説明

パイプ接合用加熱コイル

【課題】冷却液の液漏れ確認作業を接合作業毎に行う必要がないパイプ接合用加熱コイルを提供する。
【解決手段】円弧状の湾曲部12の一端部にリード部13を接続して分割型コイル11を一組備える。上流路14及び下流路15を互いにコイル幅方向に並んでリード部13及び湾曲部14の形状に沿って各分割型コイル11に設け、折り返し流路16を湾曲部12の先端部側に設ける。パイプ部材を突き合わせた状態でその突き合わせ端部外側を各湾曲部12で取り巻くように配置し、各湾曲部12の先端部12X同士を接続する。各リード部13の間で各湾曲部12を経由して通電し、かつ、各分割型コイル11において、リード部13の冷却水導入口から流入した冷却液を、リード部13及び湾曲部12の上流路14を通って折り返し流路16で折り返し湾曲部12及びリード部13の下流路に流し、リード部13の冷却液排出口から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ部材同士を突き合わせてろう付けする際に用いられるパイプ接合用加熱コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ部材同士を接合する技術として、パイプ部材同士の間にろう材を挟んでろう材を毛細管現象により侵入させて溶着する手法がある。具体的には、パイプ同士を接合したり又はパイプとエルボ、チーズなどの継ぎ手部材とを接合したりする際には、先ずろうを挟んでパイプ部材同士を突き合わせ、次にその突き合わせ端部を取り巻くようにコイルを配置し、その後コイルに高周波などの交番電流を流して誘導加熱してろうを熔かすことにより、互いに接合させている。
【0003】
その際用いられるコイルとして各種の加熱コイルが開発されている。特許文献1にはそのような分割型誘導加熱コイルが開示されている。具体的な構造は次の通りである。可動電極の対がヒンジピンによって支持され、可動電極のそれぞれには半円形状に曲げられた加熱コイルの一端部が取り付けられ、加熱コイルの先端部にはブロック状の接点が取り付けられている。対の加熱コイルは、可動電極のヒンジピンでスイングすることで周状のリングを形成可能とする。各加熱コイルは、銅パイプを半円形状に曲げてなり、ブロック状の接点の中心部分には冷却水の通る穴が開けられ、一方の銅パイプコイルを通った冷却水を他方の銅パイプコイルに流す。よって、対の加熱コイルを周状のリング状態にすることにより、一方の可動電極から一方の銅パイプコイル、ブロック状の接点を経て他方の銅パイプコイル、さらに他方の可動電極を経て高周波電流が流れると共に、一方の可動電極から一方の銅パイプコイル、ブロック状の接点を経て他方の銅パイプコイル、他方の可動電極、一方の銅パイプコイルの順に経て他方の可動電極まで冷却水が流れる。
【0004】
また、パイプ部材をろう付けにより接合する際には、誘導加熱によるパイプ部材の加熱によりパイプ部材が酸化しないように、パイプ部材の突き合わせ端部を加熱コイルと共に、カバーで取り囲み、カバー内に不活性ガスを流している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3032185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような分割型加熱コイルでは、パイプ部材同士を接合する作業毎に、一方の銅パイプコイルをヒンジによりスイングする必要がある。よって、接合作業毎に、一方の銅パイプコイルから他方の銅パイプコイルへブロック状の接点を経由して冷却液を液漏れなく流すことができるよう注意を払う必要がある。
【0007】
また、加熱コイルに電流を流して誘導加熱する際、不活性ガスを垂れ流しているので、不活性ガスの資源を無駄に消費し、コスト高となる。
【0008】
そこで、本発明においては、上記課題に鑑み、このような分割型の加熱コイルを用いてパイプ接合する際、冷却液の液漏れ確認作業を接合作業毎に行う必要がない、パイプ接合用加熱コイルを提供することを第1の目的とする。さらに、ろう付けの際使用する不活性ガスの消費量を少なくすることができるパイプ接合用加熱コイルを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するために、本発明のパイプ接合用加熱コイルは、円弧状の湾曲部の一端部にリード部を接続してなる分割型コイルを一組備えており、上流路及び下流路が互いにコイル幅方向に並んでリード部及び湾曲部の形状に沿って各分割型コイルに設けられ、折り返し流路が湾曲部の先端部側に設けられており、パイプ部材同士を圧接する状態において接合するパイプ部材の端部の外側に上記各湾曲部が配置されて各湾曲部の先端部同士が接続されることにより、各リード部の間で各湾曲部を経由して通電し、かつ、分割型コイルのそれぞれにおいて、リード部の冷却水導入口から流入した冷却液が、リード部及び湾曲部の上流路を通って折り返し流路で折り返しリード部及び湾曲部の下流路に流れ、リード部の冷却液排出口から排出されることを特徴とする。
【0010】
上記第2の目的を達成するために、上記構成において、ガス導入路を有する導入部が湾曲部の外周面に設けられ、ガス導入路に連通するガス流路が湾曲部に円弧状に沿って内部に設けられ、複数のガス噴射路が、ガス流路から湾曲部の内周面に向けて設けられ、各ガス噴射路の先端が、ガス噴出口として湾曲部の内周面に達している。
さらに、湾曲部のパイプ幅方向の両側面には、湾曲部の内周面よりも径方向内側まで張り出した絶縁性の遮蔽板が設けられており、湾曲部の内周面とパイプ部材の接合する端部と遮蔽板の対とでガス雰囲気となる領域が形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分割型コイル毎に内部に上流路、折り返し流路及び下流路が設けられており、分割型コイルの組によりワンターンコイルを形成しても、流路が分割型コイル毎に設けられているため、接合作業毎に、冷却水の流路を分離したり接続したりする必要がない。よって、接合作業毎に液漏れ確認を行う必要がない。
【0012】
また、ガス噴出口がパイプ部材同士の突き合わせ端部などの接合する端部に向けて設けられているパイプ接合用加熱コイルにあっては、パイプ部材同士をろう付けする際、ガス噴出口から、還元性を有するガス又は不活性ガスを噴射することで、加熱された突き合わせ端部などの酸化を防止することができる。そのため、従来のように、パイプ部材同士の突き合わせ端部を囲むように、ガス閉じ込め用のシート等を被せる必要がなく、接合業を効率よく行うことができる。
【0013】
また、両側面に遮蔽板を装着したパイプ接合用加熱コイルにあっては、ガス雰囲気の状態を効率よく作り出すことができ、ガスの使用量も低減できる。また、少なくとも一方のパイプ部材が直管ではなく、チーズのような湾曲した部材であっても、効率よくガス雰囲気の状態を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るパイプ接合用加熱コイルを含む加熱装置の側面図である。
【図2】図1に示す加熱装置の平面図である。
【図3】図1に示すパイプ接合用加熱コイルを開いた状態を模式的に示す図である。
【図4】図1に示すパイプ接合用加熱コイルを構成する一方の分割型コイルの断面を示す図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図7】(A),(B)はそれぞれ図4のC-C線、D−D線に沿う断面図である。
【図8】遮蔽板による効果を説明するために模式的に示す断面図である。
【図9】(A)は下側分割型コイルを支持する回動電極部に形成されている導入路及び導出路を模式的に示す断面図、(B)は上側分割型コイルを支持する回動電極部に形成されている導入路及び導出路を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔パイプ接合用加熱コイルを備えた加熱装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るパイプ接合用加熱コイルを含む加熱装置の側面図、図2は図1に示す加熱装置の平面図、図3はパイプ接合用加熱コイルを開いた状態を模式的に示す図である。
【0016】
本発明の実施形態に係るパイプ接合用加熱コイル(以下、「加熱コイル」と称する。)10は、図1に示されているように加熱装置1に組み込まれて構築される。加熱装置1は、電源側に接続される電源側リード部30の対と、各電源側リード部30に回動可能に取り付けられる回動電極部40L,40Rと、回動電極部40L,40Rの対に取り付けられる加熱コイル10と、を含んで構成されている。
【0017】
この加熱装置1は、図示した例では、円筒形状のパイプ部材5同士の間にろう材等のインサート材を挟み、パイプ部材5の接合する端部同士を圧接し、その接合する端部をインサート材と共に加熱するものである。例えば、パイプ部材5同士を突き合わせたり一方のパイプ部材5を他方のパイプ部材5に差し込んだりしてパイプ部材の端部を圧接する。そのため、加熱コイル10は、円弧状の湾曲部12の一端部にリード部13を接続してなる分割型コイル11の組で構成されている。図示した形態にあっては、各湾曲部12が半円弧状を有しているので、分割型コイル11は半割り型コイルと呼ぶことが出来、この場合には対で構成される。
【0018】
〔加熱コイルの構成〕
図4は分割型コイル11の断面を示す図、図5は図4のA−A線に沿う断面図、図6は図4のB−B線に沿う断面図である。図7(A),(B)はそれぞれ図4のC-C線、D−D線に沿う断面図である。なお、図5及び図7(A),(B)では、図1に示すように、上側分割型コイル11Aのリード部13と下側分割型コイル11Bのリード部13とが互いに対向し合った状態で一方の分割型コイル11として上側分割型コイル11Aを実線で示し、他方の分割型コイル11として下側分割型コイル11Bを一点破線で示している。
【0019】
分割型コイル11は、例えば半円弧状の湾曲部12と、この湾曲部12の一端部に接続された例えば直線状のリード部13と、を含んで構成されている。この分割型コイル11は略同一形状及び構造で対をなして、湾曲部12同士が閉じてその先端部12X同士が締結具6で連結されることにより、湾曲部12の組でワンターンをなす。湾曲部12に高周波電流などの交番電流が流れることで、その内側に配置されている突き合わせ端部5A近傍が誘導加熱される。そのため、湾曲部12は誘導加熱部と呼ばれてもよい。
【0020】
本発明の実施形態にあっては、上流路14と下流路15とが分割型コイル11の形状に沿って設けられており、上流路14と下流路15とが互いにコイル幅方向に並んで設けられている。ここで、コイル幅とは、接合するパイプ部材5の軸方向の長さをいう。さらに、各湾曲部12の先端部12X側には分割型コイル11内部に折り返し流路16が設けられ、上流路14と下流路15とが折り返し流路16で連通している。先端部12X側とは、上流路14と下流路15とが円弧状に延びている端部を意味する。なお、図4中において、符号13Xは回動電極部40に分割型コイル11を取り付けるためのボルト孔、符号13D,13Eは上流路14、下流路15につながる流路接続用孔、符号12Yは締結具6を挿入するための締結用孔である。
【0021】
具体的には、図5及び図6に示すように、湾曲部12には円弧状の中空部12A,12Bが分離壁12Cで隔てられてコイル幅方向に並べて設けられ、図7(A)乃至(B)に示すようにリード部13には、直線状の中空部13A,13Bが分離壁13Cで隔てられコイル幅方向に並べて設けられている。湾曲部12とリード部13との接続部において、中空部12Aと中空部13Aとが連通して上流路14となり、中空部12Bと中空部13Bとが連通して下流路15となっている。湾曲部12の先端部12Xでは、分離壁12Cに一又は複数の孔12Dが設けられ、中空部12Aと中空部12Bとは湾曲部12内部で連通しており、分離壁13Cの孔12Dにより折り返し流路16が形成されている。
【0022】
この構成により、各分割型コイル11で、リード部13の冷却液導入口11X、即ち上流路14の入口側から注入された冷却液が上流路14を流れ、折り返し流路16を経由して下流路15に流れ、一つの分割型コイル11内で全体として一つの流路が形成されている。つまり、加熱コイル10は分割型コイル11の組で構成されるところ、各分割型コイル11で一つの流路が入口から出口まで備わっている。
【0023】
前述したように、分割型コイル11を構成する上側分割型コイル11Aと下側分割型コイル11Bとは、加熱コイル1を閉じた状態では、図1に示すように、上側分割型コイル11Aのリード部13と下側分割型コイル11Bのリード部13とは互いに対向しあう。図5及び図7(A)(B)に示すように、上側分割型コイル11Aのリード部13と下側分割型コイル11Bのリード部13との対向面のうち一方、図示では上側分割型コイル11Aのリード部13の対向面13Gは左右幅両端よりも中央が突出しており、対向面の他方、図示では下側分割型コイル11Bのリード部13の対向面13Hは左右幅両端よりも中央が窪んでおり、対向面13G,13Hが互いに重なり合うことが好ましい。リード部13の対向面13G,13Hは、図4に示すように湾曲部12の内周面までリード部の軸方向に延出していることが好ましい。これは、加熱コイル10に交番電流を流してパイプ部材の突き合わせ端部を加熱する際、パイプ部材の突き合わせ端部において交番磁界がパイプ部材の周方向に途切れることなく均一に生じ、その結果で誘導加熱がムラなく生じるようにするためである。
【0024】
さらに、図4乃至図7に示す形態ではガス流路17が湾曲部12に設けられている。即ち、湾曲部12には、上流路14及び下流路15の各中空部12A,12Bの外側に円弧状、図示の場合には半円弧状のガス流路用中空部12Eが設けられている。そして、湾曲部12の外周面にはガス配管接続部18が取り付けられており、ガス配管接続部18の外側から内側に貫通してなるガス導入路18Aがガス流路用中空部12Eに連通している。一方、湾曲部12には、ガス流路用中空部12Eから湾曲部12の内周面、即ち被加熱部材であるパイプ部材5と対向する面に達するようガス噴射路18Bが設けられている。ガス噴射路18Bは、前述の分離壁12Cに、湾曲部12における半円弧の仮想中心点の回りに間隔をおいて細孔12Fを複数穿設してなる。細孔12Fが等間隔に形成されている場合にはガスが突き合わせ端部5Aに均等に噴射するため、好適である。
【0025】
このように、図4乃至図7に示す形態にあっては、湾曲部12には、冷却用の流路とは別に、ガス導入路18A、ガス流路17、ガス噴射路18Bが連通して形成されている。よって、ガス配管がガス配管接続部18に取り付けられ、窒素ガス、希ガスその他の不活性ガスや還元ガスをガス導入路18Aに導入する。すると、ガス流路17を経由して複数の噴射路18Bから不活性ガスや還元ガスが噴射される。
【0026】
このような好ましい形態では、先ず、例えばペースト状、ペースト状若しくはリング状のろうなどのインサート材を挟んでパイプ部材5同士を突き合わせ又は差し込み、湾曲部12を互いに逆向きに回動し、各先端部12X同士をボルト等の締結具6で接続する。このようにして、パイプ部材5の突き合わせ端部5Aの回りに加熱コイル10を配置する。次に、加熱コイル10に高周波電流の交番電流を流し、突き合わせ端部5Aを誘導加熱する。その際、突き合わせ端部5A近傍に不活性ガスや還元性ガスが直に噴射される。すると、誘導加熱される領域が酸素に触れ難くなり、突き合わせ端部5Aが酸化され難くなる。従って、突き合わせ端部5Aの酸化によるスケールなどを防止することができる。
【0027】
さらに、図4乃至図7に示す形態にあっては、分割型コイル11において湾曲部12のコイル幅方向の両側に半円弧状の絶縁性の遮蔽板19が設けられている。図8は、遮蔽板19による効果を説明するために模式的に示す断面図である。
【0028】
この形態にあっては、インサート材(図示せず)を挟んでパイプ部材5を突き合わせた後に、突き合わせ端部5Aの回りを湾曲部12で囲むように加熱コイル10を配置したときの状態を模式的に示している。なお、Lはパイプ部材5の軸であり、それに沿う矢印は、パイプ部材5の中空に注入される還元性ガス、不活性ガスの流れを示している。図8に示すように、半円弧状の湾曲部12においてコイル幅方向の両側面には遮蔽板19が設けられている。遮蔽板19は、湾曲部12がパイプ部材5と不意に接触した際を考慮してセラミック、ガラス繊維その他の絶縁材で形成されている。遮蔽板19は、湾曲部12の内周面よりも径方向内側まで張り出すよう鍔状になっている。よって、湾曲部12の内周面とパイプ部材5の突き合わせ端部5Aと遮蔽板19の対とで、ガス雰囲気となり得る領域20、つまりガス溜まりが形成される。
【0029】
ガス導入路18Aから不活性ガス、還元性ガスの何れかのガスを導入すると、矢印で示すようにガス流路17を経て噴射口18Cからガスが噴射される。その際、噴射されたガスはそのガス雰囲気の領域20に留まることになり、その領域20から供給されるガス量だけ突き合わせ端部5Aと遮蔽板19との間のすきま20Aから排出されるに過ぎない。従って、不活性ガスや還元性ガスを多量に絶えず供給する必要がなく、経済性が向上し、資源を浪費しなくて済む。
【0030】
湾曲部12にガス流路17等を設け、かつ遮蔽板19を両側に装着している形態にあっては、加熱コイル10を所定の位置に配置した後に、突き合わせ端部5A及び加熱コイル10の回りに不活性ガスの領域を形成するため、従来のように比較的大きな立体的形状を有する囲み部材を配置する必要がない。この配置作業は一回の接合作業毎に行う必要があるため、湾曲部12にガス流路17等を設けかつ遮蔽板19をコイル幅方向の両側面に装着した効果は大きい。
【0031】
図2などに示すように、パイプ部材5が直管の場合のみならず、接合する一方又は双方がエルボやチーズであってもよく、特にパイプ部材5が突き合わせ端部5Aで湾曲しているようなエルボである場合には、エルボの外形に沿って還元性ガスや不活性ガスが領域20から発散するのを防止することができ、効果的である。
【0032】
〔加熱装置のその他の構成〕
次に、このような加熱コイル10を回動電極部40L,40Rに組み付けて構成される加熱装置1について図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0033】
〔電源側リード部の構成〕
電源側の配線等に接続される電源側リード部30は、略矩形状の絶縁板31の両側に略同形状の導電板32を取り付けてボルト、ナットなどの取付部材(図示せず)で一体化される。この電源側リード部30は変圧器とコンデンサを収容したボックス(図示せず)に固定されており、ボックスの下部にはXYZ方向に可動できる機構が組付けられている。この機構によりパイプ部材と加熱コイルの芯合わせや位置の調整が可能となっている。電源側リード部30の先端部には、回動電極部40L,40Rを回動可能に支持するための軸部33が両側に張り出して設けられている。電源側リード部30の各側面には、軸部33の回りでそれぞれ異なる位置に規制部材34が張り出して設けられ、この規制部材34が回動電極部40L,40Rの回動締め付け位置を規制する。各導電板32には、軸部33及び規制部材34の周りでは導電板32の枠に、その他の部位では絶縁板31と逆側の側面において長手方向に沿って、冷却用パイプ35が配設されている。電源側リード部30を経由して回動電極部40L,40Rへ通電しても、冷却用パイプ35に水を流すことにより電源側リード部30の昇温が抑制される。
【0034】
電源側リード部30における各軸部33に対し、回動電極部40L,40Rが取り付けられている。左側の回動電極部40Lは上側分割型コイル11Aを支持し、右側の回動電極部40Rは下側分割型コイル11Bを支持する。
【0035】
〔回動電極部の構成〕
回動電極部40Rは、右側の導電板32Rの右側で接触するよう立設する接続プレート41と、右側で接続プレート41に固定され左側で下側分割型コイル11Bを支持する支持部材42とを含んで構成されている。支持部材42の断面が略クランク状であり、右壁部42Aの下端部と左壁部(図示省略)の上端部とが中間部42Cで左右方向に離隔して構成されており、右壁部42Aが右側の導電板32Rに固定され、左壁部に下側分割型コイル11Bが固定されている。
【0036】
回動電極部40Lは、左側の導電板32Lの左側で接触するように立設する接続プレート45と、右側で接続プレート45に固定され左側で上側分割型コイル11Aを支持する支持部材46とを含んで構成されている。支持部材46は断面が略コ字状を呈しており、図2に示すように右壁部46Aの下端部と左壁部46Bの下端部とが中間部46Cで左右方向に離隔して構成されており、右壁部46Aが接続プレート45に固定され、左壁部46Bに上側分割型コイル11Aが固定されている。
【0037】
回動電極部40L,40Rが電源側リード部30に組み付けられている状態において、右側の回動電極部40Rと左側の回動電極部40Lとは非接触となるよう、右壁部42Aと右壁部46Aとは電源側リード部30の厚み程度離隔されており、左壁部及び中間部42Cと左壁部46B及び中間部46Cとは何れも上下左右に離隔して配置されている。
【0038】
各回動電極部40L,40Rの接続プレート41,46には貫通穴が設けられており、貫通穴に電源側リード部30の軸部33が挿入され、軸部33と接続プレート41,45とがそれぞれナット状の締付部材47により組み付けられている。各締付部材47にはレバー47Aがそれぞれ取り付けられており、回動電極部40L,40Rをそれぞれ回動自在となっている。
【0039】
本発明の実施形態では、回動電極部40L,40Rには上側分割型コイル11A,下側分割型コイル11Bに冷却液を導入するための導入路51,61と、上側分割型コイル11A,下側分割型コイル11Bからの冷却液を導出するための導出路56,66とが形成されている。図9(A)は下側分割型コイル11Bを支持する回動電極部40Rに形成されている導入路61及び導出路66を模式的に示す断面図、(B)は上側分割型コイル11Aを支持する回動電極部40Lに形成されている導入路及び導出路を模式的に示す断面図である。
【0040】
回動電極部40Rのうち、下側分割型コイル11Bに冷却液の導入及び導出を行う具体的な構成について説明する。
【0041】
回動電極部40Rの導入路61は、図9(A)に示すように各中空部62A乃至62Dが連通して形成されている。接続プレート41に奥行きに沿って中空部62Aが形成されており、中空部62Aの奥側端で中空部62Bとして右側に延びて接続プレート41の右側面に達して開口している。この開口には冷却液導入用配管70Aが接続されている。一方、中空部62Aの手前側端が中空部62Cとして下方に延び、その下端で中空部62Dとして左側に延びて支持部材42の左端に達して開口している。
【0042】
回動電極部40Rの導出路62は、図9(A)に示すように各中空部67A,67Bが連通して形成されている。接続プレート41及び支持部材42には左右方向に貫通した中空部67A,67Bが連通して設けられている。接続プレート41の右側面に中空部67Aに連通するように冷却液排出用配管70Bが接続されている。
【0043】
回動電極部40Rはこのような構造を有している。従って、支持部材42における中空部62Dの左端開口が下側分割型コイル11Bの流入口である冷却液導入口11Xに連通し、かつ支持部材42の中空部67Bが下側分割型コイル11Bの流出口である冷却液排出口11Yに連通するように、下側分割型コイル11Bが回動電極部40Rに取り付けられている。
【0044】
なお、接続プレート41に形成される中空部62Aと中空部67Aとはねじれの位置で交差しており、支持部材41に形成される中空部62Dと中空部67Bとは何れも左右に延びているが両者は手前と奥側とで分離されている。よって、下側分割型コイル11Bを回動電極部40Rに取り付けると、通電のみならず、導入路61、上流路14、折り返し流路16、下流部15、導出路66とが連通し、下側分割型コイル11Bに冷却液を流し排出することができる。
【0045】
回動電極部40Lのうち、上側分割型コイル11Aに冷却液の導入及び導出を行う具体的な構成について説明する。
【0046】
回動電極部40Lの導入路51は、図9(B)に示すように各中空部52A乃至52Dが連通して形成されている。接続プレート45に奥行きに沿って中空部52Aが形成されており、中空部52Aの奥側端で中空部52Bとして左側に延びて接続プレート45の左側面に達して開口している。この開口には冷却液導入用配管71Aが接続されている。一方、中空部52Aの手前側端が中空部52Cとして下方に延び、その下端で中空部52Dとして左側に延びて支持部材46の左端に達して開口している。この開口に冷却液導入用配管71Aが接続されている。
【0047】
回動電極部40Lの導出路52は、図9(B)に示すように各中空部57B,57C(一部図示省略)が連通して形成されている。支持部材42には左右方向に貫通した中空部57Bが形成され、中空部57Bの右端が接続プレート45の上に延びる中空部とつながって、上述の中空部52Aよりも下側で奥行き方向に延びる中空部につながり、その中空部の奥端で中空部57Cの左側に延びて開口している。接続プレート45の左側面に中空部57Cに連通するように冷却液排出用配管71Bが接続されている。
【0048】
回動電極部40Lはこのような構造を有している。従って、支持部材46における中空部52Dの左端開口が上側分割型コイル11Aの流入口である冷却液導入口11Xに連通し、かつ支持部材46の中空部57Bが上側分割型コイル11Aの流出口である冷却液排出口11Yに連通するように、上側分割型コイル11Aが回動電極部40Lに取り付けられている。
【0049】
よって、上側分割型コイル11Aを回動電極部40Lに取り付けると、通電のみならず、導入路51、上流路14、折り返し流路16、下流部15、導出路66とが連通し、上側分割型コイル11Aに冷却液を流し排出することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で変更したものも含まれる。例えば、図示した形態では、加熱コイルは上下に分割されたコイルであるが左右方向でも良く、また、必ずしも均等に分割される必要はなく、一方の湾曲部が他方の湾曲部よりも円弧が長くてもよい。パイプ部材の端面が軸方向に垂直に切断されている場合には、パイプ部材同士が付き合わされ、その突き合わせ端部の外側に各湾曲部が配置される。しかし、一方のパイプ部材の端部がオス型の差込み部で例えば円錐台形状を有しており、他方のパイプ部材の端部がメス型の被差込み部で例えば円錐台形状に切り欠かれているときには、オス型の差込み部がメス型の被差込み部に差し込まれ、差込み部と被差込み部の外周に湾曲部が配置される。このように、接合するパイプ部材の端部が軸に垂直な面のみならず、例えば開先形状等の接合に適した形状を有していてもよく、これらの場合には、例えば一方のパイプ部材の端部に他のパイプ部材の端部に差し込んだ状態のようにパイプ部材が接合する状態において、接合する端部の外側に各湾曲部が配置されることになる。
【符号の説明】
【0051】
1:加熱装置
5:パイプ部材
5A:突き合わせ端部
6:締結具
10:パイプ接合用加熱コイル(加熱コイル)
11:分割型コイル
11A:上側分割型コイル
11B:下側分割型コイル
11X:冷却液導入口
11Y:冷却液排出口
12:湾曲部
12A,12B:中空部
12C:分離壁
12D:孔
12E:ガス流路用中空部
12F:細孔
12X:湾曲部の先端部
12Y:締結用孔
13:リード部
13A,13B:中空部
13C:分離壁
13D,13E:流路接続用孔
13G,13H:対向面
13X:ボルト孔
14:上流路
15:下流路
16:折り返し流路
17:ガス流路
18:ガス配管接続部
18A:ガス導入路
18B:ガス噴射路
18C:噴射口
19:遮蔽板
20:ガス雰囲気となり得る領域
20A:すきま
30:電源側リード部
31:絶縁板
32,32L,32R:導電板
33:軸部
34:規制部材
35:冷却用パイプ
40:回動電極部
40L:左側の回動電極部
40R:右側の回動電極部
41,45:接続プレート
42,46:支持部材
42A,46A:右壁部
46B:左壁部
42C,46C:中間部
47:締付部材
47A:レバー
51,61:導入路
52A,52B,52C,52D,62A,62B,62C,62D:中空部
56,66:導出路
57B,57C,67A,67B:中空部
70A,71A:冷却液導入用配管
70B,71B:冷却液排出用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の湾曲部の一端部にリード部を接続してなる分割型コイルを一組備えており、
上流路及び下流路が互いにコイル幅方向に並んで上記リード部及び上記湾曲部の形状に沿って各上記分割型コイルに設けられ、
折り返し流路が上記湾曲部の先端部側に設けられており、
パイプ部材同士を圧接する状態において接合するパイプ部材の端部の外側に上記各湾曲部が配置されて各上記湾曲部の先端部同士が接続されることにより、各上記リード部の間で各上記湾曲部を経由して通電し、かつ、上記分割型コイルのそれぞれにおいて、上記リード部の冷却水導入口から流入した冷却液が、上記リード部及び上記湾曲部の上記上流路を通って上記折り返し流路で折り返し上記リード部及び上記湾曲部の上記下流路に流れ、上記リード部の冷却液排出口から排出される、パイプ接合用加熱コイル。
【請求項2】
ガス導入路を有する導入部が前記湾曲部の外周面に設けられ、
上記ガス導入路に連通するガス流路が前記湾曲部に円弧状に沿って内部に設けられ、
複数のガス噴射路が、上記ガス流路から前記湾曲部の内周面に向けて設けられ、
各上記ガス噴射路の先端が、ガス噴出口として前記湾曲部の内周面に達している、請求項1に記載のパイプ接合用加熱コイル。
【請求項3】
前記湾曲部のパイプ幅方向の両側面には、該湾曲部の内周面よりも径方向内側まで張り出した絶縁性の遮蔽板が設けられており、
前記湾曲部の内周面と前記パイプ部材の接合する端部と上記遮蔽板の対とでガス雰囲気となる領域が形成される、請求項2に記載のパイプ接合用加熱コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−169088(P2012−169088A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27894(P2011−27894)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】