バイオ層干渉計を用いた酵素活性の測定
バイオ層干渉計を用いた酵素検定が開示される。固定された基質または基質捕捉フォーマットを用いて検定が行なわれてもよい。特定の実施形態では、この検定は、標識されていない基質を用いて行われる。この方法は、酵素検定測定に広く適用され、in vivoまたはin vitroで行なうことができ、複数の測定を容易に並行して行なうことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素活性を測定するのに有用な干渉計を用いた方法および構成物に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願番号第60/645,153号(2005年1月19日出願)および米国仮出願番号第60/642,454号(2005年1月7日出願)の利益を請求し、これら両方の出願は本明細書中にあらゆる目的のためにその内容全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
酵素は、生化学反応に触媒作用し、多くの治療および産業で適用される多くの種類のタンパク質を表す。酵素製品の一連の開発および製造では、酵素活性の測定が必要であることが多い。単純な酵素活性測定方法、好ましくは標識を使わず酵素/基質相互作用の摂動を妨害しない酵素活性測定方法があれば広く適用できる。治療または産業で適用される酵素または酵素阻害剤に基づく生成物を開発し、製造する際には、プロセス全体にわたって酵素活性をモニタリングすることが重要である。酵素検定は、典型的には、基質に作用する酵素が検出可能なシグナル変化をもたらすような様式で基質を標識する必要がある。標識された酵素基質は市販されていないことが多く、この場合、この酵素基質を合成するのも複雑である場合がある。多くの酵素製品を開発する企業にとって、単純で平易な活性測定方法を研究開発環境下および製造環境下で行なうことは、主要な任務となる。標識された基質が必要な場合、酵素活性測定に時間と、費用とがかかり、不便である。サンプル中に存在する酵素量の定量にも特定の活性測定が必要である。例えば、酵素固定化免疫測定(ELISA)に基づく検定による定量にも特定の活性測定による時間と費用がかかり、サンプルがさらに必要になる。本発明は、単純なファイバに基づくリアルタイム酵素活性検定を提供することにより、従来技術のこれらの欠点およびその他の欠点に対処するものである。この酵素活性検定は、非常に多くのサンプルを並行して処理でき、少量のサンプルに適した特定の活性測定方法を提供可能で、いくつかの実施形態では、標識されていない基質を用いて検定を行なうことができる。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、特許請求の範囲によって定義されるべきであり、この項目の内容は特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。ファイバを用いた干渉計を使用して酵素活性を検定するためのアセンブリ、キット、および方法が開示される。一実施形態では、本検定は、光ファイバを介して光源に結合された光学要素を提供するステップを具備し、この光学要素は、少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面を有する。酵素基質分子の層は、酵素が基質と反応するにつれて、上記近位の反射表面からの反射ビームと上記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置される。上記反射ビームは上記光ファイバ内に結合される(coupled)。上記光学要素を酵素に曝し(exposed)、上記反射ビーム間の干渉の変化を検出する。検出された変化は酵素活性を表す。
【0005】
さらに別の実施形態では、光学要素において上記酵素基質分子の層が検体結合分子の層に置き換えられる。上記近位の反射表面からの反射ビームと上記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉は、酵素が基質と反応するにつれて、そして、反応中の基質またはその一部が検体結合分子に結合するにつれて、変化する。好ましい実施形態では、検体結合分子は、抗体、抗体フラグメント、一本鎖Fv分子(「scFv」)、アビジン、ストレプトアビジン、またはビオチンを含む。
【0006】
別の実施形態では、上記光学要素と検定溶液との間に半透膜が配置される。別の実施形態では、上記基質は支持体(例えば、マイクロタイターウェルまたはビーズ)に接続する。
【0007】
さらに別の実施形態では、上記分子の層を含み、酵素に特異的に結合する類似の第2の要素が提供される。第2の要素は、酵素に曝され(第1の要素が曝されるのと同時または異なる時間に)、反射ビーム間の干渉の変化が検出される。この変化は酵素濃度または酵素量を表す。この方法は特定の活性測定を行なうのに有用である。好ましい実施形態では、酵素結合分子は、抗−酵素抗体、抗−酵素抗体のフラグメント、またはscFv分子を含む。
【0008】
本発明の上記の特徴および他の特徴、局面、および利点は、以下の記載および添付の図面を参照してさらによく理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(利点および有用性)
簡潔に説明すると、以下にさらに詳細に記載されるように、ファイバを使用する干渉計を用いた酵素活性を検定するためのアセンブリ、キット、および方法が記載される。
【0010】
本アプローチのいくつかの特徴を記載しておく。非常に少量のサンプル(例えば数nL)を用いて測定を行なうことができる。in vivoまたはin vitroで測定を行なうことができる。いくつかの実施形態では、標識されていない基質を用いて測定を行なうことができ、他の実施形態では、基質はアセンブリによって捕捉可能な部分を含む。好ましい実施形態では、この部分は結合対の一種であり、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ハプテン、抗体、抗体フラグメント、scFv、またはレクチンであり、光学要素は、これらの対に相補的な構成を含む。これらの実施形態では、同じ種類の光学要素(すなわち、結合対のうち1つ)を、他の結合対を含む基質を用いる広範囲の酵素検定に使用することができる。
【0011】
このアプローチの利点は数多く存在する。本発明がファイバを用いた干渉計による測定を提供するため、酵素量を測定するためのモジュールを含むことにより、感度が高く、非常に多くのサンプルを並行して測定可能で、特定の活性測定に簡単に適用することができる。
【0012】
本発明は、例えば、酵素または酵素阻害剤の発見、改変、最適化、生成などを含む、このような活性測定が有用であるという任意の状況において、酵素活性の測定に有用である。本発明は、任意の種類の酵素、例えば、ヒドロラーゼ、グリコシラーゼ、エステラーゼ、およびトランスフェラーゼ、またはこのような酵素の阻害剤を用いて行なわれてもよい。
【0013】
(定義)
特許請求の範囲および明細書中で使用される用語は、他に特定されない限り、以下に記載されるように定義される。
【0014】
用語「in vivo」は、生体中で起こるプロセスを指す。
【0015】
本明細書中で使用される省略語としては、以下のものが挙げられる。
dsDNA − 二本鎖DNA;
dNTP − デオキシヌクレオチドトリホスフェート類;
B−ATP − ビオチン化−ATP;
PEG − ポリエチレングリコール;
PMSF − フェニルメチルスルホニルフルオリド。
【0016】
本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形をあらわす「a」「an」および「the」は、他の内容を明確に示していない限り、複数形のものも含むことを注記しておかねばならない。
【0017】
(本発明のアセンブリ)
本発明のアセンブリは、バイオ層干渉計に接続し、基質または検体結合分子の層を保持するのに適したバイオセンサチップを含む。検体結合分子は、実施例として用いられるものによって限定されることなく、結合対の1つ、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ハプテン、抗体、抗体フラグメント、scFv、またはレクチンであってもよい。
【0018】
(本発明のキット)
本発明のキットは、バイオ層干渉計に接続するのに適したグラスファイバと、グラスファイバを基質層または検体結合分子層で誘導体化するための試薬および指示とを含み、場合により、グラスファイバの末端を活性化するための試薬および指示と、パッケージングとを含む。
【0019】
(本発明の方法)
概して、本発明の方法は、バイオ層干渉計(BLI)センサを含むアセンブリおよび装置、例えば、共有出願である米国出願番号第10/981,901(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber−Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611US(この内容は参照することにより本明細書中にその全体が組み込まれる)に記載されるものを用いて行なわれる。
【0020】
簡潔にいうと、センサは、グラスファイバの一端を光学的に活性化することによって調製される。活性化ステップは、ファイバ表面をバフ研磨し、Ta2O5で表面をコーティングし、SiO2層でコーティングし、洗浄し受動的吸収によって、酵素基質または結合対の1つを固定化し、および/または共有結合させることを含む。
【0021】
酵素活性を検定するための2つの広範囲で一般的なフォーマットが本発明の範囲に含まれる。第1のフォーマットでは、基質は、バイオ層干渉計(BLI)センサの表面に固定される。第2のフォーマットでは、BLIセンサは、基質に結合可能な分子を有する表面を含む。第2のフォーマットでは、半透性膜が、BLIセンサと検定溶液との間に場合により含まれるか、または基質は、支持体、例えば、マイクロタイターウェルまたはビーズに結合される。これらの実施形態は、ヒドロラーゼを用いて基質の全長をBLIセンサに結合させないか、または結合を遅らせるために特に有用である。第2のフォーマットでは、酵素活性に関する情報は、干渉シグナルの動的状態にある成分および静的状態にある成分の両方から誘導することができる。
【0022】
バイオ層干渉計(BLI)センサは、その光学層検出表面の厚みの変化をナノメートル以下で測定することができる。生物学的サンプルの分析は、バイオ分子がセンサ表面に結合し、光学層の厚みが変化する検定フォーマットを設計することによって可能である。光学層の厚みの変化量は、結合分子の質量または分子量に比例する。バイオ層干渉計は、センサ表面に固定化された基質を有し、酵素活性が基質分子量を増加または減少させ、光学層の厚みが対応して変化する酵素を測定するような構造にすることができる。
【0023】
本発明は、酵素活性測定(一例であり限定されないが、ヒドロラーゼ(プロテアーゼを含む)、グリコシラーゼ、エステラーゼ、トランスフェラーゼ(ヌクレオチドトランスフェラーゼおよびホスホトランスフェラーゼを含む)の測定が挙げられる)に広く適用することができる。これらについて以下にさらに詳細に考察される。
【0024】
(実施例)
本発明を実施するための特定の実施形態の例を以下に示す。これらの実施例は単に説明の目的で与えられ、本発明の範囲をいかなる様式でも限定することを意図しない。使用した数(例えば、量、温度など)は正確であるように心がけたが、いくつかの実験誤差および偏差はもちろん許容されるべきである。他に特定されない限り、手順は室温(典型的には20〜23℃)で行なわれる。
【0025】
本発明の実施は、他に言及されない限り、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術および薬理学の従来の方法を当該技術分野の技術の範囲内で使用する。このような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、T.E.Creighton, Proteins:Structures and Molecular Properties (W.H.Freeman and Company, 1993); A.L.Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S.Colowick and N.Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照。
【0026】
実施例1:BLI分子量検出の評価
BLIが検出可能な結合分子の最小分子量を図1および2に示す。図1には、ストレプトアビジンに結合した900ダルトンの分子量を有するビオチン−PEG接合体でコーティングされたBLIセンサを示す。BLIセンサおよびセンサをコーティングする方法は、共有の米国非仮出願第10/981,901号(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber− Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611USに詳細に記載される。図2は、ストレプトアビジンに結合したビオチン(分子量230ダルトン)でコーティングしたBLIセンサを示す。このデータは、記載の干渉方法で約250ダルトンの分子量の結合を容易に検出できることを示し、500〜1000ダルトンの分子量範囲の分子により光学層の厚みを実質的に変化させることができることを示す。BLIの最小分子サイズ検出に基づいて、固定された基質を有するBLIセンサを構成し、250〜1000ダルトンの基質で分子サイズを変化させる酵素の活性をモニタリングすることができる。
【0027】
BLIの最小分子サイズ検出限界が小さいため、多数の酵素にBLIを適用することができる。以下の限定されない実施例によって、本発明およびこのような測定法の特定の例に従って活性を測定可能な酵素を分類する。
【0028】
実施例2:ヒドロラーゼ(hydrolase)活性の測定
ヒドロリアーゼは、C−O、C−N、C−Cまたは無水リン酸結合の開裂に触媒作用する酵素である。
【0029】
サブグループ1:プロテアーゼ(ペプチド結合に作用する酵素)に固定された基質のフォーマット
【0030】
このフォーマットの特徴は、BLIグラスファイバセンサの表面にプロテアーゼ基質が固定され、共有の米国出願番号第10/981,901号(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber−Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611US(本明細書中に参照して組み込まれる)および以下の文献に記載される方法を用いることである。ファイバを酵素を含有するサンプルに浸し、光学層の厚みの変化をモニタリングする。
【0031】
基本となる検定プロトコルは、バイオ層干渉計(BLI)センサをインキュベートして酵素を含有する酵素溶液中で酵素基質を固定化することである。使用された基質の量は、例えば、共有の米国出願番号第10/981,901号(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber−Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611US(本明細書中に参照して組み込まれる)に完全に記載される技術を用いて、バイオ層干渉計(BLI)技術を用いた光学相のシフトの変化によって定量される。例えば、光学相のシフトの変化は、加水分解活性が、酵素活性によるBLIセンサからの基質の消失を測定することによって概算されるため、溶液中の酵素活性の量に比例する。
【0032】
固定されたカゼイン基質によるスブチリシン活性の測定
方法
光学信号のベースラインは、光学的に活性化されたファイバセンサチップの末端をPBSに浸すことによって定められ、共有の米国非仮出願番号第10/981,901号(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber−Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611US(本明細書中に参照して組み込まれる)に記載される干渉法および装置を用いて光学信号をモニタリングする。次に、0.5mg/mLのポリ−D−リシン溶液(PBS中、pH7.4)中でチップを15分間インキュベートすることによってファイバをポリ−D−リシンでコーティングする。PBS中でチップを10分間インキュベートすることによって結合していないポリ−D−リシンを洗い流した。
【0033】
50μg/mLのカゼイン溶液(50mMのリン酸Na、150mMのNaCl、pH7)中でチップを15分間インキュベートすることによってファイバをカゼイン層[Sigma Chemical Company,St Louis,MO]でコーティングした。PBS中でチップを10分間インキュベートすることによって結合していないカゼインを洗い流した。
【0034】
固定したカゼインを有するファイバを種々の濃度(1、10、50μg/mL)のスブチリシン[Sigma Chemical Company, St Louis,MO]溶液(50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7)中でインキュベートした。光学信号をモニタリングしながら上述のそれぞれの手順を行なった。
【0035】
結果および考察:
図3にこの実施例の結果を示す。光学的な痕跡は、時間の関数として計算されたバイオ層の厚みを示す。明らかに、カゼインを結合させるとバイオ層の厚みは大きくなり、スブチリシンとともにインキュベートすると厚みは小さくなった。この痕跡は、試験範囲内では、高濃度のスブチリシンを用いると、変化が速くなり、しかも大きくなり、明らかに用量依存効果を示す。
【0036】
酵素活性に対するプロテアーゼ阻害剤の効果
方法
ファイバセンサチップを調製し、上述のようにカゼインでコーティングした。1個のファイバを50ug/mLのスブチリシン溶液(50mMのリン酸Na、150mMのNaCl、pH7)中でインキュベートした。
【0037】
他のファイバを、あらかじめ混合し、あらかじめインキュベートしておいた50μg/mLのスブチリシンおよび3mMのPMSF[Sigma Chemical Company,St Louis,MO]の溶液(この混合物を37℃で20分間インキュベートした)(50mMのリン酸Na、150mMのNaCl、pH7)中でインキュベートした。光学信号をモニタリングしながら上述のそれぞれの手順を行なった。
【0038】
結果および考察:
スブチリシン溶液中でインキュベートしたファイバから得られた痕跡は、予想どおりにチップ表面からカゼインが消失していた(図4)。このことは、酵素溶液中でインキュベートした後の痕跡において迅速に時間依存変化を示す。スブチリシンおよび(プロテアーゼ阻害剤の)PMSFのスブチリシン/PMSF混合物中でファイバをインキュベートしても、光学信号の時間依存変化は見られず(図5および6)、このことは、3mMのPMSFによってスブチリシンが阻害されたことを示す。
【0039】
基質捕捉フォーマット
基質捕捉フォーマットは、液相でのプロテアーゼによる基質の消化、BLIセンサ表面への基質の結合を伴う。基質の結合は、基質のタンパク分解により光学層の厚みが変化するのを検出可能なように設計された。1つの好ましい実施形態では、ストレプトアビジン/ビオチン結合対を使用して、基質捕捉を行なった。図7は、ビオチンを用いたタグペプチド基質に結合する2種のアプローチを示す。プロテアーゼが複数の開裂部位を有する場合、消化により十分に小さな分子サイズのペプチドを生成するため、ビオチンは特定の部位で交換される必要はない。1個の開裂部位を有し、タンパク分解によって最も小さなペプチドフラグメントが残るようなビオチン置換の位置を有する基質を設計することもできる。ビオチンまたは別の結合対の1つで基質を誘導体化する方法は、当業者に十分既知であり、既存の基質分子の生化学的改変を含むか、または誘導体化されたサブユニットの合成を含む。このような方法は、例えば参照して組み込まれ、以下に説明される[Antibodies: A Laboratory Manual (E.Harlow and D.Lane, 1988);Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods(Methods in Molecular Biology (Clifton, N.J.), V.283,2004)]に記載される。
【0040】
実施例3:基質補足を用いたトリプシン活性の測定
基質補足フォーマットを用い、チトクロムCを基質として用いてトリプシン活性の測定を行う。チトクロムCは約12キロダルトンの分子量を有し、8個のトリプシン開裂部位を有する。標準的なビオチン−NHS誘導体[Pierce Biotechnology, Rockford IL]を使用して、チトクロムCを結合する。カップリング条件は、標準的な緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7)バッファーを使用する。ビオチン−NHSをチトクロムCと5 対 1(ビオチン 対 チトクロムC)のカップリングモル比で混合する。典型的に、チトクロムC分子1個あたり1個のビオチンが置換したものが得られる。ストレプトアビジンでコーティングされたBLIセンサを約20nmの酸化タンタル層および約700nmの二酸化ケイ素層を有する0.6mm直径のグラスファイバを0.5mg/mlのポリ−D−リシンを含有するPBS溶液中に上述のように浸すことによって調製した。室温で15分経過後、ファイバをPBSで洗浄し、N−スクシンイミジイル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)[Pierce Biotechnology, Rockford IL]で標識したウシ血清アルブミン(BSA)1mg/ml溶液に浸し、20分間インキュベートし、その後にPBSで洗浄する。次いで、ファイバを50mMジチオールスレイトール溶液に室温で30分間浸す。PBSで洗浄した後、ファイバをSMCCで標識した20ug/mlのストレプトアビジンを含有する溶液に入れ、60分間インキュベートし、PBSで洗浄する。使用するまでファイバをPBS中で保存する。
【0041】
基質補足フォーマットを用いたプロテアーゼ活性の基本的な検定は、約1μg/ml〜1μg/mlの範囲のビオチン化チトクロムC溶液、トリプシンサンプルを典型的に、1%wt/wtの比率で添加することを伴う。消化時間の後、ストレプトアビジンでコーティングされたセンサを基質補足のため酵素/基質混合物に入れた。トリプシンがストレプトアビジンに作用するのを防ぐため、グラスファイバを添加する前に、基質混合物を煮沸するかまたはプロテアーゼ阻害剤(例えば、アプロチニン)と添加することによって酵素を不活化することができる。ビオチン化ペプチドを結合させた際に光学層の厚みを測定することにより基質サイズの変化をBLIセンサを用いて評価することができる。図8は、薄い光学層を用いてさらに小さなペプチドを産生するプロテアーゼ活性の検定フォーマットを示す。
【0042】
サブグループ2:グリコシラーゼ(OまたはSまたはNグリコシル結合を加水分解する酵素)
【0043】
固定された基質フォーマット
以下の実施例はデキストラナーゼについて記載するが、同じ方法を他の多糖類を加工する酵素(例えば、アミラーゼおよびセルラーゼ)に適用することができる。最初にデキストランと過ヨウ素酸ナトリウムとを反応させ、デキストランポリマーに反応性アルデヒド基を導入することによって、デキストランをタンパク質でコーティングされたBLIセンサに接続する。次いで、タンパク質でコーティングされたBLIセンサ(例えば、上述の実施例の方法に従って調製したもの)をデキストラン溶液に浸す。デキストランのアルデヒド基がタンパク質の遊離アミノ基の結合を形成し、デキストランを最後の層として有するBLIセンサを得る。デキストラナーゼ活性の測定は、デキストランでコーティングされたセンサをデキストラナーゼ含有サンプルに浸すことによって可能である。デキストラナーゼの加水分解活性により、固定されたデキストランの分子サイズが減少し、光学層の厚みが薄くなることで検出される。
【0044】
基質捕捉フォーマット
基質捕捉フォーマット中のグリコシラーゼの測定は、多糖類基質をビオチン化することによって達成される。デキストラナーゼの実施例で、デキストランを過ヨウ素酸ナトリウムと反応させ、アルデヒド基を生成した後、著しく過剰のビスアミン(例えばエチレンジアミン)を添加した。ビスアミンの1個のアミノ基がデキストランのアルデヒドとカップリングし、残った第2の遊離アミンが後に続く反応でビオチン−NHSとカップリングする。ビオチン-NHS反応のカップリングモル比は、デキストラン1モルあたり約1モルのビオチン置換物が得られるように選択される。基質補足フォーマットを用いるデキストラナーゼ活性の検定は、プロテアーゼの第2の実施例と同様であり、ビオチン化デキストラン基質をデキストラナーゼサンプルとともにインキュベートし、ビオチン化デキストランをストレプトアビジンでコーティングれたBLIセンサに結合させる。デキストラナーゼ活性により、小さなデキストランフラグメントが生成し、これは光学層が薄くなることによって測定される。
【0045】
実施例4:エステラーゼ活性の測定
サブグループ3;エステラーゼ(エステル結合に作用する酵素)
エステラーゼのいくつかの例としては、ヌクレアーゼ(RNase、DNaseなど)、アルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ、およびセリン/スレオニンホスファターゼが挙げられる。DNase Iをエステラーゼ活性を測定する一例として使用する。DNase I はオリゴヌクレオチドの4つの塩基すべてを3塩基ずつ開裂させ、約30〜40塩基対を有し、一端にビオチン基を有するdsDNAは標準的なDNA合成技術を用いる販売業者によって調製される。ビオチン化dsDNAをストレプトアビジンでコーティングされたBLIセンサに結合させる。次いで、センサをDNase Iをバッファー:10mMのTris pH7.5、2.5 MgCl2、0.5nMのCaCl2中に含有するサンプルに浸し、光学層の厚みの減少をモニタリングする。ビオチンで標識されたdsDNAとDNase Iとを液相中で混合し、基質をストレプトアビジンでコーティングされたセンサに結合させることにより、代わりの基質捕捉フォーマットを実施する。
【0046】
実施例5:トランスフェラーゼ活性の測定
トランスフェラーゼは、メチル、グリコシル、またはホスホ基の他の化合物への転移を触媒作用する酵素である。加水分解酵素とは対照的に、トランスフェラーゼは基質の分子サイズを大きくするので、その活性は光学層の厚みの増加としてBLIセンサで検出される。
【0047】
サブグループ1:ヌクレオチドトランスフェラーゼ
ヌクレオチドトランスフェラーゼは、DNAまたはRNAポリマーへのヌクレオチドの組み込みに触媒作用する。図9は、一例としてDNAポリメラーゼI活性を測定するためのフォーマットを示す。末端ヌクレオチドのいずれかにビオチンが組み込まれた10〜30ヌクレオチドのDNAテンプレートを販売業者から得る。DNAポリメラーゼIを5’→3’方向でヌクレオチドに組み込み可能なオリゴヌクレオチドプライマーでDNAテンプレートをハイブリダイズした。ビオチン結合したDNAテンプレートをDNAポリメラーゼ工程の前または後にストレプトアビジンでコーティングされたセンサに結合させることができる。ポリメラーゼ工程の条件(例えば、酵素の結合、dNTP、バッファー処方など)は、確立されたプロトコルに従う。dNTPは約400ダルトンの分子量を有するため、1〜2ヌクレオチドが組み込まれても光学厚みの変化として検出することができる。
【0048】
ヌクレオチドトランスフェラーゼの活性を測定するための代わりのアプローチは、図10に示されるようなハプテン組み込みに基づく。DNAポリメラーゼIと、ビオチン化ATPを含むdNTPの混合物とを混合し、ハイブリダイズしたプライマーを有するDNAテンプレートを作成した。ニックトランスレーションで一般的に使用されるためB−ATPは商業的に入手できる。ポリメラーゼ工程の後、ストレプトアビジンでコーティングされたBLIセンサをサンプル混合物中に入れる。約600ダルトンの分子量を有する組み込まれていないB−ATPは、ストレプトアビジンに結合しても光学層をそれほど大きくしないが、DNAテンプレートに組み込まれたB−ATPはDNAの分子量に依存して光学層の厚みを非常に大きくする。
【0049】
サブグループ2:ホスホトランスフェラーゼ
ホスホトランスフェラーゼは、ヒドロキシルを含有する化合物、典型的に、チロシン、セリン、またはスレオニン残基を有するペプチドへのホスフェート基転移に触媒作用する。ホスホリル化アミノ酸またはホスホリル化アミノ酸を含む特定の配列に結合する100種を超えるモノクローナル抗体が市販されている。キナーゼ活性の多くの検定が報告されており、ホスホリル化ペプチド基質に対する抗体を使用して市販されている。図11は、抗−ホスホチロシン抗体を用いた検定について記載する。標準的な方法によって抗体を最初にビオチン化し、ストレプトアビジンでコーティングされたセンサに結合させる。基質(Glu4Tyr)nをチロシンキナーゼおよびATPとともにインキュベートし、その後、抗−ホスホチロシンでコーティングされたセンサをサンプルに入れる。ホスホリル化ペプチドの結合により光学層の厚みが大きくる。
【0050】
図12は、特定のキナーゼについてホスホリル化アミノ酸配列に対する抗体を用いた検定を示す。この場合、キナーゼはタンパク質キナーゼCであり、抗体は市販のリン酸化タンパク質キナーゼC基質である。図13は、キナーゼ活性化検定の例示的なフォーマットを示す。この例では、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を別の酵素であるMEK1でホスホリル化することによって活性化する。市販の抗−ホスホMAPKをBLIセンサに結合させ、MAPKの活性を検出する。
【0051】
本発明は好ましい実施形態および種々の代わりの実施形態を参照して特定的に示され、記載されるが、種々の形態および詳細の変化は、本発明の精神および範囲を逸脱することなくなされることが当業者によって理解される。
【0052】
本明細書中で引用された全ての参考文献、発行された特許および特許出願は、あらゆる目的のために、その内容全体が本明細書中に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】最小分子サイズの検出を示すグラフである。
【図2】最小分子サイズの検出を示す別のグラフである。
【図3】3種類の酵素濃度でスブチリシン活性を測定した結果を示すグラフである。
【図4】50ug/mlでスブチリシン活性を測定した結果を示すグラフである。
【図5】スブチリシン活性に対するプロテアーゼの阻害効果を示すグラフである。
【図6】スブチリシン活性に対するプロテアーゼの阻害効果を示す第2のグラフである。
【図7】基質捕捉フォーマットのための基質調製を示す図である。図7Aは、複数のプロテアーゼ開裂部位を有する基質を示し、図7Bは、1個の(または数個の)開裂部位を有する基質を示す。
【図8】基質捕捉フォーマット検定の原理を示す図である。
【図9】ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性を検出する方法を示す図である。
【図10】ハプテン組み込みを用いてヌクレオチドトランスフェラーゼ活性を検出する方法を示す図である。
【図11】ホスホリル化基質に対する抗体を用いてホスホトランスフェラーゼ活性を検出する方法を示す図である。
【図12】タンパク質キナーゼC活性を検出する方法を示す図である。
【図13】マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化を検出する方法を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素活性を測定するのに有用な干渉計を用いた方法および構成物に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願番号第60/645,153号(2005年1月19日出願)および米国仮出願番号第60/642,454号(2005年1月7日出願)の利益を請求し、これら両方の出願は本明細書中にあらゆる目的のためにその内容全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
酵素は、生化学反応に触媒作用し、多くの治療および産業で適用される多くの種類のタンパク質を表す。酵素製品の一連の開発および製造では、酵素活性の測定が必要であることが多い。単純な酵素活性測定方法、好ましくは標識を使わず酵素/基質相互作用の摂動を妨害しない酵素活性測定方法があれば広く適用できる。治療または産業で適用される酵素または酵素阻害剤に基づく生成物を開発し、製造する際には、プロセス全体にわたって酵素活性をモニタリングすることが重要である。酵素検定は、典型的には、基質に作用する酵素が検出可能なシグナル変化をもたらすような様式で基質を標識する必要がある。標識された酵素基質は市販されていないことが多く、この場合、この酵素基質を合成するのも複雑である場合がある。多くの酵素製品を開発する企業にとって、単純で平易な活性測定方法を研究開発環境下および製造環境下で行なうことは、主要な任務となる。標識された基質が必要な場合、酵素活性測定に時間と、費用とがかかり、不便である。サンプル中に存在する酵素量の定量にも特定の活性測定が必要である。例えば、酵素固定化免疫測定(ELISA)に基づく検定による定量にも特定の活性測定による時間と費用がかかり、サンプルがさらに必要になる。本発明は、単純なファイバに基づくリアルタイム酵素活性検定を提供することにより、従来技術のこれらの欠点およびその他の欠点に対処するものである。この酵素活性検定は、非常に多くのサンプルを並行して処理でき、少量のサンプルに適した特定の活性測定方法を提供可能で、いくつかの実施形態では、標識されていない基質を用いて検定を行なうことができる。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、特許請求の範囲によって定義されるべきであり、この項目の内容は特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。ファイバを用いた干渉計を使用して酵素活性を検定するためのアセンブリ、キット、および方法が開示される。一実施形態では、本検定は、光ファイバを介して光源に結合された光学要素を提供するステップを具備し、この光学要素は、少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面を有する。酵素基質分子の層は、酵素が基質と反応するにつれて、上記近位の反射表面からの反射ビームと上記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置される。上記反射ビームは上記光ファイバ内に結合される(coupled)。上記光学要素を酵素に曝し(exposed)、上記反射ビーム間の干渉の変化を検出する。検出された変化は酵素活性を表す。
【0005】
さらに別の実施形態では、光学要素において上記酵素基質分子の層が検体結合分子の層に置き換えられる。上記近位の反射表面からの反射ビームと上記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉は、酵素が基質と反応するにつれて、そして、反応中の基質またはその一部が検体結合分子に結合するにつれて、変化する。好ましい実施形態では、検体結合分子は、抗体、抗体フラグメント、一本鎖Fv分子(「scFv」)、アビジン、ストレプトアビジン、またはビオチンを含む。
【0006】
別の実施形態では、上記光学要素と検定溶液との間に半透膜が配置される。別の実施形態では、上記基質は支持体(例えば、マイクロタイターウェルまたはビーズ)に接続する。
【0007】
さらに別の実施形態では、上記分子の層を含み、酵素に特異的に結合する類似の第2の要素が提供される。第2の要素は、酵素に曝され(第1の要素が曝されるのと同時または異なる時間に)、反射ビーム間の干渉の変化が検出される。この変化は酵素濃度または酵素量を表す。この方法は特定の活性測定を行なうのに有用である。好ましい実施形態では、酵素結合分子は、抗−酵素抗体、抗−酵素抗体のフラグメント、またはscFv分子を含む。
【0008】
本発明の上記の特徴および他の特徴、局面、および利点は、以下の記載および添付の図面を参照してさらによく理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(利点および有用性)
簡潔に説明すると、以下にさらに詳細に記載されるように、ファイバを使用する干渉計を用いた酵素活性を検定するためのアセンブリ、キット、および方法が記載される。
【0010】
本アプローチのいくつかの特徴を記載しておく。非常に少量のサンプル(例えば数nL)を用いて測定を行なうことができる。in vivoまたはin vitroで測定を行なうことができる。いくつかの実施形態では、標識されていない基質を用いて測定を行なうことができ、他の実施形態では、基質はアセンブリによって捕捉可能な部分を含む。好ましい実施形態では、この部分は結合対の一種であり、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ハプテン、抗体、抗体フラグメント、scFv、またはレクチンであり、光学要素は、これらの対に相補的な構成を含む。これらの実施形態では、同じ種類の光学要素(すなわち、結合対のうち1つ)を、他の結合対を含む基質を用いる広範囲の酵素検定に使用することができる。
【0011】
このアプローチの利点は数多く存在する。本発明がファイバを用いた干渉計による測定を提供するため、酵素量を測定するためのモジュールを含むことにより、感度が高く、非常に多くのサンプルを並行して測定可能で、特定の活性測定に簡単に適用することができる。
【0012】
本発明は、例えば、酵素または酵素阻害剤の発見、改変、最適化、生成などを含む、このような活性測定が有用であるという任意の状況において、酵素活性の測定に有用である。本発明は、任意の種類の酵素、例えば、ヒドロラーゼ、グリコシラーゼ、エステラーゼ、およびトランスフェラーゼ、またはこのような酵素の阻害剤を用いて行なわれてもよい。
【0013】
(定義)
特許請求の範囲および明細書中で使用される用語は、他に特定されない限り、以下に記載されるように定義される。
【0014】
用語「in vivo」は、生体中で起こるプロセスを指す。
【0015】
本明細書中で使用される省略語としては、以下のものが挙げられる。
dsDNA − 二本鎖DNA;
dNTP − デオキシヌクレオチドトリホスフェート類;
B−ATP − ビオチン化−ATP;
PEG − ポリエチレングリコール;
PMSF − フェニルメチルスルホニルフルオリド。
【0016】
本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形をあらわす「a」「an」および「the」は、他の内容を明確に示していない限り、複数形のものも含むことを注記しておかねばならない。
【0017】
(本発明のアセンブリ)
本発明のアセンブリは、バイオ層干渉計に接続し、基質または検体結合分子の層を保持するのに適したバイオセンサチップを含む。検体結合分子は、実施例として用いられるものによって限定されることなく、結合対の1つ、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ハプテン、抗体、抗体フラグメント、scFv、またはレクチンであってもよい。
【0018】
(本発明のキット)
本発明のキットは、バイオ層干渉計に接続するのに適したグラスファイバと、グラスファイバを基質層または検体結合分子層で誘導体化するための試薬および指示とを含み、場合により、グラスファイバの末端を活性化するための試薬および指示と、パッケージングとを含む。
【0019】
(本発明の方法)
概して、本発明の方法は、バイオ層干渉計(BLI)センサを含むアセンブリおよび装置、例えば、共有出願である米国出願番号第10/981,901(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber−Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611US(この内容は参照することにより本明細書中にその全体が組み込まれる)に記載されるものを用いて行なわれる。
【0020】
簡潔にいうと、センサは、グラスファイバの一端を光学的に活性化することによって調製される。活性化ステップは、ファイバ表面をバフ研磨し、Ta2O5で表面をコーティングし、SiO2層でコーティングし、洗浄し受動的吸収によって、酵素基質または結合対の1つを固定化し、および/または共有結合させることを含む。
【0021】
酵素活性を検定するための2つの広範囲で一般的なフォーマットが本発明の範囲に含まれる。第1のフォーマットでは、基質は、バイオ層干渉計(BLI)センサの表面に固定される。第2のフォーマットでは、BLIセンサは、基質に結合可能な分子を有する表面を含む。第2のフォーマットでは、半透性膜が、BLIセンサと検定溶液との間に場合により含まれるか、または基質は、支持体、例えば、マイクロタイターウェルまたはビーズに結合される。これらの実施形態は、ヒドロラーゼを用いて基質の全長をBLIセンサに結合させないか、または結合を遅らせるために特に有用である。第2のフォーマットでは、酵素活性に関する情報は、干渉シグナルの動的状態にある成分および静的状態にある成分の両方から誘導することができる。
【0022】
バイオ層干渉計(BLI)センサは、その光学層検出表面の厚みの変化をナノメートル以下で測定することができる。生物学的サンプルの分析は、バイオ分子がセンサ表面に結合し、光学層の厚みが変化する検定フォーマットを設計することによって可能である。光学層の厚みの変化量は、結合分子の質量または分子量に比例する。バイオ層干渉計は、センサ表面に固定化された基質を有し、酵素活性が基質分子量を増加または減少させ、光学層の厚みが対応して変化する酵素を測定するような構造にすることができる。
【0023】
本発明は、酵素活性測定(一例であり限定されないが、ヒドロラーゼ(プロテアーゼを含む)、グリコシラーゼ、エステラーゼ、トランスフェラーゼ(ヌクレオチドトランスフェラーゼおよびホスホトランスフェラーゼを含む)の測定が挙げられる)に広く適用することができる。これらについて以下にさらに詳細に考察される。
【0024】
(実施例)
本発明を実施するための特定の実施形態の例を以下に示す。これらの実施例は単に説明の目的で与えられ、本発明の範囲をいかなる様式でも限定することを意図しない。使用した数(例えば、量、温度など)は正確であるように心がけたが、いくつかの実験誤差および偏差はもちろん許容されるべきである。他に特定されない限り、手順は室温(典型的には20〜23℃)で行なわれる。
【0025】
本発明の実施は、他に言及されない限り、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術および薬理学の従来の方法を当該技術分野の技術の範囲内で使用する。このような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、T.E.Creighton, Proteins:Structures and Molecular Properties (W.H.Freeman and Company, 1993); A.L.Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S.Colowick and N.Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照。
【0026】
実施例1:BLI分子量検出の評価
BLIが検出可能な結合分子の最小分子量を図1および2に示す。図1には、ストレプトアビジンに結合した900ダルトンの分子量を有するビオチン−PEG接合体でコーティングされたBLIセンサを示す。BLIセンサおよびセンサをコーティングする方法は、共有の米国非仮出願第10/981,901号(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber− Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611USに詳細に記載される。図2は、ストレプトアビジンに結合したビオチン(分子量230ダルトン)でコーティングしたBLIセンサを示す。このデータは、記載の干渉方法で約250ダルトンの分子量の結合を容易に検出できることを示し、500〜1000ダルトンの分子量範囲の分子により光学層の厚みを実質的に変化させることができることを示す。BLIの最小分子サイズ検出に基づいて、固定された基質を有するBLIセンサを構成し、250〜1000ダルトンの基質で分子サイズを変化させる酵素の活性をモニタリングすることができる。
【0027】
BLIの最小分子サイズ検出限界が小さいため、多数の酵素にBLIを適用することができる。以下の限定されない実施例によって、本発明およびこのような測定法の特定の例に従って活性を測定可能な酵素を分類する。
【0028】
実施例2:ヒドロラーゼ(hydrolase)活性の測定
ヒドロリアーゼは、C−O、C−N、C−Cまたは無水リン酸結合の開裂に触媒作用する酵素である。
【0029】
サブグループ1:プロテアーゼ(ペプチド結合に作用する酵素)に固定された基質のフォーマット
【0030】
このフォーマットの特徴は、BLIグラスファイバセンサの表面にプロテアーゼ基質が固定され、共有の米国出願番号第10/981,901号(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber−Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611US(本明細書中に参照して組み込まれる)および以下の文献に記載される方法を用いることである。ファイバを酵素を含有するサンプルに浸し、光学層の厚みの変化をモニタリングする。
【0031】
基本となる検定プロトコルは、バイオ層干渉計(BLI)センサをインキュベートして酵素を含有する酵素溶液中で酵素基質を固定化することである。使用された基質の量は、例えば、共有の米国出願番号第10/981,901号(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber−Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611US(本明細書中に参照して組み込まれる)に完全に記載される技術を用いて、バイオ層干渉計(BLI)技術を用いた光学相のシフトの変化によって定量される。例えば、光学相のシフトの変化は、加水分解活性が、酵素活性によるBLIセンサからの基質の消失を測定することによって概算されるため、溶液中の酵素活性の量に比例する。
【0032】
固定されたカゼイン基質によるスブチリシン活性の測定
方法
光学信号のベースラインは、光学的に活性化されたファイバセンサチップの末端をPBSに浸すことによって定められ、共有の米国非仮出願番号第10/981,901号(2004年11月4日出願)、Hong Tan他、標題「Fiber−Optic Assay Apparatus Based on Phase−Shift Interferometry」、代理人番号第24377−09611US(本明細書中に参照して組み込まれる)に記載される干渉法および装置を用いて光学信号をモニタリングする。次に、0.5mg/mLのポリ−D−リシン溶液(PBS中、pH7.4)中でチップを15分間インキュベートすることによってファイバをポリ−D−リシンでコーティングする。PBS中でチップを10分間インキュベートすることによって結合していないポリ−D−リシンを洗い流した。
【0033】
50μg/mLのカゼイン溶液(50mMのリン酸Na、150mMのNaCl、pH7)中でチップを15分間インキュベートすることによってファイバをカゼイン層[Sigma Chemical Company,St Louis,MO]でコーティングした。PBS中でチップを10分間インキュベートすることによって結合していないカゼインを洗い流した。
【0034】
固定したカゼインを有するファイバを種々の濃度(1、10、50μg/mL)のスブチリシン[Sigma Chemical Company, St Louis,MO]溶液(50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7)中でインキュベートした。光学信号をモニタリングしながら上述のそれぞれの手順を行なった。
【0035】
結果および考察:
図3にこの実施例の結果を示す。光学的な痕跡は、時間の関数として計算されたバイオ層の厚みを示す。明らかに、カゼインを結合させるとバイオ層の厚みは大きくなり、スブチリシンとともにインキュベートすると厚みは小さくなった。この痕跡は、試験範囲内では、高濃度のスブチリシンを用いると、変化が速くなり、しかも大きくなり、明らかに用量依存効果を示す。
【0036】
酵素活性に対するプロテアーゼ阻害剤の効果
方法
ファイバセンサチップを調製し、上述のようにカゼインでコーティングした。1個のファイバを50ug/mLのスブチリシン溶液(50mMのリン酸Na、150mMのNaCl、pH7)中でインキュベートした。
【0037】
他のファイバを、あらかじめ混合し、あらかじめインキュベートしておいた50μg/mLのスブチリシンおよび3mMのPMSF[Sigma Chemical Company,St Louis,MO]の溶液(この混合物を37℃で20分間インキュベートした)(50mMのリン酸Na、150mMのNaCl、pH7)中でインキュベートした。光学信号をモニタリングしながら上述のそれぞれの手順を行なった。
【0038】
結果および考察:
スブチリシン溶液中でインキュベートしたファイバから得られた痕跡は、予想どおりにチップ表面からカゼインが消失していた(図4)。このことは、酵素溶液中でインキュベートした後の痕跡において迅速に時間依存変化を示す。スブチリシンおよび(プロテアーゼ阻害剤の)PMSFのスブチリシン/PMSF混合物中でファイバをインキュベートしても、光学信号の時間依存変化は見られず(図5および6)、このことは、3mMのPMSFによってスブチリシンが阻害されたことを示す。
【0039】
基質捕捉フォーマット
基質捕捉フォーマットは、液相でのプロテアーゼによる基質の消化、BLIセンサ表面への基質の結合を伴う。基質の結合は、基質のタンパク分解により光学層の厚みが変化するのを検出可能なように設計された。1つの好ましい実施形態では、ストレプトアビジン/ビオチン結合対を使用して、基質捕捉を行なった。図7は、ビオチンを用いたタグペプチド基質に結合する2種のアプローチを示す。プロテアーゼが複数の開裂部位を有する場合、消化により十分に小さな分子サイズのペプチドを生成するため、ビオチンは特定の部位で交換される必要はない。1個の開裂部位を有し、タンパク分解によって最も小さなペプチドフラグメントが残るようなビオチン置換の位置を有する基質を設計することもできる。ビオチンまたは別の結合対の1つで基質を誘導体化する方法は、当業者に十分既知であり、既存の基質分子の生化学的改変を含むか、または誘導体化されたサブユニットの合成を含む。このような方法は、例えば参照して組み込まれ、以下に説明される[Antibodies: A Laboratory Manual (E.Harlow and D.Lane, 1988);Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods(Methods in Molecular Biology (Clifton, N.J.), V.283,2004)]に記載される。
【0040】
実施例3:基質補足を用いたトリプシン活性の測定
基質補足フォーマットを用い、チトクロムCを基質として用いてトリプシン活性の測定を行う。チトクロムCは約12キロダルトンの分子量を有し、8個のトリプシン開裂部位を有する。標準的なビオチン−NHS誘導体[Pierce Biotechnology, Rockford IL]を使用して、チトクロムCを結合する。カップリング条件は、標準的な緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7)バッファーを使用する。ビオチン−NHSをチトクロムCと5 対 1(ビオチン 対 チトクロムC)のカップリングモル比で混合する。典型的に、チトクロムC分子1個あたり1個のビオチンが置換したものが得られる。ストレプトアビジンでコーティングされたBLIセンサを約20nmの酸化タンタル層および約700nmの二酸化ケイ素層を有する0.6mm直径のグラスファイバを0.5mg/mlのポリ−D−リシンを含有するPBS溶液中に上述のように浸すことによって調製した。室温で15分経過後、ファイバをPBSで洗浄し、N−スクシンイミジイル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)[Pierce Biotechnology, Rockford IL]で標識したウシ血清アルブミン(BSA)1mg/ml溶液に浸し、20分間インキュベートし、その後にPBSで洗浄する。次いで、ファイバを50mMジチオールスレイトール溶液に室温で30分間浸す。PBSで洗浄した後、ファイバをSMCCで標識した20ug/mlのストレプトアビジンを含有する溶液に入れ、60分間インキュベートし、PBSで洗浄する。使用するまでファイバをPBS中で保存する。
【0041】
基質補足フォーマットを用いたプロテアーゼ活性の基本的な検定は、約1μg/ml〜1μg/mlの範囲のビオチン化チトクロムC溶液、トリプシンサンプルを典型的に、1%wt/wtの比率で添加することを伴う。消化時間の後、ストレプトアビジンでコーティングされたセンサを基質補足のため酵素/基質混合物に入れた。トリプシンがストレプトアビジンに作用するのを防ぐため、グラスファイバを添加する前に、基質混合物を煮沸するかまたはプロテアーゼ阻害剤(例えば、アプロチニン)と添加することによって酵素を不活化することができる。ビオチン化ペプチドを結合させた際に光学層の厚みを測定することにより基質サイズの変化をBLIセンサを用いて評価することができる。図8は、薄い光学層を用いてさらに小さなペプチドを産生するプロテアーゼ活性の検定フォーマットを示す。
【0042】
サブグループ2:グリコシラーゼ(OまたはSまたはNグリコシル結合を加水分解する酵素)
【0043】
固定された基質フォーマット
以下の実施例はデキストラナーゼについて記載するが、同じ方法を他の多糖類を加工する酵素(例えば、アミラーゼおよびセルラーゼ)に適用することができる。最初にデキストランと過ヨウ素酸ナトリウムとを反応させ、デキストランポリマーに反応性アルデヒド基を導入することによって、デキストランをタンパク質でコーティングされたBLIセンサに接続する。次いで、タンパク質でコーティングされたBLIセンサ(例えば、上述の実施例の方法に従って調製したもの)をデキストラン溶液に浸す。デキストランのアルデヒド基がタンパク質の遊離アミノ基の結合を形成し、デキストランを最後の層として有するBLIセンサを得る。デキストラナーゼ活性の測定は、デキストランでコーティングされたセンサをデキストラナーゼ含有サンプルに浸すことによって可能である。デキストラナーゼの加水分解活性により、固定されたデキストランの分子サイズが減少し、光学層の厚みが薄くなることで検出される。
【0044】
基質捕捉フォーマット
基質捕捉フォーマット中のグリコシラーゼの測定は、多糖類基質をビオチン化することによって達成される。デキストラナーゼの実施例で、デキストランを過ヨウ素酸ナトリウムと反応させ、アルデヒド基を生成した後、著しく過剰のビスアミン(例えばエチレンジアミン)を添加した。ビスアミンの1個のアミノ基がデキストランのアルデヒドとカップリングし、残った第2の遊離アミンが後に続く反応でビオチン−NHSとカップリングする。ビオチン-NHS反応のカップリングモル比は、デキストラン1モルあたり約1モルのビオチン置換物が得られるように選択される。基質補足フォーマットを用いるデキストラナーゼ活性の検定は、プロテアーゼの第2の実施例と同様であり、ビオチン化デキストラン基質をデキストラナーゼサンプルとともにインキュベートし、ビオチン化デキストランをストレプトアビジンでコーティングれたBLIセンサに結合させる。デキストラナーゼ活性により、小さなデキストランフラグメントが生成し、これは光学層が薄くなることによって測定される。
【0045】
実施例4:エステラーゼ活性の測定
サブグループ3;エステラーゼ(エステル結合に作用する酵素)
エステラーゼのいくつかの例としては、ヌクレアーゼ(RNase、DNaseなど)、アルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ、およびセリン/スレオニンホスファターゼが挙げられる。DNase Iをエステラーゼ活性を測定する一例として使用する。DNase I はオリゴヌクレオチドの4つの塩基すべてを3塩基ずつ開裂させ、約30〜40塩基対を有し、一端にビオチン基を有するdsDNAは標準的なDNA合成技術を用いる販売業者によって調製される。ビオチン化dsDNAをストレプトアビジンでコーティングされたBLIセンサに結合させる。次いで、センサをDNase Iをバッファー:10mMのTris pH7.5、2.5 MgCl2、0.5nMのCaCl2中に含有するサンプルに浸し、光学層の厚みの減少をモニタリングする。ビオチンで標識されたdsDNAとDNase Iとを液相中で混合し、基質をストレプトアビジンでコーティングされたセンサに結合させることにより、代わりの基質捕捉フォーマットを実施する。
【0046】
実施例5:トランスフェラーゼ活性の測定
トランスフェラーゼは、メチル、グリコシル、またはホスホ基の他の化合物への転移を触媒作用する酵素である。加水分解酵素とは対照的に、トランスフェラーゼは基質の分子サイズを大きくするので、その活性は光学層の厚みの増加としてBLIセンサで検出される。
【0047】
サブグループ1:ヌクレオチドトランスフェラーゼ
ヌクレオチドトランスフェラーゼは、DNAまたはRNAポリマーへのヌクレオチドの組み込みに触媒作用する。図9は、一例としてDNAポリメラーゼI活性を測定するためのフォーマットを示す。末端ヌクレオチドのいずれかにビオチンが組み込まれた10〜30ヌクレオチドのDNAテンプレートを販売業者から得る。DNAポリメラーゼIを5’→3’方向でヌクレオチドに組み込み可能なオリゴヌクレオチドプライマーでDNAテンプレートをハイブリダイズした。ビオチン結合したDNAテンプレートをDNAポリメラーゼ工程の前または後にストレプトアビジンでコーティングされたセンサに結合させることができる。ポリメラーゼ工程の条件(例えば、酵素の結合、dNTP、バッファー処方など)は、確立されたプロトコルに従う。dNTPは約400ダルトンの分子量を有するため、1〜2ヌクレオチドが組み込まれても光学厚みの変化として検出することができる。
【0048】
ヌクレオチドトランスフェラーゼの活性を測定するための代わりのアプローチは、図10に示されるようなハプテン組み込みに基づく。DNAポリメラーゼIと、ビオチン化ATPを含むdNTPの混合物とを混合し、ハイブリダイズしたプライマーを有するDNAテンプレートを作成した。ニックトランスレーションで一般的に使用されるためB−ATPは商業的に入手できる。ポリメラーゼ工程の後、ストレプトアビジンでコーティングされたBLIセンサをサンプル混合物中に入れる。約600ダルトンの分子量を有する組み込まれていないB−ATPは、ストレプトアビジンに結合しても光学層をそれほど大きくしないが、DNAテンプレートに組み込まれたB−ATPはDNAの分子量に依存して光学層の厚みを非常に大きくする。
【0049】
サブグループ2:ホスホトランスフェラーゼ
ホスホトランスフェラーゼは、ヒドロキシルを含有する化合物、典型的に、チロシン、セリン、またはスレオニン残基を有するペプチドへのホスフェート基転移に触媒作用する。ホスホリル化アミノ酸またはホスホリル化アミノ酸を含む特定の配列に結合する100種を超えるモノクローナル抗体が市販されている。キナーゼ活性の多くの検定が報告されており、ホスホリル化ペプチド基質に対する抗体を使用して市販されている。図11は、抗−ホスホチロシン抗体を用いた検定について記載する。標準的な方法によって抗体を最初にビオチン化し、ストレプトアビジンでコーティングされたセンサに結合させる。基質(Glu4Tyr)nをチロシンキナーゼおよびATPとともにインキュベートし、その後、抗−ホスホチロシンでコーティングされたセンサをサンプルに入れる。ホスホリル化ペプチドの結合により光学層の厚みが大きくる。
【0050】
図12は、特定のキナーゼについてホスホリル化アミノ酸配列に対する抗体を用いた検定を示す。この場合、キナーゼはタンパク質キナーゼCであり、抗体は市販のリン酸化タンパク質キナーゼC基質である。図13は、キナーゼ活性化検定の例示的なフォーマットを示す。この例では、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を別の酵素であるMEK1でホスホリル化することによって活性化する。市販の抗−ホスホMAPKをBLIセンサに結合させ、MAPKの活性を検出する。
【0051】
本発明は好ましい実施形態および種々の代わりの実施形態を参照して特定的に示され、記載されるが、種々の形態および詳細の変化は、本発明の精神および範囲を逸脱することなくなされることが当業者によって理解される。
【0052】
本明細書中で引用された全ての参考文献、発行された特許および特許出願は、あらゆる目的のために、その内容全体が本明細書中に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】最小分子サイズの検出を示すグラフである。
【図2】最小分子サイズの検出を示す別のグラフである。
【図3】3種類の酵素濃度でスブチリシン活性を測定した結果を示すグラフである。
【図4】50ug/mlでスブチリシン活性を測定した結果を示すグラフである。
【図5】スブチリシン活性に対するプロテアーゼの阻害効果を示すグラフである。
【図6】スブチリシン活性に対するプロテアーゼの阻害効果を示す第2のグラフである。
【図7】基質捕捉フォーマットのための基質調製を示す図である。図7Aは、複数のプロテアーゼ開裂部位を有する基質を示し、図7Bは、1個の(または数個の)開裂部位を有する基質を示す。
【図8】基質捕捉フォーマット検定の原理を示す図である。
【図9】ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性を検出する方法を示す図である。
【図10】ハプテン組み込みを用いてヌクレオチドトランスフェラーゼ活性を検出する方法を示す図である。
【図11】ホスホリル化基質に対する抗体を用いてホスホトランスフェラーゼ活性を検出する方法を示す図である。
【図12】タンパク質キナーゼC活性を検出する方法を示す図である。
【図13】マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化を検出する方法を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを介して光源に結合された光学要素を提供するステップであって、前記光学要素は、(a)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(b)酵素基質分子の層であって、酵素が基質と反応するにつれて前記近位の反射表面からの反射ビームと前記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記酵素基質分子の層とを含み、前記反射ビームは前記光ファイバ内に結合される前記ステップと、
前記光学要素を酵素に曝すステップと、
前記反射ビーム間の干渉の変化を検出するステップであって、この変化が酵素活性を表す前記ステップと、
を具備することを特徴とする酵素活性を検定するための方法。
【請求項2】
前記酵素がヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素が、プロテアーゼ、ホスファターゼ、グリコシラーゼ、またはエステラーゼである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵素が、ヌクレオチドトランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼまたはホスホトランスフェラーゼである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第2の光ファイバを介して光源に結合された第2の光学要素を提供するステップであって、前記第2の光学要素は、(c)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(d)酵素結合分子の層であって、酵素が該酵素結合分子の層と結合するにつれて前記第2の光学要素の前記近位の反射表面からの第2の反射ビームと前記第2の光学要素の前記遠位の反射表面からの第2の反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記酵素結合分子の層とを含み、前記第2の反射ビームは前記光ファイバ内に結合される前記ステップと、
前記第2の反射ビーム間の干渉の変化を検出するステップであって、この変化が酵素量を表す前記ステップと、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素結合分子の層が、抗−酵素抗体、抗−酵素抗体のフラグメント、または抗−酵素scFv分子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
光ファイバを介して光源に結合された光学要素を提供するステップであって、前記光学要素は、(a)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(b)検体結合分子の層であって、酵素基質またはその一部分が該検体結合分子の層に結合するにつれて前記近位の反射表面からの反射ビームと前記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記検体結合分子の層とを含み、前記反射ビームは前記光ファイバ内に結合される前記ステップと、
前記光学要素を酵素と反応した基質または酵素と反応する基質に曝すステップであって、これにより、前記基質または前記基質の一部分を前記検体結合分子の層に結合させる前記ステップと、
前記反射表面の光学的厚さの変化を検出するステップであって、この変化が酵素活性を表す前記ステップと、
を具備することを特徴とする酵素活性を検定するための方法。
【請求項8】
前記酵素がヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素が、プロテアーゼ、ホスファターゼ、グリコシラーゼ、またはエステラーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素が、ヌクレオチドトランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼまたはホスホトランスフェラーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記光学要素と前記基質との間に半透膜を入れるステップをさらに具備する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記基質が支持体に結合している、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
第2の光ファイバを介して光源に結合された第2の光学要素を提供するステップであって、前記第2の光学要素は、(c)少なくとも50nm離れた第2の光学要素の近位の反射表面および第2の光学要素の遠位の反射表面と、(d)酵素結合分子の層であって、酵素が該酵素結合分子の層と結合するにつれて前記第2の光学要素の近位の反射表面からの第2の反射ビームと前記第2の光学要素の遠位の反射表面からの第2の反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記酵素結合分子の層とを含み、前記第2の反射ビームは前記光ファイバ内に結合される前記ステップと、
前記第2の反射ビーム間の干渉の変化を検出するステップであって、この変化が酵素量を表す前記ステップと、
を更に具備することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記検体結合分子の層が、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、抗体、抗体フラグメント、scFv、またはレクチンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記酵素結合分子の層が、抗−酵素抗体、抗−酵素抗体のフラグメント、または抗−酵素scFv分子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記曝すステップの前に、酵素を不活化するステップをさらに具備することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項17】
光ファイバを介して光源に結合されるのに適した光学要素を具備し、この光学要素が、(a)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(b)酵素基質分子の層であって、酵素が基質と反応するにつれて前記近位の反射表面からの反射ビームと前記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記酵素基質分子の層とを含むことを特徴とするアセンブリ。
【請求項18】
光ファイバを介して光源に結合されるのに適した光学要素を具備し、この光学要素が、(a)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(b)酵素が基質と反応するにつれて前記近位の反射表面からの反射ビームと前記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された検体結合分子の層とを含むことを特徴とするアセンブリ。
【請求項19】
バイオ層干渉計に結合されるのに適したグラスファイバと、
前記グラスファイバを基質層または検体結合分子の層で誘導体化するための試薬および指示と、
を具備することを特徴とするキット。
【請求項20】
前記グラスファイバの末端を光学的に活性化させるための試薬および指示を更に具備することを特徴とする請求項19に記載のキット。
【請求項1】
光ファイバを介して光源に結合された光学要素を提供するステップであって、前記光学要素は、(a)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(b)酵素基質分子の層であって、酵素が基質と反応するにつれて前記近位の反射表面からの反射ビームと前記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記酵素基質分子の層とを含み、前記反射ビームは前記光ファイバ内に結合される前記ステップと、
前記光学要素を酵素に曝すステップと、
前記反射ビーム間の干渉の変化を検出するステップであって、この変化が酵素活性を表す前記ステップと、
を具備することを特徴とする酵素活性を検定するための方法。
【請求項2】
前記酵素がヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素が、プロテアーゼ、ホスファターゼ、グリコシラーゼ、またはエステラーゼである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵素が、ヌクレオチドトランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼまたはホスホトランスフェラーゼである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第2の光ファイバを介して光源に結合された第2の光学要素を提供するステップであって、前記第2の光学要素は、(c)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(d)酵素結合分子の層であって、酵素が該酵素結合分子の層と結合するにつれて前記第2の光学要素の前記近位の反射表面からの第2の反射ビームと前記第2の光学要素の前記遠位の反射表面からの第2の反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記酵素結合分子の層とを含み、前記第2の反射ビームは前記光ファイバ内に結合される前記ステップと、
前記第2の反射ビーム間の干渉の変化を検出するステップであって、この変化が酵素量を表す前記ステップと、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素結合分子の層が、抗−酵素抗体、抗−酵素抗体のフラグメント、または抗−酵素scFv分子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
光ファイバを介して光源に結合された光学要素を提供するステップであって、前記光学要素は、(a)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(b)検体結合分子の層であって、酵素基質またはその一部分が該検体結合分子の層に結合するにつれて前記近位の反射表面からの反射ビームと前記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記検体結合分子の層とを含み、前記反射ビームは前記光ファイバ内に結合される前記ステップと、
前記光学要素を酵素と反応した基質または酵素と反応する基質に曝すステップであって、これにより、前記基質または前記基質の一部分を前記検体結合分子の層に結合させる前記ステップと、
前記反射表面の光学的厚さの変化を検出するステップであって、この変化が酵素活性を表す前記ステップと、
を具備することを特徴とする酵素活性を検定するための方法。
【請求項8】
前記酵素がヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素が、プロテアーゼ、ホスファターゼ、グリコシラーゼ、またはエステラーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素が、ヌクレオチドトランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼまたはホスホトランスフェラーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記光学要素と前記基質との間に半透膜を入れるステップをさらに具備する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記基質が支持体に結合している、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
第2の光ファイバを介して光源に結合された第2の光学要素を提供するステップであって、前記第2の光学要素は、(c)少なくとも50nm離れた第2の光学要素の近位の反射表面および第2の光学要素の遠位の反射表面と、(d)酵素結合分子の層であって、酵素が該酵素結合分子の層と結合するにつれて前記第2の光学要素の近位の反射表面からの第2の反射ビームと前記第2の光学要素の遠位の反射表面からの第2の反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記酵素結合分子の層とを含み、前記第2の反射ビームは前記光ファイバ内に結合される前記ステップと、
前記第2の反射ビーム間の干渉の変化を検出するステップであって、この変化が酵素量を表す前記ステップと、
を更に具備することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記検体結合分子の層が、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、抗体、抗体フラグメント、scFv、またはレクチンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記酵素結合分子の層が、抗−酵素抗体、抗−酵素抗体のフラグメント、または抗−酵素scFv分子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記曝すステップの前に、酵素を不活化するステップをさらに具備することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項17】
光ファイバを介して光源に結合されるのに適した光学要素を具備し、この光学要素が、(a)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(b)酵素基質分子の層であって、酵素が基質と反応するにつれて前記近位の反射表面からの反射ビームと前記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された前記酵素基質分子の層とを含むことを特徴とするアセンブリ。
【請求項18】
光ファイバを介して光源に結合されるのに適した光学要素を具備し、この光学要素が、(a)少なくとも50nm離れた近位の反射表面および遠位の反射表面と、(b)酵素が基質と反応するにつれて前記近位の反射表面からの反射ビームと前記遠位の反射表面からの反射ビームとの間の干渉が変化するように配置された検体結合分子の層とを含むことを特徴とするアセンブリ。
【請求項19】
バイオ層干渉計に結合されるのに適したグラスファイバと、
前記グラスファイバを基質層または検体結合分子の層で誘導体化するための試薬および指示と、
を具備することを特徴とするキット。
【請求項20】
前記グラスファイバの末端を光学的に活性化させるための試薬および指示を更に具備することを特徴とする請求項19に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−527354(P2008−527354A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550541(P2007−550541)
【出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/000700
【国際公開番号】WO2006/074444
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(505398778)フォルテバイオ,インク. (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/000700
【国際公開番号】WO2006/074444
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(505398778)フォルテバイオ,インク. (6)
【Fターム(参考)】
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