説明

パウチ容器および包装製品

【課題】内容物を、品質劣化を抑制しつつ効率的に加熱処理することができ、取り扱い性に優れたパウチ容器、および該容器に内容物が充填されてなる包装製品の提供。
【解決手段】略四角形の正背面フィルムの底縁部に底フィルムの縁部がシールされて底スタンディング部が形成され、正背面フィルムの両側端縁部同士および上端縁部同士がシールされてなり、上部に注出口が設けられているスタンディングタイプのパウチ容器であって、正背面フィルムの縦寸法が130mm〜190mmの範囲であり、正背面フィルム横寸法が70mm〜90mmの範囲であり、底スタンディング部の最大開口幅が10mm〜40mmの範囲であり、内容物を満杯まで充填した状態で、容器縦寸法の少なくとも下から2.5%〜50%の範囲における横断面形状が略楕円形状をなし、その楕円の長径寸法(X)と短径寸法(Y)との比(X/Y)が1.4〜2.0の範囲内であるパウチ容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片手で容易に取り扱うことができ、内容物の加熱処理用に好適なパウチ容器、および該容器に流動性食品等の内容物が充填されてなる包装製品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等、経口でまたは経管的に体内に摂取される製品のうち、水分を多く含み水分活性の高いものやpHが中性付近にある製品は、微生物等の繁殖に好適であるため、このような製品については、長期間保存される場合、何らかの方法で殺菌処理または滅菌処理されることが一般的である。その処理方法としては、製品の包装形態や容器への充填形態ごとに様々な方法が知られているが、容器に充填された内容物の殺菌処理または滅菌処理の方法としては、加熱によるものが広く普及している。
【0003】
このように殺菌処理または滅菌処理が行われる製品のうち、液状または流動状の内容物としては、例えば、医療用流動食や医薬品栄養剤のような栄養組成物、カレー、ミートソース、お粥等の流動性を有する食品、ココア、コーヒー、スープ等の飲料が挙げられ、これらの包装形態としては、必要に応じてパウチや缶など様々な形態および材質のものが選択される。いずれにせよ、内容物の商業的無菌が達成されるためには、製品の内容物全体が十分に加熱されることが求められるため、内容物の中心部まで加熱が行き届くために必要な雰囲気温度、加熱処理時間、昇温プログラムが設定される。
【0004】
加熱殺菌処理において、製品内容物の熱によるダメージを可能な限り避けたい場合は、製造設備、流通販売形態、用途、コスト等の制約上差し支えがなければ、耐熱性フィルムにより構成、製袋されたパウチ容器が選択されることが少なくない。パウチ容器を採用することで、例えば、缶と比較して材質の厚みが減少し、また内容物中心部から容器壁面までの距離が短くなるので殺菌効率が上昇する(レトルト食品の基礎と応用 98p、清水潮・横山理雄、幸書房)。さらに、このようなパウチ容器に口栓スパウトを設けることで、易開封性や内容物の排出性が高まる等の利便性が付与され、必要に応じて保管性を向上させるリキャップやアダプターを接続し使用できるような構造を付与することも可能である。
【0005】
また、試用時の負担を軽減するために、該加熱処理用容器を片手で容易に取り扱うことができるものとすれば、利便性が高い。
さらに、特に充填された内容物が前記栄養組成物等である場合は、内容物を注出した後の容器内を洗浄する操作が簡便であると、洗浄液の補給等も容易に行うことができ、利便性がより高まる。また、容器内が洗浄され洗浄液も補給できることにより、ほぼ内容物の全量が投与若しくは摂取可能となり、利用者に対する栄養管理をより正確に実施することができる。そして食品業界あるいは医薬品業界においては、まさにこのような加熱処理用容器の開発が望まれている。
【0006】
これに対して、従来の加熱処理用容器としては、スクリューキャップを設けたサイドガセットタイプの容器(特許文献1参照)、スタンディングパウチタイプの容器(特許文献2参照)、平パウチタイプの容器(特許文献3参照)等が開示され、用途に適した使用法が提案されている。
さらに、本出願人は、片手で容易に持つことができ、さらに側面の剛性を高くして該容器の復元性を高めた薄型のサイドガセットタイプのパウチ容器として、特許文献4に開示されたパウチ容器を発明している。
【特許文献1】特開2001−97437号公報
【特許文献2】特開2005−206221号公報
【特許文献3】特開2005−206162号公報
【特許文献4】国際公開2007/126044号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1には、特にガセット部の厚みに関する記述はされていないが、本文献中の図5のような市販ゼリー飲料に見られる厚さ3cmを超えると想定される構造の容器においては、加熱処理時に内容物の中心近傍と容器内壁近傍において品温差が生じ、効果的な加熱処理を行うことができないという問題点がある。これは特許文献2に記載のスタンディングタイプの容器においても同様であり、加熱殺菌に供された場合、サイドシール部近傍と内容物の中心近傍とで厚みが異なるために、内容物の熱伝導性が高い状態でないと中心近傍の殺菌のために長時間、高温の処理が必要である。また特許文献3に開示されているような平パウチタイプの容器においては、同体積の内容物を充填する場合に最も厚みを薄くすることができるため、効率的な加熱殺菌を行うことができると考えられるが、サイドガセットタイプの容器と比較して外寸法が大きくなり、保管スペースや取り扱い性が悪いという問題点がある。また厚みは内容物の体積のみに規定されるパラメータであるため、厚みを若干厚くし、その分コンパクトな形状とすることは難しい。
【0008】
特許文献4に記載されたパウチ容器は、サイドガセットタイプであることから、前述した特許文献1の場合と同様に、厚さ3cmを超えると想定される構造の容器においては、加熱処理時に内容物の中心近傍と容器内壁近傍において品温差が生じ、効果的な加熱処理を行うことができないという問題点がある。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、内容物を、品質劣化を抑制しつつ効率的に加熱処理することができ、取り扱い性に優れたパウチ容器、および該容器に内容物が充填されてなる包装製品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、略四角形の正背面フィルムの底縁部に底フィルムの縁部がシールされて底スタンディング部が形成され、正背面フィルムの両側端縁部同士および上端縁部同士がシールされてなり、上部に注出口が設けられているスタンディングタイプのパウチ容器であって、
正背面フィルムの縦寸法が130mm〜190mmの範囲であり、
正背面フィルム横寸法が70mm〜90mmの範囲であり、
底スタンディング部の最大開口幅が10mm〜40mmの範囲であり、
このパウチ容器に内容物を満杯まで充填した状態で、容器縦寸法の少なくとも下から2.5%〜50%の範囲における横断面形状が略楕円形状をなし、その楕円の長径寸法(X)と短径寸法(Y)との比(X/Y)が1.4〜2.0の範囲内であることを特徴とするパウチ容器を提供する。
【0011】
本発明のパウチ容器において、前記注出口が、容器上端部の幅方向中央近傍に設けられ、正背面の上部シール部が、幅方向両側から注出口へ向けて漸次シール幅が短くなるよう二重シールされたことが好ましい。
【0012】
本発明のパウチ容器において、前記注出口内部に、内容物導出時に該内容物の流動断面において少なくとも一箇所以上の切れ目を入れるかまたは複数に分断するリブが設けられたことが好ましい。
【0013】
また本発明は、前述した本発明に係るパウチ容器に、粘度500〜50000cPの範囲の流動物が充填されてなることを特徴とする包装製品を提供する。
【0014】
本発明の包装製品において、前記流動物が総合栄養組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のパウチ容器は、スタンディングタイプのパウチ容器において、
正背面フィルムの縦寸法が130mm〜190mmの範囲であり、
正背面フィルム横寸法が70mm〜90mmの範囲であり、
底スタンディング部の最大開口幅が10mm〜40mmの範囲であり、
このパウチ容器に内容物を満杯まで充填した状態で、容器縦寸法の少なくとも下から2.5%〜50%の範囲における横断面形状が略楕円形状をなし、その楕円の長径寸法(X)と短径寸法(Y)との比(X/Y)が1.4〜2.0の範囲内としたものなので、片手で容易に持つことができ、サイドガセットタイプのパウチ容器よりも手で扱い易くなり、包装製品を立てることも可能となる。また本発明のパウチ容器は、内容物を満杯まで充填した状態で横断面形状が略楕円形状をなしているので、加熱処理時に内容物の中心近傍と容器内壁近傍とに品温差が生じ難くなり、効果的な加熱処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1および図2は、本発明のパウチ容器の一実施形態を示す図であり、図1はパウチ容器1の斜視図、図2(a)は正面図、図2(b)は底面図、図2(c)は側面図である。
【0017】
本実施形態のパウチ容器1は、略四角形の正面フィルム2及び背面フィルム3のそれぞれの底縁部に底フィルム4の縁部がシールされて底スタンディング部6が形成され、これら正面フィルム2及び背面フィルム3の両側端縁部同士および上端縁部同士がシールされてなり、上部に注出口としてのスパウト8が設けられているスタンディングタイプのパウチ容器である。
【0018】
本実施形態のパウチ容器1は、片手で把持および押圧して内容物注出が容易に行えるように、次の(1)〜(4)の構成を有している。
(1)正面フィルム2及び背面フィルム3の縦寸法Aが130mm〜190mmの範囲であること。
(2)正面フィルム2及び背面フィルム3の横寸法Bが70mm〜90mmの範囲であること。
(3)底スタンディング部6の最大開口幅Cが10mm〜40mmの範囲であること。
(4)このパウチ容器1に内容物を満杯まで充填した状態で、容器縦寸法の少なくとも下から2.5%〜50%の範囲における横断面形状が略楕円形状をなし、その楕円の長径寸法(X)と短径寸法(Y)との比(X/Y)が1.4〜2.0の範囲内であること。
【0019】
本実施形態のパウチ容器1において、前記(1)〜(4)の構成を採用したことにより、満注量が100〜300mL、好ましくは120〜250mLとなり、片手で把持および押圧して内容物を注出するのに適度な大きさとなる。
正面フィルム2及び背面フィルム3の縦寸法Aが130mm未満であると、十分な内容量を確保するのが難しくなり、縦寸法Aが190mmを超えると、片手で把持および押圧するのに取り扱い難い。
正面フィルム2及び背面フィルム3の横寸法Bが70mm未満であると、十分な内容積を確保することが難しくなり、90mmを超えると、片手で把持および押圧して内容物を注出する場合に、女性や子供では取り扱い難くなる。
底スタンディング部6の最大開口幅Cが10mm未満であると、十分な内容積を確保することが難しくなり、40mmを超えると、内容物を満杯まで充填した状態での容器横断面形状が円形に近くなり、長径寸法(X)と短径寸法(Y)との比(X/Y)が1.4〜2.0の範囲とすることが難しくなり、加熱殺菌処理を効率的に行い得るという効果が十分に得られなくなる。
【0020】
前記(4)に記したように、このパウチ容器1に内容物を満杯まで充填した状態で、容器縦寸法の少なくとも下から2.5%〜50%の範囲、好ましくは2.5%〜70%の範囲における横断面形状が略楕円形状をなし、その楕円の長径寸法(X)と短径寸法(Y)との比(X/Y)が1.4〜2.0の範囲内に設定したことによって、従来のスタンディングタイプのパウチ容器と比べて薄型となり、容器内壁から内容物中心までの距離が短くなるため、内容物充填後のパウチ容器を加熱殺菌処理する際に、外部から加熱される容器内壁の近傍部の品温と内容物中心の品温との差が小さくなり、従来のパウチ容器の場合と比べ、より効率的な加熱殺菌処理を行うことができる。この比(X/Y)が1.4未満であると、横断面形状が円形に近くなり、容器内壁から内容物中心までの距離が長くなり、容器内壁の近傍部の品温と内容物中心の品温との差が大きくなり易く、必要な加熱殺菌処理時間が長くなる。またこの比(X/Y)が2.0を超えると、十分な内容積を確保するためにパウチ容器1の縦横寸法を大きくせざるを得ず、片手で取り扱い難くなる。
【0021】
パウチ容器1の底スタンディング部6は、中央に折り線5を有する底フィルム4を正背面フィルム2,3の下端縁部にシールして形成され、内容物充填前のパウチ容器1では折り線5に沿って底フィルム4がV字形に折り畳まれ、またパウチ容器1に内容物を満杯まで充填した状態では底スタンディング部6が図2(c)に示すように、底面視楕円形をなすように広がるようになっている。図2(c)中に示す折込D(D=最大開口幅C/2+溶着シール幅)は、10〜25mmの範囲に設定することが好ましい。
【0022】
本発明のパウチ容器1の正背面フィルム2,3及び底フィルム4の材質としては、加熱殺菌処理の加熱温度に対して十分な耐熱性を持った可撓性樹脂フィルム、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンビニルアルコール(EVOH)樹脂、アルミ箔、スチール箔、紙、各種無機物の蒸着フィルム等の材質からなる一層または多層構造を有する耐熱性フィルムを用いることができる。
このフィルムの厚みは20〜400μmであることが好ましく、40〜100μmであることがより好ましい。
【0023】
図1及び図2に図示した実施形態において、パウチ容器1の上端縁部の幅方向中央近傍には、注出口としてのスパウト8が設けられている。このスパウト8の外周にはネジ部が設けられ、このネジ部には、有蓋円筒状をなし、内周面にネジ部を有する口栓9が螺着されている。
なお、本発明においては、スパウト8等の注出口は容器上部に設けられていれば良く、必ずしも上端縁部の幅方向中央近傍に設けられる必要はない。
スパウト8および口栓9の材質としては、ポリエステル、ポリエチレン、PETまたはこれらから選ばれる二種以上をブレンドした樹脂等の耐熱性樹脂からなるものが挙げられる。
【0024】
本実施形態のパウチ容器1には、スパウト8が設けられているが、さらに用途に応じて内容物の抽出が容易となるように、スパウト8下部にストロー10若しくは棒状の導出部構造を設けても良い。この場合、このような導出部構造は、可能な限り内容物加熱殺菌時の加熱効率を妨げない形状であることが好ましい。
【0025】
また、本発明のパウチ容器1は、スパウト8等の注出口の内部に、内容物導出時に該内容物の流動断面において少なくとも一箇所以上の切れ目を入れるかまたは複数に分断するリブが設けられていることが好ましい。このようなリブを設けることで、仮に注出口内部で内容物が固まっていても、リブを通過する際に固まった部分が分断されるので、内容物が途中で滞留することなく、スムーズに導出できる。
【0026】
図3(a)〜(f)および図4(a)〜(d)に、本発明において好ましいリブの形状や構造を例示する。
図3(a)〜(f)は、スパウト8等の注出口の内壁面から板状のリブ11A,11B,12,13,14,15を突設した場合を示す。なお、図3(a)および図4(a)は、内容物導出方向の注出口の断面図であり、図3(b)〜(f)および図4(b)〜(d)は、内容物導出方向に垂直な方向の注出口の断面図である。
【0027】
図2A,図2Bでは、注出口の全長にわたって、内壁面から穴中心付近まで突出した大きな1枚のリブ11Aと、内壁面からの突出長さが前記リブ11Aの半分程度である小さな2枚のリブ11Bの合計3枚のリブ11A,11Bを注出口の内壁面から突設した場合を例示している。小さなリブ11Bの容器内部側の端部は、容器内部側に向けて漸次突出高さを減じる傾斜が設けられている。これらのリブ11A,11Bは、注出口から容器外へ注出される流動物の流動断面において複数の切れ目を入れる場合に用いるリブであり、このようなリブ11A,11Bは、内容物中に含まれる固形物を変形させ、注出口から押し出し易くすることが可能となる。なお、このリブ11A,11Bの厚みについては図3(a)〜(f)に示されているが、特に注出口の容器内部側の端部において薄く刃物のように形成されていることが好ましい。
図3(c)は、注出口の内壁面から、板状の4枚のリブ12を突設した例を示す。このリブ12は、前記のリブ11A,11Bと同様に、導出される内容物の流動断面において複数の切れ目を入れる場合に用いるリブであり、内容物中に含まれる固形物を変形させ注出口から押し出し易くすることが可能となる。
【0028】
図3(d)に示すリブ13は、中央の環状部を4つのリブで支持している構造になっている。このリブ13は、導出される内容物の流動断面において複数に分断する場合に用いるリブである。
図3(e)は、それぞれ傾斜した4枚のリブ14を内壁面から突設した例を示す。
図3(f)は、凹凸面を形成した3枚のリブ15を内壁面から突設した例を示す。
【0029】
図4(a)〜(d)に示すリブは、図4(a)に示すように、スパウト8等の注出口の内部に、中心から放射状に延びるリブ16A,16B,16Cを形成し、注出口から導出される内容物をその流動断面において複数に分断する場合に用いるリブである。
図4(a)〜(b)に示すリブ16Aは、断面が十字状であり、内容物をその流動断面において4分割することができる。
図4(c)に示すリブ16Bは、断面が星形であり、内容物をその流動断面において5分割することができる。
図4(d)に示すリブ16Dは、内容物をその流動断面において3分割することができる。
【0030】
このようなリブは、耐熱性を有するものであればその材質は特に限定されないが、スパウト8等の注出口と同じ材質からなるものが好ましい。注出口と同じ材質とすれば、射出成形等の従来公知の方法により、注出口と同時に容易に形成することができる。
【0031】
本発明のパウチ容器は、例えば、以下のような方法で作製することができる。すなわち、資材フィルムを所定の形状に打ち抜きあるいは裁断等して正背面フィルム2,3及び底フィルム4を得た後、正背面フィルム2,3は上端縁部及び両側端縁部同士をヒートシールし、正背面フィルム2,3の底縁部に、折り線5によって内側にV字型に折り込んだ底フィルム4の外周縁部をヒートシールすればよい。注出口は、正背面フィルム2,3の上端縁部同士をヒートシールする際に、正背面フィルム2,3間に挟み込んで溶着あるいは接着すればよい。
【0032】
本発明のパウチ容器1は、粘度が高く熱伝達性が低い内容物の加熱処理に対して、特に有効である。
例えば、充填される内容物が、その粘度が加熱処理後において、B型回転式粘度計にて、12rpm、25℃の条件下で500〜50000cPであるものに好適であり、加熱処理前において、B型回転式粘度計にて、12rpm、50〜60℃の温度において粘度が100〜10000cPであるものにより好適である。このような高粘度内容物を本発明のパウチ容器に充填した包装製品は、加熱処理を行っても品質劣化が少なく、優れた品質を維持できる。
【0033】
粘度が高い内容物は、作業性の観点から加熱された状態で加熱処理用容器に充填されることが多く、加熱処理を開始するときの時間も、冷却によるゲル化、増粘、微生物の繁殖至適温度の問題を考慮して、可能な限り50℃以上とすることが好ましい。また充填される内容物には、充填可能であれば固形物が含まれていても良く、加熱処理終了後の内容物には、該加熱処理工程時あるいは冷却工程時に生成する固形化物、ゲル化物を含んでいてもよい。加熱処理終了後に内容物の全体が固化している場合は、ここでいう粘度とは、注出口より押し出しにより注出した半固形状態(外力を受けない状態では固体のような挙動を示すが、外力が加わると流動性を示す状態)の内容物における粘度を指す。本発明のパウチ容器1は、コンパクトで片手での取り扱いが容易なので、高粘度の内容物やゲル化した内容物の押し出しによる注出にも好適である。
【0034】
本発明のパウチ容器1は、内容物として総合栄養組成物を加熱処理する場合に、特に好適である。ここで言う総合栄養組成物とは、蛋白質、脂肪、炭水化物、ミネラル、ビタミンの5大栄養素を含んだ食品もしくは医薬品のことを指し、様々な栄養状態を想定し多種にわたる栄養素が配合されているものである。このような総合栄養組成物を商業的に流通させるために加熱処理を行う場合、ビタミン、アミノ酸の劣化、風味の劣化、乳化破壊、メイラード反応による褐変等の現象が少なからず生じる。このため加熱処理は、一般的に可能な限り低い温度でかつ短時間で行うことが望ましいが、該組成物が高濃度であればあるほど、固形分が多くなり、粘度も上昇するため効率的な加熱処理が難しくなる。しかし、このような総合栄養組成物を本発明のパウチ容器に充填した包装製品は、加熱処理を行っても品質劣化が少なく、優れた品質を維持できる。
【0035】
本発明のパウチ容器は、総合栄養組成物等の内容物を充填し、口栓9を装着した密封状態とした後、オートクレーブなどの加熱殺菌処理装置に入れ、所定温度、例えば121℃程度で所定時間の加熱殺菌処理を行う。この加熱殺菌処理の際、内容物充填済みのパウチ容器1の向きは限定されないが、通常は多数個を横倒しの状態で並べて処理室内へ搬入し、加圧下での蒸気加熱等の加熱処理を行う。この加熱殺菌処理において、内容物充填済みのパウチ容器1は、その断面形状が楕円形であり、長径寸法(X)と短径寸法(Y)との比(X/Y)が1.50〜1.80の範囲であるので、薄型であり、容器内壁から内容物中心までの距離が短いために、外部から加熱される容器内壁の近傍部の品温と内容物中心の品温との差が小さくなり、従来のパウチ容器の場合と比べ、より効率的な加熱殺菌処理を行うことができる。
【0036】
加熱殺菌処理を行って得られた包装製品は、必要に応じてラベル添付や箱詰めなどの包装作業を経て、製品として出荷される。
【0037】
本発明の包装製品は、前述した本発明のパウチ容器1に総合栄養組成物等の内容物を充填し、密封後に加熱殺菌処理を施したものなので、片手で容易に持つことができ、サイドガセットタイプのパウチ容器よりも手で扱い易くなり、包装製品を立てることも可能となる。また内容物を満杯まで充填した状態で横断面形状が略楕円形状をなしているので、加熱処理時に内容物の中心近傍と容器内壁近傍とに品温差が生じ難くなり、効果的な加熱処理を行うことができる。
以下、実施例によって本発明の効果を実証する。
【実施例】
【0038】
[実施例]
厚み114μmのアルミ入り多層耐熱フィルム(ポリエチレンテレフタレート・アルミ箔・ポリアミド・ポリプロピレン)に打ち抜き加工を施して、略長方形をなす2枚のフィルム(正背面フィルム2,3)と略楕円形をなす底フィルム4とを作製した。
正背面フィルム2,3は上端縁部及び両側端縁部同士をヒートシールし、正背面フィルム2,3の底縁部に、折り線5によって内側にV字型に折り込んだ底フィルム4の外周縁部をヒートシールした。正背面フィルム2,3の上端縁部同士をヒートシールする際に、別途作製したスパウトを正背面フィルム2,3間に挟み込んで溶着し、図1〜図2に示すようなパウチ容器1を作製した。
【0039】
作製した実施例のパウチ容器1の各部寸法は次の通りである。
・縦寸法A:165mm、
・横寸法B:84mm、
・底スタンディング部6の最大開口幅C:40mm、
・シール幅:約4mm。
【0040】
[比較例]
実施例と同じアルミ入り多層耐熱フィルムを用い、同様に打ち抜き加工及びヒートシール加工を行ってパウチ容器を作製した。ただし、底スタンディング部6の最大開口幅Cが60mmとなるように、底フィルム4の寸法を変更した。
作製した比較例のパウチ容器20の各部寸法は次の通りである。
・縦寸法A:165mm、
・横寸法B:84mm、
・底スタンディング部6の最大開口幅C:60mm、
・シール幅:約4mm。
【0041】
<試験1:横/縦比の測定>
前述したように作製した実施例と比較例のそれぞれのパウチ容器に、加熱した2%寒天溶液を満杯状態となるまで充填し、口栓を閉めて密封し、冷やして寒天溶液を固化させた。
実施例と比較例のそれぞれのパウチ容器を横倒しの状態とし、図5(a)及び図6に示すように、底面から20mm毎の位置1〜5の各位置で切断し、横断面形状の確認および図5(b)に示すように横寸法(長径寸法X)と縦寸法(短径寸法Y)とを測定して横/縦比(X/Y)を算出した。
実施例の各測定位置1〜5での横断面形状の概要を図5(a)中に記し、また各測定位置1〜5での縦寸法、横寸法および横/縦比を表1に記す。
また比較例の各測定位置1〜5での横断面形状の概要を図6中に記し、また各測定位置1〜5での縦寸法、横寸法および横/縦比を表2に記す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
実施例のパウチ容器1は、図5(a)に示すように、内容物充填時に横断面形状が横長の楕円形をなしており、容器内壁から内容物中心までの距離が短い。また、位置1〜5の横/縦比は、1.57〜1.71であり、本発明で規定した長径寸法X/短径寸法Yの比(X/Y)1.50〜1.80の範囲内であった。
【0045】
一方、比較例のパウチ容器20は、図6に示すように、横断面形状が円形に近い横断面形状の位置(特に位置4および5)があった。また、位置1〜5の横/縦比は、0.88〜1.30であり、本発明で規定した長径寸法X/短径寸法Yの比(X/Y)1.50〜1.80の範囲から外れていた。
【0046】
<試験2:加熱殺菌処理でのF値測定>
試験1での実施例と同じアルミ入り多層耐熱フィルムを用い、同様に打ち抜き加工及びヒートシール加工を行って実施例のパウチ容器を作製した。ただし、縦寸法Aは170mmに変更した。
作製した実施例のパウチ容器1の各部寸法は次の通りである。
・縦寸法A:170mm、
・横寸法B:84mm、
・底スタンディング部6の最大開口幅C:40mm、
・シール幅:約4mm。
【0047】
作製した実施例のパウチ容器1に、内容物として、味の素ファルマ株式会社製の半固形流動食メディエフ(登録商標)プッシュケアと同一の成分を200g充填し、密封した。
内容物充填済みの実施例のパウチ容器をオートクレーブ内に入れ、126℃、19分間加熱し、その際のF値をエラブ(Ellab,デンマーク)社製のE−Val Flexを用いて測定した。
【0048】
また、この試験2における比較例として、特許文献4(WO2007/126044)に開示されている、スパウト付きサイドガセットパウチを用いた。その各部の寸法は次の通りである。
・縦寸法:154mm、
・幅寸法:80mm。
・サイドガセットの最大開口幅:25mm、
・シール幅:約4mm。
【0049】
この比較例のパウチ容器に、前記実施例の場合と同じ内容物を150g充填し、密封した。前記実施例と同様に、内容物充填済みの実施例のパウチ容器をオートクレーブ内に入れ、126℃、19分間加熱し、その際のF値を測定した。
実施例および比較例で実施した加熱殺菌処理におけるF値測定結果を表3に記す。
なお、F値とは加熱殺菌がどれだけの処理(時間×温度)をしたのかを表す値であり、121℃、1分間の加熱をF=1としている。
【0050】
【表3】

【0051】
表3の結果より、本発明に係る実施例は、比較例のパウチ容器に比べ、効率良く加熱殺菌を実行可能であることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のパウチ容器の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明のパウチ容器の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【図3】本発明のパウチ容器において注出口内部に設けるリブの形状を例示する図である。
【図4】本発明のパウチ容器において注出口内部に設けるリブの形状の別の例を示す図である。
【図5】実施例で作製したパウチ容器を示し、(a)は各測定位置1〜5での横断面形状の概略図、(b)は横寸法と縦寸法の測定基準を示す概略図である。
【図6】比較例で作製したパウチ容器であり、各測定位置1〜5での横断面形状の概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1…パウチ容器、2…正面フィルム、3…背面フィルム、4…底フィルム、5…折り線、6…底スタンディング部、7…シール部、8…スパウト、9…口栓、10…ストロー、11A…リブ、11B…リブ、12…リブ、13…リブ、14…リブ、15…リブ、16A…リブ、16B…リブ、16C…リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形の正背面フィルムの底縁部に底フィルムの縁部がシールされて底スタンディング部が形成され、正背面フィルムの両側端縁部同士および上端縁部同士がシールされてなり、上部に注出口が設けられているスタンディングタイプのパウチ容器であって、
正背面フィルムの縦寸法が130mm〜190mmの範囲であり、
正背面フィルム横寸法が70mm〜90mmの範囲であり、
底スタンディング部の最大開口幅が10mm〜40mmの範囲であり、
このパウチ容器に内容物を満杯まで充填した状態で、容器縦寸法の少なくとも下から2.5%〜50%の範囲における横断面形状が略楕円形状をなし、その楕円の長径寸法(X)と短径寸法(Y)との比(X/Y)が1.4〜2.0の範囲内であることを特徴とするパウチ容器。
【請求項2】
前記注出口が、容器上端縁部の幅方向中央近傍に設けられ、正背面の上部シール部が、幅方向両側から注出口へ向けて漸次シール幅が短くなるよう二重シールされたことを特徴とする請求項1に記載のパウチ容器。
【請求項3】
前記注出口内部に、内容物導出時に該内容物の流動断面において少なくとも一箇所以上の切れ目を入れるかまたは複数に分断するリブが設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のパウチ容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパウチ容器に、粘度500〜50000cPの範囲の流動物が充填されてなることを特徴とする包装製品。
【請求項5】
前記流動物が総合栄養組成物であることを特徴とする請求項4に記載の包装製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−30632(P2010−30632A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194718(P2008−194718)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】