説明

バッテリ温度制御装置

【課題】不使用中のバッテリを最少のバッテリ消費電力で、凍結することのないよう、バッテリ駆動ヒーターで自動的に加温するようにしたバッテリ温度制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリ温度Tbatが凍結の虞のない第1の設定温度Tbat1以上である間(ステップS13)、バッテリ温度Tbatおよび外気温度Tatmの組み合わせから、バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満になるであろう時間を予測して、これを次回コントローラ起動時間Δtと定め(ステップS14)、この時間Δtが経過した時、図の制御プログラムのウエイクアップにより、ステップS13でTbat< Tbat1に温度低下したか否かの判定を行い、このバッテリ温度低下時にヒーターをバッテリ駆動してバッテリ1の加温を行う(ステップS19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地で用いるバッテリの、特に不使用中における温度低下を防止するバッテリ温度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動車両に搭載したバッテリのように、寒冷地で用いることが想定されるバッテリは、不使用中にバッテリ電解液が凍結することがある。
バッテリは温度低下すると、蓄電状態SOCが低下するわけではないが、内部抵抗の増大によりバッテリに対する入出力可能電力が低下し、バッテリ電解液が凍結すると、バッテリの入出力可能電力が遂には0になって、バッテリを走行エネルギー源とする電動車両の場合は走行不能に陥る。
【0003】
そこで、バッテリの入出力可能電力がかかる不都合を生ずる状態になるまで温度低下する前に、ヒーターでバッテリを加温して温度調節するバッテリ温度制御装置が必要である。
このようにバッテリをヒーターで加温して温度調節するバッテリ温度制御装置としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが提案されている。
【0004】
この提案技術によるバッテリ温度制御装置は、車載バッテリの温度調節を行うもので、イグニッションスイッチのOFF時に外気温度が最低温度よりも低いとき、ヒーターでバッテリを加温するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−203679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来のバッテリ温度制御装置にあっては、イグニッションスイッチOFF時の外気温度のみに応じ、バッテリをヒーターにより加温するものであるため、
イグニッションスイッチOFF時の外気温度が高くて、イグニッションスイッチOFF時当初はヒーターをONしなかったものの、その後に外気温度が低下したときも、ヒーターはOFFにされ続けることになる。
【0007】
この場合、外気温度がバッテリ電解液の凝固点まで低下しても、ヒーターがONされず、遂にはバッテリ電解液の凍結によりバッテリの入出力可能電力が0になって、バッテリ電力により走行する電動車両が走行不能に陥ってしまうという問題を生ずる。
【0008】
本発明は、バッテリ温度と外気温度との組み合わせから、バッテリ温度が上記のような問題を生ずる低温になるまでの時間を予測し、この時間に基づく時間管理によりヒーターによるバッテリの加温制御を行うことで、上記の問題を生ずることのないようにしたバッテリ温度制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため本発明によるバッテリ温度制御装置は、これを以下のように構成する。
先ず本発明の前提となるバッテリ温度制御装置を説明するに、これは、
バッテリが所定温度未満になるとき、ヒーターでバッテリを加温して温度調節するものである。
【0010】
本発明は、かかるバッテリ温度制御装置に対し、以下のようなバッテリ温度低下時間予測手段および加温要否判定手段を設けた構成に特徴づけられる。
前者のバッテリ温度低下時間予測手段は、上記バッテリの温度と、外気温度との組み合わせに基づき、バッテリが上記所定温度未満になるであろう時間を予測し、
また後者の加温要否判定手段は、当該予測した時間の経過時に、バッテリが前記所定温度未満であるか否かの判定を行って上記ヒーターによる加温の要否を判定するものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる本発明のバッテリ温度制御装置によれば、バッテリの温度および外気温度の組み合わせに基づき、バッテリが上記所定温度未満になるであろう時間を予測し、当該予測時間が経過した時に、バッテリが所定温度未満であるか否かの判定を行って上記ヒーターによる加温の要否を判定するため、
当初は外気温度が高くてヒーターをONしなかったとしても、上記の予測時間が経過した時に改めて、バッテリが所定温度未満であるか否かの判定(上記ヒーターによる加温の要否判定)を行うこととなる。
【0012】
このため、当初は外気温度が高くてヒーターをONしなかったとしても、その後に外気温度の低下によりバッテリが上記所定温度未満になったら、上記ヒーターによる加温によってバッテリを確実に温度調節することができる。
従って、バッテリが上記所定温度未満のままにされるのを回避し得て、例えばバッテリ電解液が凍結するような最悪事態となるのを防止することができる。
【0013】
また、上記予測時間の経過時に改めて、バッテリが所定温度未満であると判定した場合のみ、上記ヒーターによるバッテリの加温を行うことで、上記の効果が得られるようにしたため、
本当に必要な時にしかバッテリ温度制御装置は起動せず、最小限の消費電力で上記の効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例になるバッテリ温度制御装置の概略を示す制御システム図である。
【図2】図1におけるヒーターの設置要領を示す説明図である。
【図3】図1における温調コントローラが実行するバッテリ温度制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】図3において、バッテリの不使用中バッテリ温度が凍結の虞のない温度域であるときに求める次回コントローラ起動時間のマップ図である。
【図5】特定地における外気温度と、各種バッテリ温度の或る経時変化を例示するタイムチャートである。
【図6】同じ場所における外気温度および各種バッテリ温度の他の経時変化を例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図示の実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になるバッテリ温度制御装置の制御システム図で、本実施例では、このバッテリ温度制御装置を、電気自動車やハイブリッド車両など電動車両の強電バッテリ1を温度調節するためのものとする。
また強電バッテリ1は、例えば図2に示すように、複数個の電池シェルを積層してユニット化した電池モジュール1a,1bを複数個(図2では2個)、1セットにして一体化した、モータ駆動に供し得る大容量のバッテリとする。
【0016】
図1において、2は、バッテリ1の温度調節を行うためのヒーターで、このヒーター2は図2に示すごとく、電池モジュール1a,1bに対し、電池シェルの積層方向に沿うよう配置して、電池モジュール1a,1bの直近に設ける。
【0017】
図1において、3は、電動車両の走行駆動に用いる電動モータで、この電動モータ3は、インバータ4を介してバッテリ1に電気接続する。
そして、インバータ4およびバッテリ1間の電路中にメインリレースイッチ5を挿置し、このメインリレースイッチ5は、電動車両のイグニッションスイッチ6に連動して、図示せざる駆動コントローラを介し開閉され、イグニッションスイッチ6のON時に閉じ、イグニッションスイッチ6のOFF時に開くものとする。
【0018】
イグニッションスイッチ6のONに連動してメインリレースイッチ5が閉じている間、バッテリ1からの直流電力は、インバータ4により直流→交流変換されると共に該インバータ4による制御下で電動モータ3に向け出力され、該モータ3の駆動により電動車両を走行させることができる。
イグニッションスイッチ6のOFFに連動してメインリレースイッチ5が開いている場合、バッテリ1からの直流電力は電動モータ3に向かい得ず、該モータ3の停止により電動車両を停車状態に保つことができる。
【0019】
インバータ4の直流側とメインリレースイッチ5との間には充電器7を接続して設け、この充電器7を外部電源に接続するとき、図示せざる充電コントローラによりメインリレースイッチ5が閉じられ、バッテリ1を外部電源により充電することができる。
【0020】
<バッテリ温度制御>
上記の用に供されるバッテリ1の温度制御装置を以下に説明する。
図2につき前述した通り、バッテリ1の温度調節を行い得るよう、電池モジュール1a,1bの直近において電池シェルの積層方向に沿うよう設けたヒーター2は、図1に示すごとくインバータ4の直流側とメインリレースイッチ5との間に電気接続し、この接続部とヒーター2との間の電路中にヒータースイッチ8を挿置する。
【0021】
ヒータースイッチ8の開閉は、バッテリ1の温度制御を司る温調コントローラ9(電池を内蔵し、自己起動可能なコントローラ)により制御する。
この温調コントローラ9は更に、メインリレースイッチ5がイグニッションスイッチ6のOFFに連動して開かれている間、当該メインリレースイッチ5をも開閉するものとし、
この際、温調コントローラ9は、ヒータースイッチ8を閉じるとき、これに同期してメインリレースイッチ5をも閉じてヒーター2を附勢(ON)し、ヒータースイッチ8を開くとき、これに同期してメインリレースイッチ5をも開いてヒーター2を滅勢(OFF)するものとする。
【0022】
温調コントローラ9には、ヒータースイッチ8およびメインリレースイッチ5の上記した同期閉開を介したヒーター2のON,OFF制御を行うために、
前記イグニッションスイッチ6のON,OFF信号と、
バッテリ1の蓄電状態SOCを検出するバッテリ蓄電状態センサ11からの信号と、
バッテリ1の温度Tbatを検出するバッテリ温度センサ12からの信号と、
外気温度Tatmを検出する外気温度センサ13からの信号とを入力する。
【0023】
温調コントローラ9は、これら入力情報を基に図3に示す制御プログラムを実行して、バッテリ1の温度制御を以下の要領で行う。
ステップS11においては、イグニッションスイッチ6がOFF状態か否かをチェックする。
イグニッションスイッチ6がOFF状態でなければ、イグニッションスイッチ6のONに連動してメインリレースイッチ5が閉じられ、電動モータ3の駆動による車両走行が可能な状態である。この場合は、制御をそのまま終了して図3のループから抜ける。
【0024】
ステップS11でイグニッションスイッチ6がOFF状態であると判定するときは、ステップS12において、イグニッションスイッチ6がOFF状態になって初回か否かを、つまりイグニッションスイッチ6をONからOFFにした直後か否かをチェックする。
イグニッションスイッチ6をOFFにした直後であれば、本発明における加温要否判定手段に相当するステップS13において、バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満か否かをチェックする。
【0025】
この第1の設定温度Tbat1は、バッテリ1の電解液が凍結する虞があるか否かを判定するための設定値で、例えば以下のように定める。
バッテリ電解液は、バッテリ温度Tbatが例えば-25℃〜-30℃程度よりも低温になるとき凍結し、バッテリ1の入出力可能電力が0になってしまう。
このような最悪事態に絶対陥ることのないようにするには、余裕をみてバッテリ温度Tbatが例えば-20℃程度、更に好ましくは-17℃程度の低温になった時からヒーター2によりバッテリ1を加温するのがよい。
従って本実施例では、上記第1の設定温度Tbat1として、例えば-17℃程度の温度を設定する。
【0026】
ステップS13において、バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満(Tbat<Tbat1)でないと判別するときは、つまり差し当たってバッテリ温度Tbatがバッテリ電解液を凍結させる虞のない程度に高い温度である場合、
ステップS14において、図4に例示するマップを基に、バッテリ温度Tbatおよび外気温度Tatmの組み合わせから、バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1に低下するまでの時間を予測して、この時間を、次回温調コントローラ9が起動して図3の制御プログラムを実行するまでのスリープ時間(次回コントローラ起動時間)Δtに設定する。
従ってステップS13およびステップS14は、本発明におけるバッテリ温度低下時間予測手段に相当する。
次のステップS15においては、温調コントローラ9がヒータースイッチ8およびメインリレースイッチ5を開くことにより、ヒーター2をOFFにしたスリープ状態となる。
【0027】
以下、ステップS14において設定する次回コントローラ起動時間Δt(バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1に低下するまでの時間)を、図5,6に基づき詳述する。
図5,6はそれぞれ、初期バッテリ温度を変化させて外気温度Tatmの低下が激しい場合におけるバッテリ温度Tbat(1〜7)の変化をプロットした、2例の実測データである。
バッテリ温度Tbat(1〜7)がバッテリ電解液の凝固点よりも低下すると、電解液が凍結してバッテリは電池として機能しなくなる。
【0028】
外気温度Tatmが低下し始める16時頃をイグニッションスイッチ6のキーオフタイミングとして次回コントローラ起動時間Δt(バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1に低下するまでの時間)を決めるとすると、
バッテリ1が凝固する前に、ヒーター2の作動パワーをバッテリ1から取得可能なバッテリ温度を第1の設定温度Tbat1(-17℃)として設定し、図6から外気温度-20℃、初期バッテリ温度が各温度の時、何時間後に温調コントローラ9を起動すれば良いかを読み取ることができる。
【0029】
外気温度Tatmの低下が始まる16時にイグニッションスイッチ6をキーオフする場合、キーオフ後における外気温度Tatmの低下幅が大きく、バッテリ1が最も早く冷える。
図5,6などから、最も早くバッテリ1が冷える場合を想定して、次回コントローラ起動時間を読み取った結果が図4である。
従ってステップS14においては、この図4に例示するマップを基に、バッテリ温度Tbatおよび外気温度Tatmの組み合わせから、バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1に低下するまでの時間、つまり、次回温調コントローラ9が起動して図3の制御プログラムを実行するまでのスリープ時間(次回コントローラ起動時間)Δtを設定することができる。
【0030】
ステップS11〜ステップS15を含むループによる上記の制御が行われて、温調コントローラ9がヒータースイッチ8およびメインリレースイッチ5の「開」により、ヒーター2をOFFにしたスリープ状態になると、
温調コントローラ9は内蔵タイマにより、当該スリープ状態になった時からの経過時間を計測し、ステップS14で設定した次回コントローラ起動時間Δtが経過するまでは、スリープ状態を維持する。
【0031】
温調コントローラ9は、スリープ状態になった時から次回コントローラ起動時間Δtが経過したとき、図3の制御プログラムを再び実行(ウエイクアップ)する。
このウエイクアップ時は、ステップS12が初回と判定しないことから、制御をステップS16に進め、ここで上記のウエイクアップが行われたとの判定結果を受けて、ステップS13に制御が進む。
【0032】
上記時間Δtのスリープ状態によっても、未だステップS13においてバッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満になっていないと判定する場合は、再び制御をステップS14およびステップS15に進めて、ステップS14で新たに設定した次回コントローラ起動時間Δtだけスリープ状態を維持する。
【0033】
その間にバッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満になると、ステップS13は当該バッテリ温度低下を判定して、制御をステップS17に進め、このステップS17において、バッテリ温度Tbatが第2の設定温度Tbat2未満か否かをチェックする。
この第2の設定温度Tbat2は、バッテリ1の電解液が凍結または凍結直前状態になって入出力可能電力が0になる、つまりヒーター2による加温ができなくなったか否かを判定するための設定値で、例えば以下のように定める。
バッテリ電解液は、バッテリ温度Tbatが例えば-25℃〜-30℃程度の低温になるとき凍結し、バッテリ1はヒーター2を作動させることができなくなり、これによるバッテリ1の加温(温度調節)が不能になるため、本実施例では、上記第2の設定温度Tbat2として、例えば-25℃程度の温度を設定する。
【0034】
ステップS17でTbat<Tbat2(バッテリ1がヒーター2を作動させ得ない)と判定する場合、ステップS14において、前記した図4のマップとは別のマップ、しかし、図5,6の7時以降における外気温度Tatmの上昇に伴う電池温度Tbat(1〜7)の上昇から、図4のマップを求めると同じ要領で求めた、バッテリ電解液が解凍されるまでの時間に関するマップを基に、バッテリ温度Tbatおよび外気温度Tatmの組み合わせから、バッテリ電解液の解凍にかかる時間を予測して、この時間を、次回温調コントローラ9が起動して図3の制御プログラムを実行するまでのスリープ時間(次回コントローラ起動時間)Δtに設定する。
従ってステップS17およびステップS14は、本発明におけるバッテリ電解液解凍時間予測手段に相当する。
次のステップS15においては、温調コントローラ9がヒータースイッチ8およびメインリレースイッチ5を開くことにより、ヒーター2をOFFにしたスリープ状態となる。
【0035】
ステップS11、ステップS12、ステップS16,ステップS13、ステップS17、ステップS14、およびステップS15を含むループによる上記の制御が行われて、温調コントローラ9がヒータースイッチ8およびメインリレースイッチ5の「開」により、ヒーター2をOFFにしたスリープ状態になると、
温調コントローラ9は内蔵タイマにより、当該スリープ状態になった時からの経過時間を計測し、ステップS14で設定した次回コントローラ起動時間Δtが経過するまでは、スリープ状態を維持する。
【0036】
温調コントローラ9は、スリープ状態になった時から次回コントローラ起動時間Δtが経過したとき、図3の制御プログラムを再び実行(ウエイクアップ)する。
上記時間Δtのスリープ状態によっても、未だステップS17においてバッテリ温度Tbatが第2の設定温度Tbat2未満であると判定する場合は、再び制御をステップS14およびステップS15に進めて、ステップS14で新たに設定した次回コントローラ起動時間Δtだけスリープ状態を維持する。
【0037】
その間にバッテリ温度Tbatが第2の設定温度Tbat2以上(バッテリ1が電解液の解凍によりヒーター2を作動し得る状態)になると、ステップS17は当該バッテリ温度の上昇を判定して、制御をステップS18に進め、このステップS18において、バッテリ1の蓄電状態SOCがヒーター2を作動し得る、設定値SOCs以上のレベルか否かをチェックする。
【0038】
ステップS18でSOC<SOCsと判定する場合は、バッテリ1がヒーター2を作動できる蓄電状態でないことから、温調コントローラ9はステップS15の実行(ヒータースイッチ8およびメインリレースイッチ5の「開」)により、ヒーター2をOFFにしたスリープ状態となる。
ステップS18でSOC≧SOCsと判定する場合は、バッテリ1がヒーター2を作動できる蓄電状態であることから、温調コントローラ9はステップS19に制御を進め、ヒータースイッチ8およびメインリレースイッチ5の「閉」により、ヒーター2をバッテリ1からの電力で作動させてバッテリ1を加温する。
【0039】
当該ヒーター2による加温によりバッテリ1が温度上昇して、バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1以上になると、かかるバッテリ温度上昇をステップS13が判定して、制御をステップS14およびステップS15へ進める結果、
温調コントローラ9は、ステップS14で設定した次回コントローラ起動時間Δt中、スリープ状態を維持し、時間Δtの経過時に図3の制御プログラムを再び実行(ウエイクアップ)して、前記のバッテリ温度制御を繰り返す。
【0040】
<実施例の効果>
上記した本実施例のバッテリ温度制御によれば、イグニッションスイッチ6のOFFによるバッテリ1の不使用中、以下のようにバッテリ1の温度調節を行う。
バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1以上である間(ステップS13)、つまりバッテリ電解液が凍結する虞のない間に、バッテリ温度Tbatおよび外気温度Tatmの組み合わせから、バッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満になるであろう時間を予測して、これを次回コントローラ起動時間Δtと定め(ステップS14)、
この次回コントローラ起動時間Δtが経過した時、図3に示す制御プログラムのウエイクアップにより、ステップS13でバッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満に低下したか否かの判定を行い、このバッテリ温度低下(Tbat<Tbat1となる)時にヒーター2をバッテリ駆動してバッテリ1の加温を行う(ステップS19)。
【0041】
従って、バッテリ1の温度調節開始時にヒーター2を作動させなかったとしても、次回コントローラ起動時間Δtが経過した時、上記のウエイクアップにより改めて、ステップS13でバッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満に低下したか否かの判定(上記ヒーター2による加温の要否判定)を行うこととなる。
このため、当初はTbat≧Tbat1(ステップS13)のためヒーター2を作動させなかったとしても、その後の温度低下によりTbat<Tbat1(ステップS13)になったら、ヒーター2による加温によって(ステップS19)、バッテリ1を確実に温度調節することができる。
従って、バッテリ1が上記第1の設定温度Tbat1未満のままにされるのを回避し得て、バッテリ電解液が凍結するような最悪事態となるのを防止することができる。
【0042】
また、上記の次回コントローラ起動時間Δtが経過した時に改めて、図3に示す制御プログラムのウエイクアップにより、ステップS13でTbat<Tbat1と判定した場合のみ、上記ヒーター2によるバッテリ1の加温を行うことで、上記の効果が得られるようにしたため、
イグニッションスイッチ6のOFFによるバッテリ1の不使用中は、本当に必要な時(Tbat<Tbat1の判定時)にしかヒーター2が作動せず、最小限の消費電力で上記の効果を達成することができ、バッテリ1の蓄電状態SOCを長時間、車両の走行が可能なレベルに保つことができる。
【0043】
本実施例においては更に、バッテリ温度Tbatがバッテリ電解液の凝固点近傍における第2の設定温度Tbat2未満である場合に(ステップS17)、バッテリ温度Tbatおよび外気温度Tatmの組み合わせから、バッテリ電解液が解凍されるまでの時間を予測して、この時間を次回コントローラ起動時間Δtに設定し(ステップS14)、
この次回コントローラ起動時間Δtが経過した時、図3に示す制御プログラムのウエイクアップにより、ステップS13でバッテリ温度Tbatが第1の設定温度Tbat1未満に低下したか否かの判定を行い、このバッテリ温度低下(Tbat<Tbat1となる)時にヒーター2をバッテリ駆動してバッテリ1の加温を行う(ステップS19)。
【0044】
このため、バッテリ1の電解液が凍結状態である場合は、バッテリ電解液が自然解凍するまでスリープ状態により待機し、バッテリ電解液が自然解凍し後に前記したと同様なヒーター2による温度調節が行われることとなり、バッテリ電解液の再凍結を確実に防止することができる。
【0045】
なお、ステップS17でTbat< Tbat2と判定した時ステップS14で設定される次回コントローラ起動時間Δt(バッテリ電解液が解凍されるまでの時間)は、固定値でもよいが、
本実施例のごとく前記した予定のマップを基に、バッテリ温度Tbatおよび外気温度Tatmの組み合わせから求めるようにすれば、最も早いバッテリ電解液解凍温度時間を用いた制御が可能になって、自然解凍後の起動を一層確実に行わせ得ると同時に、バッテリ1のエネルギー消費を抑えることができる。
また、バッテリ電解液が凍結した場合、図5,6に示すごとく、外気温度が最高気温に到達する可能性の高い正午から16時の間に起動する設定にしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 バッテリ
2 ヒーター
3 電動モータ
4 インバータ
5 メインリレースイッチ
6 イグニッションスイッチ
7 充電器
8 ヒータースイッチ
9 温調コントローラ
11 バッテリ蓄電状態センサ
12 バッテリ温度センサ
13 外気温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリが所定温度未満になるとき、ヒーターでバッテリを加温して温度調節するバッテリ温度制御装置において、
前記バッテリの温度と、外気温度との組み合わせに基づき、バッテリが前記所定温度未満になるであろう時間を予測するバッテリ温度低下時間予測手段と、
該手段により予測した時間の経過時に、バッテリが前記所定温度未満であるか否かの判定を行って前記ヒーターによる加温の要否を判定する加温要否判定手段とを具備してなることを特徴とするバッテリ温度制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ温度制御装置において、
前記所定温度は、バッテリ電解液の凝固点よりも高い第1の設定温度であり、
前記バッテリ温度低下時間予測手段は、バッテリ温度が該第1の設定温度以上である場合に、前記バッテリ温度および外気温度の組み合わせから、バッテリが該第1の設定温度未満になるであろう時間を予測するものであることを特徴とするバッテリ温度制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバッテリ温度制御装置において、
前記バッテリ温度がバッテリ電解液の凝固点近傍における第2の設定温度未満である場合に、バッテリ電解液が解凍されるまでの時間を予測するバッテリ電解液解凍時間予測手段を設け、
該手段により予測した時間の経過時に、前記加温要否判定手段による判定を行わせるよう構成したことを特徴とするバッテリ温度制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリ温度制御装置において、
前記バッテリ電解液解凍時間予測手段は、前記バッテリ温度および外気温度の組み合わせから、バッテリ電解液が解凍されるまでの時間を予測するものであることを特徴とするバッテリ温度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−190686(P2012−190686A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54081(P2011−54081)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】