説明

バルサルタンおよびその前駆体の製造方法

本発明は、バルサルタンを製造するのに有用な中間体の製造方法、およびバルサルタンの製造方法とともに動脈性高血圧症または心不全の治療のための薬剤を製造するのに有用な式(IV)、(V)および(VI)の合成中間体に関する。このバルサルタンの製造方法により、単純かつ入手しやすい出発品を用い、しかも高収率、かつ、ラセミ化の問題なく、工業規模での製造が可能となる。本発明はまた、N−アシル化の前にカルボン酸を保護する必要のない式(V)の中間体から式(VI)の中間体を製造する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、動脈性高血圧症または心不全を治療するための薬剤の製造を目的とした医薬上活性な化合物を製造するのに有用な中間体の製造方法、および該医薬上活性な化合物の製造方法に関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、バルサルタンの製造方法、その合成中間体および該中間体の製造方法に関する。
【0003】
発明の背景
スペイン特許ES2084801T(欧州特許EP443983に相当)は、アシル化合物、中でも、式(I):
【化1】

のバルサルタンを開示している。
【0004】
このスペイン特許は、フェニル置換基(Z)をテトラゾールに変換することによるその製造方法を開示しており、ここで、Zはテトラゾールに変換可能な基であり、中でもこれはハロゲン基であり得る。この特許の実施例には、Zがシアノ基または保護テトラゾール環である特定の場合が記載されている。この後、最終的にカルボン酸基を脱保護するが、ここで、Rは好ましくはメチルまたはベンジルであり、適当であれば、テトラゾール環保護基、好ましくはトリチル基のものである。
【化2】

【0005】
この特許は最後の合成工程におけるアジドの利用などいくつかの点で改良の余地があり、アジ化ナトリウムを使用すれば爆発の危険が伴い、あるいはアジ化トリブチルスズを使用すれば環境問題が伴う。
【0006】
もう1つの負の局面が、テトラゾール環(トリチル基)およびバリン部分のカルボン酸(ベンジル基)の双方に対して大きな保護基を用いることにあり、これにより、最後の合成中間体の分子量が著しく大きくなり、次に最後の加水分解を行ってバルサルタンを得る際に劇的に小さくなり、原子効率の低い方法となる。これがひいては相当量の残留産物を産み出し、その方法の合成工程数が増える。
【0007】
特許DE4313747、DE4407488、US5596006、EP594022およびWO9609301は、ハロゲン化アリールをパラジウム触媒の存在下で2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸と反応させることによってビフェニル系を形成させることによるサルタンの合成を記載している。
【0008】
よって、少ない合成工程で、単純かつ市販されている出発品を用いてバルサルタンを得るための安全で経済的、かつ、高収率の方法依然として必要である。さらに、この方法は工業規模に応用でき、ラセミ化やその結果としての鏡像異性体の分離が避けられなければならない。
【0009】
発明の説明
従って、本発明の第一の態様は、高収率での取得を可能とするバルサルタンの製造方法を提供する。驚くべきことに、本発明の第一の態様により定義される方法によれば、バルサルタンはラセミ化の問題なく得られる。特に、最後の式(VI)の合成中間体は鏡像体過剰率(e.e.)100%のものが得られる。
【0010】
また有利には、請求項1で定義されたバルサルタンの製造方法では、単純かつ入手しやすい出発品を用い、この出発品にはテトラゾールがすでに組み込まれているので、テトラゾールの形成が避けられ、よって、最後の合成工程においてアジ化ナトリウムで処理する必要がなく、製造に当たっての安全上の問題がなくなる。
【0011】
さらに、この方法は、最後から2番目の合成工程に、多量の有毒副生成物またはヘキサブチル二タンニン酸オキサンを生じ、この種の残留物を処理する問題を伴うアジ化トリブチルスズの使用が含まれないので、環境的観点から極めてクリーンな方法である。
【0012】
よりいっそう有利には、本発明の第一の態様で定義された方法は、最後の合成中間体VIのバリン部分のテトラゾール基またはカルボン酸基の保護基を用いない。これは、最後の合成工程が触媒反応であるということと相まって、その方法の原子効率として理解されているものに有利であり、すなわち、目的生成物に組み込まれる個々の出発試薬の原子割合が最適であり、それは処理すべき残留物の量が著しく減ることを表す。
【0013】
本発明の第一の態様の方法によれば、バルサルタンは少ない合成ステップで得ることができ、詳しくは、シリル化剤を用いる場合にはわずか三工程が必要なだけである。
本発明の第二の態様は、式(IV)で定義される合成中間体である。
本発明の第三の態様は、式(V)で定義される合成中間体である。
本発明の第四の態様は、式(VI)で定義される合成中間体である。
本発明の第五の態様は、式(V)の合成中間体を製造する別法を提供することである。
本発明の第六の態様は、式(VI)の合成中間体を製造する方法を提供することである。
本発明の第七の態様は、反応の進んだ式VIの中間体を式VIIの化合物と結合させることによるバルサルタンの製造方法を提供することである。この方法はラセミ化を首尾よく防ぎ、従って、大きな工業規模でバルサルタンを製造するのに極めて有用である。
【0014】
定義
本発明において、「カルボン酸保護基」とは、"Protective groups in organic synthesis”, T.W. Greene, P.G.M. Wats 3aEd. (1999), page 369に記載されている、任意に置換されたメチルエステルまたはエチルエステル型のカルボン酸の保護基のいずれをも意味する。メチル基またはエチル基は好ましくは記載の保護基の中から選択する。
【0015】
「脱離基」とは、アミン基により置換可能な中間体IIIおよびVIIIの基のいずれをも意味する。記載の脱離基の中でも、ハロゲン、特に臭素または−SOR(ここで、RはCF、トシル、メシルまたはFである)が好ましい選択肢である。
【0016】
「有機塩基」とは、置換アミン型の化合物を意味する。好ましくは、この有機塩基はトリアルキルアミン、特にジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)から選択される。
「非プロトン性有機溶媒」とは、試薬とプロトンを交換できない溶媒を意味する。好ましくは、この非プロトン性有機溶媒は、方法の工程に応じてテトラヒドロフラン(THF)またはジメチルホルムアミド(DMF)から選択される。
【0017】
「パラジウム触媒」とはパラジウム化合物を意味し、Pd(PPh、PdCl(PPh、Pd(AcO)など、反応媒体中で均質かつ可溶なものでもよいし、あるいはPd/Cなど、反応媒体中に不溶なものでもよい。
「リガンド」とは、ホスフィンまたはカルベン型化合物を意味する。好ましくは、このリガンドはトリアリールホスフィン型である。
【0018】
「後処理」とは、反応後に引き続いて行う単離および/または精製に関する処理を意味し、水性媒体中では抽出または沈殿形成を行うことができる。
「ワンポット」とは、個々の中間体を単離せずに行う一連の連続反応を意味する。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、高収率での取得を可能とし、安全面または環境面の問題を生じない式(I)のバルサルタンの新規な製造方法を提供することを目的とする。
【化3】

【0020】
本発明の第一の態様に従うバルサルタンの製造方法は、次の工程(スキームI):
a)25℃〜150℃、好ましくは40〜100℃の温度で、非プロトン性有機溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)と、有機塩基、好ましくはトリアルキルアミン、より好ましくはDIPEA、または無機塩基、好ましくはこの置換反応で放出されるHY酸を受容し得る無機塩基の存在下で、式(II)の化合物のY基を式(III):
【化4】

[式中、
Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFである;
Yは式(III)の化合物のアミンにより置換され得る脱離基を意味し;かつ
はカルボン酸の保護基を意味する]
の保護L−バリンにより置換して式(IV):
【化5】

[式中、XおよびRは上記定義の意味を有する。ただし、XがClであるとき、Rはメチル以外のものである]
の化合物を得る工程;
b)好ましくは酸性媒体または塩基性媒体中での加水分解により、式(IV)の化合物のR基を脱保護して式(V):
【化6】

の化合物を得る工程;
c)有機塩基または無機塩基、好ましくは、NaHCOの存在下、−20〜40℃の範囲の温度、好ましくは−10〜10℃の温度で、式(V)の化合物を非プロトン性有機溶媒、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)中の塩化バレロイルでN−アシル化して式(VI):
【化7】

の化合物を得る工程;
d)水性もしくは極性有機溶媒、または水と水混和性溶媒の混合物から選択される溶媒中、式(VII)の化合物のテトラゾール環と塩を形成し得る有機塩基または無機塩基の存在下、25〜150℃の範囲の温度で、パラジウム触媒、および必要であればリガンドを伴って、式(VI)の化合物を式(VII):
【化8】

の2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸(特許DE4313737に記載の方法に従って得られる)と結合させて式(I)のバルサルタン、および最後に必要があればその医薬上許容される塩を得る工程
を含むことを特徴とする。
【0021】
スキームIは一連の全工程を示す。
【化9】

本発明の第二の態様は、式(IV):
【化10】

[式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFであり、かつ、Rはカルボン酸の保護基である。ただし、XがClであるとき、Rはメチル以外のものである]
の合成中間体である。
【0022】
本発明の第三の態様は、式(V):
【化11】

[式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFである]
の合成中間体である。
【0023】
本発明の第四の態様は、式(VI):
【化12】

[式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFである]の合成中間体である。
本発明の第五の態様は、式(V)の合成中間体を製造する別法を提供することであり、その方法は、
a)25℃〜150℃の温度で、非プロトン性有機溶媒と、この置換反応で放出されるHY酸を受容し得る有機塩基または無機塩基の存在下で、式(II)の化合物のY基を、式(VIII):
【化13】

[式中、
Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFであり;
Yは化合物VIIIのアミンにより置換され得る脱離基を意味し;かつ
は水素またはトリメチルシリル(TMS)基を意味する]
のトリメチルシリル(TMS)基により保護されたL−バリンにより置換して、式(IX):
【化14】

(式中、XおよびRは上記定義の意味を有する)
の化合物を得ること;その後、
b)水性の「後処理」で式(IX)の化合物のTMS基を脱保護して、最終的に式(V):
【化15】

の化合物を得ること
を含むことを特徴とする。
有利には、この工程a)とb)は「ワンポット」反応で行われる。このプロセスは選択するシリル化剤によって異なる。
【0024】
例えば、シリル化剤が1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)である場合、この「ワンポット」反応(スキームII)は、
a)極性溶媒中で、L−バリンのp−トルエンスルホネートを予め形成すること;
b)無水条件下、非プロトン性有機溶媒の存在下で、そのL−バリンのp−トルエンスルホネートを1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)(A. Arrieta; Syn. Commun. 1050-52 (1982))で「in situ」保護すること;
c)25〜150℃の温度、有機塩基の存在下で、式(II)の化合物のY基を置換すること;
d)水性の「後処理」でトリメチルシリル基を加水分解して式(V)の化合物を得ること
を含む。
【0025】
以下のスキームIIは一連の全工程を示す。
【化16】

この合成では、工程a)において、極性溶媒、好ましくは、アルコールまたは水中でL−バリンのp−トルエンスルホネートの形成を行う。工程b)においては、無水条件下、非プロトン性有機溶媒中、1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンを用いて反応を行い、あまり安定でないシリル化化合物を得、これは単離しない。工程c)では、25℃〜150℃、好ましくは40℃〜100℃の温度、トリアルキルアミン型の有機塩基、好ましくはDIPEAの存在下で、工程b)と同じ非プロトン性有機溶媒を用いる。そして最後に、工程d)で、水性の「後処理」でトリメチルシリル基の加水分解を行う。
【0026】
さらに、シリル化剤としてN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)を選択する場合には、この「ワンポット」反応(スキームIII)は、
a)無水条件下、非プロトン性有機溶媒の存在下で、L−バリンのカルボン酸を1当量のN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)(J. F. Klebe; J. Am. Chem. Soc. 88, 3390-95 (1966))で「in situ」保護すること;
b)25〜150℃の温度、有機塩基の存在下で、式(II)の化合物のY基を置換すること;
c)水性の「後処理」でトリメチルシリル基を加水分解して式(V)の化合物を得ること
を含む。
以下のスキームIIIは一連の全工程を示す。
【化17】

【0027】
この合成では、工程a)において、無水条件下、非プロトン性有機溶媒、好ましくはDMF中で、L−バリンと1当量のN,O−ビス(トリメチル−シリル)アセトアミドとの反応を行う。工程b)においては、25℃〜150℃、好ましくは40℃〜100℃の温度、トリアルキルアミン型の有機塩基、好ましくはDIPEAの存在下で、工程a)と同じ非プロトン性有機溶媒を用いる。そして最後に、工程c)で、中性〜酸性の水性媒体中でトリメチルシリル基の加水分解を行う。
【0028】
本発明の第六の態様は、式(VI)の合成中間体を製造する方法であって、式(V)の化合物のカルボン酸を保護することなく、非プロトン性有機溶媒と有機塩基または無機塩基の存在下、−20〜40℃の温度で、塩化バレロイル:
【化18】

を用いてN−アシル化して式(VI):
【化19】

の化合物を得ることからなることを特徴とする方法を提供する。
【0029】
有利には、この非プロトン性有機溶媒はテトラヒドロフラン(THF)であり、無機塩基はNaHCOである。また有利には、このアシル化は−10〜10℃の温度で行う。
本発明の第六の態様に従う方法によれば、式(VI)の化合物は、単純かつ市販されている原料から良好な収率で、しかも少ない反応工程[式(V)の化合物を得るために「ワンポット」反応を行う場合には2工程]で得られる。
【0030】
驚くべきこと、また予期できなかったことに、本発明は、N−アシル化の前にカルボン酸を脱保護する必要のない式(V)の化合物から、ラセミ化せずに式(VI)の化合物を製造する方法を提供し、この場合、最後に酸または塩基加水分解により脱保護すると、望ましくないラセミ化が20〜35%で式(VI)の生成物が得られる。
【0031】
有利には、式(VI)の化合物は光学純度99.5〜100%で得られ、これにより最終的に、十分な量のバルサルタンが得られ、その後の有効物質の精製過程が非常に簡単になる。
本発明の第七の態様は、式VIの中間体を式VII:
【化20】

の化合物と結合させることによる式Iのバルサルタンの製造方法を提供することである。
【0032】
この結合は、式VIIの化合物のテトラゾール環にも、あるいは式VIの中間体のカルボン酸基にも保護基を用いる必要なく起こることが有利である。この反応はテトラゾール環と塩を形成し得る有機塩基または無機塩基の存在下、かつ、触媒量のパラジウム化合物の存在下で達成される。この反応は極性もしくは水性有機溶媒、または水と水混和性溶媒の混合物中、25℃〜150℃、好ましくは50℃〜100℃の温度で行うことができる。この結合は、Pd(PPh、PdCl(PPh、Pd(AcO)の場合にように、パラジウム化合物が反応媒体に可溶な場合には均質相で行われ、Pd/Cの場合のように、パラジウム化合物が反応媒体に不溶な場合には不均質相で行うことができる。Pd/Cを用いる場合、結合反応には触媒量のリガンド、好ましくはホスフィン型のもの、特にトリフェニルホスフィンまたは水溶性ホスフィン、例えば3,3’,3”−ホスフィニジナトリス(ベンゼンスルホネート)の三ナトリウム塩などの存在が必要である。後者には、溶媒として水を用いて反応を行うことができるという利点がある。
【0033】
本発明では、有利にも、単純かつ市販されている製品から出発し、テトラゾール環またはL−バリン部分のカルボン酸の保護もアジ化ナトリウムまたはアジ化トリブチルスズの使用も必要としない合成中間体を経て、工業規模に適用可能な方法により、十分な化学収率かつ高い光学純度でバルサルタンが得られ、その結果、方法の安全性においても環境に関しても改良される。
以下、実施例をいくつか挙げ、その種々の態様の好ましい実施形態を非限定的に示す。
【実施例】
【0034】
実施例1: N−(4−ブロモベンジル)−L−バリンのメチルエステルを得る
ジメチルホルムアミド4.75mL中、4−ブロモベンジロブロミド5g(20mmol)、L−バリンのメチルエステル塩酸塩4.02g(24mmol)およびジイソプロピルエチルアミン7.7mL(44.2mmol)からなる混合物を90℃に加熱する。90℃で1時間後、この混合物を20〜25℃まで冷却し、トルエン20mLを加え、水10mLで2回洗浄する。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮乾固させると、N−(4−ブロモベンジル)−L−バリンメチルエステル5.7g(95%)が油状物の形態で得られる。
IR (フィルム, cm-1): 3350, 2980, 1740, 1490, 1200, 1180, 1150, 1010.
NMR 1H (CDCl3), δ (ppm): 0.93 (dd, 6H, -CH(CH3)2), 1.8-2.0 (m, 1H, -CH(CH3)2), 2.95 (d, 1H, -CH-COOCH3) , 3.4-3.9 (dd, 2H, Ar-CH2-), 3.75 (s, 3H, -COOCH3), 7.25 (d, 2H, ArH), 7.45 (d, 2H, ArH)。
【0035】
実施例2: N−(4−ヨードベンジル)−L−バリンのメチルエステルを得る
実施例1と同様にして、2g(6.74mmol)の4−ヨードベンジロブロミドから、N−(4−ヨードベンジル)−L−バリンメチルエステル2.3g(98.3%)を製造する。
IR (フィルム, cm-1): 3330, 2980, 1740, 1480, 1200, 1180, 1150, 1010.
NMR 1H (CDCl3), δ (ppm): 0.93 (dd, 6H, -CH(CH3)2), 1.8-2.0 (m, 1H, -CH(CH3)2), 2.95 (d, 1H, -CH-COOCH3), . 3.4-3.9 (dd, 2H, Ar-CH2-), 3.7 (s, 3H, -COOCH3), 7.1 (d, 2H, ArH), 7.6 (d, 2H, ArH)。
【0036】
実施例3: N−(4−ブロモベンジル)−L−バリンを得る
(1)実施例1で得られたN−(4−ブロモベンジル)−L−バリンメチルエステル1.34g(4.45mmol)およびメタノール15mLと水1mLに溶解した85%KOH0.62g(9.39mmol)からなる混合物を還流下で加熱する。3時間還流下で反応を維持した後、これを20〜25℃まで冷却し、HCl 1NでpH4〜5に酸性化する。この懸濁液を20〜25℃で1時間攪拌した後、これを濾過し、水で洗浄すると、1g(78.3%)のN−(4−ブロモベンジル)−L−バリンが得られる。融点=239〜241℃。
鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.=98.56%である。
IR (KBr, cm-1): 2950, 1610, 1490, 1470, 1390, 1210, 1030, 840.
NMR 1H (D2O), N- (4-ブロモベンジル)-L-バリンのナトリウム塩, δ (ppm): 0.90 (t, 6H, -CH(CH3)2), 1.7-1.9 (m, 1H, - CH(CH3)2), 2.83 (d, 1H, -CH-COONa), 3.4-3.8 (dd, 2H, Ar- CH2-), 7.27 (d, 2H, ArH), 7.55 (d, 2H, ArH)。
【0037】
(2)窒素雰囲気下、20〜25℃で、CCHCl 100mL中、L−バリンのp−トルエンスルホネート10g(34.6mmol)の懸濁液に、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン8.0mL(38mmol)を加える。この混合物を20〜25℃で1時間振盪した後、ジイソプロピルエチルアミン13.2mL(76mmol)と4−ブロモベンジロブロミド8.64g(34.6mmol)を加え、還流下で加熱する。4−ブロモベンジロブロミドが総て消費されたところで、低圧で溶媒を蒸発させ、水100mLを加え、0℃で1時間後に固体を濾過し、エアオーブンにて40℃で乾燥させると、N−(4−ブロモベンジル)−L−バリン8.8g(89%)が得られる。
【0038】
鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.=100%である。
(3)窒素雰囲気下、DMF12.5mL中、L−バリン23.5g(0.20mol)とジイソプロピルエチルアミン38.5mL(0.22mol)からなる混合物に、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド52mL(0.21mol)を加える。80℃で1時間後、この懸濁液は透明な溶液となる。次に、少量ずつ、発熱を制御しながら、4−ブロモベンジロブロミド50g(0.20mol)を加え、80℃で2時間反応させる。この混合物を20〜25℃まで冷却し、トルエン250mL、および水250mLと40%NaOH80mLからなる溶液を加える。得られた水相をAcOEt100mLで2回洗浄し、残りの溶媒を留去し、3N HClでpH6〜7とする。得られた固体をIPA250mLとともに濾過すると、N−(4−ブロモベンジル)−L−バリン43.9g(76.5%)が得られる。
鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.=100%である。
【0039】
実施例4: N−(4−ヨードベンジル)−L−バリンを得る
(1)実施例2で得られたN−(4−ヨードベンジル)−L−バリンメチルエステル2.3g(6.62mmol)とメタノール23mLと水2mL中に溶解した85%KOH0.92g(13.94mmol)からなる混合物を還流下で加熱する。還流下で5時間反応を維持した後、これを20〜25℃まで冷却し、1N HClでpH7まで酸性化する。この懸濁液を20〜25℃で1時間攪拌した後、これを水とともに濾過すると、N−(4−ヨードベンジル)−Lバリン1.8g(82.2%)が得られる。融点=256−258℃。
鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.=99.38%である。
IR (KBr, cm-1): 2960, 1610, 1490, 1460, 1410, 1210, 1005, 830.
NMR 1H (D2O), N- (4-ヨードベンジル)-L-バリンのナトリウム塩, δ (ppm): 0.90 (t, 6H, -CH(CH3)2), 1.7-1.9 (m, 1H, -CH(CH3)2), 2.84 (d, 1H, -CH-COONa), 3.4-3.8 (dd, 2H, ArCH2-), 7.15 (d, 2H, ArH), 7.75 (d, 2H, ArH)。
【0040】
(2)20〜25℃、窒素雰囲気下、CHCl 120mL中、L−バリンのp−トルエンスルホネート12g(41.5mmol)の懸濁液に、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン9.6mL(45.5mmol)を加える。この混合物を20〜25℃で2時間振盪した後、ジイソプロピルエチルアミン15.9mL(91.3mmol)と4−ヨードベンジロブロミド12.3g(41.5mmol)を加え、還流下で加熱する。4−ヨードベンジロブロミドが総て消費されたところで、低圧で溶媒を蒸発させ、水120mLを加え、0℃で1時間後、固体を濾過し、エアオーブンにて40℃で乾燥させると、N−(4−ヨードベンジル)−L−バリン11.6g(84%)が得られる。 鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.=100%である。
【0041】
(3)窒素雰囲気下、DMF12.5mL中、L−バリン21.7g(0.185mol)とジイソプロピルエチルアミン32.3mL(0.185mol)からなる混合物に、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド45.8mL(0.185mol)を加える。80℃で1時間後、この懸濁液は透明な溶液となる。次に、4−ヨードベンジロブロミド50g(0.168mol)を50℃で少量ずつ、発熱を制御しながら加え、80℃で2時間反応させる。この混合物を20〜25℃まで冷却し、トルエン250mL、および水250mLと40%NaOH80mLからなる溶液を加える。得られた水相をAcOEt100mLで2回洗浄し、残りの溶媒を留去し、3N HClでpH6〜7とする。得られた固体をIPA250mLとともに濾過すると、N−(4−ヨードベンジル)−L−バリン47.9g(85.3%)が得られる。
鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.=100%である。
【0042】
実施例5: N−(4−ブロモベンジル)−N−バレリル−L−バリンを得る
乾燥THF50mL中、N−(4−ブロモベンジル)−L−バリン5g(17.47mmol)と重炭酸ナトリウム5.9g(70.24mmol)からなる混合物を攪拌下、窒素雰囲気下で1時間放置する。この懸濁液を0℃まで冷却し、これに塩化バレロイル4.2mL(35.41mmol)を15分かけて加える。次に、この混合物を20〜25℃で3時間反応させ、水50mLを加え、THFを低圧で蒸留する。得られた溶液を35%HClでpH2とし、残りのTHFを完全に留去する。得られた固体を濾過し、水50mLで洗浄し、真空炉で乾燥させると、N−(4−ブロモベンジル)−N−バレリル−L−バリン5.9g(91.2%)が得られる。この固体をEtOH/HO 2:1混合物から再結晶させる。融点=123℃
鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.>98%である。
IR (KBr, cm-1): 2960, 1720, 1590, 1480, 1420, 1250.
NMR 1H (CDCl3), δ (ppm): 0.8-1.1 (m, 9H, -CH(CH3) + -CH2CH3), 1.2-1.5 (m, 2H, -CH2CH3), 1.5-1.8 (m, 2H, -CH2CH2CH3), 2.4 (m, 2H, -CH2CO-), 2.7 (m, 1H, -CH(CH3)2), 3.7 (d, 1H, -CH-COOH), 4.3-4.8 (dd, 2H, Ar-CH2-), 7.1 (d, 2H, ArH), 7.5 (d, 2H, ArH)。
【0043】
実施例6: N−(4−ヨードベンジル)−N−バレリル−L−バリンを得る
実施例5と同様にして、N−(4−ヨードベンジル)−L−バリン10g(30.01mmol)と塩化バレロイル7.12mL(60.03mmol)から、N−(4−ヨードベンジル)−N−バレリル−L−バリン11.5g(91.8%)が得られる。この固体をEtOH/HO 2:1混合物から再結晶させる。融点=126〜127℃
鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.>99%である。
IR (KBr, cm-1): 2960, 1725, 1595, 1480, 1405, 1255.
NMR 1H (CDCl3), δ (ppm):0.8-1.1 (m, 9H, -CH(CH3)2 +-CH2CH3), 1.2-1.5 (m, 2H, -CH2CH3), 1.5-1.8 (m, 2H, -CH2CH2CH3), 2.4 (m, 2H, -CH2CO-), 2.7 (m, 1H, -CH(CH3)2), 3.7 (d, 1H, -CH-COOH), 4.3-4.8 (dd, 2H, Ar-CH2-), 6.9 (d, 2H, ArH), 7.7 (d, 2H, ArH)。
【0044】
実施例7: (S)−N−(1−カルボキシ−2−メチル−プロプ−1−イル)−N−ペンタノイル−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル−)−ビフェニル−4−イル メチル]アミン(バルサルタン)を得る
均質触媒反応
(1)エタノール1.35mL、1.2−ジメトキシエタン13.5mLおよび水4mLからなる混合物に、N−(4−ブロモベンジル)−N−バレリル−L−バリン0.50g(1.35mmol)、2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸0.308g(1.62mmol)、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン0.156g(0.135mmol)およびNaOH0.324g(8.1mmol)を加える。5分間窒素気泡を穏やかに通して洗浄した後、この混合物を還流下で12時間加熱する。この反応物を20〜25℃まで冷却し、AcOEt25mLと水25mLを加える。デカンテーションした水相を37%HClでpH1〜2とし、AcOEt25mLで抽出する。AcOEt相を蒸発乾固した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤AcOEt/ヘプタン/AcOH 15:5:0.2)により精製すると、バルサルタン0.356g(60.5%)が得られる。
NMR 1H (CDCl3), δ (ppm): 0.8-1.1 (m, 9H, -CH(CH3)2 + - CH2CH3), 1.3-1.5 (m, 2H, -CH2CH3), 1.5-1.8 (m, 2H, - CH2CH2CH3), 2.6 (t, 2H, -CH2CO-), 2.7 (m, 1H, -CH(CH3)2), 3.5 (d, 1H, -CH-COOH), 4.3-5.0 (dd, 2H, Ar-CH2-), 7.0-7.7 (m, 7H, ArH), 8.0-8.1 (d, 1H, ArH, テトラゾール環に対してオルト位)。
【0045】
(2)メタノール3mL、水9mLおよびNaOH0.096g(2.4mmol)からなる混合物に、N−(4−ヨードベンジル)−N−バレリル−L−バリン0.250g(0.60mmol)、2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸0.137g(0.72mmol)およびパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン0.035g(0.030mmol)を加える。5分間窒素気泡を穏やかに通して洗浄した後、この混合物を還流下で2時間加熱する。この反応物を20〜25℃まで冷却し、メタノールを真空下で留去し、AcOEt25mLと水25mLを加える。デカンテーションした水相を37%HClでpH1〜2とし、AcOEt25mLで抽出する。AcOEt相を蒸発乾固した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤AcOEt/ヘプタン/AcOH 15:5:0.2)により精製すると、バルサルタン0.230g(88%)が得られる。
【0046】
(3)5分間窒素気泡を通す。30%メタノール中ナトリウムメトキシド2.06mL(13.0mmol)およびメタノール5mLの溶液中、N−(4−ブロモベンジル)−N−バレリル−Lバリン0.50g(1.35mmol)、2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸0.308g(1.62mmol)、塩化パラジウム0.0028g(0.016mmol)およびトリフェニルホスフィン0.0084g(0.032mmol)からなる混合物に加える。これを窒素雰囲気下、70℃で5時間加熱し、活性炭0.050gを加え、同じ温度でさらに15分間攪拌する。20〜25℃まで冷却した後、これを濾過し、メタノールを蒸発させ、1N HCl25mLおよびAcOEt25mLで処理する。AcOEt相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤AcOEt/ヘプタン/AcOH 15:5:0.2)により精製すると、バルサルタン0.327g(55.6%)が得られる。
【0047】
(4)5分間窒素気泡を通す。N−(4−ヨードベンジル)−N−バレリル−L−バリン0.20g(0.48mmol)、2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸0.115g(0.61mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリド0.017g(0.024mmol)、およびメタノール2.4mLおよび水0.7mL中NaOH0.115g(2.87mmol)からなる混合物に加える。この反応物を窒素雰囲気下、70℃で加熱する。3時間経過すると反応は完了したとみなし、メタノールを留去する。粗生成物を1N HCl25mLおよびAcOEt25mLで処理する。AcOEt相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤AcOEt/ヘプタン/AcOH 15:5:0.2)により精製すると、バルサルタン0.178g(85%)が得られる。
【0048】
不均質触媒
(5)30%メタノール中ナトリウムメトキシド4.1mL(21.5mmol)およびメタノール10mLの溶液中、N−(4−ブロモベンジル)−N−バレリル−L−バリン1g(2.70mmol)、2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸0.513g(2.70mmol)、5%Pd/Cペースト0.120g(0.028mmolパラジウム)およびトリフェニルホスフィン0.0084g(0.032mmol)からなる混合物を70℃で10時間加熱する。この反応物を20〜25℃まで冷却し、触媒を濾過し、メタノールを真空下で留去する。得られた残渣を水25mLに溶解し、AcOEt25mLで洗浄した後、3N HClでpH3まで酸性化し、AcOEt20mLで2回抽出する。合わせたAcOEt相を無水NaSOで乾燥させ、溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤AcOEt/ヘプタン/AcOH 15:5:0.2)により精製すると、バルサルタン0.683g(58%)が得られる。
【0049】
同様にして、30%メタノール中ナトリウムメトキシド3.7mL(19.4mmol)およびメタノール10mL中、N−(4−ヨードベンジル)−N−バレリル−L−バリン1g(2.4mmol)、2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸0.546g(2.88mmol)、5%Pd/Cペースト0.120g(0.028mmolパラジウム)およびトリフェニルホスフィン0.0074g(0.028mmol)から、バルサルタン0.745g(71.4%)が得られる。
(6)水1mL中、N−(4−ヨードベンジル)−N−バレリル−L−バリン0.1g(0.24mmol)、2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸0.055g(0.29mmol)、NaOH0.038g(0.95mmol)、5%Pd/Cペースト0.0102g(0.0024mmolパラジウム)および3,3’,3”−ホスフィニジナトリス(ベンゼンスルホネート)三ナトリウム塩0.0020g(0.0035mmol)からなる混合物を70℃で2時間加熱する。この混合物を20〜25℃まで冷却した後、触媒を濾過し、氷酢酸0.1mLを加え、濾過し、エアオーブンにて45℃で乾燥させると、粗バルサルタン0.086gが得られる。この粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤AcOEt/ヘプタン/AcOH 15:5:0.2)により精製すると、バルサルタン0.072g(68%)が得られる。
【0050】
粗バルサルタンの精製
AcOEt160mLに溶解した実施例7(2)に従って得られた粗バルサルタン20gからなる溶液を45〜50℃にて1時間、中性の活性炭1gで処理する。この混合物を濾過し、得られた透明の溶液に20〜25℃でメチルシクロヘキサンを沈殿が見られるまでゆっくり加える(およそ120mL)。この混合物は最初は粘稠であるが、後に流動性の懸濁液が得られ、その際にさらに120mLのメチルシクロヘキサンをゆっくりと添加し続ける。この混合物を20〜25℃で3時間攪拌し、濾過し、真空炉にて45℃で乾燥させると、バルサルタン14gが白色固体として得られる。
鏡像体純度をキラルHPLCにより測定すると、e.e.>99.5%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬上活性な化合物、バルサルタンまたはその医薬上許容される塩を製造する方法であって、次の工程:
a)25℃〜150℃の温度で、非プロトン性有機溶媒と有機塩基または無機塩基の存在下で、式(II)の化合物のY基を式(III):
【化1】

[式中、
Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFである;
Yは式(III)の化合物のアミンにより置換され得る脱離基を意味し;かつ
はカルボン酸の保護基を意味する]
の保護L−バリンにより置換して式(IV):
【化2】

[式中、XおよびRは上記定義の意味を有する。ただし、XがClであるとき、Rはメチル以外のものである]
の化合物を得る工程;
b)式(IV)の化合物のR基を脱保護して式(V):
【化3】

の化合物を得る工程;
c)有機塩基または無機塩基の存在下、−20〜40℃の温度で、式(V)の化合物を非プロトン性有機溶媒中の塩化バレロイルでN−アシル化して式(VI):
【化4】

の化合物を得る工程;
d)水性もしくは極性有機溶媒、または水と水混和性溶媒の混合物から選択される溶媒中、式(VII)の化合物のテトラゾール環と塩を形成し得る有機塩基または無機塩基の存在下、25〜150℃の温度で、パラジウム触媒、および必要であればリガンドを伴って、式(VI)の化合物を式(VII):
【化5】

の2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸と結合させて式(I):
【化6】

のバルサルタン、および最後に必要があればその医薬上許容される塩を得る工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記工程a)において前記置換が、40〜100℃の温度で、ジメチルホルムアミド(DMF)と、トリアルキルアミンから選択される有機塩基、好ましくはDIPEA、またはこの置換反応で放出されるHYを受容し得る無機塩基から選択される無機塩基の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程b)において前記脱保護が酸または塩基媒体中での加水分解により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程c)において前記N−アシル化が、NaHCOの存在下、−10〜10℃の温度にて、テトラヒドロフラン中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(IV):
【化7】

[式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFであり、かつ、Rはカルボン酸の保護基である。ただし、XがClであるとき、Rはメチル以外のものである]
の合成中間体。
【請求項6】
式(V):
【化8】

[式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFである]
の合成中間体。
【請求項7】
式(VI):
【化9】

[式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFである]の合成中間体。
【請求項8】
式(V)の合成中間体を製造する方法であって、
a)25℃〜150℃の温度で、非プロトン性有機溶媒と、この置換反応で放出されるHY酸を受容し得る有機塩基または無機塩基の存在下で、式(II)の化合物のY基を、式(VIII):
【化10】

[式中、
Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トシル、メシルまたはFであり;
Yは化合物VIIIのアミンにより置換され得る脱離基を意味し;かつ
は水素またはトリメチルシリル(TMS)基を意味する]
のトリメチルシリル(TMS)基により保護されたL−バリンにより置換して、式(IX):
【化11】

(式中、XおよびRは上記定義の意味を有する)
の化合物を得ること;その後、
b)水性の「後処理」で式(IX)の化合物のTMS基を脱保護して、最終的に式(V):
【化12】

の化合物を得ること
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
工程a)およびb)が「ワンポット」反応で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
シリル化剤が1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)であり、「ワンポット」反応が
a)極性溶媒中で、L−バリンのp−トルエンスルホネートを予め形成すること;
b)無水条件下、非プロトン性有機溶媒の存在下で、そのL−バリンのp−トルエンスルホネートを1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で「in situ」保護すること;
c)前記非プロトン性有機溶媒中、25〜150℃の温度、有機塩基の存在下で、式(II)の化合物のY基を置換すること;
d)水性の「後処理」でトリメチルシリル基を加水分解すること
を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記工程a)において前記極性溶媒がアルコールまたは水である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程c)において前記置換が40〜100℃の温度、DIPEAから選択されるトリアルキルアミン型の有機塩基の存在下で起こる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
シリル化剤がN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)であるとき、「ワンポット」反応が
a)無水条件下、非プロトン性有機溶媒の存在下で、L−バリンのカルボン酸を1当量のN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)で「in situ」保護すること;
b)25〜150℃の温度、有機塩基の存在下で、式(II)の化合物の前記の基を置換すること;および
c)水性の「後処理」でトリメチルシリル基を加水分解して式(V)の化合物を得ること
を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項14】
前記工程a)において前記有機溶媒がDMFである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程b)において前記置換が40〜100℃の温度、DIPEAから選択されるトリアルキルアミン型の有機塩基の存在下で起こる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
式(VI)の合成中間体を製造する方法であって、式(V)の化合物のカルボン酸を保護することなく、非プロトン性有機溶媒と有機塩基または無機塩基の存在下、−20〜40℃の温度で、塩化バレロイル:
【化13】

を用いてN−アシル化して式(VI):
【化14】

の化合物を得ることからなることを特徴とする、方法。
【請求項17】
前記非プロトン性有機溶媒がテトラヒドロフラン(THF)であり、前記無機塩基がNaHCOである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アシル化が−10〜10℃の温度で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
式Iのバルサルタンを製造する方法であって、水性もしくは極性有機溶媒、または水と水混和性溶媒の混合物から選択される溶媒、テトラゾール環と塩を形成し得る有機塩基または無機塩基の存在下、25〜150℃の温度で、触媒量のパラジウムの存在下で、式(VI)の中間体を式(VII):
【化15】

の化合物と結合させることからなることを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記反応が50℃〜100℃の温度で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記結合が、パラジウム化合物が反応媒体に可溶な場合には均質相で行われ、パラジウム化合物が反応媒体に不溶な場合には不均質相で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
パラジウム化合物が反応媒体に可溶な場合に、Pd(PPh、PdCl(PPh、Pd(AcO)から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
パラジウム化合物が反応媒体に不溶な場合に、Pd/Cが用いられ、かつ、結合反応が触媒量のリガンドの存在下で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記リガンドがホスフィン型のもの、好ましくはトリフェニルホスフィンまたは水溶性ホスフィンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記の水溶性ホスフィンが3,3’,3”−ホスフィニジナトリス(ベンゼンスルホネート)三ナトリウム塩である、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2007−533727(P2007−533727A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509005(P2007−509005)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001100
【国際公開番号】WO2005/102987
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506044775)インケ、ソシエダ、アノニマ (8)
【氏名又は名称原語表記】INKE,S.A.
【Fターム(参考)】