説明

バキュームコンベア及びバキュームコンベア用ベルト

【課題】 スプリングバックの大きなワークに対しても充分な吸引力を発生できるバキュームコンベア及びバキュームコンベア用ベルトを提供すること。
【解決手段】 コンベアベルト7の吸着面7aには、そのベルト搬送方向に対して交差する方向へ延びる有底溝状の吸気穴7bが多数凹設される。この多数の吸気穴7bは、コンベアベルト7の長手方向に一定間隔おきに凹設されており、これら全体としてコンベアベルト7の外周面に筋状の模様を形成している。また、各吸気穴7bに穿設される貫通孔7c,7cは、吸気穴7bに比べて内径が小さく形成され、コンベアベルト7の幅方向両端よりの箇所、即ち、吸気穴7bの長手方向両端部にそれぞれ1つずつ穿設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングバックの大きなワークに対しても充分な吸引力を発生できるバキュームコンベア及びバキュームコンベア用ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の生産ラインでは、プレス加工されるシート状のワークを1枚ずつ吸着して加工機械へ供給する搬送コンベアが利用されている。このような搬送コンベアは、走行ベルト(コンベアベルト)に吸気穴が穿設されており、その走行ベルトの内周部に吸気室が設けられている。例えば、特開2004−315147号公報に記載の搬送コンベアによれば、走行ベルトに穿設される吸気穴(同公報中の「吸気口」に相当する)は真円状に形成されており、走行ベルトの中央部分でその長手方向に沿って所定の間隔で穿設され、走行ベルトの外周面側ではその直径が拡大されている。
【0003】
このような搬送コンベアによれば、真空ポンプなどの吸気装置による吸気によって吸気室内を負圧にすることで、走行ベルトの吸気穴に吸引作用を発生させて、ワークを走行ベルトの外周面に吸着させる。そして、ワークWを吸着させたまま走行ベルトを移動させて、ワークを加工機械へと搬送するのである。
【0004】
またここで、上記したようにワークを吸気作用により走行ベルトに吸着させる場合には、走行ベルト及びワーク間の気密性を充分に確保することが重要となる。そこで、走行ベルトにより搬送されるワークは、うねりが少ない平坦なものであることが望まれる。このため、ワークにうねりがある場合には、予めレベラーによりワークを平坦にする加工が施される。
【特許文献1】特開2004−315147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、自動車のボディには安全性及び燃費向上の観点から強靱且つ軽量なアルミニウム合金などの非磁性体材料が利用されている。例えば、5000系又は6000系ジュラルミンなどのアルミニウム合金である。しかしながら、このようなアルミニウム合金製のワークはスプリングバックが極めて大きいため、レベラーにより平坦に加工することは極めて困難であるという問題点がある。そこで、うねりが残存するワークでも確実に走行ベルトに吸着させるため、走行ベルトの吸着力の向上が求められる。
【0006】
しかしながら、上記した搬送コンベアでは、走行ベルトの吸気穴が大径の真円状であるので、うねりがありスプリングバックの大きなワークを吸着させた場合に空気漏れの発生しやすく、ひいては走行ベルトの吸引力(吸着力)の低下を招来しやすいという問題点がある。一方、このような空気漏れを抑制するには吸気穴の直径(内径)を縮径すればよいのだが、ここで無暗に吸気穴を縮径すれば、今度は吸気穴の内径に比例する吸引力が減少してしまうという問題点を招来してしまう。
【0007】
また、吸引力を増加させるために吸気装置の出力を上げることも可能ではあるが、これでは走行ベルト及び吸気室間に作用する摩擦抵抗も増大する結果となり、走行ベルトの駆動力の増加や、装置全体としての機械強度の増強も必要となるという問題点がある。また一方で、ワーク吸引に必要な吸引力を確保しつつ空気漏れを防止するため、図5に示すように、走行ベルト200に真円状の吸気穴201を千鳥配置(図5参照)して、その個数を増やすことも可能である。
【0008】
なお、図5は、従来のコンベアベルト(走行ベルト)200の平面図であり、コンベアベルト200は、吸着面201と、吸気穴202と、タイミングベルト用歯部203とを備え、その吸気穴202の内径は吸着面201側が拡大されている。
【0009】
しかしながら、かかる場合には、走行ベルトの幅方向両端部に存在するタイミングベルト用の歯部の刻設部分におけるベルト厚みが減少するため、走行ベルトに作用する内部応力が不均一となる。すると、走行ベルトの外周面(ワークが吸着される面)が平坦な状態を維持できなくなり、走行ベルト及びワーク間、並びに、走行ベルト及び吸気室間の気密性が著しく低下して、所望の吸引力を発生できないという問題点を生じてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、スプリングバックの大きなワークに対しても充分な吸引力を発生できるバキュームコンベア及びバキュームコンベア用ベルトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために請求項1記載のバキュームコンベアは、一対のプーリ間に巻架され所定搬送方向へ搬送移動される無端環状のベルトと、そのベルトの外周面に形成されワークを吸着させる吸着面と、そのベルトの内周部に配設されて吸気装置と連通される吸気室とを備えており、前記ベルトの吸着面には、そのベルト搬送方向に対する交差方向へ延びる有底溝状の吸気穴が、そのベルト搬送方向に間隔を空けて筋状に多数凹設されており、その多数の吸気穴の底部には、前記ベルトの内周面にまで貫通して前記吸気室と連通されると共に前記吸気穴より内径が小さく形成される貫通孔が少なくとも1箇所ずつ穿設されている。
【0012】
請求項2記載のバキュームコンベアは、請求項1記載のバキュームコンベアにおいて、前記ベルトの内周面における幅方向両端部にそれぞれ刻設されるタイミングベルト用歯部を備えており、前記多数の吸気穴は、前記タイミングベルト用歯部の刻設部分よりも前記ベルトの幅方向内側に凹設されている。
【0013】
請求項3記載のバキュームコンベアは、請求項1又は2に記載のバキュームコンベアにおいて、前記貫通孔は、前記各吸気穴の底部における前記ベルトの幅方向両端よりの箇所にそれぞれ1つずつ計2箇所に穿設されている。
【0014】
請求項4記載のバキュームコンベアは、請求項1から3のいずれかに記載のバキュームコンベアにおいて、前記吸気室の底板であって前記ベルトの内周面と対向する有孔板と、その有孔板と対向配置される前記ベルトの搬送方向に沿って前記吸気室の幅方向両側にそれぞれ配設される一対のマグネットと、その一対のマグネット及び前記吸気室を囲繞するハウジングと、そのハウジングに付設されそのハウジングに対して略鉛直方向に昇降可能に形成されるバキュームカップとを備えている。
【0015】
請求項5記載のバキュームコンベア用ベルトは、一対のプーリ間に巻架され所定搬送方向へ搬送移動される無端環状のベルトであって、そのベルトの外周面に形成されワークを吸着させる吸着面を備えており、その吸着面には、前記ベルト搬送方向に対する交差方向へ延びる有底溝状の吸気穴が、そのベルト搬送方向に間隔を空けて筋状に多数凹設されており、その多数の吸気穴の底部には、前記ベルトの内周面にまで貫通する貫通孔が少なくとも1箇所ずつ穿設されている。
【0016】
本発明のバキュームコンベア又はバキュームコンベア用ベルトによれば、ベルトは一対のプーリの回転によって所定搬送方向へ搬送移動される。そして吸気装置により吸気室内の空気が吸引されて吸気室内が負圧となると、貫通孔を通じて多数の吸気穴内の空気が吸引される。すると、各吸気穴へ向けて流入する気流が発生して、ワークがベルトの吸着面に吸着させられる。このようにして吸着面に吸着されたワークは、ベルトの搬送移動と共に搬送方向上流側から下流側へと搬送される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバキュームコンベア又はバキュームコンベア用ベルトによれば、ベルトの吸着面にはベルト搬送方向に対する交差方向へ延びる有底溝状の吸気穴がベルト搬送方向に間隔を空けて筋状に多数凹設されるので、真円形の吸気穴を有する従来品に比べて、吸着面の単位面積当りに存在する吸気穴の数を増加させることができる。すなわち、従来品に比べて本発明の吸着面には多数の吸気穴を密集させることができるので、その分、うねりが残存するワークとの間で空気漏れを生ずる吸気穴が一部にあっても、残りの吸気穴で充分にワークを吸着することができるという効果がある。
【0018】
しかも、吸気穴は、ベルト搬送方向と交差する方向に延びる溝状であるので、ベルト搬送方向に筋状に並べるように多数凹設できる。このため、1つの吸気穴単独の開口面積が従来品に比べて小さくても、吸着面の単位面積当りに凹設される複数の吸気穴の開口面積の総和を、従来品に比べて同等か又はそれ以上とすることができる。従って、本発明のベルトのように溝状の吸気穴を採用したとしても、それに起因した吸着力の低下を回避できるという効果がある。
【0019】
請求項2記載のバキュームコンベアによれば、多数の吸気穴はタイミングベルト用歯部を避けてベルト内周面に凹設されるので、タイミングベルト用歯部の刻設部分裏側に吸気穴が凹設されてベルトの厚みが部分的に極端に薄くなることを防いで、ベルトの応力分布の不均衡による吸着面の歪みを防止することができる。従って、かかる吸着面の歪みに起因してワークと吸着面との気密性が低下することを防止でき、希望する吸着力を発生させることができるという効果がある。
【0020】
しかも、各吸気穴はベルトの幅方向両端部よりも内側に凹設されるので、ワークが自重で撓んでベルトの幅方向両端部から剥離した状態にあっても(図2参照)、ワークと吸着面との間の気密性を充分に確保できるという効果がある。
【0021】
請求項3記載のバキュームコンベアによれば、各吸気穴の底部にはベルトの幅方向両端よりの箇所にそれぞれ1つずつ貫通孔が穿設されるので、ベルトの幅方向両端よりの箇所での吸引力を強めることができ、ベルトの幅方向両端近傍におけるワークと吸着面との気密性向上を図ることができるという効果がある。
【0022】
請求項4記載のバキュームコンベアによれば、ワークが磁性体であるか否かに関わらず、また金属でも非鉄金属でもベルト吸着面にワークを吸着させて搬送することができるという効果がある。また、吸気室のハウジングにはバキュームカップが付設されるので、バキュームカップによるワークの吸着動作と、既に吸着面に吸着されているワークの搬送動作とを同時に並行して行うことができ、ワークの搬出速度の増大化を図ることができるという効果がある。
【0023】
しかも、非磁性体製ワークの搬送と、磁性体製ワークの搬送とを同等の速度で行うことができるという効果もある。更に、一対のマグネットによるワークの吸着作用と、吸気装置によるワークの吸着作用とを併用することによってワークの搬出速度を一層増大させることができるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例であるバキュームコンベア1の構成図である。図1に示すように、ワークWを1枚ずつ取り出す毎に上方へ伸張駆動されるリフタ2が床面に設置されており、ワークWの前後方向(図1左右方向)両側には図示しない機枠により支持されるマグネットセパレータ3,3が一基ずつ配設されている。そして、このマグネットセパレータ3,3及びリフタ2の上方には、ベルトコンベア4が図示しない機枠により支持されて配設されている。
【0025】
ベルトコンベア4には、その前端側(図1左側)に駆動プーリであって永久磁石で形成されるマグネットプーリ5が配設される一方、その後端側(図1右側)に被動プーリ6が配設されている。また、ベルトコンベア4によれば、一対のプーリ5,6には無端環状のコンベアベルト7が巻架されており、この一対のプーリ5,6が図1中で時計回りに回転することによってコンベアベルト7の下辺側の外周面(吸着面7a)が矢印X方向(図1左方)へ向けて搬送移動される。
【0026】
また、コンベアベルト7の内周部には、このコンベアベルト7の外周面下辺にワークWを吸着させるための吸着力を発生させる吸着ユニット8が、コンベアベルト7の下辺に沿って配設されている。なお、図示は省略するが、ベルトコンベア4はコンベアベルト7の幅方向(図1紙面に対する垂直方向)に一対併設される。
【0027】
吸着ユニット8の傍らには一対のバキュームカップ9,9が付設されている。このバキュームカップ9,9は、図示しない機枠により支持されており、吸着ユニット8の前後方向(図1左右方向)に対して略垂直に且つ互いに一定間隔を空けて配設されている。また、バキュームカップ9,9は、ベルトコンベア4に対して鉛直方向(図1上下方向)へ昇降可能に配設されている。
【0028】
このバキュームカップ9,9には、図示しない導管を介して真空ポンプ10と連通接続されており、この真空ポンプ10による吸気動作を受けてワークWを吸着させることができる。真空ポンプ10は、バキュームカップ9,9にワークWを吸着させる吸着力を付与すると共に、導管11を介して吸着ユニット8と連通接続される吸気装置である。また、ベルトコンベア4のマグネットプーリ5の外方には、ワークWを加工機械へ供給するための一対のピンチローラ12,12が配設されている。
【0029】
図2は、図1のII−II線における拡大横断面図である。図2に示すように、コンベアベルト7は、それの外周面(図2下側面)が吸着ユニット8を介してワークWの吸着面7aとして機能する走行ベルトである。このコンベアベルト7の吸着面7aには吸気穴7bが凹設されている。吸気穴7bは有底溝状の凹部であり、この吸気穴7bの底部にはコンベアベルト7の内周面にまで貫通する一対の貫通孔7c,7cが穿設されている。
【0030】
ところで、コンベアベルト7はいわゆるタイミングベルトとして機能するものであり、当該ベルト7の内周面(図2上側面)であってその幅方向(図2左右方向)両端部には、タイミングベルト用歯部7dがそれぞれ刻設されている。このタイミングベルト用歯部7d,7dはいずれもコンベアベルト7の長手方向(図2紙面に対する垂直方向)に連なっている。また、吸気穴7bは、これらのタイミングベルト用歯部7d,7dの刻設部分よりベルト7の幅方向内側に凹設されている。
【0031】
吸着ユニット8は、主に、マグネットレール13と、ハウジング14と、有孔板15と、吸気室16と、スキッド17,17とを備えている。マグネットレール13は、吸着ユニット8の内部に配設される永久磁石であり、吸着ユニット8における前後方向(図2紙面に対する垂直方向又は、図1左右方向)全体に設けられている。
【0032】
このマグネットレール13は、断面視略逆凹字形の門型状に形成されており、その下辺部分が開口されている。具体的に、このマグネットレール13は、コンベアベルト7の幅方向(図2左右方向)に延設される横片13aと、この横片13aの延設方向(図2左右方向)両端から鉛直方向(図2下方)に延出される縦片13b,13bとを備えている。
【0033】
マグネットレール13の開口部は、上記した縦片13b,13bの間に設けられており、この開口部は吸着ユニット8より下方に配設されるコンベアベルト7の内周面と対向される。また、ハウジング14は、マグネットレール13の外側を囲繞するケース体であり、マグネットレール13と略相似形の断面形状を有している。そして、マグネットレール13及びハウジング14の下端面には全体に多数の小孔(又はスリット)が穿設された有孔板15が配設されている。
【0034】
この有孔板15はマグネットレール13下辺の開口部を閉鎖するようにハウジング14に固定されており、かかる有孔板15の上方には、当該有孔板15とマグネットレール13とにより囲繞された断面視矩形状の吸気室16が設けられている。吸気室16は有孔板15を底板とした吸着ユニット8の内部空間であって、この吸気室16の幅方向両側には上記したマグネットレール13の縦片13b,13bがそれぞれ配設されている。また、有底板15の下面はコンベアベルト7の内周面と隣接して対向され、この有孔板15を介して、吸気室16はコンベアベルト7の貫通孔7cと連通されている。
【0035】
また、マグネットレール13及びハウジング14の側面部には、吸気室16と連通する接続連通口13c,14aが穿設されており、この接続連通口13c,14aには導管11が接続されている。更に、ハウジング14の前後方向(図2紙面に対する垂直方向又は、図1左右方向)両端部はマグネットレール13の下端面まで延設されており、マグネットレール13の前後方向両端部を密閉している(図1参照)。
【0036】
また、ハウジング14の幅方向(図2左右方向)両端には、一対のスキッド17,17が1枚ずつ当着されている。この一対のスキッド17,17は、その下端がハウジング14の下端面から下方へ突出した状態で、ハウジング14の前後方向(図2紙面に対する垂直方向又は、図1左右方向)に連続して設けられている。
【0037】
図3は、コンベアベルト7の外周面を拡大視した平面図である。図3に示すように、コンベアベルト7の外周面である吸着面7aには、そのコンベアベルト7の長手方向であるベルト搬送方向(矢印X方向)に対して交差する方向へ延びる有底溝状の吸気穴7bが多数凹設されている。この多数の吸気穴7bは、コンベアベルト7の長手方向に一定間隔おきに凹設されており、これら全体としてコンベアベルト7の外周面に筋状の模様を形成している。
【0038】
これらの各吸気穴7bは、その溝長さを大きく採って吸気穴7bの開口面積を極力拡大させるために、コンベアベルト7の幅方向と略平行とはせずに(図4参照)、コンベアベルト7の幅方向に対して若干傾斜するような状態で凹設されている。また、各吸気穴7bに穿設される貫通孔7c,7cは、吸気穴7bに比べて内径が小さく形成されており、コンベアベルト7の幅方向両端よりの箇所(吸気穴7bの長手方向両端部)にそれぞれ1つずつ穿設されている。
【0039】
次に、上記のように構成されるバキュームコンベア1の動作について説明する。まず、マグネットセパレータ3により各ワークW相互間の隙間が空けられ、最上段にあるワークWがバキュームカップ9,9に1枚ずつ吸着されて、このバキュームカップ9,9の上昇によって、ワークWがコンベアベルト7の直下にまで持ち上げられる。
【0040】
このとき、ワークWが磁性体製のものであれば、マグネットレール13による磁力によりコンベアベルト7の吸着面7aにワークWが吸着される。一方、ワークWが非磁性体製のものであれば、真空ポンプ10により導管11を通じて吸気室16内の空気が吸引されて、吸気室16内の気圧が負圧となると、有孔板15及び貫通孔7cを通じて各吸気穴7bに吸引作用が発現されて、コンベアベルト7の吸着面7aにワークWが吸着される。なお、必要ならば、磁性体製のワークWに対しても真空ポンプ10による吸引力を併用することもできる。
【0041】
ワークWがコンベアベルト7の吸着面7aに吸着されると、コンベアベルト7はプーリ5,6を介し所定搬送方向(図1の矢印X方向)へ1ピッチ分だけステップ送りされて、ワークWをリフタ2の上方位置からコンベアベルト7の長手方向中間位置W’(図1中の2点鎖線)にまで搬送する。そして、次のステップ送りによってワークWが一対のピンチローラ12,12間の位置W”へ送り込まれると、この一対のピンチローラ12,12の回転によりワークWが加工機械(図示せず)へと送られる。
【0042】
以上説明したバキュームコンベア1によれば、5000系又は6000系ジュラルミンなどのスプリングバックが大きなワークWを吸気作用により吸着搬送する場合に、従来のコンベアベルトにあっては略2mm以上反り返ったワークWを吸着搬送できなかったのに対して、本実施例のコンベアベルト7を採用することで当該ワークWが略6mm程度反り返っていても吸着搬送することがきる。しかも、マグネットプーリ5を回転駆動させる駆動モータ(図示せず)の容量に至っては、従来のコンベアに比べて略40%の低減を図ることができる。
【0043】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、本実施例では、本発明をプレス用ディスタッカに適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲は必ずしもこれに限定されるものではなく、その他にブランキングライン用シートパイラーなどにも適用することができる。
【0044】
また、本実施例では、1つの吸気穴7aに対して貫通孔7cを2箇所に穿設したが、かかる貫通孔の穿設箇所は必ずしも1つの吸気穴に対して2箇所に限定されるものではなく、例えば、充分な吸引力が確保できるなら1つの吸気穴に対して貫通孔を1箇所のみ穿設しても良く、或いは、吸引力が不十分であれば1つの吸気穴に対して貫通孔を3箇所以上穿設するようにしても良い。
【0045】
また、本実施例では、吸気穴7bの長手方向がコンベアベルト7の幅方向に対して若干傾斜するように吸気穴7bをコンベアベルト7の吸着面7aに凹設したが、例えば、図4に示すように、吸気穴107bの長手方向がコンベアベルト107の幅方向(図4上下方向)と略平行となるように、当該吸気穴107bをコンベアベルト107の吸着面107aに凹設しても良い。なお、図4は、コンベアベルトの変形例を示す平面図および断面図である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例であるバキュームコンベアの構成図である。
【図2】図1のII−II線における拡大横断面図である。
【図3】コンベアベルトの外周面を拡大視した平面図である。
【図4】コンベアベルトの変形例を示す平面図および断面図である。
【図5】従来のコンベアベルトの平面図および断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 バキュームコンベア
5 マグネットプーリ(プーリ)
6 被動プーリ(プーリ)
7,107 コンベアベルト(ベルト、バキュームコンベア用ベルト)
7a,107a 吸着面
7b,107b 吸気穴
7c,107c 貫通孔
7d タイミングベルト用歯部
9 バキュームカップ
10 真空ポンプ(吸気装置)
13b,13b マグネットレールの縦片(一対のマグネット)
14 ハウジング
15 有孔板
16 吸気室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプーリ間に巻架され所定搬送方向へ搬送移動される無端環状のベルトと、そのベルトの外周面に形成されワークを吸着させる吸着面と、そのベルトの内周部に配設されて吸気装置と連通される吸気室とを備えたバキュームコンベアにおいて、 前記ベルトの吸着面には、そのベルト搬送方向に対する交差方向へ延びる有底溝状の吸気穴が、そのベルト搬送方向に間隔を空けて筋状に多数凹設されており、
その多数の吸気穴の底部には、前記ベルトの内周面にまで貫通して前記吸気室と連通されると共に前記吸気穴より内径が小さく形成される貫通孔が少なくとも1箇所ずつ穿設されていることを特徴とするバキュームコンベア。
【請求項2】
前記ベルトの内周面における幅方向両端部にそれぞれ刻設されるタイミングベルト用歯部を備えており、
前記多数の吸気穴は、前記タイミングベルト用歯部の刻設部分よりも前記ベルトの幅方向内側に凹設されていることを特徴とする請求項1記載のバキュームコンベア。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記各吸気穴の底部における前記ベルトの幅方向両端よりの箇所にそれぞれ1つずつ計2箇所に穿設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバキュームコンベア。
【請求項4】
前記吸気室の底板であって前記ベルトの内周面と対向する有孔板と、
その有孔板と対向配置される前記ベルトの搬送方向に沿って前記吸気室の幅方向両側にそれぞれ配設される一対のマグネットと、
その一対のマグネット及び前記吸気室を囲繞するハウジングと、
そのハウジングに付設されそのハウジングに対して略鉛直方向に昇降可能に形成されるバキュームカップとを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のバキュームコンベア。
【請求項5】
一対のプーリ間に巻架され所定搬送方向へ搬送移動される無端環状のベルトであって、そのベルトの外周面に形成されワークを吸着させる吸着面を備えたバキュームコンベア用ベルトにおいて、
その吸着面には、前記ベルト搬送方向に対する交差方向へ延びる有底溝状の吸気穴が、そのベルト搬送方向に間隔を空けて筋状に多数凹設されており、
その多数の吸気穴の底部には、前記ベルトの内周面にまで貫通する貫通孔が少なくとも1箇所ずつ穿設されていることを特徴とするバキュームコンベア用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−290555(P2006−290555A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114215(P2005−114215)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(591033010)株式会社小矢部精機 (8)
【Fターム(参考)】