒子の能力を修飾する。これらの部位での有色粒子の蓄積は、色の発生をもたらし、これは、試料における競合抗原の濃度に依存する。他のディップスティック法は、試料における抗原をトラップするために、紙または膜のストリップに共有結合される抗体を用いてもよい。ホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素に結合した二次抗体を用いて基質とのインキュベーションを行う続く反応により、色、蛍光、または化学発光の光出力がもたらされ、試料における抗原の定量を可能にする。
【0265】
以下の実施例において論じられるように、一実施形態において、ラジオイムノアッセイ(RIA)は、使用される実験室技術である。あるRIAにおいて、放射標識抗原および非標識抗原は、抗体との競合的結合において用いられる。共通の放射標識物は、125I、131I、H、および14Cを含む。
【0266】
特異的な抗体および放射標識抗体結合タンパク質と共にGRN−SPバイオマーカーの沈殿を伴うラジオイムノアッセイは、試料におけるGRN−SPバイオマーカーの量に比例する、沈殿物における標識抗体の量を測定することができる。その代わりに、標識GRN−SPバイオマーカーが、生産され、非標識抗体結合タンパク質が使用される。次いで、試験されることとなる生物学的試料が、添加される。標識GRN−SPバイオマーカーからのカウントの減少は、試料におけるGRN−SPバイオマーカーの量に比例する。
【0267】
RIAにおいて、遊離GRN−SPバイオマーカーから結合したGRN−SPバイオマーカーを分離することもまた実行可能である。これは、二次抗体によるGRN−SPバイオマーカー/抗体複合体を沈殿させることを含んでいてもよい。たとえば、GRN−SPバイオマーカー/抗体複合体がウサギ抗体を含有する場合、次いで、ロバ抗ウサギ抗体を用いて、複合体を沈殿させ、標識の量を計数する。たとえばLKB、Gammamasterカウンターにおいて。Huntら22を参照されたい。
【0268】
本発明の方法は、GRN−SPバイオマーカーではない、グルコース処理障害、糖尿病、腎臓疾患、心血管疾患、ACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の1つまたは複数の他のマーカーのレベルを測定する工程をさらに含む。他の1つまたは複数のマーカーのレベルは、コントロール集団からの平均コントロールレベルと比較することができる。平均コントロールレベルからの測定レベルにおける偏差は、グルコース処理障害、糖尿病もしくはそれに対する素因、心血管疾患、ACD、または心臓移植拒絶を予測するものまたは診断するものである。
【0269】
本発明の方法は、グルコース処理障害または糖尿病を示す、GRN−SPバイオマーカーレベルにおける異なる、外れた、もしくはより低いレベルまたは減少、およびACDまたは心臓移植拒絶を示すGRN−SPバイオマーカーレベルにおけるより高いレベルまたは増加に関して記載された。いくつかの事象または障害において、GRN−SPバイオマーカーのレベルが、事象または障害の代謝効果に依存して、低下するもしくはより低くなるまたは上昇するもしくはより高くなるということもまた可能性がある。コントロールレベル以上のまたは以下の偏差の測定もまた企図される。
【0270】
ACDおよび心臓移植拒絶について本明細書において特に有用である他のマーカーは、トロポニン、トロポニンT、トロポニンI、クレアチン(creatin)キナーゼMB、ミオグロビン、BNP、NT−BNP、BNP−SP、BNP−SP断片、ANP、ANP−SP、ANP−SP断片、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、H−FABP、エンドセリン、アドレノメデュリン、虚血修飾アルブミン、レニン、およびアンギオテンシンIIを含む。これらのマーカーはすべて、心性の機能障害または疾患に関係する。糖尿病およびグルコース処理障害については、他のマーカーは、インスリン、ラクテート、グルコース、脂肪酸、およびトリグリセリドまたはそれについてのマーカーを含む。そのようなマーカーについてのアッセイは、周知であり、当技術分野において使用される。たとえば、様々なそのようなアッセイは、Vogel, H、(2007年)Drug Discovery and Evaluation: Pharmacological Assays 第3版 Springer pp. Ed.: 3、2071頁によっておよびRungeら(2006年)Principles of Molecular medicine 第2版 Springer、1268頁によって記載されるように、臨床実践場面においてルーチン的に使用される。そのようなアッセイを実行するためのキットおよび試薬は、いくつかのサプライヤーから市販されており、QuantiChrom(商標)ならびにEnzyChrome(商標)グルコース、脂肪酸、およびトリグリセリドアッセイ(BioAssay Systems、California、USA)、ならびにグルコース、トリグリセリド、および遊離脂肪酸アッセイキット(BioVision、California、USA)を含む。
【0271】
GRN−SPバイオマーカーのレベルが他のマーカーと相互に関連すると、GRN−SPバイオマーカーの予測価、診断値、またはモニター値を増加させ得る。ACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の場合には、公知の心性のマーカーとGRN−SPバイオマーカーレベルを組み合わせると、患者の結果の予測価または診断値を増加させ得る。
【0272】
いくつかのペプチドマーカーの分析は、単一の試験試料を使用して、同時にまたは単独で実行することができる。同時の、2部位または多部位のフォーマットアッセイが、好ましい。多重ビーズ、マイクロアレイ(microassay)、またはバイオチップのシステムは、特に有用である。ビーズ、アレイ(assay)、またはチップは、GRN−SPおよびGRN−SP断片を含む1つまたは複数のマーカーに対する抗体を含む、多くの、別々の、多くの場合アドレス指定可能な位置を有することができる。1つまたは複数のマーカーは、1つを超えるGRN−SPバイオマーカーを含む。たとえば、N末端およびC末端のGRN−SPバイオマーカー断片をアッセイし、アッセイ結果を組み合わせることは有用であり得る。多くの他のそのようなマーカーの組み合わせが、実行可能である。US2005/0064511、米国特許第6,019,944号、およびNgおよびIlang, J. Cell Mol. Med., 6巻:329〜340頁(2002年)は、本発明において有用なマイクロアレイ、チップ、キャピラリーデバイス、および技術の記載を提供する。Luminexは、本発明において有用な多重ビーズシステムを提供する。The Protein Protocols Handbook、前掲もまた参照されたい。個別または系列のアッセイでの使用に適した実験室分析機器は、AxSym(Abbott、USA)、ElecSys(Roche)、Access(Beckman)、ADVIA CENTAUR(登録商標)(Bayer)、およびNichols Advantage(登録商標)(Nichols Institute)イムノアッセイシステムを含む。
【0273】
一実施形態において、複数のポリペプチドの同時のアッセイは、チップまたはアレイなどの単一の表面上で実行される。
【0274】
他の実施形態において、1つまたは複数の非GRN−SPマーカーの個別のアッセイは、実行され、結果は、GRN−SPバイオマーカー結果と照合されるまたは組み合わせられる。
【0275】
対象が、モニターされることになっている場合、多くの生物学的試料は、ある期間にわたって採取されてもよい。連続的な試料採取は、ある期間にわたって測定されることとなるマーカーレベル、特にGRN−SPバイオマーカーにおける変化を可能にする。試料採取は、事象のおよその発症時間、事象の重症度についての情報を提供することができ、どの治療レジメンが、適切であり得るかを示すことができ、用いられる治療レジメンに対する応答、または長期予後を示すことができる。分析は、救急車および診療所において、臨床提示において、入院の間に、外来患者において、またはルーチン的な健康スクリーニング(health screening)の間になど、医療の時点で実行されてもよい。
【0276】
本発明の方法はまた、これらに限定されないが、年齢、体重、身体活動性のレベル、性別、ならびに肥満症、糖尿病、グルコース処理障害、および心性の事象などの事象の家族歴などの1つまたは複数の危険因子の分析と関連して実行されてもよい。試験結果はまた、本発明の方法と関連して使用することができる。たとえばグルコース負荷試験、ECG結果、および臨床検査。GRN−SPの循環レベルにおける統計的に有意な変化は、1つまたは複数のさらなる危険因子または試験結果と共に、より正確に対象の状態を診断する、その予後を判定する、またはモニターするために使用されてもよい。
【0277】
本明細書における方法はまた、療法の指標として使用することもできる。たとえば、どの療法を開始すべきか、いつ療法のモニタリング、療法の正の影響または有害な影響の検出(たとえば有糸分裂阻害薬の心臓毒性、インスリン、グルコース処理、トリグリセリドおよび脂肪酸濃度)を開始するか、治療レジメンの調節が必要かどうか、ならびにいつ必要かは結果に依存する。これは、患者についての短期の、中期の、および長期の結果を改善し得る。治療の指標については、Troughtonらを参照されたい
【0278】
急性心障害
出願人らは、GRN−SPバイオマーカーの濃度が急性心障害と相互に関連することを示した(図6)。さらに、GRN−SPバイオマーカーレベルは、疑わしい急性心筋梗塞(AMI)または心臓発作の症状を示す患者の場合には、臨床提示に際して最も高い。(心臓筋肉または心筋層において瘢痕を残す心臓発作)によって引き起こされる急性心障害、特に急性心性虚血冠動脈疾患の症状を示す患者は、続く心筋梗塞(MI)を経験するまたは経験しない可能性がある。MIを経験しないグループは、現在の臨床的技術およびマーカーを使用して、容易に診断することができない。本出願人らは、それゆえ、MIと関連する心筋損傷についての有用な早期で特異的なマーカーを提供した。これは、有害事象(AE)による心筋損傷の早期診断を可能にし得、医師が、他の急性冠動脈症候群とおよび胸痛の他の原因とそのような症例を区別することを可能にし得る。たとえば狭心症、胃腸疾患、肺/胸膜障害、およびその他同種のもの。これは、ミオグロビン、CK−MB、TnT、およびTnIなどの現在の心性のバイオマーカーのレベルの上昇についての、6時間〜12時間の現在経験する待ち時間のウインドウを有意に短くする。そのため、より的確な診断および治療は、より早期に達成し、罹患率および死亡率を低下させ、より良好な予後の結果を示すことができる。
【0279】
他の実施形態において、本発明は、心性の患者における再灌流治療をモニターする際の適用を有する。再灌流治療は、一般的に、経皮的冠状動脈インターベンション(たとえば血管形成術)および/または薬理学的治療を含む。血管再生のための血栓溶解薬は、薬理学的治療において一般的に用いられる。補助的療法は、抗凝固療法および抗血小板療法を含む。再灌流治療は、診断の後にできるだけ早く用いられた場合、最も有効となる。診断を加速するためのGRN−SP試験は、再灌流治療の即座の導入を可能にする。治療の有効性もまた、繰り返し試験によってモニターすることができ、療法は、適切なように調節することができる。再灌流治療の包括的な議論については、本明細書におけるBraunwaldらを参照されたい
【0280】
心疾患
本発明の方法はまた、対象における心疾患を診断するまたは予測するのに有用となり得る。
【0281】
心臓移植拒絶
本発明はまた、GRN−SPバイオマーカー測定を使用する、移植の間のおよびその後の、心臓移植、一般的に心性の同種移植片移植、通常の組織バイオプシーを通しての拒絶をモニターする際の適用を有する。コントロールレベルと比較した、心臓移植の約6、4、または2時間以内に測定されたGRN−SPバイオマーカーレベルの増加は、拒絶エピソードを予測するまたは診断するものであり得る。
【0282】
本発明はまた、生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーについてのアッセイをも提供する。一実施形態において、試料は、ACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の発症から約6、4、もしくは2時間以内にまたはACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の臨床提示の約6、4、もしくは2時間以内に対象から得られる。アッセイは、任意の公知の方法を使用する、試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを検出する工程および測定する工程を含む。一実施形態において、アッセイは、インビトロアッセイである。そのような方法は、上記に論じられる公知のアッセイ技術のすべておよびこれらに限定されないが、ゲル電気泳動技術、ウエスタンブロット、気相分光法、原子間力顕微鏡、表面プラズモン共鳴、質量分析を含む23
【0283】
一実施形態において、アッセイは、本発明の1つまたは複数のGRN−SPバイオマーカー核酸配列に結合する1つまたは複数の核酸配列を含む。広い範囲のセンスおよびアンチセンスのプローブおよびプライマーは、本明細書における核酸配列から設計することができる。GRN−SPバイオマーカー配列の発現レベルは、上記に論じられる公知技術の技法を使用して同定される。アレイは、固体基質、たとえば米国特許第5,744,305号において記載される「チップ」またはニトロセルロース膜とすることができる。有用なアレイの議論については、たとえばMicroarray Technology and its Application、Muller, Uら、Springer 2005年およびGene Expression Profiling by Microarrays: Clinical Implications、Hofmann, W-K; Cambridge University Press 2006年を参照されたい。
【0284】
本明細書におけるGRN−SPバイオマーカーによって発現されるタンパク質はまた、アッセイにおいて使用されてもよく、結果は、正常なコントロール試料において発現される同じタンパク質の発現レベルと比較されてもよい。タンパク質の存在および量は、当技術分野において公知であり、本明細書において議論されるアッセイフォーマットを使用して評価できる。
【0285】
GRN−SPバイオマーカーの存在は、好ましくは、GRN−SPバイオマーカーを、本発明の抗体を含む、抗体などの結合剤に結合させ、結合したGRN−SPバイオマーカーの量の存在を測定することによって試料において検出される。
【0286】
上記に述べられるように、その変異体および断片を含むGRN−SPに結合するまたは選択的に結合する抗体は、本発明のさらなる態様を形成し、抗体は、上記に論じられる技術によって調製されてもよい。抗体は、本発明の方法およびアッセイにおいて有用である。
【0287】
さらなる態様において、本発明は、グルコース処理障害、糖尿病、心血管疾患、急性心障害ACD(心臓移植拒絶を含む)、またはACD/肺障害を含む、対象における生物学的事象もしくは障害を予測する、診断する、評価する、またはモニターするためのキットであって、本発明の抗体もしくは抗原結合断片を含むGRN−SPバイオマーカー結合剤(または複数のGRN−SPバイオマーカーについての結合剤)を含むキットを提供する。キットが、ACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を診断する際の使用のためのものである場合、生物学的試料は、一実施形態において、たとえば、ACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の発症の約6、4、または2時間以内にまたはACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の臨床提示の6、4、または2時間以内に対象から得られる。
【0288】
本発明はまた、急性心障害(ACD)、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を予測する、評価する、診断する、またはモニターするためのキットであって、本発明の結合剤を含み、該キットは、約0.1〜約500pmol/L、約1〜約300pmol/L、約10〜約250pmol/L、または約20〜約150pmol/Lの範囲におけるGRN−SPレベルを測定するために較正されるキットを提供する。
【0289】
アッセイの較正は、たとえば、公知のレベルのGRN−SPバイオマーカーを有する血液試料またはそれぞれ異なる公知のレベルのGRN−SPを用いる較正のセットを使用して、公知技術の技法に従って達成することができる。診断キットにおける使用のための試験ストリップは、製造の間に一般的に較正される。たとえば米国特許第6,780,645号を参照されたい。キットは、生物学的試料におけるGRN−SPバイオマーカーのレベルを測定するのに有用である。検出試薬は、GRN−SPに相補的なオリゴヌクレオチド配列またはGRN−SPマーカーの断片またはマーカーによってコードされるポリペプチドに結合する抗体であってもよい。試薬は、上記に論じられるような固体マトリックスまたはそれらをマトリックスに結合させるための試薬と包装される固体マトリックスに結合されてもよい。固体マトリックスまたは基質は、すべて上記に論じられるように、ビーズ、プレート、チューブ、ディップスティック、ストリップ、またはバイオチップの形態をしていてもよい。
【0290】
検出試薬は、洗浄試薬および結合した抗体を検出することができる試薬(標識二次抗体など)または標識抗体と反応することができる試薬を含む。
【0291】
キットはまた、好都合に、コントロール試薬(ポジティブおよび/もしくはネガティブ)ならびに/または核酸、ポリペプチド、もしくは抗体を検出するための手段を含む。ACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害の発症またはACD、心臓移植拒絶、またはACD/肺障害を伴う提示の6、4、または2時間以内に対象から生物学的試料を採取すること、試料におけるGRN−SPのレベルを測定すること、試料におけるGRN−SPのレベルをコントロールレベルと比較すること、および結果を、心性のステータスと関連させることなどの使用についての説明書もまたキットに含まれていてもよい。一般的に、コントロールからのGRN−SPマーカーレベルにおける増加は、肥満症、ACDもしくは心臓移植拒絶または肺障害に対比してのACDを示す。
【0292】
糖尿病の場合には、コントロールよりも高いまたは低いGRN−SPバイオマーカーレベルは、対象の糖尿病の性質および糖尿病の状態(status)に依存して、それがより高いかまたはより低いかどうかにかかわらず、糖尿病または糖尿病に対する素因を示す。
【0293】
最も通常では、キットは、当技術分野において公知のアッセイに対してととのえられ(formatted)そして一実施形態において、当技術分野において公知であるPCR、ノーザンハイブリダイゼーション、またはサザンELISAアッセイに対してととのえられる。
【0294】
キットはまた、ACD、移植拒絶、またはACD/肺障害についてのマーカーについての1つまたは複数のさらなるアッセイを含んでいてもよい。ACSの場合には、さらなるマーカーアッセイは、トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼMB、ミオグロビン、BNP、BNP−SP、BNP−SP断片、ANP、ANP−SP、ANP−SP断片、NT−BNP、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、H−FABP、エンドセリン、アドレノメデュリン、虚血修飾アルブミン、レニンおよびアンギオテンシンIIの1つまたは複数についての1つまたは複数のアッセイを含んでいてもよい。一実施形態において、マーカーはすべて、キットに含まれる。
【0295】
糖尿病の場合には、さらなるキット構成要素は、グルコース、インスリン、ラクテートおよびトリグリセリド、または脂肪酸のレベルまたはそれについてのマーカーを含んでいてもよいマーカーについての測定手段であってもよい。
【0296】
キットは、1つまたは複数の容器からなり、さらに、収集用具、たとえばボトル、バッグ(静脈内液体バッグなど)、バイアル、注射器、および試験管を含んでいてもよい。少なくとも1つの容器は、肥満症、糖尿病、腎臓疾患、心血管疾患、ACD(特にACS)、移植拒絶、またはACD/肺障害などの生物学的事象を予測する、診断する、またはモニターするのに有効である産物を保持する。産物は、通常、核酸分子、ポリペプチド、もしくは結合剤、特に本発明の抗体もしくは抗原結合断片、またはこれらのいずれかを含む組成物である。好ましい実施形態において、容器上のまたは容器と関連する説明書またはラベルは、組成物が、生物学的事象を予測する、診断する、またはモニターするために使用されることを示す。他の構成要素は、針、希釈剤、および緩衝剤を含んでいてもよい。有用に、キットは、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの緩衝剤を含む少なくとも1つの容器を含んでいてもよい。
【0297】
GRN−SPバイオマーカー(および任意選択で非GRN−SPバイオマーカー)に結合するまたは選択的に結合する結合剤は、望ましくは、キットに含まれる。一実施形態において、結合剤は、抗体であり、好ましくは本発明の抗体または抗原結合断片である。アッセイおよびキットにおいて使用される抗体は、一実施形態において、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよく、上記に論じられるように、任意の哺乳動物において調製されてもよい。抗体は、本発明のGRN−SPバイオマーカー核酸配列、GRN−SP(1〜23)、GRN−SP(1〜9)によってコードされるまたは示される天然ペプチドまたは本発明のGRN−SPバイオマーカー核酸配列に基づくもしくは本発明のGRN−SPバイオマーカー核酸配列を含む合成ペプチドに対して調製されてもよく、あるいは本発明のGRN−SPバイオマーカーペプチドをコードする核酸配列に融合される外因性配列に対して産生されてもよい。
【0298】
キットの一実施形態において、GRN−SPバイオマーカー検出試薬は、少なくとも1つのGRN−SPバイオマーカー検出部位を形成するために、多孔性ストリップまたはチップなどの固体マトリックス上に固定される。多孔性ストリップの測定領域または検出領域は、GRN−SPバイオマーカー検出試薬を含有する検出部位などの複数の検出部位を含んでいてもよい。部位は、バー、クロス、ドット、または他の配置で配置されてもよい。試験ストリップまたはチップはまた、ネガティブコントロールおよび/またはポジティブコントロールのための部位を含有していてもよい。コントロール部位は、その代わりに、異なるストリップかチップ上にあってもよい。異なる検出部位は、異なる量の固定核酸または固定抗体、たとえば、第1の検出部位においてより多い量および続く部位においてより低い量を含有していてもよい。試験生物学的試料の添加に際して、検出可能なシグナルを示す部位の数は、試料中に存在するGRN−SPバイオマーカーの量の定量的または半定量的指標を提供する。
【0299】
試料試験を実行するための適切な構成要素(マーカー、抗体、および試薬)を有する使い捨ての試験カートリッジを含む、試料分析のためのデバイスもまたキットに含まれていてもよい。デバイスは、好都合に、試験ゾーンおよび試験結果ウィンドウを含む。免疫クロマトグラフィーカートリッジは、そのようなデバイスの例である。たとえば米国特許第6,399,398号、米国特許第6,235,241号、および米国特許第5,504,013号を参照されたい。
【0300】
その代わりに、デバイスは、測定マーカーのレベルの入力、記憶、ならびにコントロールレベルおよび他のマーカーレベルに対する測定マーカーのレベルの評価を可能にする電子デバイスであってもよい。US2006/0234315は、そのようなデバイスの例を提供する。Ciphergen’s Protein Chip(登録商標)ソフトウェアパッケージを使用してSELDI結果を処理するために使用することができるCiphergen’s Protein Chip(登録商標)もまた本発明において有用である。
【0301】
特許明細書、他の外部文書、または他の情報源について言及がなされる本明細書において、これは、一般的に、本発明の特徴を論じるための背景を提供するためのものである。特に別記しない限り、そのような外部文書への言及は、任意の管轄のそのような文書またはそのような情報源が、先行技術となるまたは当技術分野における共通の一般知識の一部分を形成することを許可するものとして解釈されない。
【0302】
本発明は、ここでは、以下の実施例への参照によって非限定的に例証される。
【実施例】
【0303】
(実施例1)
方法
ヒトプロトコールはすべて、Upper South Regional Ethics Committee of the Ministry of Health、New Zealandによって承認され、ヘルシンキ宣言に合わせて実行した。
【0304】
化学薬品
合成ヒトGRNシグナルペプチドGRN−SP(1〜9)、(配列番号17)は、温和なFmoc固相合成法を使用して、Mimotopes(Australia)によって合成された30。緩衝剤試薬はすべて、BDH(登録商標)(UK)および/またはSigma(Mo、USA)から購入した。GRN−SP(1〜9)は、方向性のキャリヤー結合のためにシステインで伸長させたC末端を用いて合成した。GRN−SP(1〜9)は、さらに、同じペプチド上でのトレーサー調製のためにチロシル残基を用いてC末端で伸長させた。
【0305】
ヒトでの試験
健康なボランティアの対照標準の範囲の試験のために、血液試料を、28人の健康なボランティア(16人の女性、平均年齢50.3±2.5歳(範囲21〜72歳)、BMI 26.0±0.8 kg/m)から一晩の絶食の後に最初に得た。試験は、合計86人のボランティアまで拡張した。試料は、氷上のチューブの中に採取し、5分間、2700gで+4℃で遠心分離し、血漿は、分析するまで−80℃で保管した。
【0306】
試験は、引き続いて、Christchurch Hospitalの冠疾患集中治療室に来る23人のSTEMI患者まで拡張した。一晩の絶食の後に、18ゲージ静脈内カニューレは、血液試料採取のために前腕静脈に挿入した。静脈試料(10ml)は、冠疾患集中治療室に入院する時点で(0時間)、その後、入院患者として00.5、1、2、4、8、12、24、および72時間に採取し、試料は、氷上のチューブの中に入れ、5分間、2700gで+4℃で遠心分離し、血漿は、分析するまで−80℃で保管した。
【0307】
血漿抽出
血漿試料はすべて、先に記載されるように、SepPakカートリッジ(Waters、USA)で抽出し22、乾燥させ、RIAおよびHPLCの前に−20℃で保管した。
ホルモン濃度分析
血漿試料は、標準的なメーカーのプロトコール、Roche Diagnosticsに従って、ルテニウム標識ビオチン化抗体を使用して、Elecsys 2010(Roche、USA)で、不均質イムノアッセイ(heterogeneous immunoassay)を使用して、Tn1、CK−MB、およびミオグロビンについて分析した17
【0308】
GRN−SPは、特異的なRIAによって以下のように測定した。
【0309】
GRN−SP RIA
推定上のヒトGRN−SPバイオマーカーペプチドの測定のために、本発明者らは、ヒトプレプログレリン(1〜23)シグナル配列(配列番号15)のINS−SPアミノ酸1〜9(配列番号17)に対して向けられる、新規なRIAを生み出した。
【0310】
抗体生成
プレプロGRN(1〜9)Cys10を、室温での緩やかな混合によって、PBS(pH7.0)中のマレイミド(malemide)処理N−e−マレイミドカプロイルオキシスクシンイミドエステル(EMCS)誘導体化BSAに結合させた。結合したペプチドは、フロイントアジュバント(2ml)を用いて乳化し、月1回の間隔で4〜5部位にわたり2羽のNew Zealand白色ウサギに皮下注射した(合計2ml)。適当なレベルが達成されるまで、抗体価を評価するために、注射の12日後にウサギから採血した。RIAについては、GRN−SP IRは、1:15,000の最終の希釈度の抗血清を使用して決定した。この抗血清は、ヒトプロBNP(1〜13)、プロBNP(1〜76)、プロANP(1〜30)、インスリン、アンギオテンシンII、アンギオテンシン(1〜7)、ウロテンシンII、CNP、グレリン、C−グレリン(52〜117)、プロCNP(1〜15)、アドレノメデュリン(adrenomedulin)、ウロコルチンI、ウロコルチンII、BNP−SPn(1〜10)、ANP−SPc(16〜25)、ANP−SP(1〜10)、INS−SPn(1〜9)を含む、図7において示されるペプチドおよび薬剤との検出可能な交差反応性を有していなかった。交差反応性は、Klee GG. Interference in hormone immunoassays Clin Lab Bed、2004年、24巻:1〜18頁に従って評価した。
【0311】
ヨウ素化およびアッセイ方法
プレプロGRN(1〜9)Tyr10は、先に記載されるように、クロラミンT法を介してヨウ素化し、逆相HPLC(RP−HPLC)で精製した21。この調製物から、RP−HPLCの後のヨウ素化トレーサー形態を試験した。試料、標準物、放射性トレース、および抗血清溶液はすべて、カリウムベースのアッセイ緩衝液中に希釈した22。アッセイインキュベートは、100μL抗血清と組み合わせた100μL試料または標準物(0〜640pmolヒトプレプロGRN(1〜9)から成り、それをボルテックスし、24時間4℃でインキュベートした。次いで、100μLのトレース(4000〜5000cpm)を追加し、4℃で24時間さらにインキュベートした。遊離免疫反応性(free immunoreactivity)および結合免疫反応性は、固相二次抗体法(ロバ抗ヒツジSac−Cel(登録商標)、IDS Ltd、England)によって最終的に分離し、Gammamasterカウンター(LKB、Uppsala、Sweden)で計数した。
【0312】
統計分析
結果はすべて、平均値±SEMとして示す。時間的経過データは、繰り返しの測定のための二元配置ANOVA、その後に最小有意差の事後試験(post−hoc)を使用して分析した。血漿ホルモン濃度の相関分析は、一般線形回帰モデルを使用して実行した。すべての分析において、P値<0.05は、有意であるとみなした。
【0313】
結果
グレリンの23アミノ酸シグナルペプチドまたはそれに由来する断片が、ヒトの血行路中に存在するかどうかを決定するために、本発明者らは、プレプログレリン(1〜23)の残基1〜9に対して向けられる特異的なラジオイムノアッセイ(RIA)を開発した。血漿抽出物の希釈は、標準曲線との平行性を実証する(示さず)。健康なヒトにおけるGRN−SP(1〜9)の血漿濃度は、31.3±2.4pmol/L(n=28)と最初に決定した。続く、より大規模な試験(n=86)は、42.9±1.5pmol/Lの血漿濃度を示した(図6を参照されたい)。健康なヒトにおいて、血液におけるGRN−SP IRの濃度は、BMIとの有意な相互関係を示さない(図3)。
【0314】
免疫反応性(IR)GRN−SPバイオマーカー(1〜9)ペプチドがヒト血漿中に存在することを確証したので、次いで、本発明者らは、立証されたAMIを有する患者におけるIR GRN−SP(1〜9)の連続的な濃度を測定した(図6)。IR GRN−SPの最も高い濃度は、入院の1〜2時間後に観察され、72時間にわたり安定レベルまで徐々に減少した。重要なことには、平均ピークレベルは、正常な健康なボランティアにおけるレベルよりも2〜3倍高かった(範囲として2〜5倍高い)。ミオグロビンのピーク濃度は、入院の1〜2時間後に生じたが、TnIレベルおよびCK−MBレベルは、入院の8〜12時間後までピークに到達しなかった。
【0315】
好ましくは、IR GRN−SPは、検出される。
【0316】
GRN−SPが、代謝および/またはエネルギーバランスのコントロールにおいて有し得る役割を評価するために、7人の正常で健康なボランティアに、75gの経口グルコースを与えた。図4において見ることができるように、GRN−SP(1〜9)およびグレリン自体の血漿レベルは、それが、エネルギーバランスにおける役割を有することと一致して、グルコースの摂取の後に有意に減少した。
(実施例2)
臨床的に安定した、疑わしいACSを有する8人の患者にカテーテルを挿入し、複数の器官部位から血液試料を採取した:複数の器官部位は、大腿動脈FA(1)およびFA(2)大腿静脈(FV)、腎静脈(RV)、肝静脈(HV)、下大静脈(IVC)、頚静脈(JUG)、心臓冠状静脈洞静脈(CS)、ならびに肺動脈(PA)であった。血液は、冷蔵EDTAチューブの中に収集し、遠心分離によって血漿から調製し、血漿は、GRN−SP RIAにかけた。図1は、GRN−SP(1〜9)濃度の最も高い部位が、CS、心臓に注ぐ静脈、とりわけ心室であることを明らかに示す。これは、心臓が、GRN−SP分泌の主な部位であるという強い証拠である。これと一致して、GRN−SPの冠状静脈洞レベルは、他の公知の心臓ペプチドBNP−SPと強く相互に関連する(図2)。
【0317】
結論
臨床的に安定した患者における循環GRN−SPバイオマーカー濃度は、心性の源に由来する可能性がある。有意な心分泌は、心臓ホルモンであるGRN−SPペプチドおよびサブペプチドと一致している。立証されたAMIに応じた、GRN−SPペプチドおよびサブペプチドの増加は、それらが心疾患のバイオマーカーとしての役割を有するという見解を支持する。さらに、血漿グルコースにおける増加に対するGRN−SPバイオマーカー血漿レベルの応答もまた、それが、エネルギーバランスにおける役割を有しえることを示唆する。
【0318】
考察
この証拠は、プレプログレリンのシグナルペプチドおよびその断片が、患者がACDを提示する2時間以内にまたはACDの発症の2時間以内に血行路および細胞外スペースに存在することを立証する最初のものである。本発明者らは、第1の実例において、血液中のGRN−SP IRの測定が、急性心虚血および/または続く傷害の迅速なバイオマーカーとしての潜在力を有することならびに第2の実例において、その事象の後のGRN−SP IRの測定が、長期予後および長期結果のマーカーとして潜在的な長所を有することを示す。
【0319】
本発明者らはまた、GRN−SPバイオマーカーの血漿における測定が、代謝および/またはエネルギーバランスの活動領域における、とりわけグルコース処理の評価における潜在的な効用を有することを示す。
【0320】
当業者らは、もちろん、上記の記載が、例として提供され、本発明がそれに限定されないことを十分に理解するであろう。
【0321】
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28. Kunkel, Thomas A. Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection. Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 82, pp. 488-492, January 1985.
29. Techniques in Protein Modification By Roger L. Lundblad Edition: 2 Published by CRC Press, 1995 288 pages.
30. Atherton et al. (1989) Solid Phase Synthesis: a practical approach, IRL press.
31. Poykko SM, Kellokoski E, Horkko S, Kauma H, Kesaniemi YA, Ukkola O. Low plasma ghrelin is associated with insulin resistance, hypertension, and the prevalence of type 2 diabetes. Diabetes. 2003 Oct;52(10):2546-53.
本発明は、前述の特定の好ましい実施形態によって限定されない。当業者らは、様々な修飾が、本発明の概念から逸脱することなく、開示される好ましい実施形態に対してなされてもよいことを思いつくであろう。そのような修飾はすべて、本発明の範囲内となることが意図される。
【0322】
本明細書において参照され、言及されるすべての特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、ならびに他の文書および資料は、本発明が属する当技術分野における当業者らの技術のレベルを示し、それぞれのそのような参照される文書および資料は、それが、その全体が参照によって個々に組み込まれるまたはその全体が本明細書において記載されるのと同じ程度まで参照によってこれによって組み込まれる。出願人は、任意のそのような特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報、および他の参照される資料または文書からの任意のおよびすべての資料および情報を本明細書の中に物理的に組み込む権利を保有する。
【0323】
この特許の記載される記載部分は、すべての請求項を含む。さらに、すべての最初の請求項ならびにあらゆるおよびすべての優先権書類からのすべての請求項を含むすべての請求項は、本明細書の記載される記載部分の中にそれらの全体が参照によってこれによって組み込まれ、出願人らは、あらゆるおよびすべてのそのような請求項を記載または本出願の他の部分の中に物理的に組み込むための権利を保有する。したがって、たとえば、いかなる状況においても、請求項の的確な用語が、特許の記載される記載部分においてこれらの用語で記載されていないという主張に対して、本特許が、特許請求の範囲についての記載される記載を提供していないとして解釈されないものとする。
【0324】
本明細書において開示される特徴はすべて、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。したがって、他に明確に述べられない限り、開示されるそれぞれの特徴は、等価なまたは類似する特徴の上位のシリーズの単なる例である。
【0325】
本発明は、その詳細な説明と関連して記載されるが、先の説明は、例証することを意図するものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。したがって、先のものから、本発明の特定の実施形態は、例証の目的で本明細書において記載されたが、様々な修飾は、本発明の精神および範囲から外れることなくなされてもよいことが十分に理解されるであろう。他の態様、利点、および修飾は、以下の特許請求の範囲内にあり、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外は限定されない。
【0326】
本明細書において記載される特定の方法および組成物は、好ましい実施形態を代表するものであり、例示的なものであり、本発明の範囲に対する限定として意図されない。他の目的、態様、および実施形態は、本明細書の考察に際して、当業者らが思いつくであろう、また本特許請求の範囲によって規定されるように本発明の精神内で包含される。置換および修飾の変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書において開示される本発明に対してなされてもよいことが当業者に容易に明白となるであろう。適切に本明細書において例証的に記載される本発明は、本質的なものとして本明細書において明確に開示されない任意の1つまたは複数のエレメントまたは1つまたは複数の限定なしで実施されてもよい。したがって、たとえば、本明細書におけるそれぞれの実例において、本発明の実施形態または実施例において、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」などは、広く、限定なしで解釈される。適切に本明細書において例証的に記載される方法およびプロセスは、異なる順序の工程で実施されてもよく、それらは、本明細書においてまたは特許請求の範囲において示される工程の順序に必ずしも制限されない。
【0327】
用いられた用語および表現は、説明の用語として使用され、限定するものではなく、そのような用語および表現の使用において、示され、記載される特徴の任意の等価物またはその部分を除外する意図はないが、様々な修飾が、請求される本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は、様々な実施形態および/または好ましい実施形態および任意の特徴によって明確に開示されたが、当業者らによって用いられる可能性のある、本明細書において開示される概念のあらゆるおよびすべての修飾および変化は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にあると考えられることが理解されるであろう。
【0328】
本発明は、本明細書において広く属的に記載された。上位の開示の範囲内にあるより狭い種および亜属の群のそれぞれもまた、本発明の一部を形成する。これは、削除された物質が本明細書において明確に記載されるかどうかにかかわらず、属から任意の主題を除く条件または負の限定を伴って、本発明の上位の説明を含む。
【0329】
本明細書において使用されるように、また添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに他に示さない限り、複数の指示を含み、用語「Xおよび/またはY」は、「X」もしくは「Y」または「X」および「Y」の両方を意味し、名詞の後の文字「s」は、その名詞の複数形および単数形の両方を示すこともまた理解されたい。さらに、本発明の特徴または態様が、マーカッシュグループによって記載される場合、本発明は、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーおよびメンバーの任意のサブグループを包含し、それによって、それらによって記載されることが意図され、当業者らによって認識されるであろう、また出願人は、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーの任意のサブグループを明確に指すために、本出願または本特許請求の範囲を修正するための権利を保有する。
【0330】
他の実施形態は、添付の「特許請求の範囲」の範囲内にある。特許は、特におよび/または明確に本明細書において開示される特定の実施例または実施形態または方法に限定されるように解釈されない。いかなる状況においても、特許は、あらゆる審査官または特許庁の他の職員もしくは従業員によってなされるいかなる供述によっても、そのような供述が、明確かつ限定なしにまたは無条件で、出願人によって応答書において明確に採用されない限り、限定されるように解釈されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレリンシグナルペプチド(GRN−SP)結合剤。
【請求項2】
(a)GRN−SP(1〜23)配列番号15、
(b)GRN−SP(1〜9)配列番号17、
(c)配列番号16、または配列番号18から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列または
(d)(a)〜(c)のいずれか1つの変異体もしくは断片に結合する請求項1に記載のGRN−SP結合剤。
【請求項3】
抗GRN−SP抗体またはその抗原結合断片である、請求項1または請求項2に記載のGRN−SP結合剤。
【請求項4】
GRN−SP(1〜9)(配列番号17)に選択的に結合する、請求項2または請求項3に記載の結合剤。
【請求項5】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、もしくはヒト化抗体またはその抗原結合断片である、請求項3または請求項4に記載の結合剤。
【請求項6】
検出可能なマーカーを用いて標識される、請求項1から5のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項7】
GRN−SP断片をコードする単離核酸分子であって、前記核酸は、
(a)配列番号18またはその変異体もしくは断片、
(b)配列番号18に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有する配列、
(c)配列番号18またはその変異体もしくは断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる、長さが少なくとも10ヌクレオチドの配列、
(d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体
から、
前記配列が配列番号16ではないということを条件として、選択される単離核酸分子。
【請求項8】
ベクター、発現構築物、または宿主細胞を含む、請求項7に記載の核酸分子を含む遺伝子構築物。
【請求項9】
(a)GRN−SP(1〜9)(配列番号17)またはその変異体もしくは断片、
(b)配列番号17のポリペプチドに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、および
(c)請求項7に記載の核酸分子によってコードされるGRN−SPポリペプチド
から選択される単離GRN−SPポリペプチド。
【請求項10】
抗GRN−SP抗体の調製における、請求項9に記載のポリペプチドの使用。
【請求項11】
対象からの生物学的試料におけるGRN−SPについてのアッセイであって、任意の公知の方法を使用して、前記試料におけるGRN−SPのレベルを検出し、測定する工程を含むアッセイ。
【請求項12】
GRN−SPのレベルは、GRN−SPに結合するまたは選択的に結合する結合剤へのGRN−SPの結合を通して前記試料において検出される、請求項11に記載のアッセイ。
【請求項13】
(a)生物学的試料からの1つまたは複数のGRN−SPを結合させる工程および
(b)結合したGRN−SPのレベルを測定する工程を含む、GRN−SPについてのアッセイ。
【請求項14】
GRN−SPは、請求項1から6のいずれか一項に記載のGRN−SP結合剤を使用して結合する、請求項12または13に記載のアッセイ。
【請求項15】
前記生物学的試料は、循環性の源からの試料である、請求項11から14のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項16】
GRN−SPのレベルは、SELDI、ESI、MALDI、もしくはFTICRによるものを含めた質量分析を使用して、またはRIA、ELISA、免疫蛍光アッセイ、およびイムノラジオメトリックアッセイから選択されるアッセイを使用して測定される、請求項11から15のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項17】
前記測定は、基質に結合した抗GRN−SP抗体またはその抗原結合断片を含むSELDIプローブを提供する工程、前記抗体または断片が前記試料からの1つまたは複数のGRN−SPを捕捉するように、前記抗体または断片を前記生物学的試料と接触させる工程、および
SELDIを使用して、結合したGRN−SPのレベルを測定する工程を含む、請求項16に記載のアッセイ。
【請求項18】
対象における生物学的事象または障害を予測する、診断する、またはモニターするのに使用されるGRN−SPアッセイ。
【請求項19】
対象における生物学的事象または障害を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、前記事象または障害は、血行路への、GRN−SPの放出と相互に関連し、
(a)前記対象からの生物学的試料におけるGRN−SPのレベルを測定する工程および
(b)前記GRN−SPのレベルを、コントロールからのGRN−SPレベルと比較する工程を含み、
前記コントロールレベルからの、前記測定レベルにおける偏差は、生物学的事象または障害を示す方法。
【請求項20】
対象における糖尿病または糖尿病の可能性を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、
(a)前記対象からの生物学的試料におけるGRN−SPのレベルを測定する工程および
(b)前記GRN−SPのレベルを、コントロールからのGRN−SPレベルと比較する工程を含み、前記コントロールレベルよりも低いGRN−SPの測定レベルは、糖尿病または糖尿病に対する素因を示す方法。
【請求項21】
対象におけるグルコース処理を評価するための方法であって、
(a)グルコースの投与の後に、対象におけるGRN−SPのレベルを測定する工程および
(b)前記GRN−SPの前記レベルを、コントロールからのGRN−SPと比較する工程を含み、
前記コントロールレベルからの、前記GRN−SPの測定レベルにおける偏差は、グルコース処理障害を示す方法。
【請求項22】
対象における急性心障害(ACD)を予測する、診断する、またはモニターするための方法であって、
(a)前記対象からの生物学的試料におけるGRN−SPのレベルを測定する工程および
(b)前記GRN−SPの前記レベルを、コントロールからのGRN−SPレベルと比較する工程を含み、
前記コントロールレベルよりも高いGRN−SPの測定レベルは、ACDを示す方法。
【請求項23】
前記方法は、対象における、急性心障害(ACD)の治療に対する応答を評価するまたはモニターするために使用され、前記コントロールレベルからの前記GRN−SPの測定レベルにおける変化は、前記治療に対する応答を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ACDの発症の最初の6時間、4時間、または2時間以内に、またはACDの臨床提示の最初の6時間、4時間、または2時間以内に、前記対象からの生物学的試料におけるGRN−SPのレベルを測定する工程を含む、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
GRN−SPのレベルは、ACDの発症の最初の6時間、4時間、2時間、1時間、または30分以内に測定されるか、またはACDの臨床提示の最初の6時間、4時間、2時間、1時間、または30分以内に測定される、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
65〜250pmol/L、65〜200pmol/L、70〜150または70〜130pmol/Lの範囲の、前記試料におけるGRN−SPのレベルは、ACDを示す、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記コントロールレベルよりも1.5〜5倍、または2〜3倍高い、前記試料におけるGRN−SPのレベルは、ACDを示す、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記急性心障害は、提示されるECG上でのST上昇を伴う急性心筋梗塞(AMI)、不安定狭心症、急性非ST上昇心筋梗塞;心虚血、急性心外傷、急性薬物中毒に起因する急性心損傷、急性心筋症、または心性の移植拒絶エピソードである、請求項22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記生物学的試料は、血液、血漿、血清、唾液、間質液、尿、または心臓組織試料である、請求項20から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記測定工程は、
(a)GRN−SPを結合剤と結合させる工程および
(b)結合したGRN−SPのレベルを測定する工程を含む、請求項20から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記結合剤は、請求項1から6のいずれか一項に記載の結合剤である、請求項20から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
GRN−SPのレベルは、質量分析(SELDI、ESI、MALDI、またはFTICを含む)、RIA、ELISA、蛍光免疫測定、免疫蛍光アッセイ、およびイムノラジオメトリックアッセイから選択されるアッセイを使用して測定される、請求項20から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ACDの1つまたは複数の非GRN−SPマーカーのレベルを測定する工程および前記レベルを、コントロールからのマーカーレベルと比較する工程をさらに含み、前記コントロールレベルからの前記測定レベルにおける偏差は、GRN−SPの前記コントロールレベルよりも高いGRN−SPの測定レベルと共に、前記ACDを予測するもしくは診断するのに役立つかまたは前記ACDをモニターするために使用することができる、請求項22から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記非GRN−SPマーカーは、トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼ−MB、ミオグロビン、ANP、ANP−SP、BNP、NT−BNP、BNP−SP、LDH、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、H−FABP、虚血修飾アルブミン、エンドセリン、アドレノメデュリン、レニン、およびアンギオテンシンIIから成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
糖尿病の1つまたは複数の非GRN−SPマーカーのレベルを測定する工程および前記レベルを、コントロールからのマーカーレベルと比較する工程をさらに含み、非GRN−SPマーカーの前記コントロールレベルからの前記測定レベルにおける偏差は、GRN−SPの前記コントロールレベルよりも低いGRN−SPの測定レベルと共に、糖尿病を予測するもしくは診断するのに役立つかまたは糖尿病をモニターするために使用することができる、請求項20および請求項20に従属する場合の請求項29から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記非GRN−SPマーカーは、グルコース、インスリン、ラクテート、トリグリセリド(trigycleride)、および脂肪酸またはそれについてのマーカーから成る群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
対象における生物学的事象または障害を評価するためのGRN−SPアッセイの製造のための、GRN−SP結合剤の用途。
【請求項38】
対象における生物学的事象または障害の評価についての予後ツール、診断ツール、またはモニターツールの製造における、GRN−SP結合剤の用途。
【請求項39】
前記生物学的事象または障害は、糖尿病または糖尿病の可能性である、請求項37または38に記載の用途。
【請求項40】
前記生物学的事象または障害は、グルコース処理障害である、請求項37または38に記載の用途。
【請求項41】
前記生物学的事象または障害は、ACDである、請求項37または38に記載の用途。
【請求項42】
前記結合剤は、請求項1から6のいずれか一項に記載の結合剤である、請求項37から41のいずれか一項に記載の用途。
【請求項43】
前記評価、予測、診断、またはモニターは、請求項11から18のいずれか一項に記載のアッセイまたは請求項19から36のいずれか一項に記載の方法を使用して達成される、請求項37から41のいずれか一項に記載の用途。
【請求項44】
生物学的事象または障害を予測する、診断する、またはモニターするためのキットであって、GRN−SP結合剤および任意選択で、対象からの生物学的試料において測定されるGRN−SPレベルから、前記対象における生物学的事象または障害を予測する、診断する、またはモニターするための説明書を含むキット。
【請求項45】
急性心障害(ACD)を予測する、診断する、またはモニターするためのキットであって、GRN−SP結合剤および任意選択で、ACDの発症またはACDの臨床提示の6時間以内または4時間以内に得られる生物学的試料において測定されるGRN−SPレベルから、発症または臨床提示の6時間以内または4時間以内に、対象におけるACDを予測する、診断する、またはモニターするための説明書を含むキット。
【請求項46】
前記GRN−SP結合剤は、請求項1から6のいずれか一項に記載の結合剤である、請求項44または46に記載のキット。
【請求項47】
前記キットは、0.1〜350pmol/L、1〜300pmol/L、または10〜250、または20〜150pmol/Lの範囲におけるGRN−SPレベルを測定するために較正される、請求項44から46のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−516038(P2011−516038A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550628(P2010−550628)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/NZ2009/000032
【国際公開番号】WO2009/113880
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(510244891)オタゴ イノベーション リミテッド (2)
【Fターム(参考)】