説明

バーナおよびこれを用いる球状化粒子の製造方法

【課題】アルミナ、ジルコニアなどの高融点酸化物についても球形度が高い球状化粒子を製造でき、かつ運転中に逆火が生じにくいバーナとこれを用いた製造方法を得る。
【解決手段】燃料と酸化剤を噴出する第1混合噴出孔3と、原料粉末とキャリアガスとを噴出する原料粉末噴出孔4と、燃料と酸化剤を噴出する第2混合噴出孔5を備え、第1および第2混合噴出孔は、燃料供給路と酸化剤供給路と燃料供給路からの燃料と酸化剤供給路からの酸化剤を混合する混合部31を備え、混合部は、一方の開口端部が燃料と酸素との混合ガスの噴出口とされ、他方の開口端部には混合部の内壁面に対して隙間をあけて筒状の注入プラグ34が挿入されており、この注入プラグの内部空間が前記燃料供給路または酸素供給路に連通されているバーナ。注入プラグの内部空間から噴出されるガスの流速を注入プラグの外側の前記隙間から噴出されるガスの流速よりも速くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリカ、アルミナ、ジルコニアなどの球状化粒子を製造するためのバーナおよびこのバーナを用いた球状化粒子の製造方法に関し、特に高融点物質であるアルミナ、ジルコニアの球状化粒子の製造に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
シリカの球状化粒子を製造するためのバーナやこのバーナを用いた製造方法については、以下のような先行発明が知られている。
特許第3312228号公報に開示されたバーナにあっては、バーナの中心部から原料粉末と酸素からなるキャリアガスとを噴出し、その外側から燃料を噴出し、さらにその外側から酸素を噴出するようにしたもので、形成された火炎の中心に原料粉末とキャリアガスとを噴出して、原料粉末を溶融して球状化粒子を得るのものである。
【0003】
特開平11−132421号公報、特開2004−216347号公報、特開2006−247514号公報に開示された発明にあっても、同様に火炎の中心に原料粉末とキャリアガスを噴出するものである。
これらの先行発明では、燃料と酸素を別々の噴出孔から噴出して、バーナの前方で混合して火炎を形成するもので、拡散型バーナと呼ばれている。
【0004】
これに対して、予混合バーナと呼ばれるバーナも知られている。このタイプのバーナは、バーナ内部の流路において燃料と酸素とを予め混合して、混合ガスを噴出して火炎を形成し、この火炎中に原料粉末とキャリアガスを噴出して、球状化粒子を製造するものである。この予混合バーナを用いて球状化粒子を製造する方法も、例えば特開昭62−241543号公報などに開示されている。
【0005】
しかしながら、上述の拡散型バーナを用いる先行発明では、シリカの球状化は可能であるが、シリカよりも高融点物質であるアルミナ(酸化アルミニウム)の球状化においては、球形度の良好な粒子を得ることが困難であった。
また、予混合バーナでは、燃料と酸素との混合ガスが1つの噴出孔から噴出するので、逆火が起こる可能性が高く、運転条件に制限を受けることがあった。
【特許文献1】特許第3312228号公報
【特許文献2】特開平11−132421号公報
【特許文献3】特開2004−216347号公報
【特許文献4】特開2006−247514号公報
【特許文献5】特開昭62−241543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明における課題は、アルミナ、ジルコニアなどのシリカよりも高融点である酸化物についても球形度が高い球状化粒子を製造することができ、かつ運転中に逆火が生じる可能性を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、原料粉末を火炎中に吹き込んで、球状化粒子を製造するためのバーナであって、
燃料と酸化剤を混合して噴出する第1混合噴出孔と、この第1混合噴出孔の外周側に配されて、原料粉末とキャリアガスを噴出する原料粉末噴出孔と、この原料粉末噴出孔の外周側に配されて、燃料と酸化剤を混合して噴出する第2混合噴出孔を備え、
前記第1および第2混合噴出孔は、いずれも円周上に列状に配された複数の孔から構成され、かつ燃料を供給する燃料供給路と酸化剤を供給する酸化剤供給路と、燃料供給路からの燃料と酸化剤供給路からの酸化剤とを混合する混合部を備え、
前記混合部は、トンネル状であって、一方の開口端部が燃料と酸素との混合ガスの噴出口とされ、他方の開口端部には混合部の内壁面に対して隙間をあけて筒状の注入プラグが挿入されており、この注入プラグの内部空間が前記燃料供給路または酸素供給路に連通されていることを特徴とするバーナである。
【0008】
請求項2にかかる発明は、請求項1記載のバーナを用いて、原料粉末から球状化粒子を製造する方法であって、
原料粉末噴出孔から原料粉末とキャリアガスとを噴出し、
前記混合部の注入プラグの内部から燃料または酸化剤を噴出し、注入プラグの外側の前記隙間から酸化剤または燃料を噴出して、混合部において両者を混合したうえ、第1および第2の混合噴出孔から燃料と酸化剤との混合ガスを噴出し、
注入プラグの内部から噴出されるガスAの流速を注入プラグの外側の前記隙間から噴出されるガスBの流速よりも速くすることを特徴とする球状化粒子の製造方法である。
【0009】
請求項3にかかる発明は、前記ガスAの流速が前記ガスBの流速の3倍以上であることを特徴とする請求項2記載の球状化粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルミナ、ジルコニアなどの高融点物質からなる球形度の高い球状化粒子を製造することができる。
また、バーナの構造上、逆火が生じにくく、安定した運転を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1ないし図3は、この発明のバーナの一例を示すものである。この例のバーナは、その中心軸線に沿って設けられた第1冷却部2と、この第1冷却部2の外周側に設けられた複数の第1混合噴出孔3・・・と、この第1混合噴出孔3・・・の外周側に設けられた複数の原料粉末噴出孔4・・・と、この原料粉末噴射孔4・・・の外周側に設けられた複数の第2混合噴出孔5・・・、この第2混合噴出孔5・・・の外周側に配置された第2冷却部6とから概略構成されている。
【0012】
第1冷却部2は、バーナ1内部に形成された一端側が閉じられたトンネル状の冷却孔21と、この冷却孔21内に挿通され、図示しない冷却媒体供給源からの冷却水などの冷却媒体を冷却孔21内に流す冷却管22とから構成され、冷却管22に冷却媒体を流し、冷却孔21の先端部分で折り返して返流することで、バーナ1の中心部分を冷却するものである。バーナ1の中心部を内側から冷却することにより、第1混合噴出孔3・・・およびその周辺部が高温になることを防止することができる。
【0013】
第1混合噴出孔3・・・は、図2に示すように、円周上に1列に列状に配置されており、個々の第1混合噴出孔3は、燃料と酸化剤を混合し、その混合ガスを噴出する混合部31と、この混合部31の後方に形成された燃料供給路32および酸化剤供給路33と、混合部31に挿入された注入プラグ34とから構成されている。
【0014】
前記混合部31は、酸化剤供給路33から供給される酸素、酸素富化空気などの酸化剤と燃料供給路32から供給されるLPG、LNGなどの燃料を混合して、外部に向けて噴出するものである。
この混合部31は、図3に示すように、トンネル状となっており、その一端部は開口して噴出口となっており、他端側には混合部31の内径よりも小径な外径を持つ筒状の注入プラグ34が挿入されている。
【0015】
この注入プラグ34の先端部分は混合部31内で開口しており、後端部分は燃料供給路32に連通する貫通孔に接しており、注入プラグ34の内部の空間に燃料が燃料供給路32から流入し、さらにその先端から混合部31に噴射するように構成されている。
【0016】
また、注入プラグ34の外壁面と混合部31の内壁面との間の隙間は、酸化剤供給路33に連通しており、酸化剤供給路33からの酸化剤がこの隙間を通過して、注入プラグ34の外側を流れて混合部31に流入し、ここで燃料と混合されるようになっている。
前記燃料供給路32および酸化剤供給路33は、いずれもバーナ1の後方から前方に向けて延びる管路であって、図示しない燃料供給源および酸化剤供給源に接続され、燃料および酸化剤を混合部31に送り込むものである。
【0017】
原料粉末噴出孔4・・・は、図2に示すように、円周上に一列に列状に配置されており、個々の原料噴出孔4は、原料粉末とキャリアガスとの混合物を噴出するもので、先端部41とこれに続く原料粉末供給路42とから構成されている。
先端部41は、トンネル状となっており、その一端部が開口して噴出口とされ、他端部が原料粉末供給路42に連通している。
原料粉末供給路42は、図示しない原料粉末供給源に接続され、キャリアガスに同伴されて原料粉末が先端部41に送り込まれ、先端部41から外部に向けてキャリアガスに原料粉末が同伴されて噴出されるように構成されている。
【0018】
第2混合噴出孔5・・・は、前述の第1混合噴出孔3・・・と同一の構造のものであって、混合部51と燃料供給路52と酸化剤供給路53とから構成されているが、詳細な説明は第1混合噴出孔3・・・と同様であるので、省略する。
図1に示すように、これら第1および第2混合噴出孔3・・、5・・および原料粉末噴出孔4・・のすべての開口端は、バーナ1の先端面(前面)において、同一平面上に配されている。
【0019】
第2冷却部6は、バーナ1の最外周側に設けられており、全体が円筒状の厚みのある空間部61がバーナ1の長手方向に沿って形成されており、この空間部61内には、この内部空間を周方向に二分する仕切り管62が配設されている。
この仕切り管62で、二分された空間のうち、内周側の部分にはバーナ1の後方からの冷却水などの冷却媒体が送られ、仕切り管62の前端部で、その流れが折り返されて外周側の部分に向かい、バーナ1の後方に流れ、これによりバーナ1の外側部分を冷却するようになっている。バーナ1の外側を冷却して、第2混合噴出孔5・・・およびその周辺が高温になることを防止する。
【0020】
次に、このようなバーナ1を用いて球状化粒子を製造する方法を説明する。
第1および第2混合噴出孔3・・・、5・・・から燃料と酸化剤との混合ガスを噴出し、火炎を形成する。第1混合噴出孔3・・・によって形成される火炎を内炎とし、第2混合噴出孔5・・・によって形成される火炎を外炎とする。
この時、各混合噴射孔3・・・、5・・・の注入プラグ34、54の内部から混合部31、51に送り込まれる燃料の流速を、注入プラグ34、54の外側の隙間から混合部31、51に送り込まれる酸化剤の流速よりも速く、好ましくは酸化剤の流速よりも3倍以上とする。燃料の流速を酸化剤の流速よりも速くすることで、混合部31、51での燃料と酸化剤との混合が促進され、良好な燃焼状態が得られる。
【0021】
原料粉末噴出孔4・・・からシリカ、アルミナ、ジルコニアなどの平均粒径1〜100μmの原料粉末をキャリアガスに浮遊、分散した状態の混合物を噴出する。
原料粉末を含む混合物は、内炎と外炎との間に噴出されて、個々の粒子が溶融して球状化されて、球状化粒子となる。
キャリアガスが酸素の場合、この酸素も酸化剤として燃焼に関与する。
【0022】
この製造に際して、第1および第2の混合噴出孔3・・・、5・・・にそれぞれ供給する燃料および酸化剤の流量、流速、原料粉末噴出孔4・・・に供給するキャリアガスの流量、流速を適宜、個別に調整することができ、これにより内炎および外炎における燃焼速度、燃焼温度を適切なものとすることができ、原料粉末の種類に応じた最適の燃焼状態を作り出すことができる。
【0023】
また、内炎と外炎との間に原料粉末が噴出されることになるので、原料粉末をバーナの中心部分から噴出する従来のバーナに比較して、個々の粒子の分散が改善され、火炎から粒子への伝熱が促進され、高融点物質からなる粒子でも良好に溶融して球状化される。
【0024】
さらに、混合部31、51の奥方に注入プラグ34、54が存在し、この注入プラグ34、54の内部から燃料を高流速で混合部31、51に吹き込むようにしたことで、注入プラグ34、54の外側の隙間から流れ込む酸化剤がエジェクション効果により燃料噴流に効率的に取り込まれる。混合部31、51において燃料と酸化剤との混合がよく行われて高温火炎となるため、単純に内炎と外炎とを形成した構造のものより、原料粉末の溶融状態がよくなる。
また、通常の予混合バーナと異なり、燃料と酸化剤との混合ガスが混合部31、51において滞留することがなく、逆火が生じる可能性が非常に小さくなる。したがって、燃料供給量を減量することで、原料粉末の火炎中の滞留時間を延ばしても、逆火を生じる恐れがなく、安定な運転が可能である。
【0025】
また、混合部31、51の長さを変化させることで燃焼状態を変化させることができる。ここで、混合部31、51の長さとは、図3に示したように、混合部31、51の開口端から注入ノズル34、54の先端までの長さ(L)を言う。この混合部31、51の長さは任意の長さをとることが可能であるが、好ましくは10〜30mmの範囲で変化させる。それにはバーナ1の前面に、各噴出孔に対応する貫通孔が形成された板状のアタッチメントプレートを装着することで可能になる。
【0026】
混合部31、51の長さが長くなると、燃料と酸化剤との混合がよくなり、高温高速燃焼となる。このため、ジルコニアなどの高融点物質の球状化に向いている。しかし、火炎長が短くなる傾向があり、粒子への伝熱量が不足して溶融が不十分になることがある。
【0027】
以上説明した実施形態では、注入プラグ34、54の内部に燃料を、注入プラグ34、54の外側に酸化剤を流す例を説明したが、本発明ではこの逆の注入プラグ34、54の内部に酸化剤を、注入プラグ34、54の外側に燃料を流す形態であってもよい。
この場合でも、注入プラグ34、54の内部から混合部31、51に送り込まれる酸化剤の流速を、注入プラグ34、54の外側の隙間から混合部31、51に送り込まれる燃料の流速よりも速く、好ましくは燃料の流速よりも3倍以上とする。これによっても混合部31での燃料と酸化剤との混合が促進され、良好な燃焼状態が得られる。
【0028】
以下、具体例を示す。
図1ないし図3に示したバーナを用いて、原料粉末として平均粒径60μmのアルミナを用い、キャリアガスとして酸素を用い、この酸素によって75kg/hで供給した。
燃料には、LPGを30Nm/hで供給し、酸化剤には酸素を用いた。
以下の結果を得た。燃焼は大気開放の条件で行い、火炎通過後の粒子を捕集して評価した。
図4に得られた粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の結果を示す。図4において従来バーナとは特許文献1に開示されたバーナであり、このバーナを用いて球状化したものでは原料粉末と形状があまり変わらないが、本発明のバーナを用いて球状化したものは球形になっていることが分かる。
【0029】
得られた粒子の円形度の測定結果を表1に示す。円形度は、画像解析から個々の粒子の面積および周囲長を求め、以下の式で計算したものである。
面積が同じ円の円周長÷粒子の周囲長
【0030】
【表1】

【0031】
大きい粒子ほど溶融するのに必要な熱量が多くなるため、一般に円形度が低下する傾向にある。しかし、本発明のバーナによって球状化した粒子は、大きい粒子でも円形度が高いことがわかる。なお、一般に円形度0.980が製品としての目標値とされている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のバーナの一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示したバーナの正面図である。
【図3】図1に示したバーナの要部を示す概略断面図である。
【図4】具体例にて得られた球状化粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0033】
1・・バーナ、3・・第1混合噴出孔3、4・・原料粉末噴出孔、5・・第2混合噴出孔、31・・混合部、34・・注入プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉末を火炎中に吹き込んで、球状化粒子を製造するためのバーナであって、
燃料と酸化剤を混合して噴出する第1混合噴出孔と、この第1混合噴出孔の外周側に配されて、原料粉末とキャリアガスを噴出する原料粉末噴出孔と、この原料粉末噴出孔の外周側に配されて、燃料と酸化剤を混合して噴出する第2混合噴出孔を備え、
前記第1および第2混合噴出孔は、いずれも円周上に列状に配された複数の孔から構成され、かつ燃料を供給する燃料供給路と酸化剤を供給する酸化剤供給路と、燃料供給路からの燃料と酸化剤供給路からの酸化剤とを混合する混合部を備え、
前記混合部は、トンネル状であって、一方の開口端部が燃料と酸素との混合ガスの噴出口とされ、他方の開口端部には混合部の内壁面に対して隙間をあけて筒状の注入プラグが挿入されており、この注入プラグの内部空間が前記燃料供給路または酸素供給路に連通されていることを特徴とするバーナ。
【請求項2】
請求項1記載のバーナを用いて、原料粉末から球状化粒子を製造する方法であって、
原料粉末噴出孔から原料粉末とキャリアガスとを噴出し、
前記混合部の注入プラグの内部から燃料または酸化剤を噴出し、注入プラグの外側の前記隙間から酸化剤または燃料を噴出して、混合部において両者を混合したうえ、第1および第2の混合噴出孔から燃料と酸化剤との混合ガスを噴出し、
注入プラグの内部から噴出されるガスAの流速を注入プラグの外側の前記隙間から噴出されるガスBの流速よりも速くすることを特徴とする球状化粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ガスAの流速が前記ガスBの流速の3倍以上であることを特徴とする請求項2記載の球状化粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−198083(P2009−198083A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40047(P2008−40047)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】