説明

バルブ装置

【課題】水通路に配設されるバルブ装置では、水通路やバルブ装置内に水が充満している状態で冬期などに低温下に晒されると、内部の水が凍結する。水が凍結すると体積が膨張して水通路やバルブ装置が破損する場合が生じる。水通路やバルブ装置内の水に直接接する位置に膨張吸収材を配設するものがあるが、水に溶解している塩素などによって膨張吸収材の表面が劣化し、一部が剥離して水中に遊離するおそれが生じる。
【解決手段】水に接触した状態で後退することにより通路空間内の体積を増加させる可動部材を設けると共に、可動部材を挟んで通路空間と反対側に収納空間を形成し、その収納空間内にスポンジ部材を充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水通路内に配設されるバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水通路に配設されるバルブ装置では、水通路やバルブ装置内に水が充満している状態で冬期などに低温下に晒されると、内部の水が凍結する場合が生じる。また、工場から出荷する前にバルブ装置に通水して検査を行ったあと、バルブ装置に水が残留した状態で冬期に倉庫に保管された場合にも、バルブ装置内の水が凍結する場合が生じる。
【0003】
水が凍結すると体積が膨張するが、水や氷は非圧縮性の物質であるので、体積が膨張すると水通路やバルブ装置が破損する場合が生じる。
【0004】
このような不具合を解消するため、内部に複数の気泡を有するゴム素材からなる膨張吸収材を水通路内に配設し、水が体積膨張した場合に膨張した体積分だけ自らが収縮することにより水通路やバルブ装置内の圧力上昇を緩和し、破損を防止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003-64263号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のものでは、水通路やバルブ装置内の水に直接接する位置に膨張吸収材を配設しているため、水に溶解している塩素などによって膨張吸収材の表面が劣化し、一部が剥離して水中に遊離するおそれが生じる。また、膨張吸収材は比較的少ない回数の圧縮で劣化し、圧縮率が低下することが知られており、膨張吸収性能が低下しやすいという不具合もある。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上記の不具合の生じないバルブ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明によるバルブ装置は、水通路中に配設されるバルブ装置であって、水通路およびバルブ本体内のいずれかの水が凍結した際の体積膨張によるバルブ本体の破損を防止する破損防止機構を備えたバルブ装置において、バルブ本体内に形成された水が通過する通路空間に設けられ、通路空間内の水に接触した状態で後退することにより通路空間内の体積を増加させる可動部材を設けると共に、可動部材を挟んで通路空間と反対側に収納空間を形成し、その収納空間内にスポンジ部材を充填したことを特徴とする。
【0008】
水通路やバルブ装置内の水が凍結により膨張すると、その膨張体積分は可動部材が後退することにより吸収される。なお、この可動部材の周辺の水が最初に凍結すると可動部材が後退することができなくなり、膨張を吸収できない。そこで、収納空間にスポンジ部材を充填して、低温の外気の収納空間内への侵入を可及的に防止し、可動部材が低温の外気に晒されることを防止した。
【0009】
なお、上記収納空間内にスポンジ部材と共にバネを収納させ、可動部材をバネの付勢力で通路空間側に付勢し、通路空間内の圧力が所定の圧力を超えなければ可動部材が収納空間側に移動しないように構成してもよい。
【0010】
また、スポンジ部材自体の断熱性を高めるため、上記スポンジ部材内の気泡は相互に連通せず独立しているものを用いることが望ましい。
【0011】
ところで、収納空間を密閉して外気の侵入を防止しても良いが、可動部材が後退することにより収納空間内の空気が圧縮され、可動部材の後退を阻害する方向に作用する。また、水圧が高圧になると、収納空間内に水が漏出することも考えられるが、収納空間が密閉されていると、漏出した水が残留し続けることになる。そのため、上記収納空間は外部に通気孔を介して連通していることが望ましい。
【0012】
なお、上記収納空間は通路空間内に位置する弁体に設けられた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、水通路やバルブ装置内内の水が凍結して膨張しても、可動部材が後退することにより体積膨張分を吸収するので、水通路やバルブ装置の破損を防止することができる。また、収納空間をスポンジ部材で充填したので、可動部材の周辺が早期に凍結することを防止し、可動部材の後退を長時間可能とすることにより確実に破損を防止することができるようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照して、1は床暖房の温水通路等に配設される熱動弁である。この熱動弁1はワックスが封入されたユニット2を備えており、このユニット2がヒータ21によって加熱されると、内部のワックスが膨張してロッド22が押し出される。ロッド22が図において下方に押し出されると、スペーサ23を介して弁軸31が下方に押し下げられる。
【0015】
弁軸31の下端には弁体3が取り付けられており、弁軸31と共に弁体3が下方に押し下げられると、上流側通路空間41と下流側通路空間42とを連通する弁口43が開弁する。
【0016】
本発明では上流側通路空間41に面して可動部材である吸収板5が設けられている。この吸収板5を挟んで上流側通路空間41と反対側にはキャップ51が取り付けられてキャップ51と吸収板5とで囲まれる収納空間が形成されている。
【0017】
この収納空間内にはスポンジ部材6とコイルバネ7とが装填されている。なお、52は通気孔である。このスポンジ部材6内の各気泡は独立気泡であることが望ましい。例えば、上記特許文献1で示した膨張吸収材として用いられるものを用いる。
【0018】
また、コイルバネ7は収納空間内で所定量圧縮されており、このコイルバネ7の付勢力で吸収板5がストッパ11に押接されるようにした。したがって、上流側通路空間41の圧力がウォータハンマ等により短時間上昇しても、吸収板5が後退しないようにした。
【0019】
上流側通路空間41の圧力が上昇すると、吸収板5はコイルバネ7の付勢力に抗して後退するが、その際、収納空間内の空気が通気孔52から外部に押し出され、収納空間内の空気が圧縮されないようにした。また、仮に吸収板5から収納空間へと漏水が生じても、収納空間内の漏水が乾きやすいようにした。なお、収納空間内はスポンジ部材6で充填されているので、通気孔52から外部の冷気が収納空間内へと侵入しないようにした。
【0020】
ところで、上記の実施の形態では熱動弁1に本発明を適用したが、例えば図2に示すように、他のバルブ装置であるモータ弁8に適用しても良い。
【0021】
このモータ弁8はモータ81を備えており、そのモータ81の回転力はギヤボックス82内で減速され、回転軸83を図において左右方向に往復移動させる。このものでは、通路空間85に面して吸収板86をセットした。そして、吸収板86の背部をキャップ87で覆うことにより収納空間を形成し、その収納空間にスポンジ部材89を収納した。なお、88は通気孔である。
【0022】
上記実施の形態では、バルブ装置の外周面側に収納空間を設けたが、図3に示すように、弁体3内に収納空間を設けても良い。このものでは、弁体3内に収納空間を設け、その収納空間の開口を吸収板9で閉鎖した。なお、吸収板9で閉鎖された収納空間内にはスポンジ部材91とコイルバネ92を収納させた。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】本発明の第2の実施の形態の構成を示す図
【図3】本発明の第3の実施の形態の構成を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 熱動弁
2 ユニット
3 弁体
5 吸収板
6 スポンジ部材
7 コイルバネ
8 モータ弁
9 吸収板
31 弁軸
41 上流側通路空間
42 下流側通路空間
43 弁口
51 キャップ
52 通気孔
81 モータ
82 ギヤボックス
83 回転軸
85 通路空間
86 吸収板
89 スポンジ部材
91 スポンジ部材
92 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水通路中に配設されるバルブ装置であって、水通路およびバルブ本体内のいずれかの水が凍結した際の体積膨張によるバルブ本体の破損を防止する破損防止機構を備えたバルブ装置において、バルブ本体内に形成された水が通過する通路空間に設けられ、通路空間内の水に接触した状態で後退することにより通路空間内の体積を増加させる可動部材を設けると共に、可動部材を挟んで通路空間と反対側に収納空間を形成し、その収納空間内にスポンジ部材を充填したことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
上記収納空間内にスポンジ部材と共にバネを収納させ、可動部材をバネの付勢力で通路空間側に付勢し、通路空間内の圧力が所定の圧力を超えなければ可動部材が収納空間側に移動しないようにしたことを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
上記スポンジ部材内の気泡は相互に連通せず独立していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
上記収納空間は外部に通気孔を介して連通していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のバルブ装置。
【請求項5】
上記収納空間は通路空間内に位置する弁体に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−202730(P2008−202730A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41436(P2007−41436)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】