バズーカ型バランフィルタおよびそれが配設されたシールド線
【課題】誘電損失が大きく比誘電率の大きな誘電体を用いて漏れ電流を減衰できる小型のバズーカ型バランフィルタを提供する。
【解決手段】バズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブル(1)の外周に配設され、且つ一端が上記同軸ケーブルの外部導体(12)に接続され他端が開放される金属導体(2)および上記外部導体と上記金属導体との間に配置される誘電体(3)を備えるバズーカ型バランフィルタにおいて、上記誘電体は、上記外部導体との間または上記金属導体との間の少なくともいずれか一方にエアギャップ(4)を介在して配置される。
【解決手段】バズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブル(1)の外周に配設され、且つ一端が上記同軸ケーブルの外部導体(12)に接続され他端が開放される金属導体(2)および上記外部導体と上記金属導体との間に配置される誘電体(3)を備えるバズーカ型バランフィルタにおいて、上記誘電体は、上記外部導体との間または上記金属導体との間の少なくともいずれか一方にエアギャップ(4)を介在して配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同軸ケーブルなどの不平衡線路とダイポールアンテナなどの平衡型機器を接続するときに用いられるバズーカ型バランフィルタおよびそれが配設されたシールド線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸ケーブルなどの不平衡線路により電子機器間を電気的に接続するとき、同軸ケーブルから放射する不要な電磁波を低減するために、同軸ケーブルと電子機器の間に、
バズーカ型バランフィルタを設置している。バズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブルの外部導体の外側に一端を短絡した長さ4分の1波長となる円筒導体と外部導体の外側とで構成された同軸線路であり、他端を開放端とし電流の定在波の節とし、同軸ケーブルの内部導体を流れる高周波電流が外部導体の外側に漏れるのを防止している。(例えば、特許文献1参照)。
このバズーカ型バランフィルタの円筒導体と同軸ケーブルの外部導体との間に誘電体を配置することにより、波長短縮効果から減衰する漏れ電流の周波数に相当する円筒導体の長さを短くすることができ、バズーカ型バランフィルタの小型化が図られる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−151949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バズーカ型バランフィルタを小型化するために比誘電率の大きな誘電体を用いると、比誘電率の大きな誘電体は誘電損失が大きく、4分の1波長共振を起こすことが困難であり、バズーカ型バランフィルタの小型化に限界があるという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、誘電損失が大きく比誘電率の大きな誘電体を用いて漏れ電流を減衰できる小型のバズーカ型バランフィルタおよびそれが配設されたシールド線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るバズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブルの外周に配設され、且つ一端が上記同軸ケーブルの外部導体に接続され他端が開放される金属導体および上記外部導体と上記金属導体との間に配置される誘電体を備えるバズーカ型バランフィルタにおいて、上記誘電体は、上記外部導体との間または上記金属導体との間の少なくともいずれか一方にエアギャップを介在して配置される。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るバズーカ型バランフィルタの効果は、誘電体を同軸ケーブルの外部導体の外側と間にエアギャップを介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体として用いることができるので、金属導体の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタの斜視図である。図2は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタの軸に沿った断面図である。なお、以下の断面図は軸に沿った断面図である。
この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタは、中心導体11、中心導体11を被覆する円筒状の絶縁体13および絶縁体13を被覆する円筒状の外部導体12から構成される同軸ケーブル1の一端部に設けられる。同軸ケーブル1の一端からは、外部導体12および絶縁体13が剥がされて中心導体11だけが延びており、また、外部導体12から引き出された引き出し線5が延びている。
中心導体11は、図示しない通信装置の信号線と接続され、外部導体12は引き出し線5を経て図示しない他の電子機器のグランド線と接続される。
【0009】
この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブル1の一端部の外部導体12の外側をエアギャップ4を介して所定の長さに亘って囲繞する円筒状の誘電体3と、誘電体3の外周面および一端面を被覆し、且つ外部導体12の外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の金属導体2とを備える。
金属導体2は、誘電体3の外周面および一端面を覆うとともにエアギャップ4の一端面を跨り外部導体12の外側に接続されている。
【0010】
図3は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体12の外側に流れる漏れ電流7の周波数特性を示すグラフである。
次に、誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置することによる共振周波数fの変化について説明する。
誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置しないときには、図3の曲線aに示すように、金属導体2の長さにより決まる共振周波数f1の近傍で漏れ電流が大きく減衰される。
一方、誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置したときには、誘電体3の実効的な比誘電率をεreff、誘電体3の長さをLdとすると、バズーカ型バランフィルタの共振周波数fは、式(1)にて表され、共振周波数fの近傍の周波数帯の同軸ケーブル1の外部導体12の外側に流れる漏れ電流7を減衰する。
【0011】
【数1】
【0012】
なお、誘電体3を外部導体12の外側および金属導体2の内側にそれぞれ接するように配置したときには、図3の曲線bに示すように、誘電体3の比誘電率そのままを式(1)に代入して求まる共振周波数f2の近傍の周波数帯の同軸ケーブル1の外部導体12の外側に流れる漏れ電流7を減衰する。
一方、誘電体3を外部導体12の外側との間にエアギャップ4を介在して外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置したときには、式(1)に用いる比誘電率εreffは誘電体3の比誘電率とエアギャップ4の比誘電率から求まるので、誘電体3の比誘電率より小さく、共振周波数f3は、図3の曲線cに示すように、共振周波数f2よりは少し大きい。しかし、共振周波数f3は共振周波数f2より少しだけ大きいので、実用上問題はない。
【0013】
次に、外部導体12の外側に対してエアギャップ4を介在して誘電体3を配置することによる漏れ電流7の減衰量への影響について説明する。
誘電体3を外部導体12の外側および金属導体2の内側に接するように配置したときには、図3の曲線bに示すように、漏れ電流の減衰量は誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置しないときに比べて大幅に減少する。これは誘電体3の誘電損失によって、バズーカ型バランフィルタがほとんど共振しなくなるためである。
一方、外部導体12の外側に対してエアギャップ4を介在して誘電体3を配置したときには、図3の曲線cに示すように、漏れ電流の減衰量は誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置しないときに比べて減衰量は大きくは減少しない。
【0014】
このように、誘電体3を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と間にエアギャップ4を介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3として用いることができるので、金属導体2の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
また、誘電体3の比誘電率が多少ばらついても、漏れ電流を減衰することのできる周波数がほとんど変化しないという効果を有する。
【0015】
実施の形態2.
図4は、この発明に係る実施の形態2によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態2によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタと誘電体3を配置する位置が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
この発明に係る実施の形態2によるバズーカ型バランフィルタでは、誘電体3は外部導体12の外側に接し、金属導体2の内側との間にエアギャップ4を介在するように配置されている。
このように、誘電体3を金属導体2の内側と間にエアギャップ4を介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3として用いることができるので、金属導体2の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0016】
なお、図5に示すように、誘電体3を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と間にエアギャップ4aを介在し、且つ、金属導体2の内側と間にエアギャップ4bを介在するように配置しても良い。
このように、誘電体3を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と間にエアギャップ4aを介在し、且つ、金属導体2の内側と間にエアギャップ4bを介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3として用いることができるので、金属導体2の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0017】
また、図6に示すように、誘電体3を内側の円筒状の誘電体3aと外側の円筒状の誘電体3bとから構成し、誘電体3bを誘電体3bとの間にエアギャップ4を介在するように配置しても良い。
このように、誘電体3を2つの誘電体3a、3bから構成し、一方の誘電体3bを他方の誘電体3aとの間にエアギャップ4を介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3として用いることができるので、金属導体2の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0018】
実施の形態3.
図7は、この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタの斜視図である。
この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタと誘電体3Bおよび金属導体2Bの形状が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
この発明に係る実施の形態3による誘電体3Bは、同軸ケーブル1が貫通する円柱状の孔が設けられた角柱である。そして、誘電体3Bは、同軸ケーブル1の外部導体12の外側との間にエアギャップ4を介在するように配置されている。
この発明に係る実施の形態3による金属導体2Bは、誘電体3Bの4つの側面および一端面を覆い、エアギャップ4を跨り、外部導体12の外側に接続するように延びている。
【0019】
次に、この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタを試作し漏れ電流を測定した結果を説明する。
同軸ケーブル1として、セミリジッドケーブルを用いた。セミリジッドケーブルの外部導体12の径は5mmφである。金属導体2Bは角筒形状とし、幅Laを36mm、長さLdを115mmとした。誘電体3Bは、比誘電率1500、tanδ2.4の誘電体材料を用いた。図8に漏れ電流の測定結果を示す。曲線aは、誘電体3Bを外部導体12の外側と金属導体2Bの内側との間に配置しない比較のためのバズーカ型バランフィルタの特性であり、650MHz付近の漏れ電流を減衰することができる。曲線bは、誘電体3Bを外部導体12の外側と金属導体2Bの内側との間にエアギャップ4を介在せずに配置した比較のためのバズーカ型バランフィルタの特性であり、比誘電率1500、tanδ2.4の誘電体材料を用いると漏れ電流を減衰することができないことがわかる。曲線cは、誘電体3Bを外部導体12の外側との間に5mmの隙間のエアギャップ4を介在して配置したバズーカ型バランフィルタの特性であり、比誘電率1500、tanδ2.4のような誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を用いることにより420MHz付近の漏れ電流を減衰することができた。
【0020】
このように、誘電体3Bを同軸ケーブル1の外部導体12の外側と間にエアギャップ4を介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3Bとして用いることができるので、金属導体2Bの長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
また、誘電体3Bと金属導体2Bは、ともに外側面が平面であるので、加工が容易であるという効果を有する。
【0021】
実施の形態4.
この発明に係る実施の形態4によりバズーカ型バランフィルタは、2つの周波数で漏れ電流を減衰できるバズーカ型バランフィルタである。そして、従来このために、長さの異なる2つの誘電体を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置している。しかし、2つの誘電体にそれぞれ生じる定在波が相互に干渉するため漏れ電流の減衰量が小さくなるという問題がある。特に、近接する2つの周波数において漏れ電流を減衰しようすると漏れ電流の減衰量が極めて小さくなるという問題がある。
【0022】
図9は、この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタと同様に、同軸ケーブル1の一端部に設けられる。同軸ケーブル1の一端では、外部導体12および絶縁体13が剥がされて中心導体11だけが延びており、また、外部導体12に接続された引き出し線5が延びている。
中心導体11は、図示しない通信装置の信号線と接続され、外部導体12は引き出し線5を経て図示しない他の電子機器のグランド線と接続される。
【0023】
この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブル1の一端部の外部導体12の外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第1の誘電体3aと、第1の誘電体3aの外周面および一端面を被覆し、且つ外部導体12の外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第1の金属導体2a、第1の金属導体2aの外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第2の誘電体3b、および、第2の誘電体3bの外周面および一端面を被覆し、且つ第1の金属導体2aの外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第2の金属導体2bを備える。
第1の金属導体2aは、第1の誘電体3aの外周面および一端面を覆うとともに外部導体12の外側に接続されている。
第2の金属導体2bは、第2の誘電体3bの外周面および一端面を覆うとともに第1の金属導体2aの外側に接続されている。
【0024】
第1の誘電体3aの実効的な比誘電率をεreff1、第1の金属導体2aの長さをLd1とすると、第1の誘電体3aによる共振周波数f1は、式(2)によって求められる。
また、第2の誘電体3bの実効的な比誘電率をεreff2、第2の金属導体2bの長さをLd2とすると、第2の誘電体3bによる共振周波数f2は、式(3)によって求められる。
【0025】
【数2】
【0026】
そして、この共振周波数f1と共振周波数f2において漏れ電流を減衰することができる。なお、第1の誘電体3a、第2の誘電体3bの長さや実効的な比誘電率を変化させることにより、漏れ電流を減衰することのできる周波数を自由に設定することができる。
例えば、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bに同じ誘電体材料を用いた場合、誘電体の長さによって共振周波数が決まる。第1の誘電体3aの長さLd1が第2の誘電体3bの長さLd2より長い場合、共振周波数f2が共振周波数f1より大きくなり、2つの周波数付近において漏れ電流を減衰することができる。
【0027】
次に、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在したときの漏れ電流への影響を説明する。図10は、共振周波数f1と共振周波数f2が十分離れているときの漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。
曲線aは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在したときの漏れ電流の周波数特性である。漏れ電流が極小値を示す周波数は、式(2)及び式(3)によって求められる共振周波数f1及び共振周波数f2に一致する。曲線bは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aが介在せず、直接接しているときの周波数特性である。漏れ電流が極小値を示す周波数は、共振周波数f1より若干高くなり、共振周波数f2より若干低くなる。また、漏れ電流の減衰量は、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在したときの減衰量より若干少なくなる。
【0028】
これは、第1の誘電体3a内に生じる定在波と第2の誘電体3b内に生じる定在波が、相互に干渉するためである。そして、第1の金属導体2aを第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に介在することにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間での相互干渉を低減することができる。
【0029】
図11は、共振周波数f1と共振周波数f2が近接しているときの漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。曲線aは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在したときの漏れ電流の周波数特性である。共振周波数f1と共振周波数f2を近接させることにより、広帯域にて漏れ電流を減衰することができる。
曲線bは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aが介在せず、直接接しているときの周波数特性である。共振周波数f1と共振周波数f2が近接すると、漏れ電流を減衰できる周波数範囲が狭くなり減衰量も少なくなる。これは、2つの誘電体間の相互干渉によって、共振周波数f1と共振周波数f2の間にある周波数にて弱い定在波しか発生しなくなるためである。
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在することにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することを防ぐので、2つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
【0030】
実施の形態5.
図12は、この発明に係る実施の形態5によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態5によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタと第1の誘電体3aと第2の誘電体3bの長さが同じであり、第1の金属導体2aと第2の金属導体2bの長さが同じであることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
この発明に係る実施の形態5によるバズーカ型バランフィルタでは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bの長さは同じであり、第2の金属導体2bの底は第1の金属導体2aの底に接続している。
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在することにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することを防ぐので、2つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
また、第1の金属導体2aと第2の金属導体2bの構造が簡単になるという効果を有する。
【0031】
実施の形態6.
この発明に係る実施の形態6によりバズーカ型バランフィルタは、3つの周波数で漏れ電流を減衰できるバズーカ型バランフィルタである。そして、従来このために、長さの異なる3つの誘電体を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置している。しかし、3つの誘電体にそれぞれ生じる定在波が相互に干渉するため漏れ電流の減衰量が小さくなるという問題がある。
【0032】
図13は、この発明に係る実施の形態6によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態6によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタと同様に、同軸ケーブル1の一端部に設けられる。同軸ケーブル1の一端では、外部導体12および絶縁体13が剥がされて中心導体11だけが延びており、また、外部導体12に接続された引き出し線5が延びている。
中心導体11は、図示しない通信装置の信号線と接続され、外部導体12は引き出し線5を経て図示しない他の電子機器のグランド線と接続される。
【0033】
この発明に係る実施の形態6によるバズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブル1の一端部の外部導体12の外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第1の誘電体3a、第1の誘電体3aの外周面および一端面を被覆し、且つ外部導体12の外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第1の金属導体2a、第1の金属導体2aの外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第2の誘電体3b、第2の誘電体3bの外周面および一端面を被覆し、且つ第1の金属導体2aの外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第2の金属導体2b、第2の金属導体2bの外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第3の誘電体3c、および、第3の誘電体3cの外周面および一端面を被覆し、且つ第2の金属導体2bの外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第3の金属導体2cを備える。
【0034】
第1の金属導体2aは、第1の誘電体3aの外周面および一端面を覆うとともに外部導体12の外側に接続されている。
第2の金属導体2bは、第2の誘電体3bの外周面および一端面を覆うとともに第1の金属導体2aの外側に接続されている。
第3の金属導体2cは、第3の誘電体3cの外周面および一端面を覆うとともに第2の金属導体2bの外側に接続されている。
【0035】
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2a、第2の誘電体3bと第3の誘電体3cとの間に第2の金属導体2bを介在することにより、第1の誘電体3a、第2の誘電体3bおよび第3の誘電体3cにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することを防ぐので、3つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
なお、実施の形態6では、3つの周波数での漏れ電流を減衰するバズーカ型バランフィルタについて説明したが、4つ以上の周波数でも4つ以上の長さが異なり誘電体を用いることにより同様に漏れ電流を減衰することができる。
【0036】
実施の形態7.
図14は、この発明に係る実施の形態7によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態7によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタと第1の誘電体3aおよび第2の誘電体3bの配置が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
第1の誘電体3aは、外部導体12の外側との間にエアギャップ4aを介在するようにして配置される。第2の誘電体3bは、第1の金属導体2aの外側との間にエアギャップ4bを介在するようにして配置される。
【0037】
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在することにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することを防ぐので、2つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
【0038】
また、第1の誘電体3aを外部導体12の外側との間にエアギャップ4aを介在し、第2の誘電体3bを第1の金属導体2aの外側との間にエアギャップ4bを介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を第1の誘電体3aおよび第2の誘電体3bとして用いることができるので、第1の金属導体2aおよび第2の金属導体2bの長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0039】
実施の形態8.
図15は、この発明に係る実施の形態8によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態8によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタと第1の金属導体2aが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
第1の金属導体2aは、第2の誘電体3bと重畳しない部分の第1の誘電体3aの外周面と一端面とを覆い、且つ外部導体12の外側に接続される。
また、第2の誘電体3bは、第1の誘電体3bの外周面との間にエアギャップ4を介在するようにして配置される。
【0040】
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間にエアギャップ4を介在させることにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することが防がれるので、2つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
【0041】
また、第2の誘電体3bを第1の誘電体3aの外側との間にエアギャップ4を介在させることにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を第2の誘電体3bとして用いることができるので、第2の金属導体2bの長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0042】
実施の形態9.
図16は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを使用してダイポールアンテナ50と送受信回路60とを接続するときの構成を示す図である。
なお、実施の形態9において、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを例にして説明するが、実施の形態2乃至8によるバズーカ型バランフィルタを用いても同様な構成となる。
【0043】
ダイポールアンテナ50は、図16に示すように、2つのアンテナエレメント51、52から構成される。
同軸ケーブル1の中心導体11は、ダイポールアンテナ50の一方のアンテナエレメント51に接続され、外部導体12から引き出された引き出し線5は、他方のアンテナエレメント52に接続される。
また、同軸ケーブル1は送受信回路60に接続される。
なお、バズーカ型バランフィルタとダイポールアンテナ50との間、またはバズーカ型バランフィルタと送受信回路60との間にインピーダンス回路が設けられていても良い。
【0044】
送受信回路60で作成された高周波信号は、同軸ケーブル1を経てダイポールアンテナ50に給電される。そして、バズーカ型バランフィルタを配置しないときにはダイポールアンテナ50と同軸ケーブル1の接続部から、高周波信号が同軸ケーブル1の外部導体12の外側に漏れ出し漏れ電流7となる。漏れ電流7は、不要な電磁放射を増大させたり、ダイポールアンテナ50の特性を劣化させたりする。
一方、バズーカ型バランフィルタをダイポールアンテナ50と同軸ケーブル1の間に配設することにより、漏れ電流7を大幅に減衰することができる。
【0045】
図17は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを使用してモノポールアンテナ53と送受信回路60とを接続したときの構成を示す図である。
モノポールアンテナ53は、図17に示すように、アンテナエレメント54とアンテナ地板55から構成される。
同軸ケーブル1の中心導体11は、アンテナエレメント54に接続され、外部導体12から引き出された引き出し線5はアンテナ地板55に接続される。
また、同軸ケーブル1は送受信回路60に接続される。
【0046】
このようにバズーカ型バランフィルタをモノポールアンテナ53と同軸ケーブル1との間に配設することにより、モノポールアンテナ53と同軸ケーブル1との接続部から同軸ケーブル1の外部導体12の外側に漏れる漏れ電流7を減衰することができる。
【0047】
図18は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを用いてループアンテナ57と送受信回路60とを接続したときの構成を示す図である。
同軸ケーブル1の中心導体11と外部導体12から引き出された引き出し線5の間にループアンテナ57が接続される。
また、同軸ケーブル1は送受信回路60に接続される。
このようなバズーカ型バランフィルタをループアンテナ57と送受信回路60との間に配設することにより、ループアンテナ57と同軸ケーブル1との接続部から同軸ケーブル1の外部導体12の外側に漏れる漏れ電流7を減衰することができる。
【0048】
実施の形態10.
図19は、通信機器や電子機器に接続されたシールド線にこの発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを配設するときの構成を示す図である。
なお、実施の形態10においてはこの発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを例にして説明するが、実施の形態2乃至8によるバズーカ型バランフィルタを用いても同様な構成となる。
【0049】
電子機器61と電子機器62の間をケーブル70によって接続する。ケーブル70は、数本の信号線71の周囲にシールド72を施した構造である。なお、以下の説明では2本の信号線71a、71bを有するケーブル70として説明するが信号線71の本数がこれに限るものではない。
信号線71a、71bは、電子機器61および電子機器62の内部の図示しない電子回路に接続されている。バズーカ型バランフィルタの金属導体2は、シールド72に電気的に接続されている。金属導体2の内側とシールド72との間にシールド72との間にエアギャップ4を介在して誘電体3が配置されている。
シールド72からの引き出し線5は、電子機器62の金属筐体部に接続しているが、接続しなくても良い。
【0050】
信号線71a、71bを流れる高周波電流は、電子機器62とケーブル70との接続部からシールド72の外側に漏れ出し、漏れ電流7となる。漏れ電流7は不要な電磁放射を増加させる問題になる。
一方、バズーカ型バランフィルタを電子機器62とケーブル70の間に設けることにより、漏れ電流を減衰したり不要な電磁放射を低減したりすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタの斜視図である。
【図2】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタの軸に沿った断面図である。
【図3】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体の外側に流れる漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。
【図4】この発明に係る実施の形態2によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図5】この発明に係る実施の形態2による他のバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図6】この発明に係る実施の形態2による他のバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図7】この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタの斜視図である。
【図8】この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体の外側に流れる漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。
【図9】この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図10】この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体の外側に流れる漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。(共振周波数が離れている場合)
【図11】この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体の外側に流れる漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。(共振周波数が近接している場合)
【図12】この発明に係る実施の形態5によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図13】この発明に係る実施の形態6によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図14】この発明に係る実施の形態7によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図15】この発明に係る実施の形態8によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図16】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを使用してダイポールアンテナと送受信回路とを接続するときの構成を示す図である。
【図17】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを使用してモノポールアンテナと送受信回路とを接続したときの構成を示す図である。
【図18】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを用いてループアンテナと送受信回路とを接続したときの構成を示す図である。
【図19】通信機器や電子機器に接続されたシールド線にこの発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを配設するときの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 同軸ケーブル、2、2B、2a、2b、2c 金属導体、3、3B、3a、3b、3c 誘電体、4、4a、4b エアギャップ、5 引き出し線、7 漏れ電流、11 中心導体、12 外部導体、13 絶縁体、50 ダイポールアンテナ、51、52 アンテナエレメント、53 モノポールアンテナ、54 アンテナエレメント、55 アンテナ地板、57 ループアンテナ、60 送受信回路、61、62 電子機器、70 ケーブル、71、71a、71b 信号線、72 シールド。
【技術分野】
【0001】
この発明は、同軸ケーブルなどの不平衡線路とダイポールアンテナなどの平衡型機器を接続するときに用いられるバズーカ型バランフィルタおよびそれが配設されたシールド線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸ケーブルなどの不平衡線路により電子機器間を電気的に接続するとき、同軸ケーブルから放射する不要な電磁波を低減するために、同軸ケーブルと電子機器の間に、
バズーカ型バランフィルタを設置している。バズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブルの外部導体の外側に一端を短絡した長さ4分の1波長となる円筒導体と外部導体の外側とで構成された同軸線路であり、他端を開放端とし電流の定在波の節とし、同軸ケーブルの内部導体を流れる高周波電流が外部導体の外側に漏れるのを防止している。(例えば、特許文献1参照)。
このバズーカ型バランフィルタの円筒導体と同軸ケーブルの外部導体との間に誘電体を配置することにより、波長短縮効果から減衰する漏れ電流の周波数に相当する円筒導体の長さを短くすることができ、バズーカ型バランフィルタの小型化が図られる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−151949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バズーカ型バランフィルタを小型化するために比誘電率の大きな誘電体を用いると、比誘電率の大きな誘電体は誘電損失が大きく、4分の1波長共振を起こすことが困難であり、バズーカ型バランフィルタの小型化に限界があるという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、誘電損失が大きく比誘電率の大きな誘電体を用いて漏れ電流を減衰できる小型のバズーカ型バランフィルタおよびそれが配設されたシールド線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るバズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブルの外周に配設され、且つ一端が上記同軸ケーブルの外部導体に接続され他端が開放される金属導体および上記外部導体と上記金属導体との間に配置される誘電体を備えるバズーカ型バランフィルタにおいて、上記誘電体は、上記外部導体との間または上記金属導体との間の少なくともいずれか一方にエアギャップを介在して配置される。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るバズーカ型バランフィルタの効果は、誘電体を同軸ケーブルの外部導体の外側と間にエアギャップを介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体として用いることができるので、金属導体の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタの斜視図である。図2は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタの軸に沿った断面図である。なお、以下の断面図は軸に沿った断面図である。
この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタは、中心導体11、中心導体11を被覆する円筒状の絶縁体13および絶縁体13を被覆する円筒状の外部導体12から構成される同軸ケーブル1の一端部に設けられる。同軸ケーブル1の一端からは、外部導体12および絶縁体13が剥がされて中心導体11だけが延びており、また、外部導体12から引き出された引き出し線5が延びている。
中心導体11は、図示しない通信装置の信号線と接続され、外部導体12は引き出し線5を経て図示しない他の電子機器のグランド線と接続される。
【0009】
この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブル1の一端部の外部導体12の外側をエアギャップ4を介して所定の長さに亘って囲繞する円筒状の誘電体3と、誘電体3の外周面および一端面を被覆し、且つ外部導体12の外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の金属導体2とを備える。
金属導体2は、誘電体3の外周面および一端面を覆うとともにエアギャップ4の一端面を跨り外部導体12の外側に接続されている。
【0010】
図3は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体12の外側に流れる漏れ電流7の周波数特性を示すグラフである。
次に、誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置することによる共振周波数fの変化について説明する。
誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置しないときには、図3の曲線aに示すように、金属導体2の長さにより決まる共振周波数f1の近傍で漏れ電流が大きく減衰される。
一方、誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置したときには、誘電体3の実効的な比誘電率をεreff、誘電体3の長さをLdとすると、バズーカ型バランフィルタの共振周波数fは、式(1)にて表され、共振周波数fの近傍の周波数帯の同軸ケーブル1の外部導体12の外側に流れる漏れ電流7を減衰する。
【0011】
【数1】
【0012】
なお、誘電体3を外部導体12の外側および金属導体2の内側にそれぞれ接するように配置したときには、図3の曲線bに示すように、誘電体3の比誘電率そのままを式(1)に代入して求まる共振周波数f2の近傍の周波数帯の同軸ケーブル1の外部導体12の外側に流れる漏れ電流7を減衰する。
一方、誘電体3を外部導体12の外側との間にエアギャップ4を介在して外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置したときには、式(1)に用いる比誘電率εreffは誘電体3の比誘電率とエアギャップ4の比誘電率から求まるので、誘電体3の比誘電率より小さく、共振周波数f3は、図3の曲線cに示すように、共振周波数f2よりは少し大きい。しかし、共振周波数f3は共振周波数f2より少しだけ大きいので、実用上問題はない。
【0013】
次に、外部導体12の外側に対してエアギャップ4を介在して誘電体3を配置することによる漏れ電流7の減衰量への影響について説明する。
誘電体3を外部導体12の外側および金属導体2の内側に接するように配置したときには、図3の曲線bに示すように、漏れ電流の減衰量は誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置しないときに比べて大幅に減少する。これは誘電体3の誘電損失によって、バズーカ型バランフィルタがほとんど共振しなくなるためである。
一方、外部導体12の外側に対してエアギャップ4を介在して誘電体3を配置したときには、図3の曲線cに示すように、漏れ電流の減衰量は誘電体3を外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置しないときに比べて減衰量は大きくは減少しない。
【0014】
このように、誘電体3を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と間にエアギャップ4を介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3として用いることができるので、金属導体2の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
また、誘電体3の比誘電率が多少ばらついても、漏れ電流を減衰することのできる周波数がほとんど変化しないという効果を有する。
【0015】
実施の形態2.
図4は、この発明に係る実施の形態2によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態2によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタと誘電体3を配置する位置が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
この発明に係る実施の形態2によるバズーカ型バランフィルタでは、誘電体3は外部導体12の外側に接し、金属導体2の内側との間にエアギャップ4を介在するように配置されている。
このように、誘電体3を金属導体2の内側と間にエアギャップ4を介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3として用いることができるので、金属導体2の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0016】
なお、図5に示すように、誘電体3を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と間にエアギャップ4aを介在し、且つ、金属導体2の内側と間にエアギャップ4bを介在するように配置しても良い。
このように、誘電体3を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と間にエアギャップ4aを介在し、且つ、金属導体2の内側と間にエアギャップ4bを介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3として用いることができるので、金属導体2の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0017】
また、図6に示すように、誘電体3を内側の円筒状の誘電体3aと外側の円筒状の誘電体3bとから構成し、誘電体3bを誘電体3bとの間にエアギャップ4を介在するように配置しても良い。
このように、誘電体3を2つの誘電体3a、3bから構成し、一方の誘電体3bを他方の誘電体3aとの間にエアギャップ4を介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3として用いることができるので、金属導体2の長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0018】
実施の形態3.
図7は、この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタの斜視図である。
この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタと誘電体3Bおよび金属導体2Bの形状が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
この発明に係る実施の形態3による誘電体3Bは、同軸ケーブル1が貫通する円柱状の孔が設けられた角柱である。そして、誘電体3Bは、同軸ケーブル1の外部導体12の外側との間にエアギャップ4を介在するように配置されている。
この発明に係る実施の形態3による金属導体2Bは、誘電体3Bの4つの側面および一端面を覆い、エアギャップ4を跨り、外部導体12の外側に接続するように延びている。
【0019】
次に、この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタを試作し漏れ電流を測定した結果を説明する。
同軸ケーブル1として、セミリジッドケーブルを用いた。セミリジッドケーブルの外部導体12の径は5mmφである。金属導体2Bは角筒形状とし、幅Laを36mm、長さLdを115mmとした。誘電体3Bは、比誘電率1500、tanδ2.4の誘電体材料を用いた。図8に漏れ電流の測定結果を示す。曲線aは、誘電体3Bを外部導体12の外側と金属導体2Bの内側との間に配置しない比較のためのバズーカ型バランフィルタの特性であり、650MHz付近の漏れ電流を減衰することができる。曲線bは、誘電体3Bを外部導体12の外側と金属導体2Bの内側との間にエアギャップ4を介在せずに配置した比較のためのバズーカ型バランフィルタの特性であり、比誘電率1500、tanδ2.4の誘電体材料を用いると漏れ電流を減衰することができないことがわかる。曲線cは、誘電体3Bを外部導体12の外側との間に5mmの隙間のエアギャップ4を介在して配置したバズーカ型バランフィルタの特性であり、比誘電率1500、tanδ2.4のような誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を用いることにより420MHz付近の漏れ電流を減衰することができた。
【0020】
このように、誘電体3Bを同軸ケーブル1の外部導体12の外側と間にエアギャップ4を介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を誘電体3Bとして用いることができるので、金属導体2Bの長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
また、誘電体3Bと金属導体2Bは、ともに外側面が平面であるので、加工が容易であるという効果を有する。
【0021】
実施の形態4.
この発明に係る実施の形態4によりバズーカ型バランフィルタは、2つの周波数で漏れ電流を減衰できるバズーカ型バランフィルタである。そして、従来このために、長さの異なる2つの誘電体を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置している。しかし、2つの誘電体にそれぞれ生じる定在波が相互に干渉するため漏れ電流の減衰量が小さくなるという問題がある。特に、近接する2つの周波数において漏れ電流を減衰しようすると漏れ電流の減衰量が極めて小さくなるという問題がある。
【0022】
図9は、この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタと同様に、同軸ケーブル1の一端部に設けられる。同軸ケーブル1の一端では、外部導体12および絶縁体13が剥がされて中心導体11だけが延びており、また、外部導体12に接続された引き出し線5が延びている。
中心導体11は、図示しない通信装置の信号線と接続され、外部導体12は引き出し線5を経て図示しない他の電子機器のグランド線と接続される。
【0023】
この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブル1の一端部の外部導体12の外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第1の誘電体3aと、第1の誘電体3aの外周面および一端面を被覆し、且つ外部導体12の外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第1の金属導体2a、第1の金属導体2aの外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第2の誘電体3b、および、第2の誘電体3bの外周面および一端面を被覆し、且つ第1の金属導体2aの外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第2の金属導体2bを備える。
第1の金属導体2aは、第1の誘電体3aの外周面および一端面を覆うとともに外部導体12の外側に接続されている。
第2の金属導体2bは、第2の誘電体3bの外周面および一端面を覆うとともに第1の金属導体2aの外側に接続されている。
【0024】
第1の誘電体3aの実効的な比誘電率をεreff1、第1の金属導体2aの長さをLd1とすると、第1の誘電体3aによる共振周波数f1は、式(2)によって求められる。
また、第2の誘電体3bの実効的な比誘電率をεreff2、第2の金属導体2bの長さをLd2とすると、第2の誘電体3bによる共振周波数f2は、式(3)によって求められる。
【0025】
【数2】
【0026】
そして、この共振周波数f1と共振周波数f2において漏れ電流を減衰することができる。なお、第1の誘電体3a、第2の誘電体3bの長さや実効的な比誘電率を変化させることにより、漏れ電流を減衰することのできる周波数を自由に設定することができる。
例えば、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bに同じ誘電体材料を用いた場合、誘電体の長さによって共振周波数が決まる。第1の誘電体3aの長さLd1が第2の誘電体3bの長さLd2より長い場合、共振周波数f2が共振周波数f1より大きくなり、2つの周波数付近において漏れ電流を減衰することができる。
【0027】
次に、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在したときの漏れ電流への影響を説明する。図10は、共振周波数f1と共振周波数f2が十分離れているときの漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。
曲線aは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在したときの漏れ電流の周波数特性である。漏れ電流が極小値を示す周波数は、式(2)及び式(3)によって求められる共振周波数f1及び共振周波数f2に一致する。曲線bは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aが介在せず、直接接しているときの周波数特性である。漏れ電流が極小値を示す周波数は、共振周波数f1より若干高くなり、共振周波数f2より若干低くなる。また、漏れ電流の減衰量は、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在したときの減衰量より若干少なくなる。
【0028】
これは、第1の誘電体3a内に生じる定在波と第2の誘電体3b内に生じる定在波が、相互に干渉するためである。そして、第1の金属導体2aを第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に介在することにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間での相互干渉を低減することができる。
【0029】
図11は、共振周波数f1と共振周波数f2が近接しているときの漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。曲線aは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在したときの漏れ電流の周波数特性である。共振周波数f1と共振周波数f2を近接させることにより、広帯域にて漏れ電流を減衰することができる。
曲線bは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aが介在せず、直接接しているときの周波数特性である。共振周波数f1と共振周波数f2が近接すると、漏れ電流を減衰できる周波数範囲が狭くなり減衰量も少なくなる。これは、2つの誘電体間の相互干渉によって、共振周波数f1と共振周波数f2の間にある周波数にて弱い定在波しか発生しなくなるためである。
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在することにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することを防ぐので、2つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
【0030】
実施の形態5.
図12は、この発明に係る実施の形態5によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態5によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタと第1の誘電体3aと第2の誘電体3bの長さが同じであり、第1の金属導体2aと第2の金属導体2bの長さが同じであることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
この発明に係る実施の形態5によるバズーカ型バランフィルタでは、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bの長さは同じであり、第2の金属導体2bの底は第1の金属導体2aの底に接続している。
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在することにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することを防ぐので、2つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
また、第1の金属導体2aと第2の金属導体2bの構造が簡単になるという効果を有する。
【0031】
実施の形態6.
この発明に係る実施の形態6によりバズーカ型バランフィルタは、3つの周波数で漏れ電流を減衰できるバズーカ型バランフィルタである。そして、従来このために、長さの異なる3つの誘電体を同軸ケーブル1の外部導体12の外側と金属導体2の内側との間に配置している。しかし、3つの誘電体にそれぞれ生じる定在波が相互に干渉するため漏れ電流の減衰量が小さくなるという問題がある。
【0032】
図13は、この発明に係る実施の形態6によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態6によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタと同様に、同軸ケーブル1の一端部に設けられる。同軸ケーブル1の一端では、外部導体12および絶縁体13が剥がされて中心導体11だけが延びており、また、外部導体12に接続された引き出し線5が延びている。
中心導体11は、図示しない通信装置の信号線と接続され、外部導体12は引き出し線5を経て図示しない他の電子機器のグランド線と接続される。
【0033】
この発明に係る実施の形態6によるバズーカ型バランフィルタは、同軸ケーブル1の一端部の外部導体12の外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第1の誘電体3a、第1の誘電体3aの外周面および一端面を被覆し、且つ外部導体12の外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第1の金属導体2a、第1の金属導体2aの外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第2の誘電体3b、第2の誘電体3bの外周面および一端面を被覆し、且つ第1の金属導体2aの外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第2の金属導体2b、第2の金属導体2bの外側を所定の長さに亘って囲繞する円筒状の第3の誘電体3c、および、第3の誘電体3cの外周面および一端面を被覆し、且つ第2の金属導体2bの外側に接続する中央に穴が設けられた底を有する円筒状の第3の金属導体2cを備える。
【0034】
第1の金属導体2aは、第1の誘電体3aの外周面および一端面を覆うとともに外部導体12の外側に接続されている。
第2の金属導体2bは、第2の誘電体3bの外周面および一端面を覆うとともに第1の金属導体2aの外側に接続されている。
第3の金属導体2cは、第3の誘電体3cの外周面および一端面を覆うとともに第2の金属導体2bの外側に接続されている。
【0035】
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2a、第2の誘電体3bと第3の誘電体3cとの間に第2の金属導体2bを介在することにより、第1の誘電体3a、第2の誘電体3bおよび第3の誘電体3cにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することを防ぐので、3つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
なお、実施の形態6では、3つの周波数での漏れ電流を減衰するバズーカ型バランフィルタについて説明したが、4つ以上の周波数でも4つ以上の長さが異なり誘電体を用いることにより同様に漏れ電流を減衰することができる。
【0036】
実施の形態7.
図14は、この発明に係る実施の形態7によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態7によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタと第1の誘電体3aおよび第2の誘電体3bの配置が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
第1の誘電体3aは、外部導体12の外側との間にエアギャップ4aを介在するようにして配置される。第2の誘電体3bは、第1の金属導体2aの外側との間にエアギャップ4bを介在するようにして配置される。
【0037】
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間に第1の金属導体2aを介在することにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することを防ぐので、2つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
【0038】
また、第1の誘電体3aを外部導体12の外側との間にエアギャップ4aを介在し、第2の誘電体3bを第1の金属導体2aの外側との間にエアギャップ4bを介在するように配置することにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を第1の誘電体3aおよび第2の誘電体3bとして用いることができるので、第1の金属導体2aおよび第2の金属導体2bの長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0039】
実施の形態8.
図15は、この発明に係る実施の形態8によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
この発明に係る実施の形態8によるバズーカ型バランフィルタは、実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタと第1の金属導体2aが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
第1の金属導体2aは、第2の誘電体3bと重畳しない部分の第1の誘電体3aの外周面と一端面とを覆い、且つ外部導体12の外側に接続される。
また、第2の誘電体3bは、第1の誘電体3bの外周面との間にエアギャップ4を介在するようにして配置される。
【0040】
このように、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bとの間にエアギャップ4を介在させることにより、第1の誘電体3aと第2の誘電体3bにそれぞれ生じる定在波が相互に干渉することが防がれるので、2つの周波数、または2つの周波数に挟まれる広帯域の周波数帯で大きな漏れ電流減衰量特性を有するバズーカ型バランフィルタを得ることができる。
【0041】
また、第2の誘電体3bを第1の誘電体3aの外側との間にエアギャップ4を介在させることにより、誘電損失が大きな誘電体材料を用いても、漏れ電流を大きく減衰することができる。そして、誘電損失が大きく比誘電率が大きい誘電体材料を第2の誘電体3bとして用いることができるので、第2の金属導体2bの長さを短くすることができ、小型のバズーカ型バランフィルタを提供することができる。
【0042】
実施の形態9.
図16は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを使用してダイポールアンテナ50と送受信回路60とを接続するときの構成を示す図である。
なお、実施の形態9において、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを例にして説明するが、実施の形態2乃至8によるバズーカ型バランフィルタを用いても同様な構成となる。
【0043】
ダイポールアンテナ50は、図16に示すように、2つのアンテナエレメント51、52から構成される。
同軸ケーブル1の中心導体11は、ダイポールアンテナ50の一方のアンテナエレメント51に接続され、外部導体12から引き出された引き出し線5は、他方のアンテナエレメント52に接続される。
また、同軸ケーブル1は送受信回路60に接続される。
なお、バズーカ型バランフィルタとダイポールアンテナ50との間、またはバズーカ型バランフィルタと送受信回路60との間にインピーダンス回路が設けられていても良い。
【0044】
送受信回路60で作成された高周波信号は、同軸ケーブル1を経てダイポールアンテナ50に給電される。そして、バズーカ型バランフィルタを配置しないときにはダイポールアンテナ50と同軸ケーブル1の接続部から、高周波信号が同軸ケーブル1の外部導体12の外側に漏れ出し漏れ電流7となる。漏れ電流7は、不要な電磁放射を増大させたり、ダイポールアンテナ50の特性を劣化させたりする。
一方、バズーカ型バランフィルタをダイポールアンテナ50と同軸ケーブル1の間に配設することにより、漏れ電流7を大幅に減衰することができる。
【0045】
図17は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを使用してモノポールアンテナ53と送受信回路60とを接続したときの構成を示す図である。
モノポールアンテナ53は、図17に示すように、アンテナエレメント54とアンテナ地板55から構成される。
同軸ケーブル1の中心導体11は、アンテナエレメント54に接続され、外部導体12から引き出された引き出し線5はアンテナ地板55に接続される。
また、同軸ケーブル1は送受信回路60に接続される。
【0046】
このようにバズーカ型バランフィルタをモノポールアンテナ53と同軸ケーブル1との間に配設することにより、モノポールアンテナ53と同軸ケーブル1との接続部から同軸ケーブル1の外部導体12の外側に漏れる漏れ電流7を減衰することができる。
【0047】
図18は、この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを用いてループアンテナ57と送受信回路60とを接続したときの構成を示す図である。
同軸ケーブル1の中心導体11と外部導体12から引き出された引き出し線5の間にループアンテナ57が接続される。
また、同軸ケーブル1は送受信回路60に接続される。
このようなバズーカ型バランフィルタをループアンテナ57と送受信回路60との間に配設することにより、ループアンテナ57と同軸ケーブル1との接続部から同軸ケーブル1の外部導体12の外側に漏れる漏れ電流7を減衰することができる。
【0048】
実施の形態10.
図19は、通信機器や電子機器に接続されたシールド線にこの発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを配設するときの構成を示す図である。
なお、実施の形態10においてはこの発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを例にして説明するが、実施の形態2乃至8によるバズーカ型バランフィルタを用いても同様な構成となる。
【0049】
電子機器61と電子機器62の間をケーブル70によって接続する。ケーブル70は、数本の信号線71の周囲にシールド72を施した構造である。なお、以下の説明では2本の信号線71a、71bを有するケーブル70として説明するが信号線71の本数がこれに限るものではない。
信号線71a、71bは、電子機器61および電子機器62の内部の図示しない電子回路に接続されている。バズーカ型バランフィルタの金属導体2は、シールド72に電気的に接続されている。金属導体2の内側とシールド72との間にシールド72との間にエアギャップ4を介在して誘電体3が配置されている。
シールド72からの引き出し線5は、電子機器62の金属筐体部に接続しているが、接続しなくても良い。
【0050】
信号線71a、71bを流れる高周波電流は、電子機器62とケーブル70との接続部からシールド72の外側に漏れ出し、漏れ電流7となる。漏れ電流7は不要な電磁放射を増加させる問題になる。
一方、バズーカ型バランフィルタを電子機器62とケーブル70の間に設けることにより、漏れ電流を減衰したり不要な電磁放射を低減したりすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタの斜視図である。
【図2】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタの軸に沿った断面図である。
【図3】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体の外側に流れる漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。
【図4】この発明に係る実施の形態2によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図5】この発明に係る実施の形態2による他のバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図6】この発明に係る実施の形態2による他のバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図7】この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタの斜視図である。
【図8】この発明に係る実施の形態3によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体の外側に流れる漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。
【図9】この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図10】この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体の外側に流れる漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。(共振周波数が離れている場合)
【図11】この発明に係る実施の形態4によるバズーカ型バランフィルタを配置したときの外部導体の外側に流れる漏れ電流の周波数特性を示すグラフである。(共振周波数が近接している場合)
【図12】この発明に係る実施の形態5によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図13】この発明に係る実施の形態6によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図14】この発明に係る実施の形態7によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図15】この発明に係る実施の形態8によるバズーカ型バランフィルタの断面図である。
【図16】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを使用してダイポールアンテナと送受信回路とを接続するときの構成を示す図である。
【図17】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを使用してモノポールアンテナと送受信回路とを接続したときの構成を示す図である。
【図18】この発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを用いてループアンテナと送受信回路とを接続したときの構成を示す図である。
【図19】通信機器や電子機器に接続されたシールド線にこの発明に係る実施の形態1によるバズーカ型バランフィルタを配設するときの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 同軸ケーブル、2、2B、2a、2b、2c 金属導体、3、3B、3a、3b、3c 誘電体、4、4a、4b エアギャップ、5 引き出し線、7 漏れ電流、11 中心導体、12 外部導体、13 絶縁体、50 ダイポールアンテナ、51、52 アンテナエレメント、53 モノポールアンテナ、54 アンテナエレメント、55 アンテナ地板、57 ループアンテナ、60 送受信回路、61、62 電子機器、70 ケーブル、71、71a、71b 信号線、72 シールド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルの外周に配設され、且つ一端が上記同軸ケーブルの外部導体に接続され他端が開放される金属導体および上記外部導体と上記金属導体との間に配置される誘電体を備えるバズーカ型バランフィルタにおいて、
上記誘電体は、上記外部導体との間または上記金属導体との間の少なくともいずれか一方にエアギャップを介在して配置されることを特徴とするバズーカ型バランフィルタ。
【請求項2】
上記誘電体は、上記外部導体と上記金属導体との間に配置される複数の同軸円筒であり、且つ隣接する上記同軸円筒の間にエアギャップが介在していることを特徴とする請求項1に記載のバズーカ型バランフィルタ。
【請求項3】
上記誘電体は、上記外部導体と上記金属導体との間に配置される複数の同軸円筒であり、
上記金属導体は、隣接する上記同軸円筒の間に延びて上記隣接する同軸円筒の間に介在し、且つ中央に穴が設けられた底を有する円筒形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のバズーカ型バランフィルタ。
【請求項4】
同軸ケーブルの外周に配設され、且つ一端が上記同軸ケーブルの外部導体に接続され他端が開放される金属導体および上記外部導体と上記金属導体との間に配置される同軸円筒形状の複数の誘電体を備えるバズーカ型バランフィルタにおいて、
上記金属導体は、隣接する上記誘電体の間に延びて上記隣接する誘電体の間に介在し、且つ中央に穴が設けられた底を有する円筒形状であることを特徴とするバズーカ型バランフィルタ。
【請求項5】
電子機器を他の電子機器に電気的に接続するシールド線において、
上記電子機器との接続部に請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバズーカ型バランフィルタが配設され、且つ上記バズーカ型バランフィルタの金属導体と電気的に接続されたことを特徴とするシールド線。
【請求項1】
同軸ケーブルの外周に配設され、且つ一端が上記同軸ケーブルの外部導体に接続され他端が開放される金属導体および上記外部導体と上記金属導体との間に配置される誘電体を備えるバズーカ型バランフィルタにおいて、
上記誘電体は、上記外部導体との間または上記金属導体との間の少なくともいずれか一方にエアギャップを介在して配置されることを特徴とするバズーカ型バランフィルタ。
【請求項2】
上記誘電体は、上記外部導体と上記金属導体との間に配置される複数の同軸円筒であり、且つ隣接する上記同軸円筒の間にエアギャップが介在していることを特徴とする請求項1に記載のバズーカ型バランフィルタ。
【請求項3】
上記誘電体は、上記外部導体と上記金属導体との間に配置される複数の同軸円筒であり、
上記金属導体は、隣接する上記同軸円筒の間に延びて上記隣接する同軸円筒の間に介在し、且つ中央に穴が設けられた底を有する円筒形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のバズーカ型バランフィルタ。
【請求項4】
同軸ケーブルの外周に配設され、且つ一端が上記同軸ケーブルの外部導体に接続され他端が開放される金属導体および上記外部導体と上記金属導体との間に配置される同軸円筒形状の複数の誘電体を備えるバズーカ型バランフィルタにおいて、
上記金属導体は、隣接する上記誘電体の間に延びて上記隣接する誘電体の間に介在し、且つ中央に穴が設けられた底を有する円筒形状であることを特徴とするバズーカ型バランフィルタ。
【請求項5】
電子機器を他の電子機器に電気的に接続するシールド線において、
上記電子機器との接続部に請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバズーカ型バランフィルタが配設され、且つ上記バズーカ型バランフィルタの金属導体と電気的に接続されたことを特徴とするシールド線。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−27516(P2009−27516A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189467(P2007−189467)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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