説明

バッテリターミナル

【課題】車両走行時における異音の発生を防止するとともにバッテリターミナルに対する大電流ヒューズの角度を正確に決めることができるバッテリターミナルを提供することである。
【解決手段】バッテリ101に接続されるバッテリ接続部12と、大電流ヒューズ110に接続される接続端子部9と、該接続端子部9の上側に位置するボルト軸部15aと接続端子部9の下側に位置するボルト頭部15bからなるバッテリ端子ボルト15とを備える。大電流ヒューズ110の電源供給端子板121に形成された挿通穴121aにバッテリ端子ボルト15を挿入して該バッテリ端子ボルト15を締め付けて大電流ヒューズ110を固定する際にボルト頭部15bが接続端子部9に係合されることにより、接続端子部9の横幅を広げさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バッテリに取り付けられるバッテリターミナルであって、特にバッテリヒューズターミナルに接続されるバッテリターミナルに関する。
【背景技術】
【0002】
以下に、従来におけるバッテリターミナルへのバッテリヒューズターミナル(BFT)としての電源直付け用大電流ヒューズ(以下、「大電流ヒューズ」と称す。)の組み付けについて図11および図12を参照して説明する。図11はバッテリターミナルへの大電流ヒューズの組み付けを説明するための分解斜視図であり、図12は大電流ヒューズの背面図である。
【0003】
図12に示すように、電装系を駆動するための駆動源として機能する車載用バッテリ101上に+極側バッテリポスト101a(−極側のバッテリポストは省略)が円錐台状に突出形成されている。
【0004】
車両内に設けられた電装系内の電子回路を短絡等による大電流から保護するために、+極側のバッテリポスト101aに、導電性を有するバッテリターミナル104を介して大電流ヒューズ110が接続されている(以下の特許文献1参照)。
【0005】
バッテリターミナル104は、バッテリ接続部102と接続端子部90とで構成されている。バッテリ接続部102の中央には、バッテリポスト101aを挿入してクランプするための丸孔状のクランプ孔102aが形成されている。クランプ孔102aの円周の一部はU字状屈曲部102b側に向かって切り欠かれている。このU字状屈曲部102b内に設けた調節ネジ103と、この調節ネジ103に螺合するナット106とによってクランプ孔102aの孔径が可変できるようになっている。
【0006】
接続端子部90は、中央に挿通穴91を有する接続端子板90aと、該接続端子板90aの両端から下方に延在する一対のリブ90b,90bと、挿通穴91に挿通され大電流ヒューズ110を組み付けるためのバッテリ端子ボルト(スタッドボルト)105を備えて構成されている。
【0007】
このバッテリ端子ボルト105は、接続端子板90aの上側に突出形成されているボルト軸部105aと接続端子板90aの下側に位置するボルト頭部105bとからなり、このボルト軸部105aにナット115が螺合可能になっている。
【0008】
また、大電流ヒューズ110は、車載用バッテリ101のバッテリポスト101aにバッテリ端子ボルト105を介して電気的に接続されるヒューズ本体120と、樹脂成形によってヒューズ本体120を部分的に覆う樹脂ケース126(放熱フィン126a含む)とから構成されている。
【0009】
ヒューズ本体120は、略矩形状に形成されて内部に接続用丸孔121aを有する電源供給端子板(バスバー)121と、この電源供給端子板121に一端側が導通接続された状態で樹脂ケース126内に埋め込まれてヒューズ機能を有する可溶体127と、この可溶体122の他端側に導通接続され、かつ、ワイヤハーネス端子130を取り付けるためのスタッドボルト124が上方に向かって固着された接続端子板123とで構成されている。図12に示すように、電源供給端子板(バスバー)121の両端からはリブ122eが下方に延在している。
【0010】
ここで、ヒューズ機能を有する可溶体127は、電源直付け用大電流ヒューズ110に過電流が流れた際に可溶体127の溶断部132が自己発熱によって溶断されるようになっている。
【0011】
そして、上記のように構成した大電流ヒューズ110を車載用バッテリ101上に取り付ける場合には、車載用バッテリ101の上面に突出形成されたバッテリポスト101aをバッテリターミナル104のクランプ孔102aに挿入して、このクランプ孔102aの径を調節ネジ103とナット106で調整しながらバッテリターミナル104をバッテリポスト101aに電気的に接続する。
【0012】
この後、バッテリターミナル104のバッテリ端子ボルト105をヒューズ本体120内の電源供給端子板121に形成された接続用丸孔121a内に挿入して、この電源供給端子板121をナット115でバッテリ端子ボルト105に締結する。
【0013】
さらに、ヒューズ本体120内の接続端子板123上に固着したスタッドボルト124をワイヤハーネス端子130の接続用丸孔内130aに挿入して、このワイヤハーネス端子130をナット(図示せず)でスタッドボルト124に締結する。
このようにして、バッテリターミナル104へ大電流ヒューズ110が組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−331591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、接続端子部90を構成する接続端子板90aの一端側のリブ90bと他端側のリブ90bの間の長さはX(図11参照)であり、電源供給端子板121の一端側のリブ122eと他端側のリブ122eの間の長さはXよりも長いY(図12参照)である。このため、バッテリターミナル104へ大電流ヒューズ110を組み付けた際、接続端子板90aの一端側のリブ90bとこれに対応する電源供給端子板121の一端側のリブ122eとの間にはクリアランスが生じてしまう。接続端子板90aの他端側のリブ90bとこれに対応する電源供給端子板121の他端側のリブ122eとの間にもクリアランスが生じてしまう。
【0016】
バッテリターミナル104と大電流ヒューズ110の組み付け箇所におけるクリアランスが生じると車両走行時に異音が発生したり、クリアランスに起因するがたつきにより、バッテリターミナル104に対する大電流ヒューズ110の角度を正確に決めることができず、大電流ヒューズ110の正確な位置決めを行うことができないという問題が生じる。
【0017】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、バッテリターミナルと大電流ヒューズの組み付け箇所におけるクリアランスを無くすことができ、車両走行時における異音の発生を防止するとともにバッテリターミナルに対する大電流ヒューズの角度を正確に決めることができるバッテリターミナルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のバッテリターミナルは、バッテリに接続されるバッテリ接続部と、バッテリヒューズターミナルに接続される接続端子部と、該接続端子部の上側に位置するボルト軸部と前記接続端子部の下側に位置するボルト頭部からなるバッテリ端子ボルトとを備え、前記バッテリヒューズターミナルの電源供給端子板に形成された挿通穴に前記バッテリ端子ボルトを挿入して該バッテリ端子ボルトを締め付けて前記バッテリヒューズターミナルを固定する際に前記ボルト頭部が前記接続端子部に係合されることにより、前記接続端子部の横幅を広げさせることを特徴とする。
【0019】
また、請求項2に記載の本発明のバッテリターミナルは、請求項1に記載のバッテリターミナルにおいて、前記ボルト頭部の側面が下広がりのテーパ状側面であり、前記接続端子部は接続端子板と該接続端子板の両端に形成された一対のリブからなり、前記バッテリ端子ボルトを締め付けて前記ボルト頭部のテーパ状側面を前記一対のリブに係合することにより、前記一対のリブを外側に広げさせることを特徴とする。
【0020】
また、請求項3に記載の本発明のバッテリターミナルは、請求項1に記載のバッテリターミナルにおいて、前記ボルト頭部と前記接続端子部の間に配置され両端に凸部を有する板状のスペーサを備え、前記バッテリ端子ボルトを締め付けて前記スペーサの両端の前記凸部を押しつぶすことにより、前記スペーサを外側に押し出させることを特徴とする。
【0021】
また、請求項4に記載の本発明のバッテリターミナルは、請求項1に記載のバッテリターミナルにおいて、前記ボルト頭部の側面が下広がりのテーパ状側面であり、前記ボルト頭部のテーパ状側面と前記接続端子部の間に配置され、前記テーパ状側面のテーパ角度と同一角度のテーパ状側面を有するスライダーを備え、前記バッテリ端子ボルトを締め付けて前記ボルト頭部のテーパ状側面を前記スライダーのテーパ状側面に係合することにより前記スライダーを外側に押し出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載された本発明によれば、バッテリ端子ボルトを締め付けてバッテリヒューズターミナルの電源供給端子板をバッテリターミナルの接続端子部に固着させる場合に、その締め付けによってボルト頭部が上方に移動し、これにともなって接続端子部の横幅は外側に広がる。
【0023】
したがって、接続端子部の一端側(接続端子部の横幅方向における該接続端子部の一端側)とこれに対応する電源供給端子板の一端側との間のクリアランスはなくなり、接続端子部の他端側(接続端子部の横幅方向における該接続端子部の他端側)とこれに対応する電源供給端子板の他端側との間のクリアランスもなくなる。
このため、クリアランスを原因とする車両走行時における異音の発生を防止することができる。また、クリアランスを生じさせないので、バッテリターミナルにバッテリヒューズターミナルを組み付け時におけるがたつきがなくなり正確な位置決め角度を決めることができる。
【0024】
請求項2に記載された本発明によれば、ボルト頭部のテーパ状側面を接続端子板の両端に延在している一対のリブに係合させることにより、一対のリブを外側に広げさせている。
【0025】
このため、接続端子板の一端側のリブとこれに対応する電源供給端子板の一端側との間のクリアランスがなくなり、接続端子板の他端側のリブとこれに対応する電源供給端子板の他端側との間のクリアランスもなくなる。したがって、確実にバッテリターミナルにバッテリヒューズターミナルを組み付け時におけるがたつきをなくすことができる。
【0026】
請求項3に記載された本発明によれば、このバッテリ端子ボルトをナットで締め付けるとボルト頭部が上方に移動し、スペーサの凸部が押しつぶされて板状に変形する。スペーサが板状になると、バッテリ端子ボルトを締め付ける前の状態に比べてスペーサの横幅が伸びてスペーサの両端が外側に広がる。
【0027】
したがって、スペーサの両端が外側に広がるので、接続端子部の一端とこれに対応する電源供給端子板の一端との間のクリアランスがなくなり、接続端子部の他端とこれに対応する電源供給端子板の他端との間のクリアランスもなくなる。
【0028】
このため、上記したクリアランスを原因とする車両走行時における異音の発生を防止するとともにバッテリターミナルと大電流ヒューズの位置決め角度を正確に決めることができる。
【0029】
請求項4に記載された本発明によれば、上記した請求項1と同様の効果を奏するとともに、以下の効果を有する。
本発明は、接続端子部の横幅を広げるために、ボルト頭部から加えられた力をスライダーに作用させてスライダーを外側に移動させる機構となっている。
【0030】
このため、例えばバッテリターミナルやバッテリヒューズターミナルを経年劣化等で交換するような場合でも、バッテリ端子ボルトを緩めてスライダーをはずし、交換後には再びスライダーを用いてバッテリ端子ボルトを締め付けることにより上記したクリアランスをなくす効果を得ることができる。すなわち、クリアランスをなくす効果を復元できる復元性が高いといえる。
【0031】
したがって、バッテリターミナル等を交換する度に未使用のスライダーを用いることなく何度でも同じスライダーを使用できるのでバッテリターミナルの低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るバッテリターミナルへの大電流ヒューズの組み付けを説明するための分解斜視図である。
【図2】バッテリ端子ボルトを締め付ける前の第1の実施の形態に係るバッテリターミナルの接続端子部における縦断面図である。
【図3】バッテリ端子ボルトの斜視図である。
【図4】バッテリ端子ボルトを締め付けた後の第1の実施の形態に係るバッテリターミナルの接続端子部における縦断面図である。
【図5】バッテリ端子ボルトを締め付ける前の第2の実施の形態に係るバッテリターミナルの接続端子部における縦断面図である。
【図6】スペーサの斜視図である。
【図7】バッテリ端子ボルトを締め付けた後の第2の実施の形態に係るバッテリターミナルの接続端子部における縦断面図である。
【図8】(a)は、バッテリターミナルに大電流ヒューズを組み付ける際にバッテリ端子ボルトを締め付ける前の第3の実施の形態に係るバッテリターミナルの接続端子部における縦断面図であり、(b)は(a)のスライダーの斜視図である。
【図9】バッテリ端子ボルトを締め付けた後の第3の実施の形態に係るバッテリターミナルの接続端子部における縦断面図である。
【図10】バッテリターミナルに組み付けられる大電流ヒューズの他の例を示した外観斜視図である。
【図11】従来に係るバッテリターミナルへの大電流ヒューズの組み付けを説明するための分解斜視図である。
【図12】図11の大電流ヒューズの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1の実施の形態]
以下、図1〜図4を参照して、本発明に係るバッテリターミナルの第1の実施の形態について説明する。なお、従来技術の説明に用いた図12の大電流ヒューズ110と本実施の形態に係る図1の大電流ヒューズとは同じ構造であるので、同じ符号を用いて簡単に説明する。
なお、本実施の形態に係るバッテリターミナルと従来技術に係るバッテリターミナルの相違点は、バッテリターミナルの接続端子部の形状や、接続端子部内に配置されたバッテリ端子ボルトの頭部の形状にある。
【0034】
まず、バッテリターミナル4への大電流ヒューズ(バッテリヒューズターミナル)110の組み付けについて図1を参照して説明する。図1は本発明のバッテリターミナルへの大電流ヒューズの組み付けを説明するための分解斜視図である。
【0035】
図1に示すように、車載用バッテリ101上に突出形成された+極側のバッテリポスト101aに、導電性を有するバッテリターミナル4を介して大電流ヒューズ110が接続されている。
【0036】
バッテリターミナル4は、バッテリ接続部12と接続端子部9とで構成されている。バッテリ接続部12の中央には、バッテリポスト101aを挿入してクランプするための丸孔状のクランプ孔5aが形成されている。クランプ孔5aの円周の一部はU字状屈曲部5b側に向かって切り欠かれている。このU字状屈曲部5b内に設けた調節ネジ7と、この調節ネジ7に螺合するナット6とによってクランプ孔5aの孔径が可変できるようになっている。
【0037】
接続端子部9は、中央に挿通穴15aを有する接続端子板9aと、該接続端子板9aの両端から下方に延在する一対のリブ9b,9bと、挿通穴15aに挿通され大電流ヒューズ110を組み付けるためのバッテリ端子ボルト(スタッドボルト)15を備えて構成されている。このバッテリ端子ボルト15は、接続端子板9aの上側に突出形成されているボルト軸部15aと接続端子板9aの下側に位置するボルト頭部15bとからなり、このボルト軸部15aにナット115が螺合可能になっている。
【0038】
また、大電流ヒューズ110は、車載用バッテリ101のバッテリポスト101aにバッテリ端子ボルト15を介して電気的に接続されるヒューズ本体120を含んで構成されている。
【0039】
ヒューズ本体120は、略矩形状に形成されて内部に接続用丸孔121aを有する電源供給端子板(バスバー)121を有している。電源供給端子板(バスバー)121の両端からは一対のリブ122e,122e(図12参照)が下方に延在している。
【0040】
そして、上記のように構成した大電流ヒューズ110を車載用バッテリ101上に取り付ける場合には、車載用バッテリ101の上面に突出形成されたバッテリポスト101aをバッテリターミナル4のクランプ孔5aに挿入して、このクランプ孔5aの径を調節ネジ7とナット6で調整しながらバッテリポスト101aをクランプ孔5aにクランプさせる。
【0041】
この後、バッテリターミナル4のバッテリ端子ボルト15をヒューズ本体120内の電源供給端子板121に形成された接続用丸孔121a内に挿入して、ナット106でバッテリ端子ボルト105を締め付ける。
このようにして、バッテリターミナル4への大電流ヒューズ110の組み付けが完了する。
【0042】
ここで、図2は、バッテリ端子ボルト15を締め付ける前のバッテリターミナル4の接続端子部9の縦断面図(図1のA−A線縦断面図)であり、図3は図2のバッテリ端子ボルト15の斜視図であり、図4は、バッテリ端子ボルト15を締め付けた後のバッテリターミナル4の接続端子部9の縦断面図(図1のA−A線縦断面図)である。
【0043】
バッテリ端子ボルト15は、図3に示すように、円柱形状のボルト軸部15aとボルト頭部15bとで構成されている。ボルト軸部15aはボルト頭部15bの中央から上方に向かって突出して形成されている。ボルト頭部15bは、一対のリブ9b、9bのそれぞれに対向する一対のテーパ16を有する形状である。このテーパ16の形状は下方に広がる、いわゆる下広がりテーパ形状である。
【0044】
図2に示すように、バッテリ端子ボルト15をナット115(図1参照)で締め付けて接続端子板121(図1参照)を接続端子板9aに固着させる前の状態においては、ボルト頭部15bからバッテリ端子ボルト15の軸方向に直交する方向(接続端子部9の横幅方向)に作用する力は発生しない。
【0045】
ここで、リブ9b,9bは接続端子板9aの両端から下方に延在して形成されており、リブ122e(図2参照)は電源供給端子板121の両端から下方に延在して形成されている。
したがって、接続端子板121を接続端子板9aに固着させる前の状態においては、接続端子板9aの一端側のリブ9bと、これに対応する電源供給端子板121の一端側のリブ122eとの間、および、他端側のリブ9bと、これに対応する電源供給端子板121の他端側のリブ122eとの間には若干であるがクリアランスが生じたままである。
【0046】
次に、このバッテリ端子ボルト15をナット115で締め付けて電源供給端子板121を接続端子板9aに固着させた後の状態においては、締め付けによってボルト頭部15bが上方に移動するため、図4に示すようにボルト頭部15bからバッテリ端子ボルト15の軸方向に直交する方向であって外側に向かう方向にリブ9b,9bを押し出す力が生じるため、接続端子部9のリブ9b,9bは外側に広がる。
【0047】
したがって、リブ9b,9bが外側に広がるので、接続端子板9aの一端側のリブ9bと、これに対応する電源供給端子板121の一端側のリブ122eとの間のクリアランスがなくなり、若しくはクリアランスが極小になり、接続端子板9aの他端側のリブ9bと、これに対応する電源供給端子板121の他端側のリブ122eとの間のクリアランスもなくなり、若しくはクリアランスも極小になる。
【0048】
このため、上記したクリアランスを原因とする車両走行時における異音の発生を防止するとともにバッテリターミナルと大電流ヒューズの位置決め角度を正確に決めることができる。
[第2の実施の形態]
【0049】
次に、図5〜図7を参照して、本発明に係るバッテリターミナルの第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態に係るバッテリターミナル150に組み付けられる大電流ヒューズは、第1の実施の形態と同じ構成であるので、バッテリターミナル150以外の大電流ヒューズ等の符号については図1における符号をそのまま用いて本実施の形態を説明する。
【0050】
図5は、バッテリ端子ボルト155をナット115(図1参照)で締め付ける前のバッテリターミナル150の接続端子部190の縦断面図(図1のA−A線縦断面図)であり、図6はスペーサ160の斜視図であり、図7は、バッテリ端子ボルト155をナット115で締め付けた後のバッテリターミナル150の接続端子部190の縦断面図(図1のA−A線縦断面図)である。
【0051】
図5に示すように、バッテリ端子ボルト155は、ボルト軸部155aとボルト頭部155bとで構成されている。円柱形状のボルト軸部15aと平板形状のボルト頭部15bとで構成されている。ボルト軸部15aは平板形状のボルト頭部15bの中央から上方に向かって突出して形成されている。
また、大電流ヒューズ110の電源供給端子板121に接続されるバッテリターミナル150の接続端子部190は平板形状である。この接続端子部190とボルト頭部155bの間に板状のスペーサ160が配置されている。
【0052】
図6に示すように、スペーサ160の両端には凸部160a,160aが形成されており、中央部にはバッテリ端子ボルト155を挿通させるための丸穴160bが形成されている。なお、図6に示す凸部160a,160aを有する状態のスペーサ160の長さは接続端子部190の横幅とほぼ同じ長さである。また、後述する凸部160a,160aを押しつぶした状態におけるスペーサ160の長さが接続端子部190の横幅よりも長くなるようにすることが必要である。
【0053】
図5に戻り、このバッテリ端子ボルト155をナット115で締め付けて電源供給端子板121を接続端子部190に固着させる前の状態においては、スペーサ160は何ら変化しない。
【0054】
このような状態においては、接続端子部190の一端側とこれに対応する電源供給端子板121の一端側のリブ122eとの間、および、接続端子部190の他端側とこれに対応する電源供給端子板121の他端側のリブ122eとの間には若干であるがクリアランスが依然として生じたままである。
【0055】
次に、このバッテリ端子ボルト155をナット115で締め付けるとボルト頭部155bが上方に移動し、スペーサ160の凸部160a,160aは、図7に示すように押しつぶされて板状に変形する。スペーサ160が板状になると、バッテリ端子ボルト155を締め付ける前の状態に比べてスペーサ160の横幅が伸びてスペーサ160の両端が外側に広がる。
【0056】
したがって、スペーサ160の両端が外側に広がるので、接続端子部190の一端とこれに対応する電源供給端子板121の一端側のリブ122eとの間のクリアランスがなくなり、若しくはクリアランスが極小になり、接続端子部190の他端とこれに対応する電源供給端子板121の他端側のリブ122eとの間のクリアランスもなくなり、若しくはクリアランスも極小になる。
【0057】
このため、上記したクリアランスを原因とする車両走行時における異音の発生を防止するとともにバッテリターミナル150に対する大電流ヒューズ110の位置決め角度を正確に決めることができる。
[第3の実施の形態]
【0058】
次に、図8および図9を参照して、本発明に係るバッテリターミナルの第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態に係るバッテリターミナル200に組み付けられる大電流ヒューズは、第1の実施の形態と同じ構成であるのでバッテリターミナル200以外の大電流ヒューズ等の符号については図1における符号をそのまま用いて本実施の形態を説明する。
【0059】
図8(a)は、バッテリ端子ボルト205をナット115で締め付ける前のバッテリターミナル200の接続端子部201の縦断面図(図1のA−A線縦断面図)であり、図8(b)はスライダー210a,210bの斜視図であり、図9は、バッテリ端子ボルト205をナット115で締め付けた後のバッテリターミナル200の接続端子部201の縦断面図(図1のA−A線縦断面図)である。
【0060】
図8(a)に示すように、バッテリ端子ボルト205は、円柱形状のボルト軸部205aとボルト頭部205bとで構成されている。ボルト軸部205aはボルト頭部205bの中央から上方に向かって突出して形成されている。ボルト頭部205bは、後述する一対のスライダー210aのテーパ211a(図8(b)参照)とスライダー210bのテーパ211b(図8(b)参照)のそれぞれに対向する一対のテーパ206,206を有する形状である。このテーパ206の形状は下方に広がる、いわゆる下広がりテーパ形状である。
【0061】
また、大電流ヒューズ110の電源供給端子板121に接続されるバッテリターミナル200の接続端子部201は平板形状である。この接続端子部201の両端部とボルト頭部205bの間にそれぞれスライダー210a,210bが配置されている。
【0062】
図8(b)に示すように、スライダー210aとスライダー210bはそれぞれ、横断面が凸形状であり、左内側テーパ形状のテーパ211aおよび右内側テーパ形状のテーパ211bを有している。スライダー210aのテーパ211aのテーパ角度はボルト頭部205bの右側のテーパ206のテーパ角度と同一角度であり、スライダー210bのテーパ211bのテーパ角度はボルト頭部205bの左側のテーパ206のテーパ角度と同一角度である。
【0063】
図8(a)に戻り、このバッテリ端子ボルト205をナット115で締め付けて電源供給端子板121を接続端子部201に固着させる前の状態においては、ボルト頭部205bからバッテリ端子ボルト205の軸方向に直交する方向(接続端子部201の横幅方向)に作用する力は発生しない。
【0064】
このような状態においては、接続端子部201の一端側とこれに対応する電源供給端子板121の一端側のリブ122eとの間、および、接続端子部201の他端側とこれに対応する電源供給端子板121の他端側のリブ122eとの間には、若干であるがクリアランスが生じたままである。
【0065】
次に、このバッテリ端子ボルト205をナット115で締め付けて電源供給端子板121を接続端子部201aに固着させた後の状態においては、この締め付けによってボルト頭部205bが上方に移動する。
このため、図9に示すように、ボルト頭部205がバッテリ端子ボルト205の軸方向に直交する方向であって外側に向かう方向にスライダー210a、210bを押し出す力が生じるため、スライダー210a、210bは外側に広がる。
【0066】
したがって、スライダー210a、210bが外側に広がるので、スライダー210aの外側端部211(接続端子部201の一端より外側に出ている)とこれに対応する電源供給端子板121の一端側のリブ122e(図12参照)との間のクリアランスがなくなり、若しくはクリアランスが極小になり、スライダー210bの外側端部211(接続端子部201の他端より外側に出ている)とこれに対応する電源供給端子板121の他端側のリブ122e(図12参照)との間のクリアランスもなくなり、若しくはクリアランスが極小になる。
【0067】
このため、上記したクリアランスを原因とする車両走行時における異音の発生を防止するとともにバッテリターミナル200と大電流ヒューズ110の位置決め角度を正確に決めることができる。
【0068】
また、上記した第3の実施の形態では、上記したように接続端子部の横幅を広げるために、ボルト頭部205bから加えられた力を交換可能なスライダー210a、210bに作用させてスライダー210a、210bを外側に移動させる機構となっている。
【0069】
このため、例えばバッテリターミナル200や大電流ヒューズ110を経年劣化等で交換するような場合でも、バッテリ端子ボルト205を緩めてスライダー210a、210bをはずし、交換後にはスライダー210a、210bを再度用いてバッテリ端子ボルト205を締め付けることにより上記したクリアランスをなくす効果を得ることができる。すなわち、大電流ヒューズ110等を交換する度に未使用のスライダーを用いることなく何度でも同じスライダーを使用できるのでバッテリターミナル200の低コスト化を図ることができる。
【0070】
尚、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
上記した実施の形態では、バッテリターミナルに大電流ヒューズを組み付ける際に適用した例であるが、例えば、このバッテリターミナルのバッテリ端子ボルトの形状を大電流ヒューズに設けられるスタッドボルトの部分に適用してもよい。
【0071】
例えば、大電流ヒューズに圧入されるスタッドボルト116(図1参照)に両端がリブ形状のワイヤハーネス端子を組み付ける場合に、スタッドボルトのボルト頭部の形状を下広がりのテーパ形状とすれば、大電流ヒューズに対するワイヤハーネス端子の位置決め角度を正確に決めることができる。
【0072】
また、大電流ヒューズの形態についても、上記した実施の形態の大電流ヒューズ110のような形状に限定されない。例えば、図10に示すような大電流ヒューズ250が挙げられる。
【0073】
この大電流ヒューズ250は、バッテリ端子ボルト15をナット(図示せず)で締め付けることによりバッテリターミナル4に組み付けられている。また、大電流ヒューズ250は、コネクタハウジング342の上部に設けられた露出した窓の中にヒューズ322,322,323,323が配置されたものである。
【符号の説明】
【0074】
4…バッテリターミナル
9…接続端子部
12…バッテリ接続部
15…バッテリ端子ボルト
15a…ボルト軸部
15b…ボルト頭部
101…バッテリ
110…大電流ヒューズ(バッテリヒューズターミナル)
121…電源供給端子板
160…スペーサ
160a…凸部
210a,210b…スライダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに接続されるバッテリ接続部と、バッテリヒューズターミナルに接続される接続端子部と、該接続端子部の上側に位置するボルト軸部と前記接続端子部の下側に位置するボルト頭部からなるバッテリ端子ボルトとを備え、
前記バッテリヒューズターミナルの電源供給端子板に形成された挿通穴に前記バッテリ端子ボルトを挿入して該バッテリ端子ボルトを締め付けて前記バッテリヒューズターミナルを固定する際に前記ボルト頭部が前記接続端子部に係合されることにより、前記接続端子部の横幅を広げさせる
ことを特徴とするバッテリターミナル。
【請求項2】
前記ボルト頭部の側面が下広がりのテーパ状側面であり、
前記接続端子部は接続端子板と該接続端子板の両端に形成された一対のリブからなり、
前記バッテリ端子ボルトを締め付けて前記ボルト頭部のテーパ状側面を前記一対のリブに係合することにより、前記一対のリブを外側に広げさせる
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリターミナル。
【請求項3】
前記ボルト頭部と前記接続端子部の間に配置され両端に凸部を有する板状のスペーサを備え、
前記バッテリ端子ボルトを締め付けて前記スペーサの両端の前記凸部を押しつぶすことにより、前記スペーサを外側に押し出させる
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリターミナル。
【請求項4】
前記ボルト頭部の側面が下広がりのテーパ状側面であり、
前記ボルト頭部のテーパ状側面と前記接続端子部の間に配置され、前記テーパ状側面のテーパ角度と同一角度のテーパ状側面を有するスライダーを備え、
前記バッテリ端子ボルトを締め付けて前記ボルト頭部のテーパ状側面を前記スライダーのテーパ状側面に係合することにより前記スライダーを外側に押し出させる
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリターミナル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−37945(P2013−37945A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174086(P2011−174086)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】