説明

バーナの燃焼方法

【課題】NO低減効果を発揮する、実用的に価値のあるバーナの燃焼方法及び装置を提供する。
【解決手段】加熱炉2におけるバーナ4の燃焼方法であって、バーナ4に供給する燃料流体もしくは酸化剤流体の流量の少なくとも一方を周期的に変化させるとともに、前記酸化剤流体中の酸素濃度に周期的な変化を与えることによって、供給酸素量を理論必要酸素量で除した酸素比に周期的変化を発生させ、前記酸素比と前記酸素濃度の周期的変化に差を設けることにより、燃焼状態が周期的な振動状態となることを特徴とするバーナの燃焼方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナの燃焼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題が大きくクローズアップされる現在にあって、窒素酸化物削減は重要課題の1つであり、急務である。NO削減方法では発生抑制に関する技術が重要であり、排ガス再循環、希薄燃焼、濃淡燃焼、多段燃焼などが挙げられ、工業用から民生用に至るまで広く応用されている。これらの技術を適用した低NO燃焼器により、ある程度NO対策は進展してきたものの、より効果的なNO低減方法がさらに求められてきている。
【0003】
従来から研究、開発が進められてきていたNO低減方法の1つに燃料、酸化剤となる空気等の流量を周期的に変化させて、一種の時間的な濃淡燃焼を行う方法(以後、強制振動燃焼という)があり、提案されてきた(特許文献1〜6参照)。
【0004】
これらは燃料流体または酸化剤流体の一方を、または、燃料流体および酸化剤流体の両方の供給流量を変化させることで、燃焼火炎の化学量論比を変化させ、燃料過濃燃焼および燃料希薄燃焼を交互に形成することで燃焼ガス中のNOの低減を実現している。
【0005】
また、特許文献7には、酸化剤として純酸素を用いることで、高濃度としている場合の脈動燃焼いわゆる強制振動燃焼を利用した窒素酸化物の低減方法およびその方法を実施するための装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0046898号明細書
【特許文献2】米国特許第4846665号明細書
【特許文献3】特開平6−213411号公報
【特許文献4】特開2000−171005号公報
【特許文献5】特開2000−1710032号公報
【特許文献6】特開2001−311505号公報
【特許文献7】特開平5−215311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、発明者らが、これら先行技術によるNO低減効果を確かめるために追試験を実施したところ、上記先行技術のいくつかには、NO低減効果が認められたものの、実用的に価値のある低減効果は得られないことがわかった。
本発明が解決しようとする課題は、従来に比較して大幅なNO低減効果を発揮する、実用的に価値のあるバーナの燃焼方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願発明者らは、実用的に価値のあるNO低減方法の開発に鋭意取り組んでいたところ、バーナに供給される燃料流体の流量もしくは酸化剤流体の流量の少なくとも一方に周期的変化を起こさせると同時に、酸化剤流体中の酸素濃度を周期的に変化させることによって、強制振動燃焼とすることで、従来よりも大幅にNO低減効果が発現することを見いだした。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、加熱炉におけるバーナの燃焼方法であって、バーナに供給する燃料流体もしくは酸化剤流体の流量の少なくとも一方を周期的に変化させるとともに、前記酸化剤流体中の酸素濃度に周期的な変化を与えることによって、供給酸素量を理論必要酸素量で除した酸素比に周期的変化を発生させ、前記酸素比と前記酸素濃度の周期的変化に差を設けることにより、燃焼状態が周期的な振動状態となることを特徴とするバーナの燃焼方法である。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記燃料流体の流量の周期的変化と、前記酸素濃度及び前記酸素比の周期的変化とに差を設けることを特徴とする請求項1に記載のバーナの燃焼方法である。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記酸素比の周期的変化の周波数が20Hz以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバーナの燃焼方法。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記酸素比の周期的変化の周波数が0.02Hz以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法。
【0013】
請求項5に係る発明は、周期的に変化する前記酸素比の上限と下限の差が0.2以上であり、1周期における前記酸素比の平均値が1.0以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法である。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記酸素比及び前記酸素濃度の周期的変化が、同じ周波数であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法である。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記酸素比と前記酸素濃度の周期的変化の位相差がπ/2以上3π/2以下の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載のバーナの燃焼方法である。
【0016】
請求項8に係る発明は、前記酸素比と前記酸素濃度の周期的変化の位相差がπであることを特徴とする請求項7に記載のバーナの燃焼方法である。
【0017】
請求項9に係る発明は、前記燃料流体の流量及び前記酸素比の周期的変化が、同じ周波数であり、前記燃料流体の流量の周期的変化と前記酸素比の周期的変化の位相差がπ/2以上3π/2以下の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法である。
【0018】
請求項10に係る発明は、前記酸素濃度及び前記酸素比の周期的変化の位相差がπであることを特徴とする請求項9に記載のバーナの燃焼方法である。
【0019】
請求項11に係る発明は、前記酸化剤流体が酸素と空気から構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法である。
【0020】
請求項12に係る発明は、前記酸化剤流体が酸素と燃焼排ガスから構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法である。
【0021】
請求項13に係る発明は、前記酸素が実質的に純酸素であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のバーナの燃焼方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、NOを大幅かつ確実に低減できる燃焼方法を得ることができる。本発明は新規の加熱炉を設計する場合のみならず、既設の加熱炉における燃焼バーナにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施形態である燃焼装置を示す図の一例である。
【図2】図2は、本発明の実施形態の酸素流量及び空気流量の周期的変化を示す図の一例である。
【図3】図3は、本発明の実施形態の酸素流量及び空気流量の周期的変化を示す図の一例である。
【図4】図4は、本発明の実施形態の燃料流量、酸素流量及び空気流量の周期的変化を示す図の一例である。
【図5】図5は、本発明の一実施例における周波数とNO濃度の関係を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の一実施例における周波数とCO濃度の関係を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の一実施例における酸素比とNO濃度の関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の一実施例における酸素比とCO濃度の関係を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の一実施例における酸素濃度の上限値と、NO濃度の関係を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の一実施例における燃料流量とNO濃度の関係を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の一実施例における酸素比と酸素濃度の位相差と、NO濃度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した一実施形態であるバーナの燃焼方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率が実際と同じであるとは限らない。
【0025】
<燃焼装置>
本発明の実施形態に用いられる燃焼装置1は、図1に示すように、加熱炉2内に燃焼炎3を形成するバーナ4と、バーナ4と連結された燃料流体を供給する燃料供給配管5と、バーナ4と連結された酸化剤流体を供給する酸化剤供給配管6とを備えている。また、酸化剤供給配管6は、上流において酸素供給配管7と空気供給配管8とに分岐した構成となっている。
【0026】
また、燃料供給配管5、酸素給配管7及び空気供給配管8には、それぞれ供給される流体の流れに強制的に振動を加える強制振動手段50,70,80が設けられている。
ここで、流体の流れに強制的に振動を加えるとは、流体の流量を周期的に調整することを指し、強制振動手段とは、具体的には、各供給配管5,7,8に設けられた開閉弁51,71,81及び開閉弁を制御する制御機構52,72,82からなるコントロールユニットのことを指す。
【0027】
燃料供給配管5によって供給される燃料は、バーナ4の燃料に適してきるものであればどのようなものであっても構わず、例えば液化天然ガス(LNG)等を挙げることができる。
酸素供給配管7からは酸素が供給されるが、この酸素は、必ずしも純酸素である必要はなく、後述する酸素濃度との関係から適宜所望のものを用いればよい。
空気供給配管8からは空気が供給されるが、空気として、大気中から取り込んだ空気以外に、燃焼排ガスを使用することもできる。燃焼排ガスを使用した場合は、酸素濃度を21%(空気中の酸素濃度)未満に下げることができる。
【0028】
また、本実施形態の燃焼装置1は、加熱炉2内の状況に適時に対応するため、加熱炉2内には各種の検知器(図示略)が配置されていることが好ましい。更に、当該検知器によって検出されたデータをもとに加熱炉2内の雰囲気状況を把握し、自動的に燃料流体または酸化剤流体の流量、強制振動の周期等を適宜変更するシーケンスプログラムを備えていることが好ましい。
【0029】
<酸化剤流体の流量及び酸化剤流体中の酸素濃度>
次に、酸化剤流体の流量及び酸化剤流体中の酸素濃度について説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、酸素供給配管7、空気供給配管8及び燃料供給配管5からは、それぞれ純酸素、空気(酸素濃度は約21%)及び液化天然ガス(LNG)が供給されるものとして説明する。
【0030】
本実施形態では、酸化剤流体は、純酸素及び空気から構成されている。そして、強制振動手段70,80によって、酸素供給配管7から供給される純酸素の流量と空気供給配管8から供給される空気の流量の一方または双方が、経時的にみて周期的に変化するように制御されている。
【0031】
純酸素の流量及び空気の流量は、酸化剤流体中の酸素濃度が周期的に変化しているのであれば、どのように制御されていても構わない。また、純酸素の流量及び空気の流量の和(すなわち、酸化剤流体の流量)は、一定であっても、周期的に変化していても構わない。
【0032】
酸化剤流体の流量を一定にする場合は、例えば図2に示すように、純酸素の流量及び空気の流量の周期的変化を同波形、同変動幅にし、位相差をπとすればよい。このように構成すれば、純酸素の流量と空気の流量の増減は相殺されるので、バーナ4に供給される酸化剤流体の流量は一定に制御されることとなる。
【0033】
また、この場合は、純酸素及び空気の流量の最小値は、いずれも0となるように制御されていることが好ましい。このように制御することによって、酸化剤流体中の酸素濃度を約21%〜100%の範囲で変化させることが可能となる。
【0034】
すなわち、酸化剤流体中に占める純酸素の流量が0の場合、酸化剤流体の酸素濃度は空気の酸素濃度と等しくなり、酸素濃度は約21%となる。逆に、酸化剤流体中に占める空気の流量が0の場合は、酸化剤流体は純酸素のみから構成されることとなり、酸素濃度は100%となる。
なお、酸化剤流体の流量を一定にする場合は、燃料流体の流量を周期的に変化させることとなる。
【0035】
一方、酸化剤流体の流量を周期的に変化させる場合は、例えば図3に示すように、空気を一定量で供給しながら、純酸素の流量を定期的に変化させればよい。この場合は、純酸素の流量が最大となるときに、酸化剤流体中の酸素濃度は最大となり、純酸素の流量が最小となるときに、酸化剤流体中の酸素濃度は最小となる。
【0036】
例えば、純酸素の流量の最大値を、空気の流量と同じになるようにし、最小値を0となるように制御すれば、酸化剤流体中の酸素濃度は、約21%〜約61%の範囲で周期的に変化することとなる。すなわち、純酸素の流量が最大のときは、純酸素と空気の流量比が1対1となり、酸化剤流体中の酸素濃度は約61%となる。また、純酸素の流量が最小となるときは、酸化剤流体は空気のみで構成されることとなり、酸素濃度は約21%となる。
【0037】
なお、酸化剤流体の流量を周期的に変化させる方法として、空気の流量を一定とし、純酸素の流量を定期的に変化させる方法について説明したが、純酸素の流量を一定として、空気の流量を周期的に変化させてもよく、また、両方の流量を周期的に変化させても構わない。
【0038】
<燃料流体の流量>
また、本実施形態の燃料流体の流量は、酸化剤流体の流量を周期的に変化させている場合には、一定であっても周期的に変化していても構わない。
【0039】
<酸素比>
次に、酸素比について説明する。ここで酸素比とは、酸化剤流体としてバーナ4に供給される供給酸素量を、バーナ4に供給される燃料流体を燃焼させるのに必要とされる理論必要酸素量で除した値をいう。したがって、理論的には、酸素比1.0の状態が、酸素を過不足なく用いて完全燃焼することが可能な状態といえる。
なお、LNGの燃焼における理論必要酸素量は、LNG組成にもよるが、モル比にして、おおよそLNGの2.3倍である。
【0040】
本実施形態では、燃料流体もしくは酸化剤流体の流量の少なくとも一方が周期的に変化しており、また、酸化剤流体中の酸素濃度も周期的に変化していることから、酸素比も周期的に変化している。
【0041】
例えば、図2に示したように、酸化剤流体の流量を一定にし、燃料流体の流量を周期的に変化させる場合は、酸化剤流体の流量を1とし、燃料流体(LNG)の流量を0.05〜0.65の範囲で周期的に変化させると、酸素比は0.14〜8.7の範囲で周期的に変化する。
【0042】
また、図3に示すように、酸化剤流体の流量が周期的に変化している場合は、燃料流体の流量を一定にすることが可能となる。この際、例えば酸化剤流体の流量を1〜2の範囲で変化させ、燃料流体(LNG)の流量を0.3で供給すれば、酸素比は0.3〜1.75の範囲で周期的に変化する。
【0043】
また、図4に示すように、酸化剤流体の流量と燃料流体の流量を周期的に変化させることによって、酸化剤中の酸素濃度と酸素比を周期的に変化させるとともに、燃焼負荷(炉内へ投入する熱量)を変動させることが可能となる。
例えば、燃料流体の流量を0.5〜1.5の範囲で変化させ、酸素の流量を1.2〜1.7、空気の流量を0〜9.2の範囲で変化させて供給すると、酸素比は0.5〜2.7の範囲で周期的に変化し、酸素濃度は30〜100%の範囲で周期的に変化する。
【0044】
また、酸素比の周期的変化と酸素濃度の周期的変化に差が生じるように、燃料流体、純酸素、及び空気の流量は、強制振動手段によって適宜制御されている。
ここで、酸素比の周期的変化と酸素濃度の周期的変化に差を設けるとは、波形、周波数、位相が完全に一致する場合以外という意味である。すなわち、酸素比及び酸素濃度の波形がともに正弦波であり、同一周波数であったとしても、位相に差が生じているのであれば、周期的変化に差を設けたこととなる。
【0045】
また、酸素比の周期的変化の周波数は大きいと、NOの低減効果が十分には認められなくなるので、20Hz以下であることが好ましい。また、逆に小さ過ぎると、COの発生量が増大してしまうので、0.02Hz以上であることが好ましい。
また、酸素比の上限と下限の差が小さいと、NOの低減効果が十分には認められなくなるので、酸素比の上限と下限の差は、0.2以上であることが好ましい。また、酸素比の時間平均値は、小さいと燃料流体が不完全燃焼となるので、1.0以上であることが好ましく、1.05以上であることがより好ましい。
【0046】
また、酸素比の周期的変化と、酸化剤流体中の酸素濃度の周期的変化が、同じ周波数であることが好ましい。そして、同じ周波数であるならば、両者の位相差がπ/2以上3π/2以下の範囲であることが好ましく、πであることがより好ましい。更に、燃料流体の流量と酸素比及び酸素濃度の周期的変化が、同じ周波数であることが好ましい。そして、同じ周波数であるならば、燃料流体の流量の周期的変化と、酸素比の周期的変化の位相差が、π/2以上3π/2以下の範囲であることが好ましく、πであることがより好ましい。
【0047】
以上説明したような、本実施形態のバーナの燃焼方法によれば、NOの発生量を大幅かつ確実に低減できる。また、新規の加熱炉を設計する場合のみならず、既設の加熱炉におけるバーナにも適用することが可能である。
【0048】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、燃料流体や酸化剤流体の供給量は、図2ないし図4に示したような正弦波を示す周期的変化だけではなく、流量変化が矩形波や三角波となるような供給パターンでも構わない。
【0049】
以下、燃料流体をLNGとし、酸素濃度99.6%の酸素と空気とで酸化剤流体を形成し、酸素比と酸化剤流体中の酸素濃度を周期的に変化させ、強制振動燃焼をさせた場合のNO低減効果について、実施例を示して説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0050】
(実施例1)
まず、実施例1では、図1に示すような燃焼装置において、LNGの流量を固定し、酸素および空気の流量を変化させて、酸素比と酸素濃度を周期的に変化させながら燃焼試験を行った。
酸化剤流体中の酸素濃度は、33〜100%の範囲で、酸素比は、0.5〜1.6の範囲で周期的に変化させるようにした。このとき、酸化剤流体中の酸素濃度並びに酸素比は、時間平均値でそれぞれ40%、1.05となるようにした。
【0051】
試験結果の解析にあたり、同じ装置を用いて従来の酸素富化燃焼(定常燃焼)を実施した場合の燃焼排ガス中のNOの濃度を測定し、この値を基準値NO(ref)とした。
【0052】
酸化剤流体中の酸素濃度と酸素比の周期的変化の周波数を、いずれも0.033Hzとし、位相をπずらして燃焼させたところ、NO(ref)と比較して、NO濃度は約83%減となった。
【0053】
(比較例1)
実施例1と同条件で、酸素比のみを周期的に変化させた場合のNO低減について、燃焼試験を実施した。酸化剤流体中の酸素濃度を40%の一定とし、酸素比のみを0.5〜1.6の範囲で、周波数0.033Hzで変化させたところ、NO(ref)と比較して、NO濃度は約58%減に留まった。
【0054】
(実施例2)
次に、実施例2では、酸化剤流体中の酸素濃度を周期的変化させた場合のNO低減効果について、周波数の影響を調べた。
酸化剤流体中の酸素濃度及び酸素比の周期的変化の周波数が、0.017、0.02、0.025、0.033、0.067、0.2、1、5、10、20、25、50、100Hzのそれぞれの場合において、排ガス中のNO濃度を測定した。なお、酸素濃度と酸素比の位相差をπに設定し、酸素濃度及び酸素比の周波数以外は、実施例1と同条件とし、酸化剤流体中の酸素濃度の時間平均値は40%、酸素比の時間平均は1.05となるようにした。結果を表1及び図5に示す。
【0055】
なお、図5において、横軸は、酸素濃度及び酸素比の周波数を表しており、縦軸は、基準値NO(ref)を用いて規格化したNO濃度(NO/NO(ref))を表している。
【0056】
(比較例2)
また、実施例2の比較のため、比較例2として、酸素濃度を40%に固定し、酸素比のみを0.5〜1.6の範囲で強制振動燃焼させた場合のNOの低減効果を調べた。結果を、同じく表1及び図5に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
図5から、酸化剤流体中の酸素濃度及び酸素比の周期的変化の周波数が小さい方が、NO低減効果が高いことがわかる。また、酸素濃度と酸素比を同時に変動させることによって、NOを大幅に低減できることがわかる。また、試験した範囲内では、周波数は小さい方が効果は高く、特に20Hzのところで急激にNO減少の効果が表れることがわかった。そして、いずれの場合でも、本発明は、酸素比のみを周期的に変化させる場合に比べて高いNO低減効果があることがわかった。
【0059】
(実施例3)
次に、実施例3では、酸素濃度及び酸素比を周期的変化させた場合の排ガス中のCO濃度について、周波数の影響を調べた。
具体的には、酸素濃度及び酸素比の周期的変化の周波数が、0.017、0.02、0.025、0.033、0.067、0.2、1、5、10、20、25、50、100Hzのそれぞれの場合において、排ガス中のCO濃度を測定した。なお、酸素濃度と酸素比の位相差をπに設定し、酸素濃度及び酸素比の周波数以外は、実施例1と同条件とし、酸化剤流体中の酸素濃度の時間平均値は40%、酸素比の時間平均は1.05となるようにした。結果を表2及び図6に示す。
【0060】
なお、試験結果の解析にあたり、同じ装置を用いて従来の酸素富化燃焼(定常燃焼)を実施した場合の燃焼排ガス中のCO濃度を測定し、この値を基準値CO(ref)とした。そして、図6において、横軸は、酸素濃度及び酸素比の周波数を表しており、縦軸は、基準値CO(ref)を用いて規格化したCO濃度(CO/CO(ref))を表している。
【0061】
【表2】

【0062】
図6から、周波数が0.02より小さくなると、CO濃度が急激に上昇することが認められる。
以上から、周波数が小さい方がNO低減効果は高いが、排ガス中のCO濃度も下げたい場合には、周波数が0.02以上であることが好ましい。
【0063】
(実施例4)
次に、実施例4では、燃料流量を一定として、酸素比の変動幅がNO低減に与える影響を調べた。酸素濃度を30〜100%の範囲で周期的に変化させ、酸素比を変動させる範囲を変えてNO濃度を測定した。酸素比の下限を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5とした各場合について、酸素比の上限を1.1〜7の範囲で変化させ、排ガス中のNO濃度を測定した。結果を表3及び図7に示す。
【0064】
なお、酸素比の時間平均値を1.05、酸化剤流体中の酸素濃度を40%とした。たとえば、酸素比mが0.5〜5の場合、m<1.05となる燃焼時間をm>1.05の時間より長くするようにし、逆に、酸素比mが0.2〜1.2の場合、m<1.05となる燃焼時間をm>1.05の時間より短くするように調整した。
酸素比、酸素濃度の平均は一定なので、ある一定時間に使用される酸素量は同じとなる。
【0065】
また、図7の横軸は、酸素比の上限値mmaxであり、縦軸は規格化されたNO濃度である。図7の見方を説明すると、例えば、酸素比mを0.5〜2の範囲(下限値mminは0.5)で周期的に変化させた場合のNO濃度は、mmin=2のグラフにおける横軸mmax=2のときの値(0.3)となる。
【0066】
【表3】

【0067】
図7から、mmin=0.5のグラフは、mmaxが大きくなる(酸素比の振幅が大きくなる)にしたがって、NOが減少していくが、mmax>5では、NO濃度は一定となる。
また、mmin=0.3とするとmmin=0.5よりNO濃度は下がるが、mmin=0.2では、mmin=0.3とほぼ変らない。
【0068】
(実施例5)
次に、実施例5では、燃料流量を一定として、酸素比の変動幅がCO濃度に与える影響を調べた。具体的には、実施例4と同様の条件におけるCO濃度を調べた。結果を表4及び図8に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
図8から、mmax>6となると、CO濃度が急激に上昇することがわかる。
よって、本発明において、排ガス中のNO濃度とともに、CO濃度を下げたいときは、酸素比を0.2以上6以下の範囲で変動させることが好ましい。
【0071】
(実施例6)
実施例6では、燃料流量を一定として、酸素比を0.5〜1.6の範囲で変動させ、酸素濃度の変動幅を変えてNO排出量への影響を調べた。試験では、酸素濃度下限を33%にし、酸素濃度の上限を50〜100%の範囲で変化させた。平均の酸素比は1.05、酸化剤中酸素濃度は40%とした。また、酸素比及び酸素濃度の周波数を0.067Hzとし、位相差をπとした。結果を表5及び図9に示す。
【0072】
なお、図9の横軸は、酸化剤中の酸素濃度の上限値Cmaxであり、縦軸は、規格化されたNO濃度である。図9の見方を説明すると、例えば、酸素濃度33〜70%の範囲で周期的に変化させた場合のNO濃度は、横軸Cmax=70のときの値(0.38)となる。
【0073】
【表5】

【0074】
図9から、酸素濃度の変動幅を大きくすると、NO濃度の低減効果がより大きくなることがわかった。
【0075】
(実施例7)
次に、実施例7では、LNG、酸素、空気の流量を変化させ、酸素比と酸素濃度を周期的に変化させながら燃焼試験を行い、NO濃度を測定した。LNG流量の周期、酸素比の周期及び酸素濃度の周期は、いずれも周波数が0.2Hzとなるように設定した。また、LNG流量と酸素比の位相差をπとし、LNG流量が多いときに酸素比が低くなるようにした。また、酸素比と酸素濃度の位相差をπとした。
【0076】
酸化剤中の酸素濃度は、30〜100%の範囲で、酸素比は、0.5〜2.7の範囲で周期的に変化させるようにした。このときの酸化剤中の酸素濃度ならびに酸素比は、時間平均でそれぞれ、40%、1.05となるようにした。結果を図10に示す。
【0077】
(比較例3)
また、比較例3として、LNG流量を一定とし、酸素と空気の流量のみを変化させて酸素比と酸素濃度を周期的に変化させて燃焼して、NO濃度を測定した。酸素比と酸素濃度の位相差はπとした。酸素濃度及び酸素比の範囲は、実施例7と同じになるようにした。結果を同じく図10に示す。
【0078】
図10から、LNG流量を変動させた場合の方が、NO濃度が低くなることがわかった。
【0079】
(実施例8)
次に、実施例8では、LNG流量を一定にし、酸素及び空気の流量を変化させ、酸素比と酸素濃度を周期的に変動させる試験において、酸素比と酸素濃度の位相差を0、π/2、π、3π/2と変えてNO濃度への影響を調べた。なお、酸素比と酸素濃度の周波数は0.067Hzとし、酸化剤中の酸素濃度は、33〜100%の範囲で、酸素比は、0.5〜1.6の範囲で周期的に変化させるようにした。このときの酸化剤中の酸素濃度並びに酸素比は、時間平均でそれぞれ、40%、1.05となるようにした。結果を図11に示す。
【0080】
図11から、酸素比と酸素濃度の周期的変化の位相差がπ/2以上3π/2以下の範囲にあると、NO濃度が低くなり、位相差がπだともっとも低くなることが分かった。
【符号の説明】
【0081】
1・・・燃焼装置、2・・・加熱炉、3・・・燃焼炎、4・・・バーナ、5・・・燃料供給配管、6・・・酸化剤供給配管、7・・・酸素供給配管、8・・・空気供給配管、50,70,80・・・強制振動手段、51,71,81・・・開閉弁、52,72,82・・・制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉におけるバーナの燃焼方法であって、
バーナに供給する燃料流体もしくは酸化剤流体の流量の少なくとも一方を周期的に変化させるとともに、
前記酸化剤流体中の酸素濃度に周期的な変化を与えることによって、供給酸素量を理論必要酸素量で除した酸素比に周期的変化を発生させ、
前記酸素比と前記酸素濃度の周期的変化に差を設けることにより、燃焼状態が周期的な振動状態となることを特徴とするバーナの燃焼方法。
【請求項2】
前記燃料流体の流量の周期的変化と、前記酸素濃度及び前記酸素比の周期的変化とに差を設けることを特徴とする請求項1に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項3】
前記酸素比の周期的変化の周波数が20Hz以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項4】
前記酸素比の周期的変化の周波数が0.02Hz以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項5】
周期的に変化する前記酸素比の上限と下限の差が0.2以上であり、1周期における前記酸素比の平均値が1.0以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項6】
前記酸素比及び前記酸素濃度の周期的変化が、同じ周波数であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項7】
前記酸素比と前記酸素濃度の周期的変化の位相差がπ/2以上3π/2以下の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項8】
前記酸素比と前記酸素濃度の周期的変化の位相差がπであることを特徴とする請求項7に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項9】
前記燃料流体の流量及び前記酸素比の周期的変化が、同じ周波数であり、前記燃料流体の流量の周期的変化と前記酸素比の周期的変化の位相差がπ/2以上3π/2以下の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項10】
前記酸素濃度及び前記酸素比の周期的変化の位相差がπであることを特徴とする請求項9に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項11】
前記酸化剤流体が酸素と空気から構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項12】
前記酸化剤流体が酸素と燃焼排ガスから構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のバーナの燃焼方法。
【請求項13】
前記酸素が実質的に純酸素であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のバーナの燃焼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−179751(P2011−179751A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44262(P2010−44262)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】