説明

バインダーレスゼオライトビーズ成形体およびその製造方法並びにこれを用いた吸着除去方法

【課題】強い強度物性と優れた吸着性能を併せ持つ、バインダーレスゼオライトビーズ成形体、このバインダーレスゼオライトビーズ成形体を容易に得ることができる製造方法、及びこのバインダーレスゼオライトビーズ成形体を用い、ガスや液中の水等の特定成分をガスや液より吸着除去する方法を提供する。
【解決の手段】ゼオライト含有率が95%以上で、交換可能なナトリウムイオンの一部又は全部が一価から三価の陽イオンまたはこれらの混合物で交換され、かつ、全粒子の内、粒径が1.7mm以上である粒子の耐圧強度の平均値が6kgf以上であるバインダーレスゼオライトビーズ成形体、また、原料混合物を成形、焼成し、バインダーレス化し、イオン交換、活性化する製造方法、及びこのバインダーレスゼオライトビーズ成形体を用いた被吸着物質の吸着除去方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結合剤含有量が少なく、かつ、成形体の物理的強度が優れた、いわゆる高強度なバインダーレスゼオライトビーズ成形体及びその製造方法に関するものである。さらにこれを用いてガス中又は液中の被吸着物質を吸着除去する方法に関するものである。詳しくは、乾燥脱水剤あるいは吸着分離用として工業的に広く用いられ、例えばフロン冷媒、有機溶媒中の水分除去、地球温暖化の環境問題である二酸化炭素の吸着分離などの分野において有用となる高強度バインダーレスゼオライトビーズ成形体及びその製造方法、さらにこれを用いてガス中又は液中の被吸着物質を吸着除去する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常、ゼオライト成形体は、ゼオライト粉末と粘土系バインダー、および増粘剤あるいは分散剤などを添加し、ビーズ、又は、ペレットなど目的に応じた形状に造粒成形される。
【0003】ゼオライトと非吸着成分の粘土系バインダー等を用いて製造される吸着剤において、優れた吸着性能を発揮するには、バインダー成分を低減させ有効吸着成分であるゼオライトの含有率を高くすることが必要である。
【0004】一方、吸着剤用途によってはその用途に応じて要求される物性及び特性が異なり、例えば水分除去を目的とした乾燥剤用途の場合、振動、加熱再生などの過酷な条件下で使用されるため成形体の剥離、粉化などの少ない、形状がビーズ状で物理的強度の高い成形体が要求されていた。
【0005】従来、成形体の強度物性を向上させるために粘土系バインダー量を多くして成形しているのが実状であったが、バインダー量が増加するに比例してゼオライト含有率が低下し、満足する吸着性能が得られない吸着剤になるとともに、バインダーが不均一に分散してしまい強度物性、吸着能力共にバラツキが大きくなる。
【0006】ゼオライト含有量を高める方法として、特開昭57−122932号公報、には、ナトリウムA型ゼオライト粉末とカオリン系粘土バインダーからなる柱状成形体を焼成、水酸化ナトリウム水溶液を用い粘土成分をゼオライト化するバインダーレス法が開示されている。
【0007】特許第2756567号公報には、ゼオライトとカオリン粘土、さらに重合度800以上のカルボキシメチルセルロースからなる混合物を、押出し成形、焼成することで強度物性の高い円柱状成形体が得られると開示されている。
【0008】特許第3066427号公報には、ゼオライト、カオリン粘土、水酸化ナトリウム、カルボキシメチルセルロースからなる混合物を、押出し成形、焼成、水酸化ナトリウム水溶液を用いバインダーレス化することでより強度物性の高い円柱状成形体が得られると開示されている。
【0009】特許第2782744号公報には、カオリン粘土量を増加させた円柱状の成形体をバインダーレス化すると、得られる成形体強度は向上するが、ゼオライト含有率は低いことが開示されている。
【0010】特開平10−87322号公報には、ゼオライト、カオリン粘土、カルボキシメチルセルロースからなる混合物を、円柱状に押出し成形した後、転動整粒を行ないビーズ状に変形させた成形体を焼成する方法が開示されているが得られる成形体強度は、乾燥剤用途などの過酷な条件で使用する場合の成形体強度として不充分である。
【0011】さらに、吸着剤や乾燥剤などの用途で用いる場合、ゼオライトの交換可能なカチオン部位の一部または全部をアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類元素などに属するカチオンにイオン交換して用いられる。
【0012】イオン交換の方法としては公知の方法、ゼオライトにこれらのカチオンを含む水溶液を接触させイオン交換する方法が用いられ、例えば、特開平6−183726には、ナトリウムA型ゼオライト、カオリン粘土、水酸化ナトリウム、カルボキシメチルセルロースからなる混合物を、円柱状に押出成形、焼成し、水酸化ナトリウム水溶液を用いバインダーレス化した後に、塩化カルシウム水溶液を用いてイオン交換し、カルシウムA型ゼオライトに変化させる方法、さらにカルシウムイオンの交換率を40%以上70%未満にすることで優れた吸着特性や機械的特性が得られると開示されているが、実際に得られた成形体の耐圧強度は4kgf以下と、乾燥剤用途で使用する場合にはより優れた強度物性を有する成形体が要求されていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このようなゼオライトビーズ成形体における従来の課題を克服し、中でも乾燥脱水剤用途に要求される、強い強度物性と優れた吸着性能を併せ持つ、バインダーレスゼオライトビーズ成形体およびその製造方法、さらにはそれを用いた吸着除去方法を提供するものである。
【0014】
【発明を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ゼオライト100重量部に対し、カオリン系粘土を20〜35重量部と水溶液がアルカリ性で高水溶性の無機系分散剤を4〜10重量部又は/及び0.5〜5重量部のセルロース誘導体との混合物から転動造粒により成形したゼオライトビーズ成形体を焼成した後、水酸化ナトリウム水溶液と接触させバインダーレス化しイオン交換、活性化する方法によって、ゼオライト含有率95%以上、好ましくは98%以上で、交換可能なナトリウムイオンの一部又は全部が、一価から三価の陽イオンまたはこれらの混合物で交換され、かつ、全粒子の内の粒径が1.7mm以上である粒子の耐圧強度の平均値が6kgf以上であるバインダーレスゼオライト成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】以下、A型ゼオライトを例にして本発明を詳細に説明する。
【0016】本発明のバインダーレスゼオライト成形体の製造方法は、ゼオライト100重量部に対し、カオリン系粘土を20〜35重量部と水溶液がアルカリ性で高水溶性の無機系分散剤を4〜10重量部又は/及び0.5〜5重量部のセルロース誘導体との混合物から転動造粒により成形したゼオライトビーズ成形体を、水酸化ナトリウム水溶液と接触させバインダーレス化、イオン交換、活性化する工程から構成されたおり、以下、順に説明する。
【0017】本発明のゼオライト種としては、特に限定されるものではないが、前記したように、乾燥対象物質の分子径の面からA型ゼオライト又はX型ゼオライトが好ましく用いられる。A型又はX型ゼオライトの製造方法は公知の方法、すなわちアルミン酸ナトリウムおよびケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウムを原料として合成される。
【0018】本発明の粘土バインダーとしては、カオリン系粘土を用いる。カオリン系粘土は、カオリン鉱物に属する粘土でありカオリナイト、ハロイサイト、木節粘土、蛙目粘土などが挙げられる。
【0019】これら粘土バインダーは、成形体中のゼオライト粒子間に存在するものであり、特に成形体の強度を向上させるため成形体密度を高く、ゼオライトビーズ成形体中に存在する空隙の比率、即ち、空隙率を低くするには1次粒子径が1μm以下のものが好ましく、例えば、ジョージアカオリン粘土等が挙げられる。これらは、1種単独のみならず、2種以上が混合されてもよい。
【0020】カオリン系粘土の混合部数は、成形体の物理的強度を高くバインダーレス化で高いゼオライト含有率を得るためには、無水基準でゼオライト粉末100重量部に対し20〜35重量部の範囲が好ましい。35重量部を超えると、バインダーレス化においてメタカオリン成分がゼオライト結晶への転換に長時間要することや、成形体内中心部分まで完全にゼオライト結晶へ転換せず、高いゼオライト含有率が得られない。また、20重量部以下になると物理的強度が満足されず、乾燥脱水剤としての使用目的に耐え難いものになることがある。
【0021】本発明は、ゼオライトビーズ成形体を得る際に、水溶液がアルカリ性で高水溶性の無機系分散剤又は/及びセルロース誘導体を混合することを特徴とする。
【0022】本発明の無機系分散剤としては、水溶液がアルカリ性で高い水溶性を示す縮合リン酸塩やアルミン酸塩が好ましい。その縮合リン酸塩としては、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウムなどが挙げられ、中でもピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムが好ましい。これらは単独もしくは2種以上の混合物で使用しても問題ない。
【0023】また、アルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カリウムが挙げられ、中でもアルミン酸ナトリウムが好ましい。これらは単独もしくは2種の混合物で使用しても良い。さらに、縮合リン酸塩とアルミン酸塩と組合せて使用しても問題ない。
【0024】本発明の無機系分散剤の混合部数としては、有姿で4〜10重量部が好ましい。従って、縮合リン酸塩を用いる場合、五酸化リン基準で2〜5重量部、また、アルミン酸塩を用いる場合も酸化アルミニウム基準で2〜5重量部を水に溶解して添加する。添加する水の量としては、特に限定されないが40〜60重量部の範囲が好ましい。無機系分散剤の量が10重量部を超えると、混合混練に用いる水分では溶解できず、スラリー状態で混合することになり、混合混練物を均一分散できず一様な成形体強度が得られない。よって水に溶解度の高い縮合リン酸塩やアルミン酸塩が好ましい。また、縮合リン酸塩やアルミン酸塩の量が4重量部以下になると分散効果が不充分で物理的強度が満足されない。
【0025】また、縮合リン酸塩の中でも水溶液が酸性を示すものは、A型ゼオライトのような耐酸性の低いゼオライトの場合、ゼオライトの結晶崩壊の原因となるため水溶液としてアルカリ性を示すものが好ましい。
【0026】本発明のセルロース誘導体は、増粘性多糖類に属するものである。セルロース誘導体に属するものとして、カルボキシメチルセルロース(以下CMCと記す)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースが挙げられ中でもCMCが好ましい。その他としてグアーガム誘導体に属するグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムや、バイオガムに属するキサンタンガム、ウエランガム、ジェランガムも使用できる。増粘性多糖類の効果としては、増粘効果を利用して造粒時の粒子付着力の向上による成形体強度の向上、成形操作性や収率の向上などが挙げられる。
【0027】セルロース誘導体の混合部数は有姿0.5〜5重量部の範囲が好ましい。混合部数が5重量部以上になると、増粘作用が強すぎるため成形したビーズ状成形体同士の付着などが起こり均一に成形できない。また、0.5重量部以下になると増粘効果が不充分で物理的強度が満足されない。
【0028】これら増粘性多糖類は単独のみならず2種以上を混合してもよい。また、本発明の無機系分散剤である縮合リン酸塩とアルミン酸塩のうち1種以上と組合せて使用しても問題ない。また、高いゼオライト含有率を得るためには、これらの増粘性多糖類が成形後の焼成工程で、燃焼あるいは分解し成形体中に残存しないものが好ましい。
【0029】上記に説明したゼオライト粉末、カオリン系粘土、水溶液がアルカリ性で高水溶性の無機系分散剤又は/及びセルロース誘導体は必要な水分を加え混合混練する。混合の方法は特に限定されないが、リボンブレンダー、ニーダー、ナウターミキサー、ミックスマラー等を用いて行なうことができるが、得られる混合物の嵩密度が0.8〜1.0kg/リットルであることが好ましい。混合物の嵩密度が0.8kg/リットルよりも小さい場合は圧密効果が不充分で混合物粒子間に気孔が多く存在するため、高い成形体強度が得られない。
【0030】本発明では、高い成形体強度を得るために、転動造粒でビーズ状に成形することを特徴とする。
【0031】転動造粒にはプレート型、パン型、ドラム型、羽根撹拌式転動造粒法が挙げられ、中でも羽根撹拌式転動造粒法が好ましい。これは通常の転動造粒に比して羽根撹拌することで強い剪断力が与えられ、空隙が小さく緻密な成形体に形成できるからである。
【0032】さらに物理的強度、特に摩耗強度を要求される場合、真球度の高いビーズ成形体であることが望ましく、成形したビーズを公知の方法、例えばマルメライザー成形機を用いて任意の回転数、時間条件で整粒して成形体表面を滑らかにすることが一般的に行なわれる方法である。又、本発明で得られるゼオライトビーズ成型体の粒度分布は0.1〜20mmと幅広いが、成型、整粒されるビーズの粒径は用途によって大きさを選択することが必要であり、篩等による分級で大きさを揃えれば良い。
【0033】このようにして成形された成形体は乾燥、焼成され、添加されたカオリン系粘土バインダーは非晶質のメタカオリンに転換、焼結される。乾燥、焼成方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、熱風乾燥機、電気マッフル炉、管状炉、回転炉などを用い、焼成温度は400〜700℃の範囲で行なえばよい。
【0034】次いで、得られた焼成物を水酸化ナトリウム水溶液と接触させバインダーレス化を行なう。バインダーレス化は公知の方法を用い、3〜10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて50〜100℃の温度で行なえばよい。
【0035】また、本発明のバインダーレスゼオライトビーズ成形体のゼオライト含有率はバインダーレス化後の成形体を焼成、活性化して求めることができる。
【0036】次いで、高いゼオライト含有率を有した成形体は、交換可能なナトリウムイオンの一部又は全部を一価から三価の陽イオンまたはこれらの混合物を含む水溶液と接触させイオン交換を行なう。
【0037】一価から三価の陽イオンには、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類元素が挙げられ、中でも高い水分吸着容量を得るにはアルカリ金金属、アルカリ土類金属が好ましい。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、ルビジウム、フランシウムがなどがあり中でもナトリウム、カリウム、リチウムが好ましい。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ベリリウム、ラジウムなどがあり中でもカルシウム、マグネシウムが好ましい。遷移金属としては、鉄、銅、チタン、銀、ジルコニウム、白金、金、タングステン、クロム、マンガン、ニッケル、コバルト、ガリウム、ゲルマニウムなどが挙げられ、希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウムが挙げられる。
【0038】イオン交換方法は公知の方法、これら金属の塩化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩の水溶液を用い、0.1〜5Nの濃度に調製した水溶液を用い、10℃〜90℃の温度で行なえばよい。また、交換可能なナトリウムイオンをアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類元素から選ばれたカチオンの混合物にする場合、そのカチオンを含んだ混合水溶液を用いてイオン交換すればよい。
【0039】カチオンの交換率は、ゼオライト種類や交換カチオンの種類あるいは交換率により吸着特性が多種多様に変化するため、そのカチオンの交換率は目的に応じて選択すればよい。
【0040】例えば、ナトリウムA型ゼオライトを、カリウムイオンで交換すると水分吸着容量は低下するが、ゼオライト細孔径が4Åから3Åへ変化するため、窒素などの小分子径のガス中に含まれる水分のみを吸着除去させる際には、ゼオライト細孔径が3ÅであるカリウムA型ゼオライトが有効である。特開平6−48728記載によると、3Åとなる交換率は16%以上と開示されている。
【0041】イオン交換された成形体は水洗、乾燥され焼成活性化される。焼成活性化の方法としては公知の方法を用い実施することができ、例えば、熱風乾燥機、電気マッフル炉、管状炉、回転炉などを用い、焼成活性化温度は300〜700℃の範囲で行なえばよい。
【0042】このようにして得られたバインダーレスゼオライトビーズ成形体は、まずその形状がビーズ状であることが特徴である。また、その成形体の大きさは限定されないが、吸着剤として用いる場合、高い動的吸着性能を得るためには粒径が0.5〜5mmの範囲が90%以上含むことが好ましい。
【0043】また、乾燥剤として用いる場合、満足される成形体強度の6kgf以上を得るには、1.7〜2.4mmの範囲が90%以上含むことが好ましい。さらにこの粒径範囲の中でも充填容器における乾燥剤の充填性を向上させるためには粒径範囲の揃った1.7〜2.0mmの粒径が90%以上含むものが好ましい。
【0044】本発明で得られるバインダーレスゼオライトビーズ成形体は、ゼオライト含有率が95%以上、好ましくは98%以上で、交換可能なナトリウムイオンの一部又は全部が一価から三価の陽イオンまたはこれらの混合物で交換され、かつ、全粒子の内、粒径が1.7mm以上の粒子における耐圧強度の平均値が6kgf以上である。
【0045】さらに、本発明のバインダーレスゼオライトビーズ成形体は、乾燥脱水用あるいは吸着分離用として広く用いられる。例えば、カーエアコン用などの各種冷凍空調機器で用いられる冷媒用フロンの脱水剤として用いることができ、その他、大型自動車用エアーブレーキ用脱水剤、有機溶媒中あるいは空気中の水分除去、又、地球温暖化の環境問題である二酸化炭素の吸着など吸着分離剤分野の用途にも有用である。
【0046】また、本発明のバインダーレスゼオライトビーズ成形体を硝酸銀水溶液などを用いて銀イオン交換することで、天然ガスやエチレンガス中の水分と微量含まれる水銀も同時に除去することができる。
【0047】
【実施例】以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、各評価は以下に示した方法によって実施した。
【0048】(1)嵩密度JIS−K−3362の見かけ密度測定器を用いた方法に準じ、混合混練後の混合物を容積Vmlのポリエチレン製のカップ(W1)に受け、山盛りになったところで直線状のヘラですり落とした後、混合物の入ったカップの重量(W2)を1g単位まで読み取り、次の式により嵩密度を算出した。
【0049】
嵩密度(kg/リットル)=(W2−W1)/V(2)水分平衡吸着量焼成・活性化したバインダーレスゼオライトビーズ成形体を冷却後、温度25℃、相対湿度80%のデシケーター中で16時間以上放置して完全に水和した。次いで、マッフル炉中で900℃、1時間焼成し、成形体に吸着された水分平衡吸着量を測定した。
【0050】(3)耐圧強度イオン交換、洗浄、乾燥後に、焼成・活性化したバインダーレスゼオライトビーズ成形体を冷却後、1.7〜2.4mmの2段階の篩にて水分を吸着しないよう素早く篩い分け、そのうちの1.7〜2.0mmのもの25個を硬度計(藤原製作所製、型式:KHT−20)で一個ずつ測定した。測定は、直径5mmの圧子によって一定速度で成形体に加重を加える方式によるもので、成形体が破砕された時の加重量を耐圧強度(kgf)とし、得られた値の平均値を各実施例、比較例の耐圧強度とした。
【0051】(4)ゼオライト含有率上記の水分平衡吸着量測定方法において、純粋な4A型ゼオライト粉末の水分平衡吸着量は28.0%であった。バインダーレス化後、純水で水洗し乾燥した成形体を焼成・活性化した成形体の水分平衡吸着量(A)を測定し、ゼオライト含有率を以下の式で算出した。
【0052】
ゼオライト含有率(%)=A/28.0×100(5)イオン交換率イオン交換した成形体を、硝酸とフッ酸を用いて完全に溶解した後、ICP発光分析装置(パーキンエルマー社製、型式optima3000)を用い、ナトリウム、イオン交換カチオンの含有量を測定値し、総カチオンに対する交換カチオンのモル分率からイオン交換率を計算した実施例1合成ナトリウムA型ゼオライト粉末(東ソー株式会社製、SiO2/Al23=2.0)100重量部に対してジョージアカオリン粘土30重量部および50重量部の水に溶解させたP25基準で4.5重量部のトリポリリン酸ナトリウムをミックスマーラー混練機(新東工業社製、型式:MSG−05S)で充分に混合混練した。得られた混合物の嵩密度を前記の方法によって測定した結果、0.98kg/リットルであった。
【0053】この混合物を羽根攪拌式転動造粒機ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製、型式:FM−75)を用いビーズ形状に造粒成形した。
【0054】この成形物から粒径1.7〜2.4mmの粒子を篩いを用いて分級し、マルメライザー成形機(不二パウダル社製、型式:Q−1000)を用いて整粒した後、乾燥し、マッフル炉(アドバンテック社製、型式:KM−600)を用いて空気流通下において650℃雰囲気中5時間焼成して粘土を焼結、メタカオリン化させた。
【0055】この焼成物を無水基準で100gと7重量%の水酸化ナトリウム水溶液400ccを1リットルの蓋付きステンレス製容器に入れ、熱風乾燥機内で40℃、1時間静置熟成した後、80℃で4時間静置結晶化した後、純水で十分に洗浄し乾燥した。
【0056】ついで、乾燥された成形体のうちの30gを、マッフル炉(アドバンテック社製、型式:KM−600)を用いて空気流通下において600℃雰囲気中5時間焼成して活性化させ、得られたバインダーレスゼオライトビーズ成形体を前記の方法で測定した水分平衡吸着量からゼオライト含有率を算出し、その結果を表1に示す。
【0057】また、バインダーレス化後乾燥された成形体を無水換算で50gと、液濃度0.5Nに調製した塩化カリウム水溶液を、成形体中のアルミニウムイオンに対し3倍当量の量をポリエチレン製容器入れ、室温で24時間イオン交換を1回行なった後、純水で十分に洗浄、乾燥し、マッフル炉(アドバンテック社製、型式:KM−600)を用いて空気流通下において600℃雰囲気中5時間焼成して活性化させ、得られたバインダーレスゼオライトビーズ成形体を前記の方法でイオン交換率、耐圧強度、水分平衡吸着量を測定した結果を表2に示す
【0058】
【表1】


【表2】


表1及び表2において、粘土の量とはゼオライト100重量部に対する量を示し、無機系分散剤の量とはゼオライト100重量部に対するP25およびAl23の量である。また、使用した無機系分散剤の種類は、A:トリポリリン酸ナトリウム(Na5310)、B:ピロリン酸ナトリウム(Na427)、C:アルミン酸ナトリウム(Na2Al24、D:ピロリン酸カリウム(K427)を示す。
【0059】イオン交換では、全て交換カチオンの塩化物(試薬特級)を純水に溶解させた水溶液を用いた。
【0060】実施例2〜10表1に示したジョージアカオリン粘土、無機系分散剤、セルロース誘導体の種類や混合部数、イオン交換条件以外は実施例1と同様な操作によってバインダーレスゼオライトビーズ成形体を調製した。また、混合混練により得られた混合物の嵩密度を前記の方法により測定した結果、0.88〜0.99の範囲であった。造粒成形後、焼成、バインダーレス化、イオン交換、活性化により得られたバインダーレスゼオライトビーズ成形体のゼオライト含有率、イオン交換率、耐圧強度、水分平衡吸着量を前記と同様方法で測定した。
【0061】比較例1〜11比較例1〜10は、表1に示したジョージアカオリン粘土、無機系分散剤、セルロース誘導体の種類や添加量、バインダーレス化の有無、イオン交換条件以外は実施例1と同様な操作によってバインダーレスゼオライトビーズ成形体を調製した。また、混合混練で得られた混合物の嵩密度を前記の方法により測定した結果、0.83〜0.95の範囲であった。
【0062】比較例11は、特開平10−87322号公報の実施例4に記載の方法に従い、また、比較例12は、同様の方法でカオリン系粘土部数のみを本発明範囲の量に変化させてゼオライトビーズ成形体を調製した。
【0063】さらに、これらゼオライトビーズ成形体を実施例1と同様な操作によってバインダーレスゼオライトビーズ成形体を調製し、得られた成形体を前記の方法にて測定した水分平衡吸着量からゼオライト含有率を算出し、その結果を表3に示す。
【0064】さらに、実施例1と同様にアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物を用いてイオン交換して得られた成形体を前記の方法でイオン交換率、耐圧強度、水分平衡吸着量を測定しその結果を表4に示す。
【0065】
【表3】


【表4】


表3及び表4において、粘土の量とはゼオライト100重量部に対する量を示し、無機系分散剤の量とはゼオライト100重量部に対するP25量である。また、使用した無機系分散剤の種類は、A:トリポリリン酸ナトリウム(Na5310)を示す。
【0066】イオン交換では、全て交換カチオンの塩化物(試薬特級)を純水に溶解させた水溶液を用いた。
【0067】比較例8は、混合混練工程で使用する水に縮合リン酸塩が完全に溶解せずスラリー状で添加したため混合物が不均一となり、均一なビーズ形状に成形できなかった。
【0068】比較例9は、増粘作用が強すぎるため成形したビーズ状成形体同士の付着が起こり均一に成形できなかった。
【0069】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明のバインダーレスゼオライトビーズ成形体は耐圧強度、水分平衡吸着量、ゼオライト含有率が高く優れた吸着剤物性を示した成形体である。さらに本発明の製造方法により、本発明のバインダーレスゼオライトビーズ成形体を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ゼオライト含有率が95%以上で、交換可能なナトリウムイオンの一部又は全部が一価から三価の陽イオンまたはこれらの混合物で交換され、かつ、全粒子の内、粒径が1.7mm以上である粒子の耐圧強度の平均値が6kgf以上であるバインダーレスゼオライトビーズ成形体。
【請求項2】一価から三価の陽イオンが、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属である請求項1記載のバインダーレスゼオライトビーズ成形体。
【請求項3】ゼオライト含有率が98%以上である請求項1又は請求項2記載のバインダーレスゼオライトビーズ成形体。
【請求項4】ゼオライトがA型又はX型である請求項1〜3のいずれかに記載のバインダーレスゼオライトビーズ成形体。
【請求項5】ゼオライト100重量部に対し、カオリン系粘土20〜35重量部と、水溶液がアルカリ性で高水溶性の無機系分散剤4〜10重量部及び/又はセルロース誘導体0.5〜5重量部との混合物から転動造粒によって成形したゼオライトビーズ成形体を焼成した後、水酸化ナトリウム水溶液と接触させることによりバインダーレス化し、イオン交換、活性化する請求項1〜4のいずれかに記載のバインダーレスゼオライトビーズ成形体の製造方法。
【請求項6】混合物の嵩密度が0.8〜1.0kg/リットルである請求項5記載のゼオライトビーズ成形体の製造方法。
【請求項7】混合物中のカオリン系粘土の1次粒子径が1μm以下である請求項5又は請求項6記載のゼオライトビーズ成形体の製造方法。
【請求項8】無機系分散剤が縮合リン酸塩及び/又はアルミン酸塩である請求項5記載のゼオライトビーズ成形体の製造方法。
【請求項9】縮合リン酸塩が、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム及びピロリン酸カリウムからなる群より選ばれる1種以上である請求項8記載のゼオライトビーズ成形体の製造方法。
【請求項10】アルミン酸塩が、アルミン酸ナトリウムである請求項8記載のゼオライトビーズ成形体の製造方法。
【請求項11】セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びエチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上である請求項5記載のバインダーレスゼオライトビーズ成形体の製造方法。
【請求項12】ガス中又は液中の被吸着物質を吸着除去する方法において、請求項1〜4のいずれかに記載のバインダーレスゼオライトビーズ成形体を用いることを特徴とする吸着除去方法。
【請求項13】被吸着物質が水である請求項12に記載の吸着除去方法。

【公開番号】特開2003−2636(P2003−2636A)
【公開日】平成15年1月8日(2003.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−184958(P2001−184958)
【出願日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】