説明

バルブメタル粉末の製造法

本発明は、バルブメタル一次粉末を、還元性金属および/または金属水素化物を用いて脱酸素する方法、およびアノード材料として電解コンデンサに適しているタンタル粉末の製造法に関する。殊に、前記方法は、脱酸素を脱酸素すべきバルブメタル粉末と液状の還元性金属/金属水素化物との接触なしに実施することによって特徴付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い比表面積のバルブメタル粉末を、相応する一次粉末から還元性金属および/または金属水素化物を用いて製造する方法、殊にアノード材料として高い比容量の電解質コンデンサに適しているタンタル粉末の製造法に関する。還元性金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムおよび/またはランタンおよび/またはその水素化物、殊にマグネシウムが適している。
【0002】
本発明によれば、一次粉末としてチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよび/またはタングステン、特にニオブおよび/またはタンタル、殊にタンタル粉末が使用される。
【0003】
本発明は、次に、殊にコンデンサを製造するためのタンタル粉末の製造に関連して記載される。
【0004】
極めて大きな活性のコンデンサ表面積およびしたがってモバイルの通信電子機器に適した小型の構造形式を有する固体電解質コンデンサとして、主に相応する伝導性の担体上に施こされた五酸化ニオブ遮断層または五酸化タンタル遮断層を有するかかる固体電解質コンデンサは、安定性("バルブメタル")、比較的高い誘電定数および電気化学的形成により極めて均一な層厚で形成可能な絶縁五酸化物層を利用しながら使用される。担体としては、相応する五酸化物の金属前駆体が使用される。同時にコンデンサ電極(アノード)である担体は、微粒状の一次構造体の焼結によって形成されるかまたは既に海綿状の二次構造体の焼結によって形成される高度に多孔質の海綿状構造体からなる。担体構造体の表面は、電気分解により五酸化物に酸化され("化成され")、この場合五酸化物層の厚さは、電気分解による酸化の最大電圧("化成電圧")によって測定される。対向電極は、海綿状構造体を、熱的に二酸化マンガンに変換される硝酸マンガンまたはポリマー電解質の液状前駆物質で含浸しかつ重合させることによって形成され、この場合こうして得られた伝導性ポリマーは、多くの場合にポリピロール、ポリアニリンまたはポリチオフェンである。電極に対する電気接点は、片面上で担体構造体の形成の際に焼結されるタンタル線材またはニオブ線材および該線材に対向して絶縁された金属コンデンサスリーブによって形成される。
【0005】
コンデンサの容量Cは、次の式:
C=(F・ε)/(d・VF
〔式中、Fは、コンデンサの表面積を表わし、εは、誘電定数を表わし、dは、化成電圧1V当たりの絶縁層の厚さを表わし、VFは、化成電圧を表わす〕により算出される。五酸化タンタルのための誘電定数εは、27であり、化成電圧1ボルト当たりの層の厚さdの成長は、18Å/Vである。金属と五酸化物との厚さの差のために、五酸化物層は、化成の際に約1/3が元来の金属構造体内に入り込んで成長し、2/3がこの金属構造体上で成長する。成長する五酸化物層によって、細孔が縮小化ないし閉塞までを生じるか、或いはカソードがもはや形成され得ないような閉鎖された細孔が形成される。即ち、活性のコンデンサ表面積の損失を生じる。化成電圧が高ければ高いほど、即ち五酸化物層の厚さが厚ければ厚いほど、損失は、ますます大きくなる。理想的には、アノード構造体の最小細孔および入口断面積は、選択された化成電圧に対して形成される五酸化物層の厚さの数倍より大きい。
【0006】
4〜20m2/gの比表面積を有する微粒状のタンタル一次粉末は、カリウムヘプタフルオロタンタレートをアルカリ金属クロリド溶融液中のアルカリ金属により還元するかまたは最近では微粒状の酸化物をガス状の還元性金属または金属水素化物、殊にマグネシウムにより還元することによって取得されるか、或いは真空中での電子線によるかまたは水素還元された酸化物の下で得られたタンタルブロックを機械的に微粉砕することによって水素飽和による脆化("チップス")後に取得される。
【0007】
この種の一次粉末は、規則的になお一連の欠点を有し、そのために、この一次粉末は、現在の標準によれば、なおコンデンサの製造には、不適当である。従って、通常、前記の一次粉末は、場合によっては高温処理後に一次構造体および二次構造体の安定化、1000℃以下の温度での還元処理("脱酸素")に掛けられる。この場合、一次粉末は、1つ以上の工程で残留酸素含量に対して化学量論的に過剰量で微粒状のマグネシウムと混合され、保護ガス下で数時間、700〜1000℃の脱酸素温度に加熱される。脱酸素中に残留酸素は、取り出され、一次粒子構造体は比較され、二次粒子構造体は、殊に細孔構造および安定性に関連して良好に影響を及ぼされる。脱酸素により、一次粒子の粗大化と比表面積の減少とが結合され、一次粉末の比表面積が大きくなればなるほど、前記の粗大化と減少とは、ますます大きくなる。従って、コンデンサの製造に適した、3m2/gを上廻る比表面積を有するタンタル粉末を製造することは、殆んど成功していない。その理由は、粉末が脱酸素の際に液状のマグネシウムと接触し、したがって脱酸素速度および局物的温度が脱酸素中に制御不可能になることにあると思われる。脱酸素の発熱量のために、多孔度の損失を伴なう局部的な過熱および局部的に強い焼結を生じることは明らかである。
【0008】
更に、アノード圧縮体の焼結および化成によって活性のコンデンサ表面積の損失を生じ、したがって3m2/gの比表面積を有する粉末から1200℃の最小の必要とされる焼結温度であっても最大150000μFV/gの比容量を有するコンデンサは、1m2/gの活性のコンデンサ表面積に相応して16Vの化成電圧の際に製造可能である。
【0009】
ところで、液状マグネシウムに対する金属粉末の接触が回避され、還元性金属の蒸気圧が制御される場合には、一次構造体の粗大化を脱酸素中に著しく減少させうることが見出された。殊に、比表面積(ASTM D 3663, Brunauer, EmmetおよびTeller, "BET"により測定した)は、脱酸素中に二分の一未満に減少することが見出された。更に、汚染は、還元性金属の蒸発しない残留不純物によって回避される。
【0010】
更に、細孔構造体は、明らかに有利に影響を及ぼされ、したがってコンデンサ表面積の損失は、化成によって僅かなままであり、その結果、極端に高い比容量を有するコンデンサを製造することができる。
【0011】
本発明の対象は、4〜8m2/gの比表面積を有するタンタル粉末であり、このタンタル粉末は、5g/cm3の圧縮密度への圧縮および10分間に亘る1210℃での焼結の後、10Vの化成電圧になるまでの化成後に220000〜350000μFV/gの比容量を有する。
【0012】
更に、本発明の対象は、3.5〜6m2/gの比表面積を有するタンタル粉末であり、このタンタル粉末は、5g/cm3の圧縮密度への圧縮および10分間に亘る1210℃での焼結の後、10Vの化成電圧になるまでの化成後に180000〜250000μFV/gの比容量を有する。
【0013】
更に、本発明の対象は、3.5〜6m2/gの比表面積を有するタンタル粉末であり、このタンタル粉末は、5g/cm3の圧縮密度への圧縮および10分間に亘る1210℃での焼結の後、10Vの化成電圧になるまでの化成後に200000〜300000μFV/gの比容量を有し、および16Vの化成電圧になるまでの化成後に180000〜250000μFV/gの比容量を有する。この場合、それぞれ僅かな比容量は、僅かな比表面積を有する粉末で得ることができ、それぞれ最大の容量は、最大の比表面積を有する粉末で得ることができる。中間値は、それぞれ比表面積の中間値で明らかになる。よりいっそう高い焼結温度、例えば1250℃を使用した場合には、よりいっそう強い焼結のために、僅かに低い比容量を得ることができる。
【0014】
また、本発明の対象は、バルブメタル粉末を、還元性金属および/または金属水素化物を用いて脱酸素する方法であり、この方法は、脱酸素を脱酸素すべき金属粉末と液状の還元性金属/金属水素化物との接触なしに実施することによって特徴付けられる。
【0015】
特に、脱酸素は、5〜110hPaの還元性金属/金属水素化物の蒸気部分圧で実施される。
【0016】
更に、還元性金属の蒸気部分圧は、有利に100hPa未満、殊に有利に30〜80hPaである。
【0017】
本発明によれば、金属粉末および還元性金属/金属水素化物は、反応器中に別々の場所に置かれ、したがって還元性金属/金属水素化物は、気相によってのみ金属粉末に到達する。還元性金属/金属水素化物の蒸気部分圧は、該還元性金属/金属水素化物の温度によって制御される。
【0018】
金属粉末の温度("脱酸素温度")は、特に680〜880℃、殊に有利に690〜800℃、さらに有利に760℃以下に維持される。金属粉末の温度がよりいっそう低い場合には、有効な脱酸素に必要とされる時間は、不必要に延長される。金属粉末の好ましい温度の超過が強すぎる場合には、強い一次粒子の粗大化に対する危険が存在する。
【0019】
金属粉末および還元性金属/金属水素化物が別々の場所に存在する反応器は、金属/金属水素化物の蒸気圧が必要とされる範囲内の脱酸素温度である場合に、一様に温度調節されてよい。
【0020】
好ましくは、還元性金属として、マグネシウムおよび/または水素化マグネシウムが使用される。
【0021】
特に、脱酸素反応器は、不活性のキャリヤーガスによって緩徐に貫流される。反応器中のガス圧は、特に50〜500hPa、特に有利に100〜450hPa、殊に有利に200〜400hPaである。
【0022】
キャリヤーガスとしては、不活性のガス、例えばヘリウム、ネオン、アルゴンまたはその混合物が適している。水素の僅かな添加は、好ましい。キャリヤーガスは、特に反応器中への導入前または導入中に反応器温度に予め加熱され、したがって還元性金属の蒸気凝縮は、回避される。
【0023】
図1は、本発明による脱酸素法の実施に有利に使用可能な反応器を略示的に示す。反応器1は、通路6によって結合されている2つの反応器空間2および3を有する。反応器空間2中には、一次粉末を含むるつぼ4が置かれている。反応器空間3は、蒸発させるべき還元性金属/金属水素化物を有するるつぼ5を含む。反応器空間2および3ならびに結合通路6は、有利に温度T1、T2およびT3を調節するための別々のヒーター7、8および9を有する。還元性金属/金属水素化物は、温度T3で蒸発される。通路6内の温度T2は、還元性金属/金属水素化物の凝縮がそこで確実に回避されるように選択される。還元性金属/金属水素化物蒸気を輸送するために、反応器空間3中には、不活性のキャリヤーガス10が供給され、この不活性のキャリヤーガス10は、反応器空間2から圧力Pを維持しながら取り出される。
【0024】
本発明による脱酸素方法は、好ましくは全ての金属粉末の場合に使用されてよい。しかし、好ましいのは、4〜20m2/g、特に有利に6〜15m2/gの高い比表面積を有する高い焼結活性のタンタル一次粉末である。しかし、この方法は、凝集された、即ち高真空中で温度調節された一次粉末に使用されてもよい。
【0025】
更に、好ましい金属一次粉末は、ASTM B 822(機器Malvem社 マスターサイザー(MasterSizer) Sμ)により測定され、3〜25μmのD10、15〜80μmのD50および50〜280μmのD90によって特性決定された粒度分布(二次構造体)を有し、この場合、D10、D50およびD90は、粒度分布の10質量百分位数、50質量百分位数(メジアン)または90質量百分位数で記載されている。一次粉末の粒度分布は、脱酸素の際に実質的に得ることができる。一般に、ASTM B 822により測定される粒度分布は、3〜50μmのD10、15〜150μmのD50および50〜400μmのD90によって特性決定されている。
【0026】
特に好ましい金属一次粉末は、本出願人の未だ公開されていない1つの提案により、微粒状酸化物粉末を蒸気状の還元性金属、例えばアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムおよび/またはランタンおよび/またはその水素化物、殊にマグネシウムを用いて、不活性のキャリヤーガスの下で還元することによって製造されたものであり、この場合この還元は、5〜110hPa、有利に80hPa未満、殊に有利に8〜50hPaの蒸気部分圧および50〜800hPa、有利に600hPa未満、殊に有利に100〜500hPaのキャリヤーガス圧力で実施される。
【0027】
五酸化タンタル粉末としては、特にASTM B 822(機器Malvem社 マスターサイザー(MasterSizer) Sμ)により測定された、D10:2〜70μm、D50:15〜200μmおよびD90:80〜430μmの粒度分布およびASTM D 3663により測定された、0.05〜0.5m2/gの表面積(BET)を有する多孔質の海綿状粉末が使用される。
【0028】
五酸化タンタル粉末としては、特にASTM B 822(機器Malvem社 マスターサイザー(MasterSizer) Sμ)により測定された、D10:2〜30μm、D50:15〜175μmおよびD90:80〜320μmの粒度分布およびASTM D 3663により測定された、0.05〜0.5m2/gの表面積(BET)を有する多孔質の海綿状粉末が使用される。
【0029】
この好ましい還元法の場合、還元温度は、還元時間の本質的な延長なしに680〜880℃へ低下されてよい。0.1〜5μmの一次粒径(球面状一次粒子の場合の直径、非球面状一次粒子の場合の最小寸法)を有する酸化タンタル凝集塊粉末または酸化ニオブ凝集塊粉末を使用する場合には、6〜12時間、特に9時間までの還元時間で十分である。とりわけ、よりいっそう僅かな反応温度は、エネルギーの相当な節約および還元の際に必要とされる方法技術的装置の保護を必然的に引き起こす。特に有利な二次構造体を有する金属一次粉末が得られる。
【0030】
還元の終結後、得られた金属一次粉末は、100℃以下の温度への冷却後に反応器中への制御されたゆっくりとした酸素導入によって粉末粒子表面を酸化しかつ還元性金属の形成された酸化物を酸および水で洗浄除去することにより、不動態化される。
【0031】
この場合には、20m2/gまで、特に6〜15m2/g、殊に有利に8〜14m2/gの比表面積を有するタンタル粉末は、本質的に粒子の既に卓越した機械的安定性を有する出発酸化物の粒度分布を維持しながら得られる。
【0032】
不動態化後のタンタル一次粉末の酸素含量は、約3000μg/m2、殊に2400μg/m2〜4500μg/m2であるか、または2500μg/m2〜3600μg/m2であるか、または2600μg/m2〜3100μg/m2、殊に3000μg/m2未満である。
【0033】
本発明による粉末の窒素含量は、多くの場合に100ppm〜10000ppmであるか、または400ppm〜7500ppmであるか、または400ppm〜5000ppm、殊に400ppm〜3000ppmである。
【0034】
酸素含量および窒素含量は、好ましくは窒素/酸素測定装置型TC 501−645(Leco Instrum GmbH)で測定される。
【0035】
本発明による粉末の燐含量は、多くの場合に10ppm〜400ppmであるか、または10ppm〜250ppmであるか、または10ppm〜2000ppm、殊に10ppm〜150ppmである。
【0036】
当業者には、どのような方法で窒素含量または燐含量を意図的に調節しうるかは、公知である。
【0037】
大きな比表面積を有する本発明により得ることができるタンタル粉末は、アノード構造体への圧縮、1200〜1250℃でのアノード体へのアノード構造体の焼結、焼成および対向電極の取付けによる自体公知の方法で100000〜350000μFV/gの範囲内の比容量を有する電解質コンデンサの製造に適している。本発明による粉末から得ることができた焼結されていないアノード体は、1kg〜11kg、または2kg〜8kg、または2kg〜6kg、殊に1kg〜4kgの圧縮強度を有する。本発明による粉末から得ることができた焼結されたアノード体は、10kgを上廻るか、または20kgを上廻るか、または30kgを上廻る、殊に40kgを上廻る圧縮強度を有する。焼結されたかまたは焼結されていないアノードの圧縮強度は、Prominent, 型"Promi 3001"の試験機器で測定される。焼結されていないアノードの圧縮強度を測定するためには、500mgの質量、5.1mmの直径および4.95mmの長さを有する円筒形のアノードが使用され、この場合このアノードは、埋設された線材なしに5.0g/cm3の圧縮密度に圧縮されていた。
【0038】
焼結されたアノードの圧縮強度を測定するためには、140mgの質量、3.00mmの直径および3.96mmの長さを有する円筒形のアノードが使用され、この場合このアノードは、埋設された線材で5.0g/cm3の圧縮密度に圧縮され、引続き10分間高真空(10-4ミリバール)中で1210℃で焼結されていた。
【0039】
好ましいタンタル粉末は、殊に残留電流に不利な影響を及ぼしうる不純物の含量に関連して高純度である。ナトリウムおよびカリウムの含量の総和は、5ppm未満、特に2ppm未満であり、鉄、クロムおよびニッケルの含量の総和は、25ppm未満、特に15ppmである。
【0040】
好ましいタンタル粉末の嵩密度は、25〜35g/inch3のコンデンサの加工に好ましい範囲内にある。
【0041】
粉末の流動能(Hall-Flow)は、150秒/25g未満または100秒/25g、または50秒/25g、殊に35秒/25gである。
【0042】
流動能は、図5中に図示されているような装置中で算出された。この装置は、流れ漏斗1を有し、この流れ漏斗中には、試料25gが供給される。この流れ漏斗は、50.5mmの直径を有する開口5、3.8mmの直径を有する開口6、45.6mmの高さの差4および30.8゜の傾斜角度7を有する。
【0043】
この漏斗は、スイッチ2を有する振動器3に固定されており、この場合この振動器の振動速度は、調節可能である。試験のためには、振動速度は、毎秒38.5回の振動であった。
【0044】
更に、本発明による粉末は、0.1μm〜4μm、または0.5μm〜3μm、または0.5μm〜2.5μm、殊に0.8μm〜2.2μmのASTM B 330−02により測定されたFSSS値(Fisher Sub Sieve Sizer)を有する。
【0045】
前記粉末から形成されるアノード(円筒形、圧縮密度5.0g/cm3、直径5.10mm、長さ4.95mm、質量500mg、1210℃で10-4ミリバールで10分間の焼結)の細孔分布は、1つ以上の最大を示し、この場合この最大は、0.05μm〜10μmの寸法、または0.05μm〜5μmの寸法、または0,05μm〜3μmの寸法、または0.05μm〜1μmの寸法の範囲内にある(細孔の粒度分布の測定のために、Micrometrics社、"Auto Pore III"および測定ソフトウェア"Auto Pore IV"が使用される)。
【0046】
本発明の1つの実施形式において、本発明による脱酸素された粉末は、25g/inch3〜32g/inch3の嵩密度、5m2/g〜8m2/gの比表面積ならびにASTM B 822(機器Malvem社 マスターサイザー(MasterSizer) Sμ)により測定され、30〜40μmのD10、120〜135μmのD50および240〜265μmのD90によって特性決定された粒度分布(二次構造体)を有し;
この場合D10、D50およびD90は、粒度分布の10質量百分位数、50質量百分位数(メジアン)または90質量百分位数で記載され、比容量は、10Vの化成電圧で280000μFV/g〜340000μFV/gまたは16Vの化成電圧で230000μFV/g〜280000μFV/gである。残留電流は、0.4nA/μFV〜0.65nA/μFV(10Vの化成電圧)、または0.4nA/μFV〜0.5nA/μFV(16Vの化成電圧)である。
【0047】
本発明のもう1つの実施形式において、本発明による脱酸素された粉末は、25g/inch3〜35g/inch3の嵩密度、1.9m2/g〜7.8m2/gの比表面積ならびにASTM B 822(機器Malvem社 マスターサイザー(MasterSizer) Sμ)により測定され、14〜20μmのD10、29〜47μmのD50および51〜87μmのD90によって特性決定された粒度分布(二次構造体)を有し、この場合、D10、D50およびD90は、粒度分布の10質量百分位数、50質量百分位数(メジアン)または90質量百分位数で記載されており、比容量は、10Vの化成電圧で125000μFV/g〜344000μFV/g、または15000μFV/g〜320000μFV/g、または180000μFV/g〜310000μFV/gであるか、または16Vの化成電圧で120000μFV/g〜245000μFV/gである。残留電流は、0.4nA/μFV〜0.98nA/μFV、または0.4nA/μFV〜0.9nA/μFV未満(10Vの化成電圧)、または0.4nA/μFV〜0.75nA/μFV(16Vの化成電圧)である。
【0048】
次の実施例は、本発明を詳説する。この実施例は、引用された刊行物の記載に関連して開示された成分を含む。
【0049】
実施例1〜12
A)五酸化タンタルの還元
実施例1〜9(一次粉末1〜9)には、ASTM B 822(機器Malvem社 マスターサイザー(MasterSizer) Sμ)により測定された、17.8μmのDIO値、34.9μmおよび71.3μmのD90値および0.14m2/gのASTM D 3663により測定された比表面積(BET)に相当する粒度分布を有する微粒状の部分焼結された出発五酸化タンタルを使用する。粉末の個々の粒子は、高度に多孔質であり、ほぼ球面形状を有する。REM(走査電子顕微鏡)撮影から、この粒子は、2.4μm(REM(走査電子顕微鏡)撮影から目視的に測定した)の平均直径を有するほぼ球状の一次粒子の強く焼結された凝集塊からなることを確認することができる。図2は、出発五酸化物層のREM(走査電子顕微鏡)撮影図を示す。実施例10〜12(一次粉末10〜12)では、不規則な形状およびD10=32.4μm、D50=138.7μmおよびD90=264.8μmによって特性決定された粒度分布を有する相応する材料から出発される。比表面積は、0.12m2/gである。出発五酸化タンタルを、1.1倍の化学量論的量(五酸化物の酸素含量に対して)のマグネシウムを含むるつぼの上方でタンタル薄板で被覆された反応器中のタンタル線材からなる網状物上に供給する。この反応器を炉によって加熱する。マグネシウムを含むるつぼの下方で反応器には、ガス入口開口が存在し、ならびに五酸化タンタル堆積物の上方でガス取出し開口が存在する。炉のガス内圧は、炉壁を貫通するスタブケーブルにより測定されることができる。保護ガスとしては、ゆっくりと炉を貫流するアルゴンが使用される。還元温度に加熱を開始する前に、反応器をアルゴンで洗浄する。還元温度の達成前に、アルゴン圧力を還元のために調節する。反応の終結および反応器の冷却の後に、徐々に空気を反応器中に供給し、金属粉末を溶解損失に抗するように不動態化する。形成された酸化マグネシウムを硫酸および引続く脱塩水での洗浄によって中和するまで除去する。第1表は、実施例1〜12の冷却後および不動態化後に得られる一次粉末の還元条件および性質を示す。"マスターサイザー(Mastersizer) D10、D50、D90"の値は、ASTM B 822により測定されている。右側の欄には、比表面積に対する還元されたタンタルの酸素含量が記載されており、即ちppmでの酸素含量とBETにより測定された比表面積との商が記載されている。約3000ppm/(m2/g)の表面酸素含量は、必要である。それというのも、さもなければタンタル粉末は、発火性であるし、周囲空気との接触で燃え尽きてしまうからである。
【0050】
実施例1〜12を本質的に一定のアルゴン圧力および一定の反応器温度で実施した。反応器温度は、それぞれ次のようにマグネシウム蒸気圧力をも定義する:700℃で8hPa、750℃で19hPa、780℃で29hPa、800℃で39hPa、840℃で68hPa、880℃で110hPa。
【0051】
【表1】

【0052】
図3は、実施例9による一次粉末のREM(走査電子顕微鏡)撮影図を示す。図4は、実施例3による一次粉末のREM(走査電子顕微鏡)撮影図を示す。
【0053】
粒度分布は、全ての試料の場合にマスターサイザーD10値、D50値およびD90値から確認することができるようにほぼそのまま維持されている。しかし、還元性金属の蒸気部分圧に依存する比表面積がもたらされた。全ての試料の酸素含量は、本質的に表面積1m2(m2/g)当たり約3000μg(ppm)であり、即ち粉末が周囲と接触して燃え尽きないようにするために、酸素含量は、必要とされる酸素含量を殆んど上廻らない。
【0054】
B)タンタル粉末の脱酸素
実施例1〜12の一次粉末を燐酸水素アンモニウム溶液で含浸し、乾燥し、したがって150ppmの燐ドーピングを生じた。引続き、この粉末をるつぼ中で水平方向の反応管に導入した。粉末を含むるつぼと若干の距離をおいて、粉末の酸素含量に対して1,2倍の化学量論的量のマグネシウムを有するるつぼを反応管中に導入した。このるつぼを反応管の外側に配置された別個のヒーターによって加熱してよい。この反応管を、マグネシウムを含むるつぼの前方に設けられたガス入口管を用いてアルゴン保護ガスで洗浄し、この場合このアルゴン保護ガスは、タンタル粉末を含むるつぼの後方で取り出される。この反応器を、粉末を含むるつぼの範囲内で第2表中に記載された粉末温度に加熱し、ガス圧を、相応する調節弁を用いて第2表中に記載のガス圧に調節する。
【0055】
引続き、マグネシウムを含むるつぼを第2表中に記載のマグネシウム温度に加熱する。脱酸素条件を同様に第2表中に記載の時間に対して維持する。引続き、この反応器を冷却し、100℃以下の温度の達成時に空気を徐々に導入することによってタンタル粉末を不動態化し、酸化マグネシウムを含まなくなるように洗浄し、400μmの目開きを有する篩を通して擦り落とす。得られた粉末の粒度分布(ASTM B 822によるD10値、D50値およびD90値として)および比表面積は、第2表中に記載されている。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
粉末から、5.0g/cm3の圧縮密度を有する直径3mmおよび長さ3.96mmの寸法の圧縮体を製造し、この場合プレス成形マトリックス中には、粉末の注入前に接点線材としての厚さ0.2mmのタンタル線材を挿入した。圧縮体を1210℃で高真空中で10分間焼結させた。
【0059】
アノード体を0.1%の燐酸中に浸漬させ、150mAに制限された電流強さで10Vまたは16Vの化成電圧になるまで化成した。
【0060】
電流強さの低下後、電圧をなお1時間維持した。コンデンサの性質を測定するために、18%の硫酸からなるカソードを使用した。前記のコンデンサの性質を120Hzの交流電圧で測定した。比容量および残留電流は、第4表中に記載されている。
【0061】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による脱酸素法の実施に有利に使用可能な反応器を示す略図。
【図2】出発五酸化物層を示すREM(走査電子顕微鏡)撮影図。
【図3】実施例9による一次粉末を示すREM(走査電子顕微鏡)撮影図。
【図4】実施例3による一次粉末を示すREM(走査電子顕微鏡)撮影図。
【図5】粉末の流動能(Hall-Flow)を算出する装置を示す略図。
【符号の説明】
【0063】
1 反応器(図1)、流れ漏斗(図5)、 2 反応器空間(図1)スイッチ(図5)、 3 反応器空間(図1)、振動器(図5)、 4 一次粉末を含むるつぼ(図1)、高さの差(図5)、 5 蒸発させるべき還元性金属/金属水素化物を有するるつぼ、 6 結合通路、 7 ヒーター(図1)、傾斜角度(図5)、 8 ヒーター、 9 ヒーター、 10 不活性のキャリヤーガス、 P 圧力、 T1、T2、T3 温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブメタル粉末を、還元性金属、例えばアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムおよび/またはランタンおよび/またはその水素化物を用いて不活性のキャリヤーガスの下で脱酸素する方法において、脱酸素を脱酸素すべきバルブメタル粉末との接触なしに液状の還元性金属/金属水素化物を用いて実施することを特徴とする、バルブメタル粉末の脱酸素方法。
【請求項2】
脱酸素を5〜110hPaの還元性金属/金属水素化物の蒸気部分圧で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
還元性金属/金属水素化物の蒸気圧が100hPa未満である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
還元性金属の蒸気圧が30〜80hPaである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよび/またはタングステン、特にニオブおよび/またはタンタルからのバルブメタル粉末を使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
タンタル粉末を使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
還元性金属としてマグネシウムおよび/または水素化マグネシウムを使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
脱酸素が不活性のキャリヤーガスの下で50〜500hPa、特に100〜450hPa未満、殊に有利に200〜400hPaの圧力を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
電解質コンデンサのためのタンタル粉末を製造する請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、4〜20m2/gの比表面積を有するタンタル一次粉末を、5〜110hPaのマグネシウム蒸気圧でのマグネシウム蒸気を用いて液状マグネシウムとの接触なしに脱酸素に掛けることを特徴とする、電解質コンデンサのためのタンタル粉末を製造する請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
電解質コンデンサのためのタンタル粉末を製造する請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、酸化タンタルの還元によって得られた、4〜20m2/gの比表面積を有するタンタル一次粉末を、5〜110hPaのマグネシウム蒸気圧でのマグネシウム蒸気を用いて液状マグネシウムとの接触なしに脱酸素に掛けることを特徴とする、電解質コンデンサのためのタンタル粉末を製造する請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
4〜8m2/gの比表面積を有するタンタル粉末であって、このタンタル粉末が、5g/cm3の圧縮密度への圧縮および10分間に亘る1210℃での焼結の後、10Vの化成電圧になるまでの化成後に220000〜350000μFV/gの比容量を有することを特徴とする、前記タンタル粉末。
【請求項12】
3.5〜6m2/gの比表面積を有するタンタル粉末であって、このタンタル粉末が、5g/cm3の圧縮密度への圧縮および10分間に亘る1210℃での焼結の後、10Vの化成電圧になるまでの化成後に180000〜250000μFV/gの比容量を有することを特徴とする、前記タンタル粉末。
【請求項13】
4〜8m2/gの比表面積を有し、5g/cm3の圧縮密度への圧縮および10分間に亘る1210℃での焼結の後、10Vの化成電圧になるまでの化成後に200000〜300000μFV/gの比容量を有し、および16Vの化成電圧になるまでの化成後に200000〜3000000μFV/gの比容量を有する、請求項11または12記載のタンタル粉末。
【請求項14】
25〜35g/inch3の嵩密度を有する請求項11から13までのいずれか1項に記載のタンタル粉末。
【請求項15】
全部で5ppm未満のナトリウムおよびカリウムの含量および全部で25ppm未満の鉄、クロムおよびニッケルの含量を有する、請求項11から14までのいずれか1項に記載のタンタル粉末。
【請求項16】
全部で2ppm未満のナトリウムおよびカリウムの含量を有する、請求項15記載のタンタル粉末。
【請求項17】
全部で15ppm未満の鉄、クロムおよびニッケルの含量を有する、請求項15または16記載のタンタル粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−516082(P2008−516082A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535050(P2007−535050)
【出願日】平成17年9月24日(2005.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010362
【国際公開番号】WO2006/039999
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(506350458)ハー ツェー シュタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシヤフト (14)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】