説明

バスバーモジュール及びその製造方法

【課題】電気的絶縁性を確保し、かつ低インピーダンス化を図ることが可能なバスバーモジュール及びバスバーモジュールの製造方法を提供する
【解決手段】バスバーモジュール10は、導電性を有する金属板からなり、互いに離間した状態で対向して配置された一対のバスバー100,200と、バスバー100,200の間にモールドされた絶縁性樹脂11とを備え、バスバー100,200は、それぞれが端子部102,103,202,203と、これらの端子部102,103,202,203の間に介在してバスバー100,200の対向面に溝104,105,106,204,205,206が形成された導電部101,201とを有し、溝104,105,106,204,205,206を、バスバー100,200に流れる電流の流路に沿って形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属からなるバスバーを導電媒体とする電気配線部材であるバスバーモジュール及びその製造方法に関し、特に、複数のバスバーをインサートとして、これら複数のバスバーの間に絶縁性樹脂がモールドされてなるバスバーモジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性金属板からなる複数のバスバーを狭いギャップで積層し、電気的絶縁などを目的として各バスバー間に絶縁性樹脂がモールド成形されてなるバスバーモジュールが知られている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
このようなバスバーモジュールは、例えば、車両用のインバータ回路などの高電界環境下(例えば4kV/mm以上)で使用されることが多く、バスバー間において高い電気的絶縁性が要求される。また、バスバーモジュールは、インダクタンスが大きいほど発生するサージ電圧が大きくなり損失も増える。このため、インダクタンスを下げることによる低インピーダンス化が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295227号公報
【特許文献2】特開2007−38490号公報
【特許文献3】特開2007−215340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バスバーモジュールにおいては、隣接するバスバーの間隔が狭いほど相互のインダクタンスが低くなる。しかし、バスバーの間隔を狭くしすぎると、バスバー間に絶縁性樹脂を十分に行き渡らせてモールドすることが困難となる場合がある。
【0006】
また、特許文献1にはフィルム状の絶縁性樹脂を両側からバスバーで挟み込んで製造する方法が提案されている。しかしこの方法では、例えばバスバーに変形が生じた状態でフィルム状の絶縁性樹脂を挟み込むと、バスバーと絶縁性樹脂フィルムとの間に隙間が生じ、良好な電気的絶縁性が得られない場合が考えられる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、電気的絶縁性を確保し、かつ低インピーダンス化を図ることが可能なバスバーモジュール及びバスバーモジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、導電性を有する金属板からなり、互いに離間した状態で対向して配置された複数のバスバーと、前記複数のバスバーの間にモールドされた絶縁性樹脂とを備え、前記複数のバスバーは、それぞれが複数の端子部と、前記複数の端子部の間に介在する導電部とを有し、前記導電部は、他のバスバーとの対向面に、前記複数の端子部間を流れる電流の流路に沿って溝が形成されている、バスバーモジュールを提供する。
【0009】
また、前記溝は、その少なくとも一部が前記複数の端子部を結ぶ直線に対して平行であるとよい。
【0010】
また、前記溝は、前記複数の端子部を結ぶ直線に対して、前記他のバスバーに流れる電流の流路に近づくように傾斜する傾斜部を有するとよい。
【0011】
また、前記溝は、その延伸方向の両端部が前記傾斜部として形成され、前記両端部の間の中央部が前記複数の端子部を結ぶ直線に対して平行となるように形成するとよい。
【0012】
また、前記溝は、当該溝がないとした場合における前記バスバーに流れる電流の電流密度が最大となる当該バスバーの面上の位置を連続して結ぶ電流経路に沿って形成するとよい。
【0013】
また、前記導電部における前記他のバスバーとの対向面に、その全長に亘って前記複数の端子部を結ぶ直線に平行な溝が、前記電流経路に交差しないように形成されているとよい。
【0014】
また、前記導電部は、前記電流経路よりも外側の領域に、前記他のバスバーとの間隔が前記電流経路の領域よりも大きくなるように形成された凹部を有するとよい。
【0015】
また、前記導電部は、前記電流経路よりも外側の領域が、前記電流経路に沿うように切り欠き形成されているとよい。
【0016】
また、前記導電部には、前記複数のバスバーの間に前記絶縁性樹脂を注入する際に当該バスバーを固定するための穴部が形成され、前記穴部は、当該穴部がないとした場合における前記電流経路に交差しない位置に形成されているとよい。
【0017】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、導電性を有する金属板からなり、複数の端子部と、前記複数の端子部間に介在して前記複数の端子部間を流れる電流の流路に沿って溝が形成された導電部とを有する複数のバスバーを、前記溝が形成された面同士を対向させて互いに離間した状態で配置する工程と、前記複数のバスバーの間に流動性を有する樹脂を注入して前記絶縁性樹脂をモールド成形する工程とを有する、バスバーモジュールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバスバーモジュール又はバスバーモジュールの製造方法によれば、バスバー間の電気的絶縁性を確保し、かつ低インピーダンス化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は第1の実施の形態によるバスバーモジュールを示す平面図、(b)はバスバーに流れる電流の電流経路を矢印で模式的に表す図、(c)はA−A線で切断した場合の断面図である。
【図2】バスバーモジュールが適用される電源負荷回路の例を示す電気回路図である。
【図3】(a)は第1の実施の形態の変形例1に係るバスバーモジュールの正面図、(b)はその側面図である。
【図4】(a)は第1の実施の形態の変形例1に係るバスバーの正面図、(b)はその側面図、(c)はその背面図である。
【図5】(a)は第1の実施の形態の変形例2に係るバスバーモジュールの正面図、(b)はB−B線で切断した場合の断面図である。
【図6】第1の実施の形態の変形例3に係るバスバーモジュールの正面図である。
【図7】第1の実施の形態の変形例4に係るバスバーモジュールの正面図である。
【図8】第1の実施の形態の変形例5に係るバスバーモジュールの正面図である。
【図9】第1の実施の形態の変形例6に係るバスバーモジュールの正面図である。
【図10】第1の実施の形態の変形例7によるバスバーモジュールの正面図である。
【図11】(a)は第2の実施の形態に係るバスバーモジュールの平面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。
【図12】第2の実施の形態に係るバスバーモジュールが適用されるインバータ負荷回路の例を示す電気回路図である。
【図13】三相負荷に流れる電流の各相の波形をグラフで示す図である。
【図14】図13に示される各位相の時点(a)〜(l)においてバスバーに流れる電流の電流経路を矢印で模式的に示す図である。
【図15】図15は三相交流の1周期にわたる電流経路を重ねて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施の形態の要約]
本発明の実施の形態に係るバスバーモジュールは、導電性を有する金属板からなり、互いに離間した状態で対向して配置された複数のバスバーと、前記複数のバスバーの間にモールドされた絶縁性樹脂とを備えたバスバーモジュールにおいて、前記複数のバスバーは、それぞれが複数の端子部と、前記複数の端子部の間に介在する導電部とを有し、前記導電部は、他のバスバーとの対向面に、前記複数の端子部間を流れる電流の流路に沿って溝が形成されているものである。
【0021】
また、本発明の実施の形態に係るバスバーモジュールの製造方法は、導電性を有する金属板からなる複数のバスバー、及び前記複数のバスバーの間にモールドされた絶縁性樹脂とを備えたバスバーモジュールの製造方法において、前記複数のバスバーは、それぞれが複数の端子部と、前記複数の端子部間に介在して前記複数の端子部間を流れる電流の流路に沿って溝が形成された導電部とを有し、前記複数のバスバーを、前記溝が形成された面同士を対向させて互いに離間した状態で配置する工程と、前記複数のバスバーの間に流動性を有する樹脂を注入して前記絶縁性樹脂をモールド成形する工程とを有するものである。
【0022】
以下、本発明に係るバスバーモジュール及びバスバーモジュールの製造方法の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
(バスバーモジュールの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るバスバーモジュール10を示す図である。このバスバーモジュール10は、互いに離間した状態で対向して配置された一対のバスバー100及びバスバー200と、これらのバスバー100,200の間にモールドされた絶縁性樹脂11とを備えている。
【0024】
図1(a)は一方のバスバー100を正面に見た平面図、図1(b)はバスバー100を一部破断し、バスバー100及びバスバー200に流れる電流の電流経路を矢印で模式的に表す図、図1(c)は(a)におけるA−A線で切断した場合の断面図である。
【0025】
バスバー100,200は、それぞれ導電性を有する銅等の金属板からなる導電媒体である。なお、バスバー100,200の素材としては、銅以外にもアルミニウムその他の導電性金属材を用いることができる。また、絶縁性樹脂11としては、例えば液晶ポリマ(LCP)を用いることができる。また、絶縁性樹脂11として、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)、エポキシ等を用いてもよい。
【0026】
バスバー100は、長方形状の導電部101と、この導電部101の隅部に形成された2つの端子部102,103とを有している。つまり、導電部101は、2つの端子部102,103の間に介在して、端子部102から端子部103へ、又は端子部103から端子部102へ流れる電流の導電媒体となっている。
【0027】
導電部101の寸法は、例えば縦80mm、横50mm、厚さ2mmである。端子部102,103は、導電部101の一方の長辺の両端部にあたる隅部にて、バスバー100の長手方向に沿って突出し、導電部101と一体に形成されている。
【0028】
バスバー100の導電部101の背面(他のバスバー200に対向する側の面)には、モールド成形時に流動性を有する絶縁性の樹脂を注入するための樹脂流路となる溝104,105,106が形成されている。溝104,105,106を介して注入された樹脂は、硬化によって絶縁性樹脂11となる。
【0029】
これらの溝104,105,106は、端子部102及び端子部103間を流れる電流の流路に沿って形成されている。溝104,105,106のより具体的な形状等については後述する。
【0030】
また、特に図1(c)に示すように、導電部101の背面には、その短手方向の両端部に、導電媒体の厚みが薄い凹部107,108が形成されている。凹部107,108は、図1(a)及び(b)に示すように、導電部101の長方形状の長辺の中央部において短手方向の幅が広く、同長辺の端部に近づくにつれて短手方向の幅が狭くなるように、左右対称に形成されている。凹部107,108の深さは、それぞれ例えば0.9mmである。
【0031】
他のバスバー200も、上述したバスバー100と同一形状に形成されている。すなわち、バスバー200の導電部201には、上述の溝104,105,106に対応する溝204,205,206及び上述の凹部107,108に対応する凹部207,208がそれぞれ形成されている。つまり、2枚のバスバー100,200は配置される向きが異なるだけであり、これらを共通のインサート部品としてバスバーモジュール10に用いることができる。
【0032】
図2は、本実施の形態によるバスバーモジュール10が適用される電源負荷回路の一例を示す電気回路図である。この例では、電源12とトランジスタ13及び負荷14とが、バスバー100,200を介して電気的に接続されている。電源12からの電流Iは、制御部15によるトランジスタ13のスイッチング制御に応じて負荷14に供給される。なお、電源12としては、例えばバッテリ又はDC/DCコンバータ等の直流電圧電源を用いることができる。また、負荷14としては、例えばアクチュエータソレノイド、直流モータ、照明ランプ等を適用することができる。
【0033】
バスバーモジュール10は、例えばバスバー100が正極(プラス電圧)側の導電媒体として用いられ、バスバー200が負極(マイナス電圧)側の導電媒体として用いられる。この場合、正極側のバスバー100の例えば端子部103が一次側(電源12側)の端子P1に接続され、端子部102が二次側(負荷14側)の端子P2に接続される。また、負極側のバスバー200の端子部203が一次側(電源12側)の端子N1に接続され、端子部202が二次側(負荷14側)の端子N2に接続される。バスバーモジュール10が図2に示されるような直流の電源負荷回路に接続される場合、対向する2枚のバスバー100,200に流れる電流Iの向きは互いに逆方向となる。
【0034】
図1(b)に、各バスバー100,200に流れる電流の電流経路を矢印で示す。ここで、「電流経路」とは、例えばバスバー100において、2つの端子部102,103の間を流れる電流の電流密度が最大となるバスバー100の面上の位置を連続して結ぶ経路のことをいう。つまり、図1(b)に示す2本の矢印は、導電部101、201に流れる電流密度が高い領域を示しており、実際にはこれらの矢印の周囲にも低密度の電流が分布して流れる。ただし、この低密度の電流も、概ね上記電流経路に沿った方向に流れることとなる。
【0035】
2つの端子部102,103の間の導電部101を流れる電流の電流経路は、インピーダンスが最小となる経路である。つまり、対向する他のバスバー200による相互インダクタンスの影響を仮に無視すれば、2つの端子部102,103の間のインピーダンスは抵抗成分のみを考慮すれば足り、バスバー100の電流経路はこれら端子部102,103を直線で結ぶ最短の経路となる。しかし、対向して配置される2枚のバスバー100,200に互いに逆向きに電流が流れる場合、バスバーモジュール10の相互インダクタンスの影響により、実際には図1(b)に示されるように双方の電流経路が接近するように湾曲する態様となる。
【0036】
この電流経路の湾曲は、次のような理由による。すなわち、バスバー100,200は、電気抵抗の低い導電体からなるので、端子P1(端子部103)と端子N1(端子部203)、及び端子P2(端子部102)と端子N2(端子部202)を短絡して形成される電流ループを考えた場合、この電流ループのインピーダンスは、抵抗成分よりもインダクタンス成分の方が支配的である。そして、この電流ループを流れる電流の電流経路は、インピーダンスが小さくなるような経路となる。
【0037】
この電流ループを電流が流れる場合、そのインダクタンスは、電流経路で囲まれる部分の面積(図1(b)の例では、電流経路を示す2本の矢印に挟まれた領域の面積)が小さいほど小さくなる。さらに、各導電部101,201の若干の抵抗成分を考慮すると、電流経路全長が短いほど、この抵抗成分が小さくなるため、結果としてそれぞれの電流経路は完全には重ならない。従って、各バスバー100,200に流れる電流の電流経路は直線状ではなく、双方の電流経路が接近するように湾曲する。
【0038】
バスバー100に形成される樹脂流路としての溝104は、上述したように湾曲する電流経路に沿って、当該電流経路を横切ることがないように、すなわち電流経路と交差しないように形成されている。
【0039】
より具体的には、溝104は、2つの端子部102,103を結ぶ直線に対して、対向する他のバスバー200の電流経路に近づく方向に傾斜する傾斜部104a,104bと、2つの端子部102,103を結ぶ直線に平行で、かつこの直線よりも導電部101の中央寄りに変位した直線部104cとを有して形成されている。直線部104cは、傾斜部104aと傾斜部104bとの間における溝104の中央部にて、傾斜部104a,104bと連続して形成されている。
【0040】
また、バスバー100の溝105は、導電部101の短手方向の中央部を2つの端子部102,103を結ぶ直線に対して平行に分断するように形成されている。この溝105は、その全長に亘って端子部102,103を結ぶ直線に対して平行な直線状であり、かつ電流経路に交差しないように形成されている。
【0041】
また、バスバー100の溝106は、溝105を対称軸として溝104と左右対称に形成されている。溝104,105,106の寸法は、それぞれ幅が例えば2mm、深さが0.9mmである。
【0042】
また同様に、もう1枚のバスバー200の溝204も、電流経路に沿って傾斜部204a,204b及び直線部204cを有して形成されている。バスバー200の溝205は、導電部201の短手方向の中央部を2つの端子部202,203を結ぶ直線に対して平行に分断するように形成されている。また、バスバー200の溝206は、溝205を対称軸として溝204と左右対称に形成されている。
【0043】
また、バスバー100の溝104,105,106とバスバー200の溝206,205,204のそれぞれは、2枚のバスバー100,200が対向して配置されるとき、それぞれの溝の開放部が向き合って一致するように形成されている。
【0044】
またさらに、バスバー100の凹部107,108とバスバー200の凹部208,207も、2枚のバスバー100,200が対向して配置されるとき、窪んだ部分が向き合って一致するように形成されている。凹部107,108及び凹部208,207は、バスバー100,200の電流経路よりも外側の領域に形成されている。また、バスバー100,200間の間隔は、凹部107,108,208,207が形成された領域で、電流経路に当たる領域よりも大きくなるように形成されている。
【0045】
次に、バスバーモジュール10の設計及び製造方法の一例について説明する。
【0046】
(バスバーモジュールの設計方法)
まず、溝104〜106及び凹部107,108が無いとした場合のバスバー100、及びこのバスバー100と同形状のバスバー200を組み合わせてバスバーモジュール10を構成した場合における電流密度分布を、例えば電磁界シミュレーションによって求め、この結果に基づいて導き出された電流経路を避けるように溝104〜106及び凹部107,108の形状や位置及び寸法を定める。つまり、電磁界シミュレーションにより求められた電流密度の小さい部分に溝104〜106や凹部107,108を配置するように、バスバー100を設計する。図1(a)〜(c)は、このようにして溝104〜106や凹部107,108の形状等が設計されたバスバー100の一例を示している。
【0047】
そして、上記のように溝104〜106や凹部107,108の形状等が設計されたバスバー100について、再度電磁界シミュレーションを行い、電流密度分布やインピーダンスが目標に合致しているかを検証し、合致していればその設計を採用し、合致していなければ溝104〜106や凹部107,108の形状等を変更する。バスバー100の電流流路やインピーダンスは、溝104〜106や凹部107,108を形成することによって変化するので、複数回にわたって溝104〜106や凹部107,108の形状等の変更と検証を繰り返すことが必要になる場合がある。なお、バスバー200はバスバー100と同様に設計される。
【0048】
(バスバーモジュールの製造方法)
バスバー100は、上記のように設計された溝104〜106や凹部107,108の形状等に基づいて、銅等の導電性金属材に対して切削等の機械加工を施して形成される。バスバー200についても同様である。
【0049】
次に、加工された2枚のバスバー100,200を、溝104〜106と溝204〜206、及び凹部107,108と凹部207,208が向かい合うように相互に対向させ、電流経路の部分のバスバー100とバスバー200との間隔が例えば0.2mm、溝104〜106と溝204〜206との間、及び凹部107,108と凹部207,208との間の底部の間隔が例えば2.0mmになるように金型内に配置する。そして、バスバー100,200の間に溝104〜106,204〜206、及び凹部107,108,207,208を介して流動性を有する樹脂を注入する。
【0050】
このとき、溝104〜106,204〜206、及び凹部107,108,207,208を介して注入された樹脂は、図1(a)に矢印で示すように、溝104〜106,204〜206、及び凹部107,108,207,208からバスバーモジュール10における溝や凹部が形成されていない領域(電流経路の部分等の領域)へと広がるように、バスバー100とバスバー200との間に充填される。そして、注入された樹脂が硬化して絶縁性樹脂11となった後に、金型からバスバー100,200、及びバスバー100とバスバー200との間に介在する絶縁性樹脂11が一体となったものを取り出し、バスバーモジュール10を得る。
【0051】
(本実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0052】
(1)溝同士及び凹部同士が対向することにより、樹脂流路の流路断面積が大きくなるので、溝及び凹部が形成されていない場合と比較して、バスバー100とバスバー200との間隔が狭い場合でも、容易に樹脂を充填することが可能となる。このため、バスバー100,200の間隙が非常に狭い場合(例えば0.2mm以下)であっても、流動性を有する絶縁性樹脂11を隙間なく行き渡らせることができる。また、バスバー100,200の溝104〜106、及び溝204〜206を電流流路に沿って形成することにより、導電部101,201の電流密度が高い電流経路の部分における断面積を確保して、インピーダンスの増大を抑制することができる。つまり、バスバー100,200の対向面に複数の溝及び凹部を形成することにより樹脂を流動させやすくしながら、断面積の減少によるインピーダンスの増大を抑制できる。
【0053】
(2)バスバー100,200において、湾曲する電流経路の外側の領域に凹部107,108,207,208が形成されているので、これらの内部に絶縁性樹脂11が充填され、インピーダンスの増加を抑えながら良好な電気的絶縁性を確保することができる。またさらに、バスバー100の凹部107,108とバスバー200の凹部208,207がそれぞれ同一形状及び同一位置で対向することによって、より確実に絶縁性樹脂11が十分に充填され、これにより電気的絶縁性をさらに高めることができる。
【0054】
次に第1の実施の形態の変形例を説明する。なお、既に説明された構成と共通又は対応する部分についての重複的な説明は、適宜省略又は簡略化する。また、各変形例に係るバスバーにおける電流経路は、特に図示した場合を除き、図1(b)に示す電流経路と同様である。
【0055】
(変形例1)
図3(a)は、本実施の形態における変形例1に係るバスバーモジュール20の正面図、図3(b)はその側面図である。バスバーモジュール20は、導電性を有する金属板からなり、互いに非接触の状態で対向して配置された2枚のバスバー110,210と、2枚のバスバー110,210の間にモールドされた絶縁性樹脂21とを備えている。
【0056】
図4(a)は、変形例1に係るバスバーモジュール20のバスバー110の正面図、図4(b)はその側面図、図4(c)はその背面図である。バスバー110は、導電媒体から形成された長方形状の導電部111を有している。また、導電部111の長手方向(縦方向)における対辺の2箇所の隅部に、端子部112,113が突出して導電部111と一体に形成されている。
【0057】
バスバー110の他のバスバー210に対向する背面には、絶縁性樹脂21となる樹脂を注入するための樹脂流路となる溝114,115,116が形成されている。
【0058】
樹脂流路としての溝114は、導電部111上の電流経路に沿って形成され、電流経路と交差しないように形成されている。より具体的には、溝114は、図4(c)に示すように、対向する他のバスバー210の電流経路に接近する方向に傾斜する傾斜部114a,114bと、傾斜部114a及び傾斜部114bの間に形成され、端子部112,113を結ぶ直線に平行でバスバー210の電流経路側に変位した直線部114cとを有している。
【0059】
溝115は、電流経路に沿って導電部111を中央で縦に分割するように直線状に形成されている。また溝116は、溝115を対称軸として、溝114と左右対称に形成されている。
【0060】
また、導電部111の背面(溝114〜116が形成される同一面)には、湾曲する電流経路の外側の領域に凹部117,118が左右対称に形成されている。
【0061】
バスバー110の導電部111の縁部には、バスバー110をインサートとするインサートモールド成形における樹脂の注入の際に、バスバー110をインサートモールド成形用の金型に固定するための穴部119a,119b,119c,119dが形成されている。穴部119a,119b,119c,119dは、導電部111を貫通して、上下及び左右対称の4箇所に形成されている。
【0062】
穴部119a及び穴部119cは、溝114と溝115との間の領域における導電部111の両短辺のそれぞれに近い部位に形成されている。また、穴部119b及び穴部119dは、溝116と溝115との間の領域における導電部111の両短辺のそれぞれに近い部位に形成されている。つまり、これらの穴部119a〜119dが形成された部位は、電流密度が比較的低い領域であり、これらの穴部119a〜119dがないとした場合における電流流路に交差しない位置である。
【0063】
また、バスバー110,210の周辺部には、図3(a)及び(b)に示すように、バスバー110,210の端面から絶縁性樹脂21がはみ出すように、バスバー110,210の端面に沿って形成された沿面絶縁部21aが設けられている。沿面絶縁部21aの幅は例えば5mmである。
【0064】
バスバーモジュール30の製造方法は、沿面絶縁部21aが形成されるように金型の形状が変更されている他は、第1の実施の形態について説明した製造方法と同じである。
【0065】
この変形例1に係るバスバーモジュール20によれば、第1の実施の形態について説明した作用及び効果に加え、インサートモールド成形用の金型に固定するための穴部119a,119b,119c,119dを、バスバーモジュール20のインピーダンスに大きな影響を与えることなく形成できる。また、バスバー110,210の端面に沿って沿面絶縁部21aを設けたので、バスバー110,210の端面での絶縁距離を大きくすることができる。
【0066】
(変形例2)
図5(a)は、本実施の形態における変形例2に係るバスバーモジュール30の正面図、図5(b)は(a)におけるB−B線で切断した場合の断面図である。バスバーモジュール30は、導電性の金属板からなる2枚のバスバー120,220と、バスバー120,220の間にモールドされた絶縁性樹脂31とを備えている。
【0067】
バスバー120は、例えばアルミニウム等のプレス加工が行える材質から形成され、長方形状の導電部121を有している。また、導電部121の長手方向(縦方向)における対辺の2箇所の隅部に、端子部122,123が突出して一体形成されている。
【0068】
バスバー120には、絶縁性樹脂31となる樹脂を注入するための樹脂流路となる溝124,125,126がプレスにより曲げ加工される。また、電流経路の外側の領域に凹部127,128が左右対称に陥没して形成されている。
【0069】
樹脂流路としての溝124は、変形例1と同様に、傾斜部124a,124bと直線部124cとを有している。すなわち溝124は、導電部121上の電流経路に沿って、電流経路と交差しないように形成されている。また溝125は、全長に亘って端子部122,123を結ぶ直線と平行に、導電部121を中央で縦に分割するように直線状に形成されている。溝126は、溝125を対称軸として溝124と左右対称に形成されている。
【0070】
バスバーモジュール30を構成するもう1枚のバスバー220も、バスバー120と形状、寸法及び材質が同一であり、これらは共通のインサート部品として用いられる。すなわちバスバー220においても、端子部222,223が一体形成され、溝224,225,226、凹部227,228がプレス加工される。
【0071】
バスバーモジュール30の製造方法は、例えば以下の通りである。バスバー120は、アルミニウム等の金属素材をプレス加工し、樹脂流路となる溝124,125,126、及び凹部127,128が形成される。溝124,125,126、凹部127,128の位置や寸法は、前述のように、電磁界シミュレーション等により予め求められる電流経路以外の領域に形成される。バスバー220についても同様である。
【0072】
続いて、プレス加工された2枚のバスバー120,220を、溝124〜126及び溝224〜226が形成される側の面を相互に対向させた状態で金型内に配置する。そして、バスバー120,220の間に溝124〜126,224〜226を介して流動性を有する絶縁性の樹脂を注入する。注入された樹脂が硬化して絶縁性樹脂31となった後に、金型からバスバー120,220、及びバスバー120とバスバー220との間に介在する絶縁性樹脂31が一体になったものを取り出し、バスバーモジュール30を得る。
【0073】
この変形例2によれば、第1の実施の形態について説明した作用及び効果に加え、バスバーモジュール30が軽量化し、また製造工程において、切削加工等よりも簡素なプレス加工を用いているため、低コスト化にも貢献する。
【0074】
(変形例3)
図6は、本実施の形態における変形例3に係るバスバーモジュール40の正面図である。
【0075】
バスバーモジュール40を構成するバスバー130には、バスバー間に注入される絶縁性樹脂の樹脂流路となる溝134,135,136が形成される。溝134は、第1の実施の形態と同様に、電流経路に沿って形成され、溝136は溝134と左右対称に形成されている。
【0076】
中央の溝135は、絶縁性樹脂が注入される下流側(図面では上方側)が複数に枝分かれした支流溝135a,135b,135cを有して形成されている。支流溝135a,135b,135cを含め、溝134,135,136は、バスバー130を流れる電流の電流経路と交差しない領域に形成されている。
【0077】
また、図1等を参照して説明した第1の実施の形態と同様に、電流経路の外側の領域に凹部137,138が左右対称に陥没して形成されている。
【0078】
また、もう1枚のバスバー230もバスバー130と形状、寸法及び材質が同一の共通のインサート部材として形成される。
【0079】
この変形例3のバスバーモジュール40によれば、第1の実施の形態について説明した作用及び効果に加え、2枚のバスバー130,230間の末端部分で、樹脂流路となる溝135が複数(本実施の形態では3本)の支流溝135a,135b,135cに枝分かれしているので、注入される絶縁性樹脂の流路抵抗が小さくなる。これにより、バスバー130,230の末端部分にまで絶縁性樹脂を十分に行き渡らせ、絶縁層の脆弱部や欠陥部の発生を防ぐことができる。
【0080】
(変形例4)
図7は、本実施の形態における変形例4に係るバスバーモジュール50の正面図である。バスバーモジュール50は、導電性の金属板からなる2枚のバスバー140,240を備え、これらが対向して配置されている。
【0081】
バスバーモジュール50を構成するバスバー140には、モールド成形される際の絶縁性樹脂の樹脂流路となる溝144,145,146が形成されている。また、電流経路の外側の領域に凹部147,148が左右対称に陥没して形成されている。
【0082】
樹脂流路としての溝144は、傾斜部144a,144bと直線部144cとを有し、バスバー140の長方形状の導電部141に流れる電流の電流経路に沿って形成されている。また、溝144の延伸方向の両端部は、端子部142,143に形成されている。このように溝144を形成した場合、電流密度は溝144の両側部において高くなり、溝144は、電流経路をバスバー140の長手方向に分割するが電流経路の一部を横断する箇所はない。
【0083】
バスバーモジュール50を構成するもう1枚のバスバー240も、バスバー140と形状、寸法及び材質が同一の共通の部材として形成される。すなわち、バスバー240においても端子部242,243を含め電流経路をバスバー140の長手方向に分割する溝244等が形成されている。また、溝145は、端子部142,143を結ぶ直線と平行に、導電部141を中央で縦に分割するように直線状に形成されている。
【0084】
この変形例4のバスバーモジュール50によれば、第1の実施の形態について説明した作用及び効果に加え、電流経路の幅を大きくとることが可能となり、インダンクタンスの低減につながる。
【0085】
(変形例5)
図8は、本実施の形態における変形例5に係るバスバーモジュール60の正面図である。バスバーモジュール60は、導電性の金属板からなる2枚のバスバー150,250を備え、これらが対向して配置されている。
【0086】
バスバーモジュール60を構成するバスバー150には、モールド成形される際の絶縁性樹脂の樹脂流路となる溝154,155,156が形成されている。溝154は、バスバー150の長辺に沿って切り欠きが設けられた長方形状の導電部151に流れる電流の電流経路に沿って形成されている。また、導電部151は、電流経路よりも外側の領域が、電流経路に沿うように切り欠き形成されている。この切り欠き形成された部分により、長方形状に対して長辺側の一部が欠落した欠落部157,158が形成されている。
【0087】
バスバーモジュール60を構成するもう1枚のバスバー250も、バスバー150と同一の形状、寸法を有している。すなわち、バスバー250においても、電流経路の外側の領域の一部が欠落する欠落部257,258が形成されている。
【0088】
この変形例5のバスバーモジュール60によれば、第1の実施の形態について説明した作用及び効果に加え、インダクタンスに与える影響が小さい領域に欠落部157,158,257,258が形成されているので、インピーダンスの大幅な増加を招かずに、バスバーモジュール60の軽量化及び低コスト化に貢献することができる。
【0089】
(変形例6)
図9は、本実施の形態における変形例6に係るバスバーモジュール70の正面図である。バスバーモジュール70は、互いに対向して配置された2枚のバスバー160,260を備えている。
【0090】
バスバー160には、絶縁性樹脂の樹脂流路となる溝164,165,166が形成されている。中央の溝165には、長方形状の導電部161の端部にかけて次第に溝幅が広がる凹部165a,165bが、裏面側に陥没して形成されている。また導電部161には、変形例5と同様に、電流経路の外側の領域が切り欠かれた欠落部167,168が左右対称に形成されている。
【0091】
バスバーモジュール70を構成するもう1枚のバスバー260も、共通のインサート部材として使用できるように、バスバー160と同一の形状及び寸法により形成されている。
【0092】
この変形例6のバスバーモジュール70によれば、変形例5の作用及び効果に加え、バスバー160,260の末端部分にまで絶縁性樹脂を十分に行き渡らせることができるので、絶縁層の脆弱部や欠陥部の発生を防ぐことができる。
【0093】
(変形例7)
図10は、本実施の形態における変形例6に係るバスバーモジュール80の正面図である。バスバーモジュール80は、互いに対向して配置された2枚のバスバー170,270を備えている。
【0094】
バスバー170には、絶縁性樹脂の樹脂流路となる溝174,175,176が形成されている。また、バスバー170は、両長辺及び両短辺の一部が切り欠かれた長方形状の導電部171を有している。より詳細には、導電部171の長手方向に沿って導電部171を分断する中央の溝175の両端部に、欠落部179a,179bが切り欠き形成されている。ている。また、導電部171には、変形例5及び6と同様に、電流経路の外側の領域の一部が切り欠かれた欠落部177,178が、左右対称に形成されている。もう1枚のバスバー270もバスバー170と同一の形状及び寸法により形成されている。
【0095】
この変形例7のバスバーモジュール80によれば、変形例5及び6の作用及び効果に加え、インピーダンスの大幅な増加を招かずに、さらにバスバーモジュール80の軽量化及び低コスト化に貢献することができる。
【0096】
なお、上記第1の実施の形態、及びその変形例では、バスバーの導電部が一対の端子間を結ぶ直線方向が長辺となる長方形状に形成された場合について説明したが、これに限らず、一対の端子間を結ぶ直線方向が短辺となる長方形状に形成してもよい。また、導電部を正方形状又は多角形状に形成してもよい。
【0097】
また、バスバーに形成された各溝は、切削等の機械加工によって形成されたものに限らず、例えばプレスによって形成してもよい。バスバーの大きさや溝の寸法も、上記に示した数値や図示したものに限らない。
【0098】
また、樹脂流路となる溝は、一対のバスバーの両対向面に形成する場合に限らず、一対のバスバーのうちの一方のバスバーの一面(他のバスバーとの対向面)にのみ形成してもよい。
【0099】
[第2の実施の形態]
図11は、本発明の第2の実施の形態に係るバスバーモジュール90を示し、(a)はバスバーモジュール90の平面図、(b)は(a)におけるC−C線断面図、(c)は(a)におけるD−D線断面図である。このバスバーモジュール90は、例えば三相交流モータに電流を供給するインバータに用いられる。
【0100】
バスバーモジュール90は、互いに対向して配置された2枚のバスバー18,28を備えている。また、各バスバー18,28の間には、絶縁性樹脂41がモールドされている。バスバー18,28は、それぞれ導電性を有する金属板からなる導電媒体である。バスバー18,28の素材としては、例えば銅またはアルミニウムを用いることができる。絶縁性樹脂41としては、例えば液晶ポリマ(LCP)や、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)、エポキシ等を用いることができる。
【0101】
バスバー18は、四角形状の導電部180を有しており、この導電部180の一方の辺に所定の間隔をおいて端子部181,182,183が突出してそれぞれ一体形成されている。また、導電部180の反対側の辺であって端子部181,182,183に対向する位置に、端子部184,185,186がそれぞれ突出して形成されている。またさらに、端子部184と端子部185の間には、端子部187が突出して形成されている。
【0102】
バスバー18の背面(他のバスバー28に対向する側の面)には、モールド成形時に流動性を有する樹脂を注入するための樹脂流路となる溝191,192,193が形成されている。溝191,192,193を介して注入された樹脂は、硬化によって絶縁性樹脂41となる。
【0103】
溝191,192,193は、後述するように、三相交流の各相の電流の電流密度が最大となるバスバー18の面上の位置を連続して結ぶ電流経路に沿って形成されている。
【0104】
また、端子部181,184との間の導電部180の中央部に、対向する他のバスバー290との間隔が比較的広くなるように陥没する凹部194が形成されている。また、凹部194と左右対象の位置及び形状に、凹部195が形成されている。これら凹部194,195は、バスバー18の電流密度の低い領域、すなわち電流密度が高い領域の外側に形成されている。
【0105】
また、溝191,192の間及び溝192,193の間の導電部180の縁部にも凹部196,197,198,199がそれぞれ陥没して形成されている。これらの凹部196〜199も、バスバー18の電流密度が低い領域に形成されている。
【0106】
バスバーモジュール90を構成するもう1枚のバスバー28も、バスバー18と同一の寸法及び形状を有している。すなわち、バスバー28の導電部280の一方の辺に所定の間隔をおいて端子部281,282,283が突出してそれぞれ形成され、導電部280の反対側の辺に、端子部281,282,283とそれぞれ対向する端子部284,285,286が形成されている。また、端子部285と286の間に端子部287が形成されている。
【0107】
また、バスバー28の導電部280におけるバスバー18に対向する面には、上述の溝191,192,193に対し同一の溝形状でそれぞれ対向する溝291,292,293が形成されている。また、上述の凹部194〜199に対し、同一の形状でそれぞれ対向する凹部294〜299が6箇所に形成されている。
【0108】
図12は、本実施の形態によるバスバーモジュール90が適用されるインバータ負荷回路の例を示す電気回路図である。この例では、直流電源16と、三相負荷19を駆動するインバータ17とが、バスバー18,28を介して電気的に接続されている。
【0109】
三相負荷19としては、例えば三相交流モータを適用することができる。この場合、三相負荷19は、モータ用コイルであるU負荷19a、V負荷19b、W負荷19cを備える。また、インバータ17を構成するスイッチング素子としては、例えばIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)その他サイリスタが用いられる。
【0110】
図12に示す例では、バスバーモジュール90のバスバー18は、正極(プラス電圧)側の導電媒体として用いられ、バスバー18の端子部187に直流電源16のプラス端子Pbが接続されている。これに対しバスバー28は、負極(マイナス電圧)側の導電媒体として用いられ、バスバー28の端子部287に直流電源16のマイナス端子Nbが接続される。
【0111】
また、一次側のコンデンサ17a,17b,17cのプラス電圧側の各端子P1,P2,P3には、バスバー18の端子部184,185,186がそれぞれ接続されている。コンデンサ17a,17b,17cのマイナス電圧側の各端子N1,N2,N3には、バスバー28の端子部284,285,286がそれぞれ接続されている。
【0112】
また、インバータ17によるU,V,W各相のプラス側の各電源端子Pu,Pv,Pwには、バスバー18の端子部181,182,183がそれぞれ接続され、マイナス側の各電源端子Nu,Nv,Nwには、バスバー28の端子部281,282,283がそれぞれ接続されている。
【0113】
図13は、三相負荷19(U負荷19a、V負荷19b、W負荷19c)に流れる電流のU,V,W各相の波形をグラフで示す図である。また、図14は、図13に示される代表的な各位相の時点(a)〜(l)においてバスバー18,28に流れる電流の電流経路を矢印で模式的に示す図である。
【0114】
図14は、バスバー18,28における概略の電流経路を、バスバー18,28のインピーダンスを考慮て示したものである。また、同図において電流経路を示す矢印の幅は、概ね電流密度の大きさに対応する。図14に示されるように、各時点(a)〜(l)でバスバー18,28に流れる電流は、その方向及び大きさが異なるとともに、各時点の間においても電流の流れ方が変化する。
【0115】
図15は、三相交流の1周期にわたる電流経路を重ねて示す図である。図15のハッチングで示される領域が概ね電流密度の低い領域である。また、U相,V相,W相の各ピーク電流が流れる電流経路を矢印で示している。
【0116】
上述したバスバー18の樹脂流路となる溝191,192,193は、図11と図15とを比較して明らかなように、U相,V相,W相のピーク電流が流れる経路に沿って形成されている。具体的には溝191は、U相のピーク電流の電流経路に沿って、端子部181(Pu),184(P1)付近ではバスバー18の中心部に向かうように傾斜し、端子部181,184間の中央付近では、これら端子部を結ぶ直線と平行に形成されている。また、溝192はV相のピーク電流の電流経路に沿って、端子部182(Pv),185(P2)を結ぶ直線と平行に形成されている。また、溝193は、W相のピーク電流の電流経路に沿って、端子部183(Pw),186(P3)付近では中央に向けて傾斜し、端子部183,186間の中央付近ではこれら端子部を結ぶ直線と平行に形成されている。もう1枚のバスバー28の溝291,292,293も同様である。
【0117】
上述したバスバー18の凹部194〜199は、図11と図15とを比較して明らかなように、電流密度が低い導電部180の縁部に形成されている。もう1枚のバスバー28の凹部294〜299についても同様である。
【0118】
(本実施の形態の作用及び効果)
この第2の実施の形態によれば、バスバー18,28の溝191〜193及び溝291〜293が対向してなる大きな流路径の樹脂流路を介して、2枚のバスバーの間隙に絶縁性樹脂41を均一かつ十分行き渡らせることができる。これにより、バスバー18,28の間隔が狭小化されても、良好な電気的絶縁性を確保することができる。また、バスバー18,28の間隔を狭小化できるので、インダクタンスを従来よりも下げることができる。
【0119】
また、バスバー18,28において三相交流の1周期にわたる電流密度が低い領域に凹部194〜199,294〜299を形成したことにより、インピーダンスの大幅な増加を招かずに、良好な電気的絶縁性を確保することができる。また、バスバーモジュール90の軽量化及び低コスト化にも貢献する。
【0120】
以上、本発明に好適な実施の形態及びその変形例を複数説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0121】
例えば本発明に係るバスバーモジュールは、一対のバスバーのみを有するものに限定する必要はなく複数対のバスバーを有するものであってもよい。また、発明の課題を解決するための手段として実施の形態で説明した特徴の組合せの全てが必須な事項であるとは限らない点にも留意すべきである。
【符号の説明】
【0122】
10…バスバーモジュール、11…絶縁性樹脂、12…電源、13…トランジスタ、14…負荷、15…制御部、16…直流電源、17…インバータ、17a,17b,17c…コンデンサ、18,28…バスバー、19…三相負荷、19a,19b,19c…負荷、21…絶縁性樹脂、21a…沿面絶縁部、31,41…絶縁性樹脂、20,30,40,50,60,70,80,90…バスバーモジュール、101…導電部、102,103…端子部、104〜106,114〜116…溝、104a,104b,114a,114b,124a,124b,144a,144b…傾斜部、104c…直線部、107,108…凹部、100,110,120,130…バスバー、111,121…導電部、112,113…端子部、114c…直線部、117,118,127,128,137,138…凹部、119a〜119d…穴部、122,123…端子部、124〜126,134〜136,144〜146,154〜156,164〜166…溝、124c,144c…直線部、135a,135b,135c…支流溝、142,143…端子部、147,148,165a,165b,194〜199…凹部、140,150,160,170…バスバー、141,151,161,171,180…導電部、157,158,167,168,177,178,179a,179b…欠落部、174,175,176,191〜193…溝、181〜187…端子部、200,210,220,230,240,250,260,270,290…バスバー、204a,204b…傾斜部、204c…直線部、206,205,204,224,225,226,244…溝、207,208,227,228…凹部、202,203,222,223,242,243…端子部、257,258…欠落部、201,280…導電部、281〜287…端子部、204〜206,291〜293…溝、294〜299…凹部、Nb…マイナス端子、Pb…プラス端子、N1,N2,N3,P1,P2,P3…端子、Pu,Pv,Pw,Nu,Nv,Nw…電源端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する金属板からなり、互いに離間した状態で対向して配置された複数のバスバーと、前記複数のバスバーの間にモールドされた絶縁性樹脂とを備え、
前記複数のバスバーは、それぞれが複数の端子部と、前記複数の端子部の間に介在する導電部とを有し、
前記導電部は、他のバスバーとの対向面に、前記複数の端子部間を流れる電流の流路に沿って溝が形成されている、
バスバーモジュール。
【請求項2】
前記溝は、その少なくとも一部が前記複数の端子部を結ぶ直線に対して平行である、
請求項1に記載のバスバーモジュール。
【請求項3】
前記溝は、前記複数の端子部を結ぶ直線に対して、前記他のバスバーに流れる電流の流路に近づくように傾斜する傾斜部を有する、
請求項1又は2に記載のバスバーモジュール。
【請求項4】
前記溝は、その延伸方向の両端部が前記傾斜部として形成され、前記両端部の間の中央部が前記複数の端子部を結ぶ直線に対して平行となるように形成された、
請求項3に記載のバスバーモジュール。
【請求項5】
前記溝は、当該溝がないとした場合における前記バスバーに流れる電流の電流密度が最大となる当該バスバーの面上の位置を連続して結ぶ電流経路に沿って形成された、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のバスバーモジュール。
【請求項6】
前記導電部における前記他のバスバーとの対向面に、その全長に亘って前記複数の端子部を結ぶ直線に平行な溝が、前記電流経路に交差しないように形成された、
請求項5に記載のバスバーモジュール。
【請求項7】
前記導電部は、前記電流経路よりも外側の領域に、前記他のバスバーとの間隔が前記電流経路の領域よりも大きくなるように形成された凹部を有する、
請求項5に記載のバスバーモジュール。
【請求項8】
前記導電部は、前記電流経路よりも外側の領域が、前記電流経路に沿うように切り欠き形成された、
請求項5に記載のバスバーモジュール。
【請求項9】
前記導電部には、前記複数のバスバーの間に前記絶縁性樹脂を注入する際に当該バスバーを固定するための穴部が形成され、
前記穴部は、当該穴部がないとした場合における前記電流経路に交差しない位置に形成された、
請求項5に記載のバスバーモジュール。
【請求項10】
導電性を有する金属板からなり、複数の端子部と、前記複数の端子部間に介在して前記複数の端子部間を流れる電流の流路に沿って溝が形成された導電部とを有する複数のバスバーを、前記溝が形成された面同士を対向させて互いに離間した状態で配置する工程と、
前記複数のバスバーの間に流動性を有する樹脂を注入してモールド成形する工程とを有する、
バスバーモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−235625(P2012−235625A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102832(P2011−102832)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】