説明

パケット転送装置、パケット転送方法、およびプログラム

【課題】複雑な演算を不要とするパケット転送装置の提供。
【解決手段】流量監視部70は、送信部60a〜60dのそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出す。ポート振り分け部30は、ハッシュ値に対応する有効フラグが有効の時、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択し、有効フラグが無効の時、流量監視部70によって見出された送信部を選択すると共に送信部に対応する識別番号をハッシュ値に対応させて設定して有効フラグを有効にする。さらに、受信パケットのヘッダ部の一部から求めたハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力する。エージング管理部50は、ポート振り分け部30が送信部を選択した際、ハッシュ値に対応するエージングフラグをセットし、一定時間経過後にエージングフラグをリセットすると共に有効フラグを無効にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット転送装置、パケット転送方法、およびプログラムに係り、特に、ポートトランキングあるいはリンクアグリゲーションによるパケット転送技術に係る。
【背景技術】
【0002】
ポートトランキングあるいはリンクアグリゲーションは、複数の物理的なポート(リンク)を仮想的な1本のポート(リンク)として扱う技術であって、高速な回線を使用しなくても帯域幅を広げることができるという利点がある。また、物理的なポート(リンク)のどこかに障害が発生したとしても、他のポート(リンク)が使用できれば、回線全体としては停止することなく動作し続けることが可能であるため、障害に対しても強いという特徴を持つ。
【0003】
このようなポートトランキングあるいはリンクアグリゲーションの機能を実現する場合、パケットのヘッダの一部(MACアドレスやIPアドレス等の一部)に対してハッシュ演算を行って、演算結果によって送信先ポートを決定することで、パケットを振り分ける技術が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。また、同一データフローのパケットの順序を保証するために、予め設定したテーブルに従って、ハッシュ値を送信ポートに変換するようにしている。
【0004】
しかしながら、ハッシュ値が特定の値に偏った場合には、パケットを均等にポートに振り分けることができずに特定のポートにトラフィックが集中してしまい、効率的なデータ転送ができなくなってしまう。
【0005】
そこで特許文献3には、リンクアグリゲーションの論理ポートを構成する複数の物理ポートにトラフィックを分散させるために、ハッシュ関数を用いて受信パケットの宛先アドレス及び送信元アドレスからハッシュ値を計算し、宛先の物理ポートを決定するトラフィック分散制御装置が開示されている。この装置は、複数の物理ポートのそれぞれからのパケットの出力流量を計測する計測手段と、計数された出力流量について複数の物理ポート間の流量比を算出する算出手段と、算出された流量比を複数の物理ポート間の帯域分配比率にフィードバックして宛先の物理ポートを決定するためのハッシュ値の個数割当ての変更を行う第1の制御手段と、を備える。このような装置によれば、リンクアグリゲーションの帯域分配に偏りが発生した場合であっても、複数の物理ポートの使用帯域の比(流量比)をフィードバックして帯域分配比率を改善するので、リンクアグリゲーションのトラフィック分配が均等に行われる。
【0006】
なお、関連する技術として、特許文献4には、同じ送信元端末からの最後のパケットの受信及び、同じ宛先端末に対する最後のパケットの受信の何れかから所定時間経過後に、アドレスなどのマッピングのバッファから削除するエージングの技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−20492号公報
【特許文献2】特開平10−260921号公報
【特許文献3】特開2006−5437号公報
【特許文献4】特開2005−86668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載のトラフィック分散制御装置は、宛先の物理ポートを決定するためのハッシュ値の個数割当てを変更することで、データ転送が特定の物理ポートに偏ることを防いで、効率的なデータ転送を行うことが可能である。しかし、流量比の算出および帯域分配比率からのハッシュ値の個数割当ての決定を行う演算を行わなければならない。このような演算には、乗除算相当の演算を必要とし、装置の複雑化を招く虞がある。特に装置の高速化に伴い、複雑な演算を必要とすることは好ましくない。
【0009】
本発明の目的は、複雑な演算を不要とする簡易なパケット転送装置、パケット転送方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つのアスペクトに係るパケット転送装置は、受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送装置である。この装置は、複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出す流量監視部と、受信パケットと同じハッシュ値を有するパケットを、過去一定期間内に受信したか否かを判定し、一定期間内に受信していた場合には、登録されている識別番号の送信部を選択し、一定期間内に受信していなかった場合には、最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部を識別番号として登録するパケット分配部と、を備える。
【0011】
本発明の第1の展開形態のパケット転送装置において、パケット分配部は、ハッシュ値に対応する有効フラグが有効を示すか無効を示すかを判断し、有効フラグが有効であることを示す場合には、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択し、有効フラグが無効であることを示す場合には、流量監視部によって見出された送信部を選択すると共に該送信部に対応する識別番号をハッシュ値に対応させて設定して有効フラグを有効に設定するポート振り分け部と、ポート振り分け部が送信部を選択した際には、ハッシュ値に対応するエージングフラグをセットし、該エージングフラグをセットして一定期間経過後に、該エージングフラグをリセットすると共に有効フラグを無効に設定するエージング管理部と、を備えるようにしてもよい。
【0012】
本発明の第2の展開形態のパケット転送装置において、ハッシュ値をアドレスとし、識別番号、有効フラグ、エージングフラグのそれぞれを該アドレスに対応する読み書き可能なデータとして保持するメモリ部をさらに備えるようにしてもよい。
【0013】
本発明の第3の展開形態のパケット転送装置において、流量監視部は、一定期間における転送レートが最も低い送信部を選択するようにしてもよい。
【0014】
本発明の第4の展開形態のパケット転送装置において、流量監視部は、送信部を構成するFIFOの空き容量が最も大きい送信部を選択するようにしてもよい。
【0015】
本発明の1つのアスペクトに係るパケット転送方法は、受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送方法であって、複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出すステップと、受信パケットと同じハッシュ値を有するパケットを、過去一定期間内に受信したか否かを判定するステップと、一定期間内に受信していた場合には、登録されている識別番号の送信部を選択し、一定期間内に受信していなかった場合には、最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部を識別番号として登録するステップと、を含む。
【0016】
本発明の他のアスペクトに係るパケット転送方法は、受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送方法であって、複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出すステップと、ハッシュ値に対応する有効フラグが有効を示すか無効を示すかを判断するステップと、有効フラグが有効であることを示す場合には、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択し、有効フラグが無効であることを示す場合には、最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部に対応する識別番号をハッシュ値に対応させて設定して有効フラグを有効に設定するステップと、送信部を選択した際には、ハッシュ値に対応するエージングフラグをセットするステップと、エージングフラグがセットされて一定期間経過後に、エージングフラグをリセットすると共に有効フラグを無効に設定するステップと、を含む。
【0017】
本発明の1つのアスペクトに係るプログラムは、受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送装置を構成するコンピュータに、複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出す処理と、受信パケットと同じハッシュ値を有するパケットを、過去一定期間内に受信したか否かを判定する処理と、一定期間内に受信していた場合には、登録されている識別番号の送信部を選択し、一定期間内に受信していなかった場合には、最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部を識別番号として登録する処理と、を実行させる。
【0018】
本発明の他のアスペクトに係るプログラムは、受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送装置を構成するコンピュータに、複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出す処理と、ハッシュ値に対応する有効フラグが有効を示すか無効を示すかを判断する処理と、有効フラグが有効であることを示す場合には、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択し、有効フラグが無効であることを示す場合には、最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部に対応する識別番号をハッシュ値に対応させて設定して有効フラグを有効に設定する処理と、送信部を選択した際には、ハッシュ値に対応するエージングフラグをセットする処理と、エージングフラグがセットされて一定時間経過後に、エージングフラグをリセットすると共に有効フラグを無効に設定する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、最も流量の少ない送信部に新規なフローを割り当てると共に、一定期間受信しなかった送信部に対する割り当てを解除することで、特定の送信部にフローが偏ることを防ぐための複雑な演算処理を不要とすることができる。したがって、装置を簡略に構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態に係るパケット転送装置は、受信パケットを複数の送信ポートに振り分けるポートトランキング(リンクアグリゲーション)によってネットワークスイッチ間を接続する構成を有する。より具体的には、受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部に受信パケットを出力するパケット転送装置(図1の1)である。このパケット転送装置は、パケット受信部(図1の10)、ハッシュ演算部(図1の20)、ポート振り分け部(図1の30)、エージング管理部(図1の50)、メモリ部(図1の40)、複数の送信部(図1の60a、60b、60c、60d)、流量監視部(図1の70)を備える。
【0021】
パケット受信部は、受信したパケットをハッシュ演算部に渡す。ハッシュ演算部は、パケットのヘッダ部を抽出してヘッダ部の一部(MACアドレスやIPアドレス等の一部)に対してハッシュ演算を行い、演算結果であるハッシュ値をポート振り分け部へ渡す。
【0022】
ポート振り分け部は、メモリ部を参照して選択した送信部に受信パケットを出力する。メモリ部は、ハッシュ値に対応して、複数の送信部から一つを選択するための識別番号と、識別番号に対するハッシュ値の割り当てが有効か無効かを示す有効フラグと、割り当てが一定時間有効であることを示すエージングフラグと、を保持する。流量監視部は、複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出す。エージング管理部は、ポート振り分け部が送信部を選択した際にエージングフラグをセットし、エージングフラグをセットして一定時間経過後に、エージングフラグをリセットすると共に有効フラグを無効に設定する。
【0023】
このような構成のパケット転送装置において、ポート振り分け部は、ハッシュ値に対応する有効フラグが有効であることを示す場合には識別番号に対応する送信部を選択する。また、ハッシュ値に対応する有効フラグが無効であることを示す場合には流量監視部によって見出された最小の流量の送信部を選択して送信部に対応する識別番号をメモリ部に設定すると共に有効フラグを有効に設定する。
【0024】
このようなパケット転送装置によれば、受信パケットのハッシュ演算結果から直接送信部を決定するのではなく、ハッシュ値とポート番号とを登録したメモリ部を参照し、また送信部ごとの流量を監視することにより、動的にパケットの振り分けを行うように動作する。したがって、パケットを複数の送信部に可能な限り均等に分配して、ネットワークスイッチ間の転送効率を高めることが可能である。そのための複雑な演算処理を不要とすることができる。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例に係るパケット転送装置の構成を示すブロック図である。図1において、パケット転送装置1は、パケット受信部10と、ハッシュ演算部20と、ポート振り分け部30と、メモリ40と、エージング管理部50と、送信部60a、60b、60c、60dと、流量監視部70とを備える。パケット受信部10は、パケットを受信すると、ハッシュ演算部20にパケットを渡す。ハッシュ演算部20は、パケットのヘッダ部を抽出してヘッダ部の一部(MACアドレスやIPアドレス等の一部)に対してハッシュ演算を行い、演算結果であるハッシュ値をポート振り分け部30へ渡す。
【0026】
ポート振り分け部30は、ハッシュ値をアドレスとして、メモリ40を参照し、パケット受信部10が受信したパケットを送信部60a、60b、60c、60dのいずれかを選択して出力する。送信部60a、60b、60c、60dは、パケットを一時的に蓄えておくFIFO等で構成され、蓄えられているパケットを送信パケットとして外部に出力する。流量監視部70は、送信部60a、60b、60c、60dにおけるパケットの流量を常時監視し、ポート振り分け部30からの問い合わせに応じてポート番号を通知する。通知するポート番号の決定方法は、一定期間における転送レートが最も低い送信部のポート番号を選択するようにしてもよく、送信部を構成するFIFOの空き容量が最も大きい送信部のポート番号を選択するようにしてもよい。なお、パケット転送装置1に組み込まれる図示されないコンピュータにプログラムを実行させて、ハッシュ演算部20、ポート振り分け部30、エージング管理部50、流量監視部70の一部あるいは全部の機能を実現するようにしてもよい。
【0027】
次に、メモリ40のデータ構造について説明する。図2は、メモリ40のデータ構造の例を示す図である。図2において、メモリ40は、ハッシュ値をアドレスとし、「有効フラグ」、「Agingフラグ」(エージングフラグ)、「ポート番号」のそれぞれをアドレスに対応する読み書き可能なデータとして構成される。「有効フラグ」は、ハッシュ値に対応するポート番号(エントリ)が有効であるか否かを示すフラグであって、「1」は有効であることを示し、「0」は無効であることを示す。「Agingフラグ」は、一定の時間内にエントリに対応するハッシュ値を持つパケットを受信したかどうかをマークしておくフラグであり、ポート振り分け部30が「1」を書き込み、エージング管理部50が一定時間ごとに「0」を書き込む。「ポート番号」は、ハッシュ値に対応する振り分け先のポート番号、すなわち送信部60a、60b、60c、60dの識別番号を表す。なお、ハッシュ値(メモリのアドレス)の最大値は、ポート番号の数に比べて十分に大きな値とする。本実施例では、ハッシュ値を0〜1023、ポート番号を0〜3として示している。
【0028】
図2において、ハッシュ値が0、あるいは1となるパケットは、ポート番号0に対応する送信部60aに出力され、ハッシュ値が2となるパケットは、ポート番号3に対応する送信部60dに出力されることを示す。また、ハッシュ値が1021となるパケットは、ポート番号2に対応する送信部60cに出力され、ハッシュ値が1023となるパケットは、ポート番号1に対応する送信部60bに出力されることを示す。さらに、ハッシュ値が3、4、・・、となるパケットは、「有効フラグ」が「0」であるので、流量監視部70よって示される最も流量の少ない送信部に出力されると共に、この送信部に対応するポート番号が新たに登録されることになる。
【0029】
次に、パケット転送装置におけるポート振り分け動作について説明する。図3は、パケット転送装置の動作を示すフローチャートである。ステップS11でパケット受信部10がパケットを受信し、ステップS12でハッシュ演算部20は、受信したパケットにおけるハッシュ値を算出する。
【0030】
ステップS13において、ポート振り分け部30は、ハッシュ値をアドレスとして、メモリ40のデータを読み出す。このとき、「有効フラグ」が「1」であれば(ステップS13の「有効」)、求めたハッシュ値は、既にメモリ40に登録済みであるため、メモリ40の該当アドレスに対応する「ポート番号」を振り分け対象となる送信部として決定する。さらに、「Agingフラグ」に「1」を書き込む(ステップS17)。一方、「有効フラグ」が「0」であった場合(ステップS13の「無効」)には、求めたハッシュ値に対応する「ポート番号」は、未登録であるため、流量監視部70にポート番号を問い合わせる(ステップS14)。問い合わせの結果得られたポート番号を振り分け対象となる送信部として設定してメモリ40に書き込む(ステップS15)。さらに、「有効フラグ」に「1」を書き込み(ステップS16)、「Agingフラグ」に「1」を書き込む(ステップS17)。
【0031】
ステップS18において、決定されたポート番号に対応する送信部に対して受信パケットを出力する。そして次の受信パケットの処理を行う。
【0032】
次に、エージング管理部50の動作について説明する。図4は、エージング管理部50の動作を示すフローチャートである。エージング管理部50は、定期的(エージングタイム毎)に起動され、メモリ40の内容を監視する。「Agingフラグ」を読み出し、「Agingフラグ」が「1」であるエントリがあれば(ステップS21のN)、「0」を書き込む(ステップS22)。また、読み出し時に「Agingフラグ」が「0」であるエントリがあれば(ステップS21のY)、「有効フラグ」に「0」を書き込むことで(ステップS23)、そのエントリが無効とされる。すなわちエントリは開放され、同一のハッシュ値のパケットが到来した場合には、新たなポート番号が設定される可能性がある。なお、同一データフローのパケットの順序を保証するためには、エントリを無効にするためのエージングタイムは、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)を満たす十分に大きな時間とする。
【0033】
以上のようなエージング管理部50の動作例を、図2に示すメモリの内容に沿って説明する。図2のアドレス0、1に対応する「Agingフラグ」が「1」であるので、図4に示す処理が実行されると、ステップS22によって、アドレス0、あるいは1に対応する「Agingフラグ」は、「0」に設定されることとなる。また、図2のアドレス2に対応する「Agingフラグ」が「0」であって、「有効フラグ」が「1」であるので、図4に示すステップS23によって、アドレス2に対応する「有効フラグ」は、「0」に設定されることとなる。なお、この場合、図4に示す処理の実行間隔以内にアドレス2に対応するパケットが受信されれば、図3のステップS17で「Agingフラグ」は「1」に設定され、「有効フラグ」が「1」であるので、エントリは有効のまま継続する。すなわち、受信されたパケットがポート番号で示される送信部に出力される。また、有効フラグが0であるような、新たなハッシュ値を持つパケットを受信した場合には、流量監視部70によって示される最も流量の少ない送信部に対応するポート番号が再登録されることになる。
【0034】
以上説明したようなパケット転送装置によれば、ハッシュ値とポート番号とを登録したメモリを参照し、また送信ポートごとの流量を監視することによって、動的に複数の送信部への振り分けを行って、特定の送信部にトラフィックが集中するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例に係るパケット転送装置の構成を示すブロック図である。
【図2】メモリのデータ構造の例を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るパケット転送装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】エージング管理部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 パケット転送装置
10 パケット受信部
20 ハッシュ演算部
30 ポート振り分け部
40 メモリ
50 エージング管理部
60a、60b、60c、60d 送信部
70 流量監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送装置であって、
前記複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出す流量監視部と、
受信パケットと同じハッシュ値を有するパケットを、過去一定期間内に受信したか否かを判定し、一定期間内に受信していた場合には、登録されている識別番号の送信部を選択し、一定期間内に受信していなかった場合には、前記最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部を識別番号として登録するパケット分配部と、
を備えることを特徴とするパケット転送装置。
【請求項2】
前記パケット分配部は、
前記ハッシュ値に対応する有効フラグが有効を示すか無効を示すかを判断し、前記有効フラグが有効であることを示す場合には、前記ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択し、前記有効フラグが無効であることを示す場合には、前記流量監視部によって見出された送信部を選択すると共に該送信部に対応する識別番号を前記ハッシュ値に対応させて設定して前記有効フラグを有効に設定するポート振り分け部と、
前記ポート振り分け部が送信部を選択した際には、前記ハッシュ値に対応するエージングフラグをセットし、該エージングフラグをセットして一定期間経過後に、該エージングフラグをリセットすると共に前記有効フラグを無効に設定するエージング管理部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のパケット転送装置。
【請求項3】
前記ハッシュ値をアドレスとし、前記識別番号、前記有効フラグ、前記エージングフラグのそれぞれを該アドレスに対応する読み書き可能なデータとして保持するメモリ部をさらに備えることを特徴とする請求項2記載のパケット転送装置。
【請求項4】
前記流量監視部は、一定期間における転送レートが最も低い送信部を選択することを特徴とする請求項1または2記載のパケット転送装置。
【請求項5】
前記流量監視部は、送信部を構成するFIFOの空き容量が最も大きい送信部を選択することを特徴とする請求項1または2記載のパケット転送装置。
【請求項6】
受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送方法であって、
前記複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出すステップと、
受信パケットと同じハッシュ値を有するパケットを、過去一定期間内に受信したか否かを判定するステップと、
一定期間内に受信していた場合には、登録されている識別番号の送信部を選択し、一定期間内に受信していなかった場合には、前記最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部を識別番号として登録するステップと、
を含むことを特徴とするパケット転送方法。
【請求項7】
受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送方法であって、
前記複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出すステップと、
前記ハッシュ値に対応する有効フラグが有効を示すか無効を示すかを判断するステップと、
前記有効フラグが有効であることを示す場合には、前記ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択し、前記有効フラグが無効であることを示す場合には、前記最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部に対応する識別番号を前記ハッシュ値に対応させて設定して前記有効フラグを有効に設定するステップと、
前記送信部を選択した際には、前記ハッシュ値に対応するエージングフラグをセットするステップと、
前記エージングフラグがセットされて一定期間経過後に、前記エージングフラグをリセットすると共に有効フラグを無効に設定するステップと、
を含むことを特徴とするパケット転送方法。
【請求項8】
前記最小の流量となる送信部を見出すステップにおいて、一定期間における転送レートが最も低い送信部を選択することを特徴とする請求項6または7記載のパケット転送方法。
【請求項9】
前記最小の流量となる送信部を見出すステップにおいて、送信部を構成するFIFOの空き容量が最も大きい送信部を選択することを特徴とする請求項6または7記載のパケット転送方法。
【請求項10】
受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送装置を構成するコンピュータに、
前記複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出す処理と、
受信パケットと同じハッシュ値を有するパケットを、過去一定期間内に受信したか否かを判定する処理と、
一定期間内に受信していた場合には、登録されている識別番号の送信部を選択し、一定期間内に受信していなかった場合には、前記最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部を識別番号として登録する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項11】
受信パケットを複数の送信部のいずれかに分配するに際し、受信パケットのヘッダ部の一部からハッシュ値を求めて、ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択して受信パケットを出力するパケット転送装置を構成するコンピュータに、
前記複数の送信部のそれぞれにおけるパケットの流量を監視して最小の流量となる送信部を見出す処理と、
前記ハッシュ値に対応する有効フラグが有効を示すか無効を示すかを判断する処理と、
前記有効フラグが有効であることを示す場合には、前記ハッシュ値に対応する識別番号の送信部を選択し、前記有効フラグが無効であることを示す場合には、前記最小の流量となる送信部を選択すると共に該送信部に対応する識別番号を前記ハッシュ値に対応させて設定して有効フラグを有効に設定する処理と、
前記送信部を選択した際には、前記ハッシュ値に対応するエージングフラグをセットする処理と、
前記エージングフラグがセットされて一定時間経過後に、前記エージングフラグをリセットすると共に前記有効フラグを無効に設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項12】
前記最小の流量となる送信部を見出す処理において、一定期間における転送レートが最も低い送信部を選択することを特徴とする請求項10または11記載のプログラム。
【請求項13】
前記最小の流量となる送信部を見出す処理において、送信部を構成するFIFOの空き容量が最も大きい送信部を選択することを特徴とする請求項10または11記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−5287(P2008−5287A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173641(P2006−173641)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】