説明

バイポーラ電池

【課題】 正極の腐食を低減したバイポーラ電池を提供する。
【解決手段】 非イオン伝導性で、かつ、電子伝導性を有する層を被覆した金属箔を集電
体に用いることを特徴とするバイポーラ電池、かかるバイポーラ電池を用いた組電池、前
記電池を搭載した車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ電池、かかる電池を用いた組電池、前記電池を用いた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先端電子産業の発達により電池の需要が増大している。特に、高エネルギー密度を有する電池が要求されている。かかる電池の一つとして、集電体の一方の面に正極用活物質を、残りの面に負極用活物質を塗布した電極を利用するバイポーラ電池が提案されている。
【0003】
バイポーラ電池用集電箔としては、正極側では耐食性に優れ、かつ、負極ではリチウムとの合金化が起きないことが要求されている。そのため、集電箔として利用できる材料はごく限られており、例えばステンレス鋼が挙げられる。
【0004】
ところが、ステンレス鋼製集電箔を用いた場合においても、正極側が高電位(約4V)に対し耐え切れず、腐食して金属が溶出するという問題があった。その結果、電池特性が低下することとなる。
【0005】
特許文献1には、正極用のAl集電箔と活物質ペーストとの反応を抑制するため、酸化アルミニウム被膜からなる保護被膜を該集電体に設けることが記載されている。しかしながら、酸化アルミニウム被膜を設ける目的は、集電体に活物質合剤層を形成する工程において、集電体と活物質ペーストとの反応を抑制することであり(段落「0023」)、電池として用いた場合に集電体と活物質との反応を抑制するものではない。すなわち、酸化アルミニウム自体は電気絶縁性を有するため、集電体としては不適(段落「0027」)だからである。そこで、電気伝導性を付与するために、かかる保護被膜は、カーボン粒子とカーボン粒子を結着するバインダを有することが好ましい(段落「0033」)との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−157852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、酸化アルミニウム被膜は集電体を水蒸気中または水中で加熱して形成することが好ましい(特許文献1、段落「0062」)にも拘わらず、カーボン粒子などを該被膜に含ませる具体的な手段は記載されていない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、電池として使用する際に、正極の腐食を低減したバイポーラ電池を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的はかかるバイポーラ電池を用いた組電池を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の目的はかかるバイポーラ電池または組電池を用いた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、非イオン伝導性で、かつ、電子伝導性を有する層を被覆した金属箔を集電体に用いることを特徴とするバイポーラ電池を考案した。
【0012】
また、上記目的を達成するため、上記バイポーラ電池を用いたことを特徴とする組電池を考案した。
【0013】
さらに、上記目的を達成するため、上記バイポーラ電池または上記組電池を用いたことを特徴とする車両を考案した。
【発明の効果】
【0014】
バイポーラ電池において、非イオン伝導性で、かつ、電子伝導性を有する層を被覆した金属箔を集電体に用いるので、電池として使用する際に、正極側の集電箔の腐食を低減することができる。さらに、集電体と電極活物質との接触抵抗を低減することもできる。
【0015】
組電池において、上記バイポーラ電池を用いたので、電池特性に優れる。
【0016】
車両において、上記バイポーラ電池または組電池を用いたので、電池特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電極活物質と集電体との間の接触抵抗について説明する図面である。
【図2】本発明のバイポーラ電極を説明するための断面図である。
【図3】本発明のバイポーラ電池における層の積層例を説明するための一部破断した断面図である。
【図4】バイポーラ型のリチウムイオン二次電池の全体構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明のバイポーラ電池を2直20並に接続した組電池の一例の模式図である。
【図6】バイポーラ電池Aと非バイポーラ型電池Bを並列に連結した組電池の一例を示す図面である。
【図7】複合組電池の一例を示す図面である。
【図8】電気自動車の車体中央部の座席下に複合組電池または電池が搭載された一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のバイポーラ電池について、バイポーラ用集電体とかかるバイポーラ用集電体を用いたバイポーラ電池に分けて説明する。なお、リチウムイオン電池を代表例として説明する。
【0019】
(バイポーラ用集電体)
本発明のバイポーラ電池に用いられるバイポーラ用集電体は、非イオン伝導性で、かつ、電子伝導性を有する層を被覆した金属箔である。
【0020】
金属箔としては、アルミニウムは含まれないが、アルミニウムよりも硬い金属製の箔が好ましい。具体的には、ステンレス鋼(SUS)、銅、ニッケル、チタンなどを挙げることができる。金属箔に被覆層を設けることにより、Liイオンとの反応が防止できるため、ステンレス鋼ばかりでなくその他の金属箔も用いることができる。金属箔の厚さは、通常、1〜100μmの範囲にある。
【0021】
非イオン伝導性を与える材料としては、イオンを伝導しない材料であれば特に制限はないが、例えば、非イオン伝導性ポリマーを挙げることができる。かかるポリマーは電解質との相溶性が悪く、十分にはじくことができる。具体例には、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの共重合体などのオレフィン樹脂;シリコーン樹脂;アクリル樹脂;ポリエステル樹脂;アラミド樹脂;エポキシ樹脂;ウレタン樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は単独でも、あるいは混合して用いられる。
【0022】
電子伝導性を与える材料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維などの炭素系粒子材料;金、白金などの金属微粒子;導電性セラミックなどのセラミック微粒子を挙げることができる。この材料を被覆層に分散させることによって、層に十分な電子伝導性が与えられる。粒子の大きさは、通常、10〜20μmの範囲にある。
【0023】
非イオン伝導性を与える材料と電子伝導性を与える材料との使用割合は、用いる金属箔や電極用電解質によって相違するため、適宜選択する。その比率(質量比)は、通常、50:50〜90:10、好ましくは70:30である。
【0024】
これらの材料は次の方法によって、金属箔に被覆する。これらの材料を、必要によりN−メチルピロリドン(NMP)などの溶媒に分散させて分散液を調製し、分散液をコータなどによって金属箔の正極側あるいは両面に塗布、乾燥することによって被覆できる。被覆層の厚さは、通常、0.1〜10μmの範囲にある。
【0025】
また、かかる被覆層として、上記層の代わりに、金メッキ層あるいは白金メッキ層を用いることもできる。金属箔の正極側または両面にメッキをすることによって得られる。被覆層の厚さは、通常、0.1〜10μmの範囲にある。
【0026】
このように、被覆層を金属箔に設けたことにより、金属箔と電極電解質とが直接触れることを防ぐことができる。また、生じた電子または電流を容易に取り出すことができる。
【0027】
リチウムイオン二次電池用集電(金属)箔に要求される特性として、正極側はLi/Liに対し4V以上と非常に高電位のため、腐食すなわち金属の溶出のないことが、負極側では低電位でLi金属と合金化しないことがある。すなわち、バイポーラ用集電箔ではこれらの要求を満たす必要がある。このため、従来、バイポーラ用集電箔としては、ステンレス鋼が用いられてきたが、特に正極側が高電位に対し耐え切れず、腐食して金属が溶出し、電池特性が低下するという問題があった。これに対し、本発明の被覆層を用いれば、正極側の集電箔の腐食を抑制することができる。また、集電箔の両面に被覆層を設ければ、負極側において、Li金属との合金化を抑えることができる。
【0028】
さらに、集電箔に被覆層を設けることにより、次の効果が認められる。集電箔のピンホールを塞いで、バイポーラ電池ゆえに起こる隣接する電池間の短絡または液絡を防ぐことができる。さらに、非イオン伝導性を与える材料を用いる方法によれば、電池を作製した場合に、電極用活物質粒子を柔らかい被覆層にめり込ませることで、電極用活物質と集電箔との接触抵抗を低減することができる。
【0029】
図1は電極活物質と集電体との間の接触抵抗について説明する図面である。この図を含めて、図において、わかり易くするように層の厚さは拡大してある。図1において、正極用活物質層4が被覆層3を有する集電体2に積層している。被覆層3が柔らかいため、正極用活物質層4の粒状物はプレスによって、集電体2に接触するとともに、安定してその状態が維持される。このような構成によって、正極用活物質と集電体との間の接触抵抗を低減することが可能となる。
【0030】
(バイポーラ電池)
図2は本発明のバイポーラ電極を説明するための断面図である。図2において、被覆層3a,bが両面に形成された集電体2の片面に正極用活物質層4を形成し、残りの面に負極用活物質層5が形成されている。被覆層は、必要により、集電体全体を被覆してもよい。バイポーラ電極を除いては、従来の電池に用いられる材料および製法を利用することができる。本発明では、集電箔は上記バイポーラ用集電体で説明した被覆集電箔を用いる。
【0031】
図3は本発明のバイポーラ電池における層の積層例を説明するための一部破断した断面図である。図3Aにおいて、被覆層3a、集電体2、被覆層3b、負極用活物質層5、電解質7、正極用活物質層4、被覆層3a、集電体2、被覆層3bの順に、上から下に、積層されている。ここで、電解質層7は固体電解質から形成されている。図3Bはゲル電解質を含浸させたセパレータを用いたバイポーラ電池である。図3Bにおいて、電解質層7がゲル状であるため、図3Aとは異なって、ゲル状電解質が外部に漏洩しないように漏洩防止部15が設けられている。なお、漏洩防止部15には、ポリオレフィン系樹脂などの熱融着樹脂が用いられる。ここで、負極用活物質層5、電解質層7、正極用活物質層4を順次積層したものを単電池と称する。
【0032】
負極用活物質としては、従来公知の材料であれば特に制限はされないが、リチウム金属、リチウム合金、LiTi12などのリチウム−遷移金属複合酸化物、ハードカーボン、グラファイトなどの炭素材料、酸化物材料などから適宜選択することができる。さらに必要に応じて、電子伝導性を高めるためのアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの導電助剤;ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴムなどのバインダ;ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、それらの共重合体などの固体電解質;LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSONなどのイオン伝導性を高めるための電解質支持塩などを用いることができる。なお、負極用活物質層の膜厚は、通常、1〜500μm程度である。
【0033】
正極用活物質としては、特に制限されるものではなく、従来公知の材料、例えば、遷移金属とリチウムとの複合酸化物を好適に使用できる。具体的には、LiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiCr、LiCrOなどのLi・Cr系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの(例えば、LiNiCo1−x(0<x<1)等)などが使用できる。さらに必要に応じて、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、固体電解質、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩などを用いることができる。なお、正極用活物質層の膜厚は、通常、1〜500μm程度である。
【0034】
正極用活物質としてはリチウム−遷移金属複合酸化物を、負極用活物質としてはカーボン若しくはリチウム−遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。容量、出力特性に優れた電池を構成できるからである。
【0035】
電解質としては、特に制限されるものではなく、従来公知の材料、例えば、(a)高分子ゲル電解質、(b)高分子固体電解質または(c)これら電解質を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)(d)液体電解質を用いることができる。
【0036】
(a)高分子ゲル電解質
ゲル電解質とは、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させたものをいう。上記ポリマーマトリックスとしては、PEO、PPO、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、PVdF、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体が望ましく、中でもPEO、PPOおよびそれらの共重合体、あるいは、PVdF−HFPを用いることが望ましい。電解液とは、電解質塩を溶媒に溶かしたものであり、電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種が、溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびそれらの混合物が望ましい。
【0037】
本発明におけるゲル電解質中の電解液の割合としては、特に制限されるべきものではないが、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。本発明では、電解液の割合が70質量%以上の、電解液が多いゲル電解質について、特に効果がある。
【0038】
(b)高分子固体電解質
全固体高分子電解質としては、例えば、PEO、PPO、これらの共重合体などの公知の固体高分子電解質が挙げられる。固体高分子電解質中には、イオン伝導性を確保するためにリチウム塩が含まれる。リチウム塩としては、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO、またはこれらの混合物などが使用できる。
【0039】
(c)上記電解質を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)
セパレータに含浸させることのできる電解質としては、既に説明した(a)および(b)と同様のものを用いることができる。
【0040】
上記セパレータとしては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔性シートおよび不織布を挙げることができる。
【0041】
多孔性シートとしては、例えば、微多孔質セパレータを用いることができる。該ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミド、アラミドが挙げられる。上記セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできないが、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。上記セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)、その空孔率は20〜70%であることが望ましい。
【0042】
不織布としては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
【0043】
(d)液体電解質(電解液)
電解液とは、電解質塩を溶媒に溶かしたものが挙げられる。ここで、電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種が、溶媒としては、EC、PC、GBL、DMC、DECおよびそれらの混合物が望ましい。
【0044】
電解質のなかでは、ゲル電解質を含浸させたセパレータが好ましい。容量、出力特性に優れた電池を構成できるからである。
【0045】
図4はバイポーラ型のリチウムイオン二次電池(以下、単にバイポーラ電池とも称する)の全体構造を模式的に示す断面図である。図4において、バイポーラ電池1では、集電体2の片方の面上に被覆層3bおよび正極用活物質層4を順次積層し、他方の面上に被覆層3aおよび負極用活物質層5を順次積層したバイポーラ電極6を、電解質層7を介して複数枚積層した構造の電極積層体(バイポーラ電池本体)8からなるものである。なお、バイポーラ電極6(電極6a、6bを含む)の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、こうしたバイポーラ電極6を複数枚積層した電極積層体8の最上層と最下層の電極6a、6bは、バイポーラ電極構造でなくてもよく、集電体2または端子板に必要な片面のみの被覆層3bおよび正極用活物質層4または被覆層3aおよび負極用活物質層5を配置した構造としてもよい。
【0046】
バイポーラ電池1では、上下両端の集電体2にそれぞれ正極および負極リード12、11が接合されている。
【0047】
また、本発明のバイポーラ電池1では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体8部分を電池外装材(外装ケース)13に減圧封入されている。
【0048】
なお、電池の初充電は電池外装材に封入した後に行う。その後、外装材に熱をかけながらプレスを行う。熱プレスなどの方法は従来の電池の場合に準ずる。
【0049】
このバイポーラ電池1の基本構成は、複数積層した単電池層または単セルが直列に接続された構成ともいえるものである。
【0050】
積層型電池に使われる集電体、正極用活物質、負極用活物質、電解質は、バイポーラ電池で説明した材料を用いることができる。
【0051】
正極用活物質としてはリチウム−遷移金属複合酸化物を、負極用活物質としてはカーボン若しくはリチウム−遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。容量、出力特性に優れた電池を構成できるからである。
【0052】
その他の層などについて説明する。
【0053】
[電池外装材]
電池外装材としては、従来公知のケースを用いることができ、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた素電池を覆うことができる袋状のケースを挙げることができる。ラミネートフィルムは、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルムである。
【0054】
[絶縁層]
絶縁層は、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止する目的で、各電極の周囲に形成される。必要に応じて、電極の周囲に絶縁層を設ける。該絶縁層としては、例えば、PE、PPなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミドなどが使用でき、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0055】
[正極および負極端子板]
正極および負極端子板は、必要に応じて使用する。例えば、最外部の集電体から電極端子を直接取り出す場合には、正極および負極端子板は用いない(図4参照のこと)。
【0056】
正極および負極端子板の材料は、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、SUS、これらの合金を利用する。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。さらに、端子部での内部抵抗を抑える観点から、正極および負極端子板の厚さは、通常、0.1〜2mm程度が望ましい。
【0057】
[正極および負極リード]
正極および負極リードに関しては、公知のリチウムイオン電池で用いられるリードを用いることができる。なお、電池外装材から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0058】
本発明のリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0059】
(組電池)
本発明では、上記リチウムイオン二次電池を複数個、並列接続または直列接続または並列−直列接続または直列−並列接続の少なくとも一つを用いて組電池(車両用サブモジュール)とすることができる。
【0060】
以下、当該組電池の実施形態につき、図面を用いて説明する。代表的な組電池には、バイポーラ電池を組合せた電池(図5)、バイポーラ電池と非バイポーラ電池を組合せた電池(図6)、複合組電池(図7)が挙げられる。
【0061】
図5は本発明のバイポーラ電池(24V、50mAh)を2直20並に接続した組電池(42V1Ah)の模式図である。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。ここで、2直20並に接続した組電池とは、40個のバイポーラ電池を用い、2個ずつ20組に分け、2個の電池を直列に接続し、かつ、直列に接続した20組の電池全部を並列に接続した電池をいう。図5において、40個のバイポーラ電池を準備し、2行5列で配列し、これを4段重ねる。1段目において、上下2個ずつ直列に接続し、直列に接続した5組全てを並列で接続し、さらに2〜4段目も同様に行って、最終的に直列に接続した20組の電池全部を並列に接続して素組電池を得る。なお、直列部分はタブ48、49同士を振動溶着して接続し、並列部分のタブは銅のバスバー56、58で接続する。
【0062】
得られた素組電池を金属製の組電池ケース55に収納する。このように、複数個のバイポーラ電池41を直並列に接続することによって、所望の電流、電圧、容量に対応できる組電池51を提供することができる。
【0063】
直列部分の端部を組電池ケースに取り付けられた端子62、64に接続し、正負の端子を構成する。具体的には、組電池ケース55の側面前部に形成された正極端子62、負極端子64のそれぞれは、各端子リード59を介して各バスバー56に接続される。
【0064】
また、該組電池51には、各単電池層、更にはバイポーラ電池の端子間電圧などの電池電圧を監視するため、組電池ケース55の側面前部に、検知タブ端子54が設置される。そして、検知タブ端子54は、検知線53を介して各バイポーラ電池41の電圧検知タブ60に接続される。
【0065】
組電池ケース55の底部には、合成ゴムなどの外部弾性体52が取り付けられる。組電池51を複数積層して複合組電池を形成する場合に、組電池51間の距離を一定に保ち、防振性、耐衝撃性、絶縁性、放熱性などを向上することができる。
【0066】
また、この組電池51には、使用用途に応じて、上記検知タブ端子54以外にも各種計測機器や制御機器類を設けることができる。
【0067】
さらに、バイポーラ電池1の電極タブ(48、49)同士や検知タブ60と検知線53さらにバスバー56、58と端子リード59等を連結する方法は、特に制限されることはなく、例えば、超音波溶接、熱溶接、レーザ溶接または電子ビーム溶接、または、リベットのようなバスバー56、58を用いる方法、カシメの手法を挙げることができる。
【0068】
また、本発明の組電池では、本発明のバイポーラ電池と、該バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした本発明のリチウムイオン二次電池(以下、単に非バイポーラ型電池ともいう)と、を並列に接続したものであってもよい。すなわち、組電池を形成する電池は、本発明のバイポーラ電池と非バイポーラ型電池(但し、全ての電池が必ずしも本発明の電池でなくともよい)とを混在させてもよい。これにより、出力重視のバイポーラ電池と、エネルギー重視の非バイポーラ型電池の組み合わせでお互いの弱点を補う組電池ができ、組電池の質量・サイズを小さくすることができる。バイポーラ電池と非バイポーラ型電池をどの程度の割合で混在させるかは、組電池として要求される安全性能、出力性能に応じて決める。
【0069】
図6はバイポーラ電池A(42V、50mAh)と非バイポーラ型電池B(4.2V、1Ah)10直(42V)を並列に連結した組電池の一例を示す図面である。ここで、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。図6において、非バイポーラ型電池B10枚を端から順番にバスバー56を介して振動溶着し、直列に接続する。さらに、バイポーラ電池Aと直列接続された両端の非バイポーラ型電池Bとをそれぞれバスバー56で並列に接続し、その後金属製の組電池ケース55に収納する。この組電池51’でも、並列部分及び図の横方向に隣り合う非バイポーラ型電池B間を直列接続する部分のタブは銅のバスバー56で接続し、図の縦方向に隣り合う一般電池B間を直列接続する部分はタブ39、40同士を振動溶着して接続する。このような構成により、非バイポーラ型電池Bとバイポーラ電池Aは電圧が等しくなり、その部分で並列接続を形成している。この組電池51’は、出力の分担をバイポーラ電池Aが有し、エネルギーの分担を非バイポーラ型電池Bが有する構造である。これは、出力とエネルギーを両立することが困難な組電池において、非常に有効な手段である。このように、バイポーラ電池Aを任意の個数直並列に接続することによって、所望の電流、電圧、容量に対応できる組電池51’を提供することができる。
【0070】
バイポーラ電池Aの両側には、バイポーラ電池Aの各層の電圧を検知するタブ60を取り出し、それらの検知線(図示せず)を組電池51’の前部に取り出している以外は、図5の組電池51と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付した。
【0071】
該組電池51’にも、正極端子62、負極端子64が組電池ケース55の側面前部に形成されており、各端子に、例えば、各バスバー56が端子リード59で接続される。タブ48,49はそれぞれバスバー56と接続する。
【0072】
また、該組電池51’には、バイポーラ電池Aの各単電池層、更にはバイポーラ電池A及び非バイポーラ型電池Bの端子間電圧などの電池電圧を監視するため、検知タブ端子54が組電池ケース55の側面前部に設置されている。そして、各バイポーラ電池A(更には非バイポーラ型電池B)の検知タブ60が全て検知線(図示せず)を介して検知タブ端子54に接続されている。
【0073】
組電池ケース55の低部には、合成ゴムなどの外部弾性体52が取り付けられている。組電池51’を複数積層して複合組電池を形成する場合に、組電池51’間の距離を一定に保ち、防振性、耐衝撃性、絶縁性、放熱性などを向上することができる。
【0074】
さらに、本発明の組電池では、上記の組電池を第1組電池ユニットとし、この第1組電池ユニットの端子間電圧と電圧を同一にするバイポーラ電池以外の二次電池が直並列接続されてなる第2組電池ユニットを形成し、この第1組電池ユニットと第2組電池ユニットを並列接続することによって組電池とすることもできる。
【0075】
なお、組電池の他の構成要件に関しては、何ら制限されるべきものではなく、従来公知の組電池用の構成部材および製造技術が利用できる。
【0076】
次に、上記の組電池は少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続した複合組電池(車両用組電池)とすることができる。複合組電池とすることによって、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、新たに組電池を作製することなく、比較的安価に対応することができる。すなわち、複合組電池は、組電池(本発明のバイポーラ電池ないし非バイポーラ型電池だけで構成したもの、本発明のバイポーラ電池と非バイポーラ型電池とで構成したものなど)を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続するものである。したがって、基準の組電池を製造し、それを組み合わせて複合組電池とすることで、組電池の仕様をチューニングできる。これにより、仕様の異なる組電池種を製造しなくてよく、複合組電池コストを減少できる。
【0077】
図7は複合組電池の一例を示す図面である。例えば、図5に記載のバイポーラ電池を用いた組電池(42V、1Ah)6組を並列に接続した複合組電池(42V、6Ah)の模式図が図7である。ここで、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。複合組電池を構成する各組電池は連結板と固定ねじにより一体化し、組電池の間に弾性体を設置して防振構造を形成する。また、組電池のタブは板状のバスバーで連結している。すなわち、図7において、上記の組電池51を6組並列に接続して複合組電池70とするには、各組電池ケース55の蓋体に設けられた組電池51のタブ(正極端子62および負極端子64)を、板状のバスバーである外部正極端子部を有する組電池正極端子連結板72、外部負極端子部を有する組電池負極端子連結板74を用いてそれぞれ電気的に接続する。また、各組電池ケース55の両側面に設けられた各ネジ孔部(図示せず)に、該固定ネジ孔部に対応する開口部を有する連結板76を固定ネジ77で固定し、各組電池51同士を連結する。また、各組電池51の正極端子62および負極端子64は、それぞれ正極および負極絶縁カバーにより保護され、適当な色、例えば、赤色と青色に色分けすることで識別されている。また、組電池51の間、詳しくは組電池ケース55の底部に合成ゴムなどの外部弾性体52を設置して防振構造を形成している。
【0078】
このように、基本となるリチウム二次電池を組み合わせることにより種々の車両ごとの容量・電圧の要望を満たすことができる。その結果、種々の車両ごとに異なる電池を設計、生産する必要がなく、基本となる電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。
【0079】
また、上記複合組電池では、これを構成する複数の組電池をそれぞれ脱着可能に接続しておくのが望ましい。このように、組電池を複数直並列接続されてなる複合組電池では、一部の電池、組電池が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能となる。
【0080】
また、本発明に用いられる車両は、上記組電池および/または上記複合組電池を搭載することができる。これにより、軽く小さい電池にすることでスペース要望の大きな車両要望に合致できる。電池のスペースを小さくすることで、車両の軽量化も達成できる。
【0081】
(車両)
図8は、電気自動車の車体中央部の座席下に複合組電池または電池が搭載された一例を示す図面である。電気自動車80の座席下に複合組電池70を搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができる。なお、かかる電池を搭載する場所は、座席下に限らず、車両の床下、シートバック裏、後部トランクルームの下部または、車両前方のエンジンルームでもよい。
【0082】
なお、本発明では、複合組電池単独、組電池単独、または複合組電池と組電池を組み合わせて車両に搭載することができる。また、上記電池を駆動用電源や補助電源として搭載することのできる車両としては、上記の電気自動車、燃料電池自動車やこれらのハイブリッドカーが好ましいが、これらに制限されるものではない。本発明の電池を電気自動車、燃料電池自動車やこれらのハイブリッドカーに用いることにより、高寿命で信頼性の高い車両とすることができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0084】
予めバイポーラ電極用スラリー、ゲル電解質を作製する。
【0085】
<バイポーラ電極用スラリー>
○正極
・以下の材料を括弧内に示した質量比で混合して正極スラリーを作製する。
・正極用活物質として、LiMn(85wt%)。
・導電助剤として、アセチレンブラック(5wt%)。
・バインダとして、PVdF(10wt%)。
・スラリー粘度調整溶媒として、NMP(適量)
○負極
・以下の材料を括弧内に示した質量比で混合して負極スラリーを作製する。
・負極用活物質として、ハードカーボン(90wt%)。
・バインダとして、PVdF(10wt%)。
・スラリー粘度調整溶媒として、NMP(適量)
<ゲル電解質の形成>
厚さ20μmの不織布をセパレータとして用いる。上記セパレータに、ポリマーとして数平均分子量約8000のPEO系マクロモノマー(PEOとPPOの共重合体)を5wt%、電解液としてEC+PC(1:1)に1.0MのLiBFを溶解させたものを95wt%、および重合開始剤を2000ppmからなるプレゲル溶液を含浸させて、不活性雰囲気化で光架橋させることによりゲル電解質を形成する。
【0086】
(実施例1)
集電体であるSUS箔(厚さ10μm)の両面に、導電性塗料(厚さ2μm)をコーティングした。導電性塗料は、ポリプロピレン(70wt%)にカーボンブラック(30wt%)を十分に分散させたものを用いた。上記コーティング集電箔の片面に、上記負極スラリーを塗布し乾燥・プレスにより、厚さ15μmの負極を形成した。負極を塗布した上記集電箔の反対面に、上記正極スラリーを塗布し乾燥・プレスにより、厚さ15μmの正極を形成した。以上のように、集電箔の両面に正極と負極を有するバイポーラ電極を形成した。
【0087】
上記バイポーラ電極とゲル電解質を、正極と負極がゲル電解質を挟むように積層した。5層積層した後、積層体をラミネートパックで封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0088】
(実施例2)
集電体であるSUS箔(厚さ10μm)の両面に、金めっき(厚さ2μm)を施した。実施例1と同様にして、金めっき集電箔の両面に正極と負極を有するバイポーラ電極を形成した。
【0089】
実施例1と同様にして、バイポーラ電極とゲル電解質を5層積層・ラミネート封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0090】
(比較例)
集電体であるSUS箔(厚さ10μm)をそのまま用いた。実施例1と同様にして、集電箔の両面に正極と負極を有するバイポーラ電極を形成した。
【0091】
実施例1と同様にして、バイポーラ電極とゲル電解質を5層積層・ラミネート封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0092】
(評価1)
それぞれの電池において、サイクル試験(1C CC充放電)を行った。いずれの電池も、初回充放電においては全く問題がなく、良好な電池特性を示した。ところが100サイクル、200サイクルとサイクル数が増すにつれ、比較例の電池は容量低下が見られ、500サイクルではそれが顕著に表れた。電池を分解してみると、正極側でのSUSの腐食が見られた。一方、実施例1、実施例2の電池は、500サイクルを超えても初期と同等な容量を維持し、良好なサイクル特性を示した。電池を分解してみても、正極側での腐食は見られなかった。
【0093】
(評価2)
それぞれの電池において、満充電保存試験を行った。30日後、比較例の電池は電池電圧が著しく低下していた。電池を分解してみると、正極側でのSUSの腐食が見られた。一方、実施例1、実施例2の電池は、30日を超えても電池電圧を維持し、良好な電圧維持率を示した。電池を分解してみても、正極側での腐食は見られなかった。
【0094】
(評価3)
それぞれの電池において、電池抵抗を測定した。比較例の電池抵抗を100%とすると、実施例1の電池抵抗は95%、実施例2の電池抵抗は90%を示した。
【符号の説明】
【0095】
1 バイポーラ電池、
2 集電体、
3 被覆層、
4 正極用活物質層、
5 負極用活物質層、
7 電解質層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン伝導性で、かつ、電子伝導性を有する層が少なくとも負極側に被覆された金属箔を集電体に用いることを特徴とするバイポーラ電池。
【請求項2】
前記層は、非イオン伝導性ポリマーと電子伝導性粒子とを含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記層は、金メッキ層または白金メッキ層である請求項1記載の電池。
【請求項4】
前記非イオン伝導性ポリマーは、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アラミド樹脂、エポキシ樹脂およびウレタン樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の電池。
【請求項5】
前記電子伝導性粒子は、炭素材料、金属および導電性セラミックよりなる群から選ばれた少なくとも1種の材料からなる粒子であることを特徴とする請求項2または請求項4記載の電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−181520(P2011−181520A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112807(P2011−112807)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【分割の表示】特願2004−380792(P2004−380792)の分割
【原出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】