説明

パイプクランプ

【課題】径の異なるパイプを同じ保持片を用いて、容易に固定することができるパイプクランプ。
【解決手段】パイプクランプ(1)は、パイプ(11A,B)を保持するクランプ部(5,6)と、被取付部材(8)へ固定する本体部(2)とを備える。クランプ部は、パイプを収容して保持するU字形状の空間を形成する一対の側壁(14A,14B)と底部(15)とを含む。一対の第1弾性保持片(18A,18B)は、側壁の上部から底部に向かって延び、パイプの上部側に当接してパイプが抜け落ちないように保持する。一対の第2弾性保持片(22A,22B)は、側壁の中央部から、クランプ部の底部に向かって延び、パイプの横方向に当接して、パイプが横方向に移動しないように保持する。一対第3弾性保持片(19A,19B)は、側壁の下部からクランプ部の底部に向かって延び、パイプの底部側に当接し、パイプを押し上げるように保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ等の長尺部材を自動車のボデーパネル等の被取付部材に取付けるパイプクランプに関する。特にパイプ等の長尺部材を保持するクランプ部と、ボデーパネル等の被取付部材へ固定する本体部とを備え、長尺部材がクランプ部に保持されて本体部が自動車のボデーパネル等の被取付部材に固定されることにより、長尺部材が被取付部材に取付けられる構成のパイプクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ等の長尺部材を保持するクランプ部と、自動車のボデーパネル等の被取付部材へ固定する本体部とを備え、長尺部材がクランプ部に保持され、本体部は被取付部材に固定されることによって、長尺部材を被取付部材に取付けるパイプクランプは知られている。クランプ部は、上部にパイプを受け入れる開放部分を有し、一対の側壁と底部とで形成されるU字形状の空間にパイプを収容するように構成され、収容されたパイプがクランプ部から抜け外れないように保持する。本体部は、ボデーパネル等の被取付部材に取付けるための固定手段を有し、自動車のボデーパネル等の被取付部材に固定される。
【0003】
一般に、自動車の燃料パイプは、フィードとパージの2本あり、同じ種類の自動車であっても、エンジンの排気量等によりパイプの径が異なる。従来は、それぞれのパイプの径に対応した多数のクランプが必要であった。
【0004】
従来の径の異なるパイプ等を保持することができるクランプとしては、特許文献1〜3に記載のものがある。
特許文献1は、左右に長さの異なる2本の弾性保持腕を有し、径の異なる2種類のチューブを装着可能なチューブクランプを開示する。
特許文献1のチューブクランプは、径の太いチューブを保持するときは、長い方の弾性保持腕は側方へ押され、短い方の弾性保持腕の先端部でチューブを下方へ押し付ける。径の細いチューブを保持するときは、短い方の弾性保持腕はチューブに当たらず、長い方の弾性保持腕の先端部でチューブを下方へ押し付ける。
特許文献1のチューブクランプは、チューブの径によって、左右どちらかの弾性保持腕によりチューブを下方へ押し付けるので、抜け止め力が弱く、不安定である。
【0005】
特許文献2は、弾性抜け止め片がU字壁より異なる角度で複数段設けられ、径の異なる棒状物を保持できる棒状物保持具を開示する。径の小さい棒状物を保持するときは、長いほうの抜け止め片と受け腕とにより保持する。径の大きい棒状物を保持するときは、長いほうの抜け止め片は、外方に変形させ、短い方の抜け止めと受け腕とにより保持する。
特許文献2の抜け止め片は、クランプの幅方向に長い抜け止め片と短い抜け止め片に分割されているので、棒状物を押さえる幅が短くなり、十分な抜け止め力を得るには、クランプの幅を大きくする必要がある。
【0006】
特許文献3は、パイプを保持する内部空間に向かって、複数の抜け止め脚と、基部寄りから内部空間に向かって延びる少なくとも一対の押上げ脚とを備え、径の異なる複数種類のパイプに共用できるパイプクリップを開示する。特許文献3のパイプクリップは、複数の抜け止め脚の合力によって抜けとめ力を付与することにより、径の異なる複数種類のパイプを共通のクリップで保持することができる。
特許文献3のパイプクリップは、パイプの径によってパイプを保持する抜け止め脚の数が変わり、特に細い径のパイプを保持するときは、一対の抜け止め脚により保持することになり、保持力が弱くなる。
【0007】
そのため、径の異なるパイプを同じ保持片を用いて、容易に固定することができるパイプクランプが望まれていた。また、径の異なるパイプを、クランプの幅を広げることなく、安定してパイプを保持することができる簡単な構造のパイプクランプが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−5340号公報
【特許文献2】特開平9−170679号公報
【特許文献3】特開2003−49970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、U字形状のクランプ部を有するパイプクランプにおいて、径の異なるパイプを同じ保持片を用いて、容易に固定することができるパイプクランプを提供することである。
本発明の別の目的は、クランプの幅を広げることなく、径の異なるパイプを安定してパイプを保持することができる簡単な構造のパイプクランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明によれば、パイプを保持するための上方の一対の第1弾性保持片と、中間部の一対の第2弾性保持片と、下方の一対の第3弾性保持片と、を有するパイプクランプが提供される。
【0011】
本発明の1形態は、長尺部材を保持するクランプ部と、被取付部材へ固定する本体部とを備え、長尺部材が前記クランプ部に保持され、前記本体部が被取付部材に固定されることにより、長尺部材が被取付部材に取付けられる構成のパイプクランプであって、
前記クランプ部は、長尺部材を収容して保持する、上部が開放したU字形状の空間を形成する一対の側壁と底部とを含み、
前記クランプ部は、前記一対の側壁の上部から前記底部に向かって斜めに延びる第1弾性保持片を有し、前記第1弾性保持片の先端部は、当該クランプ部に保持された長尺部材の上部側の表面に当接して前記長尺部材が抜け落ちないように保持し、
前記クランプ部は、前記一対の側壁の中央部から、前記クランプ部の下方に向かって斜めに延びる第2弾性保持片を有し、前記第2弾性保持片の先端部は、当該クランプ部に保持された長尺部材の横方向の表面に当接して、前記長尺部材が横方向に移動しないように保持し、
前記クランプ部は、前記一対の側壁の下部から前記クランプ部の下方に向かって斜めに延びる第3弾性保持片を有し、前記第3弾性保持片の先端部は、前記クランプ部に保持された長尺部材の底部側の表面に当接し、前記長尺部材を押し上げるように保持する、ことを特徴とするパイプクランプである。
【0012】
上方から一対の第1弾性保持片が長尺部材(パイプ)を抜け落ちないように保持し、中間部で一対の第2弾性保持片が長尺部材を横方向に移動しないように保持し、下方から一対の第3弾性保持片が長尺部材を上方に向かって保持するので、長尺部材を安定して保持することができる。
また、長尺部材の径が異なると、主に第2弾性保持片と第3弾性保持片の撓み量が変わり、異なる径の長尺部材の外径に適合して安定して保持することができる。
【0013】
前記クランプ部は複数設けられ、各クランプ部は収容することのできる長尺部材の外径が異なることが好ましい。
これにより、色々の径の長尺部材を取付けることができる。
【0014】
前記クランプ部の前記一対の側壁には、第2弾性保持片が撓んだとき、その先端部が当接する凸部が形成されていることが好ましい。
これにより、大径の長尺部材を横方向から確実に保持することができる。
【0015】
前記第2弾性保持片の前記壁部から前記先端部までの長さは、前記第1弾性保持片の長さより短く、前記第3弾性保持片の長さより短いことが好ましい。
これにより、長尺部材の幅の広い上下方向の中間部は短い第2弾性保持片で保持するので、長尺部材の外径に適合して保持することができる。
【0016】
前記第2弾性保持片の先端部は下方に曲がっていることが好ましい。
大径の長尺部材を保持するときは、第2弾性保持片の先端部は側壁部に当接し、長尺部材を中央部に安定して保持することができる。
【0017】
前記第3弾性保持片の先端部は上方に曲がっていることが好ましい。
第3弾性保持片の面積の小さい先端部で長尺部材を支えるので、長尺部材を中央部に安定して保持することができる。
【0018】
大径の長尺部材を保持する場合は、前記第2弾性保持片のそれぞれは、前記側壁に向かって下方へ撓み、前記第2弾性保持片のそれぞれの先端部は、前記側壁上に当接し、前記クランプ部に保持された長尺部材を反対側の側壁に向かって弾性的に押し付けて前記長尺部材を横方向に移動しないように保持し、
前記第3弾性保持片のそれぞれの先端部は、前記底部に当接して、前記クランプ部に保持された長尺部材の下部側の表面を上方に弾性的に押し上げて保持することが好ましい。
大径の長尺部材の場合、横方の第2弾性保持片、下方の第3弾性保持片が十分にたわみ、長尺部材をクランプ部に受け入れて、ずれないように保持することができる。
【0019】
小径の長尺部材を保持する場合は、前記第2弾性保持片のそれぞれの先端部は、前記側壁上に当接せず、前記クランプ部に保持された長尺部材を反対側の側壁に向かって弾性的に押し付けて前記長尺部材を前記側壁から離れた状態に保持し、
前記第3弾性保持片のそれぞれの先端部は、前記底部に当接せず、前記クランプ部に保持された長尺部材の下部側の表面を上方に弾性的に押し上げて前記長尺部材を前記底部から浮いた状態に保持することが好ましい。
小径の長尺部材でも、上方の第1弾性保持片、横方の第2弾性保持片、下方の第3弾性保持片により、長尺部材がずれないように保持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、U字形状のクランプ部を有するパイプクランプにおいて、径の異なるパイプを同じ保持片を用いて、容易に固定することができるパイプクランプを提供することができる。
また、クランプの幅を広げることなく、径の異なるパイプを安定してパイプを保持することができる簡単な構造のパイプクランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の1実施形態によるパイプクランプの斜視図である。
【図2】図1のパイプクランプの上面図である。
【図3】図1のパイプクランプの正面図である。
【図4】図1のパイプクランプの側面図である。
【図5】図1のパイプクランプにより、パイプ(長尺部材)をボディパネル(被取付部材)に取付けた状態を示す斜視図である。
【図6】パイプクランプのクランプ部に大径のパイプを取付けた状態を示す図である。
【図7】パイプクランプのクランプ部に小径のパイプを取付けた状態を示す図である。
【図8】本発明の比較例のパイプクランプの上面図である。
【図9】図7のパイプクランプの正面図である。
【図10】図8の比較例のパイプクランプのクランプ部に大径のパイプを取付けた状態を示す図である。
【図11】図8の比較例のパイプクランプのクランプ部に小径のパイプを取付けた状態を示す図である。
【図12】図10に示す状態からパイプが位置ずれを起こした場合の状態を示す図である。
【図13】図11に示す状態からパイプに抜け力が加わった場合の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の1実施形態によるパイプクランプ1について説明する。パイプクランプ1は、硬質のプラスチック材料で一体成形される。図1はパイプクランプ1の斜視図、図2は上面図、図3は正面図、図4は側面図である。本発明の説明において、上下方向は図3の上下方向をいうものとする。
【0023】
図1及び図3に示されるように、パイプクランプ1は、自動車のボデーパネル等の被取付部材に固定される本体部2と、パイプ等の長尺部材を保持する2つのクランプ部5、6とを有する。2つのクランプ部5、6の底部を形成する基部7が形成され、基部7からは各クランプ部の側壁14A、14Bを形成する壁部が垂直に立上って形成されている。更に、基部7は、クランプ部5、6の底部から本体部2の下部に一体に繋がって形成されている。本体部2には、ボデーパネル8(被取付部材)に固定される固定部9が設けられている。固定部9の上部にはスタッド4が挿通できる開口が形成されている。固定部9は、中心部分が中空に形成され、その中空部分には、スタッドのねじ溝又は周溝に弾性的に係止する、複数の係止爪10が形成されている。こうして、ボデーパネル8に立設された、ねじ又は周溝を有する棒状のスタッド4を受入れるようになっている。
固定部9の上面には、二対のバネ片31が設けられている。パイプクランプ1をスタッドに係止したとき、バネ片31は、ボデーパネル8に弾接して、ボディパネル8にしっかり固定できるようになっている。
【0024】
図5は、図1のパイプクランプにより、パイプ(長尺部材)をボディパネル(被取付部材)に取付けた状態を示す斜視図である。
パイプクランプ1の固定部9の開口を通して中空部分にスタッドを受入れるように、スタッドが立設されたボデーパネル8にパイプクランプ1を押し付ける。これにより、係止爪10がスタッド4のねじ溝又は周溝に係止して、パイプクランプ1がボデーパネル8に固定され、パイプがボデーパネル8に取付けられる。
なお、図示の実施形態では、固定部9はスタッドに係止するものとして構成されているが、固定部9は、Tスタッドに係止する構造であってもよい。又は、ボデーパネル8に形成された取付穴に挿入されて固定される錨脚形状のクリップを有するものであってもよい。又は、被取付部材にパイプクランプを取付けることができる別の固定手段であってもよい。
【0025】
図示の実施形態において、クランプ部5、6は、大径のパイプを保持するクランプ部5と、それより小径のパイプを保持するクランプ部6とを有する。本発明に係るクランプ部5、6は、2つ設けられているが、その数は任意であり、1つであっても、2つあるいはそれ以上であってもよい。また、クランプ部5と6は、同じ径のパイプを保持するものでも良い。
【0026】
クランプ部5、6のそれぞれの機能及び構成は基本的に同じであるので、主にクランプ部5について説明する。他方のクランプ部6の構成及び作用については、クランプ部5とほぼ同様なので、異なる点のみを説明する。
クランプ部5は、長尺部材としてのパイプを、一対の側壁14A、14Bと底部15とで形成されるU字形状の空間に収容するように形成されている。クランプ部5は、パイプを受入れるための開いた部分を上部に有し、側壁14A、14Bの上部からは一対の第1弾性保持片18A、18Bがそれぞれ底部15に向けて斜めに延びている。それぞれの第1弾性保持片18A、18Bの先端部は、平らな面であり、パイプの表面に当接することができるようになっている。
クランプ部5の開いた部分からへパイプを押し込むと、第1弾性保持片18A、18Bの先端部は開いてパイプを受け入れ、パイプがクランプ部5に収容されると、第1弾性保持片18A、18Bの先端部は閉じて、パイプの上部側の表面に第1弾性保持片18A、18Bの先端が当接してクランプ部5から抜け外れないように保持する。パイプを押し込むだけで、パイプをクランプ部5に容易に収容することができる。
【0027】
パイプクランプ1のクランプ部5には、側壁14A、14Bの第1弾性保持片18A、18Bの下方には、一対の板ばね形状の第2弾性保持片22A、22Bが、側壁14A、14Bから離れ、クランプ部5の下方に向けて斜めに延びて形成されている。第2弾性保持片22A、22Bの長さは、第1弾性保持片18A、18Bより短い。第2弾性保持片22A、22Bの先端部は、下向きに凸になっている。パイプを入れない状態、即ち自然状態での第2弾性保持片22A、22Bの間の距離を22Wとする(図1)。
【0028】
第2弾性保持片22A、22Bは、クランプ部5に収容されたパイプの表面を横方向の2箇所で受けてパイプを保持するように形成されている。第2弾性保持片22A、22Bがパイプを横方向から保持することにより、パイプがクランプ部の中で横方向に移動しないように保持される。
【0029】
側壁14A、14Bの第2弾性保持片22A、22Bの元部より下方の部分には、凸部23A、23Bが形成されている。凸部23A、23Bは、大径のパイプをクランプ部5に収容したとき、第2弾性保持片22A、22Bが撓んで、その先端部が凸部23A、23Bに当接して、それ以上撓まないようにストッパーとして作用する。
【0030】
パイプクランプ1のクランプ部5には、凸部23A、23Bの更に下方の側壁14A、14Bの底部15側に近い部分から、一対の板ばね形状の第3弾性保持片19A、19Bが、下方に向けて斜めに延びるように設けられている。詳細には、一対の第3弾性保持片19A、19Bは、クランプ部5の底部15には接触しないように斜めに延びて、クランプ部6のU字形状の空間の中央部より手前で終わっている。また第3弾性保持片19A、19Bは、第2弾性保持片22A、22Bより長い。第3弾性保持片19A、19Bの先端部は、上向きに凸になっている。
【0031】
第3弾性保持片19A、19Bは、クランプ部5に収容されたパイプの底部側の表面を2箇所で受けてパイプを上方に弾性的に押上げるように形成されている。クランプ部5に収容されたパイプは、第3弾性保持片19A、19Bにより底部15から押上げられ、上下方向に移動しないようになっている。
最大の外径より小さい外径のパイプを保持する場合は、パイプは底部15から浮いた状態に弾性的に保持される。
【0032】
パイプクランプ1のクランプ部5は、第1弾性保持片18A、18B、第2弾性保持片22A、22B、第3弾性保持片19A、19Bを有するので、大径のパイプから小径のパイプまで、さまざまな径のパイプを取付けることができる。
第2弾性保持片22A、22Bが下方に撓んで、第2弾性保持片22A、22Bの先端部が凸部23A、23Bに当接したときの、第2弾性保持片22A、22Bの先端の間の間隔22W’とする(図6)。パイプクランプ1に取付けることができるパイプの最大の外径D1は、22W’にほぼ等しい。パイプの外径がD1より大きいと、一対の第2弾性保持片22A、22Bの間にパイプを押し込むことができなくなる。外径が22W’より若干大きいパイプは、第2弾性保持片22A、22Bの先端部を押し広げて挿入することができる。
パイプクランプ1に取付けることができるパイプの最小の外径D3は、第2弾性保持片22A、22Bが撓まない状態で、第2弾性保持片22A、22Bの先端部の間の距離22Wにほぼ等しい。パイプの外径がD3より小さいと、一対の第2弾性保持片22A、22Bで両側からパイプを保持することができなくなる。
クランプ部6は、クランプ部5より小径のパイプに適する。クランプ部6に取付けることのできるパイプの最大の外径はD2であり、最小の外径はD4である。
【0033】
(パイプを取付けた状態)
図6、7を参照して、上記のような構成のパイプクランプ1のクランプ部5(及びクランプ部6)に大径のパイプを取付けた状態と、小径のパイプを取付けた状態について説明する。
図6は、パイプクランプ1のクランプ部5に最大の外径D1の大径のパイプ11Aを取付け、クランプ部6に最大の外径D2の大径のパイプ11Bを取付けた状態を示す図である。クランプ部6の幅、高さは、クランプ部5の幅、高さより小さく、クランプ部5より小径のパイプ11Bを取り付けるのに適した形状である。クランプ部6に取付けることのできる最大の外径D2のパイプ11Bは、クランプ部5に取付けることのできる最大の外径D1のパイプ11Aより小径である。
【0034】
クランプ部5のU字形状の空間に上方から外径D1のパイプ11Aを挿入していくと、第1弾性保持片18A、18Bが撓んでいく。パイプ11Aを押し込んでいくと、第2弾性保持片22A、22Bが下方へ押されていく。第2弾性保持片22A、22Bの先端部は、凸部23A、23Bに当接してとまる。このときの、第2弾性保持片22A、22B間の距離22W’は、パイプ11Aの外径D1にほぼ等しい。第2弾性保持片22A、22Bはそれ以上湾曲せず、パイプ11Aの上下方向の中間部分、即ち直径部分に当接し、パイプ11Aは横方向に移動しないように保持される。
パイプ11Aは、第3弾性保持片19A、19Bを下方へ押す。第3弾性保持片19A、19Bの先端部は、底部15に当接して止まる。この位置で、第1弾性保持片18A、18Bの先端部は、互いに近づき、パイプ11Aの上側部に当接する。こうして、パイプ11Aはクランプ部5から抜け落ちにくくなる。
【0035】
クランプ部6には、クランプ部5に取付けるパイプ11Aより小径の外径D2のパイプ11Bを取付ける。クランプ部6には、凸部23A、23Bは設けられていない。第2弾性保持片22A、22Bは、第3弾性保持片19A、19Bの基部に当接して、止まるようになっている。その他の点は、クランプ部5と同様なので、説明を省略する。
【0036】
図7は、パイプクランプ1のクランプ部5に、クランプ部5に取付けることのできる最小の外径D3のパイプ12Aを取付け、クランプ部6に、クランプ部6に取付けることのできる最小の外径D4のパイプ12Bを取付けた状態を示す図である。クランプ部6に取付けるパイプ12Bの外径D4は、クランプ部5に取付ける外径D3のパイプ12Aより小さい。クランプ部5のU字形状の空間に上方からパイプ12Aを挿入していくと、第1弾性保持片18A、18Bが撓んでいく。
最小の外径D3のパイプ12Aの場合は、第2弾性保持片22A、22Bが撓まない状態での第2弾性保持片22A、22Bの先端の間の距離22Wにほぼ等しく、第2弾性保持片22A、22Bはパイプ12Aに押されて撓むことはない。
外径D3のパイプ12Aを取付けたときは、第2弾性保持片22A、22Bの先端部が、パイプ12Aの上下方向の中央部、即ち横方向の幅が最大の位置でパイプ12Aに接触するようになっている。パイプ12Aは、横方向に移動しにくい状態で保持される。
【0037】
次に、クランプ部5に、最大の外径D1と最小の外径D3の間の外径のパイプを取付けた場合について説明する。パイプ(外径D1〜D3)を押し込んでいくと、第2弾性保持片22A、22Bが下方へ押されていく。パイプの径が大きくなると、第2弾性保持片22A、22Bの撓みは大きくなる。第2弾性保持片22A、22Bの先端部は、凸部23A、23Bに当接する位置までは撓まない。
【0038】
パイプ(外径D1〜D3)は、第3弾性保持片19A、19Bを下方へ押す。第3弾性保持片19A、19Bの先端部は、底部15には当接しない。第3弾性保持片19A、19Bは、パイプ(外径D1〜D3)を上方の第1弾性保持片18A、18Bに向かって押しつける。
パイプ(外径D1〜D3)を挿入した状態では、第1弾性保持片18A、18Bの先端部は、互いに近づき、パイプ(外径D1〜D3)の上側に当接する。こうして、パイプ(外径D1〜D3)はクランプ部5から抜け落ちにくくなる。
このように、最大の外径D1と最小の外径D3の間の外径のパイプを取付けたときは、パイプの径に応じて、第2弾性保持片22A、22B、第3弾性保持片19A、19Bの撓む量が変わってパイプを保持する。
【0039】
クランプ部6には、クランプ部5より小径の外径D4のパイプ12Bを取付ける。クランプ部6には、凸部23A、23Bは設けられていない。第2弾性保持片22A、22Bは、第3弾性保持片19A、19Bの基部に当接しないで止まるようになっている。その他の点は、クランプ部5と同様なので、説明を省略する。
【0040】
パイプクランプ1のクランプ部5及びクランプ部6に最小の外径D3のパイプ12A、12Bを取付けた場合は、パイプ12Aは、第1弾性保持片18A、18Bの先端部と、第2弾性保持片22A、22Bの先端部と、第3弾性保持片19A、19Bの先端部とで保持される。保持する箇所が多いので、パイプ12A、12Bは安定して保持される。
【0041】
(比較例)
次に、比較例として、本発明の実施形態による第2弾性保持片22A、22Bがなく、その他の構成は同じパイプクランプ3について、大径のパイプ11A、11Bと小径のパイプ12A、12Bを取付ける場合について説明する。
図8は、比較例のパイプクランプ3の上面図、図9は側面図である。比較例の第1弾性保持片18A、18Bと、第3弾性保持片19A、19Bとは、上述した本発明の実施形態と同じ形状と長さである。比較例のパイプクランプ3には、第2弾性保持片22A、22Bは形成されていない。比較例の凸部24A、24Bは、本発明の実施形態のパイプクランプ1の凸部23A、23Bと比較して、高さが高くなっている。その他の点は、本発明による実施形態のパイプクランプ1と同様なので、説明を省略する。
【0042】
図10、11を参照して、上記のような構成の比較例のパイプクランプ3のクランプ部5に大径のパイプを取付けた状態と、小径のパイプを取付けた状態について説明する。
図10は、比較例のパイプクランプ3のクランプ部5に、本発明の実施形態で上述した最大の外径D1のパイプ11Aを取付けた状態を示す図である。クランプ部5のU字形状の空間に上方からパイプ11Aを挿入していくと、第1弾性保持片18A、18Bが開いていく。パイプ11Aを押し込んでいくと、パイプ11Aは凸部24A、24Bの間に入る。凸部24A、24Bの間の間隔D24は、パイプ11Aの外径D1とほぼ等しく成形されている。パイプ11Aは、第3弾性保持片19A、19Bを下方へ押す。第3弾性保持片19A、19Bの先端部は、底部15に当接して止まる。このとき、第1弾性保持片18A、18Bの先端部は互いに近づき、パイプ11Aの上側に当接する。こうして、パイプ11Aはクランプ部5から抜け落ちにくくなる。
【0043】
クランプ部6には、クランプ部5に取付ける外径D1のパイプ11Aよりより小径の外径D2のパイプ11Bを取付ける。比較例では、クランプ部6にも、凸部24A、24Bが設けられている。クランプ部6においても、パイプ11Bは、凸部24A、24Bの間に入って、保持される。凸部24A、24Bの間の間隔は、パイプ11Aの外径D2とほぼ等しく成形されている。
【0044】
図11は、比較例のパイプクランプ3のクランプ部5に、本発明の実施形態で上述した最小の外径D3のパイプ12Aを取付けた状態を示す図である。クランプ部6に取付けるパイプ12Bは、クランプ部5により取付けるパイプ12Aより小径である。クランプ部5のU字形状の空間に上方からパイプ12Aを挿入していくと、第1弾性保持片18A、18Bが開いていく。パイプ12Aの外径D3は凸部24A、24B間の間隔より小さいので、パイプ12Aは、凸部24A、24Bには当接しない。
【0045】
パイプ12Aは、第3弾性保持片19A、19Bを下方へ押す。第3弾性保持片19A、19Bの先端部は、底部15には当接しない。第3弾性保持片19A、19Bは、パイプ12Aを上方の第1弾性保持片18A、18Bに向かって押しつける。パイプ12Aを挿入した状態では、第1弾性保持片18A、18Bの先端部は、互いに近づき、パイプ12Aの上側に当接する。こうして、パイプ12Aは、第1弾性保持片18A、18Bと、第3弾性保持片19A、19Bとにより、クランプ部5に保持される。
比較例のパイプクランプ3のクランプ部5に、最大の外径D1と最小の外径D3の間の外径のパイプを取付けた場合は、パイプは、凸部24A、24Bとの間に隙間があき、凸部24A、24Bには当接しない。
【0046】
クランプ部6には、クランプ部5より小径の外径D4のパイプ12Bを取付ける。クランプ部6にパイプ12Bを取付けた場合も、クランプ部5にパイプ12Aを取付けた場合と同様なので、説明を省略する。
【0047】
次に、図11のクランプ部5、6に小径のパイプ12Aを取付けた状態から、図12に示すように、パイプ12Aが位置ずれを起こした場合について説明する。凸部24A、24B間の間隔D1’はパイプ12Aの外径D3より大きいので、パイプ12Aは、横方向に位置ずれが置きやすい。パイプ12Aは、凸部24A又は24Bに当接するまで、位置ずれが起きる場合がある。パイプ12Aが凸部24Aに当接した状態では、第1弾性保持片18Aはパイプ12Aの外周に当接しているが、第1弾性保持片18Bはパイプ12Aの外周から離れている。そのため、パイプ12Aは上下に動き易く、不安定である。パイプ12Bについても同様である。
【0048】
比較例の図12の位置ずれが生じた状態で小径のパイプ12Aに抜け力が加わった場合の、小径のパイプ12Aの動きを図13に示す。第1弾性保持片18Aはパイプ12Aに当接しているが、第1弾性保持片18Bはパイプ12Aに当接していない。そのため、パイプ12Aは上方へ移動しやすく、小径のパイプ12Aが外れる恐れがある。パイプ12Bについても同様である。
【0049】
比較例に示すように、本発明の実施形態による第2弾性保持片22A、22Bがないと、大径のパイプ11A、11Bは安定して取り付けることができるが、小径のパイプ12A、12Bは安定して取り付けることができず、位置ずれを起こし外れやすくなる。
最大の外径D1と最小の外径D3の間の外径のパイプを取付けた場合も、同様である。
【0050】
本発明の実施形態によれば、大径のパイプ11A、11Bを取付けた場合は、第2弾性保持片22A、22Bが湾曲して、先端部がクランプ部側壁14A、14Bに設けられた凸部23A、23B等に当接し、パイプの横方向のずれを防止することができる。
また、小径のパイプ12A、12Bを取付けた場合は、第2弾性保持片22A、22Bは、あまり湾曲せず、先端部でパイプを両側から保持し、パイプの横方向のずれを防止することができる。
本発明の実施形態によれば、1つのクランプで径の異なるパイプに使用し、パイプを安定して保持することができる。また、第1〜第3弾性保持片の形状は、簡単で容易に成形することができ、金型構造も単純にすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 パイプクランプ
2 本体部
3 パイプクランプ
4 スタッド
5、6 クランプ部
7 基部
8 ボデーパネル(被取付部材)
9 固定部
10 係止爪
11A、11B 大径パイプ
12A、12B 小径パイプ
14A、14B クランプ部側壁
15 底部
18A、18B 第1弾性保持片
19A、19B 第3弾性保持片
22A、22B 第2弾性保持片
23A、23B 凸部
24A、24B 凸部
31 バネ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材を保持するクランプ部と、被取付部材へ固定する本体部とを備え、長尺部材が前記クランプ部に保持され、前記本体部が被取付部材に固定されることにより、長尺部材が被取付部材に取付けられる構成のパイプクランプであって、
前記クランプ部は、長尺部材を収容して保持する、上部が開放したU字形状の空間を形成する一対の側壁と底部とを含み、
前記クランプ部は、前記一対の側壁の上部から前記底部に向かって斜めに延びる第1弾性保持片を有し、前記第1弾性保持片の先端部は、当該クランプ部に保持された長尺部材の上部側の表面に当接して前記長尺部材が抜け落ちないように保持し、
前記クランプ部は、前記一対の側壁の中央部から、前記クランプ部の下方に向かって斜めに延びる第2弾性保持片を有し、前記第2弾性保持片の先端部は、当該クランプ部に保持された長尺部材の横方向の表面に当接して、前記長尺部材が横方向に移動しないように保持し、
前記クランプ部は、前記一対の側壁の下部から前記クランプ部の下方に向かって斜めに延びる第3弾性保持片を有し、前記第3弾性保持片の先端部は、前記クランプ部に保持された長尺部材の底部側の表面に当接し、前記長尺部材を押し上げるように保持する、ことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のパイプクランプであって、前記クランプ部の前記一対の側壁には、第2弾性保持片が撓んだとき、その先端部が当接する凸部が形成されていることを特徴とするパイプクランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパイプクランプであって、前記第2弾性保持片の前記壁部から前記先端部までの長さは、前記第1弾性保持片の長さより短く、前記第3弾性保持片の長さより短いことを特徴とするパイプクランプ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のパイプクランプであって、前記第2弾性保持片の先端部は下方に曲がっていることを特徴とするパイプクランプ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のパイプクランプであって、前記第3弾性保持片の先端部は上方に曲がっていることを特徴とするパイプクランプ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のパイプクランプであって、大径の長尺部材を保持する場合は、前記第2弾性保持片のそれぞれは、前記側壁に向かって下方へ撓み、前記第2弾性保持片のそれぞれの先端部は、前記側壁上に当接し、前記クランプ部に保持された長尺部材を反対側の側壁に向かって弾性的に押し付けて前記長尺部材を横方向に移動しないように保持し、
前記第3弾性保持片のそれぞれの先端部は、前記底部に当接して、前記クランプ部に保持された長尺部材の下部側の表面を上方に弾性的に押し上げて保持することを特徴とするパイプクランプ。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のパイプクランプであって、小径の長尺部材を保持する場合は、前記第2弾性保持片のそれぞれの先端部は、前記側壁上に当接せず、前記クランプ部に保持された長尺部材を反対側の側壁に向かって弾性的に押し付けて前記長尺部材を前記側壁から離れた状態に保持し、
前記第3弾性保持片のそれぞれの先端部は、前記底部に当接せず、前記クランプ部に保持された長尺部材の下部側の表面を上方に弾性的に押し上げて前記長尺部材を前記底部から浮いた状態に保持することを特徴とするパイプクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−141031(P2012−141031A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−469(P2011−469)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】