説明

バラスト水システム

生物により汚染されている水、具体的にはバラスト水を処理するためのシステムおよび方法であって、このシステムは、海からの水を、キャビテーションユニット(7)を通して、一または複数のバラストタンクの中に移送するポンプを備えている。キャビテーションユニット(7)が、水に対して強いキャビテーションを与え、このキャビテーション作用が、水中に存在する生物の有機組織および細胞膜を破壊する。キャビテーションユニット(7)では、水素および蒸気が水に加えられ、その一方で、酸素が除去される。酸素が除去された水は、バラストタンクに対する腐食作用が削減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的汚染を削減するために船舶のバラスト水を処理する方法およびこの方法において用いられる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶が港で荷物を降ろすような場合、荷物を降ろしてまたは部分的に荷物を積んだ船舶が海上において不安定にならないように、一般的に、ポンプを用いて海水が船舶のバラストタンクの中に送り込まれる。この作業により、その地域の海洋生物(たとえば、バクテリア、多細胞生物)がバラストタンクの中へ侵入することが可能となり、実際、侵入する場合が多い。その船舶が荷物を積み込むことになっている次の訪問港に到着すると、バラスト水をポンプにより排水しなければならない。この水が生きた生体物質を含んでいる場合、以下に記載するように、その港における海洋環境を生物学的に汚染しうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
すべての現代的な船舶は、ポンプと、フィルタと、配管と、換気装置と、タンクとを有した一体式のバラスト水装置を備えている。バラストタンクは、二重壁構造の船体の二つの壁の間の位置に設けられても良い一方、この目的に適切と考えられるその他の隙間空間に設けられても良い。船舶が全部のまたは一部の荷物を降ろすと、その船舶は、他の荷物を積み込むために他の港に移動する。荷物用の船倉が部分的に空または空の状態で帰港するとき、バラストタンクは、海上で船舶を安定させるために、プロペラおよびラダーの適切な浸水を担保するために、適切な船舶のバランスを取るためにおよび/または船舶構造の一体性に関する構造的限界を超えないことを担保するために、水で充填されうる。通常、バラストタンクは、荷物を降ろす港、陸揚港の近傍からの海水で充填される。新しい荷物を受け取る荷受け港に船舶が接近すると、バラスト水は、周囲の海に排水される。
【0004】
バラスト水が世界中に移送されるため、バラスト水の環境に対する影響が懸念され始めている。バラストタンクがある港からの水で充填される場合、この水は陸揚げ港を代表する複数の生物を含んでいる。これらは、海草類、そう類、幼生類、魚類、軟体動物または他の生物類、異なる種類のパラサイト、バクテリアおよびウイルスなどであることがあり得る。これらの生物は、世界の中の他の部分に放されると、生態系の占有されていない隙間(niche)を見出し、天敵の存在しない状態で繁殖し始める。植物および動物などの生物がそれらの自然の生息地ではない環境に移住され新しい場所において大きな問題を起こしていることが知られている。
【0005】
政府間当局は、ネイティブではない海洋生物の侵入の危険性を削減する目的で、国際条約、バラスト水管理条約を策定した。このことは、生物学的多様性の保護にとって重要なステップであると考えられている。これらの規約に従うと、新規の建造された船舶は、2009年以降、排出地点(荷受け港)において、規定されたバラスト水の標準性能を保証するためにバラスト水を船内において処理するための手段を構築しなければならない。すべての船舶が、2016年から、この同一の要件によって制約されることになる。現在において、来るべき規約に準拠することが証明されたバラスト水処理に利用可能かつ船舶に搭載可能な技術はない。産業用水処理技術の中には、条約に記載の処理品質の要件を満足しうるものもあるが、船舶内での使用に対応しきれない特性を有しているものもあれば、船舶中に搭載することさえできないものもある。
【0006】
バラスト水を沖合において交換すること以外では、フィルタによる処理がバラスト水中の不必要な生物の濃度を減らす最も一般的かつ簡単な方法である。ほとんどの商業用船舶は、海水箱および/または船体艤装を用いて、バラスト水を、15mmのサイズのこし器またはそれよりも小さなサイズのこし器に通すことによりふるいにかけている。この簡易なスクリーンフィルタは、回転式セパレータと組合わされても良い。しかしながら、このようなフィルタ/セパレータ構成は、魚類、無脊椎動物類、大型植物類の如き大型の生物のみを取り除き、バクテリア類、ウイルス類、菌類、原生動物類、プランクトンならびに高等生物の卵および幼生の如きバラスト水に特有の他の生物を通過させる。
【0007】
回転式セパレータは、流体(この場合、バラスト水)と粒子(存在する生物)との間の比重差の原理に基づいて動作する。バラスト水の用途の場合、このような差がいつでも発生するというわけではない。従って、回転式セパレータがバラスト水の分離用途に適していない場合もある。
【0008】
メッシュサイズが小さなフィルタは、卵類および幼生類を完全に取り除き、大きなプランクトンおよび原生動物を取り除きうる。しかしながら、このようなフィルタは、背圧を上昇させ、使用中にすぐに詰まってしまい、該当する流量におけるバラスト水の濾過には不適切であることが証明されている。
【0009】
バラスト水入れ替え作業の危険性を管理する目的で適用される現時点において最も積極的に行われている唯一の船舶内での手法は、バラスト水を沖合において交換することである。この手法の原理は、バラスト水として用いられる海岸線の海水または港内の海水に較べて沖合の海水がより少ない濃度の生物を含み、したがって、荷受け港に対する危険性を低下させるであろうという仮説に立脚する単なる希釈に基づいたものである。
【0010】
ブラウニング(Browning)に対して発行された米国特許第5,932,112号には、生物を殺す目的でバラスト水から酸素を除去するためのシステムが開示されている。酸素は真空行程において除去され、そのあと、船舶の機械からの排気ガスが投入される。研究によれば、酸素の除去が動物の侵入者(幼生形態、幼体形態、成体形態(larval、juvenile and adult forms))を殺すには非常に効果的であるが、他の生物、特に、シスト(cysts)の如き低酸素環境に適合しているまたは耐性ステージを有している生物に対しては有効性は小さくなる。高濃度のCO/COを含有する高温の排気ガスを注入することは、腐食を促進させるため、望ましくないと思われる。
【0011】
マクナルティに対して発行された国際特許WO03/093176には、バラスト水処理のためのシステムおよび方法が開示されている。ポンプにより、水はベンチュリ型注入器を通される。ベンチュリ型注入器では、酸素除去ガスが微細な泡として加えられる。この泡の表面積が大きいので、水の中に存在する酸素ガスは除去用ガスと交換される。次いで、この水はバラストタンクへポンプにより供給される。バラストタンクでは、酸素が放出される。このシステムは、生物を殺す効果と腐食を防止する効果とを備えている。しかしながら、上述のシステムと同様に、幾つかの生物はこの処理から生き延びる。
【0012】
ノルウェー特許第314625号(フォルノバ、 エイ・エス(Forinnova AS))には、水の中にガスが過飽和された状態を形成することによりバラスト水を処理するための方法が開示されている。魚類は、気体が過飽和状態になっている水に対して晒されると、「潜水夫病」として知られている「ガス病」になる。この過飽和状態になっているガスは、血液中の酸素と置換され、血液中および生体組織中において泡として現れる。好ましいガスは空気であるが、用途によっては、窒素ガスを用いてもよいと考えられている。過飽和により、魚類(循環系を備えた生物)の如き大型の生物を効果的に殺せる一方、プランクトンの如き小型の生物に対しては効果が小さくなるかまたは効果がなくなる。
【0013】
したがって、排出されたバラスト水による生物学的汚染を削減または排除することを可能とする技術の必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一つの態様によれば、本発明のバラスト水を処理するための方法は、水上を航行する船舶のバラストタンクへ、水源(たとえば、周囲の海、湖または河川)からポンプによりフィルタを通して水を供給することと、ポンプによる水の供給が停止されたときにバラストタンク内の水がその窒素飽和含量を超えているとともにその酸素飽和含量を下回っているよう、その水のうちの少なくとも一部の水の溶融窒素レベルをその水の窒素飽和含量を超えるレベルにまで上昇させることと、バラストタンクのヘッドスペース内の空気を大気中の窒素含有量(モル%)よりも大きな含有量に維持することと、バラストタンクからの水を船舶の周囲の水の中へポンプにより排水することと、船舶の周囲の水の中へ排水するまえに、バラストタンクからの水に微生物を殺す処理を行うこととを含んでいる。
【0015】
他の態様によれば、本発明の水上を航行している船舶のバラスト水を処理するための装置は、フィルタを通してバラストタンクの中へ水を供給するための第一のポンプと、この第一のポンプにより供給されうる水を通すためのフィルタと、水を第一のポンプからフィルタを通してバラストタンクへ移送するための導管と、第一のポンプからバラストタンクへポンプにより移送されている水の中へ窒素を注入するための窒素注入器と、窒素注入器に取り付けられるまたは取り付け可能な任意選択的な窒素源と、水をバラストタンクから導管を通して船舶の外へ排出するための第二のポンプ(任意選択的でありかつ好ましくは第一のポンプであっても良い)と、バラストタンクから船舶の外へ移送されている水の中の微生物を殺すように構成されている微生物を殺すユニットとを備えている。
【0016】
さらに他の態様によれば、本発明は、バラスト水を処理する発明にかかる装置をさらに備えてなることを特徴とするバラスト水タンク搭載の水上航行船舶を提供している。
【0017】
バラストタンクの中へ供給されているバラスト水に窒素を加えることにより、バラスト水に含まれているまたはバラストタンク内に存在している単細胞生物および多細胞生物を殺すという主要な効果がもたらされるが、本発明にかかる方法および装置のさらなる利点は、窒素が飽和状態になっているバラスト水がバラストタンクの腐食を削減させるというさらなる機能を有していることにある。このことは非常に有益である。というのは、腐食したバラスト水タンクの修理または交換が船舶の修理において最も費用が必要となる項目のうちの一つであるからである。
【0018】
バラスト水タンクの腐食は、船舶の動作寿命を著しく制限する。現在、船舶作業者は船舶の動作寿命を、バラストタンクの内部表面を塗装することにより延ばそうとしている。これは、費用のかかる困難な作業であるが、とくに、塗装まえに大量の泥および破片を取り除かねばならない場合にそうである。
【0019】
バラスト水タンク内における保護被膜(たとえば、塗料)の腐食および/または酸化は、とくに上述の理由により、世界中の輸送会社にとっての最も気になる事柄である。バラストタンクは、どのように船舶においても重要な構造要素であり、この領域における腐食は、船舶の構造的完全性(structural integrity)を危うくし、船舶の寿命を事実上制限するものである。バラストタンクは、まず一群の腐食防止コーティングで被膜される。これらのコーティング層は、5〜10年の経過後に(全体的にまたは部分的に)交換されるまで、水と空気との間を交互に頻繁に晒されることにより、時間の経過につれて次第に風化および劣化される。そのあとからは、バラストタンクの修理、塗料剥離、再塗装の工程が継続して着実に発生する。このことは、修理場おいて修理作業中に発生する場合もあれば、乗組員が乗船している港間の船舶において発生する場合もある。船舶のなかには、とくに高齢の船舶の場合、バラストタンクが被膜されていないこともある。
【0020】
主要な腐食機構としては、金属性の対象体が酸化環境下、通常湿った状態下に晒されているときに発生する電気化学反応機構が挙げられる。バラストタンク内の腐食は、船舶のタンク構造体の金属が、電解質として作用する塩分を含む海水と、空気中のまたは海水に溶解している酸素と接触することにより発生する。酸化および腐食によるコーティングの劣化速度に対して影響を与えるパラメータは幾つかある。腐食は、タンクの上部の外側に面しているメッキ被膜において、その速度が最も速い。このことは、太陽による加熱に起因する平均温度の上昇、酸素(空気)供給量の豊富さ、海水のはね(splashing)および水の凝縮と乾燥との繰り返しを引き起こす温度の繰り返し変化を組み合わせた効果により説明される。
【0021】
腐食防止対策の推進によって、環境規則の変更(幾つかの毒性化合物の使用の制限)により腐食保護コーティングが改良され、優れた性能を有する複数部分からなるエポキシコーティングおよび他のコーティングが生成されている。また、研究によると、タンクが満タンの場合、バラスト水から酸素を除去することによりバラストタンク内の腐食が全体的に約90%削減されることが分かっている。この効果は、タンクが空のときも酸素レベルが削減された場合には、さらに顕著なものとなる。酸素の除去は、「除去用のガス」、たとえば窒素をタンクに直接加えることにより達成されうる。ガスが溶融酸素を効率的に置換するためには、このガスは、酸素よりも水に容易に溶解しなければならない。
【0022】
いうまでもなく、本発明のこれらの態様はバラストタンクの腐食の問題に対する解決策を提供している。
【0023】
本発明に従ってバラスト水をバラストタンクの中へ移送することに加えて、通常、バラスト水をバラストタンクから排水するためにも用いられるポンプは、従来のバラスト水用ポンプであっても良い。このポンプは、業務用船舶、ドックまたは該当船舶から離れた他の場所に搭載されても良いが、好ましくは、該当船舶の船に搭載される。一般的に、上記のポンプは、100〜12000m/時間、たとえば400〜1000m/時間の能力を備えている。
【0024】
送られてくるバラスト水が通過するフィルタは、多細胞生物を保持することができる十分に小さいサイズの孔を備えていることが好ましい。所望ならば、バクテリアを保持することができる十分に小さいサイズの孔が用いられても良い。フィルタは10〜100m、とくに20〜50mのサイズの孔を備えている。好ましくは、フィルタは、自動バックフラッシュ機構を備えたメカニカルフィルタである。バラスト水の中への窒素の注入は、フィルタ処理の前後で行われうる。しかしながら、フィルタ処理後の注入が好ましい。
【0025】
窒素は、流入して来るバラスト水の一部に注入されても良いし全部に注入されててもよい。本発明の幾つかの実施形態では、バラスト水の流れのうちの一部のみに窒素を加えることがより経済的であることが分かっている。したがって、バラストタンクに向かう水流が分流され、窒素を、分流した流れのうちの一方の流れ、たとえば全水流量の5〜80%、好ましくは8〜30%を含む流れに注入すると非常に満足な結果が得られることが分かっている。しかしながら、注入される窒素の量は、ポンプが停止したときにバラストタンク内のバラスト水が、好ましくは少なくとも110%窒素、さらに好ましくは少なくとも120%窒素、さらに好ましくは少なくとも130%窒素、たとえば最大135%または145%窒素で飽和されている量である。バラストタンク内のバラスト水の窒素含有量は、たとえば溶融ガスセンサを用いて連続的にまたは断続的に監視されることが好ましい。窒素含有量は、経過中、すなわちバラスト水の排出まで監視することが特に望ましい。145%窒素過飽和状態のバラスト水を用いることにより、閉じられたバラストタンク内において、10日から15日の間、すなわち大抵の航海にとって十分に長い間にわたって窒素過飽和状態を容易に維持することができる。
【0026】
本発明にかかる方法および装置に用いられる窒素注入器は、超過気圧状態の窒素ガスを供給する多孔性チューブのような、水の中に窒素を注入して窒素過飽和状態を形成するためのいかなる適切な装置であってもよい。しかしながら、注入器は、ベンチュリ型注入器、すなわち断面壁に窒素注入口が形成されている絞り断面を備えた水導管であることが特に好ましい。このようなベンチュリ型注入器の一つが米国特許第6505648B号に開示されている。窒素ガスは、導管内の水の圧力を超える圧力で流入口ポートへ移送されることが好ましい。しかしながら、ベンチュリ型注入器が用いられる場合、流れる水全部のうちの一部だけに窒素を加えその水を構成に行き渡らせるように配置されたさらなるポンプを備えることが特に好ましい。典型的には、このようなベンチュリ型注入器における窒素流速は、ポンプ容量に応じて、10〜220m/時間、好ましくは25〜100m/時間、さらに好ましくは35〜80m/時間である。
【0027】
窒素注入器への供給のために略純粋の窒素(たとえば、少なくとも90%窒素、好ましくは少なくとも95%窒素、さらに好ましくは少なくとも99%窒素)を用いることが好ましいが、これよりも純粋度の低い窒素であっても、酸性ガスまたは酸化性ガス(たとえば、酸素または酸化物)の含有量が低ければ受け入れ可能である。一般的に、供給ガスの窒素含有量は85%以上であることが好ましい。したがって、窒素/希ガスの混合ガスが用いられうる。しかしながら、これは経済的に理にかなうことはめったにない。酸素含有量は、好ましくは15%未満、さらに好ましくは10%未満、さらに好ましくは2%未満、さらに好ましくは1%未満である。先の場合と同様に、窒素注入器への窒素の供給源は船舶上にあっても良いし船舶外にあっても良い。一般的には、運送中に窒素をさらにバラストタンクに注入することが望まれるので、船舶上に供給源があることが好ましい。供給源は、たとえば窒素生成器、圧縮ガス貯蔵器、液化ガス貯蔵器などのいかなる都合の良い形態をとっても良い。
【0028】
圧縮ガス貯蔵器または液化ガス貯蔵器を用いない場合、ポンプおよび/または熱交換器を窒素供給配管に組み入れることが望ましい場合がある。
【0029】
所望ならば、バラスト水の充填前、充填中または充填後、窒素(または他の酸素除去用ガス)を用いてバラストタンクを洗い流しても良い。また、所望ならば、運送中にヘッドスペースが空気に較べて酸素が少ないことを担保するために、バラストタンクのヘッドスペースに、ガスセンサ、特に窒素センサおよび/または酸素センサが設けられても良い。これに代えて、ガスセンサが、バラストタンクの外側に設けられ、バラストタンクの内側からサンプルを受け取るように構成されても良い。もし、酸素の含有量が増えた場合、ヘッドスペースの窒素含有量が窒素を添加することにより増やされても良い。このようにして、バラストタンクの腐食が削減されうる。また、バラスト水が存在しない場合であっても腐食を阻止するために、窒素の多いおよび酸素の少ない雰囲気に空のまたは部分的に空のバラストタンクを維持することが望ましい。
【0030】
バラストタンクに充填されているバラスト水の処理の生物致死性効果を向上させるために、バラスト水採取ポートからバラストタンクへと導く導管内にさらなる微生物を殺すユニットを組み入れることが望ましい場合がある。これは、バラスト水排出に関連して以下で記載するような微生物を殺すユニットであっても良い(そして、同一のユニットであっても良い)。しかしながら、キャビテーション発生器、たとえば導管内のプロペラ(または、その先端縁部)を用いることが特に好ましい。加熱およびとくに化学処理は好ましくない。
【0031】
バラストタンクには、ヘッドスペース内の過剰気圧を下げるようにおよびヘッドスペースの過少気圧をたとえば空気またはより好ましくは窒素を注入することにより是正するために、弁を設けることが好ましい。典型的には、このような弁は、大気に対して少なくとも40〜120mmHO、さらに好ましくは少なくとも50mmHO、たとえば約60mmHOの差圧により動作状態にされるべきである。差圧が前もって設定された限界値よりも小さい場合、その弁は閉弁されるべきである。単一の弁が過剰圧力および過少圧力に対処しても良いし、または、過剰圧力に対処する弁と過少圧力に対処する弁との組み合わせが用いられても良い。
【0032】
また、ポンプの後に、比較的に粗いフィルタ、たとえば2mm以下、さらに好ましくは1mm以下の孔またはメッシュのサイズを有するフィルタが設けられることが好ましい。また、魚類、海草類または他の大きな破片の採取を防止するように、粗いフィルタ、格子またはメッシュがバラスト水流入口、すなわちバラスト水が周囲の水源(たとえば、海、湖または河川)から進入する場所に設けられることが好ましい。
【0033】
バラスト水が排出されるとき、バラスト水ポンプを用いて、バラスト水が、バラストタンクから、微生物を殺すユニットおよび酸素導入器を通って、周囲の水の中へと排出される。微生物を殺すユニットは、バラスト水の充填から生き延び、運送中にバラストタンク内で成長した微生物を殺すように機能する。いかなる微生物を殺すユニットが用いられても良いが、殺細菌性の化学薬品を添加することにより殺細菌性効果を達成するユニットを用いないことが好ましい。典型的な例としては、排出水を、電気ショック、照射殺菌、オゾン、加熱または圧力変化が挙げられ、具体的には、UV照射または超音波照射、電気ショック(たとえば、ACまたはDCの100〜500V、典型的には200〜300V、最大150Amp、たとえば20〜50Amp)、ベンチュリ型オゾン注入器、キャビテーション装置などが含まれる。電気処理の利用は特に好ましい一つの実施形態である。
【0034】
本発明にかかる特に好ましい実施形態では、装置は、バラストタンクから排出されているバラスト水の中に酸素を注入するように構成されている酸素注入器を備えている。このようにして、バラスト水が排出される周囲の水の酸素含有量に近い酸素含有量を有する水が排出される。こうすることにより、ローカルな水性生物に対する好ましくない影響を防止している。酸素注入器は、たとえば窒素注入器に関連して先に記載されたようにいかなる都合の良い形態を有していても良いが、ベンチュリ型の注入器が好ましい。典型的には、酸素注入器は、酸素供給源、たとえば加圧貯蔵器、空気または酸素富化空気(oxygen−enriched air)からの酸素を用いうる。たとえば、最大40%の酸素含有量を有する酸素富化空気を用いることができる。これに代えて、酸素注入器は、窒素発生器から酸素の供給を受け取りうる。装置内の微生物を殺すユニットが窒素の注入または他の酸素不足ガス(oxygen−poor gas)の注入を含む場合、酸素注入器は、微生物を殺すユニットの下流側にあることが好ましい。
【0035】
ガス注入器(たとえば、窒素または酸素の注入器)の下流側に、導管が、静的混合機、たとえば第WO03/016460号に記載されているように流れ方向に対して+45および−45に交互に配置されたひだ(corrugation)を有している波状バッフルを備えていることが好ましい。
【0036】
バラスト水が本発明に従って処理される船舶は、単一のバラストタンクを備えていても良いしまたはさらに一般的には二つ以上のバラストタンクを備えていても良い。これらはコンパートメントに区切られていても良い。船舶には、運送中に、タンク間またはコンパートメント間でバラスト水を移送するためのポンプが設けられていても良い。この場合、装置は、移送前、移送中または移送後にタンクまたはコンパートメントの中に窒素を注入するための手段が設けられることが好ましい。さらに、所望ならば、このような移送のためのポンプ回路は、バラスト水を窒素過飽和状態に維持するために、窒素注入器を組み込んでも良い
上述のようにバラストタンクに充填されているバラスト水に窒素を加えることが非常に好ましいが、濾過、特に微細な孔のサイズによる濾過(たとえば、バグフィルタを用いて)と、バラスト水採取ポートからバラストタンクまでのおよび/またはバラストタンクからバラスト水排出ポートまでの導管に配置される微生物を殺すユニット、特に電気的に(たとえば、電気ショックで)殺すユニットとの組み合わせたものは、それ自体新規性があり、本発明のさらなる態様を形成する。したがって、この態様では、本発明は、バラスト水処理方法を提供している。かかる方法は、水を、水源(たとえば、周辺の海、湖または河川)からフィルタを通して水上を航行している船舶のバラストタンクへポンプで移送することと、水をバラストタンクから船舶の周りの水の中へポンプで移送することと、バラストタンクへおよびバラストタンクからポンプにより移送される水に、船舶の周囲の水の中へと排出するまえに微生物を殺す処理を受けさせることとを含んでいる。
【0037】
また、さらなる態様によると、本発明は、水上を航行する船舶のバラスト水を処理するための装置をさらに提供する。かかる装置は、水をフィルタを通してバラストタンクの中へ移送するための第一のポンプと、第一のポンプにより移送されうる水を通すフィルタと、水を第一のポンプからフィルタを通してバラストタンクへ移送するための導管と、バラストタンクへまたはバラストタンクからポンプにより移送されている水内の微生物を殺すように構成されている微生物を殺すユニットとを備えている。
【0038】
以上のような方法および装置では、先の場合と同様に、酸素不足のバラスト水の排出によるローカルの水性生物への望ましくない影響を回避するために、排出まえのバラスト水中への酸素注入を含むことが好ましい。
【0039】
本明細書記載の発明の他の態様は、上記の従来の方法と比較してバラスト水の中の不必要な生物を殺す上で非常に効果的であるバラスト水を処理する方法および装置に関するものであり、バラストタンクの腐食に対する保護を向上させたものである。
【0040】
以上のように、一つの態様によれば、本発明は、バラスト水を処理する方法を提供している。かかる方法は、水を第一の容器からポンプにより移送することと、その水に蒸気を加えることと、その水にガス状の材料をさらに加えることと、その水にキャビテーション作用を施すことと、その水を第二の容器に移送することとを含んでいる。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、水を第一の容器から移送するポンプを備えているバラスト水を処理するためのシステムを提供している。かかる装置は、水に、蒸気を加えるための手段と、水にガス状の材料をさらに加えるための手段と、水にキャビテーション作用を施すための手段と、水を第二の容器へ移送するための手段とを備えていることを特徴としている。
【0042】
さらに他の態様では、本発明は、上述の装置に用いられるバラスト水を処理するための装置を提供している。かかる装置は、バラスト水を液体処理装置に供給する液体流入配管と、流入口配管に接続されている採取チャンバと、取チャンバに接続されている円錐状部と、円錐状部に接続されているチューブと、チューブに接続されているキャビテーションチャンバと、キャビテーションチャンバに接続されているとともにキャビテーションチャンバに接続から液体を移送する液体流出口チューブと、蒸気およびさらなるガス状の材料を採取チャンバへ供給する少なくとも一つのガス供給チューブとを備えていることを特徴としている。
【0043】
他の態様では、本発明は、上述の装置内で用いるバラスト水を処理するための装置を提供している。かかる装置は、液体を液体処理装置に供給する液体流入口配管と、流入口配管に接続されているテーパ部と、テーパ部に接続されているキャビテーションチャンバと、キャビテーションチャンバに接続されているとともにキャビテーションチャンバから液体を移送する液体流出口チューブと、蒸気およびさらなるガス状の材料を採取チャンバへ加えるための手段とを備えていることを特徴としている。
【0044】
キャビテーションをベースにしたシステムは、バラスト水中に存在する生物を生体細胞および細胞膜を効果的に破壊するパルス性衝撃波に一致する強烈な物理的状態に晒すようになっている。統合プロセスにより、水中に溶解している酸素のほとんどが除去され、バラストタンク内に略無酸素状態に管理された雰囲気を形成することが可能となる。略無酸素状態の雰囲気は、パルス性衝撃から生き残った生物をさらに殺し、他の生物が生き残るための余剰の酸素を必要とし、他の生物の再増殖の可能性を排除するように作用する。また、略無酸素状態の雰囲気は、タンク内の腐食保護コーティングシステムまたは腐食保護塗料システムの表面酸化を低減し、腐食速度を著しく効果的に約90%以上減少させる。バラストタンク内の無酸素雰囲気は、タンク内における爆発の危険性を排除する。このことは、オイル、化学薬品または航海中に爆発性の雰囲気を発生しうるその他の荷物を搬送するタンカーに特に関連する。溶解している酸素を水から取り除くために適用される手段の結果として、その水は、過飽和状態となるため、生物、特に複雑な循環システムを備えた生物をガス病に晒すことになる。さまざまな研究によれば、死亡率は高い。それ程複雑ではない循環システムを備えた他の生物もまた過飽和状態に晒されると傷つき易いことが証明されている。このことは、過飽和の程度が上昇する場合に特に良く当てはまる。
【0045】
要約すると、酸素除去ガスを含有する蒸気が、採取、排出またはその両方において、注入ポイントまたは注入ポイント近傍でバラスト水配管に加えられる。こうすることにより、ポンピング効果またはブースティング効果(pumping or boosting effect)が生じる。この効果は、水の速度を上昇させるとともに結果的に水の内部圧力を減少させて、バラスト水を装置に搬送するために用いられる。この蒸気とガスとの混合物は、水のガス組成を変え、したがって蒸気点を含むその特性値を変える。上記の行程のあるポイントにおいて、キャビテーションが発生するレベルまたはそのレベルの近傍に圧力が到達し、パルス性衝撃波と一致する物理的状態が形成される。これらの状態により、水中の生物のほとんどが滅ぼされる。
【0046】
水の中に注入された蒸気/ガスの組み合わせにより、水の中の溶融酸素のほとんどの部分が置換される。キャビテーションは、それ自体が脱酸素の行程を促進させ、水の中に残っている酸素のレベルをさらに減らしている。キャビテーションのあと、流れは、液体とガスとの二層となる。
【0047】
液体層が飽和または過飽和の状態であるので、ほとんど除去された酸素からなっているガス層は、安定なまま留まり、液体の中へ溶けて戻ることはない。
【0048】
処理された水の中の酸素を交換することにより、キャビテーションステップから生き残った生物を殺すことが促進され、タンクの腐食およびコーティングの酸化が防止される。蒸気を加えることにより水の通過が促進されるので、エネルギー効率の良い方法で安定なキャビテーションを得るために必要な流速が達成される。これにより、超大型のポンプの必要性が排除される。また、合計すると大きな表面積となる非常に多数の小さな泡の形成を促進されるので、酸素ガスの交換に有益である。液体中にガスを溶解させる媒体として蒸気を用いることは、従来の方法よりも非常に効率がよい。
【0049】
上記のガスは、ガス状の材料、すなわちSTPでガス状である水以外の材料のことである。採取時点で水を処理する目的で、上記のガスは、15%モル未満の酸素、好ましくは10%モル未満の酸素、可能ならば5%モル未満の酸素または1%未満の酸素であり、その残りが、窒素または希ガスである。排出時点においては、上記ガスは、15%モルを超える酸素であることが好ましい。したがって、水は、海からポンプにより取り入れられてからバラストタンクの中に移送されるまでまたは船外に排出されるまでの利用可能な短時間の範囲において効率よく処理されうる。この方法は、さらなる程度の生物排除または他の所望の特性値を達成するために、他の処理原理、処理装置または処理方法と組み合わされても良い。これは、バラスト水排出ポートにおける受理設備に関するものであってもよい。
【0050】
以上のように、船舶が目的の荷物を積み込むまえにバラストタンクに充填している水を海に排出することは一般的な慣習である。関連する国内法令によれば、船舶がバラスト水を排出しなければならない海岸からの距離が規定されている。たとえば、カナダの法律は、船舶がバラストタンクの水を空にするための海岸線からの距離を200海里と規定している。
【0051】
これらの要件に対する順守は、バラストタンクが海岸線から適切な距離の所で空にされているか否を判定するように試みる該当国の沿岸警備当局により評価される。船舶のバラストタンクを該当する法律に従って空にしたという主張の証明は、とりわけ船舶がバラストタンクを空にする上で必要となる距離のために、現在不可能である。
【0052】
したがって、海岸警備当局が該当国の法律が順守されているか否かを決定することができるようなシステムの必要性がある。
【0053】
したがって、他の態様では、本明細書記載の本発明は、制御ユニットとデータ格納手段とを備えているバラスト水制御システムを提供している。この制御ユニットは、バラスト水タンクを空にしたという知らせと船舶の座標の知らせとを受信し、データ格納手段内に両方の情報を格納するように構成されている。
【0054】
データ格納手段を問い合わせることにより、海岸警備当局は、バラスト水タンクが排出された正確な位置を割り出す手段を備えている。
【0055】
制御ユニットおよびデータ格納ユニットはいかなる適切な構成であってもよい。たとえば、ハードディスクドライブなどの如きデータ格納手段を有している従来のマイクロコンピュータが提供されても良い。これに代えて、上記のシステムが、船舶の制御システムに組み入れられ、統合されても良い。
【0056】
所望ならば、データ格納手段は、船舶から離れていても良いし、また、複数の船舶のバラスト水の採取および/または排出に関するデータを格納しても良い。このようなシステムの一例として、インターネットによるアクセスが可能なデータベースが挙げられる。
【0057】
船舶の位置はいかなる適切な手段を用いて決定されても良い。好ましくは、正確さを担保するために、全地球測位システム(GPS)を用いて、船舶の座標を制御ユニットに提供される。船舶の座標は、船舶のナビゲーションシステムを用いた通信により提供されても良い。これに代えて、その位置は、無線送信機を用いた三角測量の如き他の方法を用いて提供されてもよいし決定されても良い。
【0058】
制御ユニットは、たとえばバラストタンクが空であるまたは空にされたことを示している、バラスト水排水ポンプまたは制御システムからの制御信号により、バラストタンクが空にされたことを判断する。これに代えて、制御ユニットは、たとえば水位の適切な変化によりバラストタンクが空にされていることを示す、バラスト水タンク内にまたはその近傍に配置されているレベルセンサまたは他の適切なセンサからの信号を受信しても良い。
【0059】
好ましくは、バラストタンクが空になっていることを示す信号は、タンクが完全に空にされた知らせを含む。これは、たとえば水位センサによるものであっても良いし排出ポンプの稼働時間を示すタイマーによるものであっても良い。
【0060】
タンクが空にされたことを示す知らせおよびタンクが空にされたときの船舶の位置を示す知らせはデータ格納手段内、たとえばデータベース内に格納されことが好ましい。
【0061】
また、制御ユニットおよびデータ格納手段は、空にする時間、充填する時間、水温などを記録するように構成されうる。また、制御ユニットおよびデータ格納手段は、適切なセンサを用いて、タンク内のバラスト水状態または塩分濃度、窒素含有量などの如きバラスト水に関する他の情報を記録するように構成されても良い。これは、船舶の全航海行程にわたって記録および格納されても良い。
【0062】
また、データベースおよび/または制御ユニットは、ある国の法律に関する情報が提供されても良いし、また、船舶の位置をその法律と比較し、その法律が順守されているか否かを示すように構成されても良い。したがって、沿岸警備当局は、船舶が法律を順守しているか否かを容易に判断することができる。
【0063】
船舶のデータは、沿岸警備当局が港のドック入るまえにその船舶を訪問する必要がないように、適切な通信リンクを介して沿岸警備当局により遠隔にアクセス可能であることが好ましい。
【0064】
船舶データは、沿岸警備当局に直接伝達されても良いし、またはこれに代えて、沿岸警備当局に代わってそのデータを検証してから沿岸警備当局にその旨を通知することができる第三者に伝達しても良い。このような第三者は、たとえばDNVの如き組織であっても良い。このような構成では、船舶の位置は、その船舶のデータとは独立して、たとえば衛星追跡により求められうる。
【0065】
以上のように、一つの構成では、バラスト水の状態がバラストタンク内にまたはその周辺に配置されている適切なセンサを用いて、船舶の航海全体にわたって監視されうる。このようにして、バラストタンク内の状態を最適レベルに維持することができる。
【0066】
しかしながら、長期の動作期間が経過すると、センサは、特にバラストタンク内に配置された場合には劣化の恐れがある。
【0067】
したがって、この問題を解決するために、センサは、バラストタンクの外側に配置され、一または複数の適切な導管を用いてバラストタンクに連通されていることが好ましい。これらのセンサは、バラスト水をバラストタンクに戻すことにより、バラスト水の状態を継続して監視している間、バラストタンクの容量を維持するように構成されていることが好ましい。
【0068】
したがって、さらなる他の態様では、バラスト水タンク監視装置が提供されている。かかるバラスト水タンク監視装置は、第一の端部がバラスト水タンク内に配置され第二の端部が少なくとも一つのセンサと連通するようになっている少なくとも一つの導管を備えており、当該少なくとも一つのセンサがバラスト水タンクの外側に配置されている。
【0069】
上記のセンサは、複数のパラメータ、たとえば酸素含有量、窒素含有量、塩分濃度、pHおよび温度などを監視するように構成されている。こうすることにより、長い期間にわたってバラスト水およびバラストタンクの変化を密接に監視することが可能となる。
【0070】
上記のセンサは、バラストタンク内のさまざまな位置に遠位端部を配置している複数の導管からバラスト水を受け取りうる。好ましくは、このセンサは、各バラストタンクから、特に従来到達することが最も困難であった船舶底部のバラストタンクキャビティからバラスト水を受け取るように構成されている。
【0071】
バラスト水は、センサからバラストタンクの一部分にまで延びている複数の導管を通じて、センサと繋がりうる。これに代えて、センサは、バラストタンク内の特定の位置からバラスト水を受け取ることができるように、バラストタンクまで延びるように構成されている一または複数の延長可能な導管と接続されてもよい。この実施形態では、導管は、バラストタンクの周囲において導管を正確に案内するように、バラストタンクに固定されたガイド上またはトラック上を移動するように構成されうる。
【0072】
また、以上の構成を上述のバラスト水制御ユニットに接続することにより、バラストタンク内の状態を監視し、GPSおよび時間データとマッチすることができるようになる。
【0073】
バラストタンクの充填中およびバラストタンクを空にする間、水位の変化にともなってガスをバラストタンクに供給することまたはバラストタンクから排出することを可能とすることが必要不可欠である。従来の船舶には、空気の移動を可能とするように開弁することができるバラストタンク弁が設けられる。これに加えて、船舶の航海全体にわたってバラストタンク内の温度変化を可能とする弁を設ける必要がある。たとえば、熱帯地方にはいるとバラストタンク内の温度が上昇することにより、ヘッドスペースの圧力が上昇する。船舶輸送分類協会(shipping classification society)は圧力の上昇(または降下)を回避するために適切な換気を要求している。
【0074】
バラストタンク内に窒素を注入する場合、本明細書に記載されているように、窒素の注入に従って空気がバラストタンクから排出されることを可能とする必要がさらにある。
【0075】
したがって、バラストタンク内の圧力を調整することができ船舶輸送分類協会の要件に従ってバラストタンクに対して適切な換気を提供する弁の必要性がある。
【0076】
したがって、さらなる態様では、船舶バラスト水タンク用の圧力リリーフ弁が提供されている。かかる船舶バラスト水タンク用の圧力リリーフ弁は、第一の部分と、第二の部分と、第一の部分と第二の部分との間に配置され、使用に当たり、第一の部分と第二の部分との間にシールを形成するように液体を含有するように構成されている中央部分とを備えている。
【0077】
たとえば、導管がU字型に曲げられた配管から形成され、中央部分がU字型配管内に形成され、第一の部分および第二の部分が中央部分からほぼ鉛直に方向に延びている。この構成は、上側デッキがバラストタンクの頂部よりも非常に高くなっている船舶において利用する場合に非常に都合がよい。さらに、バラストタンクから上側デッキレベルにまで延びている既存の導管にぴったりと合って都合がよい。
【0078】
あるいは、第一の部分および第二の部分がおおむね同軸上の導管により形成されても良い。この構成では、第一の部分の遠位端部が第二の部分にまで延びている。この第二の部分は、シールされた端部を有しある量の流体を受け入れるように構成されているおおむねチューブの形態をしている。したがって、中央部分は、第一の部分の遠位端部と第二の部分のシールされた端部との間に形成されている。この構成は、上側デッキのレベルがバラストタンクの頂部とおおむね同一のレベルに位置している場合に、非常に好都合である。
【0079】
一定の量の液体は、バラストタンク内の最大許容圧力に応じて選択されることが好ましい。
【0080】
動作において、好ましくは、第二の部分がバラストタンクに接続され、第一の部分が大気と連通するように構成されている。たとえば窒素の注入によりバラストタンク内の圧力が上昇すると、空気が、置換され、中央部分の流体を泡となって通過する。
【0081】
いうまでもなく、中央部分は、実質的に空気ロックとして作用し、ガスが、第一の部分と第二の部分との間の圧力差と中央部分に含まれる流体の高さにと応じていずれかの方向に流れることを可能としている。
【0082】
いずれの構成であっても、ガスが迅速に一または複数のバラストタンクに進入するまたはそこから出ていくことを可能とするように開弁することができる別個の弁が設けられうる。このことは、バラストタンクを充填するまたはバラストタンクを空にするときに好ましい場合があり、窒素の注入中においては、上述の弁は、ヘッドスペース内に希ガスを保持するために用いられても良い。
【0083】
いうまでもなく、上記の弁は、バラスト水タンクの一体部分であっても良いし、または、既存のバラスト水タンクに都合良く付け加えることができる弁であっても良い。
【0084】
いうまでもなく、以下の実施形態、明細書および添付の特許請求の範囲に記載の特徴は、完全なバラスト水処理システムを提供するために、都合に合わせて分離してまたは相互に組み合わせて用いることができる。
【0085】
一例としておよび添付の図面を参照して、本発明の実施形態をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
図1を参照すると、バラストタンク102とバラスト水ポンプ103とを備えている船舶101(点線により図示)が示されている。
【0087】
ポンプ103は、バラスト水を、導管104および粗いフィルタ105を通して汲み上げ、1mmフィルタ106、25μmフィルタ107および導管108、109、1010、1011を通して、バラストタンク102の中へ移送する。水流量のうちの10%が導管109を通り、さらなるポンプ1012によりベンチュリ型窒素注入器1013を通過させられる。ベンチュリ型窒素注入器では、空気コンプレッサ1014および窒素生成器1015からの加圧窒素が上記のストリームの中へ注入される。窒素が加えられたストリームと窒素が加えられていないストリームとは、導管1011において合流され、約130%の飽和度で、バラストタンク102に進入する。窒素をブクブクと泡立てて放出すると、タンクのヘッドスペース1016が窒素で充填される。バラストタンク102には、モニター1019に接続された窒素センサ1017、1018が設けられている。また、ヘッドスペースには、弁1027(図8および図9には二つの異なる構成の弁が示されている)が設けられている。この弁は、ヘッドスペースの過剰圧力または過少圧力(<60mmHO)に応答して開弁される。これに代えて、弁1027が、ヘッドスペースの過剰圧力を逃がす機能を有しても良いし、また、任意選択的に追加される配管1020が、ヘッドスペース内および/または空タンク内の窒素含有量がある所望のレベル未満にまで下がった場合に、窒素を注入する機能を有しても良い。
【0088】
図2には、本発明にかかるバラスト水処理システムを備えているタンカーまたはその他の種類の船舶でありうる従来の二重壁構造を備えた船舶が示されている。かかる船舶は、二重壁構造の船体を備えており、その二重の壁の間に、バラストタンク3が搭載されている。また、この船舶は、推進機関4により駆動される。ポンプ5は、水を、周囲の海からバラスト水処理ユニット7を通して移送させる。窒素は、空気から酸素および窒素を分離させる膜技術などを用いた呼吸ユニットまたは制御大気通気ユニット9から、バラスト水処理ユニット7へ供給される。また、バラスト水処理ユニットには、過剰の熱(たとえば、排気ガスからの熱)またはボイラー8から生成される蒸気が供給される。蒸気発生器は、ほとんどの船舶にすでに一般的に取り付けられている。この蒸気は重油を加熱するために用いられている。バラスト水から放出された酸素は、それと同時にバラスト水システムおよびバラスト水タンクから取り除かれ、個別のタンクまたはタンクの集合に接続されている換気装置29を通るかまたは配管11、12を介した一体式タンク換気システムを通り、そして、ガス制御ユニット9を通って大気中へ放出される。水は、配管10を通じてバラストタンクの中へポンプにより移送される。配管11、12は、バラストタンクの頂部をガス制御ユニット9へ繋いで、バラストタンク内のガス含有量を制御している。この構成が実現可能でない船舶の場合、換気は、従来直接にデッキ上方に向けて行われていたが、空気が個々のタンクの中に吸引されないことを担保するために、過剰圧力弁により管理される。また、図2に示されているシステムは、バラスト水処理ユニット7の前に任意選択的にフィルタユニットを備えても良い。
【0089】
図3には、バラスト水処理ユニット7が示されている。このバラスト水処理ユニット7は、流入口側バラスト水配管6と一体になっているシリンダ形状の採取チャンバ21を備えている。シリンダ形状採取チャンバ21の後に、円錐形状のセクション22が形成され、そして幅狭のシリンダ形状のチューブ23が形成されている。シリンダ形状のチューブ23は、キャビテーションチャンバ24として作用する幅広のセクションまたはチャンバへ接続されている。円錐形状のセクション22および/または幅狭のシリンダ形状のチューブ23は、らせん状の縁部または羽根部32を備えうる。この羽根部32は、回転運動を誘発して、流体を通過させる推進力を引き起こすようになっている。
【0090】
採取チャンバ21には、一または複数の注入チューブ25が挿入されているかまたは組み入れられている。この/これらの注入チューブ25は、外部ユニット8、9から蒸気および窒素ガスを受け取り、そのガスを採取チャンバ21へ移送するようになっている。これらのガスは、注入チューブ25に入る直ぐ前の混合チャンバ(図示せず)内で混合されても良いし、流入口側バラスト水配管6の周りの環状のマニフォールド26内で混合されても良い。ガス混合物は、採取チャンバ21内で水と混合される。採取チャンバ21の周辺において複数のガス注入チューブ25を用いることが好ましい。
【0091】
先と場合と同様に構成されている一または複数の小さなガス流出チューブがキャビテーションチャンバ24に挿入されても良いしまたは組み込まれても良い。このチェンバの周辺の開口部は、除去された酸素を取り除くための換気装置として作用する。これらのチューブはガス流出口マニフォールド28に至る。マニフォールド28は、通気配管29により、ガス制御ユニット9に接続されている。キャビテーションチャンバ24の周辺において複数のガス流出チューブ27を用いることが好ましい。しかしながら、単一のガス流出チューブ27のみを用いることも可能である。
【0092】
動作において、海水は、バラスト水用ポンプ5によりシリンダ形状の採取チャンバ21の中へ、さらに、円錐形状のセクション22を通ってシリンダ形状のチューブ23へ、それから、キャビテーションチャンバ24の中へと供給される。キャビテーションまたは準キャビテーションが発生する物理的状態は、バラスト水の粘稠度、すなわちその蒸気点を操作し、内部流体圧力を下げることにより達成される。シリンダ形状のチューブとキャビテーションチャンバとの間の縁部20において、キャビテーションは開始される。シリンダ形状のチューブでは、流体の速度が上昇し、静水圧が、修正されたバラスト水(流体)の蒸気点にまたはその近傍にまで下降し、泡が形成されることになる。らせん状の縁部または羽根部32は、シリンダ形状のチューブ23とキャビテーションチャンバ24との間の縁部20における飛躍的な圧力の変化と相俟って、上記の泡の破壊を開始する。これらの作用は、流体力を起こし、泡が内破し、圧力インパルスとしてエネルギーを放出し、温度をピークにまで上昇させる。
【0093】
水の速度は、蒸気と窒素との混合物がガス供給チューブからの水に進入することによるジェット作用によって上昇される。蒸気は、速度上昇効果の発揮に必要とされる量が非常に制限された量でしかないので、水温に対しては、無視できる程度の影響しか及ぼさない。この速度上昇効果は、窒素の密度の急速な変化のため窒素の体積が上昇するので、さらに促進される。泡により、水のレオロジー的な物性、たとえば総合密度および総合粘度が変わる。窒素が周辺の水により冷却されるに従って、一部が泡を形成し、一部が水に徐々に溶けていく。この工程により、酸素の放出が開始される。
【0094】
シリンダ形状のチューブ23を通過し、挿入された縁部20の作用に晒されたあと、形成された泡は、キャビテーションチャンバ24への進入時点において崩壊していく。泡の内破により、水中に存在する有機細胞膜および有機細胞組織が破壊される。飛躍的な圧力変化を発生させるキャビテーションチャンバの特徴的な設計により、安定したかつ制御されたキャビテーション作用が発生する。
【0095】
キャビテーション作用の効果は、水中に存在する酸素の大部分が放出されることにある。この酸素は、キャビテーションチャンバの周囲のガス流出チューブ27によりまたは船舶タンク換気システムを通じて取り除かれる。流体を飽和するに至っていない余剰の窒素により、キャビテーションにより放出された酸素が置換され、プロセスの途中でまたは水がバラストタンク3に入ったあと、水による再度の吸収および溶解が防止される。
【0096】
バラスト水処理ユニットは、シリンダ形状採取チャンバ21と、円錐形状のセクション22と、シリンダ形状のチューブ23とを備えているものとして記載されている。これは、現在における本発明の好ましい実施形態である。しかしながら、これらの部材は、図4に示されているように、単一のテーパ部33と交換することが最適である場合もある。また、ガスは、テーパセクション33の円周に沿ってかつ長手方向に沿って設けられた複数のチューブ状の開口部34から、すなわち多段式注入方式で注入されても良い。この実施形態では、環状のガスマニフォールドはテーパセクション33の外側上のかつこのテーパセクションの全長に沿ったチャンバまたはボックス35として設計されうる。
【0097】
酸素含有量が典型的には2mg/mlと低く活性生物が少ないバラスト水が、キャビテーションチャンバからバラストタンクへ供給される。この低い酸素含有量は、除去作用または殺戮作用をさらに向上させ、再生の可能性を排除するように作用する。酸素の存在によるまたはそれに依存する腐食およびコーティングの劣化が著しく削減される。
【0098】
バラストタンクを空にするとき、ガス制御ユニット9は、窒素をバラストタンクに供給して、酸素または空気の侵入を防止し、これにより、タンクが水を含んでいないときも酸素量の少ない雰囲気を維持するように管理している。このガスは配管11を通じて供給されるようになっている。従来のシステムでは、バラストタンクが水を含んでいないときに、通気用のチューブが外部の空気をバラストタンクに供給していた。しかしながら、本発明は、バラストタンク内に非腐食性雰囲気を担保する閉鎖型ガス制御システム(closed gas control system)を備えている。誰かがタンク内に入ろうとしている場合、ガス制御ユニット9は、配管12を通じて、窒素雰囲気を正常な呼吸可能な空気と置換する。
【0099】
換気用の配管11、12が含まれていない場合、換気は、換気装置(図示せず)を通じて空気を入れることにより担保される。
【0100】
図5は、バラスト水処理のための本発明にかかる構成を示す概略図である。矢印は、船舶がバラスト水を充填しているときの流れの方向を示している。水は、配管36を通じて、周辺の海から船舶に入って来ている。この水は、第一の3方向制御弁40により、ポンプ5に案内されている。ポンプ5は配管6を通じて水処理ユニット7に給水する。蒸気および窒素ガスは、配管30、31により、水処理ユニット7へ供給され、除去された酸素は、配管29およびガス制御ユニット9を通じて取り除かれる。最終的には、その酸素は配管39により大気中に排出される。処理後、水は、配管10および第二の3方向弁41を通じて、バラストタンク3の中へポンプにより移送される。水はバラストタンク3の中のガスを置換し、そのガスは配管12を通じて除去される。
【0101】
排出は、水がポンプにより再び上述のようにシステムを通過、処理されるように、構成されても良い。このとき、水が、窒素に代えて、注入用の配管31を通じて酸素または空気にさらされても良い。この目的は、排出の行われる港または領域がすでに酸素レベルが不十分となっている場合に酸素量の少ない水を排出しないようにすることを担保することにある。このことが図6に示されている。バラスト水は、配管37、第一の3方向弁40、ポンプ5、水処理ユニット7および第二の3方向弁41を通じてバラストタンク3から出され、配管38を通じて周辺の海へ排出される。この場合、蒸気は、配管30を通じて供給され、空気または酸素は配管31を通じて供給される。したがって、海に排出される水は酸素含有量を回復している。バラストタンク内に酸素が除去された雰囲気を維持するために、バラストタンク3から取り除かれる水は、配管11を通じてガス制御ユニット9から供給される窒素ガスと置換される。
【0102】
本発明が船舶内のバラスト水の処理のためのシステムおよび方法として記載されているが、他の用途に用いられても良い。そのような一つの用途は、廃水処理、たとえば下水処理である。夏の時期には、産業用のプラント、たとえば廃棄物焼却炉から余ったエネルギーが利用可能となる。焼却炉は、キャビテーションユニットを駆動するエネルギーおよび酸素除去用のガスを供給しうる。二酸化酸素は酸素除去用のガスとして用いても良い。というのは、上記の状態下では、このガスの腐食作用が少しも発生しないからである。他の用途は、大規模空調プラントまたは飲食物処理産業におけるバクテリアレベルの管理である。これらの他の用途は、本発明の一部を形成し、バラスト水とは異なり下水などにのみ適用するために変形された添付のクレームに記載されうる。
【0103】
図7は、船舶が沿岸警備当局へバラストタンクを空にした場所および日時を示すデータを提供する構成を示している。
【0104】
船舶701には、バラストタンク702と排出ポンプ703が設けられている。排出ポンプは、船舶の制御システム(図示せず)により制御され、バラスト水制御ユニット705に向かう制御回線704に信号を送信するように構成されている。バラスト水制御ユニット705は、GPS受信機706から船舶の座標を示すGPS信号を受信する。また、制御ユニット705は、沿岸警備当局708に対しておよびそこからデータを送受信するための衛星用送受信機707へ接続されている。
【0105】
動作において、制御ユニットは、バラスト水を排出ための要件、すなわち海岸からの距離を示すデータを沿岸警備当局から受信する。このデータは制御ユニット内に格納される。制御ユニットは、GPS受信機から船舶の座標を受信し、このデータを格納する。排出用ポンプが作動されると、制御ユニット705は、制御信号を受信し、それらのポンプが作動された時間および場所を記録する。次いで、このデータは、自動的に沿岸警備当局へ伝達され、該当する法律を船舶が順守しているか否かを知らせる。
【0106】
他の実施形態では、制御ユニットは、バラストタンクを廃水するための法的な限界値に近づいていることを船舶の乗船員に知らせるように構成されうる。
【0107】
図8には、第一の構成に従うバラストタンク圧力弁が示されている。
【0108】
弁801は、第一の部分802がU断面の中央部803に接続されて形成されている。このU断面803は、第二の部分804に接続されている。第一の部分802および第二の部分804は縦長の導管805に接続されている。この導管は、その下側でバラストタンク(図示せず)に接続され、その上側で大気に接続されている。導管805には、充填中および空にする間にタンクの中へおよびタンクの外へ空気を移動させることを可能とするための弁806が設けられている。
【0109】
動作において、バラストタンクは弁806を開弁して充填される。バラストタンクが満タンになると、弁806が閉弁される。次いで、窒素が、ヘッドスペースの中に注入され、ヘッドスペース内の空気を移動させ、圧力を上昇させる。圧力が上昇するに従って、空気は
U形状の部分803内の液体807の中をブクブクと泡を立てながら通過する。液体のレベルにより、空気がブクブクと泡を立てて通過する圧力が規定される。
【0110】
いったん空気が置き換えられると、この弁は、第一の部分と第二の部分との差圧の変化に従って、バラストタンクの中へおよびバラストタンクの外へガスを移動させることができる。
【0111】
図9は、第二の構成にかかるバラストタンク圧力弁が示されている。
【0112】
弁901は、シールされたチューブまたは「ドラム」として形成された第二の部分の中へ第一の部分902が延びている構成に形成されている。第一の部分と第二の部分との間には、接続部分903によりシールが形成され、第二の部分903内にキャビティが形成されている。このキャビティ905は、導管906を通じて、バラストタンク(図示せず)と連通している。
【0113】
この構成では、キャビティ905内の圧力は、バラストタンク内の圧力が上昇するに従って上昇する。第二の部分903は、液体907で部分的に充填され、この液体が第一の部分と第二の部分との間の空気ロックとして作用するようになっている。第一の構成にかかる弁を参照して先に記載した同様の方法で、圧力が上昇すると、ガスは、液体をブクブクと泡を立てて通過し、第一の部分902を通って大気中に排出される。同様に、バラストタンク内における過剰の圧力は弁によって自動的に逃がされる。
【0114】
いうまでもなく、本明細書記載のタイプのバラスト水圧力弁を実現するために、一連の範囲の異なる導管構成および液体レベルを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明にかかる装置を示す模式図である。
【図2】船舶に搭載されその構造と一体化されている装置を示している(この図に用いられている具体的な船舶は船体が二重壁構造となっている船舶である)。
【図3】閉止回路型の水処理装置の断面を示す概略図である(C3)。
【図4】水処理装置の他の実施形態の断面を示す概略図である。
【図5】周辺の海からの水で船舶内のバラストタンクを充填する場合の構成を示している。
【図6】水を周辺の海に排出する構成を示している。
【図7】船舶がデータを沿岸警備当局へ伝達する構成を示している。
【図8】第一の構成のバラストタンク圧力弁を示している。
【図9】第二の構成のバラストタンク圧力弁を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水を処理するための方法であって、
水を、水源(たとえば、周囲の海、湖または河川)からフィルタを通して、水上を航行している船舶のバラストタンクへと、ポンプにより移送することと、
前記ポンプによる移送を停止したときの前記バラストタンク内の前記水が、当該水の窒素飽和含有量を超えているとともに酸素飽和含有量未満であるように、前記水のうちの少なくとも一部の溶融窒素含有量を、前記窒素飽和含有量を超えるレベルまで上昇させることと、
前記バラストタンクのヘッドスペース内を、大気の窒素含有量(モル%)よりも大きな窒素含有量を有する雰囲気に維持することと、
水を、前記バラストタンクから前記船舶の周辺の水の中にポンプにより移送させることと、
前記バラストタンクから前記ポンプにより移送される前記水を、前記船舶の周辺の水の中に排出するまえに、微生物を殺す処理を加えることと
を含む、方法。
【請求項2】
水上を航行する船舶のバラスト水を処理するための装置であって、
水を、フィルタを通してバラストタンクの中に移送するための第一のポンプと、
前記第一のポンプにより水が通過させられうるフィルタと、
水を、前記第一のポンプから前記フィルタを通して前記バラストタンクまで搬送するための導管と、
前記第一のポンプから前記バラストタンクまでポンプにより移送されている水の中に窒素を注入するための窒素注入器と、
任意選択的な、前記窒素注入器に取り付けられているまたは取り付け可能な窒素供給源と、
水を、前記バラストタンクから導管を通って前記船舶の外へ移送するための(任意選択的に前記第一のポンプであることが好ましい)第二のポンプと、
前記バラストタンクから前記船舶の外へポンプにより移送されている水の中の微生物を殺すように構成されている微生物を殺すユニットと
を備えてなる、装置。
【請求項3】
バラスト水を処理するための方法であって、
水を、水源(たとえば、周囲の海、湖または河川)からフィルタを通して、水上を航行している船舶の前記バラストタンクへと、ポンプにより移送することと、
水を、前記バラストタンクから前記船舶の周辺の水の中へポンプにより移送させることと、
前記バラストタンクに対しておよび前記バラストタンクから前記ポンプにより移送される前記水を、前記船舶の周辺の水の中に排出するまえに、微生物を殺す処理を加えることと
を含む、方法。
【請求項4】
水上を航行する船舶のバラスト水を処理するための装置であって、
水を、フィルタを通してバラストタンクの中に移送するための第一のポンプと、
前記第一のポンプにより水が通過させられうるフィルタと、
水を、前記第一のポンプから前記フィルタを通して前記バラストタンクまで搬送するための導管と、
前記バラストタンクに対しておよび前記バラストタンクからポンプにより移送されている水の中の微生物を殺すように構成されている微生物を殺すユニットと
を備えてなる、装置。
【請求項5】
バラスト水が前記船舶から排出されるまえに該バラスト水に酸素が加えられる、請求項1および3のうちの一つに記載の方法。
【請求項6】
バラスト水を前記船舶から排出するまえに該バラスト水に酸素を加えるように構成されている酸素注入器をさらに備えてなる、請求項2および4のうちの一つに記載の装置。
【請求項7】
バラスト水タンクを備えた水上を航行する船舶であって、
請求項2、4および6のうちのいずれか一つに記載の装置をさらに備えてなることを特徴とする、船舶。
【請求項8】
バラスト水を処理するための方法であって、
第一の容器から水をポンプにより移送することと、
前記水に蒸気を加えることと、
前記水にさらなるガス状の材料を加えることと、
前記水にキャビテーション作用を加えることと、
前記水を第二の容器に移送することと
を含む、方法。
【請求項9】
前記蒸気が、前記水に加えられるまえに前記さらなるガス状の材料と混合される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記キャビテーションステップのまえに、前記水に回転運動を加えることをさらに含んでいる、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記第一の容器が海であり、前記さらなるガス状の材料が酸素除去用ガスであり、前記第二の容器がバラストタンクであり、前記方法が、前記水を前記第二の容器に移送するまえまたはあとに、前記水から酸素を取り除くさらなるステップ含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記水を前記第二の容器に移送するまえおよびあとに、酸素が前記水から取り除かれる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第一の容器がバラストタンクであり、前記さらなるガス状の材料が酸素を含んでいるガスであり、前記第二の容器が周辺の海である、請求項8記載の方法。
【請求項14】
第一の容器から水を移送するためのポンプを備えているバラスト水を処理するためのシステムであって、
前記水に蒸気を加える手段と、
前記水にさらなるガス状の材料を加える手段と、
前記水にキャビテーション作用を加える手段と、
前記水を第二の容器に移送する手段と
を備えてなる、システム。
【請求項15】
前記水に加えるまえに、前記蒸気と前記さらなるガス状の材料とを混合するための手段をさらに備えてなる、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記キャビテーション手段に入るまえに、前記水に回転運動を加えるための手段をさらに備えてなる、請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記第一の容器が海であり、前記第二の容器がバラストタンクであり、前記さらなるガス状の材料が酸素除去用ガスであり、前記装置が、前記水から酸素を取り除くための手段を備えてなる、請求項14記載のシステム。
【請求項18】
前記酸素除去用ガスが窒素である、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記第一の容器がバラストタンクであり、前記第二の容器が周囲の海であり、前記さらなるガス状の材料が酸素を含んでいるガスである、請求項14記載のシステム。
【請求項20】
酸素量の少ない雰囲気を提供するために、前記バラストタンク内の雰囲気を制御するための手段をさらに備えてなる、請求項17,18または19記載のシステム。
【請求項21】
前記バラストタンクを前記外側空気と接続する換気手段をさらに備えており、前記バラストタンク内の雰囲気を制御するための手段が、前記バラストタンク内に存在している空気または酸素を移しかえるガスを供給するように構成されている、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
前記バラストタンク内の雰囲気を制御するための手段が、バラスト水が前記バラストタンクに充填されるとき前記バラストタンクからの過剰圧力のガスを排出し、バラスト水が前記バラストタンクから排出されるとき前記バラストタンクに酸素除去用ガスを供給するように構成されている、請求項20記載のシステム。
【請求項23】
請求項4記載の装置に用いられるバラスト水を処理する機器であって、
バラスト水を前記液体処理機器(7)に供給する液体流入配管(6)と、
前記流入配管(6)に接続されている採取チャンバ(21)と、
前記採取チャンバ(21)に接続されている円錐形状のセクション(22)と、
前記円錐形状のセクション(22)に接続されているチューブ(23)と、
前記チューブ(23)に接続されているキャビテーションチャンバ(24)と、
前記キャビテーションチャンバ(24)に接続されているとともに前記キャビテーションチャンバ(24)から前記液体を移送する液体流出チューブと、
前記採取チャンバ(21)へ、蒸気およびさらなるガス状の材料を供給する少なくとも一つのガス供給チューブ(25)とを備えてなる、機器。
【請求項24】
前記キャビテーションチャンバ(24)接続されている少なくとも一つの酸素流出チューブ(27)備えており、該少なくとも一つの酸素流出チューブ(27)が、前記キャビテーションチャンバ(24)から酸素を取り除くように構成されてなる、請求項23記載の機器。
【請求項25】
前記採取チャンバ(21)の周辺に複数のガス供給チューブ(25)を備えており、各ガス供給チューブ(25)が、一方の端部において前記採取チャンバ(21)に接続され、他方の端部において共通の環状のマニフォールド(26)に接続されてなる、請求項23記載の機器。
【請求項26】
前記キャビテーションチャンバ(24)の周辺に複数の酸素流出チューブ(27)を備えており、各酸素流出チューブ(27)が、一方の端部において前記キャビテーションチャンバ(24)に接続され、他方の端部において共通の環状のガス流出マニフォールド(28)に接続されてなる、請求項23記載の機器。
【請求項27】
前記円錐形状のセクション(22)および/または前記チューブ(23)に少なくとも一つの羽根部(32)を備えており、該羽根部(32)が前記円錐形状のセクション(22)を通して移送される前記バラスト水に対して回転運動を加えるように構成されてなる、請求項23記載の機器。
【請求項28】
請求項4記載の装置に用いられるバラスト水を処理するための機器(7)であって、
液体を前記液体処理機器(7)に供給する液体流入配管(6)と、
前記流入配管(6)に接続されているテーパセクション(33)と、
前記テーパセクション(33)に接続されているキャビテーションチャンバ(24)と、
前記キャビテーションチャンバ(24)に接続されているとともに該キャビテーションチャンバ(24)から前記液体を移送する液体流出チューブ(10)と、
前記採取チャンバ(21)へ、蒸気およびさらなるガス状の材料を加える手段(34)とを備えてなる、機器。
【請求項29】
前記キャビテーションチャンバ(24)接続されている少なくとも一つの酸素流出チューブ(27)を備えており、該酸素流出チューブ(27)が、前記キャビテーションチャンバ(24)から酸素を取り除くように構成されてなる、請求項28記載の機器。
【請求項30】
前記テーパセクション(33)上に設けられるマニフォールド(35)と、前記テーパセクション(33)の内側のバラスト水の中に蒸気およびさらなるガス状の材料を注入するために前記テーパセクション(33)内に設けられる複数の開口部(34)とを備えてなる、請求項28記載の機器。
【請求項31】
前記テーパセクション(33)に少なくとも一つの羽根部(32)を備えており、該羽根部(32)が前記テーパセクション(33)を通して移送される前記バラスト水に対して回転運動を加えるように構成されてなる、請求項28記載の機器。
【請求項32】
バラスト水制御システムであって、
制御ユニットと、
データ格納手段とを備えており、
前記制御ユニットが、バラスト水タンクが空にされたという知らせおよび船舶の座標の知らせを受信し、前記データ格納手段内に両方の知らせを格納するように構成されてなる、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−537036(P2007−537036A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512345(P2007−512345)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001838
【国際公開番号】WO2005/108301
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506379264)
【Fターム(参考)】