説明

バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材

【課題】 酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れて、更に、包装用材料として使用後、ゴミとして廃棄処理されても、それ自身微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材を提供することである。
【解決手段】 生分解性樹脂フィルムの一方の面に、無機酸化物からなるバリア性薄膜層を設け、更に、該無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2、M、n、m等の意味については略す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けることを特徴とするバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材に関し、更に詳しくは、飲食品、化成品、雑貨品、その他等の各種の物品を充填包装する包装用材料として使用され、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れていると共に包装用材料として使用後、ゴミとして廃棄処理されても、それ自身微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品、化成品、雑貨品、その他等の各種の物品を充填包装する包装用材料としては、各種のプラスチックフィルム、紙基材、金属箔ないし蒸着膜等の金属素材、その他等の各種の基材を任意に積層した種々の層構成からなる積層材が開発され、提案されている。
而して、それらのものは、包装用材料として使用後、ゴミとして廃棄処理すると、それら自身が、極めて耐久性等に優れていることから、廃棄物が環境中にそのままの状態で残存し、これらが、地球環境に悪影響を与え、環境破壊の元凶となり、環境適性に極めて不適であるという問題点を有しているものである。
そこで近年、上記のような問題点を解決すべく種々の包装用材料が開発され、提案されている。
例えば、内容物を収納する最内層に分解性のヒ−トシ−ル層を有し、その上に直接または中間層を介してシリカを蒸着したバリア層を有し、前記分解性のヒ−トシ−ル層は、分解性プラスチックであり、前記シリカを蒸着したバリア層は、シリカを蒸着したポリビニルアルコ−ルであることを特徴とする分解性積層包材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、例えば、分解性プラスチックフィルムの表面に無機質蒸着層を形成したことを特徴とする分解性蒸着フィルムも提案さている(例えば、特許文献2参照。)。
更に、例えば、(化1)又は(化2)で示される樹脂を主成分とするプラスチックフィルムの少なくとも片面に、一般式AX Y (Aは金属、X=1、2、Y=0、1、2、3)なる組成の金属酸化物の厚さ100〜3000Åの透明薄膜層を設けた分解性プラスチックフィルムも提案さている(例えば、特許文献3参照。)。
次に、例えば、生分解性樹脂層上に、無機化合物層、金属アルコキシドまたは塩化錫及び水溶性高分子の加水分解もしくは重縮合反応物からなるガスバリア−性層が順次積層されている事を特徴とする生分解性積層体も提案さている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開平4−298335号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】実開平5−41775号公報(実用新案登録請求の範囲等)
【特許文献3】特開平7−195646号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特許第3513967号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1〜4に係る発明においては、いずれも、生分解性プラスチックフィルムの一方の面に、無機酸化物の蒸着膜を設けてバリア性フィルムを構成し、而して、該バリア性フィルムをバリア性基材として使用し、これと、印刷模様層、ラミネ−ト用接着剤層等を介して、他のプラスチック基材、紙基材、その他等の基材を任意に積層して、包装用材料としての種々の層構成からなる積層材を製造するものである。
而して、上記のような積層材を使用し、これから所望の包装用容器を製造し、しかる後、その包装用容器に所望の物品を充填包装して包装製品を製造し、しかる後、その包装製品を使用し、その後、その包装用容器を廃棄ゴミとして廃棄処理する場合、印刷模様層、ラミネ−ト用接着剤層、他のプラスチック基材、その他等の積層素材は、いずれも、それら自身が、極めて耐久性等に優れていることから、相変わらず、廃棄物が環境中にそのままの状態で残存し、これらが、地球環境に悪影響を与え、環境破壊の元凶となり、環境適性に極めて不適であるという問題点を有しているものである。
そこで本発明は、飲食品、化成品、雑貨品、その他等の各種の物品を充填包装する包装用材料として使用され、包装用材料としての包装適性等を十分に有すると共に、特に、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れて、更に、包装用材料として使用後、ゴミとして廃棄処理されても、それ自身微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記のような問題点を改良すべく種々検討の結果、まず、生分解性樹脂フィルムの一方の面に、無機酸化物からなるバリア性薄膜層を設け、更に、該無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けてバリア性フィルムを製造し、次に、該バリア性フィルムを使用し、そのバリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜の面に、例えば、生分解性樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性インキ組成物による生分解性印刷模様層、生分解性樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性プライマ−剤組成物による生分解性プライマ−剤層、あるいは、生分解性樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性接着剤による生分解性接着剤層等を介して、少なくとも、生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層を設けて積層材を製造し、而して、該積層材を使用して製袋し、種々の形態からなる包装用袋を製造し、しかる後該包装用袋を使用し、その包装用袋内に、例えば、飲食品、化成品、雑貨品、その他等の各種の物品を充填包装して種々の形態からなる包装製品を製造したところ、耐熱性、耐圧性、耐水性、耐衝撃性、耐熱水性、ヒ−トシ−ル性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性、その他等の諸物性に優れ、更に、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性、特に、水蒸気バリア性に優れ、また、積層加工、製袋加工、その他等の後加工適性にも優れ、包装用材料としての包装適性を十分に有し、更に、例えば、ボイル処理、あるいは、レトルト処理等の加熱処理を施しても、耐熱性、ボイルないしレトルト処理等の加工に伴う熱処理に耐え、無機酸化物からなるバリア性薄膜層からの層間剥離等は認められず、その密接着性に優れ、かつ、更に、引っ張り、揉み、しごき等の物理的ストレスに晒されても、そのバリア性の劣化も少なく、しかも、包装用材料として使用後、ゴミとして廃棄処理されても、それ自身微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材を製造し得ることを見出して本発明を完成したものである。
【0005】
すなわち、本発明は、生分解性樹脂フィルムの一方の面に、無機酸化物からなるバリア性薄膜層を設け、更に、該無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けることを特徴とするバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材は、微生物により分解され、最終的には水や炭酸ガス等になり、廃棄された後の処理が容易な材料である生分解生樹脂を素材として使用し、そのフィルムないしコ−ティング膜あるいは印刷膜等から構成されるものであることから、包装用材料として使用後、ゴミとして廃棄処理されても、それ自身微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なものであるという利点を有するものである。
また、本発明に係るバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材は、基材フィルムとしての生分解性樹脂フィルムの一方の面に、無機酸化物からなるバリア性薄膜層およびガスバリア性塗布膜を極めて強固に多層に積層することにより、例えば、包装用材料等に使用されるバリア性基材として、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性、特に、水蒸気バリア性に優れ、また、積層加工、製袋加工、その他等の後加工適性にも優れ、更に、例えば、レトルト処理、ボイル処理等による加熱殺菌処理等における耐水強度も著し改良することができ、極めて防湿性等に優れているものである。
特に、本発明において、ガスバリア性塗布膜は、ポリビニルアルコール系樹脂又はエチレン・ビニルアルコール共重合体と1種以上のアルコキシドとが、相互に化学的に反応して、極めて強固な三次元網状複合ポリマ−層を構成し、而して、それと無機酸化物からなるバリア性薄膜層とが相乗し、極めて高いガスバリア性を安定して維持するとともに、良好な透明性、および、耐衝撃性、耐熱水性等を備えたバリア性フィルムを製造し得ることができるものである。
また、本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを併用する場合には、ポリビニルアルコール系樹脂と1種以上のアルコキシド、エチレン・ビニルアルコール共重合体と1種以上のアルコキシド、および、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者と1種以上のアルコキシドとが各々組み合わされて、極めて複雑なハイブリット状の強固な三次元網状複合ポリマ−層を構成し、而して、それらと無機酸化物からなるバリア性薄膜層とが相乗して、更に極めて高いガスバリア性を安定して維持し、特に、酸素ガスバリア性と共に水蒸気バリア性が著しく向上し、かつ、良好な透明性、および、耐衝撃性、耐熱水性等を備えたバリア性フィルムを製造し得ることができるものである。
本発明においては、例えば、該バリア性フィルムを使用し、そのガスバリア性塗布膜の面に、生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層等を積層して積層材を製造し、しかる後、該積層材を使用し、これを製袋して包装用袋を製造し、次いで、該包装用袋内に所望の飲食品等を充填包装して包装半製品を製造し、更に、該包装半製品を、例えば、ボイル処理、あるいは、レトルト処理を施しても、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒ−トシ−ル性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性、その他等の諸物性に優れ、ボイルないしレトルト処理等の加工に伴う熱処理に耐え、無機酸化物からなるバリア性薄膜層からの層間剥離等は認められず、その密接着性に優れ、かつ、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、更に、引っ張り、揉み、しごき等の物理的ストレスに晒されても、そのバリア性の劣化も少なく、透明性に優れた極めて有用なバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材に係るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記の本発明に係るバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材について以下に図面等を用いて更に詳しく説明する。
図1は、本発明に係るバリア性フィルムについてその層構成の一例を示す概略的断面図であり、図2および図3は、図1に示す本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造した本発明に係る積層材についてその層構成の一二例を示す概略的断面図であり、図4は、図2に示す本発明に係る積層材を使用して製袋して製造した本発明に係る包装用袋についてその一例を示す概略的斜視図であり、図5は、図4に示す本発明に係る包装用袋を使用して内容物を充填包装して製造した本発明に係る包装製品についてその一例を示す概略的斜視図である。
【0008】
まず、本発明に係るバリア性フィルムAとしては、図1に示すように、生分解性樹脂フィルム1の一方の面に、無機酸化物からなるバリア性薄膜層2を設け、更に、該無機酸化物からなるバリア性薄膜層2の上に、一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜3を設けた構成からなることを基本層構成とするものである。
【0009】
次に、本発明において、本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造する積層材について、上記の図1に示す本発明に係るバリア性フィルムAを使用して製造する積層材の場合を例として説明すると、図2に示すように、上記の図1に示す本発明に係るバリア性フィルムAを構成するガスバリア性塗布膜3の面に、少なくとも、生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層11を積層した構成からなる本発明に係るバリア性フィルムを使用した積層材Bを例示することができる。
而して、本発明において、本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造する積層材について具体例を例示すると、図3に示すように、上記の図1に示す本発明に係るバリア性フィルムAを構成するガスバリア性塗布膜3の面に、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他等からなる、生分解性樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性インキ組成物による生分解性印刷模様層12を設け、更に、該生分解性印刷模様層12を含む全面に、生分解性樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性接着剤による生分解性接着剤層13を設け、而して、その生分解性接着剤層13を介して、少なくとも、生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層11を積層した構成からなる本発明に係るバリア性フィルムを使用した積層材B1 を例示することができる。
なお、本発明においては、上記のような本発明に係るバリア性フィルムを使用した積層材において、図示しないが、例えば、本発明に係るバリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜の面に、他の生分解性樹脂フィルム等からなる中間基材等を介して、生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層を積層した構成からなる本発明に係るバリア性フィルムを使用した積層材を使用することもでき、また、本発明に係るバリア性フィルムを構成する生分解性フィルムの他方の面に、更に、他の生分解性樹脂フィルム等からなるプラスチック基材を積層し、また、本発明に係るバリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜の面に、生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層を積層した構成からなる本発明に係るバリア性フィルムを使用した積層材等を使用することができる。
【0010】
更に、本発明において、本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造した積層材を使用して製袋した包装用袋についてその一例を挙げれば、かかる本発明に係る包装用袋としては、例えば、上記の図2に示す積層材Bを使用して製袋した包装用袋の場合を例として説明すると、図4に示すように、上記の積層材B、Bを2枚用意し、その最内層に位置する生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層11、11の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒ−トシ−ルしてヒ−トシ−ル部15、15、15を形成すると共に開口部16を形成して、本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造した積層材を使用して製袋した本発明に係る三方シ−ル型の包装用袋Cを製造することができる。
【0011】
而して、本発明においては、図5に示すように、上記で製造した本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造した積層材を使用して製袋した本発明に係る三方シ−ル型の包装用袋Cを使用し、その開口部16から、例えば、飲食品等の内容物17を充填し、次いで、上方の開口部16をヒ−トシ−ルして上方のシ−ル部18等を形成して、種々の形態からなる包装製品Dを製造することができるものである。
なお、本発明においては、図示しないが、上記で製造した本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造した積層材を使用して製袋した本発明に係る三方シ−ル型の包装用袋を使用し、その開口部から、例えば、カレ−、シチュ−、ス−プ、ミ−トソ−ス、ハンバ−グ、ミ−トボ−ル、しゅうまい、おでん、その他等の所望の飲食品等の内容物を充填し、次いで、上方の開口部をヒ−トシ−ルして上方のシ−ル部等を形成して包装半製品を製造し、しかる後、該包装半製品を、例えば、温度、110℃〜130℃位、圧力、1〜3Kgf/cm2 ・G位で20〜60分間程度加圧加熱殺菌処理等のレトルト処理等を施して、種々の形態からなるレトルト包装製品を製造することができるものである。
また、本発明においては、上記のようなレトルト処理に代えて、例えば、90℃位で30分間位煮沸して加熱殺菌処理等を施して、ボイル加熱殺菌処理包装製品を製造することもできるものである。
また、本発明においては、図示しないが、上記の図3に示す本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造した積層材を使用し、上記と同様にして、上記と同様に、本発明に係るバリア性フィルムを使用して製造した積層材を使用して製袋した包装用袋、包装製品等を製造し得ることがでるものである。
なお、本発明において、本発明に係る包装用袋、包装製品等としては、上記に図示した例示の包装用袋の形状に限定されるものでないことは言うまでもないことであり、その目的、用途等により、四方シ−ル型、自立性型、ガゼット型、角底型、ピロ−型、その他等の種々の形態からなる包装用袋を製造することができるものである。
【0012】
上記の例示は、本発明に係るバリア性フィルム、それを使用した積層材、および、積層材を使用して製袋した包装用袋、包装製品等について、その一二例を例示したものであり、本発明はこれらによって限定されるものではないものである。
例えば、本発明においては、図示しないが、更に、その使用目的、用途等によって、他の素材等を任意に使用し、種々の形態からなるバリア性フィルム、該バリア性フィルムを使用した積層材、および、積層材を使用して製袋した包装用袋、包装製品等を設計して製造することができるものである。
また、例えば、図示しないが、本発明においては、無機酸化物からなるバリア性薄膜層としては、無機酸化物からなるバリア性薄膜層の1層からなる単層膜のみならず無機酸化物からなるバリア性薄膜層の2層以上からなる多層膜等から構成することもできるものである。
【0013】
次に、本発明において、本発明に係るバリア性フィルム、積層材、包装用袋、包装製品等を構成する材料、製造法等について説明すると、まず、本発明に係るバリア性フィルムを構成する生分解性樹脂フィルムについて説明すると、かかる生分解性樹脂フィルムとしては、これが、本発明に係るバリア性フィルムを構成する基本素材となること、更に、無機酸化物からなるバリア性薄膜層等を保持する基材であること等から、まず、それらの形成、加工等の条件に耐え、かつ、その特性を損なうことなくそれらを良好に保持し得ることができること、更に、包装用袋の製袋に際し、加工作業性、耐熱性、滑り性、耐ピンホ−ル性、その他等の諸物性に優れ、更に、その他等の条件を充足し得る生分解性樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
本発明において、上記の生分解性樹脂のフィルムないしシ−トとしては、具体的には、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネ−ト(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、または、ポリ3−ヒドロキシ酪酸(PHB)等の脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体(CPAE)、エステル結合を含む脂肪族ポリウレタン、エステル結合が導入されたビニル系ポリマ−、または、脂肪族ポリカ−ボネ−ト等のエステル結合以外の結合をも含む脂肪族ポリエステル、汎用プラスチックと脂肪族ポリエステルからなるブレンド体、でんぷん系等の天然高分子、水溶性のポリビニルアルコ−ル(PVA)、プルラン、その他等の各種の生分解性樹脂を使用し、これを製膜化した生分解性樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
【0014】
本発明において、上記の生分解性樹脂のフィルムないしシ−トとしては、例えば、上記の各種の生分解性樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレ−ション法、その他等の製膜化法を用いて、上記の各種の生分解性樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の生分解性樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、更には、2種以上の生分解性樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種の生分解性樹脂のフィルムないしシ−トを製造し、更に、要すれば、例えば、テンタ−方式、あるいは、チュ−ブラ−方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の生分解性樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
本発明において、各種の生分解性樹脂のフィルムないしシ−トの膜厚としては、6〜200μm位、より好ましくは、9〜100μm位が望ましい。
【0015】
なお、上記の各種の生分解性樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することがてきる。
【0016】
また、本発明において、各種の生分解性樹脂のフィルムないしシートの表面は、無機酸化物からなるバリア性薄膜層等との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けることができるものである。
本発明において、上記の表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施し、例えば、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層、その他等を形成して設けることができる。
上記の表面前処理は、各種の生分解性樹脂のフィルムないしシートと無機酸化物からなるバリア性薄膜層との密接着性等を改善するための方法として実施するものであるが、上記の密接着性等を改善する方法として、更に、例えば、各種の生分解性樹脂樹脂のフィルムないしシートの表面に、予め、例えば、各種の界面活性剤、その他等からなる帯電防止剤を施して帯電防止処理層等を形成して、表面処理層とすることもできる。
なお、本発明においては、上記の帯電防止剤は、上記の各種の生分解性樹脂に練り込み加工して表面処理層とすることもできる。
【0017】
次に、本発明において、本発明に係るバリア性フィルムを構成する無機酸化物からなるバリア性薄膜層について説明すると、かかる無機酸化物からなるバリア性薄膜層としては、例えば、化学気相成長法、または、物理気相成長法、あるいは、その両法を併用する方法等により無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して構成することができるものである。
【0018】
本発明において、上記の化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜について更に詳しく説明すると、かかる化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いて無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
本発明においては、具体的には、生分解性樹脂フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガスを原料とし、キャリヤ−ガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することがてき、而して、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0019】
具体的に、上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその一例を例示して説明すると、図6は、上記のプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその概要を示す低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。
本発明においては、図6に示すように、プラズマ化学気相成長装置21の真空チャンバ−22内に配置された巻き出しロ−ル23から生分解生樹脂フィルム1を繰り出し、更に、該生分解生樹脂フィルム1を、補助ロ−ル24を介して所定の速度で冷却・電極ドラム25周面上に搬送する。
而して、本発明においては、ガス供給装置26、27および、原料揮発供給装置28等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガス、その他等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しなから原料供給ノズル29を通して真空チャンバ−22内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム25周面上に搬送された、生分解生樹脂フィルム1の上に、グロ−放電プラズマ30によってプラズマを発生させ、これを照射して、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。
本発明においては、その際に、冷却・電極ドラム25は、真空チャンバ−22の外に配置されている電源31から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム25の近傍には、マグネット32を配置してプラズマの発生が促進されている。
次いで、上記で生分解生樹脂フィルム1の一方の面に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成したその生分解生樹脂フィルム1を、補助ロ−ル33を介して巻き取りロ−ル34に巻き取って、本発明にかかるプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができるものである。
なお、図中、35は、真空ポンプを表す。
上記の例示は、その一例を例示するものであり、これによって本発明は限定されるものではないことは言うまでもないことである。
図示しないが、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜としては、無機酸化物の蒸着膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0020】
上記において、真空チャンバ−内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調製することが望ましいものである。
また、原料揮発供給装置においては、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバ−内に導入されるものである。
この場合、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%位、酸素ガスの含有量は、10〜70%位、不活性ガスの含有量は、10〜60%位の範囲とすることができ、例えば、有機珪素化合物と酸素ガスと不活性ガスとの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。
一方、冷却・電極ドラムには、電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバ−内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロ−放電プラズマが生成され、このグロ−放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、生分解性樹脂フィルムを一定速度で搬送させ、グロ−放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の生分解性樹脂フィルムの上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができるものである。
なお、このときの真空チャンバ−内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr位、好ましくは、真空度1×10-1〜1×10-2Torr位に調製することが望ましく、また、生分解性樹脂フィルムの搬送速度は、10〜300m/分位、好ましくは、50〜150m/分位に調製することが望ましいものである。
【0021】
また、上記のプラズマ化学気相成長装置において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、生分解性樹脂フィルムの上に、、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOX の形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となるものであり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高いものとなり、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができるものである。
また、本発明においては、SiOX プラズマにより生分解性樹脂フィルムの表面が、清浄化され、生分解生樹脂フィルムの表面に、極性基やフリ−ラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と生分解性樹脂フィルムとの密接着性が高いものとなるという利点を有するものである。
更に、上記のように酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr位、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torr位に調製することから、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torr位に比較して低真空度であることから、生分解性樹脂フィルムを原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度を安定しやすく、製膜プロセスが安定するものである。
【0022】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマ−ガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマ−ガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、生分解性樹脂フィルムの面と密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX (ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。
而して、上記の酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX (ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましいものである。
上記において、Xの値は、蒸着モノマ−ガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギ−等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0023】
また、上記の酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、これに、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または、その2種類以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。
例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラ−レン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。
具体例を挙げると、CH3 部位を持つハイドロカ−ボン、SiH3 シリル、SiH2 シリレン等のハイドロシリカ、SiH2 OHシラノ−ル等の水酸基誘導体等を挙げることができる。
上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。
而して、上記の化合物が、酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%位、好ましくは、5〜20%位が望ましいものである。
上記において、含有率が、0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなとにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になり、また、50%を越えると、バリア性が低下して好ましくないものである。
更に、本発明においては、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が、酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少させることが好ましく、これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面においては、上記の化合物等により耐衝撃性等を高められ、他方、生分解性樹脂フィルムの面との界面においては、上記の化合物の含有量が少ないために、生分解性樹脂フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなるという利点を有するものである。
【0024】
而して、本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜について、例えば、X線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析する方法を利用して、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことより、上記のような物性を確認することができる。
また、本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜の膜厚としては、膜厚50Å〜4000Å位であることが望ましく、具体的には、その膜厚としては、100〜1000Å位が望ましく、而して、上記において、1000Å、更には、4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、また、100Å、更には、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になることから好ましくないものである。
上記のおいて、その膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメ−タ−法で測定することができる。 また、上記において、上記の酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくすること、すなわち、モノマ−ガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0025】
次に、上記において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガスとしては、例えば、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。
本発明において、上記のような有機珪素化合物の中でも、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に、好ましい原料である。
また、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0026】
次に、本発明において、上記の物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜について更に詳しく説明すると、かかる物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタ−ビ−ム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)を用いて無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
本発明において、具体的には、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを生分解性樹脂フィルムの面に蒸着する真空蒸着法、あるいは、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて生分解性樹脂フィルムの面に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。
上記において、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビ−ム加熱方式(EB)等にて行うことができる。
【0027】
本発明において、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する方法について、その具体例を挙げると、図7は、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
図7に示すように、巻き取り式真空蒸着装置41の真空チャンバ−42の中で、巻き出しロ−ル43から繰り出す、生分解性樹脂フィルム1は、ガイドロ−ル44、45を介して、冷却したコ−ティングドラム46に案内される。
而して、上記の冷却したコ−ティングドラム46上に案内された、生分解性樹脂フィルム1の上に、るつぼ47で熱せられた蒸着源48、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口49より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク50、50を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成した生分解性樹脂フィルム1を、ガイドロ−ル51、52を介して送り出し、巻き取りロ−ル53に巻き取ることによって、本発明にかかる物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
なお、本発明においては、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず、第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、同様にして、該無機酸化物の蒸着膜の上に、更に、無機酸化物の蒸着膜を形成するか、あるいは、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、これを2連に連接し、連続的に、無機酸化物の蒸着膜を形成することにより、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0028】
上記において、金属または無機酸化物の蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能であり、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。
而して、好ましいものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。
また、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物として呼ぶことができ、その表記は、例えば、SiOX 、AlOX 、MgOX 等のようにMOX (ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1、5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。
また、上記において、X=0の場合、完全な金属であり、透明ではなく全く使用することができない、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。
本発明において、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しく、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
本発明において、上記のような無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、使用する金属、または、金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å位、好ましくは、100〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。
また、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0029】
なお、本発明において、上記の物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、具体的には、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を使用することが好ましく、更に具体的に述べれば、式AlOX (式中、Xは、0.5〜1.5の範囲の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜であり、かつ、該酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜が、その薄膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が減少している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜からなるものを使用することができる。
あるいは、本発明において、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜としては、式AlOX (式中、Xは、0.5〜1.5の範囲の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜であり、かつ、該酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜が、その薄膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が増加している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を使用することができる。
なお、本発明において、上記の式中のXの値としては、基本的には、X=0.5以上のものを使用することができるが、本発明においては、X=1.0未満になると、着色が激しく、かつ、透明性に劣ることから、X=1.0以上のものを使用することが望ましく、また、X=1.5のものは、アルミニウムと酸素とが完全に酸化した状態のものであることから、上限としては、X=1.5までのものを使用することができる。
次に、本発明において、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜の膜厚としては、例えば、10〜3000Å位、好ましくは、60〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。
【0030】
而して、本発明において、上記の式AlOX (式中、Xは、1.0〜1.5の範囲の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜であり、かつ、該酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜が、その薄膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が減少している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成する方法について具体的に説明すると、上記の図7に示す巻き取り式真空蒸着装置を使用して具体的に酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成することができる。
本発明においては、まず、真空チャンバ−の中で、巻き出しロ−ルから繰り出した生分解性樹脂フィルムは、冷却したコ−ティングドラムに案内される。
而して、上記の冷却したコ−ティングドラム上に案内された生分解性樹脂フィルムの上に、るつぼで熱せられた蒸着源、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスクを介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸非結晶の薄膜を成膜化するものであるが、その際に、上記のるつぼと酸素吹き出し口との位置関係を調整し、該るつぼと酸素吹き出し口の配置位置を中心線からずらし、るつぼを中心線の位置に配置し、他方、酸素吹き出し口を中心線から生分解性樹脂フィルムの排出側にずらして配置する。
而して、上記のような配置関係の状態で、るつぼで蒸発源としての熱せられたアルミニウム、または、アルミニウムの酸化物を蒸発させる。
他方、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物を噴出させながら、更に、酸素吹き出し口より酸素を噴出させ、而して、酸素を噴出させる際に、酸素の噴出濃度を変化させ、最初は低くし、その後、徐々に高くしながら酸素を噴出させる。
上記のように、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物と酸素とを、その酸素の噴出位置あるいはその濃度を変化させながら、生分解性樹脂フィルムの表面に、マスクを介して、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物のガスと酸素のガスとを噴出、蒸着させると、生分解性樹脂フィルムの表面に酸化アルミニウムの非結晶の薄膜を成膜するときに、該アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物ガスと酸素のガスとが相互に作用して、マスクを介して、生分解性樹脂フィルムの表面に、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を成膜化して、その膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が減少している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成することができるものである。
【0031】
上記において、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物は、その両者の混合物も蒸着源として使用することもできる。
また、上記において、アルミニウム、またはアルミニウムの酸化物と酸素の噴出は、実際的には、放射状に濃度分布をもって噴出しているものと考えられるものである。
更に、上記において、生分解性樹脂フィルムは、マスクとマスクとの間の領域で酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜が成膜化されるが、ここで、最初は、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物を噴出しながら、酸素の割合が少ない領域を通り、そこで、まず、AlOX のXの値が小さい薄膜を成膜化する。
次に、可撓性プラスチック基材は、更に、進んで行くと、徐々に酸素の割合が増加しながら、アルミニウム、またはアルミニウムの酸化物を噴出すると、AlOX のXの値が大きい膜を成膜化する。
以上のような方法で、生分解性樹脂フィルムの表面に、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を成膜化して、その膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が減少している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成することができるものである。
上記のように、るつぼと酸素吹き出し口との位置関係をずらす方法は、その一例であり、その他、例えば、るつぼやコ−ティングドラムを移動させたり、酸素吹き出し口を傾けたり、種々の方法で酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成することができる。
【0032】
上記の蒸着において、真空チャンバ−の真空度としては、100 〜10-5mbar位、好ましくは、10-1〜10-4mbar位が望ましい。
また、蒸着チャンバ−の真空度としては、酸素導入前においては、10-2〜10-8mbar位、好ましくは、10-3〜10-7mbar位が望ましいく、酸素導入後においては、10-1〜10-6mbar位、好ましくは、10-2〜10-5mbar位が望ましい。
次に、生分解性樹脂フィルムの搬送速度としては、10〜800m/分位、好ましくは、50〜600m/分位が望ましい。
なお、酸素導入量等は、蒸着機の大きさ等によって異なる。
【0033】
次にまた、本発明において、生分解性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、式AlOX (式中、Xは、0.5〜1.5の範囲の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜であって、かつ、該酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜が、その膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が増加している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成する方法について具体的に説明すると、前述の図7に示す巻き取り式真空蒸着装置を使用して具体的に酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成することができる。
本発明においては、まず、真空チャンバ−の中で、巻き出しロ−ルから繰り出した生分解性樹脂フィルムは、冷却したコ−ティングドラムに案内される。
而して、上記の冷却したコ−ティングドラム上に案内された生分解性樹脂フィルムの上に、るつぼで熱せられた蒸着源、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスクを介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の非結晶性の薄膜を成膜化するものであるが、その際に、上記のるつぼと酸素吹き出し口との位置関係を調整し、該るつぼと酸素吹き出し口の配置位置を中心線からずらし、るつぼを中心線の位置に配置し、他方、酸素吹き出し口を中心線から生分解性樹脂フィルムの進入側にずらして配置する。
而して、上記のような配置関係の状態で、るつぼで蒸発源としての熱せられたアルミニウム、または、アルミニウムの酸化物を蒸発させて噴出させる。
他方、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物を噴出させながら、更に、酸素吹き出し口より酸素を噴出させ、而して、酸素を噴出させる際に、酸素の噴出濃度を変化させ、最初は高くし、その後、徐々に低くしながら酸素を噴出させる。
上記のように、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物と酸素とを、その酸素の噴出位置、あるいは濃度を変化させながら、生分解性樹脂フィルムの表面に、マスクを介して、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物のガスと酸素のガスとを噴出、蒸着させると、生分解性樹脂フィルムの表面に蒸着膜を成膜するときに、該アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物ガスと酸素のガスとが相互に作用して、マスクを介して、生分解性樹脂フィルムの表面に、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を成膜化して、その膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が増加している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成することができるものである。
【0034】
上記において、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物は、その両者の混合物も蒸着源として使用することができる。
また、上記において、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物と酸素の噴出は、実際的には、放射状に濃度分布をもって噴出しているものと考えられるものである。
更に、上記において、生分解性樹脂フィルムは、マスクとマスクとの間の領域で酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜が成膜化されるが、ここで、最初は、アルミニウム、またはアルミニウムの酸化物を噴出させながら、酸素の割合が多い領域を通り、そこで、まず、AlOX のXの値が大きい薄膜を成膜化する。
次に、生分解性樹脂フィルムは、更に、進んで行くと、徐々に酸素の割合が減少しながら、アルミニウム、または、アルミニウムの酸化物を噴出させて、そこで、AlOX のXの値が小さい膜を成膜化する。
以上のような方法で、生分解性樹脂フィルムの表面に、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を成膜化して、その膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が増加している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成することができるものである。
上記のように、るつぼと酸素吹き出し口との位置関係をずらす方法は、その一例であり、その他、例えば、るつぼやコ−ティングドラムを移動させたり、酸素吹き出し口を傾けたり、その他、種々の方法で酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成することができものである。
【0035】
上記の蒸着機において、真空チャンバ−の真空度としては、前述と同様に、100 〜10-5mbar位、好ましくは、10-1〜10-4mbar位が望ましい。
また、蒸着チャンバ−の真空度としては、酸素導入前においては、10-2〜10-8mbar位、好ましくは、10-3〜10-7mbar位が望ましいく、酸素導入後においては、10-1〜10-6mbar位、好ましくは、10-2〜10-5mbar位が望ましい。
次に、生分解性樹脂フィルムの搬送速度としては、10〜800m/分位、好ましくは、50〜600m/分位が望ましい。
なお、酸素導入量等は、蒸着機の大きさ等によって異なる。
【0036】
而して、本発明において、上記の物理気相成長法による無機酸化物からなる薄膜層において、酸化アルミニウムからなる蒸着層としては、酸化度が高すぎると、形成される膜質が硬くなることからクラックが入り易くなり、また、酸化度が低すぎると、透明性が低下することから、蒸着中ないし、蒸着直後の紫外線(波長366nm)透過率が85〜96%の範囲、より好ましくは、87〜94%の範囲内であり、かつ、膜厚が、後加工適性を考慮して、150〜600Åの範囲内である酸化アルミニウムの蒸着膜からなるものを使用することが好ましいものであり、また、酸化珪素からなる蒸着層としては、一酸化珪素と珪素との混合物を原料とし、膜厚が、後加工適性を考慮して、50〜300Åの範囲内である物理気相成長法による酸化珪素の蒸着膜を使用することが好ましいものである。
【0037】
なお、本発明において、生分解性樹脂フィルムの面に、無機酸化物の蒸着膜を形成する場合、該生分解性樹脂フィルムの面と無機酸化物の蒸着膜の面との密接着性等を向上させ終局的には、その両者を強固に密着させて、その層間剥離(デラミ)等の発生を防止するために、上記の生分解性樹脂フィルムの表面に、予め、不活性ガスによるプラズマ処理を施してプラズマ処理面等を設けることが好ましいものである。
而して、本発明において、不活性ガスによるプラズマ処理面について説明すると、かかるプラズマ処理面としては、生分解性樹脂フィルムの一方の面に、気体をア−ク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行うプラズマ表面処理法等を利用して、プラズマ処理面を形成することがてきる。
すなわち、本発明においては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、その他等の不活性ガスをプラズマガスとして使用するプラズマ表面処理法でプラズマ処理を行うことによりプラズマ処理面を形成することができる。
なお、本発明において、プラズマガスとしては、上記の不活性ガスに、更に、酸素ガスを添加した混合ガスを使用することもできる。
また、本発明において、不活性ガスによるプラズマ処理面を形成する場合、例えば、物理気相成長法または化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、生分解性樹脂フィルムの表面の水分、塵等を除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることから望ましいものである。
更に、本発明において、上記のプラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他等の条件を考慮してプラズマ放電処理をおこなうことが好ましいものである。
また、本発明において、プラズマを発生させる方法としては、例えば、直流グロ−放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他等の装置を利用して行うことができる。
また、本発明においては、大気圧プラズマ処理法等を利用してプラズマ処理面を形成することもできる。
【0038】
次に、本発明において、本発明に係るバリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜について説明すると、かかるガスバリア性塗布膜としては、一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルーゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製する工程、生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、必要ならば、酸素ガスによるプラズマ処理面を介して、上記のゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設ける工程、上記の塗工膜を設けた生分解性樹脂フィルムを、20℃〜180℃で、かつ、上記の生分解性樹脂フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して、上記の生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、要すれば、酸素ガスによるプラズマ処理面を介して、上記のガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を形成する工程等を包含する製造工程により製造することができる。
【0039】
なお、本発明において、本発明に係るバリア性フィルムを形成するガスバリア性塗布膜としては、一般式R1 n M(OR2 m(ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルーゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製し、これを使用し、生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、2層以上重層し、上記のガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を2層以上重層した複合ポリマ−層を形成して製造することもできる。
【0040】
上記において、本発明にかかるガスバリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜を形成する一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用される。
【0041】
上記の一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を使用することができる。
而して、本発明において、好ましい金属としては、例えば、ケイ素、チタン等を挙げることができる。
また、本発明において、アルコキシドの用い方としては、単独又は2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
【0042】
また、上記の一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドにおいて、R1 で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、その他等のアルキル基を挙げることができる。
また、上記の一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドにおいて、R2 で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。
なお、本発明において、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0043】
而して、本発明において、上記の一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがSiであるアルコキシシランを使用することが好ましいものである。
上記のアルコキシシランとしては、一般式Si(ORa )4 (ただし、式中、Raは、低級アルキル基を表す。)で表されるものである。
上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。
上記のアルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン Si(OCH3 4 、テトラエトキシシラン Si(OC2 5 4 、テトラプロポキシシラン Si(0C 37 4 、テトラブトキシシラン Si(OC4 9 4 、その他等を使用することができる。
【0044】
また、本発明において、上記の一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドとしては、例えば、一般式Rbn Si(ORc)4-m (ただし、式中、nは、0以上の整数を表し、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。
上記のアルキルアルコキシシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン CH3 Si(OCH3 3 、メチルトリエトキシシラン CH3 Si(OC2 5 3 、ジメチルジメトキシシラン (CH3 2 Si(OCH3 2 、ジメチルジエトキシシラン (CH3 2 Si(OC2 5 2 、その他等を使用することができる。
上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独又は2種以上を混合しても用いることができる。
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他等を使用することができる。
【0045】
次に、本発明において、上記の一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがZrであるジルコニウムアルコキシドを使用することができる。
上記のジルコニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシジルコニウム Zr(OCH3 4 、テトラエトキシジルコニウム Zr(OC2 5 4 、テトラiプロポキシジルコニウム Zr(is0−0C 37 4 、テトラnブトキシジルコニウム Zr(OC4 9 4 、その他等を使用することができる。
【0046】
また、本発明において、上記の一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがTiであるチタニウムアルコキシドを使用することができる。
上記のチタニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタニウム Ti(OCH3 4 、テトラエトキシチタニウム Ti(OC2 5 4 、テトライソプロポキシチタニウム Ti(is0−0C 37 4 、テトラnブトキシチタニウム Ti(OC4 9 4 、その他等を使用することができる。
【0047】
更に、本発明において、上記の一般式R1 n M(OR2 m で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができる。
上記のアルミニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシアルミニウム Al(OCH3 4 、テトラエトキシアルミニウム Al(OC2 5 4 、テトライソプロポキシアルミニウム Al(is0−0C 37 4 、テトラnブトキシアルミニウム Al(OC4 9 4 、その他等を使用することができる。
【0048】
なお、本発明においては、上記のようなアルコキシドは、その2種以上を混合して用いてもよいものである。
而して、本発明において、特に、アルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られるバリア性フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避されるものである。
上記のジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100重量部に対して10重量部以下の範囲であり、好ましくは、約5重量部位が好ましいものである。 上記において、10重量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、生分解性樹脂フィルムを被覆した際にガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0049】
また、本発明において、特に、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、バリア性フィルムの耐熱性が著しく向上するという利点がある。
上記において、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100重量部に対して5重量部以下の範囲であり、好ましくは、約3重量部位が好ましいものである。
上記において、5重量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、生分解性樹脂フィルムを被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0050】
次に、本発明に係るバリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜を形成するポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体としては、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ−ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを組み合わせて使用することができ、而して、本発明において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を使用することにより、ガスバリア性塗布膜のガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができるものである。
特に、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することにより、上記のガスバリア性、耐水性、および耐候性等の物性に加えて、耐熱水性および熱水処理後のガスバリア性等に著しく優れたガスバリア性塗布膜を形成することができるものである。
【0051】
本発明において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、重量比で、ポリビニルアルコ−ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましく、更には、約10:1位の配合割合で使用することが更に好ましいものである。
【0052】
また、本発明において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体との含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であり、好ましくは、約20〜200重量部位の配合割合でガスバリア性組成物を調製することが好ましいものである。
上記において、500重量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるガスバリア性積層フィルムの耐水性および耐候性等も低下する傾向にあることから好ましくなく、更に、5重量部を下回るとガスバリア性が低下することから好ましくないものである。
【0053】
本発明において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体としては、まず、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。
上記のポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、もしくは、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、あるいは、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。
上記ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。
【0054】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。
具体的には、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが望ましいものである
また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものを使用することが好ましいものである。
上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
【0055】
次に、本発明において、本発明に係るバリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜を形成するガスバリア性組成物について説明すると、かかるガスバリア性組成物としては、前述のような一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルーゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製するものである。
【0056】
上記のガスバリア性組成物を調製するに際し、例えば、シランカップリング剤等も添加することができるものである。
而して、上記のシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。
本発明においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。
上記のようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。 本発明において、上記のようなシランカップリング剤の使用量は、上記のアルコキシシラン100重量部に対して1〜20重量部位の範囲内で使用することができる。
上記において、20重量部以上を使用すると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する傾向にあることから好ましくないものである。
【0057】
次に、上記のガスバリア性組成物において用いられる、ゾルーゲル法触媒、主として、重縮合触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンが用いられる。
具体的には、例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。
本発明においては、特に、N、N−ジメチルべンジルアミンが好適である。
その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100重量部当り、0.01〜1.0重量部、好ましくは、約0.03重量部位使用することが好ましいものである。
また、上記のガスバリア性組成物において用いられる、酸としては、上記ゾルーゲル法の触媒、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。
上記の酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他等を使用することができる。
上記の酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モル位、好ましくは、約0.01モル位を使用することが好ましいものである。
【0058】
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水をもちいることができる。
上記の水の量が、2モルを越えると、上記のアルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、而して、そのような多孔性のポリマーは、バリア性フィルムのガスバリア性を改善することができなくなることから好ましくないものである。
また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0059】
更にまた、上記のガスバリア性組成物において用いられる、有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。
更に、上記のガスバリア性組成物において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態であることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択されるものである。
ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。
本発明において、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(商品名)として市販されているものを使用することができる。
上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾルーゲル法触媒の合計量100重量部当り30〜500重量部位である。
【0060】
次に、本発明においては、本発明に係るバリア性フィルムは、具体的には、例えば、以下のようにして製造される。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾルーゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合してガスバリア性組成物(塗工液)を調製する。
次に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物(塗工液)を通常の方法で塗布し、乾燥する。
而して、上記の乾燥により、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が進行し、塗工膜が形成される。
更に、好ましくは、上記の塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗工膜を積層する。
最後に、上記の塗工液を塗布した生分解性樹脂フィルムを20℃〜180℃位で、かつ、生分解性樹脂フィルムの融点以下の温度、好ましくは、約50℃〜160℃位の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理して、生分解性樹脂フィルムの一方の面に形成した無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成して、本発明に係るバリア性フィルムを製造することができる。
このようにして得られた本発明に係るバリア性フィルムは、ガスバリア性に優れているものである。
【0061】
なお、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂の代わりに、エチレン・ビニルアルコール共重合体、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて、上記と同様に、塗工、乾燥および加熱処理を行うことにより製造される本発明に係るバリア性フィルムにおいては、ボイル処理、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリア性が更に向上するという利点を有するものである。
【0062】
更に、本発明においては、上記のようにエチレン・ビニルアルコール共重合体、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用しない場合、すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用して、本発明に係るバリア性フィルムを製造する場合には、熱水処理後のガスバリアー性を向上させるために、例えば、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗工層を形成し、次いで、その塗工層の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗工層を形成し、それらの複合層を形成することにより、本発明に係るバリア性フィルムのガスバリア性を向上させることを可能とするものである。
【0063】
更にまた、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層を、複数層重層して形成することによっても、本発明に係るバリア性フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となるものである。
【0064】
次に、本発明に係るバリア性フィルムの製造法について、アルコキシドとして、アルコキシシランをする場合を事例としてその作用を説明すると、まず、アルコキシシランおよび金属アルコキシドは、添加された水によって、加水分解される。
その際、酸が加水分解の触媒となる。
次いで、ゾルーゲル法触媒の働きによって、生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。
このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
また、塩基触媒の働きにより、エポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。
加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。
さらに、反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とが存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。
生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、その他等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーを構成する
上記の反応においては、例えば、下記の式(III)に示される部分構造式を有し、更に、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)が、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。
このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾルーゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。
すなわち、このOH基が、下記の式(I)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)及び(VI)に示される共重合した複合ポリマーが生じると考えられるものである。
【0065】
【化1】

【0066】
【化2】

【0067】
【化3】

【0068】
【化4】

【0069】
【化5】

【0070】
【化6】

【0071】
上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物(塗工液)は、調製中に粘度が増加する。
このガスバリア性組成物(塗工液)を、生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けたと無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に透明な塗工層が形成される。
上記の塗工層を複数層積層する場合には、層間の塗工層中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
更に、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の表面の水酸基等と結合するため、生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の表面と、塗工層との密着性、接着性等も良好なものとなるものである。
【0072】
本発明の方法においては、添加される水の量が、アルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは、1 .5 モルに調節されているため、上記の直鎖状のポリマーが形成される。
このような直鎖状ポリマーは、結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。
このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため良好なガスバリアー性を示す。
【0073】
本発明に係るバリア性フィルムは、上記のような優れた特性を有するので、包装材料として有用であり、特に、ガスバリア性(O2 、N2 、H2 O、CO2 、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れるため、食品包装用フィルムを構成するバリア性基材として、好適に使用されるものである。
特に、N2 あるいは、CO2 ガス等を充填した、いわゆる、ガス充填包装に用いた場合には、その優れたガスバリア性が、充填ガスの保持に極めて有効となる。
更に、本発明に係るバリア性フィルムは、熱水処理、特に、高圧熱水処理(レトルト処理)に優れ、極めて優れたガスバリア性特性を示すものである。
【0074】
本発明においては、無機酸化物からなるバリア性薄膜層とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成し、無機酸化物からなるバリア性薄膜層とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得るものである。
上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロ−ルコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコ−ト、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗工膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明の第1または第2のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
また、必要ならば、本発明のガスバリア性組成物を塗布する際に、予め、無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、プライマー剤等を塗布することもできるものであり、また、コロナ放電処理あるいはプラズマ処理、その他等の前処理を任意に施すことができるものである。
【0075】
以上において説明したように、本発明に係るバリア性フィルムは、生分解性樹脂フィルムの一方の面に、必要ならば設ける不活性ガスによるプラズマ処理面、無機酸化物からなるバリア性薄膜層、要すれば設ける酸素ガスによるプラズマ処理面あるいはプライマ−剤層、および、ガスバリア性塗布膜を順次に積層したことを特徴とするバリア性フィルムに係るものである。
而して、本発明に係るバリア性フィルムは、生分解性樹脂フィルム、無機酸化物からなるバリア性薄膜層、ガスバリア性塗布膜等との良好な密接着性を有し、更に、高いガスバリア性を安定して維持すると共に良好な透明性、及び、対熱水性、耐衝撃性等を備え、包装用袋等を構成するバリア性素材として極めて有用なものであり、これに、例えば、生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層、中間基材、プラスチック基材、その他等を任意に積層して、種々の層構成からなる包装用材料としての積層材を製造し、次いで、これを使用し、製袋して、種々の形態からなる包装用袋を製造し得るものである。
【0076】
上記の本発明において、本発明に係る積層材を構成する生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層について説明すると、かかる生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層としては、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、前述のポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネ−ト(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、または、ポリ3−ヒドロキシ酪酸(PHB)等の脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体(CPAE)、エステル結合を含む脂肪族ポリウレタン、エステル結合が導入されたビニル系ポリマ−、または、脂肪族ポリカ−ボネ−ト等のエステル結合以外の結合をも含む脂肪族ポリエステル、汎用プラスチックと脂肪族ポリエステルからなるブレンド体、でんぷん系等の天然高分子、水溶性のポリビニルアルコ−ル(PVA)、プルラン、その他等の各種の生分解性樹脂を使用し、これを製膜化した生分解性樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
なお、上記の生分解性樹脂のフィルムないしシ−トとしては、その塗布膜ないし印刷膜、あるいは、溶融押出樹脂膜等も使用することができる。
上記の生分解性樹脂のフィルムないしシ−トは、単層ないし多層で使用することができ、また、上記の樹脂のフィルムないしシ−トの厚さとしては、5μm〜300μm位、好ましくは、10μm〜110μm位が望ましい。
更に、本発明において、上記の樹脂のフィルムないしシ−トの厚さとしては、本発明に係る積層材を使用し、包装用袋の製袋時において、本発明に係るバリア性フィルムを構成する無機酸化物からなるバリア性薄膜層に、擦り傷、あるいは、クラック等を発生するすることを防止するために、比較的に、その膜厚を厚くすることが好ましく、具体的には、40μm〜110μm位、望ましくは、50μm〜100μm位であることが好ましいものである。
【0077】
次に、本発明において、本発明に係る積層材等を構成する生分解性印刷模様層について説明すると、かかる生分解性印刷模様層としては、例えば、前述のポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネ−ト(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、または、ポリ3−ヒドロキシ酪酸(PHB)等の脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体(CPAE)、エステル結合を含む脂肪族ポリウレタン、エステル結合が導入されたビニル系ポリマ−、または、脂肪族ポリカ−ボネ−ト等のエステル結合以外の結合をも含む脂肪族ポリエステル、汎用プラスチックと脂肪族ポリエステルからなるブレンド体、でんぷん系等の天然高分子、水溶性のポリビニルアルコ−ル(PVA)、プルラン、その他等の各種の生分解性樹脂を使用し、その1種ないし2種以上を使用してインキを構成するビヒクルの主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練して生分解性インキ組成物を調整し、次いで、該生分解性インキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリ−ン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式を使用し、前述の生分解性樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層とガスバリア性塗布膜の面に、文字、図形、記号、模様、その他等からなる所望の印刷模様を印刷して、本発明にかかる生分解性印刷模様層を形成することができるものである。
【0078】
また、本発明において、本発明に係る積層材等を構成する生分解性接着剤層について説明すると、かかる生分解性接着剤層としては、例えば、前述のポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネ−ト(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、または、ポリ3−ヒドロキシ酪酸(PHB)等の脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体(CPAE)、エステル結合を含む脂肪族ポリウレタン、エステル結合が導入されたビニル系ポリマ−、または、脂肪族ポリカ−ボネ−ト等のエステル結合以外の結合をも含む脂肪族ポリエステル、汎用プラスチックと脂肪族ポリエステルからなるブレンド体、でんぷん系等の天然高分子、水溶性のポリビニルアルコ−ル(PVA)、プルラン、その他等の各種の生分解性樹脂を使用し、その1種ないし2種以上を使用して接着剤を構成するビヒクルの主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、必要ならば、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練して生分解性接着剤組成物を調整し、次いで、該生分解性接着剤組成物を使用し、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリ−ン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式、あるいは、ロ−ルコ−ト、グラビアロ−ルコ−ト、スプレイコ−ト、スリットコ−ト、ディップコ−ト、キスコ−ト、その他等のコ−ティング方式を使用し、前述の生分解性印刷模様層を含む全面に、印刷ないしコ−ティングして、本発明に係る生分解性接着剤層を形成することができる。
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
而して、本発明においては、積層する両者の一方の面に、上記の接着剤を、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施し、次いで、溶剤等を乾燥させてラミネート用接着剤層を形成すことができ、そのコーティングないし印刷量としては、0.1〜10g/m2 (乾燥状態)位が望ましい。
【0079】
なお、本発明において、本発明に係る積層材等を構成する生分解性接着剤層としては、例えば、前述のポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネ−ト(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、または、ポリ3−ヒドロキシ酪酸(PHB)等の脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体(CPAE)、エステル結合を含む脂肪族ポリウレタン、エステル結合が導入されたビニル系ポリマ−、または、脂肪族ポリカ−ボネ−ト等のエステル結合以外の結合をも含む脂肪族ポリエステル、汎用プラスチックと脂肪族ポリエステルからなるブレンド体、でんぷん系等の天然高分子、水溶性のポリビニルアルコ−ル(PVA)、プルラン、その他等の各種の生分解性樹脂を使用し、その1種ないし2種以上を接着剤を構成するビヒクルの主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、必要ならば、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練して生分解性接着剤組成物を調整し、次いで、該生分解性接着剤組成物を使用し、これを積層する両者の一方の面に溶融押出し、その溶融押出樹脂層を介して積層することもできるものである。
【0080】
また、本発明において、本発明に係る積層材を形成する生分解性プライマ−剤層について説明すると、かかる生分解性プライマ−剤層としては、例えば、前述のポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネ−ト(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、または、ポリ3−ヒドロキシ酪酸(PHB)等の脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体(CPAE)、エステル結合を含む脂肪族ポリウレタン、エステル結合が導入されたビニル系ポリマ−、または、脂肪族ポリカ−ボネ−ト等のエステル結合以外の結合をも含む脂肪族ポリエステル、汎用プラスチックと脂肪族ポリエステルからなるブレンド体、でんぷん系等の天然高分子、水溶性のポリビニルアルコ−ル(PVA)、プルラン、その他等の各種の生分解性樹脂を使用し、その1種ないし2種以上をプライマ−剤を構成するビヒクルの主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、溶媒、希釈剤等で充分に混練して生分解性プライマ−剤組成物を調整し、次いで、該生分解性プライマ−剤組成物を使用し、これを積層する両者の一方の面に、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施し、次いで、溶剤等を乾燥させて、本発明に係る生分解性のプライマ−剤層を形成すことができ、そのコーティングないし印刷量としては、0.1〜10g/m2 (乾燥状態)位が望ましい。
【0081】
次に、本発明において、上記の積層材を使用して製造する本発明に係る包装用袋について説明すると、かかる包装用袋は、上記のような積層材を使用し、その生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層の面を対向して重ね合わせ、しかる後、その周辺端部をヒ−トシ−ルしてシ−ル部を形成して、上端部に開口部を有する包装用袋を製袋することができる。
而して、その製袋方法としては、上記のような積層材を、折り曲げるかあるいは重ね合わせて、その内層の面を対向させ、更にその周辺端部を、例えば、側面シ−ル型、二方シ−ル型、三方シ−ル型、四方シ−ル型、封筒貼りシ−ル型、合掌貼りシ−ル型(ピロ−シ−ル型)、ひだ付シ−ル型、平底シ−ル型、角底シ−ル型、ガゼット型、その他等のヒ−トシ−ル形態によりヒ−トシ−ルして、上端部に開口部を有する種々の形態からなる包装用袋を製造することができる。
その他、包装用袋としては、例えば、自立性包装用袋(スタンディングパウチ)等も可能である。
上記において、ヒ−トシ−ルの方法としては、例えば、バ−シ−ル、回転ロ−ルシ−ル、ベルトシ−ル、インパルスシ−ル、高周波シ−ル、超音波シ−ル等の公知の方法で行うことができる。
【0082】
次に、本発明において、上記で製造した包装用袋の開口部から内容物を充填し、次いで、その上端部に開口部をヒ−トシ−ル等により密閉することによって、本発明に係る包装用袋を使用した種々の形態からなる包装製品を製造することができるものである。
更に、本発明において、上記で製造した包装用袋の開口部から内容物を充填し、次いで、その上端部に開口部をヒ−トシ−ル等により密閉することによって、包装半製品を製造し、しかる後、該包装半製品を、レトルト処理あるいはボイル処理等の加熱処理を施すことによって、本発明にかかるレトルト用パウチを使用したレトルト包装食品を製造することができるものである。
上記において、レトルト処理あるいはボイル処理する方法としては、例えば、通常のレトルト釜を使用し、温度、110〜130℃位、好ましくは、120℃前後位、圧力、1〜3Kgf/cm2 ・G、好ましくは、2.1Kgf/cm2 ・G前後位、時間、20〜60分間位、好ましくは、30分間前後で加熱加圧処理する方法、あるいは、温度、90〜100℃、好ましくは、90℃前後位、時間、5〜20分間位、好ましくは、10分間前後位でボイル処理する方法等により行うことができる。
而して、本発明においては、上記のようなレトルト処理あるいはボイル処理により、内容物を加熱殺菌、あるいは、加熱殺菌調理等を行うことができるものである。
【0083】
次に、本発明において、本発明に係る包装用袋内に充填包装する内容物としては、例えば、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、煮物、餅、液体ス−プ、調味料、飲料水、その他等の各種の飲食品、具体的には、例えば、カレ−、シチュ−、ス−プ、ミ−トソ−ス、ハンバ−グ、ミ−トボ−ル、しゅうまい、おでん、お粥等の流動食品、ゼリ−状食品、調味料、水、その他等の各種の飲食品等を挙げることができる。
而して、本発明において、本発明に係る包装用袋は、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒ−トシ−ル性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性、その他等の諸物性に優れ、特に、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性、透明性等に優れ、かつ、レトルト処理等の加工に伴う熱処理に耐え、更に、容器・包装ごみの軽量化、減量化等を図ると共にその製造工程の短縮化によりその製造コストの低減化を図ることができ、内容物の充填包装適性、品質保全性等に優れているものであり、また、その使用後にゴミとして廃棄処理する場合には、本発明に係るバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材を、微生物により分解され、最終的には水や炭酸ガス等になり、廃棄された後の処理が容易な材料である生分解生樹脂を素材として使用し、そのフィルムないしコ−ティング膜あるいは印刷膜等から構成されるものであることから、それ自身微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なものであるという利点を有するものである。
次に、上記の本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0084】
(1).帯電防止コ−トした厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルムを使用し、これを巻き取り式真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これをコ−ティングドラムの上に繰り出し、しかる後、上記の二軸延伸ポリ乳酸フィルムの一方の面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件により、膜厚300Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着源;アルミニウム
蒸着チヤンバー内の真空度;2×10-4mbar
巻き取りチヤンバー内の真空度;2×10-2mbar
電子ビーム電力;40kW
フィルムの搬送速度;480m/min
次に、上記で厚さ300Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、その酸化アルミニウムの蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kW、酸素ガス(O2 ):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度480m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化アルミニウムの蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてたプラズマ処理面を形成した。
(2).他方、下記の表1に示す組成に従って、組成a.EVOH(エチレン共重合比率29%)をイソプロピルアルコールおよびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート40、イソプロピルアルコール、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌、更に予め調製した組成c.のポリビニルアルコール水溶液、シランカップリング剤(エポキシシリカSH6040) 、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液を加えて攪拌し、無色透明のバリアー塗工液を得た。
(表1)
a EVOH(エチレン共重合率29%) 0.610(wt%)
イソプロピルアルコール 3.294
2 O 2.196
b エチルシリケート40 11.460
イソプロピルアルコール 17.662
アルミニウムアセチルアセトン 0.020
2 O 13.752
c ポリビニルアルコール 1.520
シランカップリング剤 0.050
イソプロピルアルコール 13.844
2 O 35.462
酢酸 0.130
合 計 100.000(wt%)
次に、上記の(1)で形成した酸化アルミニウムの蒸着膜のプラズマ処理面の面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m2 (乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成して、本発明に係るバリア性フィルムを製造した。
(3).次に、上記の(2)で製造したバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜の面に、脂肪族ポリエステルからなる樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性インキ組成物(大日精化工業株式会社製、商品名、大日精化バイオテックカラ−HGP)を用い、グラビア印刷方式により所望の生分解性印刷模様を形成した後、その生分解性印刷模様を含む全面に、ポリ乳酸からなる樹脂とイソシアネ−ト化合物系硬化剤を3重量%添加した生分解性接着剤を使用し、これをグラビアロ−ルコ−ト法を用いて厚さ4.0g/m2 (乾燥状態)にコ−ティングして生分解性のラミネ−ト用接着剤層を形成し、次いで、該生分解性のラミネ−ト用接着剤層の面に、厚さ30μmのポリ乳酸からなる未延伸分分解生のヒ−トシ−ル性フィルム(東セロ株式会社製、商品名、パルシ−ルGE)を、そのコロナ処理面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネ−トして積層して、本発明に係る積層材を製造した。
(4).次に、上記で製造した積層材の2枚を用意し、そのポリ乳酸からなる未延伸分分解生のヒ−ト シ−ル性フィルムの面を対向して重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部を三方ヒ−トシ−ルしてシ−ル部を形成すると共に上方に開口部を有する三方シ−ル型の軟包装用袋を製造した。
上記で製造した三方シ−ル型の軟包装用袋内に、その開口部から菓子を充填包装し、しかる後、その開口部をヒ−トシ−ルして上方シ−ル部を形成して包装製品を製造した。
上記で製造した包装製品は、その包装用袋が、バリア性、透明性等に優れ、更に、特に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、破袋ないし内容物の漏れ等も認められず、食品容器としての機能、例えば、内容物の充填包装適性、流通適正、保存適性等に優れていた。
また、使用後にゴミとして廃棄処理したところ、微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なものであることが判明した。
【実施例2】
【0085】
(1).帯電防止コ−トした厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の巻き出しロールに装着し、次いで、これをコ−ティングドラムの上に繰り出し、しかる後、上記の二軸延伸ポリ乳酸フィルムの一方の面に、下記に示す蒸着条件により、膜厚300Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。 (蒸着条件)
反応ガス混合比;へキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.2:5.0:2.5(単位:Slm)
到達圧力;5.0×10-5mbar
製膜圧力;7.0×10-2mbar
ライン速度;150m/min
パワー;35kW
次に、上記で厚さ300Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kW、酸素ガス(O2 ):アルゴンガス(Ar)=7Z0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度150m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてたプラズマ処理面を形成した。
(2).他方、下記の表1に示す組成に従って、組成a.EVOH(エチレン共重合比率29%)をイソプロピルアルコールおよびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート40、イソプロピルアルコール、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌、更に予め調製した組成c.のポリビニルアルコール水溶液、シランカップリング剤(エポキシシリカSH6040) 、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液を加えて攪拌し、無色透明のバリアー塗工液を得た。
(表1)
a EVOH(エチレン共重合率29%) 0.610(wt%)
イソプロピルアルコール 3.294
2 O 2.196
b エチルシリケート40 11.460
イソプロピルアルコール 17.662
アルミニウムアセチルアセトン 0.020
2 O 13.752
c ポリビニルアルコール 1.520
シランカップリング剤 0.050
イソプロピルアルコール 13.844
2 O 35.462
酢酸 0.130
合 計 100.000(wt%)
次に、上記の(1)で形成した酸素ガスによるプラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m2 (乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成して、本発明に係るバリア性フィルムを製造した。
(3).次に、上記の(2)で製造したバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜の面に、脂肪族ポリエステルからなる樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性インキ組成物(大日精化工業株式会社製、商品名、大日精化バイオテックカラ−HGP)を用い、グラビア印刷方式により所望の生分解性印刷模様を形成した後、その生分解性印刷模様を含む全面に、ポリ乳酸からなる樹脂とイソシアネ−ト化合物系硬化剤を3重量%添加した生分解性接着剤を使用し、これをグラビアロ−ルコ−ト法を用いて厚さ4.0g/m2 (乾燥状態)にコ−ティングして生分解性のラミネ−ト用接着剤層を形成し、次いで、該生分解性のラミネ−ト用接着剤層の面に、厚さ30μmのポリ乳酸からなる未延伸分分解生のヒ−トシ−ル性フィルム(東セロ株式会社製、商品名、パルシ−ルGE)を、そのコロナ処理面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネ−トして積層して、本発明に係る積層材を製造した。
(4).次に、上記で製造した積層材の2枚を用意し、そのポリ乳酸からなる未延伸分分解生のヒ−ト シ−ル性フィルムの面を対向して重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部を三方ヒ−トシ−ルしてシ−ル部を形成すると共に上方に開口部を有する三方シ−ル型の軟包装用袋を製造した。
上記で製造した三方シ−ル型の軟包装用袋内に、その開口部から菓子を充填包装し、しかる後、その開口部をヒ−トシ−ルして上方シ−ル部を形成して包装製品を製造した。
上記で製造した包装製品は、その包装用袋が、バリア性、透明性等に優れ、特に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、破袋ないし内容物の漏れ等も認められず、食品容器としての機能、例えば、内容物の充填包装適性、流通適正、保存適性等に優れていた。
また、使用後にゴミとして廃棄処理したところ、微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なものであることが判明した。
【0086】
(比較例1)
(1).帯電防止コ−トした厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルムを使用し、その一方の面に、脂肪族ポリエステルからなる樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性インキ組成物(大日精化工業株式会社製、商品名、大日精化バイオテックカラ−HGP)を用い、グラビア印刷方式により所望の生分解性印刷模様を形成した後、その生分解性印刷模様を含む全面に、ポリ乳酸からなる樹脂とイソシアネ−ト化合物系硬化剤を3重量%添加した生分解性接着剤を使用し、これをグラビアロ−ルコ−ト法を用いて厚さ4.0g/m2 (乾燥状態)にコ−ティングして生分解性のラミネ−ト用接着剤層を形成し、次いで、該生分解性のラミネ−ト用接着剤層の面に、厚さ30μmのポリ乳酸からなる未延伸分分解生のヒ−トシ−ル性フィルム(東セロ株式会社製、商品名、パルシ−ルGE)を、そのコロナ処理面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネ−トして積層して、積層材を製造した。
(2).次に、上記で製造した積層材の2枚を用意し、そのポリ乳酸からなる未延伸分分解生のヒ−トシ−ル性フィルムの面を対向して重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部を三方ヒ−トシ−ルしてシ−ル部を形成すると共に上方に開口部を有する三方シ−ル型の軟包装用袋を製造した。
上記で製造した三方シ−ル型の軟包装用袋内に、その開口部から菓子を充填包装し、しかる後、その開口部をヒ−トシ−ルして上方シ−ル部を形成して包装製品を製造した。
【0087】
(比較例2)
(1).帯電防止コ−トしなかった厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸フィルムを使用し、これを巻き取り式真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これをコ−ティングドラムの上に繰り出し、しかる後、上記の二軸延伸ポリ乳酸フィルムの一方の面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件により、膜厚300Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着源;アルミニウム
蒸着チヤンバー内の真空度;2×10-4mbar
巻き取りチヤンバー内の真空度;2×10-2mbar
電子ビーム電力;40kW
フィルムの搬送速度;480m/min
次に、上記で厚さ300Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、その酸化アルミニウムの蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kW、酸素ガス(O2 ):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度480m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化アルミニウムの蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてたプラズマ処理面を形成して、バリア性フィルムを製造した。
(2).次に、上記の(1)で製造したバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜の面に、脂肪族ポリエステルからなる樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性インキ組成物(大日精化工業株式会社製、商品名、大日精化バイオテックカラ−HGP)を用い、グラビア印刷方式により所望の生分解性印刷模様を形成した後、その生分解性印刷模様を含む全面に、ポリ乳酸からなる樹脂とイソシアネ−ト化合物系硬化剤を3重量%添加した生分解性接着剤を使用し、これをグラビアロ−ルコ−ト法を用いて厚さ4.0g/m2 (乾燥状態)にコ−ティングして生分解性のラミネ−ト用接着剤層を形成し、次いで、該生分解性のラミネ−ト用接着剤層の面に、厚さ30μmのポリ乳酸からなる未延伸分分解生のヒ−トシ−ル性フィルム(東セロ株式会社製、商品名、パルシ−ルGE)を、そのコロナ処理面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネ−トして積層して、積層材を製造した。
(3).次に、上記で製造した積層材の2枚を用意し、そのポリ乳酸からなる未延伸分分解生のヒ−トシ−ル性フィルムの面を対向して重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部を三方ヒ−トシ−ルしてシ−ル部を形成すると共に上方に開口部を有する三方シ−ル型の軟包装用袋を製造した。
上記で製造した三方シ−ル型の軟包装用袋内に、その開口部から菓子を充填包装し、しかる後、その開口部をヒ−トシ−ルして上方シ−ル部を形成して包装製品を製造した。
【0088】
(実験例1)
上記の実施例1〜2、および、比較例1〜2において製造したバリア性フィルム、および、積層材について、酸素透過度、および、水蒸気透過度を測定した。
(1).酸素透過度の測定
これは、温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN)〕にて測定した。
(2).水蒸気透過度の測定
これは、温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パ−マトラン(PERMATRAN)〕にて測定した。
上記の測定結果について、下記の表1に示す。
【0089】
(表1)
┌────┬────────────────┐ │ │ バリア性フィルム │ │ ├───────┬────────┤ │ │ 酸素透過度 │ 水蒸気透過度 │ ├────┼───────┼────────┤ │実施例1│ 1.5 │ 3.4 │ ├────┼───────┼────────┤ │実施例2│ 2.0 │ 3.0 │ ├────┼───────┼────────┤ │比較例1│ >600 │ >50 │ ├────┼───────┼────────┤ │比較例2│ 13.8 │ 35.0 │ └────┴───────┴────────┘ ┌────┬────────────────┐ │ │ 積層材 │ │ ├───────┬────────┤ │ │ 酸素透過度 │ 水蒸気透過度 │ ├────┼───────┼────────┤ │実施例1│ 1.4 │ 3.1 │ ├────┼───────┼────────┤ │実施例2│ 1.8 │ 2.6 │ ├────┼───────┼────────┤ │比較例1│ >600 │ >50 │ ├────┼───────┼────────┤ │比較例2│ 14.2 │ 33.0 │ └────┴───────┴────────┘ 上記の表1において、酸素透過度の単位は、〔cc/m2 /day/atm・23℃・90%RH〕であり、水蒸気透過度の単位は、〔g/m2 /day・40℃・90%RH〕である。
【0090】
上記の表1に示す測定結果から明らかなように、実施例1〜2にかかるものは、酸素透過度および水蒸気透過度において十分に実用性を有するものであることが確認された。
【0091】
(実験例2)
上記の実施例1〜2、および、比較例1〜2において製造した積層材について、生分解性テストを行った。
これは、上記の実施例1〜2、および、比較例1〜2において製造した積層材から採取した5cm四方のサンプルを用意し、これを40℃の堆肥中に埋没させ、6カ月、1年後の状態を確認した。
上記のテスト結果について、下記の表2に示す。
【0092】
(表2)
┌────┬────────────────┐ │ │ 積層材 │ │ ├───────┬────────┤ │ │ 6カ月後 │ 1年後 │ ├────┼───────┼────────┤ │実施例1│ △ │ ○ │ ├────┼───────┼────────┤ │実施例2│ △ │ ○ │ ├────┼───────┼────────┤ │比較例1│ △ │ ○ │ ├────┼───────┼────────┤ │比較例2│ △ │ ○ │ └────┴───────┴────────┘ 上記の表2において、○は、完全に消失、△は、一部残る、×は、原形のままを意味する。
【0093】
上記の表2に示すテスト結果から明らかなように、実施例1〜2にかかるものは、生分解が良好におこなわれたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係るバリア性フィルムおよびそれを使用した積層材、更に、それを使用して製袋した包装用袋は、飲食品、化成品、雑貨品、その他等を充填包装する包装用材料として使用され、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れていると共に包装用材料として使用後、ゴミとして廃棄処理されても、それ自身微生物等により分解され、廃棄後の後処理が容易で極めて環境適性に優れた有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係るバリア性フィルムについてその層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図2】図1に示す本発明に係るバリア性フィルムを使用した積層材についてその層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図3】図1に示す本発明に係るバリア性フィルムを使用した積層材についてその層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図4】図2に示す積層材を使用し、これを製袋して製造した本発明に係る包装用袋についてその構成の一例を示す概略的斜視図である。
【図5】図5に示す本発明に係る包装用袋に内容物を充填包装した本発明に係る包装製品についてその構成の一例を示す概略的斜視図である。
【図6】プラズマ化学気相成長装置についてその一例の概要を示す概略的構成図である。
【図7】巻き取り式真空蒸着装置についてその一例の概要を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0096】
A バリア性フィルム
B、B1 積層材
C 包装用袋
D 包装製品
1 基材フィルム
2 無機酸化物からなるバリア性薄膜層
3 ガスバリア性塗布膜
11 ヒ−トシ−ル性樹脂層
12 生分解性印刷層
13 生分解性接着剤層
15 ヒ−トシ−ル部
16 開口部
17 内容物
18 上方のシ−ル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂フィルムの一方の面に、無機酸化物からなるバリア性薄膜層を設け、更に、該無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けることを特徴とするバリア性フィルム。
【請求項2】
生分解性樹脂フィルムが、帯電防止処理されていることを特徴とする上記の請求項1に記載するバリア性フィルム。
【請求項3】
無機酸化物からなるバリア性薄膜層が、物理気相成長法または化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜2のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項4】
無機酸化物からなるバリア性薄膜層が、物理気相成長法による酸化アルミニウムの蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜3のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項5】
無機酸化物からなるバリア性薄膜層が、一酸化珪素と珪素との混合物を原料とした物理気相成長法による酸化珪素の蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜3のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項6】
無機酸化物からなるバリア性薄膜層が、化学気相成長法による酸化珪素の蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜3のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項7】
ガスバリア性塗布膜を構成する一般式R1 n M(OR2 m 中のMが、珪素、ジルコニウム、チタニウム、または、アルミニウムからなることを特徴とする上記の請求項1〜6のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項8】
ガスバリア性塗布膜を構成するアルコキシドが、アルコキシシランからなることを特徴とする上記の請求項1〜7のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項9】
ガスバリア性塗布膜を構成するアルコキシドが、アルコキシドの加水分解物、または、アルコキシドの加水分解縮合物からなることを特徴とする上記の請求項1〜8のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項10】
ガスバリア性塗布膜を構成するガスバリア性組成物が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする上記の請求項1〜9のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項11】
ガスバリア性塗布膜を構成するガスバリア性組成物が、一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルーゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物からなることを特徴とする上記の請求項1〜10のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項12】
ガスバリア性塗布膜が、1層ないし2層以上重層した複合ポリマ−層からなることを特徴とする上記の請求項1〜11のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項13】
ガスバリア性塗布膜が、ガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設けた生分解性フィルムを、20℃〜150℃で、かつ、上記の生分解性フィルムの融点以下の温度で30秒〜10分間加熱処理した硬化膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜12のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項14】
ガスバリア性塗布膜を構成するガスバリア性組成物中のゾルゲル法触媒が、水に実質的に不溶であり、かつ、有機溶媒に可溶な第3アミンからなることを特徴とする上記の請求項1〜13のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項15】
ガスバリア性塗布膜を構成するガスバリア性組成物中の第3アミンが、N,N−ジメチルベンジルアミンからなることを特徴とする上記の請求項1〜14のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項16】
ガスバリア性塗布膜を構成するガスバリア性組成物中の水が、アルコキシド1モルに対して0.1〜100モルの割合で用いられることを特徴とする上記の請求項1〜15のいずれか1項に記載するバリア性フィルム。
【請求項17】
生分解性樹脂フィルムの一方の面に、無機酸化物からなるバリア性薄膜層を設け、更に、該無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、一般式R1 n M(OR2 m (ただし、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けた構成からなるバリア性フィルムからなり、更に、該バリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜の面に、少なくとも、生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層を設けたことを特徴とする積層材。
【請求項18】
バリア性フィルムと生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層との層間に、生分解性樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性インキ組成物による生分解性印刷模様層を設けることを特徴とする上記の請求項17に記載する積層材。
【請求項19】
バリア性フィルムと生分解性のヒ−トシ−ル性樹脂層とを、生分解性樹脂をビヒクルの主成分とする生分解性接着剤による生分解性接着剤層を介して積層することを特徴とする上記の請求項17〜18のいずれか1項に記載する積層材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−76192(P2007−76192A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267542(P2005−267542)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】