バッテリ付き椅子
【課題】回転機能を有し移動性に富む椅子に使い勝手の良い電源を供給することのできるバッテリ付き椅子を提供する。
【解決手段】脚に対して座が回転可能であるとともに、脚がキャスタを介して移動可能に支持されている椅子において、投入口100aを有しその投入先に受電端子100dを配したバッテリ収容部100を座とともに回転するように座に一体的に設けるとともに、このバッテリ収容部100に対して投入又は抜き取り自在であって所定の投入位置で受電端子100dと電気的に導通する部位に給電端子10dを備えた充電式のバッテリ10を装着するようにした。
【解決手段】脚に対して座が回転可能であるとともに、脚がキャスタを介して移動可能に支持されている椅子において、投入口100aを有しその投入先に受電端子100dを配したバッテリ収容部100を座とともに回転するように座に一体的に設けるとともに、このバッテリ収容部100に対して投入又は抜き取り自在であって所定の投入位置で受電端子100dと電気的に導通する部位に給電端子10dを備えた充電式のバッテリ10を装着するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機能やキャスタによる移動性が与えられており且つ電源を必要とする椅子に適用して有用となるバッテリ付き椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、脚に対して座が回転可能であるとともに、前記脚がキャスタを介して移動可能に支持されている椅子において、バッテリを搭載したものとして、特許文献1に示すもの等が知られている。
【0003】
このものは、着座する利用者に送風を行う機能を備える椅子であって、上面に空気の吸入を行う第1の空気吸入部を有する座部、又は、前面に空気の吸入を行う第2の空気吸入部を有する背凭れ部と、前記利用者に向けて空気を噴出する空気噴出口と、前記第1の空気吸入部、又は、前記第2の空気吸入部から吸入した空気を前記空気噴出口に向けて送る送風手段とを備え、充電式のバッテリにより送風手段を駆動するように構成されている。バッテリは椅子の座に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−15023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッテリが椅子に固定であると、同文献に例示されているように、肘の先端に設けた受電端子を机に設けた給電端子に接続したり、バッテリから電源コードを引っ張ってコンセントに接続しなければならないため、充電中は椅子が使用できないか若しくは椅子の使用位置が制限され、電源コードにも足をとられ易くなるという問題がある。また、バッテリの寿命が尽きる頃には、椅子の座に固定しているバッテリを取り外して新しいものに交換する作業が必要になるため、面倒である。さらに、椅子に備わる電機・電子機器類によってはバッテリの規格が異なる場合があるため、バッテリを一体的に組み込んで固定すると、機器の使用が制限される場合が生じ得る。
【0006】
本発明は、このような課題に着目し、回転機能を有し移動性に富む椅子に使い勝手の良い電源を供給することのできるバッテリ付き椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明のバッテリ付き椅子は、脚に対して座が回転可能であるとともに、前記脚がキャスタを介して移動可能に支持されているものにおいて、投入口を有しその投入先に受電端子を配したバッテリ収容部を座若しくは座とともに回転する部位に一体的に設けるとともに、このバッテリ収容部に対して投入又は抜き取り自在であって所定の投入位置で前記受電端子と電気的に導通する部位に給電端子を備えた充電式のバッテリを装着するようにしたことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、バッテリのみを取り外して外部の充電器で充電することができるので、充電中に椅子が使用できない事態や、椅子の使用位置が制限される事態を有効に解消することができる。しかも、バッテリ交換も容易であり、規格の異なるバッテリ間でバッテリ収容部を共用するような利用形態も展開することができるようになる。そして、バッテリ収容部は座とともに回転するので、バッテリ収容部から座や肘へ配線を施しても配線状態が回転によって影響を受けることを回避することができる。
【0010】
取り扱いの便をより向上させるためには、バッテリ収容部が投入口から投入先に向かって斜め下方に傾斜し、バッテリが自重で所定位置に到達して電気的な接続状態を確立するように構成しておくことが好ましい。
【0011】
簡単な操作でも接続不良となることを有効に防止するためには、バッテリ収容部におけるバッテリ荷重を受ける位置に受電端子を配していることが望ましい。
【0012】
特に、バッテリ収容部の取り付け先である座又は背が後傾可能に構成された椅子においては、前記バッテリ収容部は、背又は座の最大後傾時に投入口から投入先に向かう傾斜が水平を越えて逆傾斜とならないように構成しておくことが好ましい。
【0013】
バッテリの頻繁な充電を回避し、寿命の延命も図るためには、バッテリの一部に残量表示部を備え、バッテリ収容部には、所定位置に投入されたバッテリの残量表示部を外部から視認可能にする窓が設けてあることが望ましい。
【0014】
このようなバッテリ収容部を無理なく採用するためには、バッテリ収容部を椅子の基本構成部材に作り込んだり、椅子の基本構成部材とともに共通の取付手段によって椅子本体に取り付ける態様が好適となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバッテリ付き椅子は、以上説明した構成であるから、バッテリの充電中であっても椅子の配置等が制限されないようにすることができ、バッテリの着脱や交換時の取り扱いも簡素化して、電源を必要とする機能を有した椅子に好適に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を適用した空調機能付き椅子を示す斜視図。
【図2】同側面図。
【図3】同平面図。
【図4】同椅子に組み込まれている座部空調機構の構成を示す分解斜視図。
【図5】同座部空調機構の要部を一部破砕して示す部分拡大斜視図。
【図6】同椅子に組み込まれている肘部空調機構の構成を示す分解斜視図。
【図7】同椅子において空調操作のための操作手段が組み込まれている肘の説明図。
【図8】同実施形態における空調機構、操作手段及び切替回路の関係を示す機能ブロック図。
【図9】同切替回路の機能説明図。
【図10】同実施形態で採用されているバッテリ収容部の構造を示す斜視図。
【図11】同バッテリ収容部の取付方位を説明するための図。
【図12】本発明の変形例を示す図。
【図13】本発明の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態を適用した椅子を示している。この椅子は、脚1に対して座2が回転可能であるとともに、座2が背3の後傾動作に連動して後方に沈み込むように図示しないシンクロロッキング機構によって座2と背3が連動状態で脚1に支持されている。前記座2の側方には肘4が取り付けてあり、脚1はキャスタ11を介して床上を移動可能とされている。
【0019】
座2は、図2に一部破砕して示すように、樹脂製のアウターシェル21上にウレタン等からなる座クッション22を取り付けて、座クッション22をアウターシェル21とともに張り地23で覆ったものである。
【0020】
一方、肘4の外形を形成する肘本体4xは、下端が座2を構成するアウターシェル21の側縁近傍の下面にボルト等により固定された支持部である肘フレーム41と、この肘フレーム41に対しリンク機構40を介して相対移動可能とされた肘当て部42とを備えたもので、肘当て部42は、図3に示すように着座者の両側に前後に延びる状態で配置される第1の使用位置42(P)と、90°回動して着座者の前方に幅方向に延びる状態で配置される第2の使用位置42(Q)との間で移動可能とされている。
【0021】
そして、座2に、給電を受けて図2に矢印Aで示すように座面を温調するための空気の流れを座2の内部に生成する座部空調機構5を設け、また肘4に、給電を受けて図2に矢印Bで示すように肘当て部42から着座空間に向かって吹き出す空気の流れを生成する肘部空調機構6を設けている。
【0022】
以下、両空調機構5,6について具体的に説明する。座部空調機構5を設けるにあたり、図4に示すように、座2を構成する座クッション22の上面ないし前縁の前垂れ部となる部位に凹み22a、22bが設けてあり、この凹み22a、22bは展開状態で平面視凸状をなしている。また、座クッション22を受容する座アウターシェル21の前縁に前垂れ状態でバックアッププレート21bを取り付けている。これに対して、座部空調機構5は、前記凹み22a、22bに対応する平坦部5a及び前垂れ部5bを供えた凸状をなす流路形成材51と、この流路形成材51の凸部分に埋め込んだモータM1の付帯する送風機(吸気ファン)52と、これら流路形成材51及び送風機52を包む張り地53とを含んで構成されている。送風機52はモータM1の軸に沿った方向に気流を生成する軸流タイプの羽根52xを有するものである。流路形成材51は、図5に示すように立方体の各辺に相当する位置に骨格51aを有し頂上に受圧用の頂板51cが配置された立体格子51xを接続部51bによって連ねた形態をなし、利用者の体重を受け止めつつ利用者と図4に示した座クッション22との間に空気の流通を許容する流路を形成するものである。このような流路形成材51をファン及び張り地と組み合わせたものは一般に「空調ざぶとん」として知られている。本実施形態では、図4に示したようにいわゆる空調ざぶとんに椅子に装着する上で適した形態を付与するとともに、上面側に張られる張り地53の後部上面の一部の領域にメッシュ状の排出口53aを形成して、矢印Aで示すように送風機52を介して吸込んだ空気を流路形成材51の中に流通させた後、その空気を前記排出口53aから排気するようにしている。このような座部空調機構5の平坦部5aを前記凹部22a内に収まるように嵌め込み、前垂れ部5bを前記凹部22b内に収まるように嵌め込みつつアウターシェル21のバックアッププレート21aの前面に位置づけ、送風機52はモータM1の軸が前後方向を向くように、かつ吸込み口52aを前方に向けて配置する。そして、流路形成材51を座クッション22及びアウターシェル21の一部とともに図1及び図2に示すように座面を構成するメッシュ地の張り地23によって包み、その張り地23をアウターシェル21の下面側における適宜位置に固定している。
これにより、図2に矢印Aで示したように、座部空調機構5で生成される空気は、座2の前縁から吸入されて内部を流通し後縁上方に排出されるまでの間に、座面にこもる熱を汲み出し、着座者の臀部に涼感を与えるとともに、座2の後縁側から上方へ排気されて背3の前面に流れることで着座者の背にも涼感を与えるものとなる。張り地53には座面側から空気を吸い込むような適度の通気性を付与しておいてもよい。
【0023】
一方、肘部空調機構6は図2に示すように、肘本体4xを構成する肘当て部42の上面に開口する吹き出し口61と、前記肘当て部42の下面に開口する吸込み口62と、前記吹き出し口61と前記吸い込み口62の間に形成される内部流路63と、前記内部流路63に設けられ給電を受けて前記吸込み口62から空気を吸い込み前記吹き出し口61より着座空間に向けて吹き出す送風機64とから構成される。
【0024】
図6はこの肘部空調機構6を分解して示すものであり、リブ等の詳細な構造は省略してある。肘当て部42は、ベース42aとカバー42bに上下分割可能なもので、ベース42aが肘フレーム41の上端に形成した台座41aにリンク機構40を構成する一対のリンクメンバ40a、40bの軸m、nを介して取り付けられて、図3に示したように姿勢変更動作を引き起こすように構成されている。ベース42aには吸込み口62が、カバー42bには吹き出し口61が、互いに対向する位置に開口し、ベース42aの吸込み口62の上にモータM2の付帯した送風機(排気ファン)64が配置され、送風機64の出口と吹き出し口61とを接続する位置に内部流路63を形成するほぼ中空球状の部材からなる風向調節部65が球面状の受座66を介して首振り自在に配置されている。この送風機64もモータM2の軸に沿った方向に気流を生成する軸流タイプの羽根64xを有するものである。風向調節部65は、可動吸込み口65aと可動吹き出し口65bとの間に内部流路63を形成しているもので、可動吹き出し口65bはカバー42bの吹き出し口61の開口の内側に突出状態で配置されて風向調節部65の首振り機能が担保されており、可動吸い込み口65aは図2に模式的な破線で示すように送風機64の出口を呑み込んだ状態で首振り動作が担保されている。このように、送風機64と風向調節部65とは、肘部空調機構6の吸い込み口62と吹き出し口61の間にユニット化して組み込まれている。
【0025】
組立状態において、図2及び図7等に示すように、前記吹き出し口61が肘当て部42の上面に開口する一方、前記吸い込み口62が前記吹き出し口61に対向する肘当て部42の下面に開口し、肘当て部42の下面と肘フレーム41の上端に形成した台座41aとの間にはリンク機構40が位置することになるが、リンク機構40の作動によって吸い込み口62が塞がれないように、リンク機構40のうち特に前側を支持するリンクメンバ40aの形状や位置、そして吸込み口62の開口位置や口径等が規定してある。
【0026】
これにより、利用者は前記風向調節部65を利用して、肘当て部42を着座者の側方に配置した図3に示す第1の使用位置42(P)で吹き出し方向を自由に変えることができ、肘当て部42を着座者の前方に配置した第2の使用位置42(Q)でも吹き出し方向を自由に変えることができ、さらに肘当て部42を両使用位置P,Qの間の各位置に配置した際にも吹き出し方向を自由に変えることができるため、着座者は顔や胸、下腹部や大腿部等の所望の部位に直接風を送って涼感を得ることができるものである。
【0027】
そして本実施形態では、前記座部空調機構5に対するスイッチング操作機能および肘部空調機構6に対するスイッチング操作機能を集合させた操作手段7を図7に示すように肘4に設け、この操作手段7に入力される操作状況に応じ、図8に示す切替回路8を通じて前記座部空調機構5および肘部空調機構6に対する給電状態の切り替えを行うようにしている。
【0028】
操作手段7は、図7に示すように着座姿勢にある着座者が操作可能な肘4の一部、具体的にこの実施形態では着座者から見て右側の肘フレーム41の台座41a付近において、肘当て部42に手を掛けたままで利用できる位置に設けたボックス70に取り付けたもので、座部空調機構5に対して給電のオンオフ切り替えのための操作を受け付ける座部空調スイッチ71と、前記肘部空調機構6に対してオンオフを含み段階的に給電レベルの切り替えのための操作を受け付ける肘部空調摘み72と、空調全体のオンオフ切り替えを行うメインスイッチ73とを備えている。この実施形態では、座部空調スイッチ71とメインスイッチ73は着座者からみて外側の起立面に設けられ、肘部空調摘み72は前側の起立面に設けられているが、取付態様はこれに限るものではない。
【0029】
また、他のスイッチング機能として本実施形態は、図4に示すように座2の2箇所に接触式の着座スイッチ9を埋設し、これによって離席時に節電のために空調機能全体をオフ状態にするようにしている。この着座スイッチ9は、座面の幅方向及び奥行き方向に同時に離間するように対角2箇所に設けたもので、図5に示した流路形成材51の立体格子51x、51x間にスイッチ本体90を嵌め込んだ状態で検出端91を上に向けて配置されるもので、スイッチ本体90に対して検出端91が突没可能かつ突出方向に弾性付勢されていて、没入時に受圧状態を検知するものである。着座スイッチ9は流路形成材51とともに張り地53によって包まれて図4に示した座部空調機構5をなし、この座部空調機構5は更に図2に示した座2の張り地23で覆われることによって、着座スイッチ9の検出端91は張り地53、23に対向した状態で配される。そして、着座者の荷重により検出端91が張り地23、53を介して押下されることでスイッチが入り、受圧状態を検知するようになっている。
【0030】
図9は、前述した切替回路8の切替機能を模式的に示したものである。この実施形態では電源にバッテリ10を採用しており、バッテリ10と座部空調機構5のモータM1との間がメインスイッチ73、着座スイッチ9および座部空調スイッチ71を介して接続され、バッテリ10と肘部空調機構6のモータM2との間がメインスイッチ73、着座スイッチ9および肘部空調摘み72を介して接続された構造をなす。切替機能としては、メインスイッチ73がONの状態で着座スイッチ9が着席を検知しているときに、前記座部空調スイッチ71及び前記肘部空調摘み72の操作状況に応じて前記座部空調機構5に対する給電のオンオフや前記肘部空調機構6に対する給電のオンオフ並びに通電量(すなわち風量)の切り替えを行い、2つの着座スイッチ9が何れもオフとなって離席を検知したときには前記座部空調スイッチ71や肘部空調摘み72に対する操作状況に拘わらず前記座部空調機構5および前記肘部空調機構6のモータM1,M2への給電を停止するものである。勿論、メインスイッチ73がOFFの状態にあるときにも両空調機構5,6はバッテリ10から遮断される。図はあくまでひとつの機能を例示したに過ぎず、操作手段7の構成や切替回路8の切替機能については種々に変形実施することができる。
【0031】
さらに本実施形態では、図2及び図10に示すように、椅子の一部に設けたバッテリ収容部100にバッテリ10を着脱可能にセットするようにしている。バッテリ収容部100は樹脂製のもので、肘フレーム41の付け根を座2のアウターシェル21に取り付ける際に図示しないブラケットを用いて肘4とともに共締めしてぶら下げた状態で支持するようにしたもので、投入口100aが後方に向けて斜め上方に開口するように投入されるバッテリ10に対するガイド面100bを傾斜させ、投入先となる前方の後向き面100cに受電端子100dを配している。一方、バッテリ10は、バッテリ収容部100に対し投入又は抜き取り自在であって、取り外して外部の充電器で充電可能なものであり、その前向き面10cには、所定の投入位置で前記受電端子100dと電気的に導通する部位に給電端子10dを設け、その傍らにバッテリ残量をLEDの点灯状態によって知らせる残量表示部10eが設けてある。バッテリ10には、不図示の充電端子が備わっている。
【0032】
そして、バッテリ10をバッテリ収容部100に投入口100aから投入した際に、ガイド面100bに沿ってバッテリ10がスライドして自重で所定位置に到達し、バッテリ荷重を利用して前記給電端子10dと前記受電端子100dとの電気的な接続状態を確立するようにしている。バッテリ収容部100の後向き面100cの隣接位置には、バッテリ10の残量表示部10eを塞がないための窓100eが開口させてあり、所定位置に投入されたバッテリ10の残量表示部10eを前記窓100eを介し開放して、図2に矢印Fで示すように椅子の前方からバッテリ残量を視認できるようにしている。前述したように、この椅子は座2が背3とともにシンクロロッキングして後傾するものであり、図11(a)に示す非後傾時と(b)に示す最大後傾時の間でバッテリ収容部100の角度が座2の角度とともに変化する。このため、前述したバッテリ収容部100は、同図(b)に示す最大後傾時に投入口100aから投入先に向かう方向に延びるガイド面100bの傾斜が水平を越えて逆傾斜とならないように、図11(a)に示す非後傾時の傾斜角度が設定してある。
【0033】
なお、本実施形態において、配線類は基本的に省略してあるが、図8や図9の回路構成を、極力配線類を外部に露出させることなく実現するために、適宜、肘フレーム41の内部やアウターシェル21の内側等に配線類が引き回されている。
【0034】
また、以上において座部空調機構5や肘部空調機構6の一部にヒータを採用することで、温風を生成して着座者に対する入熱を行うことも可能である。
【0035】
以上のように、本実施形態のバッテリ付き椅子は、脚1に対して座2が回転可能であるとともに、前記脚1がキャスタ11を介して移動可能に支持されているものであって、投入口100aを有しその投入先に受電端子100dを配したバッテリ収容部100を座2とともに回転するように当該座2に一体的に設けるとともに、このバッテリ収容部100に対して投入又は抜き取り自在であって所定の投入位置で前記受電端子100dと電気的に導通する部位に給電端子10dを備えた充電式のバッテリ10を装着するようにしたものである。
【0036】
このように構成すると、バッテリ10のみを取り外して外部の充電器で充電することができるので、充電中に椅子が使用できない事態や、椅子の使用位置が制限される事態を有効に解消することができる。しかも、バッテリ交換も容易であり、規格の異なるバッテリ間でバッテリ収容部100を共用するような利用形態も新たに展開することができるようになる。そして、バッテリ収容部100は座2とともに回転するので、バッテリ収容部100から座2や肘4へ配線を施しても配線状態が回転によって影響を受けることを有効に回避することが可能となる。
【0037】
この場合、バッテリ収容部100を投入口100aから投入先に向かって斜め下方に傾斜させ、バッテリ10が自重で所定位置に到達して電気的な接続状態を確立するようにしているので、投入するだけの簡単な操作でバッテリ10のセットを終えることができ、逐一椅子を移動させたりコードを接続する等の煩わしさを解消して、取り扱いの便を有効に向上させることができる。
【0038】
特に、バッテリ収容部100におけるバッテリ荷重を受ける位置に受電端子100dを配しており、バッテリ荷重が端子10d、100d間の接続の確立を助け且つ維持する方向に作用するので、簡単な操作でも接続不良となることを有効に回避することができる。
【0039】
また、この椅子はバッテリ収容部100の取り付け先である座2が後傾するものであるが、前記バッテリ収容部100は、座2の最大後傾時においても投入口100aから投入先に向かう傾斜が水平を越えて逆傾斜とならないようにしているので、座2が背3とともにシンクロロッキングしても、後傾時にバッテリ10の接続不良や脱落が発生することを有効に防止することができる。
【0040】
さらにこの実施形態は、バッテリ10の一部に残量表示部10eを備え、バッテリ収容部100には、所定位置に投入されたバッテリ10の残量表示部10eを外部から視認可能にする窓100eが設けてあるので、普段使用している状態でバッテリ10の残量が明確になり、無造作に頻繁に充電することを回避して、バッテリの効率良い使い方とバッテリ寿命の延命を図ることができる。
【0041】
また、この実施形態のバッテリ収容部100は、椅子の基本構成部材である肘4とともに共通の取付手段であるボルト等によって椅子本体である座2の下面に取り付けてあるので、別途に取付手段を用いることを不要にすることができる。
【0042】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0043】
例えば、残量表示部10eは、椅子の側方または後方から視認される位置に設けておいても構わない。
【0044】
また、バッテリ収容部を、椅子の基本構成部材に作り込んでおくことで別段の取付場所の確保を不要にすることができる。
【0045】
その一例として、図12に示すものは、肘当て部242にバッテリ20を着脱可能に組み込むためのバッテリ収容部200を構成したものである。同図は肘当て部242の上面にカバー200aを設け、このカバー200aを開けてバッテリ20を着脱可能かつ投入するだけで、バッテリ20の図示しない給電端子とバッテリ収容部200内の図示しない受電端子との接続状態を確立できるようにしている。このようにしても、前記実施形態に準じた作用効果が奏される。
【0046】
さらに、図13に示すように、バッテリ収容部300を背支桿31に設けてもよい。この場合も、バッテリ30を着脱可能かつ投入するだけでバッテリ30の図示しない給電端子とバッテリ収容部200内の図示しない受電端子との接続状態を確立するように構成しておけば、上記に準じた作用効果が奏される。特に、背支杆31は座2の後縁から下面側に回り込んでおり、肘4を支持する肘フレーム41等の付け根の近傍も回り込んでいるため、背支桿31を中空にすればバッテリ収容部300からの配線を背支杆31の内部に隠蔽した状態で引き回すことができ、前記実施形態で言えば座2の内部に配置した座部空調機構5への給電や、肘4の内部に配置した肘部空調機構6への給電を無理なく有効に行うことができる。この場合も、バッテリ収容部300の投入口を塞ぐ位置に開閉可能に蓋部材300aを設けて、見栄えの向上と埃等の進入防止を図ることも有効である。上記実施形態のバッテリ収容部100にも同様の蓋部材を採用することが効果的であるのは勿論である。
【0047】
さらに、同図に示すようにバッテリ収容部300の一部に透明な窓300eを設けるなどしてバッテリ30の残量表示部30eを視認可能としておけば、背支桿31の機能からして目立ち易い椅子の背面に残量確認部30eが配されることになり、インテリジェンスな雰囲気の椅子を演出する上でもこのような構成は有効なものとなる。
【0048】
勿論、バッテリの用途は上述した空調機構に限定されるものではない。
【0049】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…脚
2…座
3…背
10…バッテリ
10d…給電端子
10e…残量表示部
11…キャスタ
100…バッテリ収容部
100a…投入口
100d…受電端子
100e…窓
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機能やキャスタによる移動性が与えられており且つ電源を必要とする椅子に適用して有用となるバッテリ付き椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、脚に対して座が回転可能であるとともに、前記脚がキャスタを介して移動可能に支持されている椅子において、バッテリを搭載したものとして、特許文献1に示すもの等が知られている。
【0003】
このものは、着座する利用者に送風を行う機能を備える椅子であって、上面に空気の吸入を行う第1の空気吸入部を有する座部、又は、前面に空気の吸入を行う第2の空気吸入部を有する背凭れ部と、前記利用者に向けて空気を噴出する空気噴出口と、前記第1の空気吸入部、又は、前記第2の空気吸入部から吸入した空気を前記空気噴出口に向けて送る送風手段とを備え、充電式のバッテリにより送風手段を駆動するように構成されている。バッテリは椅子の座に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−15023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッテリが椅子に固定であると、同文献に例示されているように、肘の先端に設けた受電端子を机に設けた給電端子に接続したり、バッテリから電源コードを引っ張ってコンセントに接続しなければならないため、充電中は椅子が使用できないか若しくは椅子の使用位置が制限され、電源コードにも足をとられ易くなるという問題がある。また、バッテリの寿命が尽きる頃には、椅子の座に固定しているバッテリを取り外して新しいものに交換する作業が必要になるため、面倒である。さらに、椅子に備わる電機・電子機器類によってはバッテリの規格が異なる場合があるため、バッテリを一体的に組み込んで固定すると、機器の使用が制限される場合が生じ得る。
【0006】
本発明は、このような課題に着目し、回転機能を有し移動性に富む椅子に使い勝手の良い電源を供給することのできるバッテリ付き椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明のバッテリ付き椅子は、脚に対して座が回転可能であるとともに、前記脚がキャスタを介して移動可能に支持されているものにおいて、投入口を有しその投入先に受電端子を配したバッテリ収容部を座若しくは座とともに回転する部位に一体的に設けるとともに、このバッテリ収容部に対して投入又は抜き取り自在であって所定の投入位置で前記受電端子と電気的に導通する部位に給電端子を備えた充電式のバッテリを装着するようにしたことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、バッテリのみを取り外して外部の充電器で充電することができるので、充電中に椅子が使用できない事態や、椅子の使用位置が制限される事態を有効に解消することができる。しかも、バッテリ交換も容易であり、規格の異なるバッテリ間でバッテリ収容部を共用するような利用形態も展開することができるようになる。そして、バッテリ収容部は座とともに回転するので、バッテリ収容部から座や肘へ配線を施しても配線状態が回転によって影響を受けることを回避することができる。
【0010】
取り扱いの便をより向上させるためには、バッテリ収容部が投入口から投入先に向かって斜め下方に傾斜し、バッテリが自重で所定位置に到達して電気的な接続状態を確立するように構成しておくことが好ましい。
【0011】
簡単な操作でも接続不良となることを有効に防止するためには、バッテリ収容部におけるバッテリ荷重を受ける位置に受電端子を配していることが望ましい。
【0012】
特に、バッテリ収容部の取り付け先である座又は背が後傾可能に構成された椅子においては、前記バッテリ収容部は、背又は座の最大後傾時に投入口から投入先に向かう傾斜が水平を越えて逆傾斜とならないように構成しておくことが好ましい。
【0013】
バッテリの頻繁な充電を回避し、寿命の延命も図るためには、バッテリの一部に残量表示部を備え、バッテリ収容部には、所定位置に投入されたバッテリの残量表示部を外部から視認可能にする窓が設けてあることが望ましい。
【0014】
このようなバッテリ収容部を無理なく採用するためには、バッテリ収容部を椅子の基本構成部材に作り込んだり、椅子の基本構成部材とともに共通の取付手段によって椅子本体に取り付ける態様が好適となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバッテリ付き椅子は、以上説明した構成であるから、バッテリの充電中であっても椅子の配置等が制限されないようにすることができ、バッテリの着脱や交換時の取り扱いも簡素化して、電源を必要とする機能を有した椅子に好適に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を適用した空調機能付き椅子を示す斜視図。
【図2】同側面図。
【図3】同平面図。
【図4】同椅子に組み込まれている座部空調機構の構成を示す分解斜視図。
【図5】同座部空調機構の要部を一部破砕して示す部分拡大斜視図。
【図6】同椅子に組み込まれている肘部空調機構の構成を示す分解斜視図。
【図7】同椅子において空調操作のための操作手段が組み込まれている肘の説明図。
【図8】同実施形態における空調機構、操作手段及び切替回路の関係を示す機能ブロック図。
【図9】同切替回路の機能説明図。
【図10】同実施形態で採用されているバッテリ収容部の構造を示す斜視図。
【図11】同バッテリ収容部の取付方位を説明するための図。
【図12】本発明の変形例を示す図。
【図13】本発明の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態を適用した椅子を示している。この椅子は、脚1に対して座2が回転可能であるとともに、座2が背3の後傾動作に連動して後方に沈み込むように図示しないシンクロロッキング機構によって座2と背3が連動状態で脚1に支持されている。前記座2の側方には肘4が取り付けてあり、脚1はキャスタ11を介して床上を移動可能とされている。
【0019】
座2は、図2に一部破砕して示すように、樹脂製のアウターシェル21上にウレタン等からなる座クッション22を取り付けて、座クッション22をアウターシェル21とともに張り地23で覆ったものである。
【0020】
一方、肘4の外形を形成する肘本体4xは、下端が座2を構成するアウターシェル21の側縁近傍の下面にボルト等により固定された支持部である肘フレーム41と、この肘フレーム41に対しリンク機構40を介して相対移動可能とされた肘当て部42とを備えたもので、肘当て部42は、図3に示すように着座者の両側に前後に延びる状態で配置される第1の使用位置42(P)と、90°回動して着座者の前方に幅方向に延びる状態で配置される第2の使用位置42(Q)との間で移動可能とされている。
【0021】
そして、座2に、給電を受けて図2に矢印Aで示すように座面を温調するための空気の流れを座2の内部に生成する座部空調機構5を設け、また肘4に、給電を受けて図2に矢印Bで示すように肘当て部42から着座空間に向かって吹き出す空気の流れを生成する肘部空調機構6を設けている。
【0022】
以下、両空調機構5,6について具体的に説明する。座部空調機構5を設けるにあたり、図4に示すように、座2を構成する座クッション22の上面ないし前縁の前垂れ部となる部位に凹み22a、22bが設けてあり、この凹み22a、22bは展開状態で平面視凸状をなしている。また、座クッション22を受容する座アウターシェル21の前縁に前垂れ状態でバックアッププレート21bを取り付けている。これに対して、座部空調機構5は、前記凹み22a、22bに対応する平坦部5a及び前垂れ部5bを供えた凸状をなす流路形成材51と、この流路形成材51の凸部分に埋め込んだモータM1の付帯する送風機(吸気ファン)52と、これら流路形成材51及び送風機52を包む張り地53とを含んで構成されている。送風機52はモータM1の軸に沿った方向に気流を生成する軸流タイプの羽根52xを有するものである。流路形成材51は、図5に示すように立方体の各辺に相当する位置に骨格51aを有し頂上に受圧用の頂板51cが配置された立体格子51xを接続部51bによって連ねた形態をなし、利用者の体重を受け止めつつ利用者と図4に示した座クッション22との間に空気の流通を許容する流路を形成するものである。このような流路形成材51をファン及び張り地と組み合わせたものは一般に「空調ざぶとん」として知られている。本実施形態では、図4に示したようにいわゆる空調ざぶとんに椅子に装着する上で適した形態を付与するとともに、上面側に張られる張り地53の後部上面の一部の領域にメッシュ状の排出口53aを形成して、矢印Aで示すように送風機52を介して吸込んだ空気を流路形成材51の中に流通させた後、その空気を前記排出口53aから排気するようにしている。このような座部空調機構5の平坦部5aを前記凹部22a内に収まるように嵌め込み、前垂れ部5bを前記凹部22b内に収まるように嵌め込みつつアウターシェル21のバックアッププレート21aの前面に位置づけ、送風機52はモータM1の軸が前後方向を向くように、かつ吸込み口52aを前方に向けて配置する。そして、流路形成材51を座クッション22及びアウターシェル21の一部とともに図1及び図2に示すように座面を構成するメッシュ地の張り地23によって包み、その張り地23をアウターシェル21の下面側における適宜位置に固定している。
これにより、図2に矢印Aで示したように、座部空調機構5で生成される空気は、座2の前縁から吸入されて内部を流通し後縁上方に排出されるまでの間に、座面にこもる熱を汲み出し、着座者の臀部に涼感を与えるとともに、座2の後縁側から上方へ排気されて背3の前面に流れることで着座者の背にも涼感を与えるものとなる。張り地53には座面側から空気を吸い込むような適度の通気性を付与しておいてもよい。
【0023】
一方、肘部空調機構6は図2に示すように、肘本体4xを構成する肘当て部42の上面に開口する吹き出し口61と、前記肘当て部42の下面に開口する吸込み口62と、前記吹き出し口61と前記吸い込み口62の間に形成される内部流路63と、前記内部流路63に設けられ給電を受けて前記吸込み口62から空気を吸い込み前記吹き出し口61より着座空間に向けて吹き出す送風機64とから構成される。
【0024】
図6はこの肘部空調機構6を分解して示すものであり、リブ等の詳細な構造は省略してある。肘当て部42は、ベース42aとカバー42bに上下分割可能なもので、ベース42aが肘フレーム41の上端に形成した台座41aにリンク機構40を構成する一対のリンクメンバ40a、40bの軸m、nを介して取り付けられて、図3に示したように姿勢変更動作を引き起こすように構成されている。ベース42aには吸込み口62が、カバー42bには吹き出し口61が、互いに対向する位置に開口し、ベース42aの吸込み口62の上にモータM2の付帯した送風機(排気ファン)64が配置され、送風機64の出口と吹き出し口61とを接続する位置に内部流路63を形成するほぼ中空球状の部材からなる風向調節部65が球面状の受座66を介して首振り自在に配置されている。この送風機64もモータM2の軸に沿った方向に気流を生成する軸流タイプの羽根64xを有するものである。風向調節部65は、可動吸込み口65aと可動吹き出し口65bとの間に内部流路63を形成しているもので、可動吹き出し口65bはカバー42bの吹き出し口61の開口の内側に突出状態で配置されて風向調節部65の首振り機能が担保されており、可動吸い込み口65aは図2に模式的な破線で示すように送風機64の出口を呑み込んだ状態で首振り動作が担保されている。このように、送風機64と風向調節部65とは、肘部空調機構6の吸い込み口62と吹き出し口61の間にユニット化して組み込まれている。
【0025】
組立状態において、図2及び図7等に示すように、前記吹き出し口61が肘当て部42の上面に開口する一方、前記吸い込み口62が前記吹き出し口61に対向する肘当て部42の下面に開口し、肘当て部42の下面と肘フレーム41の上端に形成した台座41aとの間にはリンク機構40が位置することになるが、リンク機構40の作動によって吸い込み口62が塞がれないように、リンク機構40のうち特に前側を支持するリンクメンバ40aの形状や位置、そして吸込み口62の開口位置や口径等が規定してある。
【0026】
これにより、利用者は前記風向調節部65を利用して、肘当て部42を着座者の側方に配置した図3に示す第1の使用位置42(P)で吹き出し方向を自由に変えることができ、肘当て部42を着座者の前方に配置した第2の使用位置42(Q)でも吹き出し方向を自由に変えることができ、さらに肘当て部42を両使用位置P,Qの間の各位置に配置した際にも吹き出し方向を自由に変えることができるため、着座者は顔や胸、下腹部や大腿部等の所望の部位に直接風を送って涼感を得ることができるものである。
【0027】
そして本実施形態では、前記座部空調機構5に対するスイッチング操作機能および肘部空調機構6に対するスイッチング操作機能を集合させた操作手段7を図7に示すように肘4に設け、この操作手段7に入力される操作状況に応じ、図8に示す切替回路8を通じて前記座部空調機構5および肘部空調機構6に対する給電状態の切り替えを行うようにしている。
【0028】
操作手段7は、図7に示すように着座姿勢にある着座者が操作可能な肘4の一部、具体的にこの実施形態では着座者から見て右側の肘フレーム41の台座41a付近において、肘当て部42に手を掛けたままで利用できる位置に設けたボックス70に取り付けたもので、座部空調機構5に対して給電のオンオフ切り替えのための操作を受け付ける座部空調スイッチ71と、前記肘部空調機構6に対してオンオフを含み段階的に給電レベルの切り替えのための操作を受け付ける肘部空調摘み72と、空調全体のオンオフ切り替えを行うメインスイッチ73とを備えている。この実施形態では、座部空調スイッチ71とメインスイッチ73は着座者からみて外側の起立面に設けられ、肘部空調摘み72は前側の起立面に設けられているが、取付態様はこれに限るものではない。
【0029】
また、他のスイッチング機能として本実施形態は、図4に示すように座2の2箇所に接触式の着座スイッチ9を埋設し、これによって離席時に節電のために空調機能全体をオフ状態にするようにしている。この着座スイッチ9は、座面の幅方向及び奥行き方向に同時に離間するように対角2箇所に設けたもので、図5に示した流路形成材51の立体格子51x、51x間にスイッチ本体90を嵌め込んだ状態で検出端91を上に向けて配置されるもので、スイッチ本体90に対して検出端91が突没可能かつ突出方向に弾性付勢されていて、没入時に受圧状態を検知するものである。着座スイッチ9は流路形成材51とともに張り地53によって包まれて図4に示した座部空調機構5をなし、この座部空調機構5は更に図2に示した座2の張り地23で覆われることによって、着座スイッチ9の検出端91は張り地53、23に対向した状態で配される。そして、着座者の荷重により検出端91が張り地23、53を介して押下されることでスイッチが入り、受圧状態を検知するようになっている。
【0030】
図9は、前述した切替回路8の切替機能を模式的に示したものである。この実施形態では電源にバッテリ10を採用しており、バッテリ10と座部空調機構5のモータM1との間がメインスイッチ73、着座スイッチ9および座部空調スイッチ71を介して接続され、バッテリ10と肘部空調機構6のモータM2との間がメインスイッチ73、着座スイッチ9および肘部空調摘み72を介して接続された構造をなす。切替機能としては、メインスイッチ73がONの状態で着座スイッチ9が着席を検知しているときに、前記座部空調スイッチ71及び前記肘部空調摘み72の操作状況に応じて前記座部空調機構5に対する給電のオンオフや前記肘部空調機構6に対する給電のオンオフ並びに通電量(すなわち風量)の切り替えを行い、2つの着座スイッチ9が何れもオフとなって離席を検知したときには前記座部空調スイッチ71や肘部空調摘み72に対する操作状況に拘わらず前記座部空調機構5および前記肘部空調機構6のモータM1,M2への給電を停止するものである。勿論、メインスイッチ73がOFFの状態にあるときにも両空調機構5,6はバッテリ10から遮断される。図はあくまでひとつの機能を例示したに過ぎず、操作手段7の構成や切替回路8の切替機能については種々に変形実施することができる。
【0031】
さらに本実施形態では、図2及び図10に示すように、椅子の一部に設けたバッテリ収容部100にバッテリ10を着脱可能にセットするようにしている。バッテリ収容部100は樹脂製のもので、肘フレーム41の付け根を座2のアウターシェル21に取り付ける際に図示しないブラケットを用いて肘4とともに共締めしてぶら下げた状態で支持するようにしたもので、投入口100aが後方に向けて斜め上方に開口するように投入されるバッテリ10に対するガイド面100bを傾斜させ、投入先となる前方の後向き面100cに受電端子100dを配している。一方、バッテリ10は、バッテリ収容部100に対し投入又は抜き取り自在であって、取り外して外部の充電器で充電可能なものであり、その前向き面10cには、所定の投入位置で前記受電端子100dと電気的に導通する部位に給電端子10dを設け、その傍らにバッテリ残量をLEDの点灯状態によって知らせる残量表示部10eが設けてある。バッテリ10には、不図示の充電端子が備わっている。
【0032】
そして、バッテリ10をバッテリ収容部100に投入口100aから投入した際に、ガイド面100bに沿ってバッテリ10がスライドして自重で所定位置に到達し、バッテリ荷重を利用して前記給電端子10dと前記受電端子100dとの電気的な接続状態を確立するようにしている。バッテリ収容部100の後向き面100cの隣接位置には、バッテリ10の残量表示部10eを塞がないための窓100eが開口させてあり、所定位置に投入されたバッテリ10の残量表示部10eを前記窓100eを介し開放して、図2に矢印Fで示すように椅子の前方からバッテリ残量を視認できるようにしている。前述したように、この椅子は座2が背3とともにシンクロロッキングして後傾するものであり、図11(a)に示す非後傾時と(b)に示す最大後傾時の間でバッテリ収容部100の角度が座2の角度とともに変化する。このため、前述したバッテリ収容部100は、同図(b)に示す最大後傾時に投入口100aから投入先に向かう方向に延びるガイド面100bの傾斜が水平を越えて逆傾斜とならないように、図11(a)に示す非後傾時の傾斜角度が設定してある。
【0033】
なお、本実施形態において、配線類は基本的に省略してあるが、図8や図9の回路構成を、極力配線類を外部に露出させることなく実現するために、適宜、肘フレーム41の内部やアウターシェル21の内側等に配線類が引き回されている。
【0034】
また、以上において座部空調機構5や肘部空調機構6の一部にヒータを採用することで、温風を生成して着座者に対する入熱を行うことも可能である。
【0035】
以上のように、本実施形態のバッテリ付き椅子は、脚1に対して座2が回転可能であるとともに、前記脚1がキャスタ11を介して移動可能に支持されているものであって、投入口100aを有しその投入先に受電端子100dを配したバッテリ収容部100を座2とともに回転するように当該座2に一体的に設けるとともに、このバッテリ収容部100に対して投入又は抜き取り自在であって所定の投入位置で前記受電端子100dと電気的に導通する部位に給電端子10dを備えた充電式のバッテリ10を装着するようにしたものである。
【0036】
このように構成すると、バッテリ10のみを取り外して外部の充電器で充電することができるので、充電中に椅子が使用できない事態や、椅子の使用位置が制限される事態を有効に解消することができる。しかも、バッテリ交換も容易であり、規格の異なるバッテリ間でバッテリ収容部100を共用するような利用形態も新たに展開することができるようになる。そして、バッテリ収容部100は座2とともに回転するので、バッテリ収容部100から座2や肘4へ配線を施しても配線状態が回転によって影響を受けることを有効に回避することが可能となる。
【0037】
この場合、バッテリ収容部100を投入口100aから投入先に向かって斜め下方に傾斜させ、バッテリ10が自重で所定位置に到達して電気的な接続状態を確立するようにしているので、投入するだけの簡単な操作でバッテリ10のセットを終えることができ、逐一椅子を移動させたりコードを接続する等の煩わしさを解消して、取り扱いの便を有効に向上させることができる。
【0038】
特に、バッテリ収容部100におけるバッテリ荷重を受ける位置に受電端子100dを配しており、バッテリ荷重が端子10d、100d間の接続の確立を助け且つ維持する方向に作用するので、簡単な操作でも接続不良となることを有効に回避することができる。
【0039】
また、この椅子はバッテリ収容部100の取り付け先である座2が後傾するものであるが、前記バッテリ収容部100は、座2の最大後傾時においても投入口100aから投入先に向かう傾斜が水平を越えて逆傾斜とならないようにしているので、座2が背3とともにシンクロロッキングしても、後傾時にバッテリ10の接続不良や脱落が発生することを有効に防止することができる。
【0040】
さらにこの実施形態は、バッテリ10の一部に残量表示部10eを備え、バッテリ収容部100には、所定位置に投入されたバッテリ10の残量表示部10eを外部から視認可能にする窓100eが設けてあるので、普段使用している状態でバッテリ10の残量が明確になり、無造作に頻繁に充電することを回避して、バッテリの効率良い使い方とバッテリ寿命の延命を図ることができる。
【0041】
また、この実施形態のバッテリ収容部100は、椅子の基本構成部材である肘4とともに共通の取付手段であるボルト等によって椅子本体である座2の下面に取り付けてあるので、別途に取付手段を用いることを不要にすることができる。
【0042】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0043】
例えば、残量表示部10eは、椅子の側方または後方から視認される位置に設けておいても構わない。
【0044】
また、バッテリ収容部を、椅子の基本構成部材に作り込んでおくことで別段の取付場所の確保を不要にすることができる。
【0045】
その一例として、図12に示すものは、肘当て部242にバッテリ20を着脱可能に組み込むためのバッテリ収容部200を構成したものである。同図は肘当て部242の上面にカバー200aを設け、このカバー200aを開けてバッテリ20を着脱可能かつ投入するだけで、バッテリ20の図示しない給電端子とバッテリ収容部200内の図示しない受電端子との接続状態を確立できるようにしている。このようにしても、前記実施形態に準じた作用効果が奏される。
【0046】
さらに、図13に示すように、バッテリ収容部300を背支桿31に設けてもよい。この場合も、バッテリ30を着脱可能かつ投入するだけでバッテリ30の図示しない給電端子とバッテリ収容部200内の図示しない受電端子との接続状態を確立するように構成しておけば、上記に準じた作用効果が奏される。特に、背支杆31は座2の後縁から下面側に回り込んでおり、肘4を支持する肘フレーム41等の付け根の近傍も回り込んでいるため、背支桿31を中空にすればバッテリ収容部300からの配線を背支杆31の内部に隠蔽した状態で引き回すことができ、前記実施形態で言えば座2の内部に配置した座部空調機構5への給電や、肘4の内部に配置した肘部空調機構6への給電を無理なく有効に行うことができる。この場合も、バッテリ収容部300の投入口を塞ぐ位置に開閉可能に蓋部材300aを設けて、見栄えの向上と埃等の進入防止を図ることも有効である。上記実施形態のバッテリ収容部100にも同様の蓋部材を採用することが効果的であるのは勿論である。
【0047】
さらに、同図に示すようにバッテリ収容部300の一部に透明な窓300eを設けるなどしてバッテリ30の残量表示部30eを視認可能としておけば、背支桿31の機能からして目立ち易い椅子の背面に残量確認部30eが配されることになり、インテリジェンスな雰囲気の椅子を演出する上でもこのような構成は有効なものとなる。
【0048】
勿論、バッテリの用途は上述した空調機構に限定されるものではない。
【0049】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…脚
2…座
3…背
10…バッテリ
10d…給電端子
10e…残量表示部
11…キャスタ
100…バッテリ収容部
100a…投入口
100d…受電端子
100e…窓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚に対して座が回転可能であるとともに、前記脚がキャスタを介して移動可能に支持されている椅子において、
投入口を有しその投入先に受電端子を配したバッテリ収容部を座若しくは座とともに回転する部位に一体的に設けるとともに、このバッテリ収容部に対して投入又は抜き取り自在であって所定の投入位置で前記受電端子と電気的に導通する部位に給電端子を備えた充電式のバッテリを装着するようにしたことを特徴とするバッテリ付き椅子。
【請求項2】
バッテリ収容部は投入口から投入先に向かって斜め下方に傾斜しており、バッテリは自重で所定位置に到達して電気的な接続状態を確立する請求項1記載のバッテリ付き椅子。
【請求項3】
バッテリ収容部におけるバッテリ荷重を受ける位置に受電端子を配している請求項2記載のバッテリ付き椅子。
【請求項4】
バッテリ収容部の取り付け先が座又は背であり、当該座又は背が後傾可能に構成された椅子であって、前記バッテリ収容部は背又は座の最大後傾時に投入口から投入先に向かう傾斜が水平を越えて逆傾斜とならないようにしている請求項2又は3何れかに記載のバッテリ付き椅子。
【請求項5】
バッテリの一部に残量表示部を備え、バッテリ収容部には、所定位置に投入されたバッテリの残量表示部を外部から視認可能にする窓が設けてある請求項1〜4何れかに記載のバッテリ付き椅子。
【請求項6】
バッテリ収容部が、椅子の基本構成部材に作り込んである請求項1〜5記載のバッテリ付き椅子。
【請求項7】
バッテリ収容部は、椅子の基本構成部材とともに共通の取付手段によって椅子本体に取り付けられている請求項1〜5記載の椅子。
【請求項1】
脚に対して座が回転可能であるとともに、前記脚がキャスタを介して移動可能に支持されている椅子において、
投入口を有しその投入先に受電端子を配したバッテリ収容部を座若しくは座とともに回転する部位に一体的に設けるとともに、このバッテリ収容部に対して投入又は抜き取り自在であって所定の投入位置で前記受電端子と電気的に導通する部位に給電端子を備えた充電式のバッテリを装着するようにしたことを特徴とするバッテリ付き椅子。
【請求項2】
バッテリ収容部は投入口から投入先に向かって斜め下方に傾斜しており、バッテリは自重で所定位置に到達して電気的な接続状態を確立する請求項1記載のバッテリ付き椅子。
【請求項3】
バッテリ収容部におけるバッテリ荷重を受ける位置に受電端子を配している請求項2記載のバッテリ付き椅子。
【請求項4】
バッテリ収容部の取り付け先が座又は背であり、当該座又は背が後傾可能に構成された椅子であって、前記バッテリ収容部は背又は座の最大後傾時に投入口から投入先に向かう傾斜が水平を越えて逆傾斜とならないようにしている請求項2又は3何れかに記載のバッテリ付き椅子。
【請求項5】
バッテリの一部に残量表示部を備え、バッテリ収容部には、所定位置に投入されたバッテリの残量表示部を外部から視認可能にする窓が設けてある請求項1〜4何れかに記載のバッテリ付き椅子。
【請求項6】
バッテリ収容部が、椅子の基本構成部材に作り込んである請求項1〜5記載のバッテリ付き椅子。
【請求項7】
バッテリ収容部は、椅子の基本構成部材とともに共通の取付手段によって椅子本体に取り付けられている請求項1〜5記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−24200(P2012−24200A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163971(P2010−163971)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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