説明

バッチ式混合装置及びバッチ式混合装置内の材料の混合法

【課題】高剪断混合技術の産業への有効な応用では、200kg程の大量の材料を一括処理できる混合装置が望まれる。
【解決手段】混合装置は、軸から離れて延伸しかつ混合室を形成する対向表面をそれぞれ有し、軸の周囲で互いに対し相対回転可能に対向する第1の混合部材及び第2の混合部材を備える。回転手段は、第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方を回転させて、第1の混合部材と第2の混合部材との間に第1の回転方向に相対的回転を付与する。少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体のアレイは、相互に作用して混合室内の材料を混合し、混合室内の材料を軸に向かって押圧するように形成される。少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体の数は、軸から半径方向に離れる程増加する。混合形成体の凹部の溝は、軸から半径方向に離れる程増加する断面積を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合技術に関連し、新規なバッチ式混合装置及びバッチ式混合装置内の材料の混合法を提供する。特に本発明は、高剪断混合に関連する。用語「混合」は、単一の材料の処理を含むと理解すべきである。
【背景技術】
【0002】
高剪断混合(HSM)は、極めて高水準の剪断応力及び延伸応力を付与できる比較的最近に開発された混合技術である。高剪断混合技術は、(機械力の負荷のみにより材料中の化学的反応を本質的に誘発する)機械化学的原理を基礎とし、従来の冷間ニ軸圧延(cold two-roll milling)法の被制御剪断間隙と延伸流との特徴を更に強力な方法で有効に再現するものである。この技術は、ウィリアム・ワトソン(William Watson)により初めて提案され、ワトソン名義の下記特許文献1に開示される。この特許は、複数の溝と、複数の溝間に介在するランドとが横断するとき、材料を剪断し分離する相対的に回転する溝付部材間で材料の混合を行うバッチ(一括処理)式及び連続式の混合装置を開示する。バッチ式混合装置では、複数の溝は、対向しかつ相対的に回転するディスク上に形成され、ディスクの回転中心軸に向かい溝に沿って材料を内側に引き寄せるように、複数の溝が形成される。混合装置の中心に向かって材料が移動するので、利用可能な量が減少し、圧力が増加すると共に、ディスク中心から離れて湧き出る材料が外部で再循環される結果となる。これは、剪断作用及び分離作用に加えて効果的な周延混合を与えるものである。
【0003】
溝の大きさ及び溝の分布の適正な形状により、剪断、延伸及び周延混合の特性を選択的に制御できる。特に、加圧度を慎重に制御する機能は、機械化学的混合に理想的な混合装置を提供する。例えば、高剪断混合装置の重要な一用途は、ゴム及び類似の架橋された粘弾性材料の再利用である。機械化学的混合は、重合体鎖に対し大きな損傷を与えずに、選択的に架橋結合を破壊し材料を可溶化して、再生材料から高品質の再利用製品を生成できる効率的な方法を提供する。
【特許文献1】英国特許第2,300,129号
【特許文献2】米国特許第4,657,400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高剪断混合技術の産業への有効な応用では、200kg程の大量の材料を一括処理できる混合装置が望まれる。しかしながら、ウィリアム・ワトソンにより提案された混合装置の形態を単純に大型化すると多くの問題が生じる。例えば、相対的に回転混合するディスク半径を単純に増大すれば、大量の一括処理を達成できよう。溝及び溝間のランドの数は、半径により変化しないが、複数のディスク間の材料に負荷される混合応力の強度及び頻度は、半径により変化する点がこの方法の難点である。混合装置内の異なる位置で材料に負荷される混合圧力の相違は、小型の混合装置では問題にならないが、混合装置のサイズが増大すると、達成する混合最大値の相違も増大する。更に、大型ディスクでは、ディスクの内部領域と外部領域との間で回転速度が大きく相違し、ディスクの中心で適切に混合するのに要する速度は、ディスクの周縁方向では不都合に高速化する結果、過度の応力が材料に加えられる。
【0005】
ディスクの直径を増大する別法として、混合ディスクの溝の深さを増大することにより、大量の材料に適応できる。しかしながら、溝の深さが増大すると、溝の底に材料が封入されて沈滞する可能性が増加する。
【0006】
大量の材料を一括混合する実用上の更なる問題は、混合装置から混合した材料を除去する際に直面する。例えば、高剪断混合の前記形態を有する混合装置を使用して、ゴム化合物を再生利用するとき、得られた生成物は、混合装置の外部に持ち上げて除去しなければならない大きな粘着性のある「スラブ」である。これは、少ない材料の一括処理では特に問題はないが、大量の一括処理では重大な問題となり得る。
【0007】
前記問題点を解消し又は抑制することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の実施の形態では、軸から離れて延伸しかつ混合室を形成する対向表面をそれぞれ有し、軸の周囲で互いに相対的に回転可能に対向する第1の混合部材及び第2の混合部材と、第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方を回転させて、第1の混合部材と第2の混合部材との間に第1の回転方向の相対的な回転を付与する手段と、第1の混合部材と第2の混合部材とを第1の回転方向に相対的に回転するとき、相互に作用して混合室内の材料を混合し、混合室内の材料に対する軸に向かう押圧力を発生するように少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体のアレイとを備え、少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体の数は、軸から半径方向に離れる程増加するバッチ式混合装置を提供する。
【0009】
単一の混合部材(又は複数の混合部材)の半径に混合形成体の数を対応させることにより、対向表面を横切り発生する混合作用を標準化できる。
【0010】
混合形成体は、対向表面の両方又は各々に形成される溝等の凹部が好ましく、直線状又は湾曲状の側壁を有し、混合形成体自体を直線状又は湾曲状としてもよい。別法として、混合形成体は、対向表面の両方又は各々の上方に隆起する突出部、例えば直線状又は湾曲状の側壁を有しかつそれ自体が直線状又は湾曲状の隆起稜でもよい。本発明の実施の形態は、溝と突出部との両方を含んでもよい。
【0011】
材料に必要な押圧力(又は搬送力)を与えるため、対向表面の少なくとも一方、好ましくは両方の混合形成体の少なくとも数個は、第1の回転方向の前方に湾曲される。
【0012】
本発明の一実施の形態では、少なくとも一方の対向表面(及び好ましくは両方の対向表面)上の各混合形成体は、軸に対する径方向に内端と外端とを有し、対向表面の両方又は各々の数個の混合形成体の内端は、同一表面上の他の混合形成体より更に軸から離間する。
【0013】
例えば、対向表面は、2つ又はそれ以上の扇形に分割され、各扇形は、各扇形内に形成される実質的に平行な混合形成体のアレイを有し、1つの扇形の混合形成体は、少なくとも他の1つの扇形の混合形成体に平行であるが、少なくとも1つの他の扇形の混合形成体に非平行である。特定の扇形内の混合形成体は、各対向表面上に投影される半径線に実質的に平行でもよい。対向表面は、付加的に又は別法として、半径方向の内部領域と外部領域とに分割され、内側領域と外側領域の各々は、各領域の範囲内で延伸する混合形成体を形成し、外側領域は、内側領域より多い数の混合形成体を有する。
【0014】
前記パターン化した溝のアレイは、例えば従来の精米機に使用されてきた。近年、このような、溝パターンは、上記特許文献2に開示される混合装置に使用されてきた。この装置では材料は、相対的に回転する2枚の溝付ディスク間で混合され、混合領域の周縁の周りに設けられる捕集環に材料が搬送される。
【0015】
更に、両対向表面に溝又は隆起稜等が形成される例では、材料に必要な押圧力を加えるため、重ねて見たときに、互いに交差するように各対向表面の溝等の作用線を形成することが好ましい。更に、一方向に回転するとき、支配的な径方向搬送力を付与し、逆方向に回転するとき、支配的な逆の径方向搬送力を付与するように、前記交差の形状を形成してもよい。また、径方向押圧力の瞬間的な強度の周期的な増加及び減少及び瞬間的な方向を付与するように、前記形状が形成される。
【0016】
例えば、本発明の前記実施の形態の各2つの対向表面では、互いに鏡像、即ち対称な形状として形成パターンを設けることにより、溝等の作用線を交差する形状を達成できる。
【0017】
特定の半径で測定するとき、混合形成体の半径に比例して全断面積が増加する溝により混合形成体を設けることが本発明の好適な形態の特徴である。その結果、縮小半径方向に溝内で移動する材料は、増加する圧力を受け、増大半径方向に移動する材料は、減少する圧力を受ける。溝の作用によって、材料は、混合装置の軸に向かって積極的に圧送され、これにより同時に、押出機の設計で周知の所謂逆流現象と呼ばれる流れに逆らう方向の増加する圧力を受ける。溝の圧送作用の周期的に変動する強度と、どれか特定の溝断面を横切る材料の不均一移動との何れか又は両方の結果として、溝に沿って径方向内側及び外側に同時に又は連続的に材料を流動させることができる。双方向の流動パターンにより、極めて有効に径方向の周延混合を行うことができる。個々の溝はそれ自体、半径の増加と共に増加する断面積を有し、逆流により生じる周延混合を強化できる。例えば、溝の深さ及び/又は幅を半径の増加と共に増加してもよい。
【0018】
本発明のバッチ式混合装置の混合部材の対向表面は、平坦な形状でもよいが、好適な実施の形態では、一方の対向表面は凹面形であると共に他方は凸面形である。特に円錐形状が好ましいが、半球形状又はラッパ形状等の他の形状を使用してもよい。非平坦形状を使用すれば、全表面半径(即ち軸から最大距離の表面)の不都合な大幅な増加がなく、混合量及び表面積を増加できるので、所与の混合機容量に必要な表面速度及びトルクを最小化できる。
【0019】
第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方から軸部を上昇させて取り外し、第1の混合部材と第2の混合部材とを第1の回転方向に相対的に回転させることにより混合室から材料を排出することが好ましい。これにより、前記従来の混合装置で経験する大量の一括処理する混合材料を除去する際の問題を解決する。
【0020】
また、好ましくは前記形態を適用でき、その他の点では従来の混合装置を適用する本発明の第2の実施の形態は、軸から離れて延伸しかつ混合室を形成する対向表面をそれぞれ有し、軸の周囲で互いに相対的に回転可能に対向する第1の混合部材及び第2の混合部材と、第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方を回転させて、第1の混合部材と第2の混合部材との間に第1の回転方向の相対的な回転を付与する手段と、第1の混合部材と第2の混合部材とを第1の回転方向に相対的に回転するとき、相互に作用して混合室内の材料を混合し、混合室内の材料に対する軸に向かう押圧力を発生するように少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体のアレイとを備え、第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方から軸部を上昇させて取り外し、第1の回転方向に第1の混合部材及び第2の混合部材を相対的に回転させながら、混合室から材料を排出するバッチ式混合装置を含む。
【0021】
混合形成体は、各対向表面内/各対向表面上に形成される溝及び/又は突出部等の凹部であることが好ましい。
【0022】
本発明の第1の実施の形態と同様に、非平坦な混合表面形状は有利であり、第1の混合部材が凹面形であり、第2の混合部材が凸面形であることが好ましい。各混合部材を互い重ねて各混合部材間に混合室が形成される。
【0023】
着脱可能な軸部は、第1の混合部材の中心部であることが好ましい。第1及の混合部材び第2の混合部材の両方又は各々の軸部は、第1の混合部材及び第2の混合部材の両方又は各々の各開口部に挿入可能な例えばプラグを含む。第1の混合部材及び第2の混合部材の各々は、中心に開口部が設けられ、両開口部を閉鎖する単一のプラグを備えることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、軸の周囲で互いに相対的に回転可能にかつ対向して配置される第1の混合部材及び第2の混合部材と、第1の混合部材と第2の混合部材との対向表面間に形成される混合室と、第1の混合部材及び第2の混合部材が相対的に回転するとき、少なくとも第1の混合部材の対向表面と第2の混合部材の対向表面とが相互に作用し、混合室内の材料の混合する混合形成体のアレイとを備え、少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体の数が、軸から半径方向に離れる程増加するバッチ式混合装置を準備する過程と、少なくとも数個の混合形成体は、第1の混合部材及び第2の混合部材の相対的な回転方向に依存して、軸に向かう方向又は軸から離間する方向に混合室内の材料を押圧し、第1の混合部材及び第2の混合部材を一方向に相対的に回転させて、混合形成体を相互に作用させて、軸に向かって材料を押圧する過程を含むバッチ式混合装置内の材料の混合法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるバッチ式混合装置内の材料の高剪断混合装置を示す正面図
【図2】図1の矢印A方向の図1のバッチ式混合装置の側面図
【図3】図1及び図2のバッチ式混合装置を示す平面図
【図4】図2に対応するバッチ式混合装置の詳細を示す拡大部分側面図
【図5a】図1〜図4のバッチ式混合装置のステータをそれぞれ示す側面図(実物大ではない)
【図5b】図1〜図4のバッチ式混合装置のステータをそれぞれ示す平面図(実物大ではない)
【図6a】図1〜図4のバッチ式混合装置のロータをそれぞれ示す横断面図(実物大ではない)
【図6b】図1〜図4のバッチ式混合装置のロータをそれぞれ示す平面図(実物大ではない)
【図7a】図1〜図4のバッチ式混合装置の4段階の動作を示す図
【図7b】図1〜図4のバッチ式混合装置の4段階の動作を示す図
【図7c】図1〜図4のバッチ式混合装置の4段階の動作を示す図
【図7d】図1〜図4のバッチ式混合装置の4段階の動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面について、本発明を例示するに過ぎない特定の実施の形態を説明する。
添付図面に示すように、図示の混合装置は、バッチ(一括処理)式高剪断混合装置であり、固定支持枠3の上部及び下部にそれぞれ支持されかつ垂直方向に重ねられた円錐形の上部混合部材1と下部混合部材2とを含む。上部混合部材1は、支持枠3の上部の十字部材3aにより支持される円錐状凸形ステータである。更に後述のように、4本の枠柱3bに摺動可能に十字部材3aを支持して、ステータ1を垂直方向に上昇及び下降させる液圧ラム4が設けられる。ステータ1の円錐状外面には、複数の溝1aの形状が設けられる(最良の形態を図5a及び図5bに示す)。ステータ1は、内部冷却剤用溝1bを形成する二重壁構造を有する。
【0027】
円錐状の凹面形ロータとなる下部混合部材2は、支持枠3の下部に支持される環状の回転環軸受5上で中心軸周りに回転可能に設けられる。ロータ2の内面に複数の溝2aの形状が形成され、複数の溝2aの形状は、更に後述のように、ステータ1上に形成される複数の溝1aと組み合わせて使用される。ステータ1と同様に、ロータ2は、回転結合装置2cを通じて冷却剤を収容する内部冷却剤路2bを形成する二重壁構造体である。ギアボックス6と、ピニオンギア8を有するギア軸7と、ロータ2の外周の周りに形成されかつピニオンギア8に係合する環状ギア車輪9とを介して、適切なモータ(図示せず)によりロータ2が回転駆動される。
【0028】
対応する開口部10及び11は、ロータ2及びステータ1の両先端部に形成され、ロータ2の回転軸に沿い互いに同軸上に配置される。開口部10及び11を選択的に閉鎖/開放するプラグ12は、軸受14上のスピンドル13に回転可能に設けられ、液圧シリンダ15は、ステータ1の上方で支持枠3上部の十字部材3cに支持され、スピンドル13は、液圧シリンダ15から下方に突出する。ほぼ円筒形に形成されるプラグ12は、開口部10及び11の内面形状に対応する外面を有する。使用の際、プラグ12の下部は、開口部10内でロータ2と係合して、プラグ12はロータ2と共に回転する。シリンダ15がプラグ12と共に回転することを防止するガイドロッド16が設けられる。
【0029】
ステータ1とロータ2との対向面に形成される溝1a及び2aの各形状をそれぞれ図5及び図6から最も良く理解できよう。ロータ2とステータ1との各々には、ついて本質的に同一のパターンで溝1aと2aが形成される。ステータ1とロータ2の各々において、中心から外延まで溝付内面上を延びる直径方向の一点鎖線により、溝面は4つの扇形(四分円)に分割される。各四分円では、8つの溝la/2aは、四分円を形成する1つの半径線に沿う複数の離間位置から、ロータ2/ステータ1の外周で同様に間隔を空けた離間位置まで延伸する。各四分円の複数の溝は、互いにほぼ平行でありかつロータ2/ステータ1の面上に投影される半径線にほぼ平行である。全溝がロータ2/ステータ1の面の外縁(即ち円錐部材の最大直径部)に延伸するので、全溝が中心(先端)に延伸しないが、ステータ1/ロータ2の直径が事実上増大すれば面に形成される溝数を増加させるのが有効である。特に図7a〜図7dについてバッチ式混合装置の動作を説明する。
【0030】
材料を混合装置内に装填するために、図7aに示すように、ロータ2内の開口部10に係合する下部位置にプラグ12を保持しながら、液圧ラム4によりステータ1を上昇させる。これにより、円錐状凹形ロータ2の内部に材料を直接投入できる。次に、ステータ1を下降させてロータ2内にステータ1を重ね、プラグ12の上部を開口部11内に嵌合する。ロータ2とステータ1との溝付面間に残される適当な間隙により混合室を形成する。その後、ロータ2を回転して混合操作を実行する。
【0031】
混合装置の機構は、特許文献1に開示されるように、ウィリアム・ワトソンが提案した初期の混合装置の構造と本質的に同一である。特定の相対回転方向では、ステータ1の溝1aは、ロータ2の溝2aと整列するため、混合室内に存在する材料は、対向する溝内に圧搾される。このとき、ロータ2及びステータ1が互いに相対的に回転するので、溝la及び2aは、互いに中心がずれて、ロータ2及びステータ1の一方に設けられた隣合う溝間に形成されるランドと、ロータ2及びステータ1の他方に設けられた隣合う溝間に形成される対向するランドとの間に形成される小空間に材料が溝から連続的に移動される。これにより、材料は延伸されかつ剪断されて、機械化学反応が誘発される。
【0032】
また、溝1aが溝2aと交差するので、混合装置内で材料の剪断と分割との両方を生ずる分断作用が発生する。従って、溝内と溝間との両方で混合が行われる。更に、回転方向に依存して、分断作用により、混合室の中心又は周縁に向かって材料を圧搾するように、複数の溝の方向を形成すれば、周延混合を強化できよう。特に、混合室の中心に向かって材料を圧搾するようにロータを回転させることによって、中心に向かう材料の圧力を強化し、混合装置の周縁に向かって逆流させるので、材料は、混合室内で連続的に径方向に循環するであろう。しかしながら、混合室の中心に向かって、即ち円錐形混合部材の先端に材料が滞留する傾向がある場合、ロータ2を周期的に逆回転することにより滞留を抑制できる。
【0033】
本発明によるバッチ式混合装置の重要な利点は、溝の数が回転軸からの距離が増加する程増大するように、材料の混合に利用できる溝の数をロータ/ステータの半径に対応させることにより、混合室内の全位置にある材料に実質的に同一の混合作用を与えるように、剪断作用、延伸作用及び分断作用を標準化できる。これは、混合装置を大型化するに、混合室全体にわたり、実質的に均一な材料の混合を維持できる。
【0034】
混合工程の最終段階で、図7cに示すように、ステータ1を下部位置に保持しながらプラグ12を上昇し、ロータ2を更に回転して、混合した材料を送出し、ロータ2の先端の開口部10から排出する。続いて、図7dに示すようにステータ1を上昇して、残留する材料を手作業で除去できる。その後、次の混合動作のために、図7aに示す位置にプラグ12を再度下降できる。
【0035】
混合室を横断する均一混合を行う複数の溝形成は、対向するディスク等の実質的に平坦な混合部材にも応用できよう。従って、本発明の変更態様では、開示した円錐形部材以外の平坦なロータとステータとを組み合わせ可能である。同様に、ディスク形混合部材に中心プラグを設けて、本質的に前記と同一の方法で混合した材料を容易に排出できよう。しかしながら、円錐部材の採用により、従来技術の構造を越える更に重要な効果が得られる。
【0036】
第1に、円錐形状を採用することにより、要求される混合装置の大きさ、表面積及び表面速度に対して、混合部材の最大直径を最小化できる。従って、高速回転による混合部材の周縁に向かって過度の圧力を材料に加える問題がなく、比較的大きい混合装置を使用できる。また、同様の表面積/体積の平坦形状と比較して、ロータの回転に要するトルクと動力を低減できる。従って、不都合な深い溝を形成する必要がなく、比較的小型の混合装置内で大量の材料を混合できる。また、円錐形状は、混合装置内に液体を保持するのに有用であり、周延混合を有効に支援できるものである。加えて、円錐体内の気体保持特性は、代替(例えば非酸素の)環境内での有効な混合を可能にするものである。
【0037】
更に、混合部材を適当に設計することにより混合機構を制御しなら、種々の円錐角度を採用することによって、回転軸からの距離の関数として異なる剪断強度及び延伸強度を確定できる。
【0038】
前記効果を達成するのに、混合部材を厳密に円錐形に形成する必要はない。別法では、溝付面の中心軸に沿って溝付面の周縁が減少する如何なる形状、例えば半球形状及びラッパ形状を含む。
【0039】
溝の厳密なパターンも大きく変更できよう。前記溝形状の比較的単純な修正は、前記実施の形態の四分円に形成される溝の形状に類似する形状を有する4つ以上の扇形に溝付面を分割することである。混合室全体を横断して均一に又は実質的に均一に混合する特徴は、回転軸からの距離が増加する程、溝の数を増やすことである。例えば、ロータ2/ステータ1の外周縁まで全溝を延伸させる必要はなく、またロータ2及びステータ1の両方に同一の溝パターンを形成する必要もない。
【0040】
同様に個々の溝の形態は変更してもよい。例えば、前記のように、ロータ2及びステータ1の半径と共に増加する断面溝を設けて、周延混合を強化することもできる。
【0041】
更に、溝ではなく複数の隆起稜等の突出部により混合面を形成してもよく、回転軸に対して前進又は後退するように材料の必要な混合作用及び押圧力を付与する類似のパターンに混合面を形成してもよい。本発明の実施の形態は、溝(又は他の凹部)と突出部との両方を組合せた混合面を含んでもよい。
【0042】
ロータ2/ステータ1の中心に着脱可能なプラグを設ける利点及び円錐形状(又は類似形状)から得られる多くの利点は、溝の特性とは別個のものであり、英国特許第2,300,129号に提案される溝の形状にも適用することもできる。従って、本発明の特定の選択的態様を具体化するバッチ式混合装置は、着脱可能な中心プラグ及び/又は円錐形状を有する混合装置を除き、英国特許第2,300,129号に開示する混合装置と実質的に同一形状のものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0043】
また、本発明の前記実施の形態は、再生ゴム等の架橋された粘弾性材料を脱硫する用途に主に設計されたが、この用途に限定されず、ゴム、熱可塑性物質及び熱硬化性樹脂等の他の重合体材料の混合若しくは他の処理、又はゴムのり、ペースト、スラリー及び流体の処理で高剪断混合の必要な如何なる場所にも応用できる。液体、固体及び固液複合体に周延混合作用及び又は分散混合作用が要求される広範囲の加工技術に本発明を応用できる。前記加工技術は、化学、石油化学、高分子、食品、飲料、医薬、個人医療製品、在宅治療製品、水、下水、廃棄物、エネルギ及びリサイクルを含むが、これらに限定されない。
【0044】
本発明による他の利用可能な変更態様及び応用例は、当業者に自明であろう。
【0045】
本発明の実施の形態では、各対向表面から突出する混合形成体を含み、突出する混合形成体は、隆起稜である。少なくとも一方の対向表面上に設けられる少なくとも数個の混合形成体は、第1の回転方向の前方に向かって湾曲して押圧力を発生し、両対向表面上に設けられる少なくとも数個の混合形成体は、第1の回転方向の前方に湾曲する。少なくとも1つの対向表面上に設けられる各混合形成体は、軸の径方向に内端と外端とを有し、各対向表面上に設けられる複数の混合形成体の内端は、同一表面上の他の混合形成体より更に軸から離れる。軸から比較的離れる内端を有する各表面上に設けられる混合形成体の数は、軸の比較的近傍に内端を有する同一表面上の混合形成体の数より多い。各混合形成体の外端は、各対向表面の径方向の外周縁まで延伸する。少なくとも一方の対向表面は、2つ又はそれ以上の扇形に分割され、各扇形は、平行な混合形成体のアレイを有し、1つの扇形の混合形成体は、少なくとも他の1つの扇形の混合形成体に非平行である。特定の扇形内の混合形成体は、各対向表面上に投影される半径線に平行である。少なくとも1つの対向表面は、半径方向の内側領域と外側領域とに分割され、内側領域と外側領域の各々は、各領域の範囲内で延伸する混合形成体を形成し、外側領域は、内側領域より多い数の混合形成体を有する。少なくとも一方の対向表面上に設けられる全混合形成体は、互いに平行であり、対向表面上に投影される半径線に対して平行である。両対向表面は、軸から離れる程、数が増加する混合形成体を有する。第1の混合部材の対向表面は、凹面形であり、第2の混合部材の対向表面は、凸面形である。第1の混合部材と第2の混合部材の対向表面は、軸に向かって縮径する円錐形状又は円錐台形状である。第1の混合部材と第2の混合部材の対向表面は、平坦である。第1の混合部材及び第2の混合部材の各々又は両方の着脱可能な軸部は、第1の混合部材及び第2の混合部材の各々又は両方の開口部に挿入可能なプラグを備え、第1の混合部材及び第2の混合部材の各々は、中心に開口部を備え、両方の開口部を閉鎖する単一のプラグを備える。第1の混合部材及び第1の混合部材の上方に配置された第2の混合部材は、支持枠に支持され、混合部材の開口部に着脱されるプラグは、第2の混合部材の上方に延伸する可動部材上に支持される。第1の混合部材に対するプラグとの係合を保持しながら、第2の混合部材を上昇させて、混合室に添加する材料を容易に装墳する手段を備える。第1の混合部材及び第2の混合部材の一方のみ回転可能であり、プラグは、延伸可能な可動部材に対して回転可能に設けられ、回転可能な混合部材に係合して回転する。第1の混合部材及び第2の混合部材を一方向に相対的に回転させながら、除去可能な軸部を取り外して開放状態の開口部を通じて混合室から材料を送出する。第1の混合部材から軸部の係合を外した状態を維持しながら、第2の混合部材を上昇させて、混合した材料を容易に排出する。第1の混合部材及び第2混合部材の両方は、逆方向に回転可能である。第1の回転方向とは反対方向の第2の回転方向に第1の混合部材及び第2の混合部材を選択的かつ相対的に回転させて、軸から離れるように混合室内の材料への押圧力を逆転する手段を備える。凹面形を有する第1の混合部材と、凸面形を有する第2の混合部材とを互い重ねて各混合部材間に混合室を形成する。第1の混合部材の中心部に着脱可能な軸部を配置する。
【符号の説明】
【0046】
(1,2)・・第1の混合部材及び第2の混合部材、 (1a,2a)・・混合形成体、 (10,11)・・開口部、 (12)・・軸部(プラグ)、 (15)・・可動部材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸から離れて延伸しかつ混合室を形成する対向表面をそれぞれ有し、軸の周囲で互いに相対的に回転可能に対向する第1の混合部材及び第2の混合部材と、
第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方を回転させて、第1の混合部材と第2の混合部材との間に第1の回転方向の相対的な回転を付与する手段と、
第1の混合部材と第2の混合部材とを第1の回転方向に相対的に回転するとき、相互に作用して混合室内の材料を混合し、混合室内の材料を軸に向かって押圧する形態で少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体のアレイとを備え、
少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体の数は、軸から半径方向に離れる程増加し、
混合形成体の凹部の溝は、軸から半径方向に離れる程増加する断面積を形成することを特徴とするバッチ式混合装置。
【請求項2】
軸から離れて延伸しかつ混合室を形成する対向表面をそれぞれ有し、軸の周囲で互いに相対的に回転可能に対向する第1の混合部材及び第2の混合部材と、
第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方を回転させて、第1の混合部材と第2の混合部材との間に第1の回転方向の相対的な回転を付与する手段と、
第1の混合部材と第2の混合部材とを第1の回転方向に相対的に回転するとき、相互に作用して混合室内の材料を混合し、混合室内の材料に対する軸に向かう押圧力を発生するように少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体のアレイとを備え、
第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方から軸部を上昇させて取り外し、第1の回転方向に第1の混合部材及び第2の混合部材を相対的に回転させながら、混合室から材料を排出することを特徴とするバッチ式混合装置。
【請求項3】
軸の周囲で互いに相対的に回転可能にかつ対向して配置される第1の混合部材及び第2の混合部材と、第1の混合部材と第2の混合部材との対向表面間に形成される混合室と、第1の混合部材及び第2の混合部材が相対的に回転するとき、少なくとも第1の混合部材の対向表面と第2の混合部材の対向表面とが相互に作用して正味押圧力を発生し混合室内の材料を混合する混合形成体のアレイとを備え、少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体の数が、軸からの半径方向に離れる程増加するバッチ式混合装置を準備する過程と、
少なくとも数個の混合形成体は、第1の混合部材及び第2の混合部材の相対的な回転方向に依存して、軸に向かう方向又は軸から離間する方向に混合室内の材料を押圧し、第1の混合部材及び第2の混合部材を一方向に相対的に回転させ、混合形成体を相互に作用させて軸に向かって材料を押圧する過程とを含み、
混合形成体の凹部の溝は、軸から半径方向に離れる程増加する断面積を形成することを特徴とするバッチ式混合装置内の材料の混合法。
【請求項4】
軸の周囲で互いに相対的に回転可能にかつ対向して配置される第1の混合部材及び第2の混合部材と、第1の混合部材と第2の混合部材との対向表面間に形成される混合室と、第1の混合部材及び第2の混合部材が相対的に回転するとき、少なくとも第1の混合部材の対向表面と第2の混合部材の対向表面とが相互に作用して正味押圧力を発生し混合室内の材料を混合する混合形成体のアレイとを備え、少なくとも一方の対向表面上に設けられる混合形成体の数が、軸からの半径方向に離れる程増加するバッチ式混合装置を準備する過程と、
少なくとも数個の混合形成体は、第1の混合部材及び第2の混合部材の相対的な回転方向に依存して、軸に向かう方向又は軸から離間する方向に混合室内の材料を押圧し、第1の混合部材及び第2の混合部材を一方向に相対的に回転させ、混合形成体を相互に作用させて軸に向かって材料を押圧する過程と、
第1の混合部材及び第2の混合部材の少なくとも一方から軸部を上昇させて取り外し、第1の混合部材及び第2の混合部材を第1の回転方向に相対的に回転させることにより混合室から材料を排出する過程とを含むことを特徴とするバッチ式混合装置内の材料の混合法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【公開番号】特開2010−58123(P2010−58123A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284788(P2009−284788)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2003−563793(P2003−563793)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(504291786)ワトソン・ブラウン・エイチエスエム・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】