説明

バルブのシール構造

【課題】平面状の当接面7aを有するゴム状弾性体製のシール部材7がバルブの開閉作動に合わせて筒状の弁座部12に接離する構造のバルブのシール構造において、弁閉状態においてシール部材7が開口部13にはみ出して詰まってしまうことがなく、もって開弁作動を円滑に行なうことができるバルブのシール構造を提供する。
【解決手段】シール部材7よりも硬く弾性変形しにくい材質よりなるフタ部材18をシール部材7の当接面7aに設け、弁閉時にフタ部材18が弁座部12内側の開口部13を閉塞する構造とする。またフタ部材18が開口部13を閉塞したときにフタ部材18の外周縁部が弁座部12の内周縁部に係合し、その外周側においてシール部材7の当接面7aが弁座部12に密接する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブのシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から図3に示すように、弁体51に保持されたゴム状弾性体製のシール部材52がバルブの開閉作動に合わせて弁座部53に接離する構造のバルブのシール構造が知られている。シール部材52は平面状の当接面を有し、この平面状の当接面をもって筒状の弁座部53に接離する構造とされている。
【0003】
しかしながらこの従来技術によると、弁座部53外側の弁室54側が高圧、弁座部53内側の開口部(弁孔)55側が低圧である場合、弁閉状態においてゴム状弾性体製のシール部材52が高圧Pに押されて大きく弾性変形し、図4に示すように開口部55にはみ出し詰まってしまって、爾後の開弁作動が円滑に行なわれず、また詰まったゴムが引き離される際に破損する可能性がある。
【0004】
【特許文献1】実公平6−48218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて、弁閉状態においてゴム状弾性体製のシール部材が開口部にはみ出して詰まってしまうことがなく、もって開弁作動を円滑に行なうことができるバルブのシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるシール構造は、平面状の当接面を有するゴム状弾性体製のシール部材がバルブの開閉作動に合わせて筒状の弁座部に接離する構造のバルブのシール構造において、前記シール部材よりも硬く弾性変形しにくい材質よりなるフタ部材を前記シール部材の当接面に設け、弁閉時に前記フタ部材が前記弁座部内側の開口部を閉塞することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の請求項2によるシール構造は、上記した請求項1記載のシール構造において、フタ部材が開口部を閉塞したときに前記フタ部材の外周縁部は弁座部の内周縁部に係合し、その外周側においてシール部材の当接面が前記弁座部に密接することを特徴とするものである。
【0008】
上記構成を有する本発明のシール構造のように、シール部材よりも硬く弾性変形しにくい材質よりなるフタ部材をシール部材の当接面に設け、このフタ部材が弁閉時に弁座部内側の開口部を閉塞するようにすると、フタ部材がはみ出し防止の遮蔽体として作用することから、シール部材が開口部にはみ出すのを抑えることが可能となる。
【0009】
またこのとき、フタ部材が開口部に侵入し過ぎると上記作用が損なわれることからこれを防止するため、フタ部材が開口部を閉塞したときにフタ部材の外周縁部は弁座の内周縁部に係合することが好ましい。
【0010】
また、フタ部材が開口部を閉塞してフタ部材の外周縁部が弁座の内周縁部に係合したときにその外周側においてシール部材の当接面が弁座部に密接すると、シール部材本来のシール作用が損なわれることもない。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明の請求項1によるシール構造においては上記したように、平面状の当接面を有するゴム状弾性体製のシール部材がバルブの開閉作動に合わせて筒状の弁座部に接離する構造のバルブのシール構造において、シール部材よりも硬く弾性変形しにくい材質よりなるフタ部材をシール部材の当接面に設け、このフタ部材が弁閉時に弁座部内側の開口部を閉塞するように構成されているために、フタ部材がはみ出し防止の遮蔽体の作用をなし、シール部材が開口部にはみ出すのを抑えることが可能とされている。したがって上記従来のようにシール部材が開口部にはみ出して詰まってしまい、開弁作動が円滑に行なわれない、または詰まったゴムが引き離される際に破損すると云った不具合が発生するのを未然に防止することができる。
【0013】
またこれに加えて、本発明の請求項2によるシール構造においては、フタ部材が開口部を閉塞したときにフタ部材の外周縁部が弁座部の内周縁部に係合するように構成されているために、フタ部材が開口部に侵入し過ぎることがない。したがってフタ部材が開口部に侵入し過ぎて、結果、フタ部材の遮蔽体としての作用が損なわれるのを防止することができる。
【0014】
また、フタ部材が開口部を閉塞してフタ部材の外周縁部が弁座の内周縁部に係合したときにその外周側においてシール部材の当接面が弁座部に密接するように構成されているために、シール部材本来のシール作用が損なわれることがない。したがって上記したところによりシール部材のはみ出し・詰まりを抑えて開弁作動を円滑化し、なおかつ優れたシール効果を発揮するシール構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係るバルブのシール構造を示しており、同図(A)はバルブの弁開時の状態、同図(B)はバルブの弁閉時の状態をそれぞれ示している。また図2はバルブの全体構造を示している。
【0017】
図2のバルブ装置は、高圧ガスの入力ポート2および出力ポート3を設けたバルブボディ1の内部に、プランジャー6、ソレノイド8、復帰スプリング9および主弁体11等の構成部品を組み付けたものであって、比較的小さな開弁力で開弁し得るように2段階に亙って開弁作動するよう構成されており、すなわち図示した弁閉状態から先ず、プランジャー6が開弁方向(図では下方向)にストロークすることによりプランジャー6および主弁体11間の副弁Bが開弁し、引きつづき主弁体11が同じく開弁方向にストロークすることにより主弁体11およびバルブボディ1間の主弁Aが開弁するように構成されている。
【0018】
副弁Bは、プランジャー6を弁体として、その先端に保持したゴム状弾性体製のシール部材7が、主弁体11に設けた筒状の弁座部12に接離することによって開閉作動するように構成されている。シール部材7は平面状の当接面7aを有している。主弁体11における弁座部12の内側には貫通穴状の開口部(弁孔)13が設けられている。
【0019】
主弁Aは、主弁体11を弁体として、その先端に保持したゴム状弾性体製のシール部材14が、バルブボディ1の内面であって出力ポート3の周りに設定した弁座部4に接離することによって開閉作動するように構成されている。
【0020】
主弁体11は、プランジャー6の周りに配置される筒状部(スカート部)11aを有しており、この筒状部11aの内側にピン状の連結部材15が径方向に架設されている。一方、プランジャー6は、主弁体11の筒状部11aの内側に配置される軸部(弁体部)6aを有しており、この軸部6aに上記ピン状の連結部材15を貫挿する貫通穴状の係合部6bが径方向に設けられている。ピン状の連結部材15とこれを貫挿した貫通穴状の係合部6bの間には、所定の大きさの遊びcがストローク方向(軸方向)に設定されており、この遊びcによってプランジャー6と主弁体11は時間差をもって開弁作動し、上記2段階に亙る開弁作動が実現されている。
【0021】
尚、上記バルブにおいて、副弁Bが省略されて主弁Aのみの構成であると、弁室16内の圧力が大きくかつシール部材14のシール径が大きいことから、ソレノイド8でプランジャー6を吸引してもプランジャー6がストロークしないことがある。そこでシール径の比較的小さな副弁Bを設定し先ずこれを開弁させて高圧をキャンセルし、高圧をキャンセルしてから主弁Aを開弁させるように構成されている。
【0022】
上記図2のバルブ装置において、副弁Bは、平面状の当接面7aを有するゴム状弾性体製のシール部材7がバルブの開閉作動に合わせて筒状の弁座部12に接離するように構成されており、このような構成であると上記したように弁座部12外側の弁室16側が高圧で、弁座部12内側の開口部13側が低圧である場合に、弁閉状態においてゴム状弾性体製のシール部材7が高圧に押されて大きく弾性変形し、開口部13にはみ出して詰まってしまうことがある。そこで当該実施例では以下の対策がなされている。
【0023】
すなわち図1(A)に示すように、シール部材7よりも硬く弾性変形しにくい材質たとえば金属もしくは硬質樹脂等よりなるフタ部材18がシール部材7の当接面7aに接着等の接合手段によって取り付けられており、図1(B)に示すように、弁閉時にこのフタ部材18が弁座部12内側の開口部13を閉塞するように構成されている。またフタ部材18が開口部13を閉塞したときにフタ部材18はその外周縁部が弁座部12の内周縁部に係合するように構成されており、更にその外周側においてシール部材7の当接面7aが弁座部12に密接するように構成されている。このため当該実施例では、断面円弧形のポペット状ないし円盤状を呈するフタ部材18の外径寸法dが同じく断面円弧形を呈する筒状の弁座部12の内径寸法dよりも大きく、かつ弁座部12頂部の径寸法dよりは小さく設定されている(d<d<d)。
【0024】
上記構成のシール構造においては上記したように、作動部品であるプランジャー6に保持されたゴム状弾性体製のシール部材7がバルブの開閉作動に合わせて筒状の弁座部12に接離する構造において、金属もしくは硬質樹脂等の硬材よりなるフタ部材18がシール部材7の当接面7aに接着され、このフタ部材18が弁閉時に弁座部12内側の開口部13を閉塞するように構成されているために、フタ部材18がはみ出し防止の遮蔽体としての作用をなすことになり、よってシール部材7が開口部13にはみ出すのを抑えることが可能とされている。したがって従来のようにシール部材52が開口部55にはみ出して詰まってしまい、開弁作動が円滑に行なわれないと云った不具合が発生するのを未然に防止することができる。
【0025】
また、フタ部材18が開口部13を閉塞したときにこのフタ部材18の外周縁部が弁座部12の内周縁部に係合するように構成されているために、フタ部材18が開口部13に侵入し過ぎると云うことがない。したがってフタ部材18が開口部13に侵入し過ぎて、フタ部材18の遮蔽体としての作用が損なわれるのを防止することができる。
【0026】
また、フタ部材18が開口部13を閉塞してフタ部材18の外周縁部が弁座12の内周縁部に係合したときにその外周側においてシール部材7の当接面7aが弁座部12に密接するように構成されているために、シール部材7本来のシール作用が損なわれることもない。したがって上記したところによりシール部材7のはみ出しおよび詰まりを抑えて開弁作動を円滑化し、なおかつ優れたシール効果を発揮するシール構造を提供することができる。
【0027】
尚、上記実施例でフタ部材18はこれをシール部材7の当接面7aに接着する構成としたが、その剥離が懸念される場合は、フタ部材18にアンカー部(図示せず)を一体成形してこれをシール部材7に埋設することが考えられる。
【0028】
また、上記実施例にはその閉弁作動時に、弁座部12に対して先ずシール部材7が当接し、後(あと)からフタ部材18が当接するパターンと、反対に、先ずフタ部材18が当接し、後からシール部材7が当接するパターンの2通りが考えられるが、本発明にはこの2通りのパターンの双方が含まれる。前者のパターンの場合には、閉弁までの力が少なくて済み、フタ部材18が当接して閉弁力が増大する。後者のパターンの場合には、シールするまでにフタ部材18を押圧する分の閉弁力が必要とされる。
【0029】
また、上記実施例ではシール部材7が可動側、弁座部12が静止側に配置されているが、配置は反対であっても良く、すなわちシール部材7が静止側、弁座部12が可動側に配置される構造であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に係るシール構造を示す図であって、(A)はバルブの弁開時の状態を示す断面図、(B)はバルブの弁閉時の状態を示す断面図
【図2】同シール構造を有するバルブの全体構造を示す断面図
【図3】従来例に係るバルブの断面図
【図4】同バルブに備えられるシール構造の断面図
【符号の説明】
【0031】
1 バルブボディ
2 入力ポート
3 出力ポート
4,12 弁座部
6 プランジャー
6a 軸部
6b 係合部
7,14 シール部材
7a 当接面
8 ソレノイド
9 復帰スプリング
11 主弁体
11a 筒状部
13 開口部
15 連結部材
16 弁室
18 フタ部材
A 主弁
B 副弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の当接面を有するゴム状弾性体製のシール部材がバルブの開閉作動に合わせて筒状の弁座部に接離する構造のバルブのシール構造において、
前記シール部材よりも硬く弾性変形しにくい材質よりなるフタ部材を前記シール部材の当接面に設け、弁閉時に前記フタ部材が前記弁座部内側の開口部を閉塞することを特徴とするバルブのシール構造。
【請求項2】
請求項1記載のシール構造において、
フタ部材が開口部を閉塞したときに前記フタ部材の外周縁部は弁座部の内周縁部に係合し、その外周側においてシール部材の当接面が前記弁座部に密接することを特徴とするバルブのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−79720(P2009−79720A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250460(P2007−250460)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】