説明

バリアフィルム及びその製造方法、有機電子デバイス及びその製造方法

【課題】生産工程適性が高く、高いバリア性能を有し耐久性に優れる有機電子デバイスを与える有機電子デバイスの製造方法、それにより得られた有機電子デバイスを提供する。
【解決手段】実質的に水蒸気バリア性を有さない基材1上に、ポリシラザン化合物とアミン化合物を含有する塗布液を塗布、乾燥後に真空紫外光を照射することによりケイ素化合物からなる水蒸気バリア層を少なくとも2層2、3以上形成する際、該基材に近い側に用いる塗布液が含有するアミン化合物の沸点が、該基材から遠い側に用いる塗布液が含有するアミン化合物の沸点よりも高いことを特徴とするバリアフィルム及びその製造方法、並びに、有機電子デバイス及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアフィルム及びその製造方法、有機電子デバイス及びその製造方法に関し、更に詳しくは、電子デバイス等のパッケージ、または有機EL素子や太陽電池、液晶等のプラスチック基板と言ったディスプレイ材料に用いられるバリアフィルム、バリアフィルムの製造方法、バリア性フィルムを用いた有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、有機EL素子などの有機電子デバイスは、光と電気との変換機能など各種機能を有する有機機能層を有しているが、有機機能層は酸素、水などの各種ガスによる性能劣化を生じやすく、ガスバリアフィルム(以下、バリアフィルムと記載)などを用い、有機機能層と有害なガスとの接触を避けるように構成されている。
【0003】
一般的に、バリアフィルムとしては、プラスチック基材等のフィルム基材の表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したバリアフィルムが知られており、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装用途や、食品や工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。そして、これらのバリアフィルムは、上記包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機EL(エレクトロルミネッセン)素子などにも使用されている。
【0004】
無機バリア層を形成する方法としては、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)に代表される有機珪素化合物を用いて減圧下の酸素プラズマで酸化しながら基板上に成膜する化学堆積法(プラズマCVD)や半導体レーザーを用いて金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基板上に堆積するスパッタ法が知られている。
【0005】
これらの方法は正確な組成の薄膜を基板上に形成できるためSiOをはじめとする金属酸化物薄膜の形成に好ましく使われてきたが、減圧下での成膜となるため、減圧および大気開放に時間を要する、連続生産が難しい、設備が大型化するなど著しく生産性が悪かった。
【0006】
これらの問題を解決するため、生産性の向上を目的に、珪素含有化合物を塗布し、その塗膜を改質することで酸化ケイ素薄膜を形成する方法、および同じCVD法でも大気圧下でプラズマを発生し大気圧下で成膜する試みが行われており、バリアフィルムにおいても検討されている。
【0007】
一般的に溶液プロセスで作製可能な酸化ケイ素膜としては、アルコキシド化合物を原料として、ゾル−ゲル法と呼ばれる方法で形成する技術が知られている。このゾル−ゲル法は一般的に高温に加熱する必要があり、さらに脱水縮合反応の過程で大きな体積収縮が起こり、膜中に多数の欠陥が生じる。
【0008】
これを防ぐために原料溶液に酸化物の形成に直接関与しない有機物などを混合する手法なども見いだされてはいるが、これらの有機物が膜中に残存することによって膜全体のバリア性の低下が生ずる。
【0009】
これらのことから、ゾル−ゲル法で作製する酸化膜をそのまま有機電子デバイスに適用することは困難であった。
【0010】
その他の方法としては原料にシラザン構造(Si−N)を基本構造とするシラザン化合物を用いて酸化ケイ素を作製することが提案されており、この場合の反応は脱水縮重合ではなく窒素から酸素への直接的な置換反応であるため、反応前後の質量収率が80%から100%以上と大きく、体積収縮による膜中欠陥が少ない緻密な膜が得られることが知られている。
【0011】
しかしながら、シラザン化合物の置換反応による酸化ケイ素薄膜の作製には450℃以上の高温が必要であり、プラスチック等のフレキシブル基板に適応することは不可能であった。
【0012】
このような問題の解決の手段として、ポリシラザンの塗膜に真空紫外線照射を施すことにより、シリカ被膜の形成時における加熱温度を低下し、また加熱時間を短縮できることが知られている(特許文献1参照)。
【0013】
しかしながら、シリカ膜を形成するのに要する真空紫外光のエネルギー量が多量に必要であり、しかもJIS K−7129における水蒸気透過度は高々0.01g/m/day未満であり、液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板などには、その性能や寿命が低下するという問題があり各種電子デバイスの耐久性を確保できるのに十分なバリア性を得ることが出来なかった。
【0014】
このようなシリカ膜を形成するのに要する真空紫外光のエネルギー量を下げられる技術としては、ポリシラザン化合物塗布液中に有機または無機の触媒を添加する技術が知られている。(特許文献2参照)。
【0015】
しかしながら、このような触媒は、無機物の場合はシリカ膜中に残存することで、緻密な構造で、高いバリア性を有する層を形成することは困難となる、また揮発性の高い有機系の触媒を添加した場合には、塗布、乾燥工程で塗布溶媒と一緒に揮発しやすく、十分な反応促進効果が得られなかった。
【0016】
また、上述の技術のようにバリア性の高いバリアフィルムを得るためには、複数のバリア層を形成することが有効であるが、一方、真空紫外光を用いたポリシラザンによるシリカ薄膜の形成は、真空紫外光の波長の短さのゆえ、雰囲気中の酸素を活性化し、ポリシラザン膜の紫外光が照射される表面側から反応が進行することが知られている。(非特許文献1参照)。
【0017】
そのため、複数のバリア層を形成した場合、上層側のポリシラザンのエキシマ改質層の内部側に、バリ製を有する層に挟まれた、シリカ膜へ十分改質が進んでいない領域が残留することが本発明者らの検討によって判明した。
【0018】
このような上層側の低改質領域は、長期保存や加熱により改質反応が追加的に進行したり、高温にさらされた場合には、ポリシラザンから分解生成するアンモニアガスなどの揮発性成分が気化することで、バリア層が部分的に破壊されて、バリア性を低下すると考えられている。
【0019】
その反面、バリア性を実質的に有していない基材に直接塗布、真空紫外照射してポリシラザン膜からシリカ膜へ改質された下層の場合は、低改質領域から発生する揮発性成分が存在しても、バリア性を有さない基材表面側に拡散することで容易に除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2009−255040号公報
【特許文献2】特表2009−503157号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】日本セラミックス協会学術論文誌:(2004),112号,;599〜603頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、生産工程適性が高く、高いバリア性能を有し耐久性に優れる有機電子デバイスを与える有機電子デバイスの製造方法、それにより得られた有機電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0024】
1.実質的に水蒸気バリア性を有さない基材上に、ポリシラザン化合物とアミン化合物を含有する塗布液を塗布、乾燥後に真空紫外光を照射することによりケイ素化合物からなる水蒸気バリア層を少なくとも2層以上形成する際、該基材に近い側に用いる塗布液が含有するアミン化合物の沸点が、該基材から遠い側に用いる塗布液が含有するアミン化合物の沸点よりも高いことを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【0025】
2.前記アミン化合物の沸点が、塗布溶媒の沸点よりも高いアミン化合物であることを特徴とする前記1に記載のバリアフィルムの製造方法。但し、該アミン化合物の沸点は、アミン化合物を2種以上用いる場合は、用いたアミン化合物の中で最低沸点を示すアミン化合物の沸点を該アミン化合物の沸点とする。
【0026】
3.前記1又は2に記載のバリアフィルムの製造方法により製造されたことを特徴とするバリアフィルム。
【0027】
4.前記3に記載のバリアフィルムを用いて、接着剤を介して有機光電変換素子を封止することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
【0028】
5.前記4に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする有機電子デバイス。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、高いバリア性能を有するバリアフィルム、耐久性に優れる有機電子デバイスを与える有機電子デバイスの製造方法、それにより得られた有機電子デバイスが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るバリアフィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
図1は、本発明に係るバリアフィルムの断面図であって、a)は、基材1の上に、バリア層2、3を2層有する構成を示す。b)は、基材1の両面に平滑層4とブリードアウト防止層5を有し、平滑層4の上に、バリア層2、3を2層有する構成を示す。
【0033】
(バリア層形成工程)
(バリアフィルム)
本発明に係るバリアフィルムは、基材上にバリア層を有する。本発明におけるバリアフィルムは、酸素および/または水蒸気ガスの透過を抑制する機能を有するものをいう。JIS K7129 B法、及びASTM F1249−90に示された測定方法に準じた、MOCON社の水蒸気透過度測定装置を用い、40℃×90%RHの条件で測定した場合の水蒸気透過率が、1×10−2g/m・日未満である層をいう。
【0034】
具体的な測定方法としては、JIS K7129 B法(赤外センサー法)及びASTM F1249−90に示されたモコン法と呼ばれる等圧法や、特開2006−250816号に記載のCa腐食法や特開2009−257994号に記載の様に、吸湿による色差の変化を検出する方法等があげられる。
【0035】
また酸素透過率は、JIS K 7126(B法)に準拠して測定した。雰囲気温度23℃、湿度75%で測定した。測定には酸素透過率測定装置(米国モコン社製「MOCON OX−TRAN」)を用いた測定値が、5×10−2ml/m・day以下である層をいう。
【0036】
(基材)
本発明に用いられる実質的に水蒸気バリア性を有さない基材は、後述するバリア層を保持することができる材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
【0037】
実質的に水蒸気バリア性を有さないとは、モコン法を用い、測定はMOCON社製PERMATRAN−W3/33を用いて、JIS規格のK7129法(温度40℃、湿度90%RH)に基づいて測定した水蒸気透過率が、いずれもモコン法の測定で0.5g/m/day以上であることで定義される。本発明に用いられる実質的に水蒸気バリア性を有さない基材は、後述の樹脂フィルム単体でもよく、また、アンカーコート層、平滑層、ブリードアウト防止層などの各種機能層を積層したものも好ましく用いられる。
【0038】
基材単体の水蒸気バリア性が0.01g/m/dayよりも下回るものを用いると、後述のように、基材と接するバリア層の低改質領域のアミン化合物の拡散除去が阻害されて、長期保存性、耐熱性を低下させてしまう。
【0039】
(樹脂フィルム)
樹脂フィルム材料としては、例えばポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂からなるフィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0040】
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が好ましく用いられる。
【0041】
また光学的透明性、耐熱性、無機層、バリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明樹脂フィルムを好ましく用いることができる。
【0042】
基材の厚みは5μm〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25μm〜250μmである。
【0043】
本発明においては、基材は透明であることが好ましい。
【0044】
ここで、基材が透明とは、可視光(400nm〜700nm)の光透過率が80%以上であることを示す。
【0045】
基材が透明であり、基材上に形成する層も透明であることにより、透明なバリアフィルムとすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
【0046】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた樹脂フィルムは未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0047】
本発明に用いられる樹脂フィルムは、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。
【0048】
例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材(支持体)を製造することができる。
【0049】
また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、延伸した樹脂フィルムを製造することができる。
【0050】
この場合の延伸倍率は、樹脂フィルムの原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2倍〜10倍が好ましい。
【0051】
更には、延伸した樹脂フィルムに於いて寸法安定性を向上するために、延伸後の緩和処理をすることが好ましい。
【0052】
また、本発明に係る樹脂フィルムは、その表面がコロナ処理されていてもよいし、更にその表面にアンカーコート剤層が形成されていてもよい。
【0053】
《アンカーコート剤層》
アンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、アルキルチタネート等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。
【0055】
そして、上記のアンカーコート剤層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングして形成することができる。
【0056】
上記のアンカーコート剤の付き量としては、0.1g/m〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0057】
《平滑層》
本発明に係る基材は、平滑層を有してもよい。
【0058】
平滑層は突起等が存在する基材の表面を、平坦化するために設けられる。
【0059】
平滑層により平坦化された面に、必要に応じてその他の層を中間に介した後にバリア層を積層形成することで、欠陥の少ない均一なバリア層を形成することが出来る。さらには平滑層が形成された面に直接接するように積層させる構成がより好ましい。
【0060】
このような平滑層は、基本的には感光性樹脂を硬化させて作製される。
【0061】
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。
【0062】
また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0063】
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0064】
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。
【0065】
また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
【0066】
平滑層の平滑性は、塗布性などの面から、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。
【0067】
平滑層を有する場合、さらにブリードアウト防止層を有することが好ましい。
【0068】
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、樹脂フィルム中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で設けられる層であって、基材はこれを平滑層を有する基材の反対面に有してもよい。
【0069】
ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば平滑層と同じ構成をとっても構わない。
【0070】
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物または分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
【0071】
ブリードアウト防止層は、添加剤として、マット剤を含有してもよい。
【0072】
マット剤としては平均粒子径が0.1μm〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
【0073】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
【0074】
無機粒子からなるマット剤は、ブリードアウト防止層の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
【0075】
また、ブリードアウト防止層には、他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
【0076】
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、および必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。
【0077】
なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200nm〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0078】
ブリードアウト防止層の厚みとしては、フィルムの耐熱性向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にし、且つ、バリアフィルムの片面のみにブリードアウト防止層を設けた場合のカールを防止する観点から、1μm〜10μmの範囲が好ましく、更に好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
【0079】
(バリア層)
バリア層はポリシラザン化合物を主原料とした、珪素を有する無機酸化物膜である。具体例としては酸化珪素膜、酸窒化珪素膜が挙げられる。バリア層の構成としては、高いバリア性を得るために、少なくとも2層以上の複層構成である。
【0080】
(バリア層形成工程)
バリア層を、基材上に形成する方法としては、ポリシラザン化合物を主成分とする膜を塗布により形成する。
【0081】
以下、塗布によりポリシラザン化合物膜を形成する場合を例に、バリア層の形成工程について説明する。
【0082】
《ポリシラザンを含有する塗膜》
ポリシラザンを含有する塗膜は、基材上に少なくとも1層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布することにより形成される。
【0083】
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。
【0084】
具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0085】
塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。
【0086】
例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが好ましくは1nm〜100μm程度、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
【0087】
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Siおよび両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
【0088】
フィルム基材を損なわないように塗布するためには、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物が好ましい。
【0089】
ポリシラザンとしては、例えば、下記式で表される構造単位を有するものが挙げられる。
【0090】
−Si(R)(R)−N(R)−
式中、R、R、Rは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表す。
【0091】
本発明では、得られるバリア層としての緻密性の観点からは、R、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
【0092】
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるバリア層に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
【0093】
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
【0094】
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記式のポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
【0095】
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。
【0096】
具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。
【0097】
具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
【0098】
これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の有機溶媒を混合しても良い。
【0099】
ポリシラザンを含有する塗布液中のポリシラザン濃度は目的とする膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2質量%〜35質量%程度である。
【0100】
ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。その場合のアルキル基としては、例えばメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
【0101】
(アミン化合物)
本発明において、ポリシラザンを含有する塗膜から、下述する酸化珪素を含有する膜への改質を促進するために、ポリシラザンを含有する塗布液にアミン化合物を添加することが重要である。
【0102】
アミン化合物としては、アルキル置換、または無置換のアミン、単官能、ジアミン、トリアミンなどが挙げられる。本発明で用いられるアミンは、常温(25℃)で液体または、固体であることが好ましい。アミンの沸点としては、80℃以上、350℃以下が好ましく、より好ましくは120℃以上、250℃以下である。
【0103】
揮発性の低いアミン化合物は、塗布乾燥後のポリシラザン膜に残留しやすく改質反応に寄与しやすいが、真空紫外改質後には不要な成分であるため、存在しないことが好ましい。
【0104】
また、基材に接して形成されたバリア層は、実質的にバリア性を有していない基材側から拡散除去されやすいが、バリア層上に形成された2層目以降のバリア層は、内部の低改質領域にアミン化合物が残存してしまうと長期保存時や高温環境下で置かれたときのバリア層の物理的強度の低下が原因と推定される、バリア性の低下が懸念される。
【0105】
そのため、塗布溶媒の揮発性と、アミン化合物の揮発性を基材側バリア層で最適に設定した同一塗布液構成を2層目以降にも適用すると、このような現象が生じやすくなる。
【0106】
本発明のバリアフィルムは、これを解決すべく、バリア層は、ポリシラザン化合物とアミン化合物を有する塗布液を塗布乾燥後に真空紫外光を照射することにより改質されたものであり、かつ基材に近い側の層が含有するアミン化合物の沸点が、基材から遠い側の層が含有するアミン化合物の沸点よりも高くすることでシリカ膜への改質効率と長期、耐熱保存性を両立することができた。また、本発明の効果に悪影響がない程度に、基材に近い側の層が含有するアミン化合物の沸点よりも高い沸点のアミン化合物を。基材から遠い側の層に少量混合しても良いが、その最大量は全アミン質量比で50%未満である。
【0107】
以下に、アミン化合物の例を示す。
【0108】
【表1】

【0109】
本発明に用いられるアミン化合物は、塗布溶媒の沸点、複合溶媒の場合はその最低の沸点と比較して高いものが好ましい。アミン化合物は、塗布液を基材に塗布した直後から、空気中の水分と反応しながら、徐々にシリカ膜への改質が進行するが、塗布溶媒とアミン化合物の沸点の関係をこのようにすることにより、塗布乾燥工程後のポリシラザン膜の内部に一部または大半のアミン化合物が残存し、その後の真空紫外改質工程でのシリカ膜への添加を効率よく進めることができる。本発明に好ましく用いられるアミン化合物であるジアミン類の一例を示すが、これらに限定されない。
【0110】
【表2】

【0111】
(ポリシラザン膜の改質)
ポリシラザンおよびアミン化合物を含有する塗膜は、下記の改質処理により酸化珪素膜となりバリア層が形成される。改質処理としては、真空紫外線(VUV)を用いた方法を好ましく用いることができる。
【0112】
(真空紫外線(VUV)を用いたポリシラザンを含有する塗膜の改質処理)
バリア層は、ポリシラザンを含有する溶液を基材上に塗布した後、ポリシラザンを含む塗膜に真空紫外線(VUV)を照射する方法で改質処理されて得られる。
【0113】
バリア層は、ポリシラザン含有溶液を基材上に塗布、乾燥した後、真空紫外線を照射する方法で得られる。
【0114】
真空紫外線としては、100nm〜200nmの真空紫外線(VUV光)が好ましく用いられる。
【0115】
真空紫外線の照射は、照射される塗膜を担持している基材がダメージを受けない範囲で照射強度および/又は照射時間を設定する。基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、基材表面の強度が10mW/cm〜300mW/cmになるように基材−ランプ間距離を設定し、0.1秒〜10分間、好ましくは0.5秒〜3分の照射を行うことが好ましい。
【0116】
真空紫外線照射装置は、市販のランプ(例えば、ウシオ電機製)を使用することが可能である。
【0117】
真空紫外線(VUV)照射はバッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、被塗布基材の形状によって適宜選定することができる。
【0118】
例えば、バッチ処理の場合には、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材(例、シリコンウェハー)を、真空紫外線発生源を具備した真空紫外線焼成炉で処理することができる。真空紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、ウシオ電機(株)製を使用することができる。また、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような真空紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に真空紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。
【0119】
該真空紫外光はほとんどの物質の原子間結合力より大きいため、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断することが可能であるため好ましく用いる事ができる。
【0120】
この作用を用いる事により、加水分解を必要とせず低温でかつ効率的に改質処理が可能となる。
【0121】
真空紫外光源としては、エキシマ発光を用いる希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
【0122】
エキシマ発光を得るには誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。
【0123】
誘電体バリア放電とは両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電で、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。
【0124】
このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。
【0125】
また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
【0126】
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。
【0127】
《真空紫外線の照射強度》
照射強度が高ければ、光子とポリシラザン内の化学結合が衝突する確率が増え、改質反応を短時間化することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加および/または膜質の良化(高密度化)が可能である。
【0128】
但し、照射時間を長くしすぎると平面性の劣化やバリア性フィルムの他の材料にダメージを与える場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量で反応進行具合を考えるが、照射強度の絶対値が重要になる場合もある。
【0129】
従って、本発明ではVUV照射工程において、基材のダメージ、ランプやランプユニットの部材のダメージを抑制し、改質効率を上昇させ、バリア性能を向上の両方を併せて達成する観点から、少なくとも1回は50mW/cm〜200mW/cmの最大照射強度を与える改質処理を行うことが好ましい。
【0130】
(真空紫外線(VUV)の照射時間)
真空紫外線(VUV)を照射する照射時間は、任意に設定可能であるが、基材ダメージや膜欠陥生成の観点および生産性の観点から、光照射工程での照射時間は0.1秒〜1分間が好ましく、更に好ましくは、0.5秒〜0.5分である。
【0131】
(真空紫外線(VUV)照射時の酸素濃度)
真空紫外線(VUV)を照射する際の、酸素濃度は300ppm〜10000ppm(1%)とすることが好ましく、更に好ましくは、500ppm〜5000ppmである。
【0132】
前記の酸素濃度の範囲に調整することにより、酸素過多のバリア膜の生成を防止してバリア性の劣化を防止することができる。
【0133】
真空紫外線(VUV)照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。
【0134】
酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
【0135】
(封止工程)
本発明の封止方法について、有機電子素子を例に示す。本発明に係る貼付工程では、有機電子素子に、本発明のバリアフィルムを、有機電子素子とバリア層とを接触させて封止する。
【0136】
(有機電子素子)
本発明に係る有機電子素子は、光を電気に、または電気を光に変換する機能を有する有機機能層および電極を有する素子である。
【0137】
本発明の有機電子デバイスの製造方法では、上記のように有機電子素子に、バリアフィルムを、有機電子素子とバリア層とを接触させて封止して有機電子デバイスを製造する。
【0138】
有機電子デバイスは、支持体上に上記有機電子素子を有する構成を有するが、本発明に係るバリアフィルムは、当該支持体として用いてもよいし、有機電子素子を封止する封止部材として用いてもよい。
【0139】
バリアフィルムを、支持体として用いた場合の例を以下に示す。
【0140】
バリアフィルムのバリア層上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設ける。この場合には、バリア層上に下記のように電極を直接設けることで、有機電子素子とバリア層とを接触させて封止する、態様となる。
【0141】
例えば、バリアフィルム(支持体)上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に多孔質半導体層を設け、更に金属膜からなる陰極を形成して、有機電子素子である有機光電変換素子を形成し、この上に別の封止材料または当該バリアフィルムと同じ組成の封止材料を重ねて、前記バリアフィルム(支持体)と周囲を接着、素子を封じ込めることで有機光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる素子への影響を封じることができる。
【0142】
透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、またインジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。
【0143】
また、透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
【0144】
次いで、有機電子素子として、太陽電池などに用いられる、有機光電変換素子について説明する。
【0145】
有機光電変換素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクヘテロジャンクション層、i層とも言う)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
【0146】
有機光電変換素子の層構成(太陽電池の好ましい層構成も同様である)の好ましい具体例を以下に示す。
【0147】
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
【0148】
(i)陽極/発電層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発電層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層/電子輸送層/陰極。
【0149】
ここで、発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを作製していてもよいし、1層の内部で混合された状態となっているバルクヘテロジャンクションを作製してもよいが、バルクヘテロジャンクション構成のほうが光電変換効率が高いため、好ましい。発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
【0150】
有機EL素子同様、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔および電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))の方が好ましい。
【0151】
また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成とも言う)であってもよい。
【0152】
また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であってもよい。
【0153】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0154】
(有機光電変換素子の材料)
有機光電変換素子の発電層(光電変換層ともいう)の形成に用いられる材料について説明する。
【0155】
(p型半導体材料)
有機光電変換素子の発電層(バルクヘテロジャンクション層)として好ましく用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
【0156】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0157】
また、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0158】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェンおよびそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0159】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いられる。
【0160】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、且つ乾燥後は、結晶性薄膜を作製し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
【0161】
また、発電層上に電子輸送層を塗布で成膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
【0162】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号明細書、および特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって、可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
【0163】
(n型半導体材料)
バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物や、そのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0164】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)、且つ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0165】
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0166】
(正孔輸送層・電子ブロック層)
有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0167】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層としては、スタルクヴイテック製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリンおよびそのドープ材料、国際公開第06/19270号パンフレット等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。
【0168】
なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する電子ブロック機能が付与される。
【0169】
このような正孔輸送層は電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
【0170】
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を作製する前に、下層に塗布膜を作製すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0171】
(電子輸送層・正孔ブロック層)
有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層を作製することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0172】
また、電子輸送層としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様にバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する正孔ブロック機能が付与される。
【0173】
このような電子輸送層は正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。
【0174】
このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、および酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物およびフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
【0175】
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0176】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
【0177】
(電極(第1電極))
有機機能層を挟む電極としては、有機光電変換素子の場合少なくとも一つは透明電極であることが好ましい。
【0178】
透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。
【0179】
例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380nm〜800nmの光を透過する電極である。
【0180】
材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0181】
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレンおよびポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0182】
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0183】
これらの中で、電子の取り出し性能および酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
【0184】
対電極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を作製させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。
【0185】
対電極の導電材として金属材料を用いれば、対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0186】
また、対電極は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により作製でき好ましい。
【0187】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銀および銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
【0188】
(中間電極)
また、タンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0189】
電極に用いられる材料としては、上記の他に、導電性繊維を用いることができる。
【0190】
導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤー、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤーが好ましい。
【0191】
金属ナノワイヤーとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
【0192】
金属ナノワイヤーとしては、1つの金属ナノワイヤーで長い導電パスを作製するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、更には3μm〜500μmが好ましく、特に3μm〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。
【0193】
また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤーの平均直径として10nm〜300nmが好ましく、30nm〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0194】
金属ナノワイヤーの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)および鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
【0195】
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤーの硫化や酸化耐性、およびマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤーが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤーの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤー全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0196】
金属ナノワイヤーの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
【0197】
例えば、Agナノワイヤーの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤーの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤーの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤーの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.およびChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤーの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤーを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤーの製造方法として好ましく適用することができる。
【0198】
金属ナノワイヤーが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを作製し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤーが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、更に金属ナノワイヤーの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤーを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
【0199】
(光学機能層)
有機光電変換素子は、例えば太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止層、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
【0200】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0201】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0202】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0203】
また、光拡散層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
【0204】
(成膜方法・表面処理方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、および輸送層・電極の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクヘテロジャンクション層の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
【0205】
このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また、塗布法は製造速度にも優れている。
【0206】
この際に使用する塗布方法に制限はないが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。更には、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
【0207】
塗布後は残留溶媒および水分、ガスの除去、および半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために、加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0208】
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで作製することが可能となる。
【0209】
(パターニング)
電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等は、パターニングして使用されるが、パターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0210】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
【0211】
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に作製したパターンを転写することによってパターンを作製してもよい。
【実施例】
【0212】
以下、有機電子デバイスの一つの形態として、太陽電池の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0213】
実施例1
《バリアフィルムの作製》
以下に記載のように、まず、基材F1を用い、次いで、基材上にバリア層を作製する工程を経て、バリアフィルムを作製した。
【0214】
《基材の作製》
基材F1は、熱可塑性樹脂支持体である、両面に易接着加工された75μm厚みのポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製、コスモシャインA4300)であって、水蒸気透過率K7129法(温度40℃、湿度90%RH)10g/m/dayである。
【0215】
基材F1を用い、下記に示すように、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を作製したものを基材として用いた。
【0216】
(ブリードアウト防止層の形成)
上記支持体の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
【0217】
(平滑層の形成)
続けて上記支持体の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
【0218】
得られた平滑層の、JIS B 0601で規定される表面粗さで、最大断面高さRt(p)は16nmであった。
【0219】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
【0220】
(基材の水蒸気透過率測定)
調湿後の上記基材について、水蒸気透過率はモコン法を用い、測定はMOCON社製PERMATRAN−W3/33を用いて、JIS規格のK7129法(温度40℃、湿度90%RH)に基づいて測定した。測定された水蒸気透過率は5g/m/dayを越えるレベルであった。
【0221】
《バリア層の作製》
上記で得られた基材の平滑層面上に、下記の工程(a)、(b)を2回繰り返すことによりバリア層を下層、上層の2層が積層されるように作製した。この試料をバリアフィルム試料1〜11とした。
【0222】
工程(a):パーヒドロポリシラザン層の作製
上記平滑層、ブリードアウト防止層を設けた基材を、その平滑層面の上に下記に示すパーヒドロポリシラザンおよびアミン化合物を含有する塗布液を塗布して、パーヒドロポリシラザン層(パーヒドロポリシラザンを含有する層ともいう)を作製した。
【0223】
(パーヒドロポリシラザンを含有する塗布液)
パーヒドロポリシラザンを含有する塗布液は、20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN120−20)を用い、表3に示した下層、上層に用いるアミン化合物A〜Eを組み合わせてパーヒドロポリシラザン固形分質量に対して1質量%の比率で混合し、この溶液をジブチルエーテル(沸点141℃)で希釈することにより濃度を調整してロ−ルコーターにより塗布した。その後、連続して露点−5℃の乾燥空気で80℃3分加熱しながら乾燥し、乾燥後膜厚170nmのパーヒドロポリシラザン層を作製した。
【0224】
【表3】

【0225】
工程(b):パーヒドロポリシラザン層の改質(酸化)によるバリア層の作製
真空紫外線(VUV)照射処理条件
MDエキシマ社製のステージ可動型キセノンエキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200(波長172nm)を用い、ランプと上記試料の照射距離を1mmとなるように試料を固定し、試料温度が85℃となるように保ちながら、ステージの移動速度を10mm/秒の速さで試料を往復搬送させて、合計6往復照射したのち、試料を取り出した。
【0226】
(酸素濃度の調整)
真空紫外線(VUV)照射時の酸素濃度は、真空紫外線(VUV)照射庫内に導入する窒素ガス、および酸素ガスの流量をフローメーターにより測定し、照射庫内に導入するガスの窒素ガス/酸素ガス流量比により酸素濃度が0.2体積%〜0.4体積%の範囲になるように調整した。
【0227】
試料No.1〜11で用いた基材F1を水蒸気透過率の異なる下記基材に変更した以外は同様にして、試料No.12および13を作製し、同様に評価を行った。
【0228】
基材F2
三菱樹脂株式会社 テックバリア TXR
水蒸気透過率K7129法(温度40℃、湿度90%RH)0.5g/m/day
基材F3
三菱樹脂株式会社 テックバリア HX
水蒸気透過率K7129法(温度40℃、湿度90%RH)0.05g/m/day
このようにして得られたバリアフィルム試料1〜13を下記の方法で水蒸気透過率を測定した。
【0229】
(水蒸気透過率の測定装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のバリアフィルム1〜13の各々蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。
【0230】
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
【0231】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
【0232】
(ランク評価)
5:1×10−4g/m/day未満
4:1×10−4g/m/day以上、1×10−3g/m/day未満
3:1×10−3g/m/day以上、1×10−2g/m/day未満
2:1×10−2g/m/day以上、1×10−1g/m/day未満
1:1×10−1g/m/day以上
ランク評価において、実用的な範囲は、ランク3以上である。
【0233】
(バリアフィルムの耐熱性試験)
作製直後のバリアフィルム試料1〜13をそれぞれ、85℃環境で7日間保存後に上記と同様にして水蒸気透過率を測定して、熱による劣化(耐久性)を評価した。
【0234】
(バリアフィルムの耐久性試験)
作製直後のバリアフィルム試料1〜13をそれぞれ、半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返した後の、バリア性の劣化(耐久性)を、上記と同様に水蒸気透過率で評価した。
【0235】
実施例2
《有機光電変換素子1〜13の作製》
実施例1で得られた、作製直後のバリアフィルム試料1〜13の各々を用いて、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を形成した。
【0236】
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0237】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
【0238】
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
【0239】
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
【0240】
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、素子の形成されていないバリアフィルム試料1〜13のそれぞれ同一試料とUV硬化樹脂とを用いて対面させるようにして、下記に様に封止処理を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子1〜13を各々作製した。
【0241】
(有機光電変換素子の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、片方に素子を形成されたバリアフィルム試料1〜13と、形成されていない同一バリアフィルムの組み合わせで、バリア層を設けた面に、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤を塗布した。片側の基板側からUV光を照射して硬化させ、封止処理後の有機光電変換素子1〜13とした。
【0242】
得られた有機光電変換素子を用い、太陽電池を作製し下記の評価を行い耐久性の評価を行った。
【0243】
《太陽電池の作製およびエネルギー変換効率の評価》
上記で得られた有機光電変換素子1〜13の評価は、各々の素子を用いて、太陽電池1〜13を各々作製し、エネルギー変換効率を求め、素子としての耐久性を評価した。
【0244】
太陽電池1〜13の各々について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)およびフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
【0245】
(式1)
PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
得られた太陽電池1〜13の初期電池特性としての変換効率を測定し、次いで、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した強制劣化試験後の変換効率残存率により5段階のランク評価を行った。
【0246】
(5段階ランク評価)
強制劣化試験後の変換効率/初期変換効率の比
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:50%以上、70%未満
2:30%以上、50%未満
1:30%未満
尚、実用上に耐えうるのはランク3以上である。得られた結果を表1に示す。
【0247】
【表4】

【0248】
本発明によって、非常に短時間で効率よく、耐久性に優れたバリアフィルム、およびそれを用いた耐久性の高い有機電子デバイス、およびそれらの製造法を提供することが出来る。
【符号の説明】
【0249】
1 基材
2 バリア層(下層)
3 バリア層(上層)
4 平滑層
5 ブリードアウト防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水蒸気バリア性を有さない基材上に、ポリシラザン化合物とアミン化合物を含有する塗布液を塗布、乾燥後に真空紫外光を照射することによりケイ素化合物からなる水蒸気バリア層を少なくとも2層以上形成する際、該基材に近い側に用いる塗布液が含有するアミン化合物の沸点が、該基材から遠い側に用いる塗布液が含有するアミン化合物の沸点よりも高いことを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記アミン化合物の沸点が、塗布溶媒の沸点よりも高いアミン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のバリアフィルムの製造方法。但し、該アミン化合物の沸点は、アミン化合物を2種以上用いる場合は、用いたアミン化合物の中で最低沸点を示すアミン化合物の沸点を該アミン化合物の沸点とする。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバリアフィルムの製造方法により製造されたことを特徴とするバリアフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のバリアフィルムを用いて、接着剤を介して有機光電変換素子を封止することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする有機電子デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2012−599(P2012−599A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140256(P2010−140256)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】