説明

バーナ

【課題】雰囲気ガスが流動しており、酸素濃度が低い環境においても、都市ガス、プロパンガス等を使用することなく、雰囲気ガスを燃焼用空気としてバイオガスを燃焼できるバーナの提供
【解決手段】本発明のバーナ10は、バイオガス流通路2と、雰囲気ガス流通路3と、少なくともバイオガス流通路2に接続されたノズル4と、そのノズル4の下流に設置されたフード5とを備える。このバーナは、雰囲気ガスが流動している環境に設置され、雰囲気ガスを燃焼用空気としてバイオガスを燃焼させるのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ビールなどの製造工程で発生した有機性排水を嫌気性発酵することにより、メタンを主成分とするバイオガスが発生する(特許文献1、2など参照)。このバイオガスをコジェネレーション設備の燃料として発電または蒸気・温水へ効率よく変換することにより、省エネルギー化を図る取り組みが行われている。
【0003】
コジェネレーション設備では、例えば、図1に示すように、発電機100で発生したタービン排ガス(図中、白抜き矢印)がボイラ200に送られ、そこで熱交換されることによりタービン排ガスが熱源として再利用される。しかし、タービン排ガスの温度では熱量が足りないため、発電機とボイラとの間において追焚きが行われている。追焚きは、追焚きバーナ300によって、タービン排ガスの流動方向と同じ向きに火炎301を生じさせて、タービン排ガスを加熱するものである。
【0004】
タービン排ガスは、500℃程度の温度で、酸素濃度が15vol.%程度と低く、また、発電機とボイラとの間を15m/s程度の流速で搬送される。このように、雰囲気ガスが流動しており、酸素濃度が低い環境においては、従来のバーナの形状を用いた装置では、バイオガスのみでは燃焼が困難であり、都市ガス、プロパンガス等とバイオガスとを併用しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−36161
【特許文献2】特開2009−119361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の都市ガス、プロパンガス等とバイオガスとを併用する方法でも、ボイラへの負荷が大きい場合には発生したバイオガスを全量エネルギー源として用いることが可能となるが、ボイラの負荷が小さい場合にはバイオガスのみでは安定して燃焼が持続できないため都市ガス、プロパンガス等での燃焼となり、ビールの製造中、常に発生しているバイオガスはフレアスタックで処分される。
【0007】
本発明は、雰囲気ガスが流動しており、酸素濃度が低い環境においても、都市ガス、プロパンガス等を使用することなく、雰囲気ガスを燃焼用空気としてバイオガスを燃焼できるバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ね、下記の知見を得た。
【0009】
(a)雰囲気ガスが流動している環境では、バーナは、着火しにくく、消火されやすい。特に、タービン排ガスなどの酸素濃度が低い環境ではなおさらである。このため、バーナに着火した後、外部環境の影響を受けにくい構成とすることが重要である。そのためにはバーナの先端にフードを設けることが必要である。
【0010】
(b)雰囲気ガスの流速が速い場合(特に10m/s以上の流速で雰囲気ガスが流動している環境の場合)、または更に、酸素濃度が15vol.%以下という低酸素環境の場合には、その流速のままではバーナに着火しにくい場合がある。このような場合には、雰囲気ガスの流速を十分に低下させたのち、バーナに着火することが重要である。
【0011】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記の(1)〜(5)に示すバーナを要旨としている。
【0012】
(1)雰囲気ガスが流動している環境に設置され、その雰囲気ガスおよびバイオガスを燃焼させるバーナであって、バイオガス流通路と、雰囲気ガス流通路と、少なくともバイオガス流通路に接続されたノズルと、そのノズルの下流に設置されたフードとを備えるバーナ。
【0013】
(2)流速を低減した雰囲気ガスを雰囲気ガス流通路に導入する上記(1)のバーナ。
【0014】
(3)バイオガス流通路が、ガス旋回羽根を備えるものである上記(1)または(2)のバーナ。
【0015】
(4)ガスタービンからの排ガスをボイラに供給する際に、その排ガスを追焚きするために設置されたバーナである上記(1)〜(3)のいずれかのバーナ。
【0016】
(5)バイオガスが、メタンを主成分とするものである上記(1)〜(4)のいずれかのバーナ。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバーナは、雰囲気ガスが流動しており、酸素濃度が低い環境においても、都市ガス、プロパンガス等のガスまたはこれらのガスとバイオガスとの混合ガスを使用することなく、雰囲気ガスを燃焼用空気としてバイオガスを燃焼でき、燃料燃焼用空気を供給するためのブロワも不要となり、省エネルギー化に寄与する。このバーナは、特に、ビール工場の排水から得られたバイオガスを用いて、コジェネレーション設備におけるタービン排ガスの追焚きを行うのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コジェネレーション設備の例を示す概略図
【図2】本発明に係るバーナの例を示す上面図
【図3】本発明に係るバーナの例を側面方向から見た断面図
【図4】本発明に係るバーナで用いることができるノズル形状の例を示す図 (a)正面図 (b)側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を使って本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
本発明に係るバーナは、雰囲気ガスが流動している環境に設置され、その雰囲気ガスおよびバイオガスの混合ガスを燃焼させるバーナである。雰囲気ガスが流動している環境とは、例えば、前掲の図1に示すように、発電機100で発生したタービン排ガス(白抜き矢印)をボイラ200に送る間の環境などがあげられる。そして、本発明に係るバーナ10は、例えば、図1に示される追焚きバーナ300として使用可能であり、この場合、タービン排ガスの流動方向と同じ向きに火炎301を生じさせてタービン排ガスを加熱させることで、タービン排ガスの追焚きが可能となる。
【0021】
図2および3に示すように、本発明に係るバーナ10は、例えば、バイオガス流通路1,2と、雰囲気ガス流通路3と、少なくともバイオガス流通路2に接続されたノズル4と、そのノズルの下流に設置されたフード5とを備えるものである。図3に示すように、例えば、工場内の嫌気処理設備などで発生したバイオガスは、バイオガス流通路1内の内管1b内を図面手前から奥方向に向けて供給され、バイオガス流通路2が設置されているのと反対側周面に設けられた貫通孔から排出され、外管1aを経由して、バイオガス流通路2内に導入される。このように、バイオガス流通路2が設置されているのと反対側周面に設けられた貫通孔からバイオガスを排出する構成とすれば、それぞれのバーナに供給するバイオガス量を均一にすることが可能となる。
【0022】
バイオガス流通路2内を通過したバイオガスは、そのまま搬送されるか、または、図3に示す例のように、途中でガス旋回羽根2aによって渦流を生じさせた後、搬送され、ノズル4出口付近で雰囲気ガスと混合される。この混合ガスは、点火トーチなどにより、着火され、火炎を生じさせ、流動する雰囲気ガスを加熱する。このとき、ガス旋回羽根2aを用いると、ノズル4出口付近での雰囲気ガスとの混合が行われやすく、バイオガスを燃焼させやすくなる。
【0023】
一方、雰囲気ガスの一部は、例えば、バイオガス流通路2を覆うように設置された雰囲気ガス流通路3内に導入され、ノズル4を通過した後、バイオガスと混合され、着火されたバイオガスの酸素源として用いられる。雰囲気ガス流通路3は、例えば、図2および図3に示すように、2枚の板3bでバイオガス流通路2を覆うことにより形成することができる。雰囲気ガス流通路3内に導入する雰囲気ガスの導入量および流速は、調整弁3aによって調整可能である。なお、調整弁を開けすぎると、雰囲気ガスの流速が大きくなり、バイオガスの着火が容易でなくなる場合がある。雰囲気ガスは、外部雰囲気、すなわち、雰囲気ガス流路3の外側の雰囲気のガス流速よりも低減させることが好ましい。
【0024】
ノズル4の下流には、フード5が配置されていることが必要である。フード5が配置されていないと、雰囲気ガスとバイオガスとを混合した後、着火することができたとしても、外部環境(前掲のガスタービン排ガスの追焚きの例では、500℃程度、酸素濃度15vol.%程度で、流速15m/s程度のガス雰囲気環境)と接触した時に消火され、安定的な追焚きが困難になるからである。
【0025】
フード5の形状は、限定がないが、例えば、雰囲気ガス流通路3を構成する板3bと一体で構成されたものを採用することができる。ここで、バーナ開口部(図3、4に示す例ではノズル傘部4bの最大径部)の外径をD(mm)、ノズルの引き込み代をL(mm)とするとき、L/Dは、小さすぎると、前述のように着火直後に外部雰囲気にさらされ、消火されるおそれがあるので、0.2以上であることが好ましい。一方、L/Dは、大きすぎると、燃焼火炎によるフード5が焼損するおそれがあるので、0.5以下とすることが好ましい。
【0026】
ノズルは、バイオガスと雰囲気ガスとを十分に混合できるものであれば、特に制約はないが、例えば、図4に示すように、複数の孔4aを備える円錐台形状の傘部4bを有するコーン型ノズルを用いることができる。円錐台形状の傘部4bの外径は、バイオガス流通路の外径よりも大きい。このコーン型ノズルは、例えば、図2、3などに示すように、バイオガス流通路2の先端に取り付けられ、中心部からバイオガスを、複数の孔4aから雰囲気ガスを導出し、混合する機能を有するものである。また、図示しないが、金属板に複数の孔が開いた蜂の巣型ノズルなども使用することもできる。蜂の巣型ノズルを用いる場合には、例えば、バイオガス流通路2の出側の雰囲気ガス流通路3を構成する3bで挟まれる空間を覆うように配置することで、バイオガスと雰囲気ガスの混合を行うことができる。ただし、着火が容易であることから、コーン型ノズルを用いることが好ましい。
【0027】
バーナは、雰囲気ガスの流動方向に垂直な方向に複数個を等間隔に並べて配置するのが好ましい。バーナへの点火方法は、特に制約がないが、例えば、点火トーチによる手動点火、または、パイロットバーナによる自動点火を採用することが可能である。また、バーナは、片端または両端にあるバーナに点火すれば、火移りし、すべてのバーナの点火が完了するように十分に近接して配置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のバーナは、雰囲気ガスが流動しており、酸素濃度が低い環境においても、都市ガス、プロパンガス等のガスまたはこれらのガスとバイオガスとの混合ガスを使用することなく、雰囲気ガスを燃焼用空気としてバイオガスを燃焼でき、燃料燃焼用空気を供給するためのブロワも不要となり、省エネルギー化に寄与する。このバーナは、特に、ビール工場の排水から得られたバイオガスを用いて、コジェネレーション設備におけるタービン排ガスの追焚きを行うのに適している。
【符号の説明】
【0029】
10 本発明に係るバーナ
1 バイオガス流通路
1a 外管
1b 内管
2 バイオガス流通路
2a ガス旋回羽根
3 雰囲気ガス流通路
3a 調整弁
3b 板
4 ノズル
4a 孔
4b ノズル傘部
5 フード
100 発電機
200 ボイラ
300 追焚きバーナ
301 火炎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気ガスが流動している環境に設置され、その雰囲気ガスおよびバイオガスを燃焼させるバーナであって、
バイオガス流通路と、雰囲気ガス流通路と、少なくともバイオガス流通路に接続されたノズルと、そのノズルの下流に設置されたフードとを備えることを特徴とするバーナ。
【請求項2】
流速を低減した雰囲気ガスを雰囲気ガス流通路に導入することを特徴とする請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
バイオガス流通路が、ガス旋回羽根を備えるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のバーナ。
【請求項4】
ガスタービンからの排ガスをボイラに供給する際に、その排ガスを追焚きするために設置されたバーナであることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載のバーナ。
【請求項5】
バイオガスが、メタンを主成分とするものであることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のバーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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