説明

バルク弾性波共振器及びその製造方法

本発明は、新規のバルク弾性波(BAW)共振器設計及びこれを製造する方法に関する。バルク弾性波共振器は共振器部分を備え、共振器部分には、共振器部分に連続閉路を形成するトレンチの形態を有する少なくとも1つの空隙が設けられる。共振器部分の外形寸法と同じ加工ステップで空隙を作製することにより、共振器の共振周波数に対するプロセスばらつきの影響を減らすことができる。本発明により、BAW共振器の精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小機械共振器、特にバルク弾性波(BAW)共振器等に関する。
【背景技術】
【0002】
プレート共振器等の横方向バルク弾性波モードMEMS共振器の周波数は、装置の横寸法により決まる。正方形広がり振動(square extensional)(SE)モードで動作するプレート共振器の周波数は、f=v/(2L)で精度良く求められ、式中、vは音速であり、Lはプレートの辺長である。作製プロセスの非理想性により、共振器の寸法はウェーハ内で、またウェーハ毎に変わり、これが作製された装置の共振周波数の変動を招く。
【0003】
通常、共振器の横寸法は、例えばディープ反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスステップを使用して形成されたエッチングトレンチ(図1aに示す)で画定される。Lの変動が通常は13MHzプレート共振器で1000ppmを超え得る結果として、多くの用途にとって許容不可能な周波数変動が生じる。
【0004】
一例として、辺寸法Lが約300μmで動作周波数が13MHzの単結晶シリコンSEプレート共振器について考える。10μm〜11μmの範囲(変動が1μm)のトレンチをもたらすプロセスばらつきにより、周波数変動dfは約6000ppmとなる。1μmという変動は、説明を目的として使用するものであり、DRIEプロセスの通常のばらつきを過大に見積もっている可能性がある。
【0005】
これまで、この問題は、個々のコンポーネントのトリミング(例えば、集束イオンビームミリング)により、系統的プロセスばらつきを見込んで加工マスクを設計することにより、また装置周波数の測定及び電子回路による誤差の補償により取り組まれてきた。従来の方法は、多くの作業を要する生産された各共振器の個別トリミング又は測定を必要とするか、又は不規則な変動の補償に適さない。したがって、大量生産にこれらを適用するのは困難又は不可能である。さらに、近年の用途の多くは、これらの技法により得られる精度よりも高い周波数精度を必要とする。
【0006】
特許文献1は、共振器を製造時の変動に対してロバストにするのに寄与する複数の開口を備えるMEMS共振器を開示している。特許文献1は、請求項1のプリアンブルの特徴を開示しており、本発明に最も近い従来技術を表すと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,616,077号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、プロセスばらつきの影響を補償する新規のバルク弾性波共振器設計を提供することである。特に、プロセスばらつきにより生じるBAW共振器の周波数変動をさらに低減することが目的である。さらに別の目的は、以前よりも単純なプロセスばらつき補償共振器設計を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項に規定する共振器及び方法により達成される。
【0010】
本発明は、平面共振器構造に少なくとも1つの空隙を作製するという概念に基づく。具体的には、空隙は、共振器の共振器周波数を定める寸法を有する共振器部分に設けられる。本発明によれば、空隙は、共振器部分の2つの別個の部分間の、通常は外側部分と外側部分により外側を囲まれた内側部分との間のクリアランス、すなわちトレンチを画定する。特に、トレンチは共振器上の連続閉路を形成し得る。空隙はトレンチの壁により画定される。
【0011】
より詳細には、本発明は独立請求項により規定される。有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0012】
一実施形態によれば、空隙は円形孔、特に環状(リング状)孔である。
【0013】
一実施形態によれば、空隙は矩形孔、特に正方形孔である。
【0014】
実際には、空隙は、通常は例えばエッチングにより共振器基板に作製された凹部の形態である。空隙は、共振器の装置層を貫通することもできる。
【0015】
一実施形態によれば、凹部が上述のようにトレンチの形態であることにより、共振器は中央隆起部(内側部分)を有する。
【0016】
共振器は、2次元平面共振器(例えば、正方形広がり振動(SE)プレート又はラーメ共振器)又は1次元ビーム又はバー共振器であり得る。
【0017】
一実施形態によれば、空隙は、共振器部分の横方向中心軸(lateral central axes)の少なくとも1つに対して対称に位置付けられる。好ましくは、空隙は、全中心軸に対して対称に、すなわち共振器部分の中心に位置付けられる。後述するように、複数の別個の空隙を設けて、これらの原理を空隙のパターンに適用することができるようにしてもよい。
【0018】
好ましくは、1つ又は複数の空隙は、共振器部分の横寸法の規定に使用される同じ加工ステップで作製される。このプロセスにおけるばらつきが、プレートの横寸法の収縮/拡張及び中央空隙(単数又は複数)の拡張/収縮を同時にもたらす。いずれの場合も、一次で効果が打ち消し合い、共振器周波数変動は僅かなプロセスばらつきと無関係である。空隙のサイズ及び/又は形状は、2つの効果が相殺するよう最適化されることが好ましい。
【0019】
したがって、本発明は、基板を準備するステップと、外形寸法を有する共振器部分を基板上に作製するように基板を加工するステップとを含む方法も提供する。本発明によれば、共振器部分への少なくとも1つの空隙の作製が、共振器部分の外形寸法の形成に使用されるのと同じ加工ステップで行われる。したがって、共振器の外形寸法に対して生じる加工誤差が空隙に補償的に再現され、これについてはより詳細に後述する。好ましくは、加工ステップは、ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)ステップ等のエッチングステップである。
【0020】
本発明は大きな利点をもたらす。上述のように、横方向バルクモードMEMS共振器の周波数精度は、ウェーハレベルの加工不均一性による影響を受ける。本発明により、したがって共振体内に1つ又は複数の空隙を含むことにより、周波数変動を3桁以上低減することができる。共振器上の連続閉路を形成するトレンチが共振周波数に対して与えるプロセスばらつきの影響は、特に低いことが分かった。本設計により、対称パターンとして配置される複数の別個の孔を共振器に形成する必要も回避される。しかしながら、一般的に言えば、複数のトレンチが共振器に設けられる実施形態も除外されない。
【0021】
より詳細には、本発明者らの研究によれば、プレート共振器及びディスク共振器の周波数変動を1/200に低減することができることが分かった。加工におけるばらつきは、共振器横寸法の収縮/拡張及び空隙(単数又は複数)の拡張/収縮を同時にもたらす。本発明の原理に従って最適化した設計では、これらの効果が相殺し、共振器周波数が安定する。多くの用途で、安定共振器の周波数精度は、コンポーネントの個別トリミングを回避できるようなレベルであり得る。
【0022】
実際には、この受動的周波数補償により、BAW共振器の周波数精度が1000ppmのレベルから10ppm及びそれよりもさらに低いレベルに改善される。
【0023】
要約すると、本発明の主な利点は以下を含む。
共振器の挙動に対するプロセスばらつきの影響が、自己組織的に大幅に低減される。
高価なトリミング機器の必要がない。
プロセスばらつきを詳細に把握する必要がない。
加工された全コンポーネントの測定が回避され、駆動集積回路が簡略化される。
【0024】
本発明は、全てのバルク弾性波共振器設計に使用することができる。バルク弾性波(BAW)は、共振器の全体積に伝播する。例として薄膜弾性波共振器(FBAR又はTFBAR)が挙げられる。この構造は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)構造を含み得る。共振器は、例えば発信器又はセンサとして使用することができる。
【0025】
共振器部分及び共振器プレートという用語は、共振器構造の導波共振部を指すために使用され、その幾何学的形状により共振器の共振器周波数が決まる。通常、共振器部分は平面状である。共振器部分の外側部に、1つ又は複数の変換素子が位置付けられてもよい。
【0026】
楕円形という用語は、別段の指示のない限り、円形という用語を包含する。同様に、矩形は正方形という用語を包含する。
【0027】
空隙及び孔という用語は、共振器部分の基本材料を穿孔する任意の構造を指す。空隙及び孔は、真空であってもよく、又は空気等のガス若しくは共振器部分に発生した弾性波を媒介しない任意の他の物質が充填されてもよい。トレンチ及びクリアランスという用語は、特定の幅を有する細長い凹部又は孔を指す。
【0028】
横方向という用語は、共振器の表面の平面に沿った方向を指す。
【0029】
次に、本発明の実施形態及びその利点を、添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1a】SEプレートの辺長Lが周囲のトレンチのトレンチ拡大パラメータDの増加に伴って減少する場合を概略的に示し、共振器周波数fは、Dの増加関数である。
【図1b】SEプレートの辺長Lが周囲のトレンチのトレンチ拡大パラメータDの増加に伴って減少する場合を概略的に示し、振器周波数fは、Dの増加関数である。
【図2a】プレート中心の円形空隙の効果のみを考慮した場合を概略的に示し、共振器周波数fはDの減少関数である。
【図2b】プレート中心の円形空隙の効果のみを考慮した場合を概略的に示し、共振器周波数fはDの減少関数である。
【図3a】両方の効果を組み合わせて一次で相殺させることができ、自己補償が行われる場合を概略的に示す。
【図3b】両方の効果を組み合わせて一次で相殺させることができ、自己補償が行われる場合を概略的に示す。
【図4a】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4b】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4c】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4d】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4e】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4f】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4g】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4h】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4i】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4j】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4k】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4l】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図4m】本発明の幾何学的形状の実施形態を示す。
【図5a】自己補償型のプレート共振器の広がり振動モードのモード形状を示す。色分けで全変位を示す(青:小変位、赤:大変位)。
【図5b】自己補償型のディスク共振器の広がり振動モードのモード形状を示す。色分けで全変位を示す(青:小変位、赤:大変位)。
【図6a】<100>方向に揃えた320μm SEプレート共振器の周波数変動を示す(実施例1)。
【図6b】図6aと同一だが寸法を1/2に縮小したものを示す(実施例1)。
【図7a】<110>方向に揃えた320μm SEプレート共振器の周波数変動を示す(実施例2)。
【図7b】図7aと同一だが寸法を1/2に縮小したものを示す(実施例2)。
【図8】<100>方向に揃えた320μm SEプレート共振器の周波数変動を示す。中心空洞は矩形である(実施例3)。
【図9】<110>方向に揃えた320μm SEプレート共振器の周波数変動を示す。中心空洞は矩形である(実施例4)。
【図10】80μm ディスク多結晶シリコン共振器の周波数変動を示す。等方性ヤング率Y=170Gpa、ポアソン比v=0.28と想定する。中心空隙は円形である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上述のように、本発明は、微小機械共振器の製造プロセスにおけるばらつきの補償に使用することができる。共振器プレート自体と同じプロセスを使用して作製される空隙が、構造の寸法不正確度を補償する対抗要素として働く。したがって、所望の寸法からのプレート横寸法のいかなる偏差も、中心空隙の逆符号の偏差により補償される。いずれの場合も、一次で効果が打ち消し合い、共振器周波数変動は僅かなプロセスばらつきと無関係である。
【0032】
一例を挙げると、本発明はシリコン共振器に適用することができる。
【0033】
空隙寸法の変化を共振器外形寸法の変化と同様にするために、空隙を共振器部分の外形寸法と同じ製造プロセスで、特に同じステップで作製することが好ましい。
【0034】
空隙を画定するトレンチは、共振器の外形寸法を画定するトレンチと同じ幅であることが好ましい。これにより、両トレンチで同じ加工非理想性が繰り返されること、及び高周波自己補償が確実となる。しかしながら、設計によっては、トレンチを異なる幅にすることもできる。
【0035】
特定の実施形態によるこの受動的周波数補償の作動原理を図1a〜図3bに示す。
【0036】
共振器横寸法は、設計幅がwであるトレンチにより画定され、このトレンチを「外側トレンチ」と呼ぶ。トレンチ幅は、トレンチ拡大パラメータDにより定められるプロセスばらつきによりw=w+Dに変わる。このばらつきは、共振器辺長L=L−2Dの変化に繋がる。共振器周波数はf=c/(2L)で与えられるので、共振器周波数はDの増加関数である。図1a及び図1bはこの状況を示す。
【0037】
図2a及び図2bは、共振器中心における円形環状空隙の効果を示す(ここで考慮するのは空隙の効果だけであり、プレート辺寸法は一定であると仮定する)。空隙が、外側トレンチと同様の幅を有するトレンチ(以下、「内側トレンチ」)を使用して作製されると仮定する。したがって、内側トレンチは外側トレンチと同様に拡大されるので、円形空隙の半径はR=R+Dで与えられる。共振器周波数はDの減少関数であり、空隙が大きくなるにつれて共振器の有効ばねが緩む。
【0038】
中心空隙のサイズが最適であれば、2つの効果を一次で相殺させることができる。したがって、自己補償が生じる。図3a及び図3bはこの状況を示す。通常、空隙直径は、プレート辺の約25%でなければならない。
【0039】
図3aを参照すると、基板は参照符号12で示され、共振器部分は参照符号16で示され、基板12と共振器部分16とを隔てる外側トレンチは参照符号14で示され、空隙(内側トレンチ)は参照符号18で示されている。
【0040】
例えば、エッチングトレンチが、13MHz正方形広がり振動プレートシリコン共振器の横寸法を画定し、プロセス不均一性によりトレンチ幅変動が1μmとなる場合、これが約6000ppmの周波数変動に繋がる。プレートの中心に半径38μmの孔を設けることにより、周波数変動は30ppm未満に低減する。
【0041】
自己補償型のSEプレート共振器のモード形状は、非穿孔プレートのSEモードと曲げ振動との組み合わせとして特徴付けることができる。
【0042】
単一の円形空隙は、一次補償効果を達成することが可能なだけではない。当然ながら、空隙の幾何学的形状には他にも様々なものが無数にある。例えば、この目的で、正方形の空隙を使用すること又は複数の空隙を使用することができる。いくつかの可能性を以下で説明する。
【0043】
図4a(矩形プレート)及び図4b(円形プレート)により示される本発明の一実施形態によれば、プレートと同心の円形孔が設けられる。
【0044】
一実施形態(図4c及び図4d)によれば、プレートと同心の真楕円(すなわち非円形)孔が設けられる。
【0045】
一実施形態(図4g〜図4j)によれば、他の形状の孔が設けられ、孔の重心がプレートと同心であるようになっている。例えば、孔を矩形又は十字形として、共振器プレート内で任意の所望の角度に向けることができる。
【0046】
一実施形態(図4k〜図4m)によれば、複数の孔が配列して設けられ、配列の重心がプレートと同心であるようになっている。配列は、例えば環状、楕円形、又は矩形であり得る。個々の孔の形状は異なっていてもよい。
【0047】
一実施形態によれば、孔の密度がプレートの周縁よりも中央の方で高いように複数の孔が設けられる。
【0048】
外側トレンチ及び内側トレンチは同様の形状を有していてもよいが(例えば、両方が楕円形/円形又は両方が矩形)、そうである必要はない。
【0049】
空隙は、トレンチの形態で設けられる場合、通常は一定の幅を有する。
【0050】
図4e及び図4fに示すように、共振器部分は、共振器縁部においてブリッジにより繋止され得る。繋止場所は、共振モードの節点と一致し得る。
【0051】
多くの幾何学的形状の可能性があるが、矩形の共振器で単一の円形空隙を使用することに特定の利点がある。円形空隙を画定する内側トレンチは、円形であることに起因する曲率を除き、全ての点において外側トレンチの直線部分と同様である(例えば、コーナ点を含まない)。したがって、これは、外側トレンチと比べた場合に加工時に非常に似た挙動を示すはずであり、単一のパラメータDを用いたトレンチ拡大効果の説明が現実的である。
【0052】
より複雑な空隙の幾何学的形状では、外側トレンチのトレンチ変化を内側トレンチでそれほど正確に再現させることができない。例えば、正方形空隙のコーナが丸みを帯びる。このような状況はモデリング困難であり、したがって装置設計がより困難である。
【0053】
さらに、1)自己補償の達成に使用される複数の空隙の群からの1つの代表空隙の寸法r1と、2)自己補償に使用される単一の空隙である空隙の寸法r2とを比較すると、r1はr2よりも小さくなければならない。したがって、相対空隙寸法変化D/r1は、対応の相対変化D/r2よりも大きい。図1b及び図2bに示す効果が一次で相殺する場合、高次項が周波数偏差に影響する。特に、高次項の大きさを規定するのは空隙寸法の相対変化であり、したがって1)の場合の周波数偏差は2)の場合の周波数偏差よりも大きい。
【0054】
上記説明か明らかなように、共振器の幾何学的形状は、矩形プレートの幾何学的形状である必要はない。例えば、GHz範囲の多結晶シリコン共振器で十分に研究されたディスク形の幾何学的形状(楕円形の幾何学的形状)は、中心空隙を使用して自己補償させることができる。特に、ディスク形の幾何学的形状は、シリコン等の等方性多結晶材料の使用に制限されないことに留意すべきであり、例えば、(111)面で切断された結晶シリコンは、この面内で等方性であり、したがってディスク共振器を(111)ウェーハ上で作製することができる。対称的なプレート及びディスク以外の幾何学的形状を、自己補償するよう設計することができる。
【0055】
共振器の共振モードは広がり振動モードであることが好ましい。しかしながら、本発明は、非広がり振動モードに使用することもできる。例えば、プレート共振器のラーメモード又はディスク共振器のワイングラスモードは、中心空隙で自己補償させることができる。高次バルク弾性波モードも、場合によっては共振器本体内で複数の空隙を使用することにより自己補償させることができる。
【0056】
自己補償型の共振器の幾何学的形状は、共振器周波数を変えるためにサイズを拡大又は縮小することができる。設計はその最適動作点に留まる、すなわちスケーリング作業後でも自己補償されたままである。このような挙動は、弾性波方程式のスケーリング性の直接的な結果である。以下の例はスケーリング挙動を示す。
【0057】
共振器の動作周波数は任意であり得る。特に、周波数は1MHz〜10GHzであり得る。しかしながら、同じ周波数精度レベルに達するために、プロセスばらつきパラメータを装置寸法と同様にスケーリングしなければならないことに留意しなければならない。プロセスばらつきは通常は所与のものであり、設計と同時にスケーリングすることができないので、周波数の高い共振器ほど周波数偏差が大きくなる。
【0058】
内側トレンチ及び外側トレンチの両方のプロセスばらつきを定めるために、上記では単一のトレンチ拡大パラメータDを使用した。この仮定が妥当となるのは、内側トレンチ及び外側トレンチの幅が同様であり、トレンチの幾何学的形状が単純である(例えば、コーナもジグザグパターンも無い)場合である。
【0059】
トレンチ幅変動Dがトレンチ設計幅の関数として知られている場合、内側トレンチ及び外側トレンチの幅について異なる設計幅w及びwを使用することができる。これは、例えば設計境界条件次第で特定の中心空隙寸法が必要となる場合に有利であり得る。
【0060】
例を用いてこれを明確化するために、w及びwの特定の選択に関してD=0.5×Dとなると仮定する。このような場合、最適空隙寸法は、D=Dの場合よりも大きい。D及びDの役割を交換して、0.5×D=Dとした場合、最適空隙寸法は小さくなり、これは、共振質量を大きくするという観点から有利であり得る。
【実施例】
【0061】
Comsol multiphysics有限要素法(FEM)ソフトウェアを使用して、種々の幾何学的形状をシミュレートした。3Dモデルを使用し、必要な場合には結晶異方性をモデルに含入した。モデル解析を使用して共振モードについて解いた。プレート共振器及びディスク共振器の関連モード形状を図5a及び図5bにそれぞれ示す。
【実施例1】
【0062】
<100>結晶方向に配向したSEプレート、円形空隙。SEモードで動作する単結晶シリコンプレート共振器を解析した。プレートの辺を<100>結晶方向に揃え、辺長をL=320μmとした。最適円形空隙半径は38μmである(図6a)。図6bは、寸法を1/2に縮小した同様の共振器の周波数変動を示す。
【実施例2】
【0063】
<110>結晶方向に配向したSEプレート、円形空隙。図6a及び図6b(プレート寸法320μm及び160μm)に対応する結果を図7a及び図7bに示す。
【実施例3】
【0064】
<100>結晶方向に配向したSEプレート、矩形空隙。プレート寸法320μmでの結果を図8に示す。
【実施例4】
【0065】
<110>結晶方向に配向したSEプレート、矩形空隙。プレート寸法320μmでの結果を図9に示す。
【実施例5】
【0066】
5.75μm中心円形空隙を有する多結晶シリコンの80μmディスク共振器。結果を図10に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの空隙が設けられた共振器部分を備えるバルク弾性波(BAW)共振器であって、前記空隙は、前記共振器部分に連続閉路を形成するトレンチの形態を有することを特徴とする共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の共振器において、前記空隙は楕円形、特に円形であることを特徴とする共振器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の共振器において、前記空隙は矩形、特に正方形であることを特徴とする共振器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共振器において、前記空隙は、前記共振器部分の少なくとも1つの横方向中心軸、好ましくは両方の横方向中心軸に対して対称に位置付けられることを特徴とする共振器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の共振器において、前記空隙の寸法は、前記共振器部分の対応の寸法の15%〜35%、特に20%〜30%、好ましくは約25%であることを特徴とする共振器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の共振器において、前記空隙は、前記共振器部分に所定のパターンで複数設けられ、該パターンは、前記共振器部分の少なくとも1つの横方向中心軸に関して対称であることを特徴とする共振器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の共振器において、前記共振器部分は矩形、特に正方形、又は楕円形、特に円形であることを特徴とする共振器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の共振器において、該共振器は、シリコンウェーハ、該シリコンウェーハに形成されて前記共振器部分を画定する第1トレンチ、及び前記シリコンウェーハに形成されて前記空隙を画定する第2トレンチを備えることを特徴とする共振器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の共振器において、前記空隙のサイズ及び/又は形状は、前記共振器の共振周波数に対するプロセスばらつきの影響を最小化するよう合わせられることを特徴とする共振器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の共振器において、前記空隙及び前記共振器部分の外側境界は、エッチングステップ等の同じ加工ステップで形成されることを特徴とする共振器。
【請求項11】
基板を準備するステップと、
該基板上に外形寸法を有する共振器部分を作製するように前記基板を加工するステップと
を含むバルク弾性波(BAW)共振器を製造する方法であって、
前記共振器部分の前記外形寸法の作製に使用されるのと同じ加工ステップで、前記共振器部分に少なくとも1つの空隙を作製するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記加工するステップは、エッチングステップ、好ましくはディープ反応性イオンエッチング(DRIE)ステップであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法において、請求項1〜10のいずれか1項に記載の共振器を作製することを特徴とする方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【図4h】
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【図4i】
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【図4j】
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【図4k】
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【図4l】
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【図4m】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−511881(P2013−511881A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539375(P2012−539375)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050935
【国際公開番号】WO2011/061402
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(511215207)テクノロジアン テュトキムスケスクス ヴェーテーテー (11)
【氏名又は名称原語表記】Teknologian tutkimuskeskus VTT
【出願人】(504463970)ヴェーテーイー テクノロジーズ オサケユキチュア (3)
【Fターム(参考)】