説明

パウ・フェロから単離された新規化合物

【課題】本発明は、パウ・フェロから単離された新規化合物、該化合物を有効成分として含有するII型DNAトポイソメラーゼ阻害剤、および該化合物を有効成分として含有する癌疾患治療剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために、中南米に生息するマメ科ジャケツイバラ属植物パウ・フェロの幹部に含まれる活性成分の分離を行い、これらの成分について、II型DNAトポイソメラーゼに対する阻害活性の検討を行った。その結果、パウ・フェロの抽出物は優れたII型DNAトポイソメラーゼ阻害作用を持ち、各種癌疾患の治療または予防剤として有用であることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウ・フェロから単離された新規化合物、該化合物を有効成分として含有するII型DNAトポイソメラーゼ阻害剤、および該化合物を有効成分として含有する癌疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌疾患とは細胞が遺伝子異常等により増殖が止まらなくなったものであり、生命を維持するのに不可欠な臓器を侵して人を死に至らしめる疾患である。日本国における癌疾患による死亡者数は年間約30万人であり(平成14年)、総死亡の31.0%を占め死因の第一位である(厚生労働省大臣官房統計情報部。人口動態統計、平成14年度、日本国)。
【0003】
DNAトポイソメラーゼと呼ばれる一群のタンパク質は、DNAの高次構造を変換する酵素で、DNAの複製、組み替え、転写、または染色体の凝縮や分離等、さまざまなDNA代謝に重要な役割を果たしている。DNAトポイソメラーゼは、反応におけるDNA切断の様式およびATP依存性からI型DNAトポイソメラーゼ(DNA一本鎖切断、ATP非依存性)とII型DNAトポイソメラーゼ(DNA二本鎖切断、ATP依存性)に分類されている。I型DNAトポイソメラーゼは超らせんDNAの弛緩に、II型DNAトポイソメラーゼは2本鎖DNAの切断と通過を必要とする連環DNAの単環化や結び目を解消する反応に関与している。癌細胞は正常細胞よりDNAトポイソメラーゼ活性が高いことが知られている(非特許文献1,2)。従って、II型DNAトポイソメラーゼを阻害することで、癌細胞の増殖が抑制され、各種癌疾患が予防もしくは治療することが出来るものと考えられる。
【0004】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【非特許文献1】田矢洋一、野島 博、花岡文雄:実験医学別冊 新用語ライブラリー 細胞周期、東京、羊土社、1999;p104-107
【非特許文献2】坂 英雄.肺癌 新しい機序を有する抗癌剤開発の現況シリーズ (5) トポイソメラーゼI・IIに作用する抗癌剤.呼吸 2000;19(11):1128-1133
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、パウ・フェロから単離された新規化合物、該化合物を有効成分として含有するII型DNAトポイソメラーゼ阻害剤、および該化合物を有効成分として含有する癌疾患治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、癌細胞の増殖に関与するII型DNAトポイソメラーゼを阻害する天然物質について鋭意研究した。
まず、中南米に生息するマメ科ジャケツイバラ属植物パウ・フェロの幹部に含まれる活性成分の分離を行った。さらに、パウ・フェロ抽出液および、パウ・フェロ抽出液から単離された化合物1〜5について、II型DNAトポイソメラーゼに対する阻害活性の検討を行った。その結果、パウ・フェロ抽出液および化合物1〜5は、II型DNAトポイソメラーゼ阻害作用を示すことを明らかにした。
【0007】
即ち、本発明者らは、パウ・フェロの抽出物は優れたII型DNAトポイソメラーゼ阻害作用を持ち、各種癌疾患の治療または予防剤として有用であることを見出し、これにより本発明を完成するに至った。
なお、パウ・フェロは現地では、根は下痢止め、樹皮はせき止め、喘息に、材は気管支炎等に用いられている。
【0008】
本発明は、より具体的には以下の〔1〕〜〔10〕を提供するものである。
〔1〕以下の式:(1)で表される化合物または医学的に許容される塩。
【化1】

〔式中、R1は、以下の式:(2)、(3)で表される構造式、又は1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示し、
【化2】

【化3】

R2は、水素原子、水酸基、または1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示し、
R3は、水素原子、水酸基、または1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示す。〕
〔2〕式:(1)において、
R1が以下の構造式(2)で示され、
【化4】

R2が水素原子または水酸基で示され、
R3が水素原子または水酸基で示される、〔1〕に記載の化合物または医学的に許容される塩。
〔3〕式:(1)において、
R1が以下の構造式(3)で示され、
【化5】

R2が水素原子または水酸基で示され、
R3が水素原子または水酸基で示される、〔1〕に記載の化合物または医学的に許容される塩。
〔4〕以下(a)〜(e)のいずれかである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩。
(a) (E)-1-(3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-4-hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-2,3-dihydrobenzofuran-5-yl)-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-one
(b) (E)-1-(3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-6-hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-2,3-dihydrobenzofuran-5-yl)-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-one
(c) [2-[3-(2,4-Dihydroxy-benzoyl)-4-hydroxy-2-(4-hydroxy-phenyl)-2,3-dihydro-benzofuran-5carbonyl]-3,4-bis-(4-hydroxy-phenyl)-cyclobutyl]-2,4-dihydroxy-phenyl)-methanone
(d) 9-(2,4-dihydroxybenzoyl)-2,8-bis(4-hydroxyphenyl)-2,3,8,9-Tetrahydrofuro[2,3-h]chromen-4-one
(e) 3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-2,7-bis(4-hydroxyphenyl)-2,3,6,7-Tetrahydrofuro[3,2-g]chromen-5-one
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を有効成分として含む、II型DNAトポイソメラーゼ阻害剤。
〔6〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を有効成分として含む、癌疾患治療剤。
〔7〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を有効成分として含む、癌疾患治療用、または癌疾患予防用食品。
〔8〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を、対象に投与する工程を含む、対象においてII型DNAトポイソメラーゼの活性を抑制させる方法。
〔9〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を、対象に投与する工程を含む、対象における癌疾患を治療または予防する方法。
〔10〕以下(a)〜(c)の工程を含む、パウ・フェロから〔4〕に記載の化合物を抽出する方法。
(a) 乾燥させたパウ・フェロ幹部を、アセトンに漬ける工程
(b) アセトン抽出液を減圧下で濃縮する工程。
(c) (b)により得られたアセトン抽出物をヘキサン、酢酸エチル、ブタノールと水を用いて分配し、ヘキサン相または酢酸エチル相から化合物を単離する工程。
【発明の効果】
【0009】
トポイソメラーゼの阻害剤は抗菌剤、抗ウイルス剤、抗カビ剤、または抗癌剤への用途が検討されている。実際に抗癌剤のアドリアマイシンやイダルビシン等はトポイソメラーゼの阻害剤であることが明らかにされている(Ross WE., Biochem Pharmacol., 34(24), 4191-4195 (1985)、Ferrazzi E. et al., Cancer Commun, 3, 6, 173-180 (1991))。
本発明のパウ・フェロから単離された新規化合物は、II型DNAトポイソメラーゼ阻害活性を示すことから、各種癌疾患の治療または予防剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、パウ・フェロから単離された新規化合物が、II型DNAトポイソメラーゼ阻害活性を示すことを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0011】
本発明は、以下の式:(1)で表される化合物または医学的に許容される塩に関する。
【化6】

〔式中、R1は、以下の式:(2)、(3)で表される構造式、又は1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示し、
【化7】

【化8】

R2は、水素原子、水酸基、または1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示し、
R3は、水素原子、水酸基、または1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示す。〕
【0012】
本発明において、「アルキル基」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される一価の基であり、骨格中にヘテロ原子または不飽和炭素−炭素結合を含有せず、水素および炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素の部分集合を有する。アルキル基は直鎖状または分枝鎖状の構造を含む。
【0013】
本発明において、「アルケニル基」とは、少なくとも1個の二重結合(2個の隣接SP2炭素原子)を有する1価の基である。二重結合および置換分(存在する場合)の配置によって、二重結合の幾何学的形態は、エントゲーゲン(E)またはツザンメン(Z)、シスまたはトランス配置をとることができる。アルケニル基は、直鎖状または分枝鎖状を含む。
【0014】
本発明において、「ヘテロアリール環」とは、環を構成する原子中に1または複数個のヘテロ原子を含有する芳香族性の環を意味する。環は単環、またはベンゼン環または単環へテロアリール環と縮合した2環式ヘテロアリール基であってもよい。環を構成する原子中に1または複数個のヘテロ原子を含有する芳香族性の環を意味する。環は単環、またはベンゼン環または単環へテロアリール環と縮合した2環式ヘテロアリール基であってもよい。本発明において、「ヘテロ原子」とは、ヘテロ原子硫黄原子、酸素原子または窒素原子を意味する。
【0015】
本発明において、R1は式:(2)または(3)の構造式で示されることがより好ましい。R2は、水素原子または水酸基であることがより好ましい。R3は、水素原子または水酸基であることがより好ましい。
【0016】
本発明において、式:(1)で表される化合物の好ましい例としては、以下(a)〜(e)の化合物を挙げることが出来る。
(a) (E)-1-(3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-4-hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-2,3-dihydrobenzofuran-5-yl)-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-one
【化9】

【0017】
(b) (E)-1-(3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-6-hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-2,3-dihydrobenzofuran-5-yl)-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-one
【化10】

【0018】
(c) [2-[3-(2,4-Dihydroxy-benzoyl)-4-hydroxy-2-(4-hydroxy-phenyl)-2,3-dihydro-benzofuran-5carbonyl]-3,4-bis-(4-hydroxy-phenyl)-cyclobutyl]-2,4-dihydroxy-phenyl)-methanone
【化11】

【0019】
(d) 9-(2,4-dihydroxybenzoyl)-2,8-bis(4-hydroxyphenyl)-2,3,8,9-Tetrahydrofuro[2,3-h]chromen-4-one
【化12】

【0020】
(e) 3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-2,7-bis(4-hydroxyphenyl)-2,3,6,7-Tetrahydrofuro[3,2-g]chromen-5-one
【化13】

【0021】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩、またはその溶媒もしくは水和物の形態であってもよい。また本発明の化合物には、各種の異性体が存在し得るが、これらの異性体も本発明に含まれる。
【0022】
本発明は、本発明の化合物もしくはその塩、またはそれらの水和物または溶媒和物を有効成分として含む、II型DNAトポイソメラーゼ阻害剤に関する。また、本発明の化合物もしくはその塩またはそれらの水和物または溶媒和物を有効成分として含む、癌疾患治療剤に関する。
【0023】
本発明のII型DNAトポイソメラーゼ阻害剤は、in vitroまたはin vivoにおいてII型DNAトポイソメラーゼの活性を阻害する際に用いることが出来る。II型DNAトポイソメラーゼの活性としては、2本鎖DNAの切断反応や、通過を必要とする連環DNAの単環化や結び目を解消する反応を挙げることが出来る。
【0024】
本発明において、II型DNAトポイソメラーゼの活性が抑制された否かの確認は、実施例に示すように、キネトプラストDNA(kDNA)からのミニサークルDNAの脱連環反応(デカテネーション)測定や、2本鎖DNAの切断反応測定により行うことが出来る。これらの反応測定は当業者には公知である。
【0025】
本発明の癌疾患治療剤は、各種癌疾患の治療において使用することが可能である。本発明において各種癌疾患としては、小児癌、神経芽腫、網膜芽細胞腫、脳腫瘍、頭頸部癌、下垂体腺腫、神経膠腫、聴神経鞘腫、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、胸腺腫、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、膵内分泌腫瘍、胆道癌、腎盂尿管癌、腎臓癌、精巣癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮癌、膣癌、卵巣癌、卵管癌、皮膚癌、悪性黒色腫、骨腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫等を挙げることが出来る。
【0026】
本発明において「癌疾患治療」とは、癌細胞の増殖の抑制、または他部位への転移の抑制または予防、または癌の進行に伴う合併症などを抑制することを意味する。外科手術後の癌疾患の再発を抑制することも、上記の意味に含まれるものとする。
【0027】
本発明において、癌細胞の増殖が抑制されたか否かの確認は、各種癌疾患に特有の腫瘍マーカーの確認や、各種検査方法により行うことが出来る。
【0028】
腫瘍マーカーとしては、癌胎児抗原(CEA)、アルファ‐フェトプロテイン(AFP)、ベータ‐ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-HCG)、前立腺特異抗原(PSA)、糖鎖抗原125(CA-125)、糖鎖抗原15-3(CA 15-3)、糖鎖抗原19-9(CA 19-9)、ベータ2(β2)ミクログロブリン、または乳酸脱水素酵素(LDH)等を挙げることが出来る。癌疾患が進行すると、上記各腫瘍マーカーの値が増大する(血中で腫瘍マーカーが増殖する)。すなわち、本発明の薬剤を投与することにより各腫瘍マーカー値が減少した場合に、各種癌細胞の増殖が抑制された(癌疾患の治療が行われた)とみなすことが出来る。
【0029】
また、癌疾患の検査方法としては、生検、胸部X線検査、マンモグラフィ、骨スキャン検査、CT検査、超音波検査、または肝臓酵素の血液検査等を挙げることが出来る。本発明の薬剤を投与することにより、上記検査における癌の症状が改善された場合に、癌細胞の増殖が抑制された(癌疾患の治療が行われた)とみなすことが出来る。
【0030】
本発明のII型DNAトポイソメラーゼ阻害剤または癌疾患治療剤は、医薬品の形態で投与することが可能であり、経口的または非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤などを選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.01mgから100mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり1〜1000mg、好ましくは5〜50mgの投与量を選ぶことができる。好ましい投与量、投与方法は、具体的な例としては、体重1kgあたり1ヶ月(4週間)に0.5mgから40mg、好ましくは1mgから20mgを1回から数回に分けて、例えば2回/週、1回/週、1回/2週、1回/4週などの投与スケジュールで点滴などの静脈内注射、皮下注射などの方法で、投与する方法などである。投与スケジュールは、投与後状態の観察および血液検査値の動向を観察しながら2回/週あるいは1回/週から1回/2週、1回/3週、1回/4週のように投与間隔を延ばしていくなど調整することも可能である。
【0031】
本発明においてII型DNAトポイソメラーゼ阻害剤または癌疾患治療剤には、保存剤や安定剤等の製剤上許容しうる担体が添加されていてもよい。製剤上許容しうるとは、それ自体は上記の前立腺癌の増殖抑制効果を有する材料であってもよいし、当該阻害効果または治療効果を有さない材料であってもよく、上記の阻害剤または治療剤とともに投与可能な製剤上許容される材料を意味する。また、II型DNAトポイソメラーゼ阻害または、癌の増殖抑制効果を有さない材料であっても、本発明の化合物と併用することによって相乗的もしくは相加的な安定化効果を有する材料であってもよい。
製剤上許容される材料としては、例えば、滅菌水や生理食塩水、安定剤、賦形剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤、キレート剤(EDTA等)、結合剤等を挙げることができる。
【0032】
本発明において、界面活性剤としては非イオン界面活性剤を挙げることができ、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリテート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6〜18を有するもの、等を典型的例として挙げることができる。
【0033】
また、界面活性剤としては陰イオン界面活性剤も挙げることができ、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原子数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12〜18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。
【0034】
本発明においては、これらの界面活性剤の1種または2種以上を組み合わせて添加することができる。本発明の製剤で使用する好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20,40,60又は80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、ポリソルベート20及び80が特に好ましい。また、ポロキサマー(プルロニックF−68(登録商標)など)に代表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールも好ましい。
【0035】
界面活性剤の添加量は使用する界面活性剤の種類により異なるが、ポリソルベート20又はポリソルベート80の場合では、一般には0.001〜100mg/mLであり、好ましくは0.003〜50mg/mLであり、さらに好ましくは0.005〜2mg/mLである。
【0036】
本発明において緩衝剤としては、リン酸、クエン酸緩衝液、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、リン酸カリウム、グルコン酸、カプリル酸、デオキシコール酸、サリチル酸、トリエタノールアミン、フマル酸等 他の有機酸等、あるいは、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、ヒスチジン緩衝液、イミダゾール緩衝液等を挙げることが出来る。
【0037】
また溶液製剤の分野で公知の水性緩衝液に溶解することによって溶液製剤を調製してもよい。緩衝液の濃度は一般には1〜500mMであり、好ましくは5〜100mMであり、さらに好ましくは10〜20mMである。
【0038】
また、本発明おいては、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グロブリン等の蛋白質、アミノ酸、多糖及び単糖等の糖類や炭水化物、糖アルコールを含んでいてもよい。
【0039】
本発明においてアミノ酸としては、塩基性アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等、またはこれらのアミノ酸の無機塩(好ましくは、塩酸塩、リン酸塩の形、すなわちリン酸アミノ酸)を挙げることが出来る。遊離アミノ酸が使用される場合、好ましいpH値は、適当な生理的に許容される緩衝物質、例えば無機酸、特に塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、蟻酸又はこれらの塩の添加により調整される。この場合、リン酸塩の使用は、特に安定な凍結乾燥物が得られる点で特に有利である。調製物が有機酸、例えばリンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等を実質的に含有しない場合あるいは対応する陰イオン(リンゴ酸イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオン等)が存在しない場合に、特に有利である。好ましいアミノ酸はアルギニン、リジン、ヒスチジン、またはオルニチンである。さらに、酸性アミノ酸、例えばグルタミン酸及びアスパラギン酸、及びその塩の形(好ましくはナトリウム塩)あるいは中性アミノ酸、例えばイソロイシン、ロイシン、グリシン、セリン、スレオニン、バリン、メチオニン、システイン、またはアラニン、あるいは芳香族アミノ酸、例えばフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、または誘導体のN-アセチルトリプトファンを使用することもできる。
【0040】
本発明において、多糖及び単糖等の糖類や炭水化物としては、例えばデキストラン、グルコース、フラクトース、ラクトース、キシロース、マンノース、マルトース、スクロース,トレハロース、ラフィノース等を挙げることができる。
本発明において、糖アルコールとしては、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール等を挙げることができる。
【0041】
注射用の水溶液とする場合には、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO-50)等と併用してもよい。
所望によりさらに希釈剤、溶解補助剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0042】
本発明において、含硫還元剤としては、例えば、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、並びに炭素原子数1〜7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等を挙げることができる。
【0043】
また、本発明において酸化防止剤としては、例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸及びその塩、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤を挙げることが出来る。
【0044】
また、必要に応じ、マイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)とすることもできる("Remington's Pharmaceutical Science 16th edition", Oslo Ed., 1980等参照)。さらに、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、本発明に適用し得る(Langer et al., J.Biomed.Mater.Res. 1981, 15: 167-277; Langer, Chem. Tech. 1982, 12: 98-105;米国特許第3,773,919号;欧州特許出願公開(EP)第58,481号; Sidman et al., Biopolymers 1983, 22: 547-556;EP第133,988号)。
使用される製剤上許容しうる担体は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明は、本発明の化合物もしくはその塩またはそれらの水和物または溶媒和物を、対象に投与する工程を含む、対象においてII型DNAトポイソメラーゼの活性を抑制させる方法に関する。また、本発明の化合物もしくはその塩またはそれらの水和物または溶媒和物を、対象に投与する工程を含む、対象における癌を治療または予防する方法に関する。
【0046】
本発明において、「対象」とは、本発明のII型DNAトポイソメラーゼ阻害剤または癌疾患治療剤を投与する生物体、該生物体の体内の一部分をいう。生物体は、特に限定されるものではないが、動物(例えば、ヒト、家畜動物種、野生動物)を含む。
また、「生物体の体内の一部分」については特に限定されないが、好ましくは癌細胞が増殖している部位またはその周辺部位あるいは、癌細胞の転移部位を挙げることが出来る。
【0047】
本発明において、「投与する」とは、経口的、あるいは非経口的に投与することが含まれる。経口的な投与としては、経口剤という形での投与を挙げることができ、経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤等の剤型を選択することができる。
又は、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、経腸栄養食品という形態で経口的に摂取または投与されてもよく、本発明はこれらの食品に限定されない。
【0048】
非経口的な投与としては、注射剤という形での投与を挙げることができ、注射剤としては、点滴などの静脈注射、皮下注射剤、筋肉注射剤、あるいは腹腔内注射剤等を挙げることができる。また、本発明の薬剤を、処置を施したい領域に局所的に投与することもできる。例えば、手術中の局所注入、カテーテルの使用により投与することも可能である。癌疾患の公知の治療法と同時に又は時間を隔てて本発明の薬剤が投与されてもよい。
【0049】
また、本発明は、各種癌疾患を有するヒトを含む哺乳動物に該疾患の改善や予防、あるいは再発予防のための経口性組成物製造のための、該化合物、あるいは該抽出物の使用を含む。該経口性組成物の製造方法は、当業者にとって周知慣用技術である。
【0050】
すなわち、該化合物、あるいは該抽出物を単独で、あるいは食品衛生上許容される配合物を混合して、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、経腸栄養食品などに加工する事が出来る。例えば、安定化剤、保存剤、着色料、香料、ビタミン等の配合物を該乾燥粉末、あるいは該抽出物に適宜添加し、混合し、常法により、錠剤、粒状、顆粒状、粉末状、カプセル状、液状、クリーム状、飲料などの経口性組成物に適した形態とする事が出来る。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
〔実施例1〕パウ・フェロに含まれる活性成分の分離
乾燥させたパウ・フェロ幹部を、アセトンに漬け込み、抽出液を減圧下で濃縮した。アセトン抽出物をヘキサン、酢酸エチル、ブタノールと水を用いて分配を行った。ヘキサン相の分画を行い、活性抽出物として化合物1、化合物2、化合物3を得た(図1)。
また、酢酸エチル相の分画を行い、活性抽出物として化合物1〜5を得た。
【0053】
〔実施例2〕活性成分の構造決定
1H, 13C-NMRを始めとする各種2次元NMRを解析することにより、相対立体配置を含め構造式を決定した(図2〜6)。化合物1〜5の物理化学的性状および構造式を以下に示す。
<化合物1>
化学式:C30H22O8
名称:
(E)-1-(3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-4-hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-2,3-dihydrobenzofuran-5-yl)-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-one
物理化学的性状:
HR-FABMS
m/z 533.1385 [M+Na]+,Δ0.8 mmu
黄色粉末
[α]D=+190.30
構造式:
【化14】

【0054】
<化合物2>
化学式:C30H22O8
名称:
(E)-1-(3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-6-hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-2,3-dihydrobenzofuran-5-yl)-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-one
物理化学的性状:
HR-FABMS
m/z 533.1194[M+Na]+,Δ2.2 mmu
黄色粉末
[α]D=+256.36
構造式:
【化15】

【0055】
<化合物3>
化学式:C45H34O12
名称:
[2-[3-(2,4-Dihydroxy-benzoyl)-4-hydroxy-2-(4-hydroxy-phenyl)-2,3-dihydro-benzofuran-5carbonyl]-3,4-bis-(4-hydroxy-phenyl)-cyclobutyl]-2,4-dihydroxy-phenyl)-methanone
物理化学的性状:
HR-FABMS
m/z 767.2143[M+Na]+,Δ1.4 mmu
黄色粉末
[α]D=+211.2
構造式:
【化16】

【0056】
<化合物4>
化学式:C30H22O8
名称:
9-(2,4-dihydroxybenzoyl)-2,8-bis(4-hydroxyphenyl)-2,3,8,9-Tetrahydrofuro[2,3-h]chromen-4-one
物理化学的性状:
HR-FABMS
m/z 511.1395[M+Na]+,Δ0.2 mmu
黄色粉末
構造式:
【化17】

【0057】
<化合物5>
化学式:C30H22O8
名称:
3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-2,7-bis(4-hydroxyphenyl)-2,3,6,7-Tetrahydrofuro[3,2-g]chromen-5-one
物理化学的性状:
HR-FABMS
m/z 511.1391[M+Na]+,Δ0.2 mmu
黄色粉末
構造式:
【化18】

【0058】
〔実施例3〕新規化合物のII型DNAトポイソメラーゼに対する阻害活性の検討
パウ・フェロ抽出液および、パウ・フェロ抽出液から単離された化合物1〜5について、II型DNAトポイソメラーゼに対する阻害活性の検討を行った。評価系としては、キネトプラストDNA(kDNA)からのミニサークルDNAの脱連環反応(デカテネーション)で活性を測定した。
【0059】
まず、Crithidia fasciculate 1mL(1.5 × 108 /mL in 10% DMSO medium)を、Heminを含むBrain Heart Infution(BHI)溶液50 mLに接種し、27℃で一晩振盪培養した。これをHeminを含むBHI培養1Lに移し、27℃で2〜3日(1×108/mLまで)振盪培養した。本培養後、培養液を遠心(5000×g、10分)により集菌し、T10E1(10mM Tris-HCl<pH8.0>、20mM EDTA<pH8.0>)30mL、10% Sarkosy 16mL、10mg/μL Proteinase K 150μLでペレットを懸濁させた。その後、50℃に2時間放置し、容菌液を得た。
【0060】
遠沈管あたりSolution Aを4μL、Solution Bを1μL、2.5mg/mL EtBr 1mLを加え、そのうえに回収したCrithidia容菌液6mLを勾配した。それを遠心(52,000×g、20分)にかけkDNAを回収した。回収したkDNAはT10E1(10mM Tris-HCl<pH8.0>、20mM EDTA<pH8.0>)に対して透析を行った。透析後 -20℃で保存した。
Crithidia fasciculateの培養で用いたBHI溶液1L中の成分を以下に示す。
【表1】

【0061】
BHI溶液 1Lに対し10Mm NaCl-2mg/mL Heminを10mL入れた。
Crithidia fasciculateのkDNAの回収で用いたSolution A・Bの成分を以下に示す。
【表2】

【0062】
II型DNAトポイソメラーゼ(Top GEN Inc.・2unit/μL、6μLずつ分注し-80℃保存)を、0.75unit/μLになるようにNuclear extraction buffer(20mM Tris-HCl<pH8.0>、0.3M NaCl、140mM 2-mercaptoethanol、50μg/mL BSA)で希釈した。
【0063】
エッペンドルフ(Epd)チューブにMilli Q、5×TopoII buffer(250mM Tris-HCl<pH7.9>、600mM KCl、50mM MgCl2、2.5mM EDTA、2.5mM ATP、2.5mM DTT、150μL/mL BSA)、kDNAを必要量混合した。Epdチューブに各濃度の阻害剤を1μL、前述の混合buffer 18μLを入れボルテックス・軽い遠心の後、希釈したII型DNAトポイソメラーゼを1μL加え、再びボルテックス・軽い遠心を行った。なお、反応系には必ず、1)陰性対照として酵素および阻害剤を含まない系と、2)陽性対照として阻害剤を含まずに酵素活性を高める系を設置した。
II型DNAトポイソメラーゼの反応系を以下に示す。
【表3】

【0064】
Epdチューブを37℃で30分間放置した後、氷中でSDS/PK/BJを4μLずつ入れた。その後、50℃に5分間放置してからボルテックス・軽い遠心を行い、再度50℃に30分間放置してからボルテックス・軽い遠心を行った。このうち、18μLをアガロースゲル電気泳動の試料とした。
【0065】
アガロースゲル電気泳動は、1×TBE緩衝液(89mM Tris Base、89mMホウ酸、2mM EDTA 2Na)で0.8%のアガロースゲルを作成し、同緩衝液で電気泳動(50V)した。ゲル中や泳動緩衝液にはエチジウムブロマイド(EtBr)を加えなかった。泳動後、1×TBE(0.1μL/mL EtBrを含む)中でDNAの染色を行い、蒸留水で余分なEtBrを取り除いた。その後、UV照射装置上でバンドを観察した。
【0066】
酵素の反応量はアガロースゲルのバンドをCCDカメラで撮影し、その後コンピュータに画像を入力した。バンドの濃さを解析プログラム(NIH Imageに付属しているマクロス<Gel Plotting Macros>)を用いて数値化・定量化し、有機天然物の阻害効果を表した値からグラフを作成し、活性を50%阻害する化合物濃度(IC50)として現した。
【0067】
その結果、抽出液のII型DNAトポイソメラーゼ阻害活性は、IC50=13.8μg/mLとDoxorubicinよりは劣るものの、高い阻害活性を示した(表4)。上記の条件で抽出物の各種化合物についてもII型DNAトポイソメラーゼ阻害活性を確認したところ、特に化合物3が高い阻害活性を示した。II型DNAトポイソメラーゼ阻害活性の高い順に化合物を並べると、3>5>2>1>4の順となった。
II型DNAトポイソメラーゼ阻害作用
【0068】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】パウ・フェロ幹部の分画方法を示す図である。
【図2】化合物1の構造式およびNMRスペクトルを示す図である。
【図3】化合物2の構造式およびNMRスペクトルを示す図である。
【図4】化合物3の構造式およびNMRスペクトルを示す図である。
【図5】化合物4の構造式およびNMRスペクトルを示す図である。
【図6】化合物5の構造式およびNMRスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:(1)で表される化合物または医学的に許容される塩。
【化1】

〔式中、R1は、以下の式:(2)、(3)で表される構造式、又は1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示し、
【化2】

【化3】

R2は、水素原子、水酸基、または1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示し、
R3は、水素原子、水酸基、または1〜3個のヒドロキシルフェニル基又はへテロアリール環を有していてもよい炭素数8〜23の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基を示す。〕
【請求項2】
式:(1)において、
R1が以下の構造式(2)で示され、
【化4】

R2が水素原子または水酸基で示され、
R3が水素原子または水酸基で示される、請求項1に記載の化合物または医学的に許容される塩。
【請求項3】
式:(1)において、
R1が以下の構造式(3)で示され、
【化5】

R2が水素原子または水酸基で示され、
R3が水素原子または水酸基で示される、請求項1に記載の化合物または医学的に許容される塩。
【請求項4】
以下(a)〜(e)のいずれかである、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩。
(a) (E)-1-(3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-4-hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-2,3-dihydrobenzofuran-5-yl)-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-one
(b) (E)-1-(3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-6-hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-2,3-dihydrobenzofuran-5-yl)-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-one
(c) [2-[3-(2,4-Dihydroxy-benzoyl)-4-hydroxy-2-(4-hydroxy-phenyl)-2,3-dihydro-benzofuran-5carbonyl]-3,4-bis-(4-hydroxy-phenyl)-cyclobutyl]-2,4-dihydroxy-phenyl)-methanone
(d) 9-(2,4-dihydroxybenzoyl)-2,8-bis(4-hydroxyphenyl)-2,3,8,9-Tetrahydrofuro[2,3-h]chromen-4-one
(e) 3-(2,4-dihydroxybenzoyl)-2,7-bis(4-hydroxyphenyl)-2,3,6,7-Tetrahydrofuro[3,2-g]chromen-5-one
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を有効成分として含む、II型DNAトポイソメラーゼ阻害剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を有効成分として含む、癌疾患治療剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を有効成分として含む、癌疾患治療用、または癌疾患予防用食品。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を、対象に投与する工程を含む、対象においてII型DNAトポイソメラーゼの活性を抑制させる方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物または医学的に許容される塩を、対象に投与する工程を含む、対象における癌疾患を治療または予防する方法。
【請求項10】
以下(a)〜(c)の工程を含む、パウ・フェロから請求項4に記載の化合物を抽出する方法。
(a) 乾燥させたパウ・フェロ幹部を、アセトンに漬ける工程
(b) アセトン抽出液を減圧下で濃縮する工程。
(c) (b)により得られたアセトン抽出物をヘキサン、酢酸エチル、ブタノールと水を用いて分配し、ヘキサン相または酢酸エチル相から化合物を単離する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−107928(P2009−107928A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51117(P2006−51117)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】