説明

バルコニーデッキ等の床板の施工方法

【課題】デッキ板などの床板を、不陸のある下地面、例えばバルコニーの床面上に施工容易に水平に設置することができる床板の施工方法を提供する。
【解決手段】孔6…と袋7点の備えられたデッキ板2を用い、該デッキ板2を水勾配で不陸のあるバルコニーの床面1上に水平状態となるようにセットした後、注入後硬化する材料9を用い、これを前記孔6…を通じて袋7点に注入することにより、該材料9…をデッキ板2とバルコニー床面1とにわたし、硬化させることで、前記セット状態のデッキ板2を前記材料9…を脚にしてバルコニーの床面1上に支承させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニーデッキ等の床板の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水勾配による不陸のあるバルコニーの床面にデッキ材等の床板を水平に設置しようとする場合、従来は、床板の裏面側に複数のネジ式レベル調整脚を備えさせ、各レベル調整脚で床板を水平となるようにレベル調整していく方法が採られていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ネジ式のレベル調整脚による調整では、各レベル調整脚に対するレベル調整操作に手間を要し、施工が非常に厄介であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、床板を不陸のある下地面の上に施工容易に水平設置することができる床板の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、床板を不陸のある下地面の上に水平状態となるようにセットした後、注入後硬化する材料を用い、これを床板と下地面とにわたすように注入し、硬化させることで、前記セット状態の床板を前記材料を脚にして下地面上に支承させることを特徴とする床板の施工方法によって解決される。
【0006】
この方法では、床板を、下地面の不陸に追従されることなく水平にセットし、そして、注入後硬化する材料を床板と下地面とにわたすように注入し、硬化させることにより、床板は、水平セット状態を維持しながら、前記材料の硬化物を脚として、不陸のある下地面に安定良く支承され、床板を不陸のある下地面の上に施工容易に水平設置することができる。
【0007】
上記の方法において、前記床板として、板面内に、前記材料を注入する孔が備えられると共に、裏面側に、孔を通じて注入される材料を受ける袋が備えられたものを用い、
床板をセットした後、前記材料を、前記孔を通じて袋に注入することにより、該材料を床板と下地面とにわたすようにするのもよい。
【0008】
この場合は、床板の板面内に材料を注入する孔が備えられているので、前記材料の注入を該孔を通じて下向き作業で施工容易に行うことができる。しかも、床板の裏面側には孔を通じて注入される材料を受ける袋が備えられているので、材料が床板と下地面との間で広がらず、少ない材料でしっかりとした支承用脚部を形成することができ、また、材料として使用できるものの範囲を広くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のとおりのものであるから、床板を不陸のある下地面の上に施工容易に水平設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図4に示す実施形態は、バルコニーの床面1を下地面とし、その上に床板としての複数のデッキ板2…を施工する場合のものであり、バルコニーの床面1は、図1(イ)に示すように、排水口3…に向けて多方向からの水勾配が付けられた不陸のある床面に形成されている。
【0012】
各デッキ板2は、建物の外壁4とバルコニーの腰壁5との間にわたせる長さ寸法を備えており、図2に示すように、面内には上下方向に貫通する材料注入孔6が複数箇所に分散して設けられており、裏面側には、各孔6…の位置に対応して、孔の開口部に面するように材料受け用の袋7…が備えられている。なお、袋7は、本来の袋形状をしていてもよいし、伸縮性を備えた膜状をしていて、材料を注入することによって、袋状に膨らむものであってもよい。また、袋7は、デッキ板2の裏面側に予め備えられたものであってもよいし、施工に際してデッキ板2の裏面側に取り付けられたものであってもよい。
【0013】
施工は、図3(イ)(ロ)に示すように、バルコニーの床面1に対してデッキ板2を水平にセットするため、水勾配の下流側であるバルコニーの腰壁5に水平出し用の支承レール8を取り付け、そして、図3(ハ)及び図4(ニ)に示すように、各デッキ板2を、一端を支承レール8に支承させるようにしてバルコニーの床面1上にセットする。これにより、デッキ板2…は、バルコニーの床面1の不陸に追従することなく水平状態にセットされる。なお、水勾配の下流側が建物の外壁の側である場合には、支承レールは外壁側に取り付けてデッキ板の水平が出るようにすればよい。
【0014】
しかる後、図4(ホ)(ヘ)に示すように、デッキ板2の上面側から、各孔6…内に向けて、注入後硬化する材料9…を注入する。材料9としては、例えば、ゾル−ゲル反応によってゲル化するエポキシ系等の速乾性等の硬化剤や、その他、モルタルなどであってもよい。
【0015】
すると、各材料9…は、デッキ板2の背面側に備えられている袋7…に収容されていき、該袋7…が下方に膨んでいって、バルコニーの床面1上に接地し、バルコニーの床面1とデッキ板2とにわたされた状態になり、しばらくすると、硬化して、デッキ板2を支承する脚になる。こうして、デッキ板2…は、バルコニーの不陸のある床面1…上に、硬化した材料9からなる複数の脚に下から支えられた状態となってバルコニーの水勾配のある床面1上に水平に設置される。
【0016】
なお、支承レール8は残しておくようにしてもよいし、デッキ板2に備えさせる孔6…の配置関係によって材料9…のみでデッキ板2を安定良く支承させることができる場合には、取り外されてもよい。
【0017】
上記の施工方法では、デッキ板2を水勾配で不陸のある床面1上に水平にセットし、そして、注入後硬化する材料9…をデッキ板2とバルコニーの床面1とにわたすように注入することにより、該材料9…が硬化して、デッキ板2は、水平セット状態を維持しながら、硬化した材料9…を脚として、不陸のあるバルコニーの床面1に安定良く支承され、デッキ板2を不陸のあるバルコニーの床面1上に施工容易に水平に設置することができる。
【0018】
しかも、上記の方法では、デッキ板2として、板面内に、材料注入用の孔6…が備えられ、裏面側に、孔6…を通じて注入される材料9…を受ける袋7…が備えられたものを用いるようにしているので、材料9…の注入を下向き作業で施工容易に行うことができ、また、材料9…が袋7…の作用によってデッキ板2とバルコニーの床面1との間で側方に広がらず、少ない材料9…でしっかりとした支承用脚部を形成することができる。
【0019】
更に、材料9…を袋7…に収容しているので、材料9…が直接バルコニーの床面1と接触せず、そのため、材料9が接着性のあるものであっても、注入した材料によって、デッキ板2とバルコニーの床面1とが固着されることがなく、施工後のデッキ板2の取外しも容易に行うことができる。
【0020】
また、材料9が、硬化後に弾力をもつ材料からなる場合は、脚それ自体が緩衝材として機能し、別途に緩衝材を用意しなくとも踏み心地の良いデッキ面を形成することができると共に、踏音の良好な遮音、防音機能を発揮することができる。
【0021】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、本発明では、デッキ板2などの床板に形成する孔6の数や配置に制限はなく、例えば、両端を上記のような支承レールで支承する場合において、中間の一カ所を脚で支承すれば安定した支承状態が得られるような場合は、中間一カ所に材料注入孔が設けられたデッキ板を使用するようにしてもよい。
【0022】
また、上記の実施形態では、不陸のある下地面がバルコニーの床面1であり、床板がデッキ板2である場合を示したが、下地面は、その他、屋上床面やテラス床面などの水勾配のある屋外の各種下地面であってよく、また、本発明の施工方法は、屋外に限らず、屋内において、浴室の水勾配のある洗い場床面を下地面とし、その上にすのこなどの床板を設置するような場合に用いることもできるし、要は、不陸のある下地面に床板を水平に設置する施工の方法として広く用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態を示すもので、図(イ)はバルコニーの床面の水勾配を示す平面図、図(ロ)は該床面にデッキ板を施工した状態を示す平面図、図(ハ)は図(ロ)のI−I線断面図である。
【図2】デッキ板を示すもので、図(イ)は平面図、図(ロ)は図(イ)のII−II線断面図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)は、図4(ニ)〜(ヘ)と共に、施工の方法を順次に示す断面側面図である。
【図4】図(ニ)〜図(ヘ)は、図3(イ)〜(ハ)と共に、施工の方法を順次に示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…バルコニー床面(不陸のある下地面)
2…デッキ板(床板)
6…材料注入孔
7…袋
9…注入後硬化する材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板を不陸のある下地面の上に水平状態となるようにセットした後、注入後硬化する材料を用い、これを床板と下地面とにわたすように注入し、硬化させることで、前記セット状態の床板を前記材料を脚にして下地面上に支承させることを特徴とする床板の施工方法。
【請求項2】
前記床板として、板面内に、前記材料を注入する孔が備えられると共に、裏面側に、孔を通じて注入される材料を受ける袋が備えられたものを用い、
床板をセットした後、前記材料を、前記孔を通じて袋に注入することにより、該材料を床板と下地面とにわたす請求項1に記載の床板の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−83574(P2006−83574A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268444(P2004−268444)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】